特許拒絶査定不服審判
2018-004639
低温における、立方晶系及び六方晶系InN並びにAlNを伴うその合金のプラズマ支援原子層エピタキシー法
- 審判番号
- 2018-004639
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-517411外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年04月05日
- 審決日
- 2019年05月07日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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特願2015-517411「低温における、立方晶系及び六方晶系InN並びにAlNを伴うその合金のプラズマ支援原子層エピタキシー法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月27日国際公開、WO2013/192001、平成27年 9月 3日国内公表、特表2015-525484〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成25年(2013年)6月13日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年6月18日(以下,「本願優先日」という。)米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 1月27日付け 拒絶理由通知
平成29年 6月16日 意見書・手続補正
平成29年11月21日付け 拒絶査定
平成30年 4月 5日 審判請求・手続補正
平成30年12月13日付け 拒絶理由通知(以下,その理由を「当審拒絶理由」という。)
そして,当審拒絶理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,請求人からは何らの応答もない。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年4月5日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項で特定される次のとおりのものと認める。
「窒化インジウム(InN)材料を成長させる方法であって,300℃より低い温度においてパルス成長法を用いてInNを成長させる工程を有し,前記パルス成長法が300℃より完全に低い温度で結晶六方晶系InN及び/または結晶立方晶系InNを生成する,方法。」
第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は,本願発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2000-012902号公報
引用文献2 国際公開第2007/119433号
引用文献3 特開2008-186936号公報
第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
当審拒絶理由で引用された引用文献1には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体デバイス,半導体デバイスの製造方法及び製造装置に関し,特に,窒化物系化合物半導体デバイス,その製造方法及び製造装置に関する。」
「【0041】また,図2には本発明の第2の実施の形態に係る半導体デバイス製造装置40が示されている。なお,第2の実施の形態以降の半導体デバイス製造装置40において,第1の実施の形態に係る半導体デバイス製造装置10の構成と同一の構成には,同一の符号を付して説明を省略する。この半導体デバイス製造装置40は,半導体デバイス製造装置10における第2の原料活性化-供給部16の代わりに第2の原料活性化-供給部41を備え,第2の原料活性化-供給部41では,マイクロ波放電管28の代わりに高周波コイル42が使用され,高周波コイル42は石英管24の外周に巻き付けられ,図示しない高周波発振器に接続されている。
(中略)
【0043】半導体デバイス製造装置10,40,50では,例えば,第1の原料活性化-供給部14のガス導入管25から窒素源を連続供給し,マイクロ波放電によりプラズマ活性化する。第1の原料活性化-供給部14のガス導入管30からIII A族元素を含む有機金属化合物を間欠的に供給し,第2の原料活性化-供給部16,41,51のガス導入管25から補助材料として水素化合物を供給することができる。この時,ガス導入管30からは2種以上の有機金属化合物を同時に混合して供給することもできる。また第2の原料活性化-供給部16,41,51のガス導入管30からIII A族元素を含む有機金属化合物を間欠的に供給することもできる。
【0044】また,例えば,半導体デバイス製造装置10,40,50において第1の原料活性化-供給部14のガス導入管25から窒素源を供給し,第1及び第2の原料活性化-供給部14,16,41,51のガス導入管30からそれぞれ異なるIII A族元素を含む2種類以上の有機金属化合物を同時あるいは互いに重畳しないように供給することができる。そして,各有機金属化合物の結合エネルギーに合わせてVA族元素の活性化条件を変えるべく,各原料活性化-供給部において放電条件やガス流量等を変えることができる。従って,これらの半導体デバイス製造装置10,40,50を用いれば,不純物の混入の少ない膜や,高品質の混晶の膜を形成することができる。
【0045】III A族元素を含む有機金属化合物を間欠的に導入するためには,マスフローコントローラーを用いて外部信号によるオンオフ動作を行ってもよいし,バルブの開閉,また弁の開閉,また弁の切替え等で行うことができる。図4に導入の時間シーケンスの例を示した。III A族元素を含む有機金属化合物を間欠的に導入する場合,ガスを導入している時間と停止時間は同じでもよく(4-1),異なっていてもよい(4-2,4-3)。また,異なる原料を混合して間欠的に導入してもよい(4-4)。更に異なる原料を交互に間欠的に導入してもよいし(4-5),どちらかを繰り返し供給してもよい(4-6)。また1種類の原料と原料混合ガスとを交互に供給してもよい(4-7)。このように複数の原料を供給することによって任意の組成の混晶化合物を得ることができる。また,間欠的な導入は矩形波での動作でもサインカーブのように滑らかな動作でもよい。更に,周波数は導入時間と停止時間とを一周期とすると0.01~100Hzとすることができる。この周波数は膜の成長速度に合わせ,遅い場合には周波数も低くし,成長速度が速い場合には周波数も高くする必要があり,一層で一周期となるように設定するのが望ましい。」
「【0053】次に,本願の第2の発明の製造方法について,図2の半導体デバイス製造装置を用いて,更に詳しく説明する。この装置においては,窒素元素として,例えば,N2 を用い,第1の原料活性化-供給部14のガス導入管25から石英管24に導入する。マグネトロンを用いたマイクロ波発振器(図示せず)に接続されたマイクロ波導波管28にマイクロ波を供給し,石英管24内に放電を発生させる。第2の原料活性化-供給部41のガス導入管25から,例えばH2 を石英管24に導入する。高周波発振器(図示せず)から高周波コイル42に高周波を供給し,石英管24内に放電を発生させる。放電空間の下流側より,例えばトリメチルガリウムを第2の原料活性化-供給部41のガス導入管30より導入することによって,基板上に窒化ガリウム結晶を成膜することができる。
【0054】基板温度が高い場合及び/又はIII A族元素の原料ガスの流量が少ない場合には結晶になりやすい。また,基板の種類,基板温度,ガスの流量圧力,放電出力等の条件に依存する。本発明における基板の耐熱温度は600℃以下であり,100~600℃が好ましい。基板温度が300℃より低い場合にはIII A族元素の原料ガスの流量が少ない場合に結晶となりやすく,基板温度が300℃より高い場合には結晶となりやすい。また,例えばH2 放電を行った場合には更に結晶化を進めることができる。トリメチルガリウムの代わりにアルミニウム,インジウムを含む有機金属化合物を用いることもでき,これらを混合して用いることもできる。また,これらの有機金属化合物は,第1の原料活性化-供給部14のガス導入管30から別々に導入してもよい。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には「トリメチルガリウムの代わりにインジウムを含む有機金属化合物」を用いる「窒化物系化合物半導体デバイスの製造方法」が記載されていると認められるから,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「窒化物系化合物半導体デバイスの製造方法であって,半導体デバイス製造装置を用いて,基板上に窒化インジウムを成膜し,基板温度が300℃より低く結晶となりやすい原料ガスの流量であり,この半導体デバイス装置では,IIIA族元素を含む有機金属化合物を間欠的に供給すること。」
2 引用文献2の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献2には,図面とともに次の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は,III-V族窒化物層に関し,詳しくは発光デバイス等に使用できる結晶性のよいIII-V族窒化物層に関する。」
「[0085]〔製造方法〕
次に,本発明のIII-V族窒化物層の製造方法を説明する。
(中略)
[0104] 原料を間欠的に供給する成長方法の代表的な方法として,PLD法が挙げられる。PLD法は,間欠的なパルスレーザ照射によって材料原子をプラズマ状に励起し基板へ供給するため,基板が低温であっても,基板表面でマイグレーションするために必要な運動力学的エネルギーを原子が有しており,低温成長に好適である。」
3 引用文献3の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献3には,図面とともに次の記載がある。
「【0014】
一方,BN,GaN,AlN,InN,SiCには安定な結晶構造として六方晶構造だけでなく立方晶構造も存在する。このため,電子供給層としてこれらの化合物半導体を選択した場合には,結晶成長に当たって注意を要する。
【0015】
例えば,六方晶GaNは立方晶GaNと比べてより安定のため,熱平衡状態で成長を行うMOCVD法などを用いる。例えば,III族原料としてトリメチルガリウム(TMG),V族原料としてアンモニア(NH3)を用いる。成長基板として(111)面ダイヤモンドを用い,基板温度をNH3の分解する約900℃から約1100℃の間に設定することにより,より安定な六方晶GaN薄膜が形成できる。
【0016】
一方,立方晶GaNは六方晶GaNと比べて不安定であるため,結晶成長はより低温の非平衡状態で行う必要がある。このため,立方晶GaNを形成するためには,非平衡状態での成長ができるMBE法などを用いる。例えば,III族原料として金属ガリウム(Ga),V族原料として高周波印加によりプラズマ化した窒素(N2)を用いる。成長基板として(111)面ダイヤモンドを用い,基板温度を約400℃から約600℃の間に設定することにより,立方晶GaN薄膜が形成できる。」
第5 対比及び判断
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明は「基板上に窒化インジウムを成膜」する「窒化物系化合物半導体デバイスの製造方法」であるから,「窒化インジウム(InN)材料を成長させる方法」といえる。
イ 引用発明において「基板温度が300℃より低」いから,前記アを考慮すると,「300℃より低い温度において」「InNを成長させる工程」を有するということができ,「300℃より完全に低い温度で」InNを「生成する」ということができる。
ウ すると,本願発明と引用発明とは,下記エの点で一致し,下記オの点で相違する。
エ 一致点
「窒化インジウム(InN)材料を成長させる方法であって,300℃より低い温度においてInNを成長させる工程を有し,300℃より完全に低い温度でInNを生成する,方法。」
オ 相違点
(ア)相違点1
本願発明ではInNを成長させる工程が「パルス成長法を用いて」され,「前記パルス成長法が」InNを生成するのに対し,引用発明では「IIIA族元素を含む有機金属化合物を間欠的に供給する」点。
(イ)相違点2
本願発明では生成されるInNが「結晶六方晶系InN及び/または結晶立方晶系InN」であるのに対し,引用発明では「窒化インジウム」の結晶構造が明示されていない点。
(2)判断
ア 相違点1について
結晶性のよいIII-V族窒化物層の製造方法において原料を間欠的に供給する成長方法の代表的な方法としてPLD法があげられる(前記第4の2)から,引用発明の「間欠的に供給」をPLD法で実現することは,当業者が容易になしうることである。
イ 相違点2について
引用文献3(前記第4の3【0014】-【0016】)には,InNには安定な結晶構造として六方晶構造だけでなく立方晶構造も存在し,立方晶はより低温の非平衡状態で行う必要があることが記載されているから,成膜温度を調整して,引用発明における「結晶」である窒化インジウムを「結晶六方晶系InNまたは結晶立方晶系InN」とすることは当業者が容易に思いつくことである。
ウ 効果について
「結晶六方晶系InNまたは結晶立方晶系InN」が得られるという効果は,引用発明は「結晶となりやすい」条件で成膜するものであることから,当業者が予測できるものである。
(3)まとめ
よって,本願発明は,引用文献1-3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明については,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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