特許拒絶査定不服審判
2018-012746
熱的絶縁層を用いて組み立てられた電子デバイス
- 審判番号
- 2018-012746
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-542359外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年09月25日
- 審決日
- 2019年12月03日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-542359「熱的絶縁層を用いて組み立てられた電子デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日国際公開、WO2013/074415、平成26年12月25日国内公表、特表2014-535174〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年11月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年11月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年11月11日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年5月22日付けで意見書と補正書が提出され、同年9月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月25日付けで意見書と補正書が提出されたが、平成30年5月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成30年9月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
民生用電子製品であって、
内側表面および外側表面を有した少なくとも1つの基板を有するハウジングと、
前記少なくとも1つの基板の前記内側表面の少なくとも一部に配置された熱的絶縁エレメントの層であって、前記熱的絶縁エレメントは中空の球状容器内の気体を含む前記基板の内側表面の熱的絶縁エレメントの層と、
I.半導体チップ、ヒートスプレッダ、およびそれらの間の熱媒介材料、または
II.ヒートスプレッダ、ヒートシンク、およびそれらの間の熱媒介材料、
のうちの少なくとも一方を有するアセンブリを有した少なくとも1つの半導体パッケージと、
を備え、
前記熱媒介材料が、(a)60重量%から90重量%のパラフィン、(b)0重量%から5重量%の樹脂、および(c)10重量%から40重量%の導電性フィラーを含み電子部品からヒートシンクへの熱の伝達を促進するための熱伝導性組成物を有している、
民生用電子製品。」
第3 引用文献
(1)引用文献1・引用発明
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定に引用された特開2002-319652号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の技術事項が記載されている。(下線部は、当審により付加した。)
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発熱性電子素子を備えた電気電子器具の内部構造に関する。」
イ.「【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記課題を解決するため、本発明は、発熱性電子素子を備えた電気電子器具の内部構造であって、前記電気電子器具の筐体の内面に配置された断熱部材と、前記断熱部材と前記発熱性電子素子との間に配置された熱伝導部材とを備えたことを特徴とする。
【0006】本発明において、電気電子器具とは、発熱性電子素子によって筐体の少なくとも一部(例えば把手部分)が過熱されるおそれのある器具であり、例えばノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話等が該当する。また、発熱性電子素子とは、電気抵抗成分を含む素子であり、例えばCPU、IC、パワートランジスタ、トランス、コイル、コンデンサ、モータ等が該当する。」
ウ.「【0015】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]図1は第1実施形態の断面図である。電気電子器具としてのノートパソコン10のプラスチック製の筐体11のうち、人体接触箇所12(例えばパームレストに相当するキーボードの前面部分)の内面には、発泡ポリウレタンからなる断熱シート13が固着されている。なお発泡ポリウレタンの熱伝導率は、軟質、硬質ポリウレタンフォームとも一般に0.01~0.03W/m・Kである。この断熱シート13のうち筐体と反対側の面には熱伝導性シリコーンゴム(熱伝導率0.8W/m・K)からなる熱伝導シート14が固着されており、この熱伝導シート14はプリント基板15上の発熱性電子素子16と接触している。また、熱伝導シート14は、少なくとも発熱性電子素子16のうち人体接触箇所12と対向する面を覆うことのできる大きさに形成されている。
【0016】このノートパソコン10を連続使用すると、発熱性電子素子16が発熱するが、この熱は熱伝導シート14に伝わりここに蓄積される。つまり、発熱性電子素子16が発生した熱は熱伝導シート14に逃がされる。一方、熱伝導シート14は蓄熱により温度が上昇するが、熱伝導シート14と筐体11との間には断熱シート13が配置されているため、この断熱シート13が熱伝導シート14から筐体11のうち断熱シート13が配置されている箇所つまり人体接触箇所12へ伝熱されるのを有効に防止する。したがって、ノートパソコン10の人体接触箇所12の温度上昇が抑制される。
【0017】このような内部構造を組み立てるには、例えば、予め断熱シート13と熱伝導シート14を貼り合わせた複合シート17を用意し、この複合シート17の断熱シート13側を筐体11の人体接触箇所12の内面に固着し、複合シート17の熱伝導シート14側を発熱性電子素子16と接触させればよい。
【0018】このように、本実施形態によれば、発熱性電子素子16が発生した熱を熱伝導シート14に逃がすことができるため、過熱による発熱性電子素子16の故障を未然に防止できる。また、ノートパソコン10の人体接触箇体12の温度上昇を抑制できるため、使用者に対して熱害つまり熱による不快感を与えることがない。更に、熱伝導シート14は熱伝導性シリコーンゴムからなるため、発熱性電子素子16の熱を奪うだけでなく、発熱性電子素子16を振動から保護する役割も果たす。」
エ.「【0020】[第3実施形態]図3は第3実施形態の断面図である。第3実施形態は、第1実施形態の熱伝導シート14の内部に放熱部材としてのヒートパイプ19を通し、このヒートパイプ19のうち熱伝導シート14の外に出た部分にヒートシンク20を設けた以外は、第1実施形態と同様の構成である。第1実施形態で説明したように、熱伝導シート14は発熱性電子素子16からの熱を蓄積するが、この熱は熱伝導シート14の内部に通されたヒートパイプ19によってきわめて効率よく冷却される。つまり、ヒートパイプ19は熱伝導シート14の内部を冷却する。また、ヒートパイプ19はヒートシンク20を介して放熱するため、ヒートパイプ19も冷却される。このため、第3実施形態は第2実施形態に比べて熱伝導シート14の冷却効率が高く、熱伝導シート14は第2実施形態に比べてより低温に保たれ、発熱性電子素子16が発生する熱を一層効率よく逃がすことができる。したがって、第3実施形態では、第1実施形態の効果がより一層顕著に得られる。」
オ.「
」
カ.「
」
・上記ウの段落【0015】、及び図1(上記オ)には第1実施形態として、電気電子器具としてのノートパソコン10のプラスチック製の筐体11のうち、人体接触箇所12(例えばパームレストに相当するキーボードの前面部分)の内面には、発泡ポリウレタンからなる断熱シート13が固着されること、さらに、この断熱シート13のうち筐体と反対側の面には熱伝導性シリコーンゴム(熱伝導率0.8W/m・K)からなる熱伝導シート14が固着されており、この熱伝導シート14はプリント基板15上の発熱性電子素子16と接触していることが記載されている。
してみると、引用文献1には、プラスチック製の筐体11の人体接触箇所12(パームレストに相当するキーボードの前面部分)の内面に固着される発泡ポリウレタンからなる断熱シート13と、該断熱シート13のうち筐体と反対側の面に固着される熱伝導性シリコーンゴム(熱伝導率0.8W/m・K)からなる熱伝導シート14と、該熱伝導シート14に接触するプリント基板15上の発熱性電子素子16と、を備えた電気電子器具としてのノートパソコン10が記載されている。
・上記イの段落【0006】には、発熱性電子素子16は、電気抵抗成分を含む素子であり、例えばCPU、IC、パワートランジスタ、トランス、コイル、コンデンサ、モータ等であることが記載されている。
・上記ウの段落【0016】には、発熱性電子素子16の熱が熱伝導シート14に伝わること、さらに、断熱シート13が熱伝導シート14から筐体11の人体接触箇所12へ伝熱されるのを有効に防止することが記載されている。
・上記エ、及び図3(上記カ)には、第3実施形態のものは第1実施形態の熱伝導シート14の内部に放熱部材としてのヒートパイプ19を通し、このヒートパイプ19のうち熱伝導シート14の外に出た部分にヒートシンク20を設け、ヒートパイプ19はヒートシンク20を介して放熱すること、また、このこと以外は第1実施形態と同様の構成であることが記載されている。
したがって、第3実施形態のものに着目し、上記記載事項及び図面を勘案すると上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「プラスチック製の筐体11のうち、人体接触箇所12(パームレストに相当するキーボードの前面部分)の内面に固着される発泡ポリウレタンからなる断熱シート13と、該断熱シート13のうち筐体と反対側の面に固着される熱伝導性シリコーンゴム(熱伝導率0.8W/m・K)からなる熱伝導シート14と、該熱伝導シート14に接触するプリント基板15上の発熱性電子素子16と、を備えた電気電子器具としてのノートパソコン10であって、
前記発熱性電子素子16は、電気抵抗成分を含む素子であり、例えばCPU、IC、パワートランジスタ、トランス、コイル、コンデンサ、モータ等であって、
前記熱伝導シート14は発熱性電子素子16の熱が伝わるものであり、また、前記断熱シート13は熱伝導シート14から筐体11の人体接触箇所12への伝熱を有効に防止するものであって、
前記熱伝導シート14の内部に放熱部材としてのヒートパイプ19を通し、このヒートパイプ19のうち熱伝導シート14の外に出た部分にヒートシンク20を設け、ヒートパイプ19はヒートシンク20を介して放熱するものである、
ノートパソコン10。」
(2)引用文献2
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定に引用された特表2006-522491号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の技術事項が記載されている。
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部表面、底部表面、および少なくとも1つの熱スプレッダ材料を含む熱スプレッダ構成要素と、
熱スプレッダ構成要素の底部表面の少なくとも一部に直接堆積される少なくとも1つの熱界面材料とを含む、熱伝達材料。
【請求項2】
熱材料が、さらに基板に結合される、請求項1に記載の熱伝達材料。」
イ.「【0026】
想定される架橋可能な熱界面構成要素は、少なくとも1つのゴム化合物、少なくとも1つのアミン樹脂、および少なくとも1つの熱伝導フィラーを組み合わせることによって作られる。この想定される界面材料は、液体または「ソフトゲル」の形態をとる。本明細書で使用されるとき、「ソフトゲル」は、分散相が、粘性の「ゼリー状」製品を作るために連続相と組み合わされるコロイドを意味する。熱界面構成要素のゲル状態またはソフトゲル状態は、少なくとも1つのゴム化合物組成と少なくとも1つのアミン樹脂組成との間の架橋反応を介してもたらさせる。より詳細には、アミン樹脂は、ゴム化合物に第1水酸基を架橋するためにゴム組成に組み込まれ、したがってソフトゲル相を形成する。したがって、少なくともいくつかのゴム化合物は、少なくとも1つの末端水酸基を含むことが想定される。本明細書で使用されるとき、用語「水酸基」は、OHラジカルを生じるために溶液においてイオン化する多くの無機および有機化合物で生じる一価の-OH基を意味する。また「水酸基」は、アルコールを特徴付ける基である。本明細書で使用されるとき、用語「第1水酸基」は、水酸基が、分子または化合物の末端位置にあることを意味する。本明細書で想定されるゴム化合物は、アミン樹脂との架橋反応を同様に受けることができる追加の第2、第3、または他の内部水酸基も含む。この追加の架橋は、ゲルが組み込まれるべき製品または構成要素に必要な最終的なゲル状態に応じて、望ましいことがある。」
ウ.「【0035】
熱界面構成要素または混合物に分散されるべき熱フィラー粒子は、有利には高い熱伝導率を有するべきである。適切なフィラー材料は、銀、銅、アルミニウム、およびそれらの合金などの金属、ならびに窒化ボロン、窒化アルミニウム、銀で被覆された銅、銀で被覆されたアルミニウム、導電ポリマー、およびカーボンファイバなどの他の化合物を含む。窒化ボロンと銀、または窒化ボロンと銀/銅の組合せも、高められた熱伝導率を提供する。少なくとも20重量%の量の窒化ボロンおよび少なくとも約60重量%の量の銀が特に有用である。好ましくは、約20W/m℃より大きい熱伝導率、および最も好ましくは少なくとも約40W/m℃の熱伝導率を有するフィラーが使用されることができる。任意に、約80W/m℃以上の熱伝導率を有するフィラーを有することが望ましい。」
エ.「【0039】
少なくとも1つのゴム化合物、少なくとも1つのアミン樹脂、および少なくとも1つの熱伝導フィラーを含む熱界面化合物が準備されると、組成は、追加の相変化材料が組成のある物理特性を変更する必要があるかどうかを決定するために、電子構成要素、ベンダ、または電子製品の必要性と比較されなければならない。特に、構成要素または製品の必要性が、組成または界面材料が「ソフトゲル」形態またはいくぶん液体形態であることを要求するなら、追加の相変化材料が、添加される必要が無い可能性がある。しかしながら、構成要素、層状材料、または製品が、組成または材料がより固体に似ている必要があるなら、少なくとも1つの追加の相変化材料が、添加されなければならない。
【0040】
本明細書で想定される相変化材料は、ワックス、ポリマーワックス、またはパラフィンワックスなどのそれらの混合物を含む。パラフィンワックスは一般式CnH2n+2を有し、約20℃から100℃の範囲の融点を有する固体の炭化水素の混合物である。ある想定される融点の例は、約45℃および60℃である。この範囲の融点を有する熱界面構成要素は、PCM45およびPCM60HDであり、これらは両方ともHoneywell International Inc.によって製造される。ポリマーワックスは、一般的にはポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスであり、約40℃から160℃の範囲の融点を有する。
【0041】
・・・・中略・・・・
【0042】
相変化材料は、熱界面構成要素の適用に有用である。なぜなら、それら相変化材料は、室温で固体であり、熱管理構成要素に対して容易に事前付着されることができる。相変化温度より上の動作温度で、材料は、液体であり熱グリースのように振舞う。相変化温度は、熱吸収および排除が行われる溶融温度である。」
オ.「【0079】
本明細書に記載される、想定される熱溶液、ICパッケージ、熱界面構成要素、層状界面材料、および熱スプレッダ構成要素の適用は、材料および/または構成要素を、他の層状材料、電子構成要素、または完成電子製品への組み込みを含む。本明細書で想定される電子構成要素は、電子ベースの製品で使用されることができる任意の層状構成要素を含むことが一般に考えられる。想定される電子構成要素は、回路板、チップパッケージング、セパレータシート、回路板の誘電体構成要素、印刷ワイヤリング板、およびコンデンサ、インダクタ、および抵抗器などの回路板の他の構成要素を含む。
【0080】
電子ベースの製品は、それらが、工業において既に使用される、または他の消費者によって既に使用される意味において「完成」されていることができる。完成した消費者製品の例は、テレビ、コンピュータ、携帯電話、ページャ、パームタイプオーガナイザ、携帯ラジオ、カーステレオ、および遠隔制御装置である。また、完成製品に使用される可能性がある、回路板、チップパッケージング、およびキーボードなどの「中間」製品も想定される。」
カ.「【0092】
図11から図18は、少なくもと1つの熱スプレッダ構成要素、少なくもと1つの熱界面構成要素、基板、およびある場合には少なくとも1つの粘着構成要素を含む、いくつかのタイプのこれら想定される層状の材料を示す。図11において、熱スプレッダ構成要素510、テープの形態である熱界面構成要素520、ダイ540、およびはんだボール555を含む充填されていない材料550を含む、熱伝達材料500が示される。熱伝達材料は、さらに基板530を含む。図12は、熱スプレッダ構成要素610、およびテープの形態である熱界面構成要素620を含む、ICパッケージ600で使用される熱伝達材料の他の想定される実施形態を示す。この熱伝達材料600は、図11の熱伝達材料500に組み込まれることができる。」
・上記カ及び図11によれば、熱界面構成要素はダイと熱スプレッダ構成要素間に配置されるものであって、また、上記オによれば、熱界面構成要素、ダイ、及び熱スプレッダ構成要素はコンピュータ、携帯電話等の電子製品に適用されるものである。
上記ア乃至カによれば、上記引用文献2には次の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されている。
「コンピュータ、携帯電話等の電子製品に用いられるダイと熱スプレッダ構成要素間の熱界面構成要素が、ゴム化合物、アミン樹脂、銀、銅等の高い熱伝導率を有する熱フィラー粒子、及びパラフィンワックスを含む混合物であって融点が45℃および60℃の相変化材料からなること。」
(3)引用文献3
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定に引用された特開2000-20171号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の技術事項が記載されている。
ア.「【0027】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、本発明に係る情報処理装置の好適な実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0028】図1に基づいて、携帯型情報処理装置の構成を説明する。50は、ノート型パーソナルコンピュータの本体部、51は、本体部をおおう蓋部、52は、本体部50と蓋部51が係合している係合軸であり、ヒンジ構造を有している。1は発熱体であるCPU(Central Processing Unit)、2はCPUの熱を効率的に集めヒートパイプ3に伝えるためのヒンジ部13付きの熱伝導ブロックである。熱伝導ブロック2は、熱伝導材であれば金属でなくても、カーボン等でもよい。熱伝導ブロック2のヒンジ部13の軸は係合軸52と同一軸上にある。ヒートパイプとは、排気した金属パイプの中に所定の温度で気化する液体(以下、作動液という)を適量封入し、高温端で気化熱を奪い、低温端で凝縮熱を放出させることにより高効率の熱伝達を行うもので、管の内壁に設けた縦方向の溝や多孔質構造(ウイック)の毛細管現象を利用して作動液を循環させるものである。4はヒートパイプ3と放熱板5とを有効に熱接続するための固定板、7は液晶表示パネル、10はバックライトである。12は蓋部51の外側の筐体である。70は筐体12で形成された枠部である。
【0029】図2は、蓋部51の外側の斜視図である。図3は、図1のA-A断面図である。図2において、70は蓋部51の外側の筐体12による枠部である。放熱板5は、蓋部51の外側の筐体12の一部分に露出して設けられている。80は筐体12の表面に塗布された発泡材塗料層である。71は熱伝導性の高い、かつ、絶縁性のあるシリコンラバーである。73はCPU1が搭載された基板である。基板73には、CPU1の熱を伝える熱伝導ホール76が設けられている。熱伝導ホール76は、基板73に設けられたビアホール又はスルーホールに銅などの金属が充填されたものである。72はシリコンラバー71を介して伝えられる熱を筐体12に伝える熱伝導プレートである。熱伝導プレート72の材質は、高熱伝導性があるものであれば、どのようなものでも構わない。また、バネ性があるものであれば、なお望ましい。
【0030】図2と図3に基づいて、携帯型情報処理装置の放熱処理を説明する。CPU1で発生した熱は、熱伝導ブロック2を介してヒートパイプ3に伝わり、二層流熱輸送により放熱板5に伝わる。放熱板5は、外部に露出しており、極めて効率的に熱拡散され、最終的に熱放射の効果で外気に熱放散される。」
イ.「【0039】図10は、図3におけるA部を示す筐体実装断面図である。金属筐体12として、例えば、マグネシウム又はマグネシウム合金を用いる。又は、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いてもよい。又は、その他密度が4.0g/cm3 以下又は5.0g/cm3 以下の軽金属を用いてもよい。一般塗装では、厚膜塗装を施すことが困難なので、事前に樹脂コーティング材87により下地を形成して表面処理層の厚さを増して、触感温度特性を改善する。具体的下地材としては、塩化ビニール樹脂等を用いればよく、およそ100ミクロン以上の厚さがあれば効果がある。この例は、異なる種類の塗布材(塗料86と樹脂コーティング材87)を多層構造で配置し、表面処理層の厚さを増して、触感温度特性を改善するものである。また、塩化ビニール樹脂の代わりに、高分子化合物(ポリマー)を用いればよく、例えば、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、ビニール樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ゴム、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、珪素樹脂、ポリアミド等であり、このポリマーを単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
・・・・中略・・・・
【0041】図12は、塗料の中に粒状の断熱材89を多数混入させた塗料を塗布した事例の筐体断面図である。具体的材料としては、熱伝導率が低く、断熱効果が大きいコルク粉や球内部が空洞となっている空気ビーズ材が適しており、実効的に塗膜内の有効熱伝導率が下がる効果で触感温度を和らげることができる。また、増量材としての働きもあるので塗装膜厚を増す効果がある。また、粒状の断熱材89を樹脂コーティング材87に混ぜるようにしても構わない。空気ビーズ材のかわりに、カーボンバルーン、アクリル及びスチレンの玉、珪素塩鉱物、シリカアルミナ繊維、ガラス等でもよく、空気ビーズ材及びカーボンバルーン等を単独もしくは2種類以上混合して用いてもよい。」
ウ.「図3
」
エ.「図12
」
上記ア、イ、図3(上記ウ)、及び図12(上記エ)によれば、上記引用文献3には次の技術事項(以下、「引用文献3記載の技術事項」という。)が記載されている。
「携帯型情報処理装置(ノート型パーソナルコンピュータ)の筐体12の表面に塗布された塗料層の塗料の中の粒状の断熱材89として、球内部が空洞となっている空気ビーズ材を用いること。」
(4)引用文献4
本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定に引用された特開2000-148306号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の技術事項が記載されている。
ア.「【0051】図6は本発明の第6の実施の形態を示す携帯用パソコン筐体断面図である。図6において、9は金属筐体であり、本実施例が上記の実施例と異なるのは、塗料基材15の中に、空気11を内包したマイクロカプセル16を混在させ、金属筐体表面に吹き付け、ディップ等により塗装している点である。本構成とすることで、マイクロカプセル中の空気が良好な断熱層として作用するため、塗装膜の熱伝導率を低下させ、人体への熱移動を小さくすることができる。さらに、マイクロカプセルの径を大きくすることで、コート層表面の粗さも大きくでき、人体との接触面積を小さくすることも可能となり、さらに人体の熱移動を低減できる。」
イ.「図6
」
上記ア、及び図6(上記イ)によれば、上記引用文献4には次の技術事項(以下、「引用文献4記載の技術事項」という。)が記載されている。
「携帯用パソコンの金属筐体表面に空気11を内包したマイクロカプセル16を混在させた塗料基材15を吹き付けることで、マイクロカプセル中の空気が良好な断熱層として作用すること。」
(5)引用文献5
本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2004-137308号公報(以下、「引用文献5」という。)には、次の技術事項が記載されている。
ア.「【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に熱源から発生する熱を、筐体やその他の熱に弱い部品に伝えない対策として、シリコーン系のスポンジ材料が使用されていたが、シリコーン系のスポンジ材料は、材料の性質上、特に2.0mm以下の成型品においてはスポンジ構造を形成するために発生する独立気泡がスポンジシートの上下にあるスキン層を突破ってしまう。このため、薄いスポンジシートになるほどシート状成型品を得ること自体が困難であったり、断熱効果が著しく損なわれることが以前から指摘されていた。一方、従来からシリコーン樹脂に無機中空フィラー又は有機樹脂製中空フィラーを配合したゴム組成物は種々の用途に適用されていたが、断熱シートとして適用した例は従来知られていなかった。」
イ.「【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、平均粒子径が200μm以下の中空フィラー(いわゆるマイクロバルーン)を混合した材料によって成型したシリコーンシート成型品により、軽量、低熱伝導性でかつ0.1mmの薄膜状から10mm以上の厚さまで安定して成型が可能であり、かつ優れた断熱効果を発現し得るシリコーン断熱シートが得られることを知見し、本発明をなすに至った。」
ウ.「【0029】
次に、本発明の特徴的成分である(B)成分の中空フィラー(いわゆるマイクロバルーン)は、硬化ゴム内に気体部分を付与することでスポンジゴムのように比重、熱伝導率を低下させるもので、フィラー自身が中空であることによってシリコーンゴム硬化物の熱伝導率を低下させることができると同時に、フィラー自身が弾性を持つことで、硬化時に成形圧力等の応力を緩和し、0.1mm程度の薄膜状においても中空フィラーがスポンジ構造のスキン層を突破る事がないため、安定して優れた断熱性を発現させる役割を担うものである。
【0030】
このような材料としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、カーボンバルーン、フェノールバルーン、アクリロニトリルバルーン、塩化ビニリデンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、シラスバルーンなどから選ばれる無機中空フィラーや、あるいは塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合物並びにこれらのうち2種類以上のモノマーの共重合物から選ばれる有機樹脂製中空フィラーなどのいかなるものでもかまわないが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合物並びにこれらのモノマーのうち2種類以上の共重合物から選ばれる有機樹脂製中空フィラーが好ましい。また中空フィラーの強度を持たせるため等の理由で表面に無機フィラー等を付着させたものでもよい。」
上記ア乃至ウによれば、上記引用文献5には次の技術事項(以下、「引用文献5記載の技術事項」という。)が記載されている。
「熱源から発生する熱を筐体やその他の熱に弱い部品に伝えない対策として、シリコーン断熱シートに中空フィラー(いわゆるマイクロバルーン)を混合することで、安定した優れた断熱性を発現させること。」
第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「筐体11」は、引用文献1の図1、3を参照すると少なくとも1つの板状の部材からなっており、また、該板状の部材は人体接触箇所12である表面とその反対の面に断熱シート13が固着される表面を有するものである。
したがって、引用発明の「プラスチック製の筐体11」は、本願発明の「内側表面および外側表面を有した少なくとも1つの基板を有するハウジング」に相当する。
イ.引用発明の「断熱シート13」は、筐体11の人体接触箇所12の内面に固着され、熱伝導シート14の熱が該人体接触箇所12へ伝熱するのを防止するものであり、熱を絶縁するエレメントの層といえる。
してみると、引用発明の「筐体11の人体接触箇所12の内面」は、本願発明の「内側表面」に相当し、また、引用発明の「プラスチック製の筐体11の人体接触箇所12(パームレストに相当するキーボードの前面部分)の内面に固着される発泡ポリウレタンからなる断熱シート13」は、本願発明の「前記少なくとも1つの基板の前記内側表面の少なくとも一部に配置された熱的絶縁エレメントの層であって、前記基板の内側表面の熱的絶縁エレメントの層」に相当する。
但し、熱的絶縁エレメントの層について、本願発明は「前記熱的絶縁エレメントは中空の球状容器内の気体を含む」ものであるのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点で相違する。
ウ.引用発明の「発熱性電子素子16」は、例えばCPU、IC、パワートランジスタであるから、本願発明の「半導体チップ」を含むものである。
また、引用発明の「ヒートパイプ19」、「ヒートシンク20」及び「熱伝導シート」は、各々、本願発明の「ヒートスプレッダ」、「ヒートシンク」及び「熱媒介材料」に相当する。
さらに、引用発明は、「熱伝導シート14」が「発熱性電子素子16」に接触し、「熱伝導シート14」の内部に「ヒートパイプ19」が通るから、「発熱性電子素子16」と「ヒートパイプ19」の間に「熱伝導シート」が備えられる。
してみれば、引用発明の「該熱伝導シート14に接触するプリント基板15上の発熱性電子素子16」及び「熱伝導シート14の内部に放熱部材としてのヒートパイプ19」は、本願発明の「I.半導体チップ、ヒートスプレッダ、およびそれらの間の熱媒介材料からなるアセンブリを有した少なくとも1つの半導体パッケージ」に相当する。
また、引用発明の「熱伝導シート14」は、電子部品である発熱性電子素子16の熱が伝わり、該熱は熱伝導シート14中のヒートパイプ19の端のヒートシンク20から放熱されるものであり、ヒートシンクへの熱を伝導するための組成物を有していることは明らかである。したがって、引用発明の「熱伝導シート14」は、本願発明の「前記熱媒介材料が、電子部品からヒートシンクへの熱の伝達を促進するための熱伝導性組成物」であることに相当する。
但し、熱伝導性組成物について、本願発明は「前記熱媒介材料が、(a)60重量%から90重量%のパラフィン、(b)0重量%から5重量%の樹脂、および(c)10重量%から40重量%の導電性フィラーを含」んでいるのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点で相違する。
エ.引用発明の「ノートパソコン10」は、電気電子器具であって、筐体11、断熱シート13、発熱性電子素子16、ヒートパイプ19、及び熱伝導シート14を備えるものであるから、本願発明の「民生用電子製品」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは次の点で一致ないし相違している。
(一致点)
「民生用電子製品であって、
内側表面および外側表面を有した少なくとも1つの基板を有するハウジングと、
前記少なくとも1つの基板の前記内側表面の少なくとも一部に配置された熱的絶縁エレメントの層であって、前記基板の内側表面の熱的絶縁エレメントの層と、
I.半導体チップ、ヒートスプレッダ、およびそれらの間の熱媒介材料からなるアセンブリを有した少なくとも1つの半導体パッケージと、
を備え、
前記熱媒介材料が、電子部品からヒートシンクへの熱の伝達を促進するための熱伝導性組成物を有している、
民生用電子製品。」
(相違点1)
熱的絶縁エレメントの層について、本願発明は「前記熱的絶縁エレメントは中空の球状容器内の気体を含む」ものであるのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点。
(相違点2)
熱伝導性組成物について、本願発明で「前記熱媒介材料が、(a)60重量%から90重量%のパラフィン、(b)0重量%から5重量%の樹脂、および(c)10重量%から40重量%の導電性フィラーを含」んでいるのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない点。
第5 検討
そこで、上記相違点について検討する。
(相違点1)について
熱的絶縁エレメントの層として、中空の球状容器内の気体を含むものを用いることは、引用文献3乃至5に記載されるように周知の技術である。
したがって、引用発明における断熱シート(熱的絶縁エレメントの層)に代えて上記周知の技術を採用して相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、相違点1に関して、審判請求人は、平成30年9月25日付け審判請求書において、引用文献2、3には中空の球状容器内の気体を含む断熱層そのものの開示はあるが、筐体の外側に配置されるものであり、筐体の内側の断熱層について、中空の球状容器内の気体を含む構成とすることは一切開示も示唆もされていないことから、本願発明に想到することは困難である旨主張している。
しかしながら、引用文献2、3(本審決においては引用文献3、4)から認定したものは、熱的絶縁エレメントの層(断熱層)として、中空の球状容器内の気体を含むものを用いることが周知の技術であるということである。そして、該周知の技術が筐体の外側に配置される断熱層に特有の構成を有しているとも認めることはできず、通常の断熱層に関してであれば適用できることは明らかである。また、引用発明の筐体の内側に設けられる断熱層が周知の技術の断熱層を採用できないものとも(阻害要因があるとも)認められない。してみれば、引用発明における筐体の内側表面に配置される断熱シートに代えて、前記周知の技術を採用して相違点1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるから、出願人の上記主張は採用できない。
(相違点2)について
引用文献2には、コンピュータ、携帯電話等の電子製品に用いられるダイ(半導体チップ)と熱スプレッダ構成要素(ヒートスプレッダ)間の熱界面構成要素(熱媒介材料)が、ゴム化合物、アミン樹脂、銀、銅等の高い熱伝導率を有する熱フィラー粒子、及びパラフィンワックスを含む混合物であって融点が45℃および60℃の相変化材料からなることが記載されている。
そして、熱媒体材料の組成を(a)60重量%から90重量%のパラフィン、(b)0重量%から5重量%の樹脂、および(c)10重量%から40重量%の導電性フィラーとすることは、普通に行われていることである。(必要であれば、拒絶査定で引用された特表2004-537163号公報の特に請求項1、特表2000-509209号公報の特に請求項5を参照。)
したがって、引用発明における発熱性素子(半導体チップ)とヒートパイプ(ヒートスプレッダ)間の熱伝導シート(熱媒介材料)として引用文献2に記載された技術事項を採用し、本願発明の上記相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の効果も、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、及び周知の技術から想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。
第6 むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術事項、及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項には言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-012746