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特許異議申立

2017-701189

メタクリル系樹脂の製造方法

審判番号
2017-701189
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-010193外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年12月13日
審決日
2018年08月21日
公報発行日
2018年11月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(C08F) / P1652.121-YAA(C08F) / P1652.537-YAA(C08F) / P1652.536-YAA(C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6148802号発明「メタクリル系樹脂の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6148802号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2及び3について訂正することを認める。 特許第6148802号の請求項2及び3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨 1.本件特許の設定登録までの経緯 本件特許第6148802号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2017-10193号、以下「本願」という。)は、平成28年12月5日(優先権主張:平成28年3月15日、特願2016-51504号)に出願人旭化成株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願(特願2016-235777号)の一部を新たに平成29年1月24日に出願したものであり、平成29年5月26日に特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、平成29年6月14日に特許公報が発行されたものである。 2.本件異議申立の趣旨 本件特許につき平成29年12月13日付けで特許異議申立人高瀬彌平(以下「申立人」という。)により「特許第6148802号の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。(よって、請求項1に記載された発明についての特許は、本件異議申立に係る審理の対象外である。) 3.以降の手続の経緯 平成30年 3月27日付け 取消理由通知 平成30年 5月31日   訂正請求書・意見書(特許権者) 平成30年 6月13日付け 通知書(申立人あて) 平成30年 7月12日   意見書(申立人)・証拠説明書 第2 申立人が主張する取消理由 申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第3号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1ないし4が存するとしているものと認められる。 取消理由1:本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、その発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由2:本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、その発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由3:本件特許の請求項2に係る発明は、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に照らしてその解決課題が解決できるものではなく、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項2に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 取消理由4:本件特許に係る請求項2に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件の請求項2に係る発明についての特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ・申立人提示の甲号証 甲第1号証:特開平9-151218号公報 甲第2号証:特開平9-324016号公報 甲第3号証:特開2001-151814号公報 なお、申立人は、上記平成30年7月12日の意見書において、さらに下記甲第4号証を提示している。 甲第4号証:特開2015-135355号公報 (以下、上記甲第1号証ないし甲第4号証につき、それぞれ「甲1」ないし「甲4」と略していう。) 第3 当審が通知した取消理由の概要 当審が平成30年3月27日に通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。 「当審は、 申立人が主張する上記取消理由1ないし4により、本件の請求項2に係る発明についての特許は取り消すべきもの、 と判断する。 ・・(中略)・・ 1.取消理由3について ・・(中略)・・ (3)小括 よって、本件の請求項2の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項2に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項(柱書)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2.取消理由4について ・・(中略)・・ したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項2に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 3.取消理由1及び2について ・・(中略)・・ エ.検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明、すなわち本件特許の請求項2に係る発明は、甲1ないし甲3のいずれかに記載された発明であるか、甲1ないし甲3のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)取消理由1及び2に係る検討のまとめ よって、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができないものであるから、本件の請求項2に係る発明についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 第4 平成30年5月31日付け訂正請求の適否 1.訂正請求の内容 上記平成30年5月31日にされた訂正請求では、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2及び3について訂正することを求めるものであり、以下の(1)ないし(6)の訂正事項からなるものである。(なお、請求項1については、訂正の前後において実質的に訂正されていない。また、下記の訂正事項に係る下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2に「・・・メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)、及びラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・」と記載されているのを、選択的に記載されている「(B)構造単位」を別の独立請求項に記載する形に訂正する。具体的には、請求項2において、「・・・メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・」に訂正し、また、請求項3において、「・・・メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、ラクトン環構造単位(B-2)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・」に訂正する。 (2)訂正事項2 上記訂正事項1における訂正後の特許請求の範囲の請求項2に、「・・・前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、・・・」と記載されているのを、「・・・前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し、かつ、・・・」に訂正する。 (3)訂正事項3 上記訂正事項1における訂正後の特許請求の範囲の請求項3に、「・・・前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する・・・」と記載されているのを、「・・・前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する・・・」に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の【0014】に、「・・・[1] メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)とを含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)、及びラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・メタクリル系樹脂の製造方法。  [2] メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)とを含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)、及びラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する・・・メタクリル系樹脂の製造方法。」と記載されているのを、「・・・[1] メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)とを含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)、及びラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・メタクリル系樹脂の製造方法。  [2] メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)とを含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、・・・前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し、かつ、前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する・・・メタクリル系樹脂の製造方法。  [3] メタクリル酸エステル単量体由来の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)とを含み、前記(B)構造単位が、ラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加することを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。」に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の【0156】に、「実施例4」と記載されているのを、「参考例1」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の【0162】の記載につき、 「【表2】 」と記載されているのを、 「【表2】 」と訂正する。 2.検討 なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項2を「旧請求項2」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項2及び3をそれぞれ「新請求項2」ないし「新請求項3」という。 (1)訂正の目的要件について 上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。 上記訂正事項1に係る訂正は、旧請求項2につき「(B)構成単位」に係る並列的選択肢に基づいて2つの請求項に単に分割するものと認められ、さらに、上記訂正事項2又は訂正事項3に係る訂正により、上記訂正事項1に係る訂正により分割された各請求項につき、それぞれ、「重合開始剤の添加開始から30分以内に」添加すべきラジカル重合開始剤の量の「ラジカル重合開始剤の全添加量」に対する割合の下限値又は「重合開始剤の添加開始から30分以降に」添加すべき単量体の量の「単量体の全添加量」に対する割合の下限値をいずれも増加させてそれらの割合の範囲を限定するものと認められる。 してみると、訂正事項1に係る訂正に加えて、訂正事項2に係る訂正及び訂正事項3に係る訂正をすることにより、旧請求項2から分割された2つの請求項のそれぞれにつき、実質的に減縮されて新請求項2及び3としているのであるから、訂正事項1ないし3に係る各訂正は、併せて特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 また、上記訂正事項4ないし6に係る各訂正は、上記訂正事項1ないし3に係る各訂正により特許請求の範囲が訂正されたことに伴い、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載につき、不整合となった記載を単に正すか、特許請求の範囲に記載された事項を具備しないものとなった「実施例」につき単に「参考例」としたものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 したがって、上記訂正事項1ないし6による各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。 (2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について 上記(1)に示したとおり、上記訂正事項1に係る訂正に加えて、訂正事項2に係る訂正及び訂正事項3に係る訂正をすることにより、旧請求項2から分割された2つの請求項のそれぞれにつき、特許請求の範囲が実質的に減縮されて新請求項2及び3とされていることが明らかである。 また、訂正事項4ないし6に係る各訂正は、訂正された特許請求の範囲の記載との対応関係が不整合となった明細書の記載を単に正すか、特許請求の範囲に記載された事項を具備しないものとなった「実施例」につき単に「参考例」としたものである。 してみると、上記訂正事項1ないし6に係る各訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。 してみると、上記訂正事項1ないし6に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。 (3)一群の請求項等について 本件訂正前の旧請求項2は、単一請求項であって、訂正後の新請求項2及び3は、いずれも他の請求項を引用するものではないから、本件訂正は、旧請求項2につき、特許法第120条の5第3項の規定により、請求項ごとにされたものであり、同法同条第4項に規定する一群の請求項は存しない。 また、上記訂正事項4ないし6に係る明細書についての各訂正は、上記訂正事項1ないし3に係る各訂正により特許請求の範囲の旧請求項2が請求項ごとに訂正され新請求項2及び3とされたことに伴い、不整合となった明細書の記載を上記新請求項2及び3に係るもの全てについて訂正したものであるから、上記明細書についての各訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。 (4)独立特許要件 本件異議の申立ては、旧請求項2に係る特許に対するものであり、請求項1については申立ての対象ではないところ、本件訂正における訂正事項1ないし6に係る訂正は、いずれも専ら旧請求項2に係る事項に対するものであり、当該本件訂正により、請求項1に係る特許につき特許請求の範囲の減縮又は誤記の訂正がされるものではないことが明らかである。 したがって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定の独立特許要件につき検討すべき請求項は存しない。 (5)訂正に係る検討のまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項2及び3について訂正を認める。 第5 本件特許に係る請求項に記載された事項 本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし3には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)とを含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)、及びラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、 メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が1分以上60分未満であるものを用い、 前記ラジカル重合開始剤を、その単位時間当たりの添加量を漸減させながら、反応器内に添加して、前記単量体の重合を進行させ、かつ、 重合転化率が85%を達した時点以降に添加される前記ラジカル重合開始剤の添加量を、前記ラジカル重合開始剤の全添加量を100質量%として、10~25質量%とする ことを特徴とする、メタクリル系樹脂の製造方法。 【請求項2】 メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、 メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する ことを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。 【請求項3】 メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、ラクトン環構造単位(B-2)を含むメタクリル系樹脂の製造方法であって、 メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する ことを特徴とするメタクリル系樹脂の製造方法。」 (以下、上記請求項1ないし3に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明3」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。) 第6 当審の判断 上記第4で示したとおり、適法に訂正されて旧請求項2が新請求項2と新請求項3とに分割されたから、本件異議申立において審理すべき対象は、請求項2及び3に係る発明についての特許となった。 そして、当審は、 当審が通知した取消理由及び申立人が主張する上記取消理由につきいずれも理由がなく、ほかに本件発明2及び3についての特許を取り消すべき理由を発見しないから、本件発明2及び3についての特許は取り消すことはできず、維持すべきものである、 と判断する。以下、詳述する。 I.当審が通知した取消理由について なお、事案に鑑み、上記取消理由通知と同様に、取消理由3、取消理由4、取消理由1及び取消理由2の順で、以下詳述する。 1.取消理由3について (1)本件発明の解決しようとする課題 本件発明の解決しようとする課題(以下「本件解決課題」という。)は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0011】等)の記載からみて、「耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調及び透明性に優れ、成形性に優れるメタクリル系樹脂」の製造方法の提供にあるものと認められる。 (2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載内容に基づく検討 本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例及び比較例に係る部分以外の部分(【0001】~【0142】)の記載を検討すると、背景技術として、メタクリル系樹脂に残存するN-置換マレイミド単量体の低減化及び成形加工時等の加熱により発生するマレイミド類単量体を低減化し、樹脂(成形体)の着色を抑制する技術が、本願出願時(原出願日)に存していたことが開示されている(【0002】~【0005】)ものの、本件発明の製造方法により製造されたメタクリル系樹脂が、本件解決課題、特に上記背景技術のものに比して色調に優れる点を解決できると当業者が認識できるような作用機序に係る記載はない。 また、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例及び比較例に係る部分(【0143】~【0163】)の記載を検討すると、本件発明2又は3の方法であるものと認められる「第二の重合方法」による実施例5並びにそれ以外の参考例1及び比較例2ないし4について「メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」については記載されているものの、本件発明2又は3の製造方法によるメタクリル系樹脂(又はその成形体)自体(すなわちメタノール可溶分を含有するもの)に係る「イエローインデックス(YI)」などの色調自体又は色調の変化に対応する物性値については開示されていない。 しかしながら、本件発明2又は3における実施例5と比較例4との対比及び参考例1と比較例2又は3との対比からみて、重合の初期(重合開始から30分以内)に重合開始剤の添加量を増加させ、重合の中期以降(重合開始から30分以降)に単量体の添加量を増加させることにより、「メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」が低下する傾向にあること及び着色原因となる残留単量体などを含むメタノール可溶分の含有量が低下する傾向にあることがそれぞれ看取できるから、当該記載に基づいて、本件発明2又は3の製造方法により製造されたメタクリル系樹脂が、本件解決課題、特に色調に優れる点を解決できる傾向にあろうことは当業者が認識できるものと認められる。 してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、当業者が、本件発明2又は3につき、本件解決課題、特に色調に優れるメタクリル系樹脂又は成形品が得られる点を解決できるであろうと当業者が認識できるものといえる。 したがって、本件請求項2及び3の記載は、同各項に記載された事項で特定される本件発明2又は3が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということができる(知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。)。 (3)小括 よって、本件の請求項2及び3の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしているものといえるから、上記取消理由3は理由がない。 2.取消理由4について 上記取消理由4につき検討すると、上記1.(1)で示したとおり、本件解決課題は、「耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調及び透明性に優れ、成形性に優れるメタクリル系樹脂」の製造方法の提供にあるものと認められるが、上記1.(2)で説示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、当業者が、本件発明2及び3につき、本件解決課題、特に色調に優れるメタクリル系樹脂又は成形品が得られる点を解決できる傾向にあろうと当業者が認識できるように記載したものといえる。 してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件解決課題、特に色調に優れるメタクリル系樹脂又は成形品が得られる点を解決できるという技術的意義を有する本件発明を、当業者が実施できるように記載したものということができる(知財高裁平成23年(行ケ)10251号判決参照。)。 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているものであるから、本件の請求項2及び3に係る発明についての特許について、上記取消理由4は理由がない。 3.取消理由1及び2について (1)各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明 以下、上記取消理由につき検討するにあたり、当該取消理由1及び2はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし甲3に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1ないし3に記載された発明の認定を行う。 なお、各甲号証の摘示における下線は、元々記載されているものを除き、当審が付したものである。 ア.甲1 (ア)甲1に記載された事項 上記甲1には、申立人が申立書第7頁第3行ないし第8頁第21行で指摘したとおりの事項(【請求項1】、【0008】、【0009】、【0025】ないし【0030】及び【0051】ないし【0055】)が記載されている。 (イ)甲1に記載された発明 上記甲1には、「実施例3」として、 「3つの、第1滴下槽、第2滴下槽、第3滴下槽をそれぞれ有し、内容量20リットルの攪拌機つきのステンレス製重合槽に、メタクリル酸メチル15.75部、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.01%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン25部、安定化剤としてのペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.0025部を仕込んだ。」 「一方、メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液を第1滴下槽に仕込み、あらかじめ窒素ガスでバブリングして溶存酸素を上記第1混合溶液槽から除去した。またシクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.01%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液を第2滴下槽に仕込み、あらかじめ窒素ガスでバブリングして溶存酸素を上記第2混合溶液から除去した。さらにtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液を第3滴下槽に仕込み、あらかじめ窒素ガスでバブリングして溶存酸素を上記第3混合溶液から除去した。」 「前記の重合槽内の溶液を300rpmで攪拌しながら、上記溶液に対し窒素ガスで10分間バブリングして、窒素ガス置換により上記溶液から溶存酸素を除去した後、窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温を開始し、110℃に達した時点で重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部上記溶液に加えた。」 「続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を、3.5時間かけて第1滴下槽、第2滴下槽および第3滴下槽よりそれぞれ重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度110℃の還流下で重合反応を7時間行った。その後、前述の安定化剤をさらに0.0475部上記重合槽内の溶液に添加した。」 「この重合槽内の共重合体を含む重合液を、シリンダー温度240℃にコントロールしたベント付き30mm2軸押し出し機に供給し、ベント口より真空脱揮し、出てきたストランドをペレット化して、本発明の耐熱性樹脂としての共重合ペレット(1)を得た。この共重合ペレット(1)の溶液での黄色度(YIsol.)は0.8であった。」 「さらに、この共重合体ペレット(1)をシリンダー温度250~260℃、金型温度100℃、射出圧950kg/cm2にてコントロールした射出成型機を用いて成型し、厚み3mmの透明な成型品を得た。」 「この成型品について実施例1と同様にして黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、1.6および136℃であった。」 「実施例3の結果から、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が1%以下のN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料を用いて得られるN-シクロヘキシルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体は、成型品の黄色度(YI)は1.6となって低着色性であり、また、ガラス転移温度は120℃以上あって耐熱性に優れていることが分かる。」 という耐熱性樹脂の溶液重合による製造方法が記載されている(【0051】~【0058】)。 してみると、これらの記載(特に下線部)からみて、 「重合槽に、メタクリル酸メチル15.75部、N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部及びトルエン25部を含む溶液を仕込むと共に、 メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液を第1滴下槽、 N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液を第2滴下槽、及び tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液を第3滴下槽にそれぞれ仕込んだ後、 重合槽内の溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温を開始し、110℃に達した時点で重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部上記溶液に加え重合を開始し、 続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を、3.5時間かけて第1滴下槽、第2滴下槽および第3滴下槽よりそれぞれ重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度110℃の還流下で重合反応を継続する耐熱性樹脂の製造方法。」 に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。 イ.甲2 (ア)甲2に記載された事項 上記甲2には、申立人が申立書第8頁第24行ないし第13頁下段(表)で指摘したとおりの事項(【請求項1】、【0004】、【0010】、【0012】、【0042】ないし【0055】、【0061】ないし【0065】、【0075】、【0076】、【0080】ないし【0084】、【0093】及び【0094】)が記載されている。 (イ)甲2に記載された発明 上記甲2には、「実施例3」として、 「重合槽に、メタクリル酸メチル14部、N-置換マレイミド(a)としてのN-シクロヘキシルマレイミド10部、および、有機溶媒としてのトルエン25部を仕込んだ。」 「そして、300rpmで攪拌しながら窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始し、100℃に達した時点で、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.09部を加え、重合温度110℃の還流下で溶液重合法による重合反応を開始した。」 「そして、重合を開始してから1時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.5部、メタクリル酸メチル6.0部、スチレン2.5部、トルエン10部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.08部からなる混合物を一括投入した。」 「さらに、重合を開始してから2時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.0部、メタクリル酸メチル5.5部、スチレン2.5部、トルエン8部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部からなる混合物を一括投入した。」 「その上、重合を開始してから3時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたメタクリル酸メチル5.0部、スチレン2.0部、トルエン7部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部からなる混合物を一括投入した。その後、さらに重合温度110℃の還流下で重合反応を続け、重合を開始してから7時間後に反応を終了した。」 という耐熱性メタクリル系樹脂の溶液重合による製造方法が記載されている(【0080】~【0084】)。 してみると、これらの記載(特に下線部)からみて、 「重合槽に、メタクリル酸エステル(b)としてのメタクリル酸メチル14部、N-置換マレイミド(a)としてのN-シクロヘキシルマレイミド10部、および、有機溶媒としてのトルエン25部を仕込み、重合槽内の混合物を攪拌しながら窒素雰囲気下で昇温を開始し、100℃に達した時点で、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.09部を加えて重合を開始し、 重合を開始してから1時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.5部、メタクリル酸メチル6.0部、スチレン2.5部、トルエン10部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.08部からなる混合物を一括投入し、 さらに、重合を開始してから2時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.0部、メタクリル酸メチル5.5部、スチレン2.5部、トルエン8部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部からなる混合物を一括投入し、 その上、重合を開始してから3時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたメタクリル酸メチル5.0部、スチレン2.0部、トルエン7部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部からなる混合物を一括投入した後、さらに重合温度110℃の還流下で重合反応を続け、重合を開始してから7時間後に反応を終了する耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法。」 に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものといえる。 ウ.甲3 (ア)甲3に記載された事項 上記甲3には、申立人が申立書第14頁第3行ないし第15頁第15行で指摘したとおりの事項(【請求項1】、【0006】、【0013】、【0017】、【0022】、【0070】、【0084】及び【0088】)が記載されている。 (イ)甲3に記載された発明 上記甲3には、「参考例1」として、 「反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。そして、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部を加えると同時に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液を3時間半かけて滴下しながら100~110℃で溶液重合を行い、さらに1時間半かけて熟成を行った。重合の反応率は91.8%で、重合体中の2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル含有率(重量比)は20.0%であった。また、この重合体の重量平均分子量は130,000であった。」 という、引き続き有機リン化合物を触媒とする環化反応を行い、主鎖にラクトン環構造を形成することによって透明性耐熱樹脂とすることができる(必要ならば「実施例1」に係る記載【0071】~【0073】参照)樹脂の製造方法が記載されている(【0070】)。 してみると、これらの記載(特に下線部)からみて、 「反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温すると共に、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部を加えて重合を開始した後、同時に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液を3時間半かけて滴下しながら100~110℃で溶液重合を継続した後、有機リン化合物を触媒とする環化反応を行い、主鎖にラクトン環構造を形成することによって透明性耐熱樹脂とすることができる樹脂の製造方法。」 に係る発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものといえる。 (2)対比・検討 以下、本件発明2及び3につき、各甲号証に記載された発明と個々に対比・検討する。 ア.甲1発明に基づく検討 (ア)本件発明2との対比・検討 (ア-1)対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の製造方法では、メタクリル酸メチルを主たる単量体とし、N-シクロヘキシルマレイミドを含む単量体を共重合していることが明らかであって、製造される樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の構造単位と、N-シクロヘキシルマレイミドというN-置換マレイミド単量体由来の構造単位である主鎖に環構造を有する構造単位とを含むメタクリル系樹脂であるものと理解するのが自然であるから、本件発明2と甲1発明とは、「メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)を含むメタクリル系樹脂の製造方法」の点で一致し、下記相違点a-1で相違している。 相違点a-1:本件発明2では、 「メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する」 であるのに対して、甲1発明では、 「重合槽に、メタクリル酸メチル15.75部、N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部及びトルエン25部を含む溶液を仕込むと共に、 メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液を第1滴下槽、 N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液を第2滴下槽、及び tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液を第3滴下槽にそれぞれ仕込んだ後、 重合槽内の溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温を開始し、110℃に達した時点で重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部を上記溶液に加え重合を開始し、 続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を、3.5時間かけて第1滴下槽、第2滴下槽および第3滴下槽よりそれぞれ重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度110℃の還流下で重合反応を継続する」 である点 (ア-2)検討 上記相違点a-1につき、以下のとおり、分節して検討を行う。 (a)重合開始剤について 甲1発明で使用される「tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、110℃なる重合温度における半減期が60分以上の過酸化物ラジカル重合開始剤である。 してみると、甲1発明で使用される「tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、本件発明2における「ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるもの」に相当する。 (b)単量体原料の投入方式について 甲1発明では、重合槽にメタクリル酸メチル、N-シクロヘキシルマレイミド及びトルエンを含む溶液を仕込み、溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温した時点で重合開始剤を上記溶液に加え重合を開始し、続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度で重合反応を継続させているものであって、上記「トルエン」が溶媒であることが明らかであるから、「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合している」ものと認められる。 してみると、甲1発明における上記重合方式は、本件発明2における「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合する」に相当する。 (c)重合開始剤及び単量体の添加量の推移について 甲1発明では、重合開始前の重合槽にメタクリル酸メチル15.75部及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部が存在し、昇温した後、重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部投入し、重合を開始しているから、重合開始時点では、以上の単量体及び重合開始剤が重合槽中に投入されていることとなる。 そして、甲1発明では、重合開始後、「メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液」、「N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液」及び「tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液」を3.5時間かけて重合槽に滴下しているから、重合開始後30分経過した時点で、上記「第1混合溶液」、「第2混合溶液」及び「第3混合溶液」の1/7量が重合槽に投入されているものと認められる。 してみると、甲1発明における重合開始後30分経過した時点の重合槽には、単量体が合計26部投入され、重合開始剤が合計0.0355部投入されていることとなり、単量体及び重合開始剤の全使用量は、それぞれ、50部及び0.128部であるから、甲1発明では、重合開始後30分以内に重合開始剤の全使用量のうち27.7%(0.0355/0.128)が重合槽に投入され、また、重合開始後30分以降に単量体の全使用量のうち48%((50-26)/50)が重合槽に投入されるものと認められる。 したがって、甲1発明における上記単量体の投入添加量の推移につき、本件発明2における「前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する」には相当するものの、甲1発明における重合開始剤の投入添加量の推移については、本件発明2における「前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し」に相当するものではない。 また、甲1の記載を検討しても、原料として特定の不純物化合物の含有量が少ないものを使用することにより、耐熱性及び透明性などの外観に優れ、低着色の耐熱性樹脂が製造できる点は開示されているものの、重合の初期段階における重合開始剤の添加量を増加させることにより、当該各物性に優れた樹脂が得られることは開示されていないから、甲1発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加」することを動機付ける事項が存するものとはいえない。 したがって、甲1発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加」することが、当業者にとって適宜なし得ることということはできない。 (d)相違点a-1についてのまとめ 以上の(a)ないし(c)の検討を総合すると、上記相違点a-1は、実質的な相違点であり、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。 (ア-3)小括 よって、本件発明2は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 (イ)本件発明3との対比・検討 (イ-1)対比 本件発明3と甲1発明とを対比すると、本件発明3と甲1発明とは、「メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含むメタクリル系樹脂の製造方法」の点で一致し、下記相違点a-2及びa-3で相違している。 相違点a-2:本件発明3では、 「メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」 であるのに対して、甲1発明では、 「重合槽に、メタクリル酸メチル15.75部、N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部及びトルエン25部を含む溶液を仕込むと共に、 メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液を第1滴下槽、 N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液を第2滴下槽、及び tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液を第3滴下槽にそれぞれ仕込んだ後、 重合槽内の溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温を開始し、110℃に達した時点で重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部を上記溶液に加え重合を開始し、 続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を、3.5時間かけて第1滴下槽、第2滴下槽および第3滴下槽よりそれぞれ重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度110℃の還流下で重合反応を継続する」 である点 相違点a-3:本件発明3では、「(B)構造単位が、ラクトン環構造単位(B-2)を含む」のに対して、甲1発明では、「N-シクロヘキシルマレイミド」である点 (イ-2)検討 (イ-2-1)相違点a-2について 上記相違点a-2につき、以下のとおり、分節して検討を行う。 (a)重合開始剤について 甲1発明で使用される「tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、110℃なる重合温度における半減期が60分以上の過酸化物ラジカル重合開始剤である。 してみると、甲1発明で使用される「tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、本件発明3における「ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるもの」に相当する。 (b)単量体原料の投入方式について 甲1発明では、重合槽にメタクリル酸メチル、N-シクロヘキシルマレイミド及びトルエンを含む溶液を仕込み、溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温した時点で重合開始剤を上記溶液に加え重合を開始し、続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度で重合反応を継続させているものであって、上記「トルエン」が溶媒であることが明らかであるから、「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合している」ものと認められる。 してみると、甲1発明における上記重合方式は、本件発明3における「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合する」に相当する。 (c)重合開始剤及び単量体の添加量の推移について 甲1発明では、重合開始前の重合槽にメタクリル酸メチル15.75部及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部が存在し、昇温した後、重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部投入し、重合を開始しているから、重合開始時点では、以上の単量体及び重合開始剤が重合槽中に投入されていることとなる。 そして、甲1発明では、重合開始後、「メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液」、「N-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液」及び「tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液」を3.5時間かけて重合槽に滴下しているから、重合開始後30分経過した時点で、上記「第1混合溶液」、「第2混合溶液」及び「第3混合溶液」の1/7量が重合槽に投入されているものと認められる。 してみると、甲1発明における重合開始後30分経過した時点の重合槽には、単量体が合計26部投入され、重合開始剤が合計0.0355部投入されていることとなり、単量体及び重合開始剤の全使用量は、それぞれ、50部及び0.128部であるから、甲1発明では、重合開始後30分以内に重合開始剤の全使用量のうち27.7%(0.0355/0.128)が重合槽に投入され、また、重合開始後30分以降に単量体の全使用量のうち48%((50-26)/50)が重合槽に投入されるものと認められる。 したがって、甲1発明における上記重合開始剤の投入添加量の推移につき、本件発明3における「前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し」には相当するものの、甲1発明における単量体の投入添加量の推移については、本件発明3における「前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」に相当するものではない。 また、甲1の記載を検討しても、原料として特定の不純物化合物の含有量が少ないものを使用することにより、耐熱性及び透明性などの外観に優れ、低着色の耐熱性樹脂が製造できる点は開示されているものの、重合の中期以降の段階における単量体の添加量を増加させることにより、当該各物性に優れた樹脂が得られることは開示されていないから、甲1発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」ことを動機付ける事項が存するものとはいえない。 したがって、甲1発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」ことが、当業者にとって適宜なし得ることということはできない。 (d)相違点a-2についてのまとめ 以上の(a)ないし(c)の検討を総合すると、上記相違点a-2は、実質的な相違点であり、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。 (イ-2-2)相違点a-3について 上記相違点a-3については、実質的な相違点であることが明らかであり、甲1発明において、当業者が適宜なし得ることであるともいうことができない。 (イ-3)小括 したがって、本件発明3についても、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 (ウ)甲1発明に基づく検討のまとめ よって、本件発明2及び3は、いずれも、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 イ.甲2発明に基づく検討 (ア)本件発明2について (ア-1)対比 本件発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の製造方法では、メタクリル酸エステル(b)としてのメタクリル酸メチルを主たる単量体とし、N-置換マレイミド(a)としてのN-シクロヘキシルマレイミドを含む単量体を共重合していることが明らかであって、製造される樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の構造単位と、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位である主鎖に環構造を有する構造単位とを含むメタクリル系樹脂であるものと理解するのが自然であるから、本件発明2と甲2発明とは、「メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)を含むメタクリル系樹脂の製造方法」の点で一致し、下記の点で相違している。 相違点b-1:本件発明2では、 「メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する」 であるのに対して、甲2発明では、 「重合槽に、メタクリル酸エステル(b)としてのメタクリル酸メチル14部、N-置換マレイミド(a)としてのN-シクロヘキシルマレイミド10部、および、有機溶媒としてのトルエン25部を仕込み、重合槽内の混合物を攪拌しながら窒素雰囲気下で昇温を開始し、100℃に達した時点で、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部を加えて重合を開始し、 重合を開始してから1時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.5部、メタクリル酸メチル6.0部、スチレン2.5部、トルエン10部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.08部からなる混合物を一括投入し、 さらに、重合を開始してから2時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.0部、メタクリル酸メチル5.5部、スチレン2.5部、トルエン8部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部からなる混合物を一括投入し、 その上、重合を開始してから3時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたメタクリル酸メチル5.0部、スチレン2.0部、トルエン7部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部からなる混合物を一括投入した後、さらに重合温度110℃の還流下で重合反応を続け、重合を開始してから7時間後に反応を終了する」 である点 (ア-2)検討 上記相違点b-1につき、下記のとおり、分節して検討を行う。 (a)重合開始剤について 甲2発明で使用される「t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、110℃なる重合温度における半減期が60分以上の過酸化物ラジカル重合開始剤である。 してみると、甲2発明で使用される「t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、本件発明2における「ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるもの」に相当する。 (b)単量体原料の投入方式について 甲2発明では、重合槽にメタクリル酸メチル、N-シクロヘキシルマレイミド及びトルエンを含む溶液を仕込み、溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温した時点で重合開始剤を上記溶液に加え重合を開始し、続いて、単量体を含む各混合物を3回に分けて重合槽内の上記溶液に一括投入し、重合温度で重合反応を継続させているものであって、上記「トルエン」が溶媒であることが明らかであるから、「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合している」ものと認められる。 してみると、甲2発明における上記重合方式は、本件発明2における「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合する」に相当する。 (c)重合開始剤及び単量体の添加量の推移について 甲2発明では、重合開始前の重合槽にメタクリル酸メチル14部及びN-シクロヘキシルマレイミド10部が存在し、昇温した後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.09部投入し、重合を開始し、その後単量体及び重合開始剤につき重合開始1時間後まで追加はないから、重合開始時点及び重合開始30分後では、以上の単量体及び重合開始剤が重合槽中に投入添加されていることとなる。 そして、甲2発明では、重合開始後、「1時間後」に、「N-シクロヘキシルマレイミド1.5部、メタクリル酸メチル6.0部、スチレン2.5部、トルエン10部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.08部からなる混合物」を一括投入し、さらに、「2時間後」に、「N-シクロヘキシルマレイミド1.0部、メタクリル酸メチル5.5部、スチレン2.5部、トルエン8部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部からなる混合物」を一括投入し、また、「3時間後」に、「メタクリル酸メチル5.0部、スチレン2.0部、トルエン7部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部からなる混合物」を一括投入しているから、甲2発明における重合開始後30分経過した時点の重合槽には、単量体が合計24部投入され、重合開始剤が合計0.09部投入されているのに対して、重合開始1時間後以降、すなわち重合開始後30分以降に投入される単量体及び重合開始剤の合計使用量は、それぞれ、26部及び0.16部であるから、甲2発明では、重合開始後30分以内に重合開始剤の全使用量のうち36%(0.09/0.25)が重合槽に投入され、また、重合開始後30分以降に単量体の全使用量のうち52%(26/50)が重合槽に投入されるものと認められる。 したがって、甲2発明における上記単量体の投入添加量の推移につき、本件発明2における「前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する」には相当するものの、甲2発明における重合開始剤の投入添加量の推移については、本件発明2における「前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し」に相当するものではない。 また、甲2の記載を検討しても、N-置換マレイミドを原料単量体とする場合に、反応系に存在する未反応単量体の濃度が全添加量の共重合比濃度より少ないものとすることにより、耐熱性及び透明性などの外観に優れ、低着色の耐熱性樹脂が製造できる点は開示されているものの、重合の初期段階における重合開始剤の添加量を増加させることにより、当該各物性に優れた樹脂が得られることは開示されていないから、甲2発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加」することを動機付ける事項が存するものとはいえない。 したがって、甲2発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加」することが、当業者にとって適宜なし得ることということはできない。 (d)相違点b-1についてのまとめ 以上の(a)ないし(c)の検討を総合すると、上記相違点b-1は、実質的な相違点であり、甲2発明において、当業者が適宜なし得ることということはできない。 (ア-3)小括 よって、本件発明2は、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるとも、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 (イ)本件発明3との対比・検討 (イ-1)対比 本件発明3と甲2発明とを対比すると、本件発明3と甲2発明とは、「メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含むメタクリル系樹脂の製造方法」の点で一致し、下記相違点b-2及びb-3で相違している。 相違点b-2:本件発明3では、 「メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」 であるのに対して、甲2発明では、 「重合槽に、メタクリル酸エステル(b)としてのメタクリル酸メチル14部、N-置換マレイミド(a)としてのN-シクロヘキシルマレイミド10部、および、有機溶媒としてのトルエン25部を仕込み、重合槽内の混合物を攪拌しながら窒素雰囲気下で昇温を開始し、100℃に達した時点で、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.02部を加えて重合を開始し、 重合を開始してから1時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.5部、メタクリル酸メチル6.0部、スチレン2.5部、トルエン10部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.08部からなる混合物を一括投入し、 さらに、重合を開始してから2時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.0部、メタクリル酸メチル5.5部、スチレン2.5部、トルエン8部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部からなる混合物を一括投入し、 その上、重合を開始してから3時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたメタクリル酸メチル5.0部、スチレン2.0部、トルエン7部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部からなる混合物を一括投入した後、さらに重合温度110℃の還流下で重合反応を続け、重合を開始してから7時間後に反応を終了する」 である点 相違点b-3:本件発明3では、「(B)構造単位が、ラクトン環構造単位(B-2)を含む」のに対して、甲2発明では、「N-シクロヘキシルマレイミド」である点 (イ-2)検討 事案に鑑み、相違点b-3につき検討すると、相違点b-3については、製造しようとする樹脂の主鎖の環構造である構造単位(B)につき明らかに構造が異なるものとなるから、実質的な相違点であることが明らかであり、甲2において、甲2発明に係る「N-シクロヘキシルマレイミド(構造単位)」に代えて「ラクトン環構造単位」とすべき動機となる事項が存するものとも認められないから、上記相違点b-3に係る事項につき、当業者が適宜なし得ることであるともいうことができない。 (ちなみに、相違点b-2につき確認すると、甲2発明における重合開始剤及び単量体の添加量の推移は、本件発明3に係る重合開始剤及び単量体の添加量推移に一致するから、相違点b-2については、実質的な相違点であるとはいえない。) (イ-3)小括 したがって、本件発明3については、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるとも、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 (ウ)甲2発明に基づく検討のまとめ よって、本件発明2及び3は、いずれも、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるとも、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 ウ.甲3発明に基づく検討 (ア)本件発明2について (ア-1)対比 本件発明2と甲3発明とを対比すると、本件発明2と甲3発明とは、「メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含むメタクリル系樹脂の製造方法」の点で一致し、下記の2点で相違している。 相違点c-1:本件発明2では、 「メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の50質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の25質量%以上を添加する」 であるのに対して、甲3発明では、 「反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温すると共に、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部を加えて重合を開始した後、同時に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液を3時間半かけて滴下しながら100~110℃で溶液重合を継続する」 である点 相違点c-2:本件発明2では、「(B)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位(B-1)を含む」のに対して、甲3発明では、「主鎖にラクトン環構造を形成」してなる点 (ア-2)検討 事案に鑑み、相違点c-2につき検討すると、相違点c-2については、製造しようとする樹脂の主鎖の環構造である構造単位(B)につき明らかに構造が異なるものとなるから、実質的な相違点であることが明らかであり、甲3において、甲3発明に係る「ラクトン環構造」に代えて「N-置換マレイミド単量体由来の構造単位」とすべき動機となる事項が存するものとも認められないから、上記相違点c-2に係る事項につき、当業者が適宜なし得ることであるともいうことができない。 (ちなみに、相違点c-1につき確認すると、甲3発明における重合開始剤及び単量体の添加量の推移は、本件発明2に係る重合開始剤及び単量体の添加量推移に一致するから、相違点c-1については、実質的な相違点であるとはいえない。) (ア-3)小括 よって、本件発明2は、甲3発明、すなわち甲3に記載された発明であるとも、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 (イ)本件発明3について (イ-1)対比 本件発明3と甲3発明とを対比すると、甲3発明の製造方法では、メタクリル酸メチルを主たる単量体とし、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルなどのヒドロキシ基を有する単量体を共重合した上で脱アルコールによる閉環により主鎖にラクトン環を導入していることが明らかであって、製造される樹脂は、メタクリル酸エステル単量体の構造単位と、主鎖にラクトン環構造を有する構造単位とを含むメタクリル系樹脂であるものと理解するのが自然であるから、本件発明3と甲3発明とは、「メタクリル酸エステル単量体の構造単位(A)と、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、ラクトン環構造単位(B-2)を含むメタクリル系樹脂の製造方法」の点で一致し、下記の点で相違している。 相違点c-3:本件発明3では、 「メタクリル酸エステル単量体を含む2種以上の単量体成分を、溶媒中で回分式あるいは半回分式で、ラジカル重合する方法において、 ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるものを用い、 前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し、かつ、 前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」 であるのに対して、甲3発明では、 「反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温すると共に、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部を加えて重合を開始した後、同時に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液を3時間半かけて滴下しながら100~110℃で溶液重合を継続する」 である点 (イ-2)検討 上記相違点c-3につき、下記のとおり、分節して検討を行う。 (a)重合開始剤について 甲3発明で使用される「ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、100~110℃なる重合温度における半減期が60分以上の過酸化物ラジカル重合開始剤である。 してみると、甲3発明で使用される「ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」は、本件発明3における「ラジカル重合開始剤として、重合温度における半減期が60分以上であるもの」に相当する。 (b)単量体原料の投入方式について 甲3発明では、反応釜にメタクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル及びトルエンを含む溶液を仕込み、溶液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温した時点で重合開始剤を上記溶液に加え重合を開始し、続いて、メタクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル及びトルエンを含む溶液を更に反応釜内の上記溶液に滴下し、重合温度で重合反応を継続させているものであって、上記「トルエン」が溶媒であることが明らかであるから、「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合している」ものと認められる。 してみると、甲3発明における上記重合方式は、本件発明3における「溶媒中で半回分式で、ラジカル重合する」に相当する。 (c)重合開始剤及び単量体の添加量の推移について 甲3発明では、重合開始前の反応釜に2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部が存在し、昇温した後、重合開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.075部投入し、重合を開始しているから、重合開始時点では、以上の単量体及び重合開始剤が重合槽中に投入されていることとなる。 そして、甲3発明では、重合開始後、「2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液」を3時間半かけて反応釜に滴下しているから、重合開始後30分経過した時点で、上記「2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液」の1/7量が反応釜に投入されているものと認められる。 してみると、甲3発明における重合開始後30分経過した時点の反応釜には、単量体が合計28.57部投入され、重合開始剤が合計0.0857部投入されていることとなり、単量体及び重合開始剤の全使用量は、それぞれ、50部及び0.15部であるから、甲3発明では、重合開始後30分以内に重合開始剤の全使用量のうち57.1%(0.0857/0.15)が反応釜に投入され、また、重合開始後30分以降に単量体の全使用量のうち42.86%((50-28.57)/50)が反応釜に投入されるものと認められる。 したがって、甲3発明における上記重合開始剤の投入添加量の推移につき、本件発明3における「前記重合開始剤の添加開始から30分以内に、前記ラジカル重合開始剤の全添加量の25質量%以上を添加し」には相当するものの、甲3発明における単量体の投入添加量の推移については、本件発明3における「前記重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」に相当するものではない。 また、甲3の記載を検討しても、脱アルコールによる環化の際に有機リン化合物を触媒として使用することにより、耐熱性及び透明性などの外観に優れ、低着色の耐熱性樹脂が製造できる点は開示されているものの、重合の中期以降の段階における単量体の添加量を増加させることにより、当該各物性に優れた樹脂が得られることは開示されていないから、甲3発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」ことを動機付ける事項が存するものとはいえない。 したがって、甲3発明において、「重合開始剤の添加開始から30分以降に、前記単量体の全添加量の50質量%以上を添加する」ことが、当業者にとって適宜なし得ることということはできない。 (d)相違点c-3についてのまとめ 以上の(a)ないし(c)の検討を総合すると、上記相違点c-3は、実質的な相違点であり、甲3発明において、当業者が適宜なし得ることということはできない。 (イ-3)小括 よって、本件発明3は、甲3発明、すなわち甲3に記載された発明であるとも、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいうことはできない。 (3)取消理由1及び2に係る検討のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明2及び3、すなわち本件特許の請求項2又は3に係る各発明は、甲1ないし甲3のいずれかに記載された発明であるとも、甲1ないし甲3のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできない。 よって、上記取消理由1及び2は、いずれも理由がない。 II.申立人が主張する取消理由について 申立人が、申立書で主張する取消理由は、上記第2で示した取消理由1ないし4であるところ、取消理由1ないし4は、いずれも当審が通知した上記I.で検討したものと同旨であるから、上記I.で説示した理由により、いずれも理由がない。 なお、申立人は、平成30年7月12日付け意見書において、甲4を証拠として新たに提示し、甲4に基づいて、本件請求項2及び3に係る発明につき、新規性・進歩性が欠如する旨を主張している(意見書第10頁~第14頁)が、当該主張につき検討すると、あくまで実質的に甲4に記載された発明を主たる引用発明とする主張であって、申立書に記載された内容とは異なる新たな内容の主張であるから、甲4に基づく上記主張については、採用することができない。 第7 むすび 以上のとおり、本件の請求項2及び3に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由並びに申立人が主張する取消理由及び証拠によっては、取り消すことができない。 また、ほかに、本件の請求項2及び3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見できない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701189

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