特許拒絶査定不服審判
2023-008323
はんだ付け装置
- 審判番号
- 2023-008323
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-181368外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年05月22日
- 審決日
- 2024年06月26日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B23K) / P18 .113-Z (B23K) / P18 .575-Z (B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-181368「はんだ付け装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月 8日出願公開、特開2021- 53686〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年(2019年)10月1日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年10月31日付け :拒絶理由通知書
令和4年12月21日 :意見書の提出
令和5年 3月 9日付け :拒絶査定
令和5年 5月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和5年5月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
はんだ(H)を溶融する溶融部(11,21)と、
前記溶融部を加熱する加熱部(12)と、
前記溶融部の外側に設けられ、前記溶融部の熱放射を抑制する抑制部(16)と、
を備え、
前記抑制部は、前記溶融部の側周面のうち基端部を除く部分を覆い、且つ、前記溶融部の側周面のうち先端部を覆っていないはんだ付け装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
はんだ(H)を溶融する溶融部(11,21)と、
前記溶融部を加熱する加熱部(12)と、
前記溶融部の外側に設けられ、前記溶融部の熱放射を抑制する抑制部(16)と、
を備えるはんだ付け装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「抑制部」の内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で請求項1に対して引用され、本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-69252号公報(平成30年5月10日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、切り取られた糸半田を溶融して半田付けを行う装置に装着されるダイレクトヒートはんだ付けパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糸半田を切り取るカッターユニットと、切り取られた糸半田が落下可能な内径を有し、軸方向に貫通しており両端が開口した筒と、切り取られた半田片を筒の先端部で溶融させるための加熱手段とを備える、半田付け装置が知られている(特許文献1参照)。この半田付け装置では、切り取られた半田片は筒の上方の貫通口から筒の先端部まで落下し、そしてその先端部において加熱手段によって加熱されて溶融され、筒の下方の貫通口から筒内に入れられている被半田付け部が半田付けされる。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の半田付け装置では、半田付け時に発生したフラックス酸化物が装置に付着し、かかるフラックス酸化物の付着量が所定量を超えた状態で半田付けを継続すると、半田付けの質が低下してしまうためフラックス酸化物を除去することが必要である。しかし、かかるフラックス酸化物を除去することは容易ではないため、除去に時間がかかり、生産性の低下を招いていた。」
「【0006】
上記目的を達成するため、本発明によるダイレクトヒートはんだ付けパイプは、パイプと、コアと、スリーブと、保持手段と、を備える。後述するようにスリーブと保持手段とが一体化して、スリーブが保持手段の機能を兼ねてもよい。
パイプは筒状であって、軸方向に貫通し、半田片が落下可能な内径を有する。
コアも筒状であって、軸方向に貫通し、パイプの外径よりわずかに大きい内径を有する。
スリーブは、軸方向に貫通し、筒状の胴体部と円錐台筒状の先端部とを少なくとも有する。胴体部の内径はコアの外径よりも大きい。先端部の内径は、コアの外径よりも小さく、パイプの外径よりわずかに大きい。つまり、スリーブの先端部に、パイプを挿入することは可能であるが、コアを挿入することはできない。
保持手段は、パイプがコアに挿入され、かつコアがスリーブに挿入された状態で、パイプとコアとスリーブとの相対的な位置関係を保持する。」
「【0010】
コアの内周面とパイプの外周面との間には隙間がほとんど無い。このため、コアが有する発熱体から発生させられた熱は効率よくパイプに伝わる。
コアとパイプとはスリーブに挿入され、スリーブに包囲されているため熱が逃げにくい。このため、発熱体が発熱していない状態のときでも、パイプの温度は低下しにくい。つまり、発熱体の発熱が停止され、パイプの温度が半田片を溶融することができない温度まで低下した後に、発熱体の発熱が再開されたときに、パイプの温度が半田片を溶融することができる温度に再び上昇するまでの時間が短い。」
「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用したダイレクトヒートはんだ付けパイプ及び半田付け装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態のダイレクトヒートはんだ付けパイプの断面図である。図1に示すように、第1の実施形態のダイレクトヒートはんだ付けパイプ100は、パイプ10、コア20、スリーブ30、保持手段としての取付けガイド40を含んで構成されている。
パイプ10は取付けガイド40、コア20及びスリーブ30を貫通可能である。取付けガイド40にはネジ穴41があり、取付けガイド40に挿入されたパイプ10は、ネジ(図示せず)によって取付けガイド40に固定される。着脱可能に保持する方法としてネジ止めが例示されるが、着脱可能に保持することができればネジ止めに限定されない。
【0015】
コア20とスリーブ30とはその一部が取付けガイド40に挿入され、収納されるが、取付けガイド40を貫通しない。
パイプ10、スリーブ30、及び取付けガイド40は、モリブデン鋼、SUS(ステンレス鋼)など熱伝導率に優れる材料からなる。
コア20は、アルミナなど電気絶縁性、耐熱性に優れる酸化物系セラミックスなどからなる。
【0016】
<パイプ、コア>
パイプ10は筒状であり、その内径D101及び外径D102は位置によらずそれぞれ略一定である。
コア20も筒状であり、その内径D201及び外径D202は位置によらずそれぞれ略一定である。
【0017】
<スリーブ>
スリーブ30は筒状の胴体部31と円錐台筒状の先端部32とからなる。
スリーブ30の胴体部31の内径D311及び外径D312は位置によらずそれぞれ略一定である。
スリーブ30の先端部32の外形は円錐台形である。円錐台形とは、円錐を、底面に平行な平面で切り、小円錐の部分を除いた立体図形である。
スリーブ30の先端部32の内部には円柱状の空間がある。スリーブ30の先端部32の内部空間の内径D321は位置によらず略一定である。
【0018】
<スリーブの胴体部と先端部との関係>
図1に示すスリーブ30の先端部32の外径は、胴体部側は胴体部の外径D312と等しく、先端に向かうに従って徐々に小さくなっている。つまり、スリーブ30の胴体部の外径D312と先端部32の外径とは連続的に変化している。
ただし、スリーブ30の胴体部の外径D312と先端部32の外径とは不連続的に(階段状に)変化してもよい。
【0019】
スリーブ30の胴体部の内径D311はスリーブ30の先端部32の内径D321よりも大きい。
図1に示す先端部32の内部は、
パイプ10の外径D102と略等しい内径D321を有する円柱状の空洞部分と、
胴体部31の内周面と先端部32の内周面とをつなぐ空洞部分、つまり胴体部の内径D311から先端部32の内径D321へと徐々に変化する空洞部分と
からなる。
なお、胴体部の内径D311から先端部32の内径D321へと徐々に変化する空洞部分は無くてもよい。つまり、胴体部の内径D311が一定の領域の下端と、先端部32の内径D321が一定の領域の上端との高さ方向の位置が略同じであってもよい。」
「【0023】
コア20の下端部付近には、発熱体(例えば、アルミナヒーター、カンタル線など。図示せず)及び温度検出素子(例えば熱電対。図示せず)が存在する。発熱体はコア20の外周面に巻かれていて、絶縁性を有する接着剤によってコア20の外周面に接着されていてもよく、またコアに内蔵されていてもよい。
発熱体及び温度検出素子は、ヒーター電源線(図示せず)及び熱電対線(図示せず)などを内蔵するチューブ(図示せず)を介して電源(図示せず)や制御部(図示せず)に接続される。図1に示す穴42はこのようなチューブを通すための穴である。
【0024】
パイプ10がコア20に挿入され、かつコア20がスリーブ30に挿入され、かつパイプ10とコア20とスリーブ30との相対的な位置関係が取付けガイド40によって保持されたとき、パイプ10の下端面とスリーブ30の下端面とは略面一でもよく、またパイプ10の下端面がスリーブ30の下端面よりも下方(パイプ10の下端面が突き出ている状態)でもよい。」
「【0027】
図3はパイプ10の中に切り落とされた所定の長さの糸半田の溶融前後の状態を説明するための図であり、(a)は半田溶融前、(b)は半田溶融後を示す。
ピン333が、配線基板331のランド332に挿入され、さらにパイプ10に挿入されている。
切り落とされた半田片334は、パイプ10内を落下する。
そして、図3(a)に示すように、半田片334の下端がピン333の上端より下となる位置で止まる。半田片334の下端がランド332に接する位置まで半田片334が落下する場合もある。
半田片334は、図示しない発熱体によって加熱される。
そして、図3(b)に示すように、溶融半田335となってランド332とピン333とを半田付けする。このとき、パイプ10の下端面がランド332に接している又は近接していれば、ランド332も半田片334とともに加熱され、温度が上昇する。」
「【0035】
また、コア20の周囲にスリーブ30を被せることによって放熱を抑制している。具体的には、コア20の外周面とスリーブ30の内周面との間の空間の上方は取付けガイド40によって覆われている。また、その空間の下方は、パイプ10の外周面とコア20の外周面とスリーブ30の内周面とによって閉じられている。このため発熱体から発生された熱はコア20の外周面からコア20の内周面、パイプ10の外周面及びパイプ10の内周面を経て半田片334に効率よく伝わり、半田片334を溶融し溶融半田335へと変化させる。
【0036】
その後、通電が停止されても、発熱体の周囲のスリーブ30が放熱を抑制しているため、通電停止中の温度低下が少ない。このため、半田付け後のピンがパイプ10から抜かれ、半田付け前のピンがパイプ10に新たに挿入され、半田片が切り落とされて、通電が再開されてから、切り落とされた半田片が所定の温度に到達させられるまでの時間が短い。」
「図1
[図:0001413881000001.jpg]
」
「図3
[図:0001413881000002.jpg]
」
(イ)上記(ア)の記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 図1は、第1の実施形態のダイレクトヒートはんだ付けパイプの断面図であり、図3は、第1の実施形態のダイレクトヒートはんだ付けパイプの使用状態を示す断面図である。
b aに加え、段落【0023】の「コア20の下端部付近には、発熱体(例えば、アルミナヒーター、カンタル線など。図示せず)及び温度検出素子(例えば熱電対。図示せず)が存在する。」との記載、段落【0024】の「パイプ10がコア20に挿入され、かつコア20がスリーブ30に挿入され、かつパイプ10とコア20とスリーブ30との相対的な位置関係が取付けガイド40によって保持」との記載、段落【0035】の「発熱体から発生された熱はコア20の外周面からコア20の内周面、パイプ10の外周面及びパイプ10の内周面を経て半田片334に効率よく伝わり、半田片334を溶融し溶融半田335へと変化させる」との記載、及び段落【0027】の「半田片334は、図示しない発熱体によって加熱される。そして、図3(b)に示すように、溶融半田335となってランド332とピン333とを半田付けする。このとき、パイプ10の下端面がランド332に接している又は近接していれば、ランド332も半田片334とともに加熱され、温度が上昇する。」との記載より、「発熱体から発生した熱は、コア20からパイプ10を経て半田片334に伝わることで半田片334を溶融させており、パイプ10は、発熱体により加熱されている」と認められる。
c bに加え、段落【0035】の、「また、コア20の周囲にスリーブ30を被せることによって放熱を抑制している。具体的には、コア20の外周面とスリーブ30の内周面との間の空間の上方は取付けガイド40によって覆われている。また、その空間の下方は、パイプ10の外周面とコア20の外周面とスリーブ30の内周面とによって閉じられている。このため発熱体から発生された熱はコア20の外周面からコア20の内周面、パイプ10の外周面及びパイプ10の内周面を経て半田片334に効率よく伝わり、半田片334を溶融し溶融半田335へと変化させる。」との記載、及び段落【0036】の「その後、通電が停止されても、発熱体の周囲のスリーブ30が放熱を抑制しているため、通電停止中の温度低下が少ない。」との記載より、「スリーブ30は、一部がコア20の周囲に設けられ、その他の一部がパイプ10の周囲に設けられており、スリーブ30は、コア20からの放熱を抑制」していると認められる。そして、発熱体からの熱はコア20の外周面からコア20の内周面、パイプ10の外周面及びパイプ10を経て半田片334に伝っており、加えて、スリーブ30はパイプ10の一部を覆っているので、「スリーブ30は、パイプ10からの放熱も抑制」していると認められる。
d cに加え、段落【0014】の「パイプ10は取付けガイド40、コア20及びスリーブ30を貫通可能である」との記載及び段落【0015】の「コア20とスリーブ30とはその一部が取付けガイド40に挿入され、収納されるが、取付けガイド40を貫通しない」との記載より、スリーブ30は取付ガイド40を貫通しないから、スリーブ30は、パイプ10がガイド40を貫通している部分を覆っていない、すなわち、パイプ10の基端部を覆っていないと認められる。したがって、「スリーブ30は、外周面のうち基端部を除く部分を覆っている」と認められる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半田片334を溶融するパイプ10と、
前記パイプ10を加熱する発熱体と、
前記パイプ10の外側に設けられ、前記パイプ10の放熱を抑制するスリーブ30と、
を備え、
前記スリーブ30は、前記パイプ10の外周面のうち基端部を除く部分を覆っている半田付け装置200。」
(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「半田片334」は本件補正発明における「はんだ」に相当する。以下同様に「パイプ10」は「溶融部」、「発熱体」は「加熱部」、「放熱を抑制」することは「熱放射を抑制」すること、「外周面」は「側周面」、「スリーブ30」は「抑制部」、「半田付け装置200」は「はんだ付け装置」にそれぞれ相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「はんだを溶融する溶融部と、
前記溶融部を加熱する加熱部と、
前記溶融部の外側に設けられ、前記溶融部の熱放射を抑制する抑制部と、
を備え、
抑制部は、溶融部の側周面のうち基端部を除く部分を覆っているはんだ付け装置。」
【相違点】
抑制部が、本件補正発明では、「前記溶融部の側周面のうち先端部を覆っていない」のに対して、引用発明では、パイプ10の外周面のうち先端部を覆っていないかどうか不明な点
(4)判断
以下、相違点について検討する。
引用文献1の、段落【0024】に「パイプ10がコア20に挿入され、かつコア20がスリーブ30に挿入され、かつパイプ10とコア20とスリーブ30との相対的な位置関係が取付けガイド40によって保持されたとき、パイプ10の下端面とスリーブ30の下端面とは略面一でもよく、またパイプ10の下端面がスリーブ30の下端面よりも下方(パイプ10の下端面が突き出ている状態)でもよい。」と記載されているように、パイプ10の下端面がスリーブ30の下端面よりも下方(パイプ10の下端面が突き出ている状態)とする態様が意図されていると認められる。
そうすると、引用発明において、抑制部が、溶融部の側周面のうち先端部を覆っていないようにすることは、引用文献1の記載に基づいて当業者が容易になし得ることである。
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(5)審判請求人の意見について
審判請求人は、審判請求書の3ページにおいて、引用文献1について主に以下の2点を説明している。
ア 本件補正発明によれば、抑制部が溶融部の先端を覆っていないから、抑制部の先端部がランドに接触することを抑制でき、ランドが傷つくことを回避できるが、引用文献1のスリーブ30はパイプ10の先端部まで延びているから、スリーブ30の先端部がランドに接触してランドを傷つける構成である点。
イ 引用文献1のパイプ10が本件補正発明の「溶融部」に相当するなら、パイプ10はスリーブ30の「内側」に配置されているから、当該パイプ10によりスリーブ30の熱放射を抑制することはできない点。
上記アの説明を検討すると、上記(4)のとおり、引用文献1には、パイプ10(溶融部)の下端面をスリーブ30(抑制部)の下端面よりも突き出させることが示されているから、引用発明をそのように構成すれば、本件補正発明と同様に、スリーブ30(抑制部)の先端部がランドに接触して傷つけることを回避できることは明らかである。
したがって、審判請求人の上記アの説明は採用できない。
また、上記イの説明を検討すると、上記(3)のとおり、引用発明の「パイプ10」が本件補正発明の「溶融部」に相当し、同様に、「スリーブ30」が「抑制部」に相当するところ、本件補正発明は、溶融部により抑制部の熱放射を抑制するものではないから、審判請求人の上記イの説明は採用できない。
(6)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年5月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、引用文献1を引用する理由は、
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
というものである。
引用文献1:特開2018-69252公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]で検討した本件補正発明から、「抑制部」について「前記抑制部は、前記溶融部の側周面のうち基端部を除く部分を覆い、且つ、前記溶融部の側周面のうち先端部を覆っていない」という限定事項を削除したものである。
そして、本願発明と引用発明を対比すると、前記第2の[理由]2(3)と同様に対比できるから、両発明は、以下の点で一致し、相違点が存在しない。
【一致点】
「はんだを溶融する溶融部と、
前記溶融部を加熱する加熱部と、
前記溶融部の外側に設けられ、前記溶融部の熱放射を抑制する抑制部と、
を備えるはんだ付け装置。」
したがって、本願発明は、引用発明と同一のものであり、特許法29条1項3号に該当する。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、同条1項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-008323