特許拒絶査定不服審判
2018-015077
MOSキャパシタ型光変調器および方法
- 審判番号
- 2018-015077
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-506638外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月13日
- 審決日
- 2019年11月19日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ホアウェイ・テクノロジーズ・カンパニー・リミテッド
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .575-Z (G02F) / P18 .121-Z (G02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-506638「MOSキャパシタ型光変調器および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日国際公開、WO2015/161207、平成29年 7月 6日国内公表、特表2017-518538〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年4月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年4月18日、2014年4月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年11月25日:国際出願翻訳文提出書・手続補正書・出願
審査請求書の提出
平成29年10月30日:拒絶理由通知(同年11月7日発送)
平成30年 2月 6日:手続補正書・意見書の提出
同年 7月12日:拒絶査定(同年7月17日送達。
以下「原査定」という。)
同年11月13日:審判請求書・手続補正書の提出
第2 平成30年11月13日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年11月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[補正却下の決定の理由]
1 補正内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、特許請求の範囲については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成30年2月6日付け手続補正後のもの)に、
「【請求項1】
金属酸化物半導体(MOS)キャパシタ型光変調器であって、
導波路構造体を有するドープされた半導体層と、
前記ドープされた半導体層の前記導波路構造体の上に直接配置された誘電体層と、
前記誘電体層の上に直接配置されたゲート領域であって、前記ゲート領域は屈折率がシリコンより低い透明な導電性材料を有する、ゲート領域と、
前記ゲート領域の上に配置された金属コンタクトと、
を含み、
前記ドープされた半導体層はp型にドープされ、前記透明な導電性材料は、n型にドープされた酸化亜鉛(ZnO)、n型にドープされた炭化シリコン(SiC)、及びn型にドープされたインジウムスズ酸化物(ITO)のうち1つである、
MOSキャパシタ型光変調器。」とあったものを、
本件補正後の請求項1の
「【請求項1】
金属酸化物半導体(MOS)キャパシタ型光変調器であって、
導波路構造体を有するドープされた半導体層と、
前記ドープされた半導体層の前記導波路構造体の上に直接配置された誘電体層と、
前記誘電体層の上に直接配置されたゲート領域であって、前記ゲート領域は屈折率がシリコンより低い透明な導電性材料を有する、ゲート領域と、
前記ゲート領域の上に配置された金属コンタクトであって、前記金属コンタクトの複数の側壁は、前記ゲート領域の複数の側壁と同一面上にある、金属コンタクトと、
を含み、
前記ドープされた半導体層はp型にドープされ、前記透明な導電性材料は、n型にドープされた酸化亜鉛(ZnO)、n型にドープされた炭化シリコン(SiC)、及びn型にドープされたインジウムスズ酸化物(ITO)のうち1つであり、
前記金属コンタクトの前記複数の側壁および前記透明な導電性材料の複数の側壁は、二酸化シリコン(SiO2)のクラッド材料で覆われており、前記透明な導電性材料の前記屈折率は、前記SiO2のクラッド材料の屈折率より高い
MOSキャパシタ型光変調器。」と補正する内容を含むものである(なお、下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。
2 補正目的
上記「1」の補正内容は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な、
(1)「金属コンタクト」について、その複数の側壁は、ゲート領域の複数の側壁と同一面上にあること、
(2)「金属コンタクトの複数の側壁および透明な導電性材料の複数の側壁」について、二酸化シリコン(SiO2)のクラッド材料で覆われていること、
(3)「透明な導電性材料」について、その屈折率は、SiO2のクラッド材料の屈折率より高いこと、
を特定するものであって、その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
よって、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。
3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「第2 1」に、本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。
(2)引用文献に記載の事項及び引用発明
ア 原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、米国特許第8213751号明細書(以下引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「
」(フロントページ)
(訳:
【要約】
高い性能の演算と信号処理を実現するための電子的統合に適合フォトニック集積回路(EIC-PIC)が設けられている。電子統合に適合フォトニック集積回路は、複数の電子回路構造体と、複数の光回路の構造が含まれる。電子および光子回路構造は、モノリシック集積化と呼ばれるプロセスにより一体化されている。電子回路構造は、1つ以上の電子素子や光回路構造は、1つ以上の光子装置を備えている。電子及び光デバイスの統合ステップは、さらに、標準的なCMOSプロセスに挿入される。光回路構造や電子回路構造は統合された電子的統合に適合フォトニック集積回路装置を形成する。)
(イ)「
」(第10欄第8ないし24行)
(訳:基本的なEIC-PIC構造:
本発明が提供するEIC-PICのための基本的なウエハ構造を図1に断面図で示されている。厚さtEMの電子材料の薄層1001は、厚さtLOTMの(下側の)光学的に透明な誘電体材料の薄層1011の上に配置される。誘電体材料の薄い層1011は、基板1021の上に配置される。限定のためではないが、層1011の誘電体材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化タンタル、及び種々のポリマー材料は、動作波長で光透過性である。本発明の例示的な実施形態において、1001、1021はシリコン、1011は二酸化シリコン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)と一般に呼ばれるウエハの構造を形成している。本発明の別の実施形態では、動作波長は1550nm、tEMは、300nm厚のシリコンであり、tLOTMは1nm厚さの二酸化シリコンである。)
(ウ)「
」(第10欄第47行ないし第11欄第7行)
(訳:
単一の光学層EIC-PIC:
例示の目的で、限定するわけではないが、図3に示すように、例示的な実施形態において、電子デバイスは、第1のコア層1001及び/又は第1の基板1021上に製造される。あるEIC-PICは、光ビームを伝搬する第1のコア層1001を利用したフォトニック/ナノフォトニック・デバイスの構造により実現することができる。厚さtEMの第1光学コア層1001が厚さtLOTMの第1下側光クラッド層1011の上にある。第1の光クラッド層1011は、第1基板1021の上にある。第1の光学層の屈折率nEMは第1下部クラッド層の屈折率nLCLよりも高い。シリコンの場合には、層1001は、光利得を提供することができる、受動光デバイスおよび能動電気光デバイスまたは稼働中の全光学素子を製造するために使用することができる。別の例示的な実施形態では、厚さtUOTMおよび屈折率nUCLを有する1つの誘電体層(第1の上側光クラッド層)1031は、さらに、層1001の上に配置される。この実施の形態のように、EIC-PICは単一光レイヤEIC-PIC(SOL-EIC-PIC)と呼ぶことにする。
例示的な実施形態では、第1の基板層1021は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハのシリコン基板であり、第1の光クラッド層1011は、SOIウェーハのシリコン基板上の二酸化シリコン層であり、第1コア層1001が、SOIウェハの上面シリコン層であり、第1上側クラッド層1031は二酸化シリコン層である。)
(エ)「
」(第13欄第30行ないし第14欄第22行)
(訳:
図8Aは、調整可能な波長フィルタ(R-TWF)として使用される、本発明の実施形態による可能なリング共振器8000を示している。同調可能なリング共振器8000は、隣接する導波路8100に結合されている。図8Aに示すように同調可能なリング共振器8000は、光学波長λOPT光ビームにより動作する光ビームが、入力ポート8010および出力ポート8020を有している。導波路8100は、幅WCWGを有している。リング共振器は、DRINGリングの直径は、リング状に形成され幅WRWGの導波路で構成されている。リング共振器の共振周波数は、ゲート酸化物の薄い層を横切る電荷による容量効果によって調整される。電荷は、ゲート領域での屈折率を変化させ、これにより、導波リングの伝搬屈折率を生じさせる。この伝搬指数の変化は、当業者に知られているように、リングの共振周波数をシフトさせる。例示的な実施形態において、WCWG=WRWG=400nm、DRING=20mである。
ポリシリコンゲート上に基づく、1つの例示的な実施形態では、同調可能なリング共振器8000の縦断面図は、図8Bに示す厚さtEMとシリコン導波路のコア層1001は、空間領域8010においてイオン注入法によりドープされる。空間領域8010の両端に堆積されるソース電極8020及びドレイン電極8030を形成する。10ナノメートル以下の厚さを有するゲート酸化膜8040は、8010の中央領域上に堆積される。厚さtPOLY-siのドープされたポリシリコン8050は、ゲート酸化物8040の上に堆積される。ゲート電極8060は、低屈折率酸化物層8070上に配置されたポリシリコン構造8050の面上に堆積される。導波領域8080は、図に示されている。光学モードは、下部シリコン層8010から上部の多結晶シリコン層8050に存在する。ゲート電極及びソース電極間に電圧を印加することで電荷を駆動するゲート酸化物層8040の直上に存在するように、光ビーム8080の中心部分の屈折率が変化する。例示的な実施形態においてtPOLY-Si=200nmおよびtEM=300nmである。
透明導電性酸化物(TCO)に基づく別の例示的な実施形態では、同調可能なリング共振器8000の縦断面図は、図8Cに示すようになっており、シリコン導波路のコア層1001は、空間領域8210においてイオン注入法によるドープにより形成される。空間領域8210の両端部上に堆積されるソース電極8220及びドレイン電極8230を形成する。10ナノメートル以下の厚さを有するゲート酸化膜8240は、8210の中央領域上に堆積される。厚tTCOの透明導電性酸化物(TCO)層8230は、ゲート酸化物8240の上に堆積される。ゲート電極8260は、TCO層8230の上に堆積される。導波領域8280は、図に示されている。TCOは典型的nTCO=1.7~2の低い屈折率を有し、これにより、非常に高い屈折率nSi=3.5である図8Bで説明したポリシリコンの場合よりも、厳密な光学モード閉じ込めを提供し、主に下部シリコン層8210内に存在する光学モードで、ゲートとソース電極との間に電圧を印加するゲート酸化物層の直上に存在する電荷を、屈折率の変化が生じることになる。底部シリコン層内に厳密な光学モード閉込め及びTCOの導電性は、より低いスイッチング電圧およびスイッチング速度の高速化を可能にする。)
(オ)図1は、以下のものである。
(カ)図3は、以下のものである。
(キ)図8Aないし図8Cは、以下のものである。
イ 引用文献に記載された発明
(ア)上記ア(ア)ないし(ウ)の記載を踏まえて、図1及び図3を見ると、引用文献には、
「電子回路構造体と光回路の構造とを含む、電子・光集積回路(EIC-PIC)」が記載されているものと認められる。
(イ)また、図1及び図3からして、
上記アの「電子・光集積回路(EIC-PIC)」のための基本的なウエハ構造は、シリコン基板上に「電子デバイス及び光導波路」を含むことが理解できる。
(ウ)図8Aないし図8Cを見ると、以下のことが理解できる。
a 図8Aから、
(a)上記アの「電子・光集積回路(EIC-PIC)」は、具体的には、「導波路8100」と「(調整可能な波長フィルタとして機能する)リング共振器800」の組合わせであってもよいこと。
以下、この組合せによる「電子・光集積回路(EIC-PIC)」を「リング共振器フィルタ」という。
(b)電圧を印加してゲート領域(図番8060の下方)の屈折率を変化させることで共振周波数をシフトさせること。
b 図8Cから、
(a)「コア層1001の中央領域」の両側には、図番は付されていないものの、図8Bと同様に、「図番8070」として示された「低屈折率酸化物層」が位置すること。
(b)「シリコン導波路のコア層1001」は、図8Bと同様に、ドープされた半導体層であること。
(c)「中央領域」、「ゲート酸化膜8240」、「透明導電性酸化物層8230」及び「ゲート電極8260」のそれぞれの複数の側壁は同一面上にあり、かつ、「ゲート電極8260」以外は、低屈折率酸化物層により覆われていること。
(エ)上記(ウ)の検討からして、図8Cに示されたリング共振器800は、具体的には、
「シリコン導波路のコア層1001と、
前記コア層1001の中央領域を挟むように対峙したソース電極8220及びドレイン電極8230と、
前記コア層1001の中央領域上のゲート酸化膜8240と、
前記ゲート酸化膜8240上の透明導電性酸化物層8230と、
前記透明導電性酸化物層8230上のゲート電極8260と、
前記コア層1001の中央領域の両側に位置する低屈折率酸化物層と、を含み、
前記中央領域、前記ゲート酸化膜8240、前記透明導電性酸化物層8230及びゲート電極8260のそれぞれの複数の側壁は同一面上にあり、かつ、前記ゲート電極8260以外は、前記低屈折率酸化物層により覆われ、
前記透明導電性酸化物層8230の屈折率は、1.7から2である、
リング共振器800。」であってもよいこと。
(オ)上記(ア)ないし(エ)の検討からして、引用文献には、図8Cに示されたリング共振器800に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「導波路8100とリング共振器800からなるリング共振器フィルタであって、
前記リング共振器800は、
シリコン導波路のドープされたコア層1001と、
前記コア層1001の中央領域を挟むように対峙したソース電極8220及びドレイン電極8230と、
前記コア層1001の中央領域上のゲート酸化膜8240と、
前記ゲート酸化膜8240上の透明導電性酸化物層8230と、
前記透明導電性酸化物層8230上のゲート電極8260と、
前記コア層1001の中央領域の両側に位置する低屈折率酸化物層と、を含み、
前記中央領域、前記ゲート酸化膜8240、前記透明導電性酸化物層8230及びゲート電極8260のそれぞれの複数の側壁は同一面上にあり、かつ、前記ゲート電極8260以外は、前記低屈折率酸化物層により覆われ、
前記透明導電性酸化物層8230の屈折率は、1.7から2である、
リング共振器フィルタ。」
(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「ドープされたコア層1001」は、本願補正発明の「導波路構造体を有するドープされた半導体層」に相当する。
また、同様に、「コア層1001の中央領域上のゲート酸化膜8240」は、「ドープされた半導体層の導波路構造体の上に直接配置された誘電体層」に相当する。
(イ)a シリコンの屈折率は、3.4程度であるから、
引用発明の「(屈折率は、1.7から2である)透明導電性酸化物層8230」は、本願補正発明の「屈折率がシリコンより低い透明な導電性材料を有する、ゲート領域」に相当する。
(ウ)ここで、上記(ア)及び(イ)を整理すると、本願補正発明と引用発明とは、
「導波路構造体を有するドープされた半導体層と、
前記ドープされた半導体層の前記導波路構造体の上に直接配置された誘電体層と、
前記誘電体層の上に直接配置されたゲート領域であって、前記ゲート領域は屈折率がシリコンより低い透明な導電性材料を有する、ゲート領域と、を含む」点で一致する。
(エ)a 引用発明の「透明導電性酸化物層823上のゲート電極8260」は、「ゲート領域の上に配置されたコンタクト」であるといえる。
b 引用発明の「(屈折率は、1.7から2である)透明導電性酸化物層8230」は、「コア層1001の中央領域上のゲート酸化膜8240上」に位置し、それ自身の上に、さらに、「ゲート電極8260」を有することから、n型又はp型にドープされていることは、当業者にとって明らかである。
c SiO2の屈折率は、1.47程度であるから、引用発明の「(屈折率は、1.7から2である)透明導電性酸化物層8230」の屈折率は、SiO2の屈折率より高いといえる。
d してみると、本願補正発明と引用発明とは、
「ゲート領域の上に配置されたコンタクトであって、前記コンタクトの複数の側壁は、前記ゲート領域の複数の側壁と同一面上にある、コンタクトと、
を含み、
ドープされた半導体層は所定の導電型であり、透明な導電性材料は、所定の導電型であり、
前記透明な導電性材料の複数の側壁は、クラッド材料で覆われており、前記透明な導電性材料の屈折率は、SiO2の屈折率より高い」点で一致する。
(オ)引用発明の「リング共振器フィルタ」と本願補正発明の「光変調器」とは、「光学装置」である点で一致する。
イ 以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「光学装置であって、
導波路構造体を有するドープされた半導体層と、
前記ドープされた半導体層の前記導波路構造体の上に直接配置された誘電体層と、
前記誘電体層の上に直接配置されたゲート領域であって、前記ゲート領域は屈折率がシリコンより低い透明な導電性材料を有する、ゲート領域と、
前記ゲート領域の上に配置されたコンタクトであって、前記コンタクトの複数の側壁は、前記ゲート領域の複数の側壁と同一面上にある、コンタクトと、
を含み、
前記ドープされた半導体層は所定の導電型であり、前記透明な導電性材料は所定の導電型であり、
前記透明な導電性材料の複数の側壁は、クラッド材料で覆われており、前記透明な導電性材料の前記屈折率は、SiO2のクラッド材料の屈折率より高い、光学装置。」
ウ 一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
コンタクト及びクラッド材料に関して、
本願補正発明は、
(ア)コンタクトは「金属コンタクト」であり、
(イ)クラッド材料は「二酸化シリコン(SiO2)」であり、
(ウ)「金属コンタクトの複数の側壁は、二酸化シリコン(SiO2)のクラッド材料で覆われて」いるのに対して、
引用発明は、「ゲート電極8260」及び「低屈折率酸化物層」の材料が不明であり、「ゲート電極8260」の複数の側壁が前記「低屈折率酸化物層」で覆われていない点。
<相違点2>
ドープされた半導体層及び透明な導電性材料に関して、
本願補正発明は、
(ア)ドープされた半導体層は「p型にドープされ」、
(イ)透明な導電性材料は「n型にドープされた酸化亜鉛(ZnO)、n型にドープされた炭化シリコン(SiC)、及びn型にドープされたインジウムスズ酸化物(ITO)のうち1つ」であるのに対して、
引用発明は、不明である点。
<相違点3>
光学装置に関して、
本願補正発明は、「金属酸化物半導体(MOS)キャパシタ型変調器」であるのに対して、
引用発明は、フィルターである点。
(4)判断
ア 上記<相違点1>について検討する。
(ア)まず、上記<相違点1>のうち、(ア)及び(イ)について検討する。
a 一般に、電極材料として、AlやCu等は周知の材料であるから、引用発明の「ゲート電極8260」を「アルミ等の金属」にすることは、適宜なし得た設計事項である。
b また、引用文献には、図3に関連して「In an exemplary embodiment, the first substrate layer 1021 is the silicon substrate of a silicon-on-insulator (SOI) wafer, the first lower optical cladding layer 1011 is the silicon dioxide layer on top of the silicon substrate in the SOI wafer, the first optical core layer 1001 is the top silicon layer of the SOI wafer, and the first upper optical cladding layer 1031 is a silicon dioxide layer.」(訳:例示的な実施形態では、第1の基板層1021は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハのシリコン基板であり、第1の光クラッド層1011は、SOIウェーハのシリコン基板上の二酸化シリコン層であり、第1コア層1001が、SOIウェハの上面シリコン層であり、第1上側クラッド層1031は二酸化シリコン層である。)(第11欄第1ないし7行)と記載されている。
そして、図3と図8Cを比較すると、「the first optical core layer 1001」が共通していることから、引用発明の「低屈折率酸化物層」の材料として、「二酸化シリコン(SiO2)」を選択することに何ら困難性は認められない。
なお、必要ならば、例えば、国際公開第2011/030593号([0062])を参照。
[0062]には、「次に図13(c)に示すように、300~700nmの厚さのSiO2膜を酸化物クラッド層7として積層して形成し、CMP(chemical-mechanical polishing process)などによりSiリブ表面層が露出するように平坦化を行う。」と記載されている。
(イ)次に、(ウ)について検討する。
本願補正発明において、上記(ウ)に係る構成を採用する技術的意義について検討する。
a 本願明細書には、以下の記載がある(平成28年11月25日付け手続補正により補正されている。)。
「【0032】
金属コンタクト140が、変調器100のドレインに近接する上部シリコン層108の上に配置される。金属コンタクト140は、例えば、アルミニウム、タングステン、銅、又は別の適切な導電性材料から形成されてよい。金属コンタクト140は、図1に示されるように、アース142に電気的に結合されてよい。クラッド材料144が、導波路126、金属コンタクト134、及び金属コンタクト140の周囲に形成されてよい。したがって、上部半導体層108の導波路構造体110の側壁112、ゲート領域124の側壁128、及び金属コンタクト134の側壁136は、クラッド材料144で覆われる。一実施形態において、クラッド材料144は、ゲート領域124の屈折率(例えば、約1.9)より低い屈折率(例えば、約1.45)を有する。一実施形態において、クラッド材料144は、二酸化シリコン又は別の適切なクラッド材料である。」
b 上記記載からして、
クラッド材料を、金属コンタクト134の側壁136の周囲に成形するか否かは任意であるものと解され、その有無により効果にどのような差が生じるのかは特段明記はされていない。
c 一方、引用発明の「ゲート電極8260」を「アルミ等の金属」とした際に、その金属の保護や短絡防止等を目的として、その側壁をクラッド材料(絶縁材料)で覆うことは、必要に応じて適宜なし得たことである。
(ウ)よって、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
イ 上記<相違点2>について検討する。
(ア)a 引用発明の「シリコン導波路のドープされたコア層1001」をp型にドープするか、n型にドープするかは、当業者が引用発明を実施する際に適宜選択し得るものと解される。
b また、引用発明の「(屈折率は、1.7から2である)透明導電性酸化物層8230」は、n型又はp型にドープされていることは、当業者にとって明らかであるところ、透明導電性酸化物層の材料として、酸化亜鉛(ZnO)やインジウムスズ酸化物(ITO)を用いることは、下記の文献に記載されているようによく知られていることである(以下「周知技術」という。)。
国際公開第2010/103891号([0045]及び図3)
特開2011-258630号公報(【要約】)
特開2007-234808号公報(【要約】及び図1)
米国特許出願公開第2010/0215309号明細書(図7)
ちなみに、国際公開第2010/103891号の図3は、以下のものである。
4…p+ドープ半導体
6…電極コンタクト
7…酸化物クラッド
8…pドープ半導体
9…nドープ半導体
11…誘電体層
22…透明な導電層(インジウムスズ酸化物、酸化亜鉛等)
23…金属電極
また、米国特許出願公開第2010/0215309号明細書の図7は、以下のものである。
725…ゲート酸化物層
740…ITO膜
750…電極
(イ)してみると、引用発明の「シリコン導波路のドープされたコア層1001」をp型にドープするとともに、引用発明の「(屈折率は、1.7から2である)透明導電性酸化物層8230」を、例えば、「n型にドープされた酸化亜鉛(ZnO)」とすることは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。
(ウ)よって、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。
ウ 上記<相違点3>について検討する。
(ア)上記ア及びイで検討したように、引用発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。
(イ)また、「光導波路とリング共振器を組合わせた光変調器」は、下記の文献に記載されているように、当該技術分野でよく知られていることから、引用発明の「導波路8100とリング共振器800からなるリング共振器フィルタ」を光変調器として利用することに何ら困難性は認められない。
特開2013-41138号公報(【要約】)
特開2012-198465号公報(【要約】)
米国特許公開第2008/0056636号明細書(【要約】)
(ウ)そして、上記(イ)のようにした引用発明の「リング共振器フィルタ」は、金属・酸化物・半導体の構造を有することから、本願補正発明と同様に、「金属酸化物半導体(MOS)キャパシタ型」であるといえる。
(エ)よって、引用発明において、上記<相違点3>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて、容易になし得たことである。
エ 効果
本願補正発明の効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。
オ 判断のまとめ
本願補正発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
(5)平成31年4月5日提出の上申書における主張について
上申書において、以下のように主張していることから、この点について検討する。
「本願発明により、複数の層の側壁が同一面上にあるため、角や凹凸が少なく、容易に高品質の二酸化シリコンのクラッド材料で複数の層を覆うことができる。これにより、より低い光挿入損失で、より高い変調帯域幅の光変調器を提供することができる。」(第6頁後段)
しかしながら、本願明細書の【0032】には「…クラッド材料144が、導波路126、金属コンタクト134、及び金属コンタクト140の周囲に形成されてよい。」と記載されているだけで、その有無により効果にどのような差が生じるのかは特段明記はされていない。
よって、請求人の主張は、本願明細書の記載に基づかない主張であるから採用できない。
(6)審判請求書における主張について
審判請求書において、以下のように主張していることから、この点について検討する。
「引用文献1には、Silicon waveguide core layer 1001、source electrode 8220、およびdrain electrode 8230を覆うように形成された層が記載されているが、当該層が、二酸化シリコン(SiO2)のクラッド材料であることは記載されておらず、さらに、当該層は、ゲート電極8260の側壁を覆っていない。」(第13頁中段)
※当審注:上記引用文献1は、審決で引用する引用文献である。
しかしながら、引用発明の「低屈折率酸化物層」の材料として、「二酸化シリコン(SiO2)」を選択することは、上記「(4)判断 ア」で検討したように、当業者が容易になし得たことである。
また クラッド材料によりゲート電極8260の側壁を覆うことは、電極の保護や短絡防止等を目的として必要に応じて適宜なし得ることである。
よって、請求人の上記主張は、上記「(4)判断」の判断を左右するものではない。
(7)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、上記<相違点1>ないし<相違点3>に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が上記周知技術に基いて容易になし得たことである。
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものであり、本願補正発明は、当業者が引用発明及び上記周知技術に基いて容易になし得たことであるというほかない。
4 補正却下の決定の理由のむすび
上記「3」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」にて、本件補正前の請求項1に係る発明として記載したとおりのものである。
念のため、本願発明を再掲すると、以下のとおりのものである。
「金属酸化物半導体(MOS)キャパシタ型光変調器であって、
導波路構造体を有するドープされた半導体層と、
前記ドープされた半導体層の前記導波路構造体の上に直接配置された誘電体層と、
前記誘電体層の上に直接配置されたゲート領域であって、前記ゲート領域は屈折率がシリコンより低い透明な導電性材料を有する、ゲート領域と、
前記ゲート領域の上に配置された金属コンタクトと、
を含み、
前記ドープされた半導体層はp型にドープされ、前記透明な導電性材料は、n型にドープされた酸化亜鉛(ZnO)、n型にドープされた炭化シリコン(SiC)、及びn型にドープされたインジウムスズ酸化物(ITO)のうち1つである、
MOSキャパシタ型光変調器。」
2 対比・判断
本願発明は、前記「第2 2 補正目的」の検討によれば、本願補正発明から、
(1)「金属コンタクト」について、その複数の側壁は、ゲート領域の複数の側壁と同一面上にあること、
(2)「金属コンタクトの複数の側壁および透明な導電性材料の複数の側壁」について、二酸化シリコン(SiO2)のクラッド材料で覆われていること、
(3)「透明な導電性材料」について、その屈折率は、SiO2のクラッド材料の屈折率より高いこと、の限定を実質的に省いたものと認められる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 3 独立特許要件」で検討したとおり、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。
3 平成30年2月6日提出の意見書における主張について
意見書において、以下のように主張していることから、この点について検討する。
「本願発明により、透明な導電性材料が半導体層より低い屈折率を有することで、ゲート領域は、過度の光損失を生じさせることなく、その上に配置された金属コンタクトを有し得る(段落33,35,36)。」(第10頁後段)
しかしながら、引用発明の「透明導電性酸化物層8230」の屈折率は、1.7から2であるから、「シリコン導波路のp型コア層1001」の屈折率(3.4程度)よりも低いことは当業者にとって明らかであり、この点は、実質的な相違点ではない。
よって、請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
よって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-015077