特許異議申立
2022-700761
カバー要素を備えるセンサ装置、及びカバー要素を製造するための方法
- 審判番号
- 2022-700761
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-558937
- 登録番号
- 7015942
- 請求日
- 2022年08月03日
- 審決日
- 2023年03月06日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ベバスト エスエー
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】鈴木 宏和
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 後藤 慎平
- 分類
- P1651.113-ZC (G01S) / P1651.121-ZC (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7015942号発明「カバー要素を備えるセンサ装置、及びカバー要素を製造するための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7015942号の請求項1~12、15に係る特許を取り消す。
特許第7015942号の請求項13及び14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7015942号(以下「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)4月23日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 2018年4月24日 ドイツ)、令和4年1月26日にその特許権の設定登録がされ、同年2月3日に特許掲載公報が発行された。
本件特許の請求項1~15に係る特許に対して、令和4年8月3日に特許異議申立人鈴木宏和(以下、単に「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。
当審において、令和4年10月3日付けで、本件特許の請求項1~12、15に係る特許に対して取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
第2 本件発明の認定
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
自動車のセンサ装置であって、
前記センサ装置は、
測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子(20)と、
前記測定方向における前記センサ素子(20)の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子(20)に面する内側面を有するカバー要素(18)と、
導体トラック(34)を含む加熱手段とを備え、
前記導体トラック(34)は、前記カバー要素(18)の射出成形中に該カバー要素(18)の前記内側面に形成されたフィルム(32)に設けられ、
前記フィルム(32)と前記導体トラック(34)とにより、射出成形されたカバー要素(18)のインサートが形成され、
前記導体トラック(34)は、前記フィルム(32)の前記センサ素子(20)とは反対側の面に設けられており、
前記フィルム(32)には、前記導体トラック(34)とは反対側の面に反射防止コーティング(36)が施されている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記反射防止コーティング(36)は、特定の波長スペクトル外の波長を有する電磁放射を反射する
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記反射防止コーティング(36)には、表面構造が設けられている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)の前記プラスチック部品は、ポリカーボネート樹脂によって作られている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記フィルム(32)は、ポリカーボネート樹脂を含有する
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)の外側面には、保護コーティング(30)が施されている
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記保護コーティング(30)は、前記カバー要素のプラスチック材料よりも屈折率が小さい
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項8】
自動車のセンサ装置であって、
前記センサ装置は、
測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子(20)と、
前記測定方向における前記センサ素子(20)の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子(20)に面する内側面を有するカバー要素(18)と、
導体トラック(34)を含む加熱手段とを備え、
前記導体トラック(34)は、前記カバー要素(18)の射出成形中に該カバー要素(18)の前記内側面に形成されたフィルム(32)に設けられ、
前記フィルム(32)と前記導体トラック(34)とにより、射出成形されたカバー要素(18)のインサートが形成され、
前記導体トラック(34)は、前記フィルム(32)の前記センサ素子(20)とは反対側の面に設けられており、
前記カバー要素(18)は、車両のルーフの外皮要素である
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)は、車両前部又は車両後部の外皮要素である
ことを特徴とする自動車のセンサ装置。
【請求項10】
自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)の製造方法であって、
第1面と第2面とを有するフィルム(32)を供給する工程と、
前記フィルム(32)の第1面に導体トラック(34)を設ける工程と、
射出成形金型(58)の金型キャビティ(56)に、前記導体トラック(34)が設けられた前記フィルム(32)を導入する工程と、
前記射出成形金型(58)の前記金型キャビティ(56)にプラスチック材料を充填する工程と、
前記金型キャビティ(56)内に充填された前記プラスチック材料を硬化させて、前記フィルム(32)が表面に設けられた前記カバー要素(18)を形成する工程と、
前記フィルム(32)を表面に有する前記カバー要素(18)を脱型する工程と、を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記フィルム(32)の第2面に、反射防止コーティング(36)を施す工程を備えることを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記反射防止コーティング(36)を構造化する、特にプラズマエッチングする工程を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、
前記反射防止コーティング(36)を施す工程は、
前記フィルム(32)が第1ローラ(38)から巻き出される工程と、
前記第1ローラ(38)から巻き出された後、第2ローラ(42)に巻き取られる工程と、を含む
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記導体トラック(34)を設ける工程は、
前記フィルム(32)が前記第2ローラ(42)から巻き出される工程を含むことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項において、
前記カバー要素(18)を脱型する工程の後に、
前記カバー要素(18)の前記フィルム(32)とは反対側の面に保護コーティング(30)を施す工程を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)を製造するための方法。」
第3 取消理由の概要
当審において、本件発明1~12、15に係る特許に対して、令和4年10月3日付けで特許権者に通知した取消理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
本件発明1~12、15は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12、15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1~12、15に係る特許は、取り消されるべきものである。
記
甲1号証:特表2015-506459号公報
甲2号証:特開2018-31888号公報
甲5号証:特開2016-150624号公報
引用文献1:特開2013-187342号公報
なお、引用文献1は、当審における職権調査により発見したものである。
第4 当審の判断
1 各甲号証及び引用文献1に記載された事項等の認定
(1) 甲1号証に記載された事項、甲1号証に記載された発明の認定及び甲1号証における示唆事項の認定
ア 甲1号証に記載された事項
甲1号証(特表2015-506459号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものである。
(ア) 請求項1
「【請求項1】
少なくとも1つの放射ビームを放射するための少なくとも1つの光学放射体と受信ビームを受けるための少なくとも1つの光学受信体とが内部に配置されるハウジング(3)を有する光学測定装置であって、
カバーディスク(5)が前記ハウジング(3)を終端させるとともに放射窓(10)と受信窓(7)とを形成し、
前記少なくとも1つの放射ビームが前記放射窓(10)を通じて前記ハウジング(3)から出射し、
前記受信体は、周囲環境から反射される前記放射ビームを、前記受信窓(7)を通る受信ビームとして受け、
前記カバーディスク(5)が加熱アセンブリ(20)を有し、
前記加熱アセンブリ(20)が本質的に前記受信窓(7)の領域に配置され、前記放射窓(10)の領域が除外されることを特徴とする光学測定装置。」
(イ) 段落【0001】~【0004】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載されるタイプの光学測定装置、および、請求項9に記載されるタイプのカバーディスクを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型光学測定装置、いわゆるレーザスキャナーまたはライダー(光検出および測距)は、監視領域内の物体および/または障害物を認識するための車両用の従来技術から知られる。これらの光学測定装置は、光パルスランタイム方法を使用して監視領域内で認識される物体および/または障害物までの距離を決定する。
【0003】
光学測定装置は、少なくとも1つの放射ビームを放射するための少なくとも1つの光学放射体と受信ビームを受信するための少なくとも1つの光学受信体とが内部に配置されるハウジングを備える。受信体は、物体および/または障害物で反射されるビームを受けて、物体および/または障害物までの距離を光パルスランタイムから確定する。ハウジングは、放射窓および受信窓を形成するカバーディスクによって終端され、この場合、少なくとも1つの放射ビームが放射窓を通じてハウジングから出射し、また、受信体は、周囲環境から反射される放射ビームを受信ビームとして受信窓を通じて受ける。
【0004】
これらの光学測定装置は、一般に、車両のラジエータグリルの背後に設置されるとともに、雪、氷、および/または、水などの天候の影響に晒される。天候の影響からの堆積物を除去するために、カバーディスクは、膜に適用される少なくとも1つの電気加熱導体を介して間接的に加熱される。少なくとも1つの電気加熱導体とカバーディスクとの接触を確保するようになっている接着層が膜に適用される。この場合、送られる加熱電力は、接着層の機械的な接触品質によって決まる。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、放射される放射ビームがカバーディスクを介して測定装置のハウジングから出るときに放射ビームが加熱アセンブリによって歪められないように請求項1の前文に記載されるタイプの光学測定装置および請求項9の前文に記載されるタイプのカバーディスクの製造方法を改良することである。放射される放射ビームを歪ませることなく加熱できるカバーディスクは、前記製造方法によって作成できる。」
(ウ) 段落【0012】~【0015】
「【0012】
また、光学測定装置のハウジングのカバーディスクのための製造方法が提案され、このカバーディスクは、放射窓と、受信窓と、少なくとも1つの電気加熱導体を有する加熱アセンブリとを備える。本発明によれば、加熱アセンブリは、該加熱アセンブリの少なくとも1つの電気加熱導体が射出成形工程後に受信窓の領域内に配置されて放射窓の領域が加熱アセンブリの少なくとも1つの電気加熱導体によって除外されるように、金型内に置かれる。
【0013】
金型は、以下、所定形状を成す射出成形金型として理解され、この金型を用いてカバーディスクが作成される。この場合、射出成形金型には少なくとも1つのプラスチック材料が充填され、該プラスチック材料は射出成形工程後に硬化される。
【0014】
本発明に係る光学測定装置の有利な実施形態において、加熱アセンブリは、弾性キャリアに適用される少なくとも1つの電気加熱導体を有することができる。少なくとも1つの電気加熱導体を有する弾性キャリアは、好適には、受信窓の製造中、金型内で射出成形工程中に受信窓に接続され得る。したがって、受信窓上への加熱アセンブリの取り付けが省かれ、それにより、処理ステップの削減および取り扱いの簡素化を有利に達成することができる。また、そのような弾性キャリアは、それらをカバーディスクの任意の形状に容易に適合させることができるように、非常に薄く具現化され得る。弾性キャリアは好ましくは膜として具現化され、該膜上に少なくとも1つの電気加熱導体がメタライゼーションとして適用される。これは、好適には、少なくとも1つの電気加熱導体を膜に適用するための様々な方法、例えば蒸着またはスクリーン印刷法を可能にする。また、そのような膜は、好適には、安定しているにもかかわらず弾力性があって変形可能であり、したがって、カバーディスクのほぼ任意の形状に適合させることができる。
【0015】
本発明に係る光学測定装置の更なる有利な実施形態において、加熱アセンブリは、受信窓の外面上及び/または内面上に配置され、および/または、受信窓に組み込まれ得る。受信窓の外面に取り付ける場合には、所望の加熱効果を得るために電力を殆ど必要とせず、有益である。この場合、少なくとも1つの電気加熱導体は、好適には、弾性キャリアと受信窓とによって外的影響から保護される。受信窓の内面に取り付ける場合、加熱アセンブリは、好適には、光学測定装置のハウジングによって外的影響から保護される。加熱アセンブリを受信窓に組み込む場合には、受信窓による良好な熱的取り付けおよび良好な保護も得ることができ、有益である。」
(エ) 段落【0020】
「【0020】
光学測定装置のハウジングのためのカバーディスクを製造するための本発明に係る方法の更に有利な実施形態では、射出成形工程中、加熱アセンブリを受信窓の外面および/または内面に接続することができおよび/または受信窓に組み込むことができる。これは、好適には、加熱アセンブリのバックインジェクション成形および/またはオーバーモールドおよび/または押し出しコーティングによって実施され得る。また、例えば加熱ワイヤとして具現化され得る電気加熱導体のみを備える加熱アセンブリを実施可能である。これらの加熱ワイヤを受信窓に直接に組み込むことができ、その場合、加熱ワイヤは、ディスク材料を使用してプレインジェクション法で埋め込まれて、所望の形状および/または位置へと押し込まれる。その後、予備成形部品として具現化される加熱アセンブリが射出成形金型内に置かれるとともに、最終射出成形工程において光学測定装置のハウジングのためのカバーディスクが仕上げられる。」
(オ) 段落【0023】~【0031】
「【0023】
図1から明らかなように、光学測定装置1はハウジング3とカバーディスク5とを備え、カバーディスク5は、ハウジングを終端させるとともに、放射窓10と受信窓7とを形成する。放射ビーム(図示せず)、例えばパルスレーザ光が放射窓10を通じて放射される。監視領域内の物体により反射されるレーザ光(図に示されない)が受信窓7を通じて受信ビームとして受信される。監視領域内で認識される物体または障害物までの距離は、光パルスランタイム方法にしたがって、放射ビームの放射と受信ビームの受信との間で測定されるランタイムによって計算される。」
【0024】
ハウジング3は電気端子9を更に有し、この電気端子9を介して測定装置1が他のモジュールに接続される。
【0025】
図2および図3から更に明らかなように、カバーディスク5は加熱アセンブリ20を有する。この加熱アセンブリ20を介して、天候関連および/または周囲環境関連の汚染物質、例えば、雪および/または氷および/または水がカバーディスク5の表面から除去される。
【0026】
本発明によれば、加熱アセンブリ20が本質的に受信窓7の領域に配置される。放射窓10の領域は除外される。加熱アセンブリ20が放射窓10の領域に配置されないため、放射ビームの歪みおよび/または反射が生じない。したがって、特に、放射ビームの断面を正確に規定できる。
【0027】
図2および図3から更に明らかなように、加熱アセンブリ20は、弾性キャリア22に適用される少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2を有する。弾性キャリア22は、図示の典型的な実施形態では、膜として具現化され、該膜上に少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2がメタライゼーションとして適用される。
【0028】
あるいは、少なくとも1つの加熱導体24,24.1,24.2は、同様に弾性キャリア22に適用されあるいは受信窓7に直接組み込まれ得る加熱ワイヤとして具現化することもできる。
【0029】
図2および図3から更に明らかなように、加熱アセンブリ20は、本質的に、受信窓7の内面5.2上に配置される。受信窓7の外面5.1上の加熱アセンブリ20の配置も考えられる。受信窓7の内面5.1上および外面5.2上にそれぞれ1つずつ加熱アセンブリ20を配置することもできる。この場合には、金属化層が受信窓7およびキャリア膜22の両方によって保護されるように受信窓7に直接に適用されることが確保されなければならない。
【0030】
更なる典型的な実施形態(図示せず)では、更なる代案として、加熱アセンブリ20を受信窓7に組み込むことができる。
【0031】
図2および図3から更に明らかなように、電気加熱アセンブリ20は、カバーディスク5の背面のほぼ全体を覆い、この場合、放射窓10の領域だけが除外される。放射窓10は受信窓7と比べて非常に細いように具現化されるため、水平に延びる加熱導体24が放射窓10の上縁部および下縁部のそれぞれに配置されるとともに、垂直に延びる加熱導体24.1,24.2が放射窓10の左縁部および右縁部のそれぞれに配置され、それにより、放射窓10は、加熱アセンブリ20の加熱導体24,24.1,24.2によって取り囲まれて“間接的に”加熱される。」
(カ) 段落【0042】
「【0042】
本発明に係る光学測定装置の実施形態および光学測定装置のハウジングのための本発明に係る方法によって製造されるカバーディスクの実施形態は、特に、自動車のラジエータグリルに取り付けるのに適する。天候関連の汚染物質、例えば、氷および/または雪を加熱装置によって受信窓から除去することができる。この場合、放射窓の領域は除外されたままであり、そのため、加熱装置による放射ビームの歪みが生じ得ない。」
(キ) 図1~3
「【図1】
[図:0001400459000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001400459000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001400459000003.jpg]
」
イ 甲1号証に記載された発明の認定
【0002】の「光パルスランタイム方法を使用して監視領域内で認識される物体および/または障害物までの距離を決定する」及び【0004】の「車両のラジエータグリルの背後に設置される」との記載は、背景技術に関するものであるが、【発明の概要】以降に記載されたものも当該技術事項を前提としていると認められる。
上記の点及び前記アにおいて摘記した事項を総合すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲1発明>
「少なくとも1つの放射ビームを放射するための少なくとも1つの光学放射体と受信ビームを受けるための少なくとも1つの光学受信体とが内部に配置されるハウジング3を有する光学測定装置であって、
カバーディスク5がハウジング3を終端させるとともに放射窓10と受信窓7とを形成し、
少なくとも1つの放射ビームが放射窓10を通じてハウジング3から出射し、
受信体は、周囲環境から反射される放射ビームを、受信窓7を通る受信ビームとして受け、
カバーディスク5が加熱アセンブリ20を有し、(【請求項1】)
自動車のラジエータグリルに取り付けるのに適するものであり、(【0042】)
車両のラジエータグリルの背後に設置されるものであり、(【0004】)
光パルスランタイム方法を使用して監視領域内で認識される物体及び/又は障害物までの距離を決定するものであり、(【0002】)
放射ビーム、例えばパルスレーザ光が放射窓10を通じて放射され、監視領域内の物体により反射されるレーザ光が受信窓7を通じて受信ビームとして受信され、監視領域内で認識される物体又は障害物までの距離は、光パルスランタイム方法にしたがって、放射ビームの放射と受信ビームの受信との間で測定されるランタイムによって計算され、(【0023】)
加熱アセンブリ20は、弾性キャリア22に適用される少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2を有し、弾性キャリア22は、膜として具現化され、該膜上に少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2がメタライゼーションとして適用され、(【0027】)
加熱アセンブリ20は、本質的に、受信窓7の内面5.2上に配置され、(【0029】)
電気加熱アセンブリ20は、カバーディスク5の背面のほぼ全体を覆い、(【0031】)
カバーディスクは、射出成形金型に少なくとも1つのプラスチック材料が充填されて作成され、(【0013】)
少なくとも1つの電気加熱導体を有する弾性キャリアは、受信窓の製造中、金型内で射出成形工程中に受信窓に接続され、(【0014】)
加熱アセンブリのバックインジェクション成形によって、射出成形工程中、加熱アセンブリを受信窓の内面に接続することが実施できる(【0020】)
光学測定装置。」
ウ 甲1号証における示唆事項の認定
前記アにおいて摘記したとおり、甲1号証の段落【0015】には
「受信窓の外面に取り付ける場合には、所望の加熱効果を得るために電力を殆ど必要とせず、有益である。この場合、少なくとも1つの電気加熱導体は、好適には、弾性キャリアと受信窓とによって外的影響から保護される。」
と記載され、段落【0029】には
「受信窓7の内面5.1上および外面5.2上にそれぞれ1つずつ加熱アセンブリ20を配置することもできる。この場合には、金属化層が受信窓7およびキャリア膜22の両方によって保護されるように受信窓7に直接に適用されることが確保されなければならない。」
と記載されているから、甲1号証には、次の事項が示唆されていると認められる。
なお、上記記載中の「内面5.1上および外面5.2上」が、「外面5.1上および内面5.2上」の誤記であることは、図2及び図3より明らかである。
<甲1号証における示唆事項>
「電気加熱導体を弾性キャリアと受信窓によって保護すること。」
(2) 甲2号証に記載された事項及び周知技術1の認定
ア 甲2号証に記載された事項
甲2号証(特開2018-31888号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものである。
(ア) 段落【0001】~【0002】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線センサから送信される近赤外線の送信方向の前方に配置される近赤外線センサ用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の分野では、近赤外線センサから近赤外線を車両前方へ向けて送信し、先行車両、歩行者等を含む前方障害物に当たって反射された近赤外線を受信することで、前方障害物との距離や相対速度を検出する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。」
(イ) 段落【0023】~【0029】
「【0023】
(第1実施形態)
以下、近赤外線センサ用カバーの第1実施形態について、図1を参照して説明する。
車両10の前部であって、車幅方向両側部には、近赤外線センサ11がそれぞれ取付けられている。該当する取付け箇所としては、例えば、フロントロアグリルの車幅方向両側部、フロントバンパの車幅方向両側部、一対のフォグランプのそれぞれの近傍等が挙げられる。
【0024】
各近赤外線センサ11は、近赤外線レーダ装置の一部を構成する部品であり、近赤外線IR1を車両10の前方へ向けて送信し、かつ先行車両、歩行者等を含む前方障害物に当たって反射された近赤外線IR2を受信することで、前方障害物との距離や相対速度を検出する。検出結果は、衝突被害軽減制御、誤発進抑制制御等に用いられる。衝突被害軽減制御は、車両10と前方障害物との衝突の可能性があると判断された場合に、ブレーキを作動させることで、衝突による被害を軽減するための制御である。誤発進抑制制御は、車両10の停車中に前方障害物が存在する状況において、アクセルペダルが一定以上踏み込まれた場合に、エンジンの出力を抑制して車両10の急発進を抑制するための制御である。
【0025】
赤外線は、電磁波の一種であり、可視光の波長(0.36μm~0.83μm)よりも長い波長を有する。近赤外線IR1,IR2は、赤外線の中で最も短い波長(0.83μm~3μm)を有している。
【0026】
上記近赤外線レーダ装置と類似した機能を有するものとして、車両10の前方を走行する先行車両との車間距離を検出するミリ波レーダ装置がある。ミリ波レーダ装置は、車両10の前方の所定の角度範囲へ向けてミリ波を発し、送信波と受信波との時間差や受信波の強度等から、先行車両との車間距離や相対速度を検出する。
【0027】
各近赤外線レーダ装置における近赤外線センサ11は、上記ミリ波レーダ装置よりも広い角度範囲へ向けて近赤外線IR1を発する。また、近赤外線センサ11はミリ波レーダよりも近い距離離れた前方障害物を検出対象とする。
【0028】
車両10において、各近赤外線センサ11から送信される近赤外線IR1の送信方向の前方近傍には、板状をなす近赤外線センサ用カバー(以下「カバー20A」という)が配置されていて、これが、車両10におけるラジエータグリル、リーンホースメント等の強度部材に取付けられている。近赤外線センサ11毎のカバー20Aは共通の構成を有している。
【0029】
各カバー20Aの厚み方向における少なくとも主要部は、カバー本体21によって構成されている。第1実施形態では、各カバー20Aの厚み方向における全体が、カバー本体21によって構成されている。各カバー本体21は、透明な樹脂材料、例えば、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、COP(シクロオレフィンポリマー)等を主成分とした材着樹脂材料によって形成されている。材着樹脂材料は、顔料等の着色材を上記樹脂材料に混合、あるいは光輝材を着色材とともに樹脂材料に混合することにより、樹脂自体を着色した材料である。こうして構成された各カバー本体21の全体は有色半透明をなしている。各カバー本体21における近赤外線IR1,IR2の光線透過率は80%以上であり、かつ可視光の光線透過率は70%以下である。」
(ウ) 段落【0055】~【0057】
「【0055】
(第5実施形態)
次に、近赤外線センサ用カバーの第5実施形態について、図5を参照して説明する。
第5実施形態の各近赤外線センサ用カバー(以下「カバー20E」という)は、第1実施形態の構成に加え、各カバー本体21の裏面23に形成され、かつ透明な薄膜からなる反射抑制層35を備えている。各反射抑制層35は、各カバー本体21の形成材料(PC、PMMA、COP等)よりも屈折率の低い材料、例えば、フッ化マグネシウム等が用いられて、真空蒸着、スパッタリング、WETコーティング等が行なわれることによって形成されている。各反射抑制層35の厚みは、各カバー本体21の裏面23で反射される近赤外線IR1Aと、反射抑制層35の裏面で反射される近赤外線IR1Bとが互いに逆位相となる大きさに設定されている。
【0056】
そして、各カバー本体21の裏面23に上記反射抑制層35を積層してなる各カバー20Eにおける近赤外線IR1,IR2の光線透過率は80%以上であり、かつ可視光の光線透過率は70%以下である。
【0057】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第5実施形態によると、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。そのほかにも、第5実施形態によれば、各近赤外線センサ11から送信された近赤外線IR1の多くは、各カバー20Eを透過するが、一部は、各カバー本体21の裏面23及び反射抑制層35の裏面でそれぞれ反射される。この際、カバー本体21の裏面23で反射された近赤外線IR1Aは反射抑制層35を透過し、反射抑制層35の裏面で反射された近赤外線IR1Bとの間に位相のずれを生ずる。近赤外線IR1Aと近赤外線IR1Bとが互いに逆位相となり、両近赤外線IR1A,IR1Bが干渉しあって打ち消される。このようにして、各カバー20Eの裏面側での近赤外線IR1の反射が低減される。反射が原因で、各カバー20Eを透過する近赤外線IR1の量が少なくなる(損失する)のを抑制することができる。各近赤外線センサ11から送信される近赤外線IR1に対し、同近赤外線センサ11に戻ってくる近赤外線IR2の度合いを高め、各近赤外線センサ11に検出機能を適正に発揮させることができる。」
(エ) 段落【0080】~【0085】
「【0080】
<第4実施形態について>
・各加熱層34が、各カバー本体21の表面22に代えて裏面23に積層されてもよい。ただし、加熱層34が各カバー20Dの表面から遠ざかるため、その分、加熱層34の発した熱が、そのカバー20Dの表面に付着した雪に伝達されにくくなる。
【0081】
・各加熱層34として、樹脂シートと、その樹脂シート上に形成された線状のヒータとを備えるものが用いられてもよい。樹脂シートとしては、例えば、PC等の透明な樹脂材料によって形成されたものが用いられる。また、線状のヒータとしては、例えば、ニクロム線、カーボン発熱体、銀ペースト等を印刷することにより形成されたものが用いられる。
【0082】
このヒータは、カバー20Dのうち、送信及び反射された近赤外線IR1,IR2の透過領域よりも外側の部分に設けられることが望ましい。こうすることで、ヒータが近赤外線IR1,IR2の透過を妨げるのを抑制することができる。
【0083】
なお、ヒータが発熱すると、その熱は、各カバー20Dにおいてヒータによって囲まれた透過領域にも伝わる。従って、各カバー20Dに雪が付着しても、その雪を、ヒータから伝わる熱によって溶かすことができる。
【0084】
なお、上記ヒータは、樹脂シートの一部としてではなく、単体で配置されてもよい。
<第5実施形態について>
・各反射抑制層35が、各カバー本体21の裏面23に代えて表面22に形成されてもよい。こうすることで、各カバー20Eの表面での近赤外線IR2の反射が抑制される。カバー20Eを透過して近赤外線センサ11に戻ってくる近赤外線IR2が多くなる。そのため、各近赤外線センサ11に検出機能をより適正に発揮させることができる。
【0085】
また、各反射抑制層35が、各カバー本体21の表面22及び裏面23の両者に形成されてもよい。こうすることで、各カバー20Eの表面及び裏面での近赤外線IR1,IR2の反射をともに抑制することができる。」
(オ) 段落【0092】~【0093】
「【0092】
・各カバー20A~20Gの最表部を構成する部材の表面に、その部材よりも硬度の高いハードコート層が積層されてもよい。ハードコート層は、上記部材の表面に、樹脂に対する公知の表面処理剤を塗布することにより形成される。表面処理剤としては、例えば、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等の有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機無機ハイブリッド系ハードコート剤等が挙げられる。
【0093】
こうすることで、カバー20A~20Gの表面に傷が付くのを抑制することができる。また、太陽光、風雨、温度変化等が原因で、各カバー20A~20Gが変質したり劣化したりするのを抑制することができる。」
(カ) 図1、4~5
「【図1】
[図:0001400459000004.jpg]
」
「【図4】
[図:0001400459000005.jpg]
」
「【図5】
[図:0001400459000006.jpg]
」
イ 周知技術1の認定
前記アにおいて摘記した事項に例示されるように、以下の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「車両用の障害物センサにおいて、センサカバーのセンサ側の面に反射抑制層を設けること。」
(3) 甲5号証に記載された事項及び周知技術2の認定
ア 甲5号証に記載された事項
甲5号証(特開2016-150624号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものである。
(ア) 段落【0001】~【0002】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用整流構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車両において、カメラやレーダ等のセンサがルーフ上に搭載された構造が開示されている(特許文献1参照)。」
(イ) 段落【0023】~【0024】
「【0023】
[第1実施形態]
図1、図2において、本実施形態に係る車両用整流構造S1は、例えば自動運転の車両10に用いられ、周辺情報検出部12と、整流手段の一例たるルーフバイザ14と、を有している。
【0024】
周辺情報検出部12は、車両10のルーフ16上に設けられ、車両10の周辺情報を検出する、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、レーザレーダ、赤外線センサ、超音波センサ又は光学カメラ等である。この周辺情報検出部12は、例えばルーフ16の中央部に設けられ、車両上下方向を回転軸として360°回転しながら、車両10の周囲の情報を検出するようになっている。」
(ウ) 図1~2
「【図1】
[図:0001400459000007.jpg]
」
「【図2】
[図:0001400459000008.jpg]
」
イ 周知技術2の認定
前記アにおいて摘記した事項に例示されるように、以下の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術2」という。)。
<周知技術2>
「カメラやレーダ等のセンサを車両のルーフ上に搭載すること。」
(4) 甲6号証に記載された事項及び甲6号証に記載された発明の認定 ア 甲6号証に記載された事項
甲6号証(特開2017-215242号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものである。
(ア) 段落【0030】~【0036】
「【0030】
(第1実施形態)
以下、車両用装飾部品をエンブレムに具体化した第1実施形態について、図1~図8を参照して説明する。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更して示している。
【0031】
車両のエンジンルームの前部には、走行風等の外気をエンジンルームに導入してラジエータを冷却するためのフロントグリルが取付けられている。図5には、フロントグリル11の一部が二点鎖線で図示されている。
【0032】
また、フロントグリル11の後方であってラジエータの前側には、図2に示すように、A.C.C.(アダプティブクルーズコントロール)におけるセンサとして機能するミリ波レーダ装置15が取付けられている。ミリ波レーダ装置15は、ミリ波を送信し、かつ、対象物に当たって反射したミリ波を受信することで、この送信波と受信波との差から前方車両と自車(車両10)との車間距離や相対速度を測定する。ミリ波とは、波長が1~10mmであり、周波数が30~300GHzである電波をいう。A.C.C.は、ミリ波レーダ装置15による測定結果を基にエンジンのスロットルやブレーキを制御して自車(車両10)を加減速し、車間距離をコントロールする。
【0033】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、一般的なフロントグルと同様、樹脂製基材の表面に金属メッキ層が形成されている。従って、フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波レーダ装置15のミリ波の経路となる箇所、具体的には、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向前方となる箇所、には図5において二点鎖線で示すように窓部12が設けられている。窓部12は、フロントグリル11のうち、後述するエンブレム20が嵌め込まれる箇所である。窓部12の内壁面の底部には、一対の給電用の接続端子13が設けられている。これらの接続端子13は、前後方向へ延びる平面状をなしている。
【0034】
図1及び図2に示すように、エンブレム20は、その主要部をなす装飾本体部21と、加熱シート33とを備えている。装飾本体部21は、基材22、透明部材25及び加飾層32を備えており、全体として楕円の板状をなしている。また、装飾本体部21は、前方へ膨らむように緩やかに湾曲している。
【0035】
基材22は、誘電正接(誘電体内での電気エネルギ損失の度合いを表す指標値)の小さな樹脂材料であるAES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)樹脂等の樹脂材料によって有色に形成されている。AES樹脂の誘電正接は、0.007である。誘電正接が小さければ、ミリ波が熱エネルギに変換され難いため、ミリ波の減衰を抑制可能である。
【0036】
図4は図2のA部を拡大して示している。同図4に示すように、基材22の前部には、前後方向に対しほぼ直交する一般部23と、その一般部23よりも前方へ突出する凸部24とが形成されている。一般部23は、図1におけるエンブレム20の背景領域20aに対応し、凸部24はエンブレム20の文字領域20bに対応している。なお、基材22は、AES樹脂に代えて、透明部材25と比誘電率が近い樹脂、例えば、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PC/ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂等によって形成されてもよい。」
(イ) 段落【0040】~【0041】
「【0040】
図2及び図3に示すように加熱シート33は、面状発熱体、フィルムヒータ等とも呼ばれるものであり、樹脂シート34と、その樹脂シート34上に形成された線状のヒータ35とを備えている。樹脂シート34としては、例えば、PC樹脂によって形成されたものが用いられる。また、線状のヒータ35としては、例えば、ニクロム線、透明導電膜、カーボン発熱体、銀ペースト等を印刷することにより形成されたものが用いられる。ヒータ35は、さらに、樹脂材料によって前側から被覆されてもよい。
【0041】
加熱シート33の主要部33aは、前透明部材26と後透明部材27との間において、それらの前透明部材26及び後透明部材27に重ねられた状態で配置されている。主要部33aは、前透明部材26及び後透明部材27に密着していて、それらと一体になっている。主要部33aは、上述した装飾本体部21と同様に、前方へ膨らむように緩やかに湾曲している。主要部33aのほぼ全領域では、ヒータ35が波形状に繰り返し屈曲された状態で形成されている。より詳しくは、ヒータ35は、互いに左右方向に離間した複数箇所において、それぞれ上下方向に延びる直線部分を有している。隣り合う直線部分の間隔をピッチPとすると、ピッチPは3~20mmであることが、融雪に必要な発熱量を確保しつつ、ミリ波の減衰量を2dB以下に抑制するうえで好ましい。ピッチPは5~15mmであることがさらに好ましい。」
(ウ) 段落【0046】~【0054】
「【0046】
次に、上記のように構成された第1実施形態のエンブレム20の作用及び効果について、製造方法とともに説明する。
最初に、エンブレム20の製造方法について、図6~図8を参照して簡単に説明する。なお、図6~図8においては、図面の左方がエンブレム20の前方に相当し、図面の右方がエンブレム20の後方に相当する。
【0047】
図6(a),(b)に示すように、樹脂シート上にヒータが形成されてなるシート材41が予備成形される。予備成形では、図6(a)に示すように、加熱シート成形用の金型42とヒータ44との間にシート材41が配置される。ヒータ44が加熱されることでシート材41が軟化する。軟化したシート材41が、図6(b)に示すように金型42に押え付けられて、同シート材41と金型42との間の空気が吸い出されて真空に近い状態が作り出される。この真空状態により、シート材41が金型42における成形凹部43の壁面に密着させられ、加熱シート33に対応する形状に賦形される。その後、上記のように予備成形されたシート材41から不要な部分がトリミングされる(切り落とされる)ことで、前方へ膨らむように緩やかに湾曲する主要部33aと、主要部33aとの境界部分において後方へ屈曲する接続部33bとからなる加熱シート33が得られる。(図7(b)参照)
また、上記加熱シート33とは別に、前透明部材26が射出成形により形成される。すなわち、図7(a)に示すように、射出成形用の金型45を構成する固定型46と可動型48とが型締めされる。固定型46と可動型48との間に形成されるキャビティ49(成形空間)に溶融樹脂が射出により充填される。溶融樹脂が硬化されることで、前透明部材26が形成される。前透明部材26が固定型46に残された状態で金型45が型開きされる。
【0048】
図7(b)に示すように、加熱シート33がインサートとされて、固定型46に配置される。この配置により、加熱シート33の主要部33aが前透明部材26上に重ねられるとともに、接続部33bが固定型46における成形凹部47の底壁部上に重ねられる。
【0049】
図7(c)に示すように、上記可動型48とは異なる後透明部材成形用の可動型51が用いられて金型の型締めが行なわれる。このとき、加熱シート33の主要部33aはもちろんのこと、接続部33bも固定型46の成形凹部47内に位置している。そのため、加熱シート33の一部、特に接続部33bが、型締めに際し、固定型46と可動型51とによって挟み込まれて過大な力を受け、損傷することが起こりにくい。
【0050】
固定型46と可動型51との間に形成されるキャビティ52に溶融樹脂が射出により充填される。溶融樹脂が硬化されることで、図7(d)に示すように、加熱シート33の後側に、一般部28及び凹部29を有する後透明部材27が形成される。このようにして得られた中間成形体53では、加熱シート33の主要部33aが前透明部材26及び後透明部材27によって挟み込まれ、かつ接続部33bが後透明部材27の下面に接触することにより、加熱シート33が主要部33aのみにおいて前透明部材26及び後透明部材27に一体となっている。また、接続部33bが前透明部材26及び後透明部材27の外部に位置している。
【0051】
上記中間成形体53が金型から取り出され、図7(e)に示すように、後透明部材27の一般部28及び凹部29に対し、印刷、蒸着等が行なわれることにより中間成形体54が得られる。この中間成形体54では、一定厚みの加飾層32が上記一般部28及び凹部29に積層されている。
【0052】
さらに、上記加飾層32上に紫外線硬化型のインクが塗布されるとともに、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等の光源ランプと照射器(ランプハウス)とを含む公知の紫外線硬化装置から紫外線が照射される。塗布されたインクが硬化することで、図8(a)に示すように、加飾層32上に熱伝達抑制層37が形成されてなる中間成形体55が得られる。
【0053】
上記中間成形体55が、図8(b)に示すように、射出成形用の金型56を構成する固定型57と可動型58との間のキャビティ59にセットされる。キャビティ59において、熱伝達抑制層37よりも後側の空間に溶融樹脂が射出により充填される。溶融樹脂が硬化されることで、熱伝達抑制層37の後側に、一般部23及び凸部24を有する基材22が形成される(図4参照)。
【0054】
上記のように基材22の成形された中間成形体55は金型56から取り出される。そして、中間成形体55における前透明部材26の前面に表面処理剤が塗布されることにより、ハードコート層31が形成され、目的とするエンブレム20が得られる(図4参照)。このエンブレム20では、図2に示すように、加熱シート33の主要部33aが装飾本体部21内に位置するが、接続部33bが装飾本体部21の外部である後透明部材27の下側に位置する。この接続部33bは、ヒータ35における両端部の接続端子36を有している。」
(エ) 段落【0071】~【0075】
「【0071】
(第4実施形態)
次に、車両用装飾部品の第4実施形態について、図11(a),(b)を参照して説明する。
【0072】
第4実施形態では、透明部材25が単一の部材によって構成されている点で第3実施形態と共通する。しかし、加熱シート33の少なくとも主要部33aが透明部材25の前面に代えて、基材22に対し、その後側から重ねられた状態で配置されている点で第3実施形態と異なっている。また、第4実施形態では、熱伝達抑制層37が形成されていない。
【0073】
上記以外の構成は第3実施形態と同様である。そのため、第3実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第4実施形態によると、熱伝達抑制層37による効果が得られないことを除き、基本的には、第3実施形態と同様の作用及び効果が得られる。ただし、加熱シート33の主要部33aが上記の箇所に配置されることで、同主要部33aは、装飾本体部21の最後部に位置することとなる。従って、ヒータ35が発した熱は第3実施形態よりも、エンブレム20の前面に伝わりにくくなる。
【0074】
その反面、加飾層32が加熱シート33よりも前方に位置し、同加熱シート33を隠す機能を発揮する。そのため、エンブレム20を前方から見た場合、加熱シート33は加飾層32によって隠されて見えにくくなる。
【0075】
そのほかにも、加熱シート33が装飾本体部21の外部に位置するため、同加熱シート33の主要部33aが装飾本体部21の内部に設けられる場合に比べ、製造が容易となる。例えば、加熱シート33は装飾本体部21の後面に接着によって固定されてもよい。この場合、加熱シート33をインサートとして射出成形をしなくてすむため、同加熱シート33が金型の型締めの際に固定型と可動型とによって挟み込まれることがない。そのため、ヒータ35の受電用の接続端子36については、第1実施形態等のように装飾本体部21の外部まで延ばしたり、屈曲させたりしてもよいが、しなくてもよい。また、接続端子36をリード線に代えることも可能である。」
(オ) 図1~4、6~8、11
「【図1】
[図:0001400459000009.jpg]
」
「【図2】
[図:0001400459000010.jpg]
」
「【図3】
[図:0001400459000011.jpg]
」
「【図4】
[図:0001400459000012.jpg]
」
「【図6】
[図:0001400459000013.jpg]
」
「【図7】
[図:0001400459000014.jpg]
」
「【図8】
[図:0001400459000015.jpg]
」
「【図11】
[図:0001400459000016.jpg]
」
イ 甲6号証に記載された発明の認定
前記アにおいて摘記した事項を総合すると、甲6号証には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲6発明>
「 車両用装飾部品であるエンブレム20の製造方法であって、(【0030】、【0046】)
エンブレム20は、その主要部をなす装飾本体部21と、加熱シート33とを備え、装飾本体部21は、基材22、透明部材25及び加飾層32を備えており、装飾本体部21は、前方へ膨らむように緩やかに湾曲しており、(【0034】)
フロントグリル11において、ミリ波レーダ装置15のミリ波の経路となる箇所、具体的には、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向前方となる箇所に窓部12が設けられており、エンブレム20は、窓部12に嵌め込まれるものであり、(【0033】)
フロントグリル11は、走行風等の外気をエンジンルームに導入してラジエータを冷却するためのものであって、車両のエンジンルームの前部に取付けられており、(【0031】)
フロントグリル11の後方であってラジエータの前側には、センサとして機能するミリ波レーダ装置15が取付けられており、ミリ波レーダ装置15は、ミリ波を送信し、かつ、対象物に当たって反射したミリ波を受信することで、この送信波と受信波との差から前方車両と自車(車両10)との車間距離や相対速度を測定するものであり、(【0032】)
加熱シート33は、面状発熱体、フィルムヒータ等とも呼ばれるものであり、樹脂シート34と、その樹脂シート34上に形成された線状のヒータ35とを備えており、線状のヒータ35としては、例えば、ニクロム線、透明導電膜、カーボン発熱体、銀ペースト等を印刷することにより形成されたものが用いられ、(【0040】)
加熱シート33の主要部33aは、前透明部材26と後透明部材27との間において、それらの前透明部材26及び後透明部材27に重ねられた状態で配置されており、主要部33aは、前透明部材26及び後透明部材27に密着していて、それらと一体になっており、主要部33aは、装飾本体部21と同様に、前方へ膨らむように緩やかに湾曲しており、主要部33aのほぼ全領域では、ヒータ35が波形状に繰り返し屈曲された状態で形成されており、(【0041】)
樹脂シート上にヒータが形成されてなるシート材41が、金型42における成形凹部43の壁面に密着させられ、加熱シート33に対応する形状に賦形され、予備成形されたシート材41から不要な部分がトリミングされる(切り落とされる)ことで、前方へ膨らむように緩やかに湾曲する主要部33aと、主要部33aとの境界部分において後方へ屈曲する接続部33bとからなる加熱シート33が得られ、(【0047】、【図6】、【図7】(b))
射出成形用の金型45を構成する固定型46と可動型48とが型締めされ、固定型46と可動型48との間に形成されるキャビティ49(成形空間)に溶融樹脂が射出により充填され、溶融樹脂が硬化されることで、前透明部材26が形成され、(【0047】、【図7】(a)(b))
前透明部材26が固定型46に残された状態で金型45が型開きされ、
加熱シート33がインサートとされて、固定型46に配置され、この配置により、加熱シート33の主要部33aが前透明部材26上に重ねられるとともに、接続部33bが固定型46における成形凹部47の底壁部上に重ねられ、(【0047】、【0048】、【図7】(b)(c))
上記可動型48とは異なる後透明部材成形用の可動型51が用いられて金型の型締めが行なわれ、(【0049】、【図7】(c))
固定型46と可動型51との間に形成されるキャビティ52に溶融樹脂が射出により充填され、溶融樹脂が硬化されることで、加熱シート33の後側に、一般部28及び凹部29を有する後透明部材27が形成され、このようにして得られた中間成形体53では、加熱シート33の主要部33aが前透明部材26及び後透明部材27によって挟み込まれ、かつ接続部33bが後透明部材27の下面に接触することにより、加熱シート33が主要部33aのみにおいて前透明部材26及び後透明部材27に一体となっており、(【0050】、【図7】(c)(d))
上記中間成形体53が金型から取り出され、後透明部材27の一般部28及び凹部29に対し、印刷、蒸着等が行なわれることにより中間成形体54が得られ、この中間成形体54では、一定厚みの加飾層32が上記一般部28及び凹部29に積層され、(【0051】、【図7】(e))
加飾層32上に熱伝達抑制層37が形成されてなる中間成形体55が得られ、(【0052】)
上記中間成形体55が、射出成形用の金型56を構成する固定型57と可動型58との間のキャビティ59にセットされ、キャビティ59において、熱伝達抑制層37よりも後側の空間に溶融樹脂が射出により充填され、溶融樹脂が硬化されることで、熱伝達抑制層37の後側に、一般部23及び凸部24を有する基材22が形成され、(【0053】、【図8】)
基材22の成形された中間成形体55は金型56から取り出され、中間成形体55における前透明部材26の前面に表面処理剤が塗布されることにより、ハードコート層31が形成され、エンブレム20が得られる、(【0054】、【図4】)
エンブレム20の製造方法。」
(5) 引用文献1に記載された事項及び周知技術3の認定
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1(特開2013-187342号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当合議体が付したものである。
(ア) 段落【0001】~【0002】
「【0001】
本発明は、発光素子、発光素子アレイ、光書込みヘッドおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置や照明などの光源に面発光素子や面発光素子アレイが利用されている。面発光素子の代表的なものとして、発光ダイオード(LED)、発光サイリスタ、レーザーダイオードが知られている。LEDや発光サイリスタでは、活性領域から発せられた光の放射は等方的であるため、放射された光の一部が出射面で内部に反射され、光出力が低下してしまう。そこで、LED等の発光素子の出射面に微細な凹凸面またはテクスチュアを形成することで、出射面での内部反射を抑制し、光取り出し効率を改善している(特許文献1ないし3)。」
(イ) 段落【0026】~【0027】
「【0026】
次に、公知のフォトリソ工程によりマスクパターン220が形成される。当該マスクパターン220は、半導体層110の表面に円形状の開口を露出するように、第1および第2のメサM1、M2の全体を覆う。次に、マスクパターン220を用いて、半導体層110が等方性ドライエッチングされる。これにより、半導体層110の表面には、微細な凹凸を有するテキスチャー部110Aが自己形成される。このときのエッチング条件は、塩素系ガスを使用した低バイアスパワーの条件が望ましい。
【0027】
エッチング条件を適宜変更することで、微細な凹凸の配列間隔を出射光の波長以下にすることができる。このような微細な凹凸は、モスアイ構造を形成し、モスアイ構造は、活性領域(nゲート層104/pゲート層106)から出射された光の反射防止膜として機能する。他方、等方性ドライエッチングにより形成された凹凸の間隔は、必要であれば、その後にプラズマ処理を施すことによって、その間隔を拡張することも可能である。」
(ウ) 図3
「【図3】
[図:0001400459000017.jpg]
」
イ 周知技術3の認定
前記アにおいて摘記した事項に例示されるように、以下の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術3」という。)。
<周知技術3>
「光の反射防止膜として微細な凹凸のモスアイ構造を形成し、その後にプラズマ処理を行うこと。」
2 本件発明1~12、15について
本件発明1~12、15については、前記第3に示した取消理由のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものである。以下詳述する。
(1) 本件発明1
ア 対比
本件特許の請求項1の記載の順に沿って、本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「光学測定装置」は、「自動車のラジエータグリルに取り付けるのに適するものであり、車両のラジエータグリルの背後に設置されるものであり、光パルスランタイム方法を使用して監視領域内で認識される物体及び/又は障害物までの距離を決定するものであり」、「監視領域内で認識される物体又は障害物までの距離は、光パルスランタイム方法にしたがって、放射ビームの放射と受信ビームの受信との間で測定されるランタイムによって計算され[る]」から、甲1発明における「光学測定装置」は、本件発明1における「自動車のセンサ装置」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は「自動車のセンサ装置」の発明である点で一致する。
(イ) 甲1発明において、「光学測定装置」は「少なくとも1つの放射ビームを放射するための少なくとも1つの光学放射体と受信ビームを受けるための少なくとも1つの光学受信体とが内部に配置されるハウジング3を有する」から、甲1発明における「光学測定装置」は、「光学放射体」及び「光学受信体」を備えるものである。
甲1発明において、「放射ビーム、例えばパルスレーザ光が放射窓10を通じて放射され、監視領域内の物体により反射されるレーザ光が受信窓7を通じて受信ビームとして受信され、監視領域内で認識される物体又は障害物までの距離は、光パルスランタイム方法にしたがって、放射ビームの放射と受信ビームの受信との間で測定されるランタイムによって計算され[る]」から、甲1発明における「光学放射体」及び「光学受信体」は、本件発明1における「測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子(20)」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は「前記センサ装置は」「測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子」を備える点で一致する。
(ウ) 甲1発明において、「光学測定装置」は「少なくとも1つの放射ビームを放射するための少なくとも1つの光学放射体と受信ビームを受けるための少なくとも1つの光学受信体とが内部に配置されるハウジング3を有する」ところ、「カバーディスク5がハウジング3を終端させるとともに放射窓10と受信窓7とを形成[する]」から、甲1発明における「光学測定装置」は、「カバーディスク5」を備えるものである。
甲1発明において、「カバーディスク5」は「放射窓10と受信窓7とを形成[する]」ところ、「放射ビーム、例えばパルスレーザ光が放射窓10を通じて放射され、監視領域内の物体により反射されるレーザ光が受信窓7を通じて受信ビームとして受信され[る]」から、甲1発明における「カバーディスク5」は、「光学放射体」及び「光学受信体」の前方に配置され、レーザ光を透過し、「光学放射体」及び「光学受信体」に面する内側面を有するものであると認められる。
甲1発明において、「カバーディスクは、射出成形金型に少なくとも1つのプラスチック材料が充填されて作成され[る]」から、甲1発明における「カバーディスク5」は、射出成形されたプラスチック部品である。
甲1発明において、光学測定装置は「自動車のラジエータグリルに取り付けるのに適するものであり、車両のラジエータグリルの背後に設置されるものであ[る]」から、甲1発明における「カバーディスク5」は、車外に面する外側面を有するものである。
したがって、甲1発明における「カバーディスク5」は、本件発明1における「前記測定方向における前記センサ素子(20)の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子(20)に面する内側面を有するカバー要素(18)」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は「前記センサ装置は」「前記測定方向における前記センサ素子の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子に面する内側面を有するカバー要素」を備える点で一致する。
(エ) 甲1発明において、「カバーディスク5が加熱アセンブリ20を有[する]」から、甲1発明における「光学測定装置」は、「加熱アセンブリ20」を備えるものである。
甲1発明において、「加熱アセンブリ20は、弾性キャリア22に適用される少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2を有し、弾性キャリア22は、膜として具現化され、該膜上に少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2がメタライゼーションとして適用され[る]」から、甲1発明における「電気加熱導体」及び「加熱アセンブリ20」は、本件発明1における「導体トラック(34)」及び「加熱手段」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は「前記センサ装置は」「導体トラックを含む加熱手段」を備える点で一致する。
(オ) 甲1発明において、「加熱アセンブリ20は、弾性キャリア22に適用される少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2を有し、弾性キャリア22は、膜として具現化され、該膜上に少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2がメタライゼーションとして適用され[る]」から、甲1発明における「電気加熱導体」がメタライゼーションとして適用される膜(金属化膜)として具現化された「弾性キャリア」は、本件発明1における「導体トラック(34)」が設けられた「フィルム(32)」に相当する。
甲1発明において、「カバーディスクは、射出成形金型に少なくとも1つのプラスチック材料が充填されて作成され[る]」ところ、カバーディスクの射出成形工程につき、「少なくとも1つの電気加熱導体を有する弾性キャリアは、受信窓の製造中、金型内で射出成形工程中に受信窓に接続され」、「加熱アセンブリのバックインジェクション成形によって、射出成形工程中、加熱アセンブリを受信窓の内面に接続することが実施できる」から、甲1発明において、弾性キャリアはカバーディスクの射出成形工程中にカバーディスクの受信窓の内面に配置されるものであり、弾性キャリア及び電気加熱導体を有する加熱アセンブリは、カバーディスクのバックインジェクション成形におけるインサート要素であると認められる。
よって、本件発明1と甲1発明は「前記導体トラックは、前記カバー要素の射出成形中に該カバー要素の前記内側面に形成されたフィルムに設けられ」、「前記フィルムと前記導体トラックとにより、射出成形されたカバー要素のインサートが形成され[る]」点で一致する。
(カ) 前記(ア)~(オ)を総合すると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点において一致し、相違点1及び2において相違する。
a 一致点
「 自動車のセンサ装置であって、
前記センサ装置は、
測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子と、
前記測定方向における前記センサ素子の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子に面する内側面を有するカバー要素と、
導体トラックを含む加熱手段とを備え、
前記導体トラックは、前記カバー要素の射出成形中に該カバー要素の前記内側面に形成されたフィルムに設けられ、
前記フィルムと前記導体トラックとにより、射出成形されたカバー要素のインサートが形成される、
自動車のセンサ装置。」
b 相違点
(a) 相違点1
本件発明1においては、
「前記導体トラック(34)は、前記フィルム(32)の前記センサ素子(20)とは反対側の面に設けられて[いる]」のに対し、
甲1発明においては、電気加熱導体が弾性キャリアのいずれの面に設けられているのか特定されていない点。
(b) 相違点2
本件発明1においては、
「前記フィルム(32)には、前記導体トラック(34)とは反対側の面に反射防止コーティング(36)が施されている」のに対し、
甲1発明においては、弾性キャリアにおける反射防止コーティングの有無について特定されていない点。
イ 判断
(ア) 相違点1について
前記1(1)ウに示したとおり、甲1号証には「電気加熱導体を弾性キャリアと受信窓によって保護すること」が示唆されているから(甲1号証における示唆事項を参照)、甲1発明において、電気加熱導体を弾性キャリアの受信窓側の面、すなわち、弾性キャリアの光学放射体及び光学受信体とは反対側の面に設けることは、当業者にとって自明な設計事項であり、相違点1は実質的な相違点ではない。
(イ) 相違点2について
前記1(2)イに示したとおり、車両用の障害物センサにおいて、センサのカバーのセンサ側の面に反射抑制層を設けることは、周知技術であるから(周知技術1を参照)、甲1発明に周知技術1を適用し、カバーディスクの光学放射体及び光学受信体側に位置する面、すなわち、弾性キャリアの光学放射体及び光学受信体側の面に、反射抑制層を設け、もって相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、甲1号証における示唆事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2
甲1発明に周知技術1を適用する際に、特定の波長帯が透過可能なように、反射抑制層にバンドパスフィルタとしての性能を持たせることは、技術の具体的実現における設計的事項であり、格別のものではない。
(3) 本件発明3
前記1(5)イに示したとおり、光の反射防止膜として微細な凹凸のモスアイ構造を形成することは、周知技術であるから(周知技術3を参照)、甲1発明に周知技術1を適用する際に、微細な凹凸のモスアイ構造を有する反射抑制層として構成することは、当業者にとって自明な設計変更にすぎず、格別のものではない。
(4) 本件発明4
甲2号証の段落【0029】に「各カバー本体21は、透明な樹脂材料、例えば、PC(ポリカーボネート)」「等を主成分とした材着樹脂材料によって形成されている。」と記載されているように、甲1発明において、カバーディスク5をPC(ポリカーボネート)により形成することは、技術の具体的実現における設計的事項であり、格別のものではない。
(5) 本件発明5
甲2号証の段落【0081】に「各加熱層34として、樹脂シートと、その樹脂シート上に形成された線状のヒータとを備えるものが用いられてもよい。樹脂シートとしては、例えば、PC等の透明な樹脂材料によって形成されたものが用いられる。」と記載されているように、甲1発明において、弾性キャリアをPC(ポリカーボネート)により形成することは、技術の具体的実現における設計的事項であり、格別のものではない。
(6) 本件発明6
甲2号証の段落【0092】に「各カバー20A~20Gの最表部を構成する部材の表面に、その部材よりも硬度の高いハードコート層が積層されてもよい。」と記載されているように、甲1発明において、カバーディスク5の外面側にハードコート層を設けることは、技術の具体的実現における設計的事項であり、格別のものではない。
(7) 本件発明7
反射を低減するために、中間の層の屈折率を、空気と次の層の屈折率の間にすべきことは技術常識であるから、甲1発明において、受信ビームがカバーディスク5を十分に透過することを確保するために、カバーディスク5の外面側に設けたハードコート層がカバーディスク5よりも小さい屈折率を有するようにすることは、当業者が適宜なし得る設計上の事項にすぎない。
(8) 本件発明8
ア 対比
前記(1)アの検討結果を踏まえると、本件発明8と甲1発明は、以下の一致点において一致し、相違点3及び4において相違する。なお、相違点3は相違点1と同一である。
(ア) 一致点
「 自動車のセンサ装置であって、
前記センサ装置は、
測定信号を決定するために、測定方向に電磁放射を放出するセンサ素子と、
前記測定方向における前記センサ素子の前方に配置され、前記電磁放射を透過する射出成形されたプラスチック部品であり、車外に面する外側面及び該センサ素子に面する内側面を有するカバー要素と、
導体トラックを含む加熱手段とを備え、
前記導体トラックは、前記カバー要素の射出成形中に該カバー要素の前記内側面に形成されたフィルムに設けられ、
前記フィルムと前記導体トラックとにより、射出成形されたカバー要素のインサートが形成される、
自動車のセンサ装置。」
(イ) 相違点
a 相違点3
本件発明8においては、
「前記導体トラック(34)は、前記フィルム(32)の前記センサ素子(20)とは反対側の面に設けられて[いる]」のに対し、
甲1発明においては、電気加熱導体が弾性キャリアのいずれの面に設けられているのか特定されていない点。
b 相違点4
本件発明8においては、
「前記カバー要素(18)は、車両のルーフの外皮要素である」のに対し、
甲1発明においては、カバーディスクを有する光学測定装置は、自動車のラジエータグリルに取り付けられ、車両のラジエータグリルの背後に設置される点。
イ 判断
(ア) 相違点3について
前記(1)イ(ア)で説示したのと同様にして、相違点3は実質的な相違点ではない。
(イ) 相違点4について
前記1(3)イに示したとおり、カメラやレーダ等のセンサを車両のルーフ上に搭載することは、周知技術である(周知技術2を参照)。
したがって、甲1発明に周知技術2を適用し、カバーディスクを有する光学測定装置を車両のルーフに設置することは、当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 小括
したがって、本件発明8は、甲1発明、甲1号証における示唆事項及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9) 本件発明9
甲1発明において、カバーディスクを有する光学測定装置は、車両のラジエータグリル(「フロントグリル」とも呼ばれるもの)の背後に設置されるから、カバーディスクは車両前部の外皮要素である。
(10) 本件発明10
ア 対比
本件特許の請求項10の記載の順に沿って、本件発明10と甲1発明を対比する。
(ア) 前記(1)において示したとおり、次の甲1発明の欄に記載した甲1発明の各構成は、それぞれ、対応する本件発明10の欄に記載した次の本件発明10の構成に相当する。
<甲1発明> <本件発明10>
光学放射体と光学受信体 センサ装置(16)
カバーディスク5 カバー要素(18)
弾性キャリア フィルム(32)
電気加熱導体 導体トラック(34)
(イ) 甲1発明において、「カバーディスクは、射出成形金型に少なくとも1つのプラスチック材料が充填されて作成され」、「少なくとも1つの電気加熱導体を有する弾性キャリアは、受信窓の製造中、金型内で射出成形工程中に受信窓に接続され」、「加熱アセンブリのバックインジェクション成形によって、射出成形工程中、加熱アセンブリを受信窓の内面に接続することが実施できる」とあるとおり、カバーディスクを製造する方法が特定されているから、本件発明10と甲1発明は「自動車のセンサ装置のカバー要素の製造方法」の発明である点で共通する。
(ウ) 甲1発明において、「加熱アセンブリ20は、弾性キャリア22に適用される少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2を有し、弾性キャリア22は、膜として具現化され、該膜上に少なくとも1つの電気加熱導体24,24.1,24.2がメタライゼーションとして適用され[る]」から、当該適用の前後を考えると、本件発明10と甲1発明は「第1面と第2面とを有するフィルムを供給する工程」及び「前記フィルムの第1面に導体トラックを設ける工程」を備える点で一致する。
(エ) 甲1発明において、「カバーディスクは、射出成形金型に少なくとも1つのプラスチック材料が充填されて作成され」、「少なくとも1つの電気加熱導体を有する弾性キャリアは、受信窓の製造中、金型内で射出成形工程中に受信窓に接続され」、「加熱アセンブリのバックインジェクション成形によって、射出成形工程中、加熱アセンブリを受信窓の内面に接続することが実施できる」ところ、バックインジェクション成形において射出成形前にインサート要素を金型内に配置させること、プラスチック材料の硬化後に脱型することは自明であるから、本件発明10と甲1発明は「射出成形金型の金型キャビティに、前記導体トラックが設けられた前記フィルムを導入する工程」、「前記射出成形金型の前記金型キャビティにプラスチック材料を充填する工程」、「前記金型キャビティ内に充填された前記プラスチック材料を硬化させて、前記カバー要素を形成する工程」及び「前記カバー要素を脱型する工程」を備える点で一致する。
(オ) 前記(ア)~(エ)を総合すると、本件発明10と甲1発明は、以下の一致点において一致し、相違点5において相違する。
a 一致点
「 自動車のセンサ装置のカバー要素の製造方法であって、
第1面と第2面とを有するフィルムを供給する工程と、
前記フィルムの第1面に導体トラックを設ける工程と、
射出成形金型の金型キャビティに、前記導体トラックが設けられた前記フィルムを導入する工程と、
前記射出成形金型の前記金型キャビティにプラスチック材料を充填する工程と、
前記金型キャビティ内に充填された前記プラスチック材料を硬化させて、前記カバー要素を形成する工程と、
前記カバー要素を脱型する工程と、を備える
ことを特徴とする自動車のセンサ装置のカバー要素の製造方法。」
b 相違点5
本件発明10においては、「前記カバー要素(18)」は「前記フィルム(32)が表面に設けられた」ものであるのに対し、
甲1発明においては、カバーディスクの表面に弾性キャリアが位置するのか電気加熱導体が位置するのか特定されていない点。
イ 判断
前記(1)イ(ア)で説示したのと同様にして、甲1発明において、電気加熱導体を弾性キャリアの光学放射体及び光学受信体とは反対側の面に設けること、すなわち、カバーディスクの表面に弾性キャリアが位置するようにすることは、当業者にとって自明な設計事項であり、相違点5は実質的な相違点ではない。
ウ 小括
したがって、本件発明10は、甲1発明及び甲1号証における示唆事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(11) 本件発明11
前記1(2)イに示したとおり、車両用の障害物センサにおいて、センサのカバーのセンサ側の面に反射抑制層を設けることは、周知技術であるから(周知技術1を参照)、甲1発明に周知技術1を適用し、カバーディスクの光学放射体及び光学受信体側に位置する面、すなわち、弾性キャリアの光学放射体及び光学受信体側の面に、反射抑制層を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(12) 本件発明12
前記1(5)イに示したとおり、光の反射防止膜として微細な凹凸のモスアイ構造を形成し、その後にプラズマ処理を行うことは、周知技術である(周知技術3を参照)。
したがって、甲1発明に周知技術1を適用する際に、光の反射防止膜として微細な凹凸のモスアイ構造を形成し、その後にプラズマ処理を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。
(13) 本件発明15
甲2号証の段落【0092】に「各カバー20A~20Gの最表部を構成する部材の表面に、その部材よりも硬度の高いハードコート層が積層されてもよい。」と記載されているように、甲1発明において、カバーディスク5の外面側にハードコート層を設けることは、技術の具体的実現における設計的事項であり、格別のものではないところ、甲1発明において、カバーディスク5の外面側にハードコート層を設けようとすれば、カバーディスク5を脱型する工程の後になることは自明である。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、本件発明13及び14が、甲6発明及び甲2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである旨主張しているが、以下に詳述するとおり、上記申立人の主張を採用することはできない。
(1) 本件発明13について
請求項13は、請求項11又は12の記載を引用する形式で記載されているところ、請求項12は請求項11の記載を引用し、請求項11は請求項10の記載を引用しているから、本件発明13は、少なくとも請求項10、11及び13に記載された事項により特定されるものである。
したがって、本件発明13と甲6発明を対比するにあたっては、以下のアにおいて示すとおり、本件発明10及び本件発明11の構成も考慮して論じることとする。
ア 本件発明13と甲6発明の対比
(ア)a 甲6発明の「センサとして機能するミリ波レーダ装置15」は、「フロントグリル11の後方であってラジエータの前側」に「取付けられており」、「ミリ波を送信し、かつ、対象物に当たって反射したミリ波を受信することで、この送信波と受信波との差から前方車両と自車(車両10)との車間距離や相対速度を測定するもの」であるから、本件発明13の「自動車のセンサ装置(16)」に相当する。
b 甲6発明の「エンブレム20」は、「フロントグリル11」の「窓部12に嵌め込まれるもの」であり、「窓部12」は、「ミリ波レーダ装置15のミリ波の経路となる箇所、具体的には、ミリ波レーダ装置からのミリ波の送信方向前方となる箇所」に設けられているから、本件発明13の「自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)」に相当する。
c したがって、「自動車のセンサ装置(16)のカバー要素(18)の製造方法」である本件発明13と、「車両用装飾部品であるエンブレム20の製造方法」である甲6発明は、「自動車のセンサ装置のカバー要素の製造方法」の発明である点で一致する。
(イ)a 甲6発明の「加熱シート33」は、「樹脂シート34と、その樹脂シート34上に形成された線状のヒータ35とを備えており」、甲6発明の「樹脂シート34」は、本件発明13の「フィルム(32)」に相当する。
b 甲6発明の「加熱シート33」の「主要部33aのほぼ全領域では、ヒータ35が波形状に繰り返し屈曲された状態で形成されて」いるから、甲6発明の「ヒータ35」は、本件発明13の「導体トラック(34)」に相当する。
c 甲6発明の「線状のヒータ35」が「形成」される側の「樹脂シート34」の面は、本件発明13の「フィルム(32)」の「第1面」に相当し、その反対側の「樹脂シート34」の面は、本件発明13の「フィルム(32)」の「第2面」に相当する。
d 甲6発明では、「樹脂シート上にヒータが形成されてなるシート材41が、金型42における成形凹部43の壁面に密着させられ、加熱シート33に対応する形状に賦形され、予備成形されたシート材41から不要な部分がトリミングされる(切り落とされる)ことで、前方へ膨らむように緩やかに湾曲する主要部33aと、主要部33aとの境界部分において後方へ屈曲する接続部33bとからなる加熱シート33が得られ」るから、甲6発明の「加熱シート33」を得る工程は、「第1面と第2面とを有するフィルム(32)を供給する工程」及び「前記フィルム(32)の第1面に導体トラック(34)を設ける工程」に相当する構成を備えているといえる。
e したがって、本件発明13と甲6発明は、「第1面と第2面とを有するフィルムを供給する工程と、前記フィルムの第1面に導体トラックを設ける工程」を備える点で一致する。
(ウ)a 甲6発明では、「上記可動型48とは異なる後透明部材成形用の可動型51が用いられて金型の型締めが行なわれ、固定型46と可動型51との間に形成されるキャビティ52に溶融樹脂が射出により充填され」ており、甲6発明の「固定型46と可動型51との間に形成されるキャビティ52」は、本件発明13の「射出成形金型(58)の金型キャビティ(56)」に相当する。
b 甲6発明の「前透明部材26が固定型46に残された状態で金型45が型開きされ、加熱シート33がインサートとされて、固定型46に配置され」ることは、本件発明13の「射出成形金型(58)の金型キャビティ(56)に、前記導体トラック(34)が設けられた前記フィルム(32)を導入する」ことに相当する。
c 甲6発明の「固定型46と可動型51との間に形成されるキャビティ52に溶融樹脂が射出により充填」されることは、本件発明13の「前記射出成形金型(58)の前記金型キャビティ(56)にプラスチック材料を充填する」ことに相当する。
d したがって、本件発明13と甲6発明は、「射出成形金型の金型キャビティに、前記導体トラックが設けられた前記フィルムを導入する工程と、前記射出成形金型の前記金型キャビティにプラスチック材料を充填する工程」を備える点で一致する。
(エ)a 甲6発明の「固定型46と可動型51との間に形成されるキャビティ52に溶融樹脂が射出により充填され、溶融樹脂が硬化されることで、加熱シート33の後側に、一般部28及び凹部29を有する後透明部材27が形成され」ることは、本件発明13の「前記金型キャビティ(56)内に充填された前記プラスチック材料を硬化させ[る]」ことに相当する。
b 甲6発明は、「加熱シート33の主要部33aが前透明部材26及び後透明部材27によって挟み込まれ」た「中間成形体53」が「金型から取り出され」、「加飾層32」を「積層」し、「加飾層32上に熱伝達抑制層37が形成」され、「熱伝達抑制層37の後側」に「基材22が形成され」、「基材22の成形された中間成形体55は金型56から取り出され」、「ハードコート層31が形成され、エンブレム20が得られ[る]」としているから、本件発明13の「前記カバー要素(18)を形成する工程」及び「前記カバー要素(18)を脱型する工程」に相当する構成を備えているといえる。
c したがって、本件発明13と甲6発明は、「前記金型キャビティ内に充填された前記プラスチック材料を硬化させて、前記カバー要素を形成する工程」及び「前記カバー要素を脱型する工程」を備える点で共通する。
(オ) 前記(ア)~(エ)の対比分析の結果をまとめると、本件発明13と甲6発明は、次のaの一致点において一致し、少なくとも後記b(a)(b)の相違点6、7において相違する。
a 一致点
「 自動車のセンサ装置のカバー要素の製造方法であって、
第1面と第2面とを有するフィルムを供給する工程と、
前記フィルムの第1面に導体トラックを設ける工程と、
射出成形金型の金型キャビティに、前記導体トラックが設けられた前記フィルムを導入する工程と、
前記射出成形金型の前記金型キャビティにプラスチック材料を充填する工程と、
前記金型キャビティ内に充填された前記プラスチック材料を硬化させて、前記カバー要素を形成する工程と、
前記カバー要素を脱型する工程と、を備える
自動車のセンサ装置のカバー要素の製造方法。」
b 相違点
(a) 相違点6
本件発明13においては、
「前記カバー要素(18)を形成する工程」における「前記カバー要素(18)」が「前記フィルム(32)が表面に設けられた」ものとして形成され、「前記カバー要素(18)を脱型する工程」における「前記カバー要素(18)」が「前記フィルム(32)を表面に有する」ものとして脱型されるのに対して、
甲6発明においては、「加熱シート33」の「樹脂シート34」は、「前透明部材26」と「後透明部材27」の間にあり、「樹脂シート34」が「エンブレム20」の表面に設けられるように形成する工程を備えていない点。
(b) 相違点7
本件発明13においては、
「 前記フィルム(32)の第2面に、反射防止コーティング(36)を施す工程」(請求項11)を備え、
「前記反射防止コーティング(36)を施す工程は、
前記フィルム(32)が第1ローラ(38)から巻き出される工程と、
前記第1ローラ(38)から巻き出された後、第2ローラ(42)に巻き取られる工程」(請求項13)を含むのに対して、
甲6発明においては、「加熱シート33」の「樹脂シート34」の「線状のヒータ35」が「形成」されていない側の面に反射防止コーティングを設ける工程を備えていない点。
イ 判断
(ア) 前記相違点6について検討すると、甲6発明の加熱シート33は、前透明部材26と後透明部材27の間にあり、その後側にはさらに加飾層32や基材22等が存在するから(【図2】、【図4】を参照)、ミリ波レーダ装置15に面するエンブレム20の表面、すなわち、基材22の後側表面に加熱シート33を設けようとする契機がそもそも見出せない。
(イ) この点に関し、甲6号証の段落【0071】~【0075】、【図11】には、第4実施形態として、加熱シート33を基材22の後側表面に設けたものが開示されているから、この開示事項に基づけば、ミリ波レーダ装置15に面するエンブレム20の表面、すなわち、基材22の後側表面に加熱シート33を設けることは可能であるとの主張も考えられる。
(ウ) しかしながら、上記第4実施形態においては、「加熱シート33をインサートとして射出成形をしなくてすむため、同加熱シート33が金型の型締めの際に固定型と可動型とによって挟み込まれることがない」としているから(【0075】を参照)、この場合には、本件発明13の「射出成形金型(58)の金型キャビティ(56)に、前記導体トラック(34)が設けられた前記フィルム(32)を導入する工程」が満たされなくなることは明らかである。
(エ) そうすると、甲6発明において、「射出成形金型(58)の金型キャビティ(56)に、前記導体トラック(34)が設けられた前記フィルム(32)を導入する工程」に相当する構成を維持しながら、ミリ波レーダ装置15に面するエンブレム20の表面に加熱シート33を設ける工程を想定することは、当業者といえども困難である。
(オ) また、甲2号証及び甲3号証には、その点を可能にすることが記載も示唆もされていないから、甲2、3号証に記載された事項をいかに参照しても、前記相違点6に係る本件発明13の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。
(カ) したがって、前記相違点7について検討するまでもなく、本件発明13は、甲6発明及び甲2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明14について
請求項14は、請求項13の記載を引用する形式で記載されているから、本件発明14は、本件発明13の構成を全て含むものである。
前記(1)において説示したとおり、本件発明13は、甲6発明及び甲2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本件発明14も同様の理由により、甲6発明及び甲2、3号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1~12、15に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当するから、取り消されるべきものである。
請求項13及び14に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項13及び14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700761