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特許異議申立

2020-700137

レーダ装置

審判番号
2020-700137
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-246115
登録番号
特許第6570610号(P6570610)
請求日
2020年03月02日
審決日
2021年02月04日
公報発行日
2021年05月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱電機株式会社
  • 【権利者代理人】曾我 道治
  • 【権利者代理人】梶並 順
  • 【権利者代理人】大宅 一宏
  • 【権利者代理人】上田 俊一
  • 【権利者代理人】吉田 潤一郎
  • 【異議申立人】伊東 多永子
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 濱野 隆
  • 審判官 中塚 直樹
分類
P1651.55 -YAA(G01S) / P1651.537-YAA(G01S) / P1651.113-YAA(G01S) / P1651.121-YAA(G01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6570610号発明「レーダ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6570610号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第6570610号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6570610号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成29年12月22日にしたものであり、令和元年8月16日にその特許権の設定の登録がされ、同年9月4日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は6である。 これに対して、令和2年3月2日に特許異議申立人伊東多永子(以下「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証~甲第3号証を提出し、本件特許の請求項1~6について特許異議の申立てをした。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和2年 6月26日付け : 取消理由通知書 令和2年 8月 3日   : 特許権者と面接 令和2年 8月28日   : 特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出 令和2年10月 1日付け : 手続補正指令書(方式) 令和2年10月30日   : 特許権者による手続補正書の提出 令和2年11月20日付け : 通知書(申立人宛て) 令和2年12月25日   : 申立人による意見書の提出 以下、令和2年8月28日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。 第2 本件訂正について 1 請求の趣旨及び訂正の内容 令和2年10月30日付けの訂正請求書の補正は、請求の趣旨について、 「特許第6570610号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3、について訂正することを求める。」を、 「特許第6570610号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6、について訂正することを求める。」 と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。 上記補正は、訂正後の請求項を特定する番号についての明らかな誤記を補正するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではないと認められるから、特許法120条の5第9項において準用する同法131条の2第1項の規定に適合する。 したがって、本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって、その内容は次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。 なお、訂正後の請求項1~6は、訂正事項1~6によって記載が訂正される請求項1に連動して、請求項2~6も同様に訂正され、訂正事項7によって記載が訂正される請求項2に連動して、請求項4~6も同様に訂正され、訂正事項8によって記載が訂正される請求項3に連動して、請求項4~6も同様に訂正されるものであり、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナと、」とあるのを、 「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナと、」とあるのを、 「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、」とあるのを、 「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、」とあるのを、 「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、」とあるのを、 「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、」とあるのを、 「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項2に「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」とあるのを、 「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1所有し、」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項3に「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」とあるのを、 「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」に訂正する。 (請求項3の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 明細書の段落【0012】に「本発明は、送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナと、前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部とを備えたレーダ装置であって、前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、レーダ装置である。」とあるのを、 「本発明は、送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部とを備えたレーダ装置であって、前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、レーダ装置である。」に訂正する。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の目的 ア 訂正事項1 (ア)訂正事項1は、本件訂正前の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナ」という記載における「放射する」が、「送信アンテナ」に係るのか、「送信アンテナ素子」に係るのか不明であったものを、「送信アンテナ」に係るように明確にすべく、「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (イ)訂正事項1は、本件訂正前の「送信アンテナ素子」を「送信素子アンテナ」と訂正することを含むところ、前者が後者の誤記であり、本来後者の意味であることは明らかであるから(願書に最初に添付した明細書には「アンテナ素子」との用語は用いられていない一方、「素子アンテナ」の用語を用いている(段落【0037】参照)。)、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。 (ウ)訂正事項1は、本件訂正前の「複数の送信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、「複数の」が、「送信アンテナ素子」が複数あるのか、「パターン」が複数あるのか不明であり、また、「複数の送信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明(1つの「送信アンテナ」は1つの「送信アンテナ素子パターン」を含み、全体で見ると、複数の「送信アンテナ素子パターン」がある、すなわち、複数の「送信アンテナ」があるということを意味しているのか、1つの「送信アンテナ」自体が「複数の送信アンテナ素子パターン」を含み、そのような「送信アンテナ」が「複数」あることを意味しているのか不明)であったものを、上記(イ)の誤記の訂正も踏まえた上で、「送信素子アンテナ」が複数あり、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (エ)よって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 訂正事項2 (ア)訂正事項2は、本件訂正前の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナ」という記載における「出力する」が、「受信アンテナ」に係るのか、「受信アンテナ素子」に係るのか不明であったものを、「受信アンテナ」に係るように明確にすべく、「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (イ)訂正事項2は、本件訂正前の「受信アンテナ素子」を「受信素子アンテナ」と訂正することを含むところ、前者が後者の誤記であり、本来後者の意味であることは明らかであるから(願書に最初に添付した明細書には「アンテナ素子」との用語は用いられていない一方、「素子アンテナ」の用語を用いている(段落【0037】参照)。)、この訂正は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。 (ウ)訂正事項2は、本件訂正前の「複数の受信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、「複数の」が、「受信アンテナ素子」が複数あるのか、「パターン」が複数あるのか不明であり、また、「複数の受信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明(1つの「受信アンテナ」は1つの「受信アンテナ素子パターン」を含み、全体で見ると、複数の「受信アンテナ素子パターン」がある、すなわち、複数の「受信アンテナ」があるということを意味しているのか、1つの「受信アンテナ」自体が「複数の受信アンテナ素子パターン」を含み、そのような「受信アンテナ」が「複数」あることを意味しているのか不明)であったものを、上記(イ)の誤記の訂正も踏まえた上で、「受信素子アンテナ」が複数あり、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むから、この訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (エ)よって、訂正事項2の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 ウ 訂正事項3 訂正事項3は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で」「並べて配置され」る「前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向」が、「前記第1の方向に対して垂直」な方向であることを限定する訂正であり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 エ 訂正事項4 訂正事項4は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で」「並べて配置され」る「前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向」が、「前記第1の方向に対して垂直」な方向であることを限定する訂正であり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 オ 訂正事項5 訂正事項5は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく」との記載において、「第1の送信アンテナ素子」と「第2の送信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明であったものを、上記「ア 訂正事項1」の(イ)の誤記の訂正も踏まえた上でその点を明確にすべく、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正するものであり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 カ 訂正事項6 訂正事項6は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい」との記載において、「第1の受信アンテナ素子」と「第2の受信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明であったものを、上記「イ 訂正事項2」の(イ)の誤記の訂正も踏まえた上でその点を明確にすべく、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」に訂正するものであり、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き2号に掲げる「誤記の訂正」及び同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 キ 訂正事項7、8 訂正事項7、8は、本件訂正前の「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し」との記載において、上記「アンテナ間隔」と、引用する請求項1の「複数の受信アンテナ」に係る「予め設定された間隔」(すなわち隣接間隔)とは同じものであるか否か不明であったものを、その点を明確にすべく、「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1所有し」に訂正するものであるから、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 ク 訂正事項9 訂正事項9は、上記訂正事項1~6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (2)新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更 上記訂正事項1、2、5及び6の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものを含むから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)である。 上記訂正事項3、4、7~9の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「特許明細書等」という。)である。 ア 訂正事項1、2、5及び6 (ア)訂正事項1及び2の訂正は、当初明細書等の段落【0035】の「図2においては、各送信アンテナTxおよび各受信アンテナRxとして、1本の実線で繋がれた縦に一列に並んだ複数の黒い四角を1つのアンテナとみなすこととする。なお、以下では、当該実線の方向を、「垂直方向」と呼ぶこととする。」、段落【0037】の「たとえば、図2において、黒い四角を1つの素子アンテナとすると、各送信アンテナTxは、それぞれ、5つの素子アンテナから構成されている。また、各受信アンテナRxは、それぞれ、5つの素子アンテナから構成されている。」という記載及び【図2】の記載に基づくものであると認められる。 (イ)訂正事項5及び6の訂正は、当初明細書等の段落【0039】の「図2に示すように、送信アンテナTxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。以下では、当該配列方向を、第1の配列方向と呼ぶ。第1の配列方向は、基板平面内において上記「垂直方向」に対して垂直な方向になる。また、レーダ装置1の視野範囲に応じて定められる後述する或る距離を、距離dとすると、2つの送信アンテナTx1およびTx2の間のアンテナ間隔は、距離dよりも大きい間隔となっている。」、段落【0041】の「また、図2に示すように、受信アンテナRxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。受信アンテナRxの配列方向は、第1の配列方向に平行な方向である。以下では、当該配列方向を、第2の配列方向と呼ぶ。第2の配列方向は、基板平面内において上記「垂直方向」に対して垂直な方向になる。また、受信アンテナRxのうち、少なくとも2つの受信アンテナRx間のアンテナ間隔は、距離dよりも大きい間隔となっている。」という記載及び【図2】の記載に基づくものであると認められる。 「【図2】 」 (ウ)したがって、訂正事項1、2、5及び6の訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。 また、本件訂正前の「送信アンテナ素子」が「送信素子アンテナ」の誤記であり、「受信アンテナ素子」が「受信素子アンテナ」の誤記であることを鑑みると、訂正事項1、2、5及び6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項に規定する要件を満たす。 イ 訂正事項3、4、7及び8 (ア)訂正事項3及び4の訂正は、特許明細書等の段落【0039】、【0041】の記載及び【図2】の記載に基づくものであると認められる。 なお、特許明細書等の段落【0039】、【0041】及び【図2】の記載は、上記ア(イ)で示した当初明細書等の該当箇所の記載と同じものである。 (イ)訂正事項7及び8の訂正は、特許明細書等の段落【0042】の「図2の例では、受信アンテナRx1~Rx4が、それぞれ、アンテナ間隔2dの等間隔で順に配置されている。具体的には、受信アンテナRx1の中心位置と、受信アンテナRx2の中心位置との間の距離が、2dとなっている。同様に、受信アンテナRx2の中心位置と、受信アンテナRx3の中心位置との間の距離が、2dとなっている。同様に、受信アンテナRx3の中心位置と、受信アンテナRx4の中心位置との間の距離が、2dとなっている。」の記載及び【図2】、【図8】の記載に基づくものであると認められる。 「【図8】 」 (ウ)したがって、訂正事項3、4、7及び8の訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。 また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項に規定する要件を満たす。 ウ 訂正事項9 訂正事項9は、上記訂正事項1~6に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、この訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項に規定する要件を満たす。 また、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126第6項に規定する要件を満たす。 (3)独立特許要件 この特許異議の申立てにおいては、請求項1~6について特許異議の申立てがされているところ、上記訂正事項1~6は請求項1~6に係るものであり、上記訂正事項7は請求項2、4~6に係るものであり、上記訂正事項8は請求項3~6に係るものであるから、本件訂正後における請求項1~6に記載されている事項により特定される発明について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。 (4)まとめ 上記(1)~(3)において検討した訂正要件についての判断をまとめると、本件訂正は適法なものである。 よって、上記結論のとおり、訂正することを認める。 第3 取消理由の概要 本件特許について、当審の審判長が令和2年6月26日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1(新規事項) 本件特許は、平成31年3月6日に提出された手続補正書でした明細書及び特許請求の範囲についての補正が、下記に示すとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。 記 請求項1において、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、」という事項を追加する補正について、 当初明細書等には、「第1の送信アンテナ」と「第2の送信アンテナ」との「間隔が前記距離dより大きく」、「第1の受信アンテナ」と「第2の受信アンテナ」との「間隔が前記距離dより大きい」ということは記載されていると認められる。 しかしながら、当初明細書等には、送信・受信のいずれについても、アンテナ素子とアンテナ素子との間隔(以下「素子間隔」という。)についての記載はなく、それらの素子間隔が距離dより大きい旨の記載もない。 そして、この素子間隔に係る事項は、当初明細書等に記載された事項から自明なものでもない。 すなわち、当初明細書等には、送信・受信のいずれについても、アンテナ間隔をどのように設定するかという観点からの記述はあるものの、素子間隔をどのように設定するかという観点からの記述はなく、このような素子間隔についての特定事項を追加する上記補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。 取消理由2(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 請求項1において (1)「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナ」と記載されているが、 ア 「放射する」はどこに係るものであるのか不明である。 イ 「複数の送信アンテナ素子パターン」の「複数の」は、何が複数あるのか不明である。 ウ 「複数の送信アンテナ素子パターンで構成される」のは、「複数の送信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明である。 (2)「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナ」と記載されているが、 ア 「出力する」はどこに係るものであるのか不明である。 イ 「複数の受信アンテナ素子パターン」の「複数の」は、何が複数あるのか不明である。 ウ 「複数の受信アンテナ素子パターンで構成される」のは、「複数の受信アンテナ」全体で見た場合のことを意味しているのか、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味しているのか不明である。 (3)「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく、前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい、」と記載されているが、 ア 「第1の送信アンテナ素子」と「第2の送信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明である。 イ 「第1の受信アンテナ素子」と「第2の受信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのか不明である。 請求項2及び3において、「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、」と記載されているが、上記「アンテナ間隔」と、引用する請求項1の「複数の受信アンテナ」に係る「予め設定された間隔」(すなわち隣接間隔)とは同じものであるか否か不明である。 取消理由3(新規性) 本件訂正前の請求項1、2及び6に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明であるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。 取消理由4(進歩性) 本件訂正前の請求項1、2、4~6に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 本件訂正前の請求項3に係る発明は、下記の甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第2号証:特開2016-180720号公報 甲第3号証:特開2014-85317号公報 第4 当審の判断 1 取消理由1(新規事項)について (1)訂正事項5は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく」との記載を、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正するものであるから、本件訂正後は、送信アンテナの素子間隔についての特定事項はなくなった。 (2)同様に、訂正事項6は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい」との記載を、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」に訂正するものであるから、本件訂正後は、受信アンテナの素子間隔についての特定事項はなくなった。 (3)したがって、送信・受信のいずれの場合も、素子間隔についての特定事項を追加する補正が新規事項を追加するものであるとする取消理由1は、本件訂正により解消された。 2 取消理由2(明確性)について (1)訂正事項1は、本件訂正前の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ素子パターンで構成される複数の送信アンテナ」という記載における「放射する」が「送信アンテナ」に係るように明確にすべく、「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(1)アの指摘事項は解消した。 (2)訂正事項1は、本件訂正前の「複数の送信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、誤記の訂正も踏まえた上で、「送信素子アンテナ」が複数あり、1つの「送信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(1)イ及びウの指摘事項は解消した。 (3)訂正事項2は、本件訂正前の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ素子パターンで構成される複数の受信アンテナ」という記載における「出力する」が、「受信アンテナ」に係るように明確にすべく、「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(2)アの指摘事項は解消した。 (4)訂正事項2は、本件訂正前の「複数の受信アンテナ素子パターンで構成される」との記載について、誤記の訂正も踏まえた上で、「受信素子アンテナ」が複数あり、1つの「受信アンテナ」について見た場合のことを意味するように明確にすべく、「各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される」と訂正することを含むものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(2)イ及びウの指摘事項は解消した。 (5)訂正事項5は、本件訂正前の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信アンテナ素子と、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きく」との記載において、「第1の送信アンテナ素子」と「第2の送信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのかを誤記の訂正も踏まえて明確にすべく、「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、」に訂正するものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(3)アの指摘事項は解消した。 (6)訂正事項6は、本件訂正前の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信アンテナ素子と、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信アンテナ素子との間隔が前記距離dより大きい」との記載において、「第1の受信アンテナ素子」と「第2の受信アンテナ素子との間隔」はどのように規定されるものであるのかを誤記の訂正も踏まえて明確にすべく、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」に訂正するものであり、この訂正により取消理由2の請求項1における(3)イの指摘事項は解消した。 (7)訂正事項7、8は、本件訂正前の「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、アンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し」との記載において、上記「アンテナ間隔」と、引用する請求項1の「複数の受信アンテナ」に係る「予め設定された間隔」(すなわち隣接間隔)とは同じものであるかを明確にすべく、「前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1所有し」に訂正するものであり、この訂正により取消理由2の請求項2及び3における指摘事項は解消した。 (8)以上検討のとおり、取消理由2は、本件訂正により解消された。 3 取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について (1)本件特許に係る発明 上記第2において説示したとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件訂正発明1」等という。)は、次のとおり、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるものであると認められる。 「【請求項1】 送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、 前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、 前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と を備えたレーダ装置であって、 前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、 前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、 前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直、且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、 前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、 前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、 前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、 レーダ装置。 【請求項2】 前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の前記予め設定された間隔は、距離3dであり、 前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、 前記仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離dとなる部分を少なくとも1か所備えている、 請求項1に記載のレーダ装置。 【請求項3】 前記複数の送信アンテナは、前記第1の送信アンテナ、前記第2の送信アンテナ、第3の送信アンテナの順番で配置された3つの送信アンテナを含み、 前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の前記予め設定された間隔は、距離3dであり、 前記第1の送信アンテナと前記第3の送信アンテナとの間のアンテナ間隔は、前記受信アンテナの本数Nと距離2dとを乗算した値N×2dに相当する距離であり、 前記複数の受信アンテナは、アンテナ配置の中に、隣接する受信アンテナ間のアンテナ間隔が距離2dの間隔で配置されている部分を少なくとも1か所有し、 前記仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離dとなる部分を少なくとも1か所備えている、 請求項1に記載のレーダ装置。 【請求項4】 前記複数の送信アンテナのうちの少なくとも1つの送信アンテナは、前記送信信号の放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向を含む平面内において、前記第1の配列方向に対して垂直な方向において、予め設定された第1のシフト量だけ、シフトされて配置されている、 請求項1から3までのいずれか1項に記載のレーダ装置。 【請求項5】 前記複数の受信アンテナのうちの少なくとも1つの受信アンテナは、前記送信信号の放射方向に対して垂直で且つ前記第2の配列方向を含む平面内において、前記第2の配列方向に対して垂直な方向において、予め設定された第2のシフト量だけ、シフトされて配置されている、 請求項1から4までのいずれか1項に記載のレーダ装置。 【請求項6】 前記距離dは、前記レーダ装置に要求される視野範囲と前記送信信号の波長とに基づいて決定される、 請求項1から5までのいずれか1項に記載のレーダ装置。」 (2) 引用文献の記載 ア 甲第2号証(特開2016-180720号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 「【0027】 [レーダ装置の構成] 図2は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。 【0028】 レーダ装置10は、レーダ送信部100と、レーダ受信部200と、基準信号生成部300と、を有する。 【0029】 レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号に基づいて高周波のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106-1~106-Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する。 【0030】 レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1~202-Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を用いて、各アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行う。なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両又は人を含む。」 「【0042】 [レーダ受信部200の構成] 図2において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、方向推定部214と、を有する。 【0043】 各受信アンテナ202は、ターゲット(物体)に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。 【0044】 各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有する。」 「【0081】 [レーダ装置10におけるアンテナ配置] 以上の構成を有するレーダ装置10におけるNt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の配置について説明する。 【0082】 図6は、Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナ配置を示す。 【0083】 送信アンテナ106及び受信アンテナ202の各々は、2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成される。 【0084】 また、サブアレー素子のサイズ(幅)をDsubarryとし、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔をDeとする。図6では、サブアレー素子のサイズDsubarryは所望のアンテナ素子間隔Deよりも大きい(Dsubarry>De)。なお、所望のアンテナ素子間隔Deとしては、0.5波長以上0.75波長以下の値を用いる 【0085】 また、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔をDtとし、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔をDrとする。例えば、図6では、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、受信アンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とする。つまり、サブアレー素子間隔Dt,Drは、1波長(λ)程度以上となる。 【0086】 本実施の形態では、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔Deよりもサブアレー素子のサイズDsubarryが広い場合(Dsubarry>De)。この場合、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの間で次式に示す関係を満たすように、送信アレー及び受信アレーを配置する。 |Dt - Dr | = De    (10) 【0087】 すなわち、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。 【0088】 図6は、一例として、De=λ/2とし、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dt=1.5λとし、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dr=λとなる場合を示す。 【0089】 この場合、図6に示すように、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。」 「【0094】 なお、図6では、水平方向の到来方向推定を行うために、水平方向にアレーアンテナを直線状に配置する構成を一例として示した。しかし、本実施の形態は、垂直方向の到来方向推定を行うために、垂直方向にアレーアンテナを直線状に配置する場合でも、同様にして、垂直方向において、グレーティングローブが発生しない所望の素子間隔の仮想受信アレーを配置することができる。 【0095】 (バリエーション1) バリエーション1では、水平方向及び垂直方向の双方の到来方向推定を行う場合について説明する。 【0096】 送信アレー素子又は受信アレー素子が垂直方向及び水平方向の2次元に配置される。 【0097】 図8は、Nt=6個の送信アンテナ106(Tx#1~Tx#6)から構成される送信アレーのアンテナ配置、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーのアンテナ配置、及び、これらの送受信アレーアンテナに基づいて構成される仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=18個)のアンテナ配置を示す。 【0098】 図8では、送信アレーは、水平方向に2個、垂直方向に3個の2次元に各サブアレー素子が配置されている。 【0099】 また、図8においてサブアレー素子の水平方向におけるサイズをDsubarryとし、サブアレー素子の垂直方向におけるサイズをDe以下とする。つまり、アンテナ素子のサイズは、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である。 【0100】 図8では、一例として、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dtを1.5λとし、送信アレーアンテナの垂直方向の素子間隔をDeとする。また、受信アンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。 【0101】 この場合、図8に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。また、図8に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。 【0102】 これにより、図8に示すように、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。 【0103】 また、図8に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、所望のアンテナ素子間隔Deとなる。 【0104】 すなわち、仮想受信アレーでは、水平方向及び垂直方向の何れでも、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。」 「【0119】 図10では、図8と同様、所望のアンテナ素子間隔De=λ/2とし、送信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dtを1.5λとし、送信アレーアンテナの垂直方向の素子間隔をDeとする。また、受信アレーアンテナの水平方向のサブアレー素子間隔Dr=λとする。 【0120】 バリエーション1(図8)と同様、図10に示すように、水平方向において、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。また、図10に示すように、垂直方向において、送信アレーアンテナの素子間隔は、所望のアンテナ素子間隔Deと同一である。 【0121】 更に、図10では、送信アレーアンテナの垂直方向においてアンテナ素子間隔De離れた送信アンテナ106同士(垂直方向に隣接する送信アンテナ106同士)が、水平方向においてアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置される。換言すると、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望の素子間隔と同一間隔ずれて配置される。 【0122】 例えば、図10に示す送信アンテナTx#1、Tx#2の配列(すなわち、サブアレー素子配列。以下同様)と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#3、Tx#4の配列とは、アンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されている。同様に、送信アンテナTx#3、Tx#4の配列と、当該配列に垂直方向で隣接する送信アンテナT#5、T#6の配列とは、水平方向にアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されている。 【0123】 図10では、水平方向において、仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる。また、図10に示すように、垂直方向において、仮想受信アレーの素子間隔は、送信アレーの垂直方向の素子間隔と同様、所望のアンテナ素子間隔Deとなる。すなわち、仮想受信アレーでは、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しないアレー配置が得られる。 【0124】 更に、図10に示すように、仮想受信アレーの垂直方向において、中央(2段目)のアレー素子の配列が、他のアレー素子(1段目及び3段目)のアレー素子の配列と比較して、水平方向にDeずれて配置される。これにより、図10では、バリエーション1(図8)と比較して、仮想受信アレーが配置される2次元平面におけるアンテナ素子の間隔がより密接になる。これにより、仮想受信アレーでは、サイドローブレベルの低減が可能となる。」 「【図2】 」 「【図6】 」 「【図8】 」 「【図10】 」 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アにおいて摘記した記載事項(特に、段落【0027】~【0030】、【0042】~【0044】、【0081】~【0085】、【0094】、【図2】、【図6】)を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「レーダ送信部100と、レーダ受信部200と、基準信号生成部300と、を有するレーダ装置10であって、(【0028】) 前記レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106-1~106-Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信するものであり、(【0029】) 前記レーダ受信部200は、検出対象物体である車両又は人を含むターゲットにより反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1~202-Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信するものであり、(【0030】) 前記レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、方向推定部214と、を有し、各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部207とを有し、 前記レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力し、前記アンテナ系統処理部201において信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行うものであり、 (【0030】、【0042】~【0044】、【図2】) 前記Nt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の配置について、Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される送信アレーを水平方向に直線状に配置して送信アレーアンテナとし、Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される受信アレーを水平方向に直線状に配置して受信アレーアンテナとした場合には、これらの送受信アレーアンテナに基づいて、仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナが構成され、 (【0081】~【0082】、【0094】、【図6】) 前記送信アンテナ106及び受信アンテナ202の各々は、水平方向に並ぶ2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成され、前記サブアレー素子のサイズ(幅)をDsubarryとし、レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望のアンテナ素子間隔をDeとすると、前記サブアレー素子のサイズDsubarryは所望のアンテナ素子間隔Deよりも大きく、 (【0083】~【0084】、【図6】) 前記所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)とし、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とすると、送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtと、受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drとの差の絶対値は、前記所望のアンテナ素子間隔Deと同一となり、 (【0085】~【0088】、【図6】) 前記仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、前記所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となるアレー配置が得られる、 (【0089】、【図6】) レーダ装置10。」 ウ 甲第2号証に記載された技術事項 上記アにおいて摘記した記載事項(特に、段落【0119】~【0124】、【図10】)を総合すると、甲第2号証には、次の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲2記載事項] 「送信アレーアンテナの垂直方向においてアンテナ素子間隔Deだけ離れた送信アンテナ106同士(垂直方向に隣接する送信アンテナ106同士)が、水平方向においてアンテナ素子間隔Deと同一間隔ずれて配置されること。すなわち、送信アレーアンテナにおいて、垂直方向で隣接し、水平方向に直線上に並べられた2つのサブアレー素子配列が、水平方向に所望の素子間隔と同一間隔ずれて配置されること。(【0121】、【図10】)」 エ 甲第3号証(特開2014-85317号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 「【0021】 次に、仮に、送信装置10-1~10-3の各送信アンテナ11-1~11-3を、全て等間隔で配置した場合について説明する。図3は、送信アンテナ11-1~11-3を全て等間隔で配置した場合の仮想アレイを説明する図である。図3では、送信アンテナ11-1~11-3が3素子、受信アンテナ21-1~21-3が3素子である。図3に示すように、送信アンテナ11-1と送信アンテナ11-2とは、間隔が3dで配置され、送信アンテナ11-2と送信アンテナ11-3とは、間隔が3dで配置されている。このため、仮想アレイは、各仮想アンテナ群201a~203a同士の間隔が3dずつ離れているため、全ての仮想アンテナ(201a-1~201a-3、202a-1~202a-3、203a-1~203a-3)は、全て異なる位置に配置される。」 「【図3】 」 上記エにおいて摘記した記載事項を総合すると、甲第3号証には、次の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲3記載事項] 「送信アンテナ11-1~11-3が3素子、受信アンテナ21-1~21-3が3素子であり、送信アンテナ11-1、11-2及び11-3がこの順で配置され、送信アンテナ11-1と送信アンテナ11-2とは、間隔が3dで配置され、送信アンテナ11-2と送信アンテナ11-3とは、間隔が3dで配置されており、受信アンテナ21-1と受信アンテナ21-2とは、間隔がdで配置され、受信アンテナ21-2と受信アンテナ21-3とは、間隔がdで配置されており、全ての仮想アンテナ(201a-1~201a-3、202a-1~202a-3、203a-1~203a-3)は、全て異なる位置に配置され、隣接する仮想アンテナは間隔がdで配置されていること。(【0021】、【図3】)」 (3)本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断 ア 対比 (ア)甲2発明の「レーダ送信信号」は、本件訂正発明1の「送信信号」に相当し、甲2発明の「検出対象物体である車両又は人を含むターゲット」は、本件訂正発明1の「周辺の物体」に相当する。 また、甲2発明の「複数の送信アンテナ106-1~106-Nt」は、「Nt個」のアンテナによって構成されるから、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ」に相当する。 さらに、甲2発明の「送信アンテナ106」の「各々は、水平方向に並ぶ2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成され」るから、この「サブアレー素子」に含まれる「2個のアンテナ素子」の並ぶ方向である「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の方向」に相当し、「2個のアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各送信アンテナ」を「構成」する「第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターン」に相当する。 よって、甲2発明の「レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する」「複数の送信アンテナ106-1~106-Ntによって構成される送信アレーアンテナ」は、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナ」に相当する。 (イ)甲2発明の「検出対象物体である車両又は人を含むターゲットにより反射したレーダ送信信号である反射波信号」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号」に相当する。 また、甲2発明の「レーダ受信部200」は、「検出対象物体である車両又は人を含むターゲットにより反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1~202-Naから成る受信アレーアンテナを用いて受信するもの」であり、「各受信アンテナ202において、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力」するから、甲2発明の「Na個」の「複数の受信アンテナ202-1~202-Na」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ」に相当する。 さらに、甲2発明の「受信アンテナ202」の「各々は、水平方向に並ぶ2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成され」るから、この「サブアレー素子」に含まれる「2個のアンテナ素子」の並ぶ方向は、「送信アンテナ106」の「サブアレー素子」に含まれる「2個のアンテナ素子」の並ぶ方向と、「水平方向」である点で一致する。 そして、上記(ア)において検討したとおり、この「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の方向」に相当するから、甲2発明の「受信アンテナ202」の「2個のアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各受信アンテナ」を「構成」する「前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターン」に相当する。 よって、甲2発明の「複数の送信アンテナ106-1~106-Nt」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナ」に相当する。 (ウ)甲2発明の「レーダ受信部200」は、「信号処理部207」を備えた「Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Na」を有し、「各受信アンテナ202において、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力し、前記アンテナ系統処理部201において信号処理し、ターゲットの有無検出、方向推定などを行うもの」であるから、本件訂正発明1の「前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部」に相当する構成を含むものである。 (エ)上記(ア)~(ウ)の検討内容を踏まえると、甲2発明の「レーダ装置10」は、本件訂正発明1の「レーダ装置」に相当する。 (オ)甲2発明の「アンテナ素子間隔」である「De」は、「レーダ検知角範囲においてグレーティングローブが発生しない所望の」ものであるから、本件訂正発明1の「前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離」である「距離d」に相当する。 (カ)甲2発明の「Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)」におけるアンテナ「Tx#1」及び「Tx#2」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」及び「前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナ」に相当する。 また、甲2発明の「前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dt」は、2つのアンテナ「Tx#1」と「Tx#2」の間隔を規定するものであるから、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。 ここで、本件特許の明細書の段落【0039】には、「送信アンテナTxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。以下では、当該配列方向を、第1の配列方向と呼ぶ。」と記載されており、本件訂正発明1の「第1の配列方向」とは、複数の送信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものである。 そうすると、甲2発明の「送信アンテナ106」は全体として2つのアンテナ「Tx#1」と「Tx#2」からなり、それらは「水平方向に直線状に配置」されているから、甲2発明の「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当し、甲2発明の2つのアンテナ「Tx#1」と「Tx#2」の配置は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」、「前記送信信号の放射方向に対して垂直」な「第1の配列方向に並べて配置され」ることに相当する。 よって、本件訂正発明1と甲2発明は、「前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直」な「第1の配列方向に並べて配置され」ることで共通する。 (キ)甲2発明の「Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)」におけるアンテナ「Rx#1」及び「Rx#2」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」及び「前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナ」に相当する。 また、甲2発明の「前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dr」は、2つのアンテナ「Rx#1」と「Rx#2」の間隔を規定するものであるから、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。 ここで、本件特許の明細書の段落【0041】には、「受信アンテナRxは、基板平面上に、互いに平行になるように並んで配置されている。受信アンテナRxの配列方向は、第1の配列方向に平行な方向である。以下では、当該配列方向を、第2の配列方向と呼ぶ。」と記載されており、本件訂正発明1の「第2の配列方向」とは、複数の受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものである。 そうすると、甲2発明の「受信アンテナ202」は全体として3つのアンテナ「Rx#1」、「Rx#2」及び「Rx#3」からなり、それらは「水平方向に直線状に配置」されているから、甲2発明の「水平方向」は、本件訂正発明1の「第2の配列方向」に相当し、甲2発明の3つのアンテナ「Rx#1」、「Rx#2」及び「Rx#3」の配置は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」、「前記放射方向に対して垂直」で「且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され」ることに相当する。 よって、本件訂正特許発明1と甲2発明は、「前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直」で「且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され」ることで共通する。 (ク)甲2発明の「Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)から構成される」「送信アレーアンテナ」と、「Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)から構成される」「受信アレーアンテナ」とに「基づいて」「構成され」る「仮想受信アレー(素子数:Nt×Na=6個)のアンテナ」は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナ」に相当する。 また、甲2発明において、「所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)とし、前記送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし、前記受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)と」したとき、「前記仮想受信アレーの中心付近(端部以外)の素子間隔が、前記所望のアンテナ素子間隔De(=|Dt-Dr|=λ/2)となる」ことは、本件訂正発明1の「前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する。 よって、甲2発明は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する構成を含む。 (ケ)甲2発明の「Nt=2個の送信アンテナ106(Tx#1、Tx#2)」は、それぞれが2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成されているから、甲2発明のアンテナ「Tx#1」(本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Tx#1左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナ」に相当し、甲2発明のアンテナ「Tx#2」(本件訂正発明1の「第2の送信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Tx#2左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナ」に相当する。 そして、甲2発明では、「送信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Dtを1.5λ(1.5波長)とし」ているから、上記Tx#1左素子と上記Tx#2左素子の間隔も、Dtに等しく1.5λ(1.5波長)となり、「所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大き」いことに相当する。 (コ)甲2発明の「Na=3個の受信アンテナ202(Rx#1、Rx#2、Rx#3)」は、それぞれが2個のアンテナ素子を含むサブアレー素子を用いて構成されているから、甲2発明のアンテナ「Rx#1」(本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Rx#1左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナ」に相当し、甲2発明のアンテナ「Rx#2」(本件訂正発明1の「第2の受信アンテナ」に相当。)の、【図6】上で「水平方向」に並んだ2つの「アンテナ素子」のうち、左にある「アンテナ素子」(以下「Rx#2左素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナ」に相当する。 そして、甲2発明では、「受信アレーアンテナのサブアレー素子間隔Drを1λ(1波長)とし」ているから、上記Rx#1左素子と上記Rx#2左素子の間隔も、Drに等しく1λ(1波長)となり、「所望のアンテナ素子間隔De=λ/2(0.5波長)」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大き」いことに相当する。 以上(ア)~(コ)の対比内容をまとめると、本件訂正発明1と甲2発明は、以下の一致点Aにおいて一致し、以下の相違点Aにおいて相違する。 [一致点A] 「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、 前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、 前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と を備えたレーダ装置であって、 前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、 前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直な第1の配列方向に並べて配置され、 前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと前記第1の受信アンテナに隣接する第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直で且つ前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され、 前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、 前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく、 前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい、 レーダ装置。」 [相違点A] 「複数の送信素子アンテナ」が「一列に並」ぶ「第1の方向」と、「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「並」ぶ「第1の配列方向」について、本件訂正発明1では、両者が「垂直」であるのに対して、甲2発明では、両者が同じ方向(水平方向)であり、「複数の受信素子アンテナ」が「一列に並」ぶ「第1の方向」と、「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「並」ぶ「第2の配列方向」について、本件訂正発明1では、両者が「垂直」であるのに対して、甲2発明では、両者が同じ方向(水平方向)である点。 イ 判断 (ア)上記相違点Aは、送信、受信のいずれの場合でも、素子アンテナの並ぶ方向とアンテナの並ぶ方向が、本件訂正発明1では垂直であるのに対して、甲2発明では平行であるということに要約されるところ、送信、受信のいずれの場合でも、素子アンテナの並ぶ方向とアンテナの並ぶ方向が垂直であることは、甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも開示されておらず、示唆もされていない。 (イ)この点に関し、甲第2号証の【図8】には、送信アンテナTx#1、Tx#3及びTx#5が紙面上の上下方向に互いに平行に並べて配置されており、この上下方向を本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当すると考えれば、この上下方向は、各送信アンテナの2個のアンテナ素子の並ぶ方向(水平方向)(本件訂正発明1の「第1の方向」に相当。)と垂直になり、上記相違点Aに対応する構成が得られるとの主張が考えられる。 「【図8】(再掲) 」 (ウ)しかしながら、上記「ア 対比」(カ)において説示したとおり、本件訂正発明1の「第1の配列方向」とは、複数の送信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるから、甲第2号証の【図8】の3つの送信アンテナTx#1、Tx#3及びTx#5のみに注目して、送信アンテナ全体の配列方向を規定するのは適当ではなく、6つの送信アンテナTx#1~Tx#6の配置に基づいて、送信アンテナ全体の配列方向を規定すべきであって、その場合には、【図8】の紙面上の上下方向が本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当するとはいえない。 仮に、【図8】の紙面上の上下方向が本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当すると考えることができたとしても、本件訂正発明1の「第1の配列方向に並べて配置された」「第1の送信アンテナと前記第1の送信アンテナに隣接する第2の送信アンテナ」に対応するものは、それぞれ送信アンテナTx#1と送信アンテナTx#3になり、この2つのアンテナTx#1とTx#3の間隔はDe(0.5波長)となる一方で、送信アンテナTx#1に含まれるアンテナ素子と送信アンテナTx#3に含まれるアンテナ素子の上下方向に沿った間隔もDe(0.5波長)になる。 そして、甲2発明の「De」(0.5波長)が本件訂正発明1の「距離d」に相当するとしているから、このように考えると、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの、前記第1の配列方向における間隔が前記距離dより大きく」という構成が満たされなくなってしまう。 (エ)また、【図8】の紙面上の上下方向が本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当すると考えてみても、そもそも受信アンテナRx#1、Rx#2及びRx#3は、上下方向に並んでいないから、本件訂正発明1の「前記第1の配列方向に平行な第2の配列方向に並べて配置され」た「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナ」に対応する構成を観念することができず、「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの、前記第2の配列方向における間隔が前記距離dより大きい」という構成も満たされないことになってしまう。 (オ)すなわち、甲第2号証の【図8】を基に検討しても、本件訂正発明1の構成を得ることは困難であって、当業者といえども容易に想到し得たものであるとはいえない。 (カ)したがって、本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件訂正発明2~6について 本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1の構成を全て含むものであるから、上記(3)に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2~6は、甲第2号証に記載された発明ではなく、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人が提出した証拠とその理由の概要 (1)証拠 甲第1号証:特開2017-58359号公報 甲第2号証:特開2016-180720号公報 甲第3号証:特開2014-85317号公報 (2)理由の概要 申立人は、上記(1)の文書を証拠方法として、以下の申立理由1~6に示す理由により、請求項1~6に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。 申立理由1 本件特許発明1、2、4~6は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、4~6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものである。 申立理由2 本件特許発明1、2、6は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、2、6に係る特許は、同法29条1項の規定に違反してされたものである。 申立理由3 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 申立理由4 本件特許発明3は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 申立理由5 本件特許発明2、4、5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4、5に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 申立理由6 本件特許発明3は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 2 当審の判断 上記申立理由1~6のうち、申立理由2及び6については、甲第2号証を主引用例とした理由であるから、上記「第4 当審の判断」の「3 取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について」で説示したとおりである。 ここでは、甲第1号証を主引用例とする申立理由1、3~5について以下検討する。 (1)甲第1号証(特開2017-58359号公報) ア 甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。 「【0036】 [実施の形態1] [レーダ装置の構成] 図3は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成を示すブロック図である。 【0037】 レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、基準信号生成部300と、を有する。 【0038】 レーダ送信部100は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号に基づいて高周波(無線周波数:Radio Frequency)のレーダ信号(レーダ送信信号)を生成する。そして、レーダ送信部100は、複数の送信アンテナ106-1~106-Ntによって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を所定の送信周期にて送信する。 【0039】 レーダ受信部200は、ターゲット(図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1~202-Naを含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、基準信号生成部300から受け取るリファレンス信号を用いて、下記の処理動作を行うことで、レーダ送信部と同期した処理を行う。すなわち、レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、少なくともターゲットの有無検出、方向推定を行う。なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)又は人を含む。 【0040】 基準信号生成部300は、レーダ送信部100及びレーダ受信部200のそれぞれに接続されている。基準信号生成部300は、基準信号としてのリファレンス信号をレーダ送信部100及びレーダ受信部200に供給し、レーダ送信部100及びレーダ受信部200の処理を同期させる。」 「【0189】 [実施の形態2] レーダ装置は、アレーアンテナの指向性利得を高めるために、アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のアンテナ素子(サブアレー化したアンテナ素子)を含むサブアレーアンテナを用いることがある。」 「【0194】 なお、本実施の形態に係るレーダ装置は、実施の形態1に係るレーダ装置10と基本構成が共通するので、図3を援用して説明する。」 「【0233】 (実施の形態2のバリエーション2) 上記実施の形態では、垂直方向においてアレー素子をサブアレー化する場合について説明したが、水平方向においてアレー素子をサブアレー化してもよい。すなわち、図16は、レーダ装置10が水平方向のレーダ検知範囲を狭くでき、水平方向の最小素子間隔が2dHである場合、サブアレー化したアンテナ素子を図17Aに適用した一例である。図16では、2つのアレー素子を水平方向にスタック配置してサブアレー化することにより、水平方向の指向性を狭め、不要な方向への輻射を低減し、アレー素子利得を向上することができる。 【0234】 ただし、上述した垂直方向と同様に、サブアレーアンテナのアレー素子を水平方向にスタック配置することで、アレー素子のサイズが1波長程度に増加するため、アレーアンテナの配置上の制約が生じる。すなわち、レーダ装置10は、サブアレーアンテナ構成では、アレー配置水平方向の最小素子間隔が所定値以上となる制約を受ける。 【0235】 そこで、本バリエーションでは、水平方向においてサブアレーアンテナを用いる場合でも、広範囲に渡りグレーティングローブの発生を抑えた到来方向推定が可能であり、垂直/水平方向の高分解能化を実現するためのアンテナ配置について説明する。 【0236】 実施の形態1と同様、Nt個の送信アンテナ106及びNa個の受信アンテナ202の各々は、水平方向及び垂直方向において不等間隔に配置される。 【0237】 また、本実施の形態に係る送信アンテナ106及び受信アンテナ202は、水平方向(サブアレーアンテナが構成される方向)において、NTV本の送信アンテナ106の素子間隔と、NRV本の受信アンテナ202の素子間隔との間で、素子間隔の差が水平方向の素子間隔の基本単位dHとなる組み合わせが1つ以上含まれるように配置される。また、水平方向の素子間隔の基本単位dHは1λ未満(例えば0.5λ)に設定する。すなわち、送信アンテナ106及び受信アンテナ202は、以下の式(以下、条件A-3と呼ぶ)を満たす配置が少なくとも一つ含まれるように配置される。」 「【0250】 一例として、図17Aは、送信アンテナ106及び受信アンテナ202の配置例を示す。また、図17Bは、図17Aに示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アレーの配置を示す。 【0251】 ここでは、送信アンテナ106の個数Nt=4個とし、受信アンテナ202の個数Na=4個とする。また、4個の送信アンテナ106をTx#1~Tx#4で表し、4個の受信アンテナ202をRx#1~Rx#4で表す。 【0252】 図17Aにおいて、送信アンテナTx#1~Tx#4は、垂直方向に配置した3つのアンテナのうちの上端である送信アンテナTx#1を基点に、水平右方向に更に1つのアンテナを配置し(L字を+90°回転)、受信アンテナRx#1~Rx#4は、水平方向に配置した3つのアンテナのうちの中央である受信アンテナRx#2を基点に、垂直上方向に更に1つのアンテナを配置する。 【0253】 図17Bは、図17Aに示すアンテナ配置によって構成される仮想受信アレーの配置を示す。図17Bに示す仮想受信アレーの配置は以下のような特徴を有する。 【0254】 (1)水平方向 図17Aにおいて水平方向に素子間隔5dHによって配置された2つの送信アンテナTx#1,Tx#4と、水平方向に素子間隔4dH、2dHによって配置された3つの受信アンテナRx#1, Rx#2, Rx#3との水平位置関係から、図17Bに示す仮想受信アレーは、水平方向に素子間隔4dH、dH、dH、3dH、2dHによって直線上に配置された6素子の水平方向仮想直線アレーアンテナHLAを含む(図17Bに示す破線で囲まれた、VA#1, VA#5, VA#4, VA#9, VA#8, VA#12)。」 「【0258】 例えば、レーダ装置10は、dH=0.5λでは、水平方向±90°の範囲の広範囲に渡ってグレーティングローブの発生を抑えた到来方向推定ができる。(以下省略)」 「【0264】 例えば、レーダ装置10は、dV=0.5λでは、垂直方向±90°の範囲の広範囲に渡ってグレーティングローブの発生を抑えた到来方向推定ができる。(以下省略)」 「【図3】 」 「【図16】 」 「【図17A】 」 「【図17B】 」 イ 上記アにおいて摘記した記載内容及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「レーダ信号を複数の送信アンテナ106のそれぞれから送信するレーダ送信部100と、前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号を複数の受信アンテナ202を用いて受信し、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理するレーダ受信部200を具備したレーダ装置10において、(【0037】~【0040】、【0194】、【図3】) 送信・受信アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のサブアンテナ素子を含み、水平方向にスタック配置することによりサブアレー化されており、(【0189】、【0233】、【図16】) 送信アンテナ106及び受信アンテナ202は、水平方向(サブアレーアンテナが構成される方向)において、NTV本の送信アンテナ106の素子間隔と、NRV本の受信アンテナ202の素子間隔との間で、素子間隔の差が水平方向の素子間隔の基本単位dHとなる組み合わせが1つ以上含まれるように配置され、水平方向の素子間隔の基本単位dHは1λ未満(例えば0.5λ)に設定されており、(【0237】) 送信アンテナ106は、4個の送信アンテナTx#1~Tx#4を含む送信アレーアンテナであり、受信アンテナ202は、4個の受信アンテナRx#1~Rx#4を含む受信アレーアンテナであり、(【0038】、【0039】、【0251】) 送信アンテナTx#1~Tx#4は、垂直方向に配置した3つのアンテナのうちの上端である送信アンテナTx#1を基点に、水平右方向に更に1つのアンテナを配置したL字を+90°回転したパターンであり、受信アンテナRx#1~Rx#4は、水平方向に配置した3つのアンテナのうちの中央である受信アンテナRx#2を基点に、垂直上方向に更に1つのアンテナを配置したT字を180°回転したパターンであり、(【0252】、【図16】、【図17A】) 送信アンテナTx#1~Tx#3は、垂直方向に沿ってこの順に配置され、送信アンテナTx#1とTx#4は、水平方向に沿って配置され、Tx#1とTx#2の間隔は2dVであり、Tx#2とTx#3の間隔は4dVであり、Tx#1とTx#4の間隔は5dHであり、ただし、dH=0.5λ、dV=0.5λであり、 (【0258】、【0265】、【図16】、【図17A】) 受信アンテナRx#1~Rx#3は、水平方向に沿ってこの順に配置され、受信アンテナRx#2とRx#4は、垂直方向に沿って配置され、Rx#1とRx#2の間隔は4dHであり、Rx#2とRx#3の間隔は2dHであり、Rx#2とRx#4の間隔は5dVであり、 (【図16】、【図17A】) 仮想受信アレーの配置は、水平方向に素子間隔4dH、dH、dH、3dH、2dHによって直線上に配置された6素子VA#1, VA#5, VA#4, VA#9, VA#8, VA#12の水平方向仮想直線アレーアンテナHLAを含む、 (【0254】、【図17B】) レーダ装置10。」 (2)本件訂正発明1と甲1発明の対比・判断 ア 対比 (ア)甲1発明の「レーダ信号」は、本件訂正発明1の「送信信号」に相当し、甲1発明の「ターゲット」は、本件訂正発明1の「周辺の物体」に相当する。 また、甲1発明の「複数の送信アンテナ106」は、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナ」に相当する。 さらに、甲1発明の「送信アンテナ106は、4個の送信アンテナTx#1~Tx#4を含む送信アレーアンテナであり」、「送信」「アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のサブアンテナ素子を含み、水平方向にスタック配置することによりサブアレー化されて」いるから、送信側の「サブアンテナ素子」は、本件訂正発明1の「送信素子アンテナ」に相当し、送信側の「複数のサブアンテナ素子」の並ぶ方向である「水平方向」は、本件訂正発明1の「第1の方向」に相当し、送信側の「複数のサブアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各送信アンテナ」を「構成」する「第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターン」に相当する。 よって、甲1発明の「4個の送信アンテナTx#1~Tx#4を含む送信アレーアンテナ」である「送信アンテナ106」は、本件訂正発明1の「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナ」に相当する。 (イ)甲1発明の「前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号」に相当する。 また、甲1発明の「レーダ受信部200」は、「前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号を複数の受信アンテナ202を用いて受信し、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理する」ものであるから、甲1発明の「前記複数のレーダ信号がターゲットにおいて反射された複数の反射波信号」を「受信」する「複数の受信アンテナ202」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナ」に相当する。 さらに、甲1発明の「受信アンテナ202は、4個の受信アンテナRx#1~Rx#4を含む受信アレーアンテナであり」、「受信アレーアンテナを構成するアレー素子の各々が更に複数のサブアンテナ素子を含み、水平方向にスタック配置することによりサブアレー化されて」いるから、受信側の「サブアンテナ素子」は、本件訂正発明1の「受信素子アンテナ」に相当し、受信側の「複数のサブアンテナ素子」の並ぶ方向である「水平方向」は、本件訂正発明1の「前記第1の方向」に相当し、受信側の「複数のサブアンテナ素子」の組み合わせは、本件訂正発明1の「各受信アンテナ」を「構成」する「前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターン」に相当する。 よって、甲1発明の「4個の受信アンテナRx#1~Rx#4を含む受信アレーアンテナ」である「受信アンテナ202」は、本件訂正発明1の「前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナ」に相当する。 (ウ)甲1発明の「レーダ受信部200」は、「各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理する」ものであるから、本件訂正発明1の「前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部」に相当する構成を含むものである。 (エ)上記(ア)~(ウ)の検討内容を踏まえると、甲1発明の「レーダ装置10」は、本件訂正発明1の「レーダ装置」に相当する。 (オ)甲1発明の「水平方向の素子間隔の基本単位dH」は、本件訂正発明1の「前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離」である「距離d」に相当する。 (カ)甲1発明の「4個の送信アンテナTx#1~Tx#4」のうち、送信アンテナ「Tx#3」及び「Tx#2」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」及び「第2の送信アンテナ」に相当する。 また、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」の間隔「4dV」は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。 ここで、上記第4の「(3)本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断」の「ア 対比」の(カ)において検討したとおり、本件訂正発明1の「第1の配列方向」とは、複数の送信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるところ、甲1発明の「送信アンテナ106」は全体として4個の送信アンテナTx#1~Tx#4からなり、それらは「L字を+90°回転したパターン」の配置であるから、送信アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向であるか特定することができず、甲1発明において、本件訂正発明1の「第1の配列方向」に相当する方向を特定することはできない。 すなわち、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」が「垂直方向に配置」されていることは、せいぜい本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な」「方向に並べて配置され」る点で共通する。 よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナ」と「第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な」「方向に並べて配置され」ることで共通する。 (キ)甲1発明の「4個の受信アンテナRx#1~Rx#4」のうち、受信アンテナ「Rx#2」及び「Rx#4」は、それぞれ本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」及び「第2の受信アンテナ」に相当する。 また、甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」の間隔「5dV」は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「配置され」た「予め設定された間隔」に相当する。 ここで、上記第4の「(3)本件訂正発明1と甲2発明の対比・判断」の「ア 対比」の(キ)において検討したとおり、本件訂正発明1の「第2の配列方向」とは、複数の受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるところ、甲1発明の「受信アンテナ202」は全体として4個の受信アンテナRx#1~Rx#4からなり、それらは「T字を180°回転したパターン」の配置であるから、受信アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向であるか特定することができず、甲1発明において、本件訂正発明1の「第2の配列方向」に相当する方向を特定することはできない。 すなわち、甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」が「垂直方向に配置」されていることは、せいぜい本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直」な「方向に並べて配置され」る点で共通する。 よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナ」と「第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直」な「方向に並べて配置され」ることで共通する。 (ク)甲1発明の「水平方向仮想直線アレーアンテナHLA」は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナ」に相当する。 また、甲1発明の「水平方向仮想直線アレーアンテナHLA」では、「水平方向に素子間隔4dH、dH、dH、3dH、2dHによって直線上に配置された6素子」が配置されており、上記(オ)の検討内容を踏まえると、「素子間隔」が「dH」となる配置を含むことは、本件訂正発明1の「前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え」ることに相当する構成を含む。 (ケ)甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」は、それぞれが「サブアンテナ素子を含」むから、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」(本件訂正発明1の「第1の送信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Tx#3サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナ」に相当し、甲1発明の送信アンテナ「Tx#2」(本件訂正発明1の「第2の送信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Tx#2サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナ」に相当する。 そして、「Tx#2とTx#3の間隔は4dV」であるから、上記Tx#3サブ素子と上記Tx#2サブ素子の間隔も4dVに等しく、「dH=0.5λ、dV=0.5λ」であることを考慮すると、上記Tx#3サブ素子と上記Tx#2サブ素子の間隔は、「水平方向の素子間隔の基本単位dH」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの」「間隔が前記距離dより大き」いことに相当する。 (コ)甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」は、それぞれが「サブアンテナ素子を含」むから、甲1発明の受信アンテナ「Rx#2」(本件訂正発明1の「第1の受信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Rx#2サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナ」に相当し、甲1発明の受信アンテナ「Rx#4」(本件訂正発明1の「第2の受信アンテナ」に相当。)の「サブアンテナ素子」(以下「Rx#4サブ素子」という。)は、本件訂正発明1の「前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナ」に相当する。 そして、「Rx#2とRx#4の間隔は5dV」であるから、上記Rx#2サブ素子と上記Rx#4サブ素子の間隔も5dVに等しく、「dH=0.5λ、dV=0.5λ」であることを考慮すると、上記Rx#2サブ素子と上記Rx#4サブ素子の間隔は、「水平方向の素子間隔の基本単位dH」より大きいことは、明らかであり、このことは、本件訂正発明1の「前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの」「間隔が前記距離dより大きい」ことに相当する。 以上(ア)~(コ)の対比内容をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の一致点Bにおいて一致し、以下の相違点B1及びB2において相違する。 [一致点B] 「送信信号を周辺の物体に向けて放射する複数の送信アンテナであって、各送信アンテナは第1の方向に一列に並んだ複数の送信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の送信アンテナと、 前記物体で反射された前記送信信号を受信して、受信信号として出力する複数の受信アンテナであって、各受信アンテナは前記第1の方向に一列に並んだ複数の受信素子アンテナからなるパターンで構成される、複数の受信アンテナと、 前記複数の受信アンテナのそれぞれから出力された前記受信信号を処理する信号処理部と を備えたレーダ装置であって、 前記レーダ装置に要求される視野範囲に基づいて決定される距離を距離dとしたとき、 前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとを含み、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記送信信号の放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な方向に並べて配置され、 前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが、予め設定された間隔で、前記放射方向に対して垂直、且つ前記第1の方向に対して垂直な方向に並べて配置され、 前記複数の送信アンテナおよび前記複数の受信アンテナによって形成される仮想受信アンテナは、前記仮想受信アンテナのアンテナ配置の中に、アンテナ間隔が前記距離d以下となる部分を少なくとも1か所備え、 前記第1の送信アンテナを構成する第1の送信素子アンテナと、前記第2の送信アンテナを構成する第2の送信素子アンテナとの間隔が前記距離dより大きく、 前記第1の受信アンテナを構成する第1の受信素子アンテナと、前記第2の受信アンテナを構成する第2の受信素子アンテナとの間隔が前記距離dより大きい、 レーダ装置。」 [相違点B1] 本件訂正発明1では、「第1の配列方向」(送信アンテナ全体の配列によって規定される方向)に「前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとが」「並べて配置され」、「第2の配列方向」(受信アンテナ全体の配列によって規定される方向)に「前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとが」「並べて配置され」ているのに対して、甲1発明では、送信アンテナ(L字パターン)、受信アンテナ(T字パターン)のいずれについても、アンテナ全体の配列によって規定される方向を特定することはできず、甲1発明の送信アンテナ「Tx#3」と「Tx#2」、受信アンテナ「Rx#2」と「Rx#4」が、アンテナ全体の配列によって規定される方向に並べて配置されているとはいえない点。 [相違点B2] 本件訂正発明1では、「第2の送信アンテナ」は「第1の送信アンテナに隣接する」ものであり、「第2の受信アンテナ」は「第1の受信アンテナに隣接する」ものであるのに対して、甲1発明では、「送信アンテナTx#1~Tx#3は、垂直方向に沿ってこの順に配置され、送信アンテナTx#1とTx#4は、水平方向に沿って配置され、Tx#1とTx#2の間隔は2dVであり、Tx#2とTx#3の間隔は4dVであり、Tx#1とTx#4の間隔は5dHであり」、「受信アンテナRx#1~Rx#3は、水平方向に沿ってこの順に配置され、受信アンテナRx#2とRx#4は、垂直方向に沿って配置され、Rx#1とRx#2の間隔は4dHであり、Rx#2とRx#3の間隔は2dHであり、Rx#2とRx#4の間隔は5dVであり」、4つの送信アンテナの中でTx#2とTx#3の間隔は最短のものではなく、4つの受信アンテナの中でRx#2とRx#4の間隔は最短のものではないから、送信アンテナTx#2とTx#3が「隣接する」とはいえないし、受信アンテナRx#2とRx#4が「隣接する」ともいえない点。 イ 判断 (ア)上記相違点B1について検討する。 甲1発明の「送信アンテナTx#1~Tx#4」は、「垂直方向に配置した3つのアンテナのうちの上端である送信アンテナTx#1を基点に、水平右方向に更に1つのアンテナを配置したL字を+90°回転したパターンであ」るから、アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向にあるか特定することはできず、また、水平右方向に飛び地のように配置された送信アンテナTx#4を、3つのアンテナ送信アンテナTx#1~Tx#3が配置される直線上に存在するように再配置することは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 (イ)同様に、甲1発明の「受信アンテナRx#1~Rx#4」は、「水平方向に配置した3つのアンテナのうちの中央である受信アンテナRx#2を基点に、垂直上方向に更に1つのアンテナを配置したT字型を180°回転したパターン」であるから、アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向にあるか特定することはできず、また、垂直上方向に飛び地のように配置された送信アンテナRx#4を、3つのアンテナ受信アンテナRx#1~Rx#3が配置される直線上に存在するように再配置することは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。 (ウ)仮に、甲1発明において、アンテナ全体の配列によって規定される方向が、最も多くのアンテナが並ぶ方向で特定可能であると考えた場合、送信アンテナについては、4つの送信アンテナTx#1~Tx#4のうち、3つのアンテナ送信アンテナTx#1~Tx#3が並ぶ垂直方向が、送信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第1の配列方向」に相当する方向)であると特定され、受信アンテナについては、4つの受信アンテナRx#1~Rx#4のうち、3つのアンテナ受信アンテナRx#1~Rx#3が並ぶ水平方向が、受信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第2の配列方向」に相当する方向)であると特定される。 しかしながら、このように考えると、送信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第1の配列方向」に相当する方向)と受信アンテナ全体の配列によって規定される方向(「第2の配列方向」に相当する方向)は垂直になり、平行にはならないから、本件訂正発明1の「第1の配列方向」と「第2の配列方向」が「平行」であるという構成が満たされないことになる。 そうすると、このように考えたとしても、上記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成を得ることは困難であることに変わりはない。 (エ)そうすると、いずれにしても、甲1発明に基づいて、上記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成とすることは容易であるとはいえない。 また、甲1発明における送信アンテナや受信アンテナの配置を変更して、送信アンテナや受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を特定可能にする契機は見いだせないから、甲第2号証や甲第3号証の開示内容を如何に参照しても、上記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成とすることが容易であるとはいえない。 したがって、相違点B2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないし、甲第1~3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 申立人の主張 (1)申立人は、令和2年12月25日に提出した意見書において、次の主張をしている。 「甲第2号証の段落[0159]には、送受信アレーアンテナ配置における(送受信)アンテナを構成するアンテナ素子の配置方向を、水平方向から垂直方向に入れ替えてよいことが記載されている。 つまり、甲第2号証では、図6に示す各送受信アンテナ配置において、水平方向に2つのアンテナ素子を配置して、横長のサブアレー素子を構成しているが、配置方向を水平方向から垂直方向に入れ替えることにより、垂直方向に2つのアンテナ素子を配置して、縦長のサブアレー素子を構成してもよいことは明らかである。このため、甲第2号証には、訂正後の請求項1に係る発明の特徴1及び特徴2の「第1の方向に一列に並んだ」複数の(送受信)素子アンテナの構成についても開示されている。」 しかしながら、甲第2号証の上記段落【0159】には、「また、上記実施の形態では、アンテナ素子のサイズが、水平方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔De以下である場合について説明したが、アンテナ素子のサイズは、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、水平方向において所望のアンテナ素子間隔De以下であってもよい。この場合、上述した送受信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置について、水平方向と垂直方向とを入れ替えればよい。」と記載されているから、甲第2号証の【図6】において、「送受信アレーアンテナにおけるサブアレー素子の配置について、水平方向と垂直方向とを入れ替え」る場合には、「アンテナ素子のサイズは、垂直方向において所望のアンテナ素子間隔Deより大きく、水平方向において所望のアンテナ素子間隔De以下」とするのであり、その場合には、「アンテナ素子の配置」は「垂直方向」に並んだものになるから、このような水平方向と垂直方向の入れ替えを行ったとしても、本件訂正発明1のような、送信、受信のいずれの場合でも、素子アンテナの並ぶ方向とアンテナの並ぶ方向が垂直であるという構成は満たされず、上記相違点Aが解消されることはない。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (2)申立人は、また、上記意見書において、次の主張もしている。 「甲第1号証の図16、図17Bにおける水平方向が訂正後の請求項1の「第1方向」に該当し、図16、図17Bの垂直方向が「第1方向に対して垂直な第1/第2の配列方向」に該当する。」 「甲第1号証の図15B、図15Cにおける垂直方向が訂正後の請求項1の「第1方向」に該当し、図15B、図15Cの水平方向が「第1方向に対して垂直な第1/第2の配列方向」に該当する。」 しかしながら、上記2の「(2)本件訂正発明1と甲1発明の対比・判断」の「ア 対比」の(カ)及び(キ)において説示したように、本件訂正発明1の「第1/第2の配列方向」とは、複数の送信/受信アンテナ全体の配列によって規定される方向を意味すると解すべきものであるところ、甲第1号証の上記図面の開示内容では、送信/受信アンテナ全体の配列によって規定される方向がいずれの方向であるか特定することができないから、上記図面における垂直方向や水平方向が、本件訂正発明1の「第1/第2の配列方向」に相当するとはいえない。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 4 本件訂正発明2~6について 本件訂正発明2~6は、本件訂正発明1の構成を全て含むものであるから、上記2及び3に示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2~6は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700137

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