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特許拒絶査定不服審判

2015-021267

被加工物の加工方法および分割方法

審判番号
2015-021267
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-058596外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年12月01日
審決日
2017年03月10日
公報発行日
2017年06月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B23K) / P18 .575-Z (B23K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-58596「被加工物の加工方法および分割方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月26日出願公開,特開2013-188785〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成24年3月15日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年 6月 5日付け:拒絶理由の通知 同年 7月27日  :意見書の提出 同年10月 8日付け:拒絶査定(同年同月13日発送) 同年12月 1日  :審判請求書の提出,同時に手続補正書の提出 第2 平成27年12月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成27年12月1日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「被加工物に分割起点を形成するための加工方法であって, パルス幅がpsecオーダーの超短パルス光である複数のパルスレーザー光を,それぞれの単位パルス光の前記被照射面における被照射位置が空間的かつ時間的に同一となるように,前記被加工物と対向配置させた一の照射用レンズから重畳的に照射する照射工程と, 前記複数のパルスレーザー光を,前記被照射位置が前記照射面において離散する条件にて加工予定線に沿って走査する走査工程と, を,前記複数のパルスレーザー光の少なくとも一つを非平行光として前記照射用レンズに入射させることによって前記複数のパルスレーザー光のそれぞれの焦点位置を前記被加工物内部の相異なる深さ位置としたうえで,併せて行うことにより,前記被加工物の異なる深さ位置において前記加工予定線の向きに沿った前記被加工物の劈開もしくは裂開を生じさせ,これによって前記被加工物に分割のための起点を形成する, ことを特徴とする被加工物の加工方法。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「被加工物に分割起点を形成するための加工方法であって, パルス幅がpsecオーダーの超短パルス光である複数のパルスレーザー光を,それぞれの単位パルス光の前記被照射面における被照射位置が空間的かつ時間的に同一となるように,前記被加工物と対向配置させた一の照射用レンズから重畳的に照射する照射工程と, 前記複数のパルスレーザー光を,前記被照射位置が前記照射面において離散する条件にて加工予定線に沿って走査する走査工程と, を,前記複数のレーザー光のそれぞれの焦点位置を前記被加工物内部の相異なる深さ位置としたうえで併せて行うことにより,前記被加工物の異なる深さ位置において前記加工予定線の向きに沿った前記被加工物の劈開もしくは裂開を生じさせ,これによって前記被加工物に分割のための起点を形成する, ことを特徴とする被加工物の加工方法。」 2 補正の適否 上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のレーザー光のそれぞれの焦点位置を前記被加工物内部の相異なる深さ位置と」することについて「複数のパルスレーザー光の少なくとも一つを非平行光として前記照射用レンズに入射させることによ」るとの限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項 ア 引用例1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である,特開2011-131256号公報(平成23年7月7日出願公開。以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 「【請求項1】 被加工物に分割起点を形成するための加工方法であって, パルスレーザー光の個々の単位パルス光ごとの被照射領域が被加工物において離散的に形成されるように前記パルスレーザー光を前記被加工物に照射することによって,前記被照射領域同士の間で被加工物の劈開もしくは裂開を順次に生じさせることにより,前記被加工物に分割のための起点を形成する, ことを特徴とする被加工物の加工方法。」 「【0047】 すなわち,第1加工パターンにおいては,加工予定線Lに沿って離散的に存在する複数の被照射領域と,それら複数の被照射領域の間に形成された劈開/裂開面とが,全体として,被加工物を加工予定線Lに沿って分割する際の分割起点となる。係る分割起点の形成後は,所定の治具や装置を用いた分割を行うことで,加工予定線Lに概ね沿う態様にて被加工物を分割することができる。 【0048】 なお,このような劈開/裂開加工を実現するには,パルス幅の短い,短パルスのレーザー光を照射する必要がある。具体的には,パルス幅が100psec以下のレーザー光を用いることが必要である。例えば,1psec~50psec程度のパルス幅を有するレーザー光を用いるのが好適である。」 (イ)上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。 a 引用例1に記載された技術は,被加工物に分割のための起点を形成する被加工物の加工方法であり(【請求項1】),加工予定線Lに沿って離散的に存在する複数の被照射領域に(【0047】),レーザー光を照射するものである(【0048】)。 b それら複数の被照射領域の間に形成された劈開/裂開面とが,全体として,被加工物を加工予定線Lに沿って分割する際の分割起点となる(【0047】)。 c レーザー光は,パルス幅の短い,短パルスのレーザー光であり,例えば,1psec~50psec程度のパルス幅を有するレーザー光を用いるのが好適である(【0048】)。 (ウ)これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」 という。)が記載されていると認められる。 「被加工物に分割のための起点を形成する加工方法であって, パルス幅が1psec~50psec程度の短パルスのレーザー光を被照射領域に照射し, 前記短パルスのレーザー光を,加工予定線Lに沿って離散的に存在する複数の被照射領域に照射し, 被加工物を加工予定線Lに沿って分割する際の分割起点となる劈開/裂開面を形成する, 被加工物の加工方法。」 イ 引用例2 (ア)同じく引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である,特開2005-28438号公報(以下,「引用例2」という。)には,次の記載がある。 「【0009】 本発明の加工装置においては,レーザ光線発生手段からのレーザ光線が光軸方向に変位せしめられた少なくとも2個の集光点に集光せしめられ,従って被加工物の厚さ方向に変位せしめられている少なくとも2個の部位において変質部を同時に生成せしめることができ,かくして所要厚さの変質部を充分効率的に生成することができる。」 「【0018】 図2は本発明に従って構成された加工装置の第二の実施形態を図示している。図2に図示する加工装置は,被加工物102を保持するための保持手段104,レーザ光線発生手段106及び光学手段108を具備している。保持手段104及びレーザ光線発生手段106は図1に図示する実施形態における保持手段4及びレーザ光線発生手段6と同一の形態でよい。 【0019】 図2に図示する実施形態における光学手段108は,スプリッタとして機能するハーフミラー124,ミラー126,ミラー128,ハーフミラー130,径変更手段として機能するエキスパンダ132及び共通集光レンズ134から構成されている。エキスパンダ132は2個の凸レンズ136及び138を含んでいる。レーザ光線発生手段106からのレーザ光線112は,ハーフミラー124を透過して直行する第一のレーザ光線112aとハーフミラー124によって反射されて実質上直角に方向変換される第二のレーザ光線112bとに分離される。第一のレーザ光線112aはエキスパンダ132を通過することによってその径が変更,更に詳しくはエキスパンダ132から遠ざかるに従って径が漸次増大する形態にせしめられ,しかる後にハーフミラー130を透過し,そして集光レンズ134によって被加工物102中の集光点120に集光せしめられる。一方,第二のレーザ光線112bは,ミラー126,ミラー128及びハーフミラー130によって反射されて夫々実質上直角に方向変換されて,その光軸が第一のレーザ光線112aの光軸に合致する状態にせしめられ,そして集光レンズ134によって被加工物102中の集光点122に集光せしめられる。集光点120と集光点122とは第一のレーザ光線112a及び第二のレーザ光線112bの光軸方向に変位せしめられている。第一のレーザ光線112aの集光点120の位置は,例えばエキスパンダ132を光軸方向に移動せしめることによって或いはエキスパンダ132のレンズ136又は138を光軸方向に移動せしめることによって,適宜に調節することができる。所望ならば,エキスパンダ132に代えて,例えば単一の凸レンズを使用し,かかる凸レンズの焦点が集光レンズ134よりも上流側に位置し,従って凸レンズの焦点を通過して径が漸次増大する形態にせしめられたレーザ光線が集光レンズ124に入光するようになすこともできる。」 (イ)上記記載から,引用例2には,次の技術が記載されている。 「レーザ光線発生手段からのレーザ光線を光軸方向に変位した少なくとも2個の集光点に集光し,被加工物の厚さ方向に変位した少なくとも2個の部位において変質部を同時に生成し,所要厚さの変質部を充分効率的に生成するために,第一のレーザ光線112aはエキスパンダ132を通過することによって,エキスパンダ132から遠ざかるに従って径が漸次増大する形態となり,集光レンズ134によって被加工物102中の集光点120に集光し,一方,第二のレーザ光線112bは,ミラー126,ミラー128及びハーフミラー130によって反射されて夫々実質上直角に方向変換されて,その光軸が第一のレーザ光線112aの光軸に合致する状態になり,集光レンズ134によって被加工物102中の集光点122に集光する技術。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は,被加工物に分割のための起点を形成する加工方法に係る技術であり,本件補正発明と,技術分野及び課題が共通する。 (イ)引用発明の「パルス幅が1psec~50psec程度の短パルスのレーザー光」は,そのパルス幅からして,本件補正発明の「パルス幅がpsecオーダーの超短パルス光であるパルスレーザー光」に相当する。 (ウ)引用発明の「前記短パルスのレーザー光を,加工予定線Lに沿って離散的に存在する複数の被照射領域に照射」は,レーザー光を加工予定線に沿って照射するのであるから,本件補正発明の「前記複数のパルスレーザー光を,前記被照射位置が前記照射面において離散する条件にて加工予定線に沿って走査する走査工程」に相当する。 (エ)引用発明の「被加工物を加工予定線Lに沿って分割する際の分割起点となる劈開/裂開面を形成」は,分割のための起点となる劈開もしくは裂開を生じさせるのであるから,本件補正発明の「加工予定線の向きに沿った前記被加工物の劈開もしくは裂開を生じさせ,これによって前記被加工物に分割のための起点を形成」に相当する。 イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 【一致点】 「被加工物に分割起点を形成するための加工方法であって, パルス幅がpsecオーダーの超短パルス光であるパルスレーザー光を,照射する照射工程と, 前記パルスレーザー光を,前記被照射位置が前記照射面において離散する条件にて加工予定線に沿って走査する走査工程と, を,併せて行うことにより,前記被加工物の異なる深さ位置において前記加工予定線の向きに沿った前記被加工物の劈開もしくは裂開を生じさせ,これによって前記被加工物に分割のための起点を形成する, ことを特徴とする被加工物の加工方法。」 【相違点】 「パルスレーザー光」について,本件補正発明は,複数のそれぞれの単位パルス光の前記被照射面における被照射位置が空間的かつ時間的に同一となるように,前記被加工物と対向配置させた一の照射用レンズから重畳的に照射するものであって,複数のパルスレーザー光の少なくとも一つを非平行光として前記照射用レンズに入射させることによって前記複数のパルスレーザー光のそれぞれの焦点位置を前記被加工物内部の相異なる深さ位置としているのに対し,引用発明は,当該構成について特定されていない点。 (4)判断 以下,相違点について検討する。 引用例2には,上記(2)イのとおり,レーザ光線発生手段からのレーザ光線を光軸方向に変位した少なくとも2個の集光点に集光し,被加工物の厚さ方向に変位した少なくとも2個の部位において変質部を同時に生成し,所要厚さの変質部を充分効率的に生成することが示されている。 そして,引用例2は,本件の出願日前に公知となっており,他の引用例を示すまでもなく,被加工物の厚さ方向に変位した部位,すなわち被加工物内部の相異なる深さ位置においてレーザ光による変質部を同時に生成すること自体は周知な技術と認められ,引用発明において,複数のパルスレーザー光のそれぞれの焦点位置を前記被加工物内部の相異なる深さ位置とするという発想に至る点には困難性は認められない。 そして,具体的構成においても,引用例2に「第一のレーザ光線112aは・・・エキスパンダ132から遠ざかるに従って径が漸次増大する」ことが示されており,これは,本件補正発明の「レーザー光の少なくとも一つを非平行光として前記照射用レンズに入射させること」と差異はない。 そして,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2に記載された技術の各々が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 (6)審判請求人の主張について 審判請求人は,審判請求書において「引用文献1はもとより,引用文献2にも『複数のパルスレーザー光の少なくとも一つを非平行光として前記照射用レンズに入射させること』は記載も示唆もされていません。」と主張している。しかしながら,上述のとおり,引用例2の「第一のレーザ光線112aは・・・エキスパンダ132から遠ざかるに従って径が漸次増大する」ことは,レーザ光線の径が漸次増大するのであるから,照射用レンズに入光される第一のレーザ光線112aが,非平行光であることは明らかであり,審判請求人の主張は採用できない。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成27年12月1日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。再掲すれば,次のとおりである。 「被加工物に分割起点を形成するための加工方法であって, パルス幅がpsecオーダーの超短パルス光である複数のパルスレーザー光を,それぞれの単位パルス光の前記被照射面における被照射位置が空間的かつ時間的に同一となるように,前記被加工物と対向配置させた一の照射用レンズから重畳的に照射する照射工程と, 前記複数のパルスレーザー光を,前記被照射位置が前記照射面において離散する条件にて加工予定線に沿って走査する走査工程と, を,前記複数のレーザー光のそれぞれの焦点位置を前記被加工物内部の相異なる深さ位置としたうえで併せて行うことにより,前記被加工物の異なる深さ位置において前記加工予定線の向きに沿った前記被加工物の劈開もしくは裂開を生じさせ,これによって前記被加工物に分割のための起点を形成する, ことを特徴とする被加工物の加工方法。」 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された引用例1,2及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「パルスレーザー光の少なくとも一つを非平行光として前記照射用レンズに入射させること」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2015-021267

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