特許拒絶査定不服審判
2018-000982
伝熱板の製造方法及び内部に流路を設けない複合板の製造方法
- 審判番号
- 2018-000982
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-075618外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月24日
- 審決日
- 2019年01月07日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本軽金属株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 分類
- P18 .575-WZ (B23K) / P18 .121-WZ (B23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-75618「伝熱板の製造方法及び内部に流路を設けない複合板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月9日出願公開、特開2015-196180〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月1日の出願であって、平成29年5月19日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成30年1月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正(以下、「補正事項1」という。下線は補正箇所を示したものであり、請求人が付したもの。)された。
「ベース部材の表面に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、前記蓋溝の断面と略同じ矩形断面を呈する蓋板を挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って攪拌ピンを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、
前記本接合工程により形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることで矯正する矯正工程と、を含み、
前記本接合用回転ツールの前記攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっており、前記攪拌ピンの長さは前記蓋板の厚さより大きく、前記攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、
前記本接合工程では、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成する場合は、前記本接合用回転ツールを右回転させ、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成する場合は、前記本接合用回転ツールを左回転させ、
前記本接合工程において、回転した前記攪拌ピンを前記突合部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記ベース部材及び前記蓋板に接触させつつ前記攪拌ピンの先端を蓋溝の底面に達する位置まで挿入した状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする伝熱板の製造方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年7月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「ベース部材の表面に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って攪拌ピンを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、
前記本接合工程により形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることで矯正する矯正工程と、を含み、
前記本接合用回転ツールの前記攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成する場合は、前記本接合用回転ツールを右回転させ、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成する場合は、前記本接合用回転ツールを左回転させ、
前記本接合工程において、回転した前記攪拌ピンを前記突合部に挿入し、前記攪拌ピンのみを前記ベース部材及び前記蓋板に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする伝熱板の製造方法。」
2 補正の適否
本件補正前は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「蓋板」、「攪拌ピン」、「摩擦攪拌」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、「前記本接合工程では、」を追加する補正は、補正前にも特定済みであることが明らかなので、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2013-91104号公報(平成25年5月16日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。)。
a 【請求項1】
「ベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、蓋板を挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、
前記接合工程により形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることで矯正する矯正工程と、を含み、
前記矯正工程では、前記ベース部材を衝打具で衝打することにより、前記反りを矯正することを特徴とする伝熱板の製造方法。」
b 段落【0023】
「蓋板10は、図2の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2の蓋溝6の断面と略同じ矩形断面を形成する上面11、下面12、側面13a及び側面13bを有し、平面視略馬蹄状で形成されている。蓋板10は、本実施形態では、ベース部材2と同様の組成で形成されている。蓋板10の厚みは、蓋溝6の深さGと略同等に形成されている。また、蓋板10の幅は、蓋溝6の幅Eと略同等に形成されているため、蓋板10を蓋溝6に配置すると、蓋板10の側面13a,13bは、蓋溝6の側壁6a,6bとそれぞれ面接触するか又は微細な隙間をあけて対向する。」
c 段落【0030】
「ここで、本実施形態における接合工程の際に用いる接合用回転ツールFについて詳細に説明する。
接合用回転ツールFは、図4に示すように、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。接合用回転ツールFの寸法・形状は、ベース部材2の材質や厚さ等に応じて設定すればよい。」
d 段落【0031】
「ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。」
e 図4
図4からは、本接合用回転ツールの攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっていることが見て取れる。
f 段落【0037】
「図6の(c)に示すように、本接合工程によって、突合部J1及び突合部J2に沿って表面塑性化領域W1(W1a,W1b)が形成される。これにより、熱媒体用管20がベース部材2及び蓋板10によって密閉される。また、図1の(b)に示すように、本実施形態では、表面塑性化領域W1の深さが、蓋溝6の側壁6a,6b(図2の(b)参照)の深さと略同等に形成されているため、突合部J1及び突合部J2の深さ方向の全体を摩擦攪拌することができる。これにより、伝熱板1の気密性を高めることができる。なお、塑性化領域とは、接合用回転ツールFの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、接合用回転ツールFが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。」
g 段落【0058】
「[第二実施形態]
第二実施形態に係る伝熱板の製造方法は、図12に示すように、伝熱板21において、熱媒体用管20の周囲に形成される空隙部22に塑性流動材が流入されている点で第一実施形態と相違する。即ち、図1の(b)に示すように、第一実施形態においては、接合工程で摩擦攪拌を行ったとしても、熱媒体用管20の周囲に空隙が形成されてしまう。そこで、第二実施形態に示すように、熱媒体用管20の周囲に形成された空隙部22に塑性流動材を流入させて、当該空隙部22を埋めてもよい。なお、第一実施形態と共通する部分は説明を省略する。」
h 図12
図12からは、攪拌ピンの長さは蓋板の厚さより大きく、本接合工程において、回転した前記攪拌ピンを突合部に挿入し、攪拌ピンをベース部材及び蓋板に接触させつつ攪拌ピンの先端を蓋溝の底面に達する位置まで挿入した状態で摩擦攪拌を行うことが見て取れる。
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記記載事項(ア)a~c及びfには、ベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、前記蓋溝の断面と略同じ矩形断面を呈する蓋板を挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って攪拌ピンを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、
前記本接合工程により形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることで矯正する矯正工程と、を含み、
前記矯正工程では、前記ベース部材を衝打具で衝打することにより、前記反りを矯正することを特徴とする伝熱板の製造方法が記載されている。
b 上記記載事項(ア)c~e及びhには、攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっており、攪拌ピンの長さは蓋板の厚さより大きく、攪拌ピンの周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されていることが記載されている。
c 上記記載事項(ア)f及びhには、本接合工程において、回転した前記攪拌ピンを突合部に挿入し、攪拌ピンをベース部材及び蓋板に接触させつつ攪拌ピンの先端を蓋溝の底面に達する位置まで挿入した状態で摩擦攪拌を行うことが記載されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベース部材の表面に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、前記蓋溝の断面と略同じ矩形断面を呈する蓋板を挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って攪拌ピンを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、
前記本接合工程により形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることで矯正する矯正工程と、を含み、
前記本接合用回転ツールの前記攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっており、前記攪拌ピンの長さは前記蓋板の厚さより大きく、前記攪拌ピンの周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されており、
前記本接合工程において、回転した前記攪拌ピンを前記突合部に挿入し、前記攪拌ピンを前記ベース部材及び前記蓋板に接触させつつ前記攪拌ピンの先端を蓋溝の底面に達する位置まで挿入した状態で摩擦攪拌を行う伝熱板の製造方法。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「攪拌ピンの周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成され」ている構成は、本件補正発明の「攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されて」いる構成に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「ベース部材の表面に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、前記蓋溝の断面と略同じ矩形断面を呈する蓋板を挿入する蓋溝閉塞工程と、
前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って攪拌ピンを備えた本接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う本接合工程と、
前記本接合工程により形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることで矯正する矯正工程と、を含み、
前記本接合用回転ツールの前記攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっており、前記攪拌ピンの長さは前記蓋板の厚さより大きく、前記攪拌ピンの外周面には螺旋溝が刻設されており、
前記本接合工程において、回転した前記攪拌ピンを前記突合部に挿入し、前記攪拌ピンを前記ベース部材及び前記蓋板に接触させつつ前記攪拌ピンの先端を蓋溝の底面に達する位置まで挿入した状態で摩擦攪拌を行う伝熱板の製造方法。」
【相違点1】
本件補正発明は攪拌ピンのみを接触させた状態で摩擦攪拌を行っているのに対し、引用発明は攪拌ピン以外も接触している点。
【相違点2】
本件補正発明では、螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成する場合は、本接合用回転ツールを右回転させ、前記螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成する場合は、前記本接合用回転ツールを左回転させるのに対して、引用発明の螺旋溝及び本接合用回転ツールの回転方向との関係は明記されていない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
摩擦攪拌接合の技術分野において、負荷を小さくし、攪拌ピンを深い位置まで挿入するために、攪拌ピンのみを接触させた状態で摩擦攪拌を行うことは、従来周知の技術である(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2013-39613号公報(以下、「引用文献2」という。)の請求項1、段落【0004】~【0007】、【0019】、【0063】等、及び、原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された特開2013-49072号公報(以下、「引用文献3」という。)の請求項1、段落【0009】、【0012】、【0046】及び図1等参照)。
そして、引用発明のような対象物を摩擦攪拌するにあたり、当業者であれば特定の攪拌ピンを用いなければならないと認識するものではなく、摩擦攪拌に用いられる従来周知の攪拌ピンの中から適宜選択し得る程度の事項と認められるので、上記周知技術を適用して、攪拌ピンのみを接触させた状態で摩擦攪拌を行うように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、審判請求人は、審判請求書において、「引用発明1は、『ショルダ部の下端面は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位である』(引用文献1・明細書段落0031)というものである。したがって、引用発明1に基づいて、相違点1に係る構成に想到することは容易ではない。・・・引用文献1,2,3に接した当業者が、引用発明1に、仮に引用文献2,3に記載された周知技術を適用し、攪拌ピンのみをベース部材及び蓋板に接触させたとしても、「前記攪拌ピンの先端を蓋溝の底面に達する位置まで挿入した状態で摩擦攪拌を行う」という相違点1に係る構成に想到することは容易ではない。」と主張している(請求書第31頁5-3-1.(2)乃至第32頁5-3-1.(5))。
しかしながら、引用発明においても、当然摩擦攪拌の負荷をみており、摩擦攪拌接合の技術分野において、負荷を小さくし、攪拌ピンを深い位置まで挿入するという課題も、攪拌ピンのみを接触させた状態で摩擦攪拌を行うという上記課題を解決する手段も上記のとおり従来周知であるから、引用発明に上記周知の技術を適用することに格別な困難性は認められない。
引用文献1の段落【0031】における「ショルダ部の下端面は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位である」という構成についても、攪拌ピンのみを接触させた状態で摩擦攪拌を行うこと、すなわち上記の適用を阻害するものとは認められない。
イ 相違点2について
摩擦攪拌接合の技術分野において、攪拌ピンの外周面に刻設された螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成する場合は、本接合用回転ツールを右回転させ、螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成する場合は、本接合用回転ツールを左回転させることは、従来周知の技術である(例えば、原査定で新たに引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開平10-249552号公報(以下、「引用文献9」という。)の段落【0039】等、及び、原査定で新たに引用された、本願の出願日前に頒布された引用文献である特開2004-42117号公報(以下、「引用文献10」という。)の段落【0018】等、並びに上記引用文献2の段落【0062】及び【0063】、図1等参照)。
そして、引用発明に上記周知技術を適用して、螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて左回りに形成する場合は、本接合用回転ツールFを右回転させ、螺旋溝を基端側から先端側に向かうにつれて右回りに形成する場合は、本接合用回転ツールFを左回転させるようにして接合工程を行うことは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、審判請求人は、審判請求書において、「引用発明10は、回転ツールのピン部を異種金属部材同士の突き合わせ面近傍の一方の側に挿入し、『 ピンの外周面が両者の部材の垂直な突き合わせ面近傍になるように挿入されるクラッド材の製造方法』というものである。したがって、引用発明10に基づいて、相違点2に係る構成に想到することは容易ではない。・・・」と主張している。
しかしながら、引用発明及び周知の技術を示す上記文献はいずれも、螺旋溝を有する攪拌ピンを回転挿入する摩擦攪拌に関するものであり、引用発明に上記周知の技術を適用することに格別な困難性は認められない。
また、審判請求人は、審判請求書において、「引用発明9では、プローブを工具本体に対して突出長さ調節可能に取り付けているので、少なくともプローブの基端側は同径のスレート状とする必要があると思料する(引用文献9・明細書段落0041、図2,図3参照)。したがって、引用発明9に基づいて、「攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっており」という相違点2に係る構成に想到することは容易ではない。」と主張している。
しかしながら、「攪拌ピンは基端側から先端側に向かうにつれて先細りのテーパーとなっており」という点については、引用文献1に記載されている(上記(2)ア(イ)b参照)事項である。
ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記各周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。
エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年1月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年7月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-2に係る発明は、本願の出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-3、9-11に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、などというものである。
引用文献1:特開2013-91104号公報
引用文献2:特開2013-39613号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2013-49072号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2010-264467号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2007-301567号公報
引用文献6:特開2005-205449号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2004-358535号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8:特開2010-284704号公報(周知技術を示す文献)
引用文献9:特開平10-249552号公報(周知技術を示す文献)
引用文献10:特開2004-42117号公報(周知技術を示す文献)
引用文献11:特開2012-161840号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献等
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・検討
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「蓋板」、「攪拌ピン」、「摩擦攪拌」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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