特許拒絶査定不服審判
2018-008485
コンテンツ提供システム、コンテンツ提供方法、及びコンテンツ提供システム用のプログラム
- 審判番号
- 2018-008485
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-552110外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年06月20日
- 審決日
- 2018年12月11日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-552110「コンテンツ提供システム、コンテンツ提供方法、及びコンテンツ提供システム用のプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月22日国際公開、WO2018/034113〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成29年7月25日(優先権主張 平成28年8月16日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月29日付けで拒絶理由が通知され、平成30年1月5日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、同年3月23日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年4月13日付けで意見書が提出され、同年6月8日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月20日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において、同年7月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月8日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、同年8月28日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月31日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされ、同年9月21日付けで拒絶理由(以下、「当審の拒絶の理由」という。)が通知され、同年9月26日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年9月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ユーザにとって受動的に、前記ユーザを所定の状態に導くことができるコンテンツ提供システムであって、
コンテンツが提示されることでリアルタイムで変化するユーザの生命活動又は生命状態を示す生体情報として、前記ユーザの脳波、脈波、心拍、脈拍、発汗、体温、呼吸活動、血圧、血流速度、血流量、血中酸素濃度、筋電、眼電位、瞳孔の開き具合、視線の動き、音声、匂い、及びジェスチャーからなる群から選択される少なくとも1つをリアルタイムで検出し、前記生体情報に対応する生体信号を生成する生体センサと、
前記生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータである特徴量をリアルタイムで算出する特徴量算出部と、
前記コンテンツが、視覚コンテンツ、聴覚コンテンツ、触覚コンテンツ、嗅覚コンテンツ、及び味覚コンテンツからなる群から選択される少なくとも1つのコンテンツであり、リアルタイムで算出される前記特徴量に基づいて、前記コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部にリアルタイムで変更処理を施すコンテンツ処理部と、
前記変更処理が施された前記コンテンツデータに基づくコンテンツを前記ユーザに出力するコンテンツ出力部と
を備えるコンテンツ提供システム。」
第2 引用文献、引用発明等
1.当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2005-66133号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(1)「【0007】
[1]特殊効果を実現する原理
実施の形態に係る情報端末は、センサと、ゲームその他のプログラムを実行するCPU等の制御部とを備える。以下、ゲームプログラムを例にとり、これを単にプログラムとよぶ。制御部は、以下のいずれかの処理をする。
【0008】
処理1.制御部はセンサによって取得されたパラメータ(以下単にパラメータともよぶ)をプログラムに伝達する。「伝達」は、プログラムへ直接伝達するほか、プログラムと情報端末のOS(オペレーティングシステム)の媒介となる任意のプログラムやインタフェイスへ伝達するなど、間接的なものを含む。プログラムには、そのパラメータに依存する特殊効果が必要な個所に記述されている。そのため、プログラムを実行する制御部により、パラメータに依存する特殊効果がプログラム実行中に実現される。特殊効果は後述するが、例として、表示輝度を下げたり、音声出力を大きくしたり等である。なお、特殊効果は、複数のセンサによって取得された複数のパラメータの組合せに依存するものであってもよい。処理1によれば、プログラムは情報端末の有するセンサに応じていろいろな特殊効果を必要なタイミングで実行できるため、娯楽性を高めることができる。
【0009】
処理2.処理1では特殊効果はプログラムの側に委ねられた。処理2では、これを制御部が自律的に行う。すなわち、パラメータはプログラムに伝達されず、制御部がパラメータに依存する特殊効果をプログラム実行中に実施する。これにより、やはり情報端末の有するセンサを利用した特殊効果が実現するほか、パラメータを利用せず、またはパラメータの存在を知らない既存のプログラムでも特殊効果を享受することができる。」(下線は当審で付与。以下、同様。)
(2)「【0022】
特殊効果は、CPUとセンサ群114に含まれる任意数のセンサによってなされる。[1]で挙げた処理1、処理2を問わず、センサの種類とそれを利用する特殊効果をCPUの制御という形で以下説明する。ここでは、センサ群114には以下のセンサが含まれるとし、それぞれ言及するときは頭に付した英数字で略記する。」
(3)「【0033】
M1.臭気センサ
このセンサはK1同様の用途がある。
N1:リアルタイムクロック
現在の日時を取得することにより、四季や周囲の様子を把握することができる。そうした情報をゲーム内に反映する(処理1)ことができる。プログラムがゲームかどうかと関係なく、エアコンディショナーや室内照明の制御をすることもできる(処理2)。
O1:風向(風速)センサ
強い風が吹いていれば、ゲームの舞台を荒野や平原にしたり(処理1)、意図的に風切り音を入れる(処理1、2)ことができる。
【0034】
(2)ユーザ関連センサに基づく特殊効果
ユーザ固有の情報やそのときどきのユーザの状態に関するセンサを利用する。
A2.認証(指紋、虹彩、声紋、IDカード/チップ)センサ
登録されているユーザのみに対してゲームその他のサービスを許可するセキュリティ機能が実現する(処理2)。また、ユーザの性別や年齢その他の属性に応じてふさわしいゲームを選択したり(処理2)、実行中のゲームの過激さを調整する(処理1)ことができる。指紋その他の生理的情報をもとにユーザ固有のIDを発生させ、通信その他に利用することもできる(処理2)。
【0035】
B2.体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ
ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整する(処理1)ことができる。同様に、そうしたパラメータをもとに、背景音楽の種類や音量を変える(処理1、2)ことができる。
【0036】
C2.脳波センサ
ユーザの心理状態、疲労状態等に応じてB2同様の処理が可能である。
D2.圧力センサ
例えばこのセンサをボタン類やホールド部に実装することにより、ユーザの指の押圧力等を知ることができる。その結果、ゲーム中のユーザの興奮状態等を把握することができ、B2同様の処理が可能になる。また、押圧力をそのままゲームのスコアやキャラクタの属性に反映することもできる(処理1)。押圧力が高まったとき、震動モータを駆動してユーザの感情に同期した制御を実施できる(処理1、2)。
・・・中略・・・
【0040】
以上、主にひとつのセンサ出力を利用する処理を中心に説明した。しかし、より高度な処理として、複数のセンサからのパラメータの組合せによる処理も当然ありうる。例えば、A1+B1により、当然、A1単独、B1単独の場合の処理を複合的に備えることができる。そうした意味で、以上に挙げた任意のふたつ以上の組合せはすべて有効である。以下、例示する。プログラムはゲームに限らない。
【0041】
A1+A2: A1の画像認識でユーザ特定の精度を高めれば認証がより確実になる。
B1+B2: 周囲の環境とユーザの体調がともに得られるため、体調に応じて室温を高めに設定する等のきめ細かい制御が可能になる。
E2+F2: 酒量と体型など、比較的長期の健康管理に活用できる。
B1+M1: 周囲が高温になり、特定の臭気が発生したら火災の発生と認識、通報ができる。
E1+G1: ユーザの位置をいずれのビルの何階かという精度で特定でき、より臨場感のあるゲーム場面の設定や、より細かい情報の提供ができる。
D1+B2: 周囲が暗くてユーザの脈拍が激しいとき、ゲームのホラー度を非常に低く抑えてユーザをケアすることができる。」
上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、情報端末として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「情報端末は、センサと、ゲームその他のプログラムを実行するCPU等の制御部とを備え、
制御部はセンサによって取得されたパラメータ(以下単にパラメータともよぶ)をプログラムに伝達し、プログラムには、そのパラメータに依存する特殊効果が必要な個所に記述され、そのため、プログラムを実行する制御部により、パラメータに依存する特殊効果がプログラム実行中に実現され、特殊効果は、表示輝度を下げたり、音声出力を大きくしたり等であり、
または、パラメータはプログラムに伝達されず、制御部がパラメータに依存する特殊効果をプログラム実行中に実施し、
特殊効果は、CPUと任意数のセンサによってなされ、
体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサにより、ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整することができ、同様に、そうしたパラメータをもとに、背景音楽の種類や音量を変え、
脳波センサにより、ユーザの心理状態、疲労状態等に応じて体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサと同様の処理が可能である
情報端末。」
2.当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-258183号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(1)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のゲーム機では、プレイヤーの心理状態を適切に決定することが困難であり、プレイヤーの心理状態をより良くゲーム進行に反映させて、適切にゲーム進行を行わせることができるゲーム機の提供が望まれている。
【0006】そこで本発明の目的は、プレイヤーの脳波を利用することにより、プレイヤーの心理状態をより良くゲーム展開に反映させることのできるゲーム機を提供することにある。」
(2)「【0016】更に、このゲーム機は、プレイヤーの心理状態を検出するための脳波センサー4を有し、該脳波センサーから得られた脳波計測値がゲーム機本体2に入力されるようになっている。これはゲーム機のアナログ的な心理状態入力インターフエースを得るものである。」
(3)「【0021】図2は、ゲーム機の構成図である。10はバス線であり、これには表示装置としてのディスプレイ1及び音声出力装置としてのスピーカー11が接続されると共に、コントローラーやキーボード等から成る入力部3及び脳波センサー4を含んで構成される入力手段5が、接続されている。また、このバス線10には、コンピュータの構成要素であるCPU21、RAM22、画像処理部23、音声処理部24が接続され、更に内蔵する記憶手段たるメモリとして、ここではROMが接続されている。
【0022】本ゲーム機内のメモリには、大きく分けて4つのファイルが格納される。
【0023】第一のファイル6には、ゲームプログラム61、画像データ62、脳波分析プログラム63、音声データ64等が記憶されている。第二のファイル7には、脳波の組合せと対応する心理状態データと関連づけて記憶した心理分析データテーブルが記憶されている。第三のファイル8内には分析データに対して心理表現(対応)を関連づけて記憶した心理表現データテーブルが記憶されている。更に、第四のファイル9内には心理状態データに対して評価(得点)を関連づけて記憶した心理評価データテーブルが記憶されている。そして上記第二のファイル7と第三のファイル8及び第四のファイル9とは、その内容が別々に変更可能になっている。
【0024】本ゲーム機における内蔵コンピュータの中核をなすCPU21は、ゲームプログラム61を実行して表示すべき画像データ及び出力すべき音声データの指示、脳波の分析結果から心理状態、それに対応する画像データ、音声データ、評価等を行なう。RAM22は表示用の画像データ及び出力用の音声データを一旦格納するものであり、画像処理部23はCPU21からの指示に従って必要な画像データを生成してディスプレイ1に画像を表示する。また、音声処理部24はCPU21からの指示に従って必要な音声データを生成してスピーカー11から出力する。
【0025】上記第二のファイル7に記憶されている心理分析データテーブルは、脳の分担領域と脳波の種類と強さの組合せに対して、心理状態データ(分析データ)を対応させたものである。具体的には、“右脳のα波が強い”、“右脳のβ波が強い”、“左脳のβ波が強い”、という脳波が出ている場合、それぞれにおけるプレイヤーの心理状態は“平常心”、“色々な想像を行い活発に思考する”、“ただ驚き思考が止まる”といった状態に該当することから、“右脳のα波が強い”、“右脳のβ波が強い”、“左脳のβ波が強い”、“これらに該当しない”の順に、“A”“B”“C”“D”のクラス分けを行い、このクラス分け結果“A”“B”“C”“D”を、“平常心”“色々な想像を行い活発に思考する”“ただ驚き思考が止まる”“真面目にゲームをしていない”という心理状態データ(分析データ)として扱うものである。なお、この心理分析データテーブルは、脳波の種類と強さの組合せに対して、心理状態データ(分析データ)を対応させたものであってもよい。
【0026】また、第三のファイル8内に記憶されている心理表現データテーブルは、上記心理状態データ(分析データ)の“A”“B”“C”“D”に対して表示すべき画像情報(メッセージや絵等)及び出力すべき音声情報(人や動物の声、音楽、自然界の音、人工恐怖音等)を心理表現として関連づけたものである。具体的には、分析データ“A”では「プレイヤーの心理は平常心でゲームの女の子の反応は微妙な心境を表現する。」という内容が、分析データ“B”では「色々な想像を行い活発に思考する。スケベ(下心あり)女の子はH!と言って起こる。」という内容が、分析データ“C”では「ただ驚き思考が止まる。純情(下心なし)。女の子は真面目なのと言う。」という内容が、分析データ“D”では「真面目にゲームをして!!と女の子に怒られる。」という内容が、対応づけられている。」
(4)「【0041】かくして、プレイヤーの心理状態を脳波から分析しゲーム展開をプレイヤーの心理に合わせ変化させることができる。特に映像のみならず音声にも対応しているので、視覚と音響の両面からダイナミックに変化するプレイヤーの心理状態をゲームに反映させることができる。」
(5)「【0044】また、「学園物」ものと違って、いわゆる「ホラーゲーム物」では、特に音声の影響が強く出るが、映像に音響効果を加味した恐怖体験をさせて恐怖度を評価し、恐怖度が大きい程、心理状態が鎮静化するようにゲーム内容から恐怖度を減少させてやることもできる。」
3.当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2012-27893号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
作業エリア内の複数の対象者の身体の異常を前記作業エリア外の管理装置で管理するようにした異常検知システムにおいて、
前記異常検知システムは、
前記作業エリア内における前記複数の対象者それぞれによって1つずつ保持され、前記対象者の身体の異常を検知する複数の異常検知装置と、
複数の前記異常検知装置と無線通信し、前記対象者の身体の異常を検知するための前記対象者の生体情報に関する閾値、送信に関する周期である送信周期、および、前記対象者の身体の異常の判定に関する周期である判定周期を前記異常検知装置に送信する前記管理装置と、を備え、
前記異常検知装置は、
前記対象者の生体情報を取得するセンサと、
前記管理装置から受信した前記閾値、前記送信周期および前記判定周期を記憶する記憶手段と、
身体の異常を前記対象者に通知する異常通知手段と、
前記判定周期で前記センサから前記対象者の生体情報を取得し、前記送信周期で前記取得した生体情報を前記管理装置に送信しながら、
前記センサから前記生体情報を取得した際に、前記生体情報が前記閾値を超えているか否かを判定し、前記閾値を超えていた場合、前記管理装置に前記対象者の身体の異常の旨を送信するとともに、前記異常通知手段によって前記対象者に身体の異常を通知する処理手段と、
を備えることを特徴とする異常検知システム。」
(2)「【請求項7】
作業エリア内の複数の対象者それぞれに保持され、前記対象者の生体情報を取得するセンサを備えた異常検知装置と、前記作業エリア外に設けられ、前記異常検知装置と無線通信する管理装置とを有し、前記対象者の身体の異常を前記管理装置で管理するようにした異常検知システムであって、
前記異常検知装置は、前記センサの他に、メモリ、CPU、音発生手段を備え、
前記メモリは、前記生体情報の異常判定値である閾値を記憶し、
前記CPUは、前記センサからセンサデータを周期的に収集して前記メモリに格納し、前記センサデータが前記閾値を越えているか否かを判定し、前記センサデータが前記閾値を超えていない場合、前記管理装置へのデータ定期送信タイミングが到来したときに前記センサデータを前記管理装置に送信し、前記センサデータが前記閾値を超えている場合、前記音生手段(当審注:「音生手段」は「音発生手段」の誤記と認める。)によって音を発生させ、前記データ定期送信タイミングか否かにかかわらず前記管理装置に異常信号を送信する処理を行う
ことを特徴とする異常検知システム。」
(3)「【0004】
作業者の熱中症対策として、例えば、センサ、CPU(Central Processing Unit)、無線モジュール、メモリなどから構成されるモニタリング端末を作業者の防護服に取り付けるシステムがある(特許文献1参照)。このシステムでは、センサによって取得した作業者の体温や心拍数などの情報を一定周期で遠隔の外部コンピュータである管理装置に無線送信する。そして、管理装置側で異常判定を行い、異常の場合は、管理者が、モニタリング端末を介して作業者に休憩や退避の指示を出す。これによって、管理者が作業者の熱中症の危険をリアルタイムに監視できるようになり、そして、その情報を作業員に知らせることにより熱中症の危険を回避することができ、作業者の自己管理に任せる弊害を取り除くことができる。」
4.当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭57-150944号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(1)「従来のこの種の装置としては、10秒間程度の平均心拍数の最高値と最低値とを1分間にわたり電圧の形で記憶し、その間の最大変動量が所定の値に達すると警報を発し得るようにし、1分経過後には記憶値をリセツトして再度1分間についての最高及び最低心拍数を記憶して変動量の監視をくり返す所謂デンタルモニタが周知であった。」(第2頁左上欄第18行-同頁右上欄第5行の記載。)
第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
あ)引用発明の「ゲームその他のプログラム」や「背景音楽」は本願発明の「コンテンツ」に相当し、引用発明の「情報端末」は「ゲームその他のプログラムを実行する」ものであるから、本願発明の「ユーザにとって受動的に、前記ユーザを所定の状態に導くことができるコンテンツ提供システム」と「コンテンツ提供システム」である点では共通するといえる。
い)引用発明の「体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ」、「脳波センサ」によって取得された「パラメータ」は、「ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整する」ために用いられるから、ゲーム進行と共に変化するものであり、また、これらのセンサにより取得された、人体の状態を表す「パラメータ」が、ゲームの進行に応じて「リアルタイム」で変化することは明らかである。
したがって、引用発明の「体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ」、「脳波センサ」は、本願発明の「コンテンツが提示されることでリアルタイムで変化するユーザの生命活動又は生命状態を示す生体情報として、前記ユーザの脳波、脈波、心拍、脈拍、発汗、体温、呼吸活動、血圧、血流速度、血流量、血中酸素濃度、筋電、眼電位、瞳孔の開き具合、視線の動き、音声、匂い、及びジェスチャーからなる群から選択される少なくとも1つをリアルタイムで検出し、前記生体情報に対応する生体信号を生成する生体センサ」と「コンテンツが提示されることでリアルタイムで変化するユーザの生命活動又は生命状態を示す生体情報として、前記ユーザの脳波、脈波、心拍、脈拍、発汗、体温、呼吸活動、血圧、血流速度、血流量、血中酸素濃度、筋電、眼電位、瞳孔の開き具合、視線の動き、音声、匂い、及びジェスチャーからなる群から選択される少なくとも1つを検出し、前記生体情報に対応する生体信号を生成する生体センサ」である点では共通するといえる。
う)引用発明は「体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ」、「脳波センサ」によって取得された「パラメータ」により、「パラメータに依存する特殊効果がプログラム実行中に実現され、特殊効果は、表示輝度を下げたり、音声出力を大きくしたり等であり」、「ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整する」ものであること、同様に、「パラメータ」により、「背景音楽の種類や音量を変え」るものであることより、引用発明は、コンテンツが、視覚コンテンツ、聴覚コンテンツ、触覚コンテンツであることを含み、コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部に変更処理を施すものであるといえる。
そして、引用発明は、「特殊効果は、CPUと任意数のセンサによってなされ」るものであるから、引用発明の「CPU」は、本願発明の「前記コンテンツが、視覚コンテンツ、聴覚コンテンツ、触覚コンテンツ、嗅覚コンテンツ、及び味覚コンテンツからなる群から選択される少なくとも1つのコンテンツであり、リアルタイムで算出される前記特徴量に基づいて、前記コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部にリアルタイムで変更処理を施すコンテンツ処理部」と「前記コンテンツが、視覚コンテンツ、聴覚コンテンツ、触覚コンテンツ、嗅覚コンテンツ、及び味覚コンテンツからなる群から選択される少なくとも1つのコンテンツであり、前記コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部に変更処理を施すコンテンツ処理部」である点では共通するといえる。
え)引用発明は、「ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整することができ、同様に、そうしたパラメータをもとに、背景音楽の種類や音量を変え」るものであるから、調整したゲームや種類や音量を変えた背景音楽をユーザに出力していることは明らかであり、引用発明は、本願発明の「前記変更処理が施された前記コンテンツデータに基づくコンテンツを前記ユーザに出力するコンテンツ出力部」に相当する構成を有する。
したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「コンテンツ提供システムであって、
コンテンツが提示されることでリアルタイムで変化するユーザの生命活動又は生命状態を示す生体情報として、前記ユーザの脳波、脈波、心拍、脈拍、発汗、体温、呼吸活動、血圧、血流速度、血流量、血中酸素濃度、筋電、眼電位、瞳孔の開き具合、視線の動き、音声、匂い、及びジェスチャーからなる群から選択される少なくとも1つを検出し、前記生体情報に対応する生体信号を生成する生体センサと、
前記コンテンツが、視覚コンテンツ、聴覚コンテンツ、触覚コンテンツ、嗅覚コンテンツ、及び味覚コンテンツからなる群から選択される少なくとも1つのコンテンツであり、前記コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部に変更処理を施すコンテンツ処理部と、
前記変更処理が施された前記コンテンツデータに基づくコンテンツを前記ユーザに出力するコンテンツ出力部と
を備えるコンテンツ提供システム。」
〈相違点1〉
本願発明は、「ユーザにとって受動的に、前記ユーザを所定の状態に導くことができる」コンテンツ提供システムであるのに対し、引用発明は、ユーザにとって受動的に、ユーザを特定の状態に導くことができるとは特定されていない点。
〈相違点2〉
本願発明の「生体センサ」は、「生体情報」を「リアルタイムで検出」するものであるのに対し、引用発明の「体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ」、「脳波センサ」は、「リアルタイムで」検出するものとは特定されていない点。
〈相違点3〉
本願発明は、「前記生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータである特徴量をリアルタイムで算出する特徴量算出部」を備え、「コンテンツ処理部」は「リアルタイムで算出される前記特徴量に基づいて、前記コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部にリアルタイムで変更処理を施す」ものであるのに対し、引用発明は、「生体センサ」の出力である「生体信号」に相当するといえる「パラメータ」に基づいてゲームを調整し、背景音楽の種類や音量を変えるものではあるものの、「生体信号を特徴づけるデータである特徴量をリアルタイムで算出する特徴量算出部」を備え、「リアルタイムで算出される特徴量に基づいて」「リアルタイムで」変更処理を施すとは特定されていない点。
第4 相違点の検討
1.〈相違点1〉について
引用発明は、「ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整することができ」るものであるから、ユーザが自らゲームの難易度等の調整を行うことなく、すなわち、ユーザにとって受動的に、ゲームの難易度等が調整されるものである。
そして、ゲームの難易度等の調整の例として、引用文献1に「周囲が暗くてユーザの脈拍が激しいとき、ゲームのホラー度を非常に低く抑えてユーザをケアすることができる」(引用文献1の摘記事項(3)参照。)と、ユーザが過剰に恐怖感を感じないように調整することが記載されていることを考慮すれば、引用発明は、ゲームの難易度等を調整することにより、ユーザの精神状態を所定の状態に導き得るものであることが示唆されており、引用発明を「ユーザにとって受動的に、前記ユーザを所定の状態に導くことができる」ものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
2.〈相違点2〉及び〈相違点3〉について
(1)「特徴量算出部」について
周知例1の【0016】、【0021】-【0026】(上記「第2」の「2.」を参照)には、脳波センサーを有し、該脳波センサーから得られた脳波計測値がゲーム機本体に入力されるようになっているゲーム機において、ゲーム機内のメモリには、脳波の組合せと対応する心理状態データと関連づけて記憶した心理分析データテーブルが記憶され、分析データに対して心理表現(対応)を関連づけて記憶した心理表現データテーブルが記憶され、心理分析データテーブルは、脳の分担領域と脳波の種類と強さの組合せに対して、心理状態データ(分析データ)を対応させたものであり、心理表現データテーブルは、上記心理状態データ(分析データ)に対して表示すべき画像情報(メッセージや絵等)及び出力すべき音声情報(人や動物の声、音楽、自然界の音、人工恐怖音等)を心理表現として関連づける技術が記載されており、当該技術において、脳波センサーから得られた脳波計測値より、計測された脳波を特徴づけるデータである、脳波の種類と強さを算出しているのは明らかであるから、周知例1には、情報処理装置ともいい得るものであるゲーム機へ生体信号を入力するにあたり、生体センサの出力である生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータを算出する技術が示唆されているといえ、また、周知例2の【請求項1】、【請求項7】(上記「第2」の「3.」を参照)には、センサから対象者の生体情報を取得し、生体情報が閾値を超えているか否かを判定し、閾値を超えていた場合、異常を通知する技術が記載されており、センサが取得する生体情報が閾値を超えているか否かを判定することは、センサが取得した生体情報より、該生体情報が身体の異常と判定される閾値を超える大きさを有するという特徴を算出しているといえるものであるから、周知例2には、情報処理装置ともいい得るものである異常検知装置へ生体信号を入力するにあたり、生体センサの出力である生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータを算出する技術が記載されているといえ、さらに、周知例3の第2頁左上欄第18行-同頁右上欄第1行(上記「第2」の「4.」を参照)には、10秒間程度の平均心拍数の最高値と最低値とを1分間にわたり電圧の形で記憶し、その間の(平均心拍数の最高値と最低値との間の)最大変動量が所定の値に達すると警報を発する技術が記載されており、当該技術は、心拍を検出するセンサの出力に基づく平均心拍数より求めた変動量の値が所定の値に達するという特徴を算出しているといえるものであるから、周知例3には、情報処理装置ともいい得るものであるデジタルモニタへ生体信号を入力するにあたり、生体センサの出力である生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータを算出する技術が記載されているといえるように、「生体センサの出力である生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータを算出する技術」は、各種情報処理装置へ生体信号を入力するに当たり広く行われている本願優先日前周知技術である。
そして、引用発明は、体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサにより、ユーザの興奮状態に応じて処理を行い、脳波センサにより、ユーザの心理状態、疲労状態等に応じて処理を行う情報端末であるから、引用発明と上記周知技術は共に、情報処理装置を利用した生体信号処理の技術分野に関するものであり、引用発明に上記周知技術を適用し、センサ出力である生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータである特徴量を算出する特徴量算出部を備え、前記特徴量に基づいて、コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部に変更処理を施すものとすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
(2)「リアルタイム」での処理について
引用文献1には、「パラメータ」をリアルタイムで検出する旨記載されていないものの、引用発明の「体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ」、「脳波センサ」によって取得される「パラメータ」は、「パラメータに依存する特殊効果がプログラム実行中に実現され」るように使用されるものであるから、引用発明において「パラメータ」は、プログラム実行中にリアルタイムで検出されるものであるといえる。
また、引用発明が「体調(体温、発汗、脈拍、皮膚電位)センサ」、「脳波センサ」によって取得された「パラメータ」により、「パラメータに依存する特殊効果がプログラム実行中に実現され」、「ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整する」こと、同様に、「パラメータ」により、「背景音楽の種類や音量を変え」ることは、ゲームや背景音楽であるコンテンツの提供中に当該コンテンツを変更するものであるから、引用発明は、コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部にリアルタイムで変更処理を施しているものである。
そして、引用発明はリアルタイムで検出した「パラメータ」により、ゲームや背景音楽であるコンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部にリアルタイムで変更処理を施すものであるから、引用発明に上記周知技術を適用し、センサ出力である生体信号を解析し、前記生体信号を特徴づけるデータである特徴量を算出する特徴量算出部を備え、前記特徴量に基づいて、コンテンツのコンテンツデータの少なくとも一部に変更処理を施すものにおいて、コンテンツデータの少なくとも一部にリアルタイムで変更処理を施すために、特徴量がリアルタイムで算出されることは、明らかである。
したがって、引用発明に上記周知技術を適用し、相違点2及び3に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、引用発明は、「パラメータ」の取得や、「ユーザの興奮状態に応じてゲームの難易度、過激度、恐怖度、震動モータの駆動を調整する」こと、「背景音楽の種類や音量を変え」ることが、プログラム実行中に所定期間毎に行われる処理であることも想定し得るものであり、そのような処理は本願発明でいう「リアルタイム」での処理には含まれない場合があるとしても、「情報端末」や「ゲームその他のプログラム」の種類に基づく要求等に応じて、パラメータの取得や難易度等の調整をリアルタイムといい得る頻度で行うものとするために、引用発明の各構成をリアルタイムで処理するといい得る構成とすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計事項にすぎない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術により、当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-008485