特許異議申立
2017-700980
メタクリル系樹脂組成物
- 審判番号
- 2017-700980
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-209971外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月12日
- 審決日
- 2018年06月21日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6114454号発明「メタクリル系樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6114454号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第6114454号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨
1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6114454号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2016-209971号、以下「本願」という。)は、平成28年10月26日(優先権主張:平成28年1月21日、特願2016-9840号)に出願人旭化成株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年3月24日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、平成29年4月12日に特許公報が発行されたものである。
2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成29年10月12日付けで特許異議申立人高瀬彌平(以下「申立人」という。)により「特許第6114454号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。
3.以降の経緯
以降の手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月27日付け 取消理由通知・審尋(特許権者あて)
平成30年 3月12日 訂正請求書・意見書・回答書
平成30年 3月22日 証拠説明書(特許権者)
平成30年 4月23日付け 通知書(申立人あて)
平成30年 5月23日 意見書(申立人)
第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第8号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1ないし3が存するとしているものと認められる。
取消理由1:本件発明1ないし9は、いずれも、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件発明1ないし9は、いずれも、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由3:本件発明1ないし9は、その解決課題を解決したものではないか、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明に照らして課題が解決したことを確認できないものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2015-183023号公報
甲第2号証:特開2015-135355号公報
甲第3号証:特開2015-67771号公報
甲第4号証:「高分子添加剤の新展開」、住友化学技術誌、2009-II、2009年11月30日発行、第19~27頁
甲第5号証:特開2009-294359号公報
甲第6号証:特開2007-261265号公報
甲第7号証:特開2001-151814号公報
甲第8号証:特開2014-28956号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲8」と略していう。)
第3 当審が通知した取消理由の概要
当審が平成29年12月27日付けで通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。
「当審は、
申立人が主張する上記取消理由1ないし3により、本件発明1ないし9についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。・・(中略)・・
1.取消理由3について
・・(中略)・・
(3)小括
よって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。
2.取消理由1及び2について
・・(中略)・・
ク.検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1及び4ないし9は、いずれも、甲1ないし甲3のいずれかに記載された発明であるか、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明2及び3は、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)取消理由1及び2に係る検討のまとめ
よって、本件発明1及び4ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明1ないし9は、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1ないし9に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。」
第4 平成30年3月12日付け訂正請求の適否
1.訂正請求の内容
上記平成30年3月12日付け訂正請求では、本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1ないし9について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、以下の(ア)ないし(エ)の訂正事項を含むものである。(なお、下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。)
(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「・・・メタクリル系樹脂と、有機リン化合物とを含み、 ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり、・・・ことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。」と記載されているのを、
「・・・メタクリル系樹脂と、有機リン化合物とを含み、 GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000以上であり、ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり、・・・ことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する)。
(イ)訂正事項2
明細書の【0019】に、
「[1]・・・メタクリル系樹脂と、有機リン化合物とを含み、 ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり、・・・ことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。」と記載されているのを、
「[1]・・・メタクリル系樹脂と、有機リン化合物とを含み、 GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000以上であり、 ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり、・・・ことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。」に訂正する。
(ウ)訂正事項3
明細書の【0158】に、「実施例12」と記載されているのを、[比較例7]に訂正する。
(エ)訂正事項4
明細書の【0171】の記載につき、
「【表1】
」と記載されているのを、
「【表1】
」と訂正する。
2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし9を「旧請求項1」ないし「旧請求項9」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし9を「新請求項1」ないし「新請求項9」という。
(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。
上記訂正事項1に係る訂正は、旧請求項4に記載された重量平均分子量の範囲の下限値に係る事項を、旧請求項1に直列的に付加して減縮し、新請求項1としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
上記訂正事項2ないし4に係る訂正は、上記訂正事項1に係る訂正により特許請求の範囲が減縮された新請求項1に記載された事項と不整合となる明細書の記載を単に正すか(訂正事項2)、当該減縮により新請求項1に記載された事項を具備しないものとなった「実施例」につき「比較例」としたものである(訂正事項3及び4)から、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、上記訂正事項1ないし4による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。
(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項1に係る訂正により、新請求項1及び同項を引用する新請求項2ないし9の特許請求の範囲が旧請求項1ないし9に記載された事項に対して減縮されていることが明らかであり、訂正事項2ないし4に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正により対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものであるから、上記訂正事項1ないし4による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の旧請求項2ないし9は、いずれも旧請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1ないし9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(4)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正を認める。
第5 本件特許に係る請求項に記載された事項
本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし9には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含み、前記(X)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種であるメタクリル系樹脂と、有機リン化合物とを含み、 GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000以上であり、
ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり、
リン元素の含有量が10~1000質量ppmであり、
31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である
ことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
残存溶媒量が、1000質量ppm未満である、請求項1に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
残存アルコール量が、500質量ppm未満である、請求項1又は2記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000~200,000である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記(X)構造単位が、グルタルイミド系構造単位を含み、前記グルタルイミド系構造単位の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、5~70質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記(X)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位を含み、前記N-置換マレイミド単量体由来の構造単位の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、5~40質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項7】
前記(X)構造単位が、ラクトン環構造単位を含み、前記ラクトン環構造単位の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、5~40質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項8】
光弾性係数の絶対値が、3.0×10-12Pa-1以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
【請求項9】
光弾性係数の絶対値が、1.0×10-12Pa-1以下である、請求項8に記載のメタクリル系樹脂組成物。」
(以下、上記訂正された請求項1ないし9に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)
第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した取消理由についてはいずれも理由がなく、また、申立人が主張する上記取消理由1ないし3についてもいずれも理由がないから、本件発明1ないし9についての特許は取り消すことはできず、維持すべきものである、
と判断する。以下、詳述する。
I.当審が取消理由通知で通知した理由について
1.通知した理由の内容
当審が上記取消理由通知で通知した取消理由3に係る検討内容は、要約すると以下のとおりである。なお、取消理由1及び2については、申立人が主張する理由と同一の理由であるので併せて後で検討する。
「本件発明の解決しようとする課題(以下「本件解決課題」という。)は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0012】~【0017】及び【0020】)の記載からみて、比較的高いガラス転移温度を有するメタクリル系樹脂に有機リン化合物を配合させたメタクリル系樹脂組成物を用い、溶融加工等により高品質な光学用途に使用できるような、耐熱性が高く、複屈折性に優れ、加えて、熱安定性及び成型加工性にも優れているメタクリル系樹脂組成物の提供にあるものと認められる。
(それに対して、)本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分以外の部分(【0001】~【0119】)の記載を検討すると、背景技術として、光学材料向けのメタクリル系樹脂(組成物)、特に主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(組成物)において、熱安定性の向上及び成形加工時等の加熱溶融による色調の変化を抑制するために、リン系のものを含む酸化防止剤を添加使用する技術が、本願出願時(優先日)に存していたことが開示されており(【0002】~【0011】)、本件発明のメタクリル系樹脂組成物において、(a)特定のリン元素含有量の範囲にあること及び(b)特定の3価リンと5価リンとの存在割合(P3/P5)の範囲にあることにつき、それぞれ、上記(a)及び(b)の事項を具備することによる作用機序につき一応記載されてはいる。
それに対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分(【0120】~【0171】)の記載を検討すると、当該実施例(比較例)に係る部分の記載に基づき、本件発明のメタクリル系樹脂組成物が、上記(a)及び(b)の各事項を併せて具備することにより、本件解決課題、特に従来技術に比して成型加工性に優れる点を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。
なお、本願出願時(優先日)において、上記(a)及び(b)を併せて具備することにより、上記本件発明における解決課題、特に熱安定性及び成型加工性に優れる点につき、解決することができると認識することができる当業者の技術常識が存するものとも認められない。
以上を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、実施例(比較例)に係る部分以外の部分(【0001】~【0119】)の記載と実施例(比較例)に係る部分(【0120】~【0171】)の記載との対応関係が不明であり、前者における作用機序に係る事項が、後者における記載内容により技術的に裏付けられておらず、むしろ相反する実験例(実施例12)につき記載されているから、当業者が、たとえその技術常識に照らしても、本件発明につき、本件解決課題、特に従来技術に比してメタクリル系樹脂組成物が熱安定性及び成型加工性に優れる点を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。
したがって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載では、同各項に記載された事項で特定される本件発明1ないし9が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということはできない。
よって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。」
2.検討
上記1.で示した理由について、訂正された本件請求項1ないし9の記載に対する当否を以下検討する。
(1)前提事項
当業者の技術常識等につき、検討の前提として確認する。
ア.リン系酸化防止剤について
樹脂・プラスチックに添加して使用される酸化防止剤は、熱、光、機械的せん断力、金属イオン等と酸素との作用により生じる酸化劣化を防止するために使用されるものであり、酸化劣化の開始時に発生する種々のラジカル又は過酸化物等を捕捉及び/又は分解することにより、樹脂・プラスチックの劣化を防止するものである。特に、亜リン酸エステル(フォスファイト)類などの3価のリン原子を有する有機リン系酸化防止剤は、上記の発生機構により生成した過酸化物を捕捉し、3価のリン原子が5価のリン原子に酸化されることによりその過酸化物から酸素を奪い、過酸化物を分解することにより、樹脂・プラスチックが酸化(劣化)することを防止するものである(必要ならば「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品」2003年12月2日、株式会社ポリマーダイジェスト社発行、第91~103頁及び甲4を参照のこと。)。
そして、上記酸化防止機構において生成した5価のリン原子を有する有機リン系酸化防止剤(反応生成物)は、何らかの特段の還元的環境に置かれない限り、可逆的に3価の有機リン原子を有する化合物に戻ることはない。
イ.本件発明における「メタクリル系樹脂組成物」について
上記ア.で示したとおりであるから、3価のリン原子を有する有機リン系酸化防止剤を樹脂に一定量(10~1000質量ppm)添加使用した樹脂組成物において、添加時点における「(P3/P5)」値が最大であり、その後の酸素共存下における熱履歴(溶融混練、脱揮、成型等及びその条件)及び保管環境(温度、光照射有無、湿分存否、保管時間等の条件)により、「P3」が「P5」に変化し、「(P3/P5)」値が減少するものと理解するのが自然であり、単一の組成物につき一定の値となるものではない。
してみると、本件発明の「メタクリル系樹脂組成物」は、解決課題として溶融加工による成型加工性の改善を意図しているものであることからみて、当該「メタクリル系樹脂組成物」に係る「31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である」との点は、溶融加工による成型加工の直前の状態の樹脂組成物に係る物性値であり、それ以前の保管可能な状態又は更に成型加工以外の事前の熱履歴が加わる状態の樹脂組成物あるいは成型加工後の成形体を構成する樹脂組成物に係る物性値であると理解することはできない。
よって、本件発明に係る「メタクリル系樹脂組成物」は、「溶融加工による成型加工の直前の状態の樹脂組成物」であるものと認めるのが自然であるから、以下の検討においては、本件発明に係る「メタクリル系樹脂組成物」が、「溶融加工による成型加工の直前の状態の樹脂組成物」であることを前提として検討を行う。
(2)検討
本件発明の解決しようとする課題(以下「本件解決課題」という。)は、適法に訂正された本件特許明細書(以下、単に「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明(【0012】~【0017】及び【0020】)の記載からみて、上記のとおり、比較的高いガラス転移温度を有するメタクリル系樹脂に有機リン化合物を配合させたメタクリル系樹脂組成物を用い、溶融加工等により高品質な光学用途に使用できるような、耐熱性が高く、複屈折性に優れ、加えて、熱安定性及び成型加工性にも優れているメタクリル系樹脂組成物の提供にあるものと認められる。
それに対して、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分以外の部分(【0001】~【0119】)の記載を検討すると、背景技術として、光学材料向けのメタクリル系樹脂(組成物)、特に主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂(組成物)において、熱安定性の向上及び成形加工時等の加熱溶融による色調の変化を抑制するために、リン系のものを含む酸化防止剤を添加使用する技術が、本願出願時(優先日)に存していたことが開示されており(【0002】~【0011】)、本件発明のメタクリル系樹脂組成物において、(a)特定のリン元素含有量の範囲にあること及び(b)特定の3価リンと5価リンとの存在割合(P3/P5)の範囲にあることにつき、それぞれ、
(a)「本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、リン元素の含有量が10~1000質量ppmであり、好ましくは20~500質量ppm、さらに好ましくは50~300質量ppmであることが好まし」く、「リン元素の含有量が10質量ppm未満であると、本実施形態のような高いガラス転移温度を有するメタクリル系樹脂組成物の熱や酸素による分解を、十分に抑制することができない恐れがあ」り、「また、リン元素の含有量が1000質量ppmを超えると、本実施形態のように高いガラス転移温度を有するメタクリル系樹脂組成物を用いて高温下で溶融混練を行う場合に、生成する分解生成物や酸化生成物がその組成中に多量の存在することとなり、凝集異物の形成や架橋等の副反応を促進したり、例えば、押出機に附帯させたフィルターの目詰まりを増加させる等、溶融加工を不安定化したり、例えば、フィルム中の異物の増加や、その表面における筋状物やシルバーストリークスの生成等、溶融成形時の揮発成分中に含まれる分解生成物等により得られる製品の品質が低下したりするおそれがある。」及び
(b)「加えて、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物中に含まれる有機リン化合物については、31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が、0.2~5.0であり、好ましくは0.5~3.0、さらに好ましくは、0.6~2.0であることが好まし」く、「この比率が0.2未満の場合には、本実施形態の組成物を用いて、フィルムや成形品を得る際に、熱や酸素による分解を十分に抑制できないばかりか、生成する分解生成物や酸化生成物の影響により、凝集異物の形成が生じ、フィルム中の異物の増加やその表面に筋状物やシルバーストリークスが生成したりするおそれがあ」り、「また、この比率が5.0を超える場合には、押出機に附帯させたフィルターの目詰まりを増加させたり、フィルム中の異物の増加やその表面に筋状物やシルバーストリークスが生成したりするおそれがある。」
と、「溶融加工による成型加工の直前の状態の樹脂組成物」である本件の「メタクリル系樹脂組成物」において、上記(a)及び(b)の事項を併せて具備することによる作用機序につき記載されている。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分(【0120】~【0171】)の記載を検討すると、実施例1ないし11及び13ないし18は、成型加工性の点で比較例に比して同等以上の実験例であるのに対して、比較例では、上記(a)及び(b)の2点につきいずれも下限値を下回るか上限値を上回る比較例1ないし3及び(a)は範囲内であるが(b)については下限値を下回る比較例4ないし6が記載されているのみであり、また、(a)及び(b)の2点につきいずれも具備するがメタクリル系樹脂の重量平均分子量に係る事項を具備しない比較例7が記載されているが、比較例として、上記(a)及び(b)の2点につきいずれか一方が上限値を上回り他方が範囲内にある比較例、特に(a)が範囲内で(b)が上限値を超える比較例については記載されていない。
しかるに、上記実施例(比較例及び参考例)に係る部分の記載を総合すると、「溶融加工による成型加工の直前の状態の樹脂組成物」である本件発明のメタクリル系樹脂組成物が、メタクリル系樹脂の重量平均分子量の点に加えて、上記(a)及び(b)の各事項を併せて具備することにより、比較例のものと同等以上の成型加工性を示すことが看取できる。
以上を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」である本件発明につき、本件解決課題、特に従来技術に比してメタクリル系樹脂組成物が熱安定性及び成型加工性に優れる点を解決できると当業者が認識できるものといえる。
したがって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載では、同各項に記載された事項で特定される本件発明1ないし9が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。)。
(3)小括
よって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たすものである。
3.まとめ
よって、本件訂正後の請求項1ないし9に係る記載については、当審が通知した取消理由3は理由がない。
II.申立人が主張する取消理由について
申立人が主張する上記取消理由1ないし3につき、再度検討する。
1.取消理由1及び2について
(1)前提事項
上記取消理由1及び2につき検討するにあたり、その前提として、上記I.2.(1)イ.で示したとおりの理由により、本件発明の「メタクリル系樹脂組成物」は、特に「31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である」との点につき、「溶融加工による成型加工の直前の状態の樹脂組成物」であることを前提として以下検討する。
(2)甲1ないし8に記載された事項及び甲1ないし3に記載された発明
以下、上記取消理由につき検討するにあたり、当該取消理由1及び2はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし8に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1ないし3に記載された発明の認定を行う。
なお、各甲号証の摘示における下線は、元々記載されているものを除き、当審が付したものである。
ア.甲1
(ア)甲1に記載された事項
上記甲1には、申立人が申立書第10頁表下第5行ないし第14頁上段(【表1】)で指摘したとおりの事項(【請求項1】ないし【請求項5】、【0007】、【0008】、【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0065】ないし【0070】及び【表1】)が記載されている。
(イ)甲1に記載された発明
上記甲1には、「多環芳香族系キノン化合物と(メタ)アクリルモノマーを含む単量体組成物をラジカル重合して得られる重合体(A)と、リン含有化合物(B)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。」(【請求項1】)、「組成物中に含まれるリン含有化合物(B)のリン原子濃度が、10~1000質量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。」(【請求項2】)、「重合体(A)が、主鎖に環構造を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。」(【請求項3】)、「主鎖に含まれる環構造が、ラクトン環構造である請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。」(【請求項4】)及び「請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られることを特徴とするフィルム。」(【請求項5】)がそれぞれ記載されている。
そして、甲1には、上記各請求項に記載された事項を具備する熱可塑性樹脂組成物に係る実施例として、重量平均分子量13万~17万のアクリル系熱可塑性樹脂を含むことも記載されている(申立人が摘示する【0065】~【0070】参照)。
してみると、これらの記載からみて、
「多環芳香族系キノン化合物と(メタ)アクリルモノマーを含む単量体組成物をラジカル重合して得られる、主鎖にラクトン環構造を含む重量平均分子量13万~17万の重合体(A)と、組成物全体に対してリン原子濃度で10~1000質量ppmであるリン含有化合物(B)を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
イ.甲2
(ア)甲2に記載された事項
上記甲2には、申立人が申立書第14頁表下第3行ないし第18頁上段(表)で指摘したとおりの事項(【請求項1】、【0006】、【0032】、【0036】、【0051】、【0105】ないし【0140】、【0145】及び【0146】)が記載されている。
(イ)甲2に記載された発明
上記甲2には、「以下の式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)と、以下の式(2)に示すN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)とを有する熱可塑性樹脂(C)を含み、o-キシレンの含有率が10ppm以上500ppm以下(質量基準)である、熱可塑性樹脂組成物。」(【請求項1】、各式及びその説明は省略)が記載され、「樹脂(C)の重量分子量Mwの下限は、例えば5万以上であり、10万以上が好まし」く、「Mwの上限は、例えば30万以下であり、20万以下が好ましい」こと(申立人摘示の【0036】)及び「本発明の効果が得られる限り、樹脂組成物(D)は、熱可塑性樹脂以外の材料、例えば添加剤、を含むことができ」、「添加剤は、例えば、紫外線吸収剤(UVA);酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー、樹脂改質剤、可塑剤、滑剤であ」り「樹脂組成物(D)における添加剤の含有率(UVAを除く)は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である」こと(同【0051】)も記載されている。
また、上記甲2には、実施例1ないし16の具体的実施例が記載され、各実施例では、単量体100質量部につき、「アデカスタブ2112」なる商品名のリン系酸化防止剤0.05質量部(すなわち500質量ppm)の存在下で重合してなる樹脂(C)を含む樹脂組成物につき、樹脂(C)の重量平均分子量Mwが12.2万~13.7万、ガラス転移温度が121℃~150℃であることも記載されている(申立人摘示【0105】~【0128】、【表1A】、【表1B】参照)。
してみると、上記甲2には、これらの記載からみて、
「以下の式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)の少なくとも50質量%と、以下の式(2)に示すN-フェニルマレイミド単位および/またはN-シクロヘキシルマレイミド単位などのN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)の2~40質量%とを有する熱可塑性樹脂(C)及びリン系酸化防止剤500質量ppmを含み、o-キシレンの含有率が10ppm以上500ppm以下(質量基準)である熱可塑性樹脂組成物(D)であって、当該樹脂(C)の重量平均分子量Mwが12.2万~13.7万であり、ガラス転移温度(Tg)が110℃~150℃である、熱可塑性樹脂組成物。
式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1~12の炭化水素基である。
式(2)において、R3およびR4は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~14のアリール基であり、Xは、炭素数3~12のシクロアルキル基または炭素数6~14のアリール基である。」
に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものといえる。
ウ.甲3
(ア)甲3に記載された事項
上記甲3には、申立人が申立書第18頁表下第3行ないし第20頁第25行で指摘したとおりの事項(【請求項1】、【0046】、【0048】、【0064】、【0065】、【0074】、【0093】、【0104】ないし【0106】、【0112】、【0113】及び【0116】)が記載されている。
(イ)甲3に記載された発明
上記甲3には、「紫外線吸収剤(B)をX質量%の含有率で含む熱可塑性樹脂組成物(C)の製造方法であって、熱可塑性樹脂(A)と前記紫外線吸収剤(B)とを押出機にて溶融混練する工程と、前記溶融混練により形成された熱溶融状態の組成物をポリマーフィルタに導入して濾過する工程と、を含み、前記ポリマーフィルタへの前記組成物の導入を開始した後、前記ポリマーフィルタ内部の前記組成物の経路が前記組成物により充填されるまで、前記ポリマーフィルタへの前記組成物の導入量を定常状態よりも低くするとともに、当該組成物における前記紫外線吸収剤の含有率をY質量%(ただし、0≦Y≦1.5×X)とし、その後、前記導入量を定常状態とし、前記含有率をX質量%として、前記熱可塑性樹脂組成物(C)を得る、紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法。」(【請求項1】)及び「前記熱可塑性樹脂(A)が主鎖に環構造を有するアクリル樹脂である、請求項1~6のいずれかに記載の紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法。」(【請求項7】)が記載され、上記「主鎖に環構造を有するアクリル樹脂」が「ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である」こと(申立人摘示【0048】)、当該「樹脂(A)の重量平均分子量は、例えば1000~300000であり、好ましくは5000~250000、より好ましくは10000~200000、さらに好ましくは50000~200000である」こと(申立人摘示【0074】)及び「樹脂組成物(C)は、熱可塑性樹脂およびUVA(B)以外の材料、例えば添加剤、を含むことができ」、「添加剤は、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー、樹脂改質剤、可塑剤、滑剤であ」って「樹脂組成物(C)における添加剤の含有率は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である」こと(申立人摘示【0093】)もそれぞれ記載されている。
また、上記甲3には、「製造例1」として、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体の合計263質量部につき「アデカスタブ2112」なる商品名のリン系酸化防止剤0.15質量部(すなわち約570質量ppm)の存在下で重合してなるアクリル系樹脂が記載され、さらに「実施例1」として上記「製造例1」で製造したアクリル系樹脂につき環化縮合を完了させ、主鎖にラクトン環を有するアクリル系樹脂を含む樹脂組成物を製造しており、当該樹脂組成物につき、重量平均分子量Mwが13.6万、ガラス転移温度が121℃であることも記載されている(申立人摘示【0104】~【0127】参照)。
してみると、甲3には、これらの記載からみて、
「主鎖にラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種の環構造を有するメタクリル酸メチルを主成分とするアクリル樹脂(A)、紫外線吸収剤(B)及びリン系酸化防止剤570ppmを含む熱可塑性樹脂組成物であって、重量平均分子量Mwが13.6万、ガラス転移温度が121℃である樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものといえる。
エ.甲4に記載された事項
上記甲4には、申立人が申立書第20頁第28行ないし第21頁下段(最下行)で指摘したとおりの、「SUMILIZER GP」なる商品名の3価のリン原子を有するリン系酸化防止剤が、アルキルハイドロパーオキサイド(ROOH)から酸素を奪って、5価のリン原子を有する化合物に変化するという安定化機構で酸化防止剤として機能すること(第20頁「Scheme2」)及び「SUMILIZER GP」が他の3価のリン原子を有するリン系酸化防止剤(「P-1」)に比して、クメンハイドロパーオキサイドの分解速度が速いこと(第23頁左欄第6行ないし右欄第3行)が記載されている。
オ.甲5に記載された事項
上記甲5には、申立人が申立書第22頁第3行ないし第23頁第4行で指摘したとおりの、ラクトン環含有アクリル系樹脂ペレットに「PEP-36」なる商品名のリン系酸化防止剤を0.1重量%含有させてなる樹脂ペレット(【0145】)が記載されている。
カ.甲6に記載された事項
上記甲6には、申立人が申立書第23頁第7行ないし第24頁第4行で指摘したとおりの、「115℃以上のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂を溶融押出し法で成型機を用いて成型加工する工程を含むアクリル系樹脂成型品の製造方法であって、該溶融押出し工程は、アクリル系樹脂を溶融する前に、70℃以上、かつ、酸素濃度5体積%以下の状態で保持する操作を行うことを特徴とするアクリル系樹脂成型品の製造方法」が記載され(【請求項1】)、「上記溶融押出し工程は、アクリル系樹脂を溶融する前に、70℃以上、かつ、酸素濃度を5体積%以下の状態で保持する操作を行うことが好まし」く「これにより、成型時に熱を加えてもゲル化を起こしにくいため、ポリマーゲルや、ポリマー炭化物等の異物の生成を抑制することができ、かつ、着色を防止することができ、優れた光学特性を有するアクリル系樹脂成型品を製造することができ」、「より好ましくは、90℃以上、最も好ましくは、100℃以上であり、かつ、酸素濃度が1体積%以下である」こと及び「酸素濃度が5体積%を超えると、異物の生成を充分に抑制することができないおそれがある」こと(【0011】)も記載されている。
キ.甲7に記載された事項
上記甲7には、申立人が申立書第24頁第7行から第10行で主張するとおりの事項を含む、「分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を導入させることにより透明性耐熱樹脂を得る方法において、前記脱アルコール反応の際に、有機リン化合物を触媒として用いることを特徴とする、透明性耐熱樹脂の製造方法」(【請求項1】)が記載され、当該製造方法により得られた「本発明の透明性耐熱樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、115℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、最も好ましくは130℃以上である」と共に、「本発明の透明性耐熱樹脂中の残存揮発分は、その総量が、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下とな」り、「これよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーなどの成形不良の原因となる」こと(【0050】)が記載されている。
ク.甲8に記載された事項
上記甲8には、申立人が申立書第24頁第13行から第24行で主張するとおりの事項を含む、「下記式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)50~95質量%と、下記式(2)で表されるN-置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)0.1~20質量%と、下記式(3)で表されるN-置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)0.1~49.9質量%とを含有し、繰り返し単位(X)、繰り返し単位(Y1)及び繰り返し単位(Y2)の合計量が100質量%である、アクリル系熱可塑性樹脂であって、・・光弾性係数(C)の絶対値が、3.0×10-12Pa-1以下であり、ハロゲン原子の含有率が、当該アクリル系熱可塑性樹脂の質量を基準として0.47質量%未満である、アクリル系熱可塑性樹脂」(【請求項1】)が記載され、「フラットパネルディスプレイの大型化の結果、必要とされる光学材料も大型化してきており、外力の偏りによって光学材料内に複屈折分布が生じるためにコントラストが低下するという問題が生じて」おり、「この複屈折分布を小さくするためには、外力による複屈折の変化が小さい、即ち、光弾性係数の絶対値が小さい光学材料が必要とされている」こと(【0007】)及び「本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂、又はアクリル系熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるフィルム又はシート状の成形体を特性評価した場合に、成形体の光弾性係数(C)の絶対値は、3.0×10-12Pa-1以下であ」り、「2.0×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、1.0×10-12Pa-1以下であることがさらに好ましい」こと(【0098】~【0099】)も記載されている。
(3)対比・検討
以下、本件発明1ないし9につき、それぞれ、各甲号証に記載された発明と個々に対比・検討する。
ア.本件発明1について
(ア)甲1発明との対比・検討
(a)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「多環芳香族系キノン化合物と(メタ)アクリルモノマーを含む単量体組成物をラジカル重合して得られる、主鎖にラクトン環構造を含む重量平均分子量13万~17万の重合体(A)」は、本件発明1における「主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含み、前記(X)構造単位が、・・ラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種であるメタクリル系樹脂」及び「GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000以上である」に相当し、甲1発明の「組成物全体に対してリン原子濃度で10~1000質量ppmであるリン含有化合物(B)を含む」は、甲1において、当該リン含有化合物として亜リン酸エステル、すなわちリン含有有機化合物が好適なものとして例示されている(甲1【0033】)から、本件発明1における「有機リン化合物とを含み、」及び「リン元素の含有量が10~1000質量ppmであ」るに相当する。
また、甲1発明における「熱可塑性樹脂組成物」は、本件発明1における「メタクリル系樹脂組成物」に相当することが明らかである。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。
相違点1:本件発明1では「31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である」のに対して、甲1発明では、上記「(P3/P5)」につき特定されていない点
相違点2:「メタクリル系樹脂組成物」につき、本件発明1では「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であ」るのに対して、甲1発明では、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度につき特定されていない点
(b)検討
(b-1)相違点1について
上記相違点1につき検討すると、上記I.2.(1)イ.で示したとおり、3価のリン原子を有する有機リン系酸化防止剤を樹脂に一定量(10~1000質量ppm)添加使用した樹脂組成物において、添加時点における「(P3/P5)」値が最大であり、その後の酸素共存下における熱履歴(溶融混練、脱揮、成型等及びその条件)及び保管環境(温度、光照射有無、湿分存否、保管時間等の条件)により、「P3」が「P5」に変化し、「(P3/P5)」値が減少するものと理解するのが自然であり、単一の組成物につき一定の値となるものではないところ、甲1発明において、亜リン酸エステルなどの3価リンのみからなるリン含有化合物を組成物全体に対してリン原子濃度で10~1000質量ppmである量で添加使用したものであっても、その後の熱履歴(溶融混練、脱揮、成型等及びその条件)及び保管環境(温度、光照射有無、湿分存否、保管時間等の条件)により「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「(P3/P5)」がいかなる値となるか不明であって、本件発明1の「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「0.2~5.0」なる範囲となるものとは認められない。
してみると、上記相違点1は、実質的な相違点であると共に、甲1に記載された事項及び他の甲号証に記載された事項を含めて検討しても、甲1発明において、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「(P3/P5)」の値を「0.2~5.0」なる範囲にすべき技術的動機が存するものともいえないから、上記相違点1は、甲1発明に基づいて、当業者が適宜なし得ることということはできない。
(b-2)小括
したがって、上記相違点2につき検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明であるということはできず、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
(イ)甲2発明との対比・検討
(a)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「以下の式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)の少なくとも50質量%と、以下の式(2)に示すN-フェニルマレイミド単位および/またはN-シクロヘキシルマレイミド単位などのN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)の2~40質量%とを有する熱可塑性樹脂(C)」は、本件発明1における「主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含み、前記(X)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位・・からなる群より選ばれる少なくとも一種であるメタクリル系樹脂」に相当し、甲2発明の「リン系酸化防止剤500質量ppmを含み」は、甲2発明において使用される「アデカスタブ2112」なる商品名のリン系酸化防止剤が有機亜リン酸エステルであり、その500質量ppmには、リン原子が約24質量ppm含有されることが当業者に自明であるから、本件発明1における「有機リン化合物とを含み、」及び「リン元素の含有量が10~1000質量ppmであ」るの「24質量ppm」に相当することが、いずれも当業者に自明である。
また、甲2発明における「熱可塑性樹脂組成物」は、「熱可塑性樹脂(C)」と「リン系酸化防止剤」を含有する点で、本件発明1における「メタクリル系樹脂組成物」に相当する。
そして、甲2発明における「当該樹脂(C)の重量平均分子量Mwが12.2万~13.7万であり、ガラス転移温度(Tg)が110℃~150℃である」点は、甲2発明の「熱可塑性樹脂組成物」のガラス転移温度は、「熱可塑性樹脂(C)」のガラス転移温度と略同等なものとなることが当業者に自明であるから、本件発明1における「GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000以上であ」る点及び「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であ」る点との間で、それぞれ、「12.2万~13.7万」との範囲及び「120℃超150℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、下記の点でのみ一応相違し、その余で一致している。
相違点1’:本件発明1では「31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である」のに対して、甲2発明では、上記「(P3/P5)」につき特定されていない点
(b)検討
(b-1)相違点1’について
上記相違点1’につき検討すると、相違点1’は、上記(ア)で示した相違点1と同一の事項であって、上記(ア)(b)(b-1)で説示した相違点1に係る理由と同一の理由により、「アデカスタブ2112」なる商品名の有機亜リン酸エステルであるリン系酸化防止剤500質量ppm(リン含量24質量ppm)を使用する甲2発明においても、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「(P3/P5)」がいかなる値となるか不明であって、本件発明1の「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「0.2~5.0」なる範囲となるものとは認められず、また、甲2に記載された事項及び他の甲号証に記載された事項を含めて検討しても、甲2発明において、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「(P3/P5)」の値を「0.2~5.0」なる範囲にすべき技術的動機が存するものともいえないから、上記相違点1’は、実質的な相違点であると共に、甲2発明に基づいて、当業者が適宜なし得ることということはできない。
(b-2)小括
したがって、本件発明1は、上記甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ウ)甲3発明との対比・検討
(a)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「主鎖にラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種の環構造を有するメタクリル酸メチルを主成分とするアクリル樹脂(A)」は、本件発明1における「主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含み、前記(X)構造単位が、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種であるメタクリル系樹脂」に相当し、甲3発明の「リン系酸化防止剤570ppmを含む」は、甲3発明において使用される「アデカスタブ2112」なる商品名のリン系酸化防止剤が有機亜リン酸エステルであり、その570質量ppmには、リン原子が約27質量ppm含有されることが当業者に自明であるから、本件発明1における「有機リン化合物とを含み、」及び「リン元素の含有量が10~1000質量ppmであ」るの「27質量ppm」に相当することが、いずれも当業者に自明である。
また、甲3発明における「熱可塑性樹脂組成物」は、「アクリル樹脂(A)」と「リン系酸化防止剤」を含有する点で、本件発明1における「メタクリル系樹脂組成物」に相当する。
そして、甲3発明における「重量平均分子量Mwが13.6万、ガラス転移温度が121℃である樹脂組成物」は、本件発明1における「GPCにより測定されるポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)が、90,000以上であ」る点及び「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であ」る点との間で、それぞれ、「13.6万」の点及び「121℃」の点で一致するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲3発明とは、下記の点でのみ一応相違し、その余で一致している。
相違点1’’:本件発明1では「31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である」のに対して、甲3発明では、上記「(P3/P5)」につき特定されていない点
(b)検討
(b-1)相違点1’’について
上記相違点1’’につき検討すると、相違点1’’は、上記(ア)で示した相違点1と同一の事項でああって、上記(ア)(b)(b-1)で説示した相違点1に係る理由と同一の理由により、「アデカスタブ2112」なる商品名の有機亜リン酸エステルであるリン系酸化防止剤570質量ppm(リン含量27質量ppm)を使用する甲3発明においても、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「(P3/P5)」がいかなる値となるか不明であって、本件発明1の「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「0.2~5.0」なる範囲となるものとは認められず、また、甲3に記載された事項及び他の甲号証に記載された事項を含めて検討しても、甲3発明において、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」における「(P3/P5)」の値を「0.2~5.0」なる範囲にすべき技術的動機が存するものともいえないから、上記相違点1’’は、実質的な相違点であると共に、甲3発明に基づいて、当業者が適宜なし得ることということはできない。
(b-2)小括
したがって、本件発明1は、上記甲3発明、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1ないし甲3の各甲号証に記載された発明であるとはいえず、甲1ないし甲3の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできない。
イ.本件発明2ないし9について
本件発明2ないし9は、いずれも、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるところ、上記ア.で検討したとおり、本件発明1は、甲1ないし甲3の各甲号証に記載された発明であるとはいえず、甲1ないし甲3の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできないのであるから、同一の理由により、本件発明2ないし9のいずれについても、甲1ないし甲3の各甲号証に記載された発明であるとはいえず、甲1ないし甲3の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいうことはできない。
ウ.検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし9は、いずれも、甲1ないし甲3のいずれかに記載された発明であるということはできず、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
(4)取消理由1及び2に係る検討のまとめ
よって、本件発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、本件発明1ないし9は、同法同条第2項の規定にも該当しないから、いずれにしても特許を受けることができないものということはできないから、申立人が主張し、当審が通知した取消理由1及び2につき、いずれも理由がない。
2.取消理由3について
申立人が主張する取消理由3は、申立書第39頁最下行ないし第41頁第2行の記載からみて、上記I.2.(2)で示したとおりの本件発明の解決課題を指摘した上で、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例において確認されている「光弾性係数」、「ガラス転移温度」、「溶液透過率」、「ロール汚れ」、「フィルム外観」なる各物性と課題解決手段との関係が不明であるとし、本件発明に係る構成要件事項、特に「31P-NMR測定において、5価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P5)に対する3価リンに帰属されるスペクトルピークの積分値(P3)の割合(P3/P5)が0.2~5.0である」こととの技術的対応関係が不明であることにより、本件発明で規定する構成要件を充足することにより、本件発明の課題が解決されるわけではなく、本件発明はいわゆるサポート要件に違反するというものであると認められる。
しかるに、上記I.で説示したとおりの理由により、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、「(溶融加工による成型加工の直前の状態の)樹脂組成物」である本件発明につき、本件解決課題、特に従来技術に比してメタクリル系樹脂組成物が熱安定性及び成型加工性に優れる点を解決できると当業者が認識できるものといえるのであるから、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載では、同各項に記載された事項で特定される本件発明1ないし9が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものというべきであって(知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。)、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし9の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合する、すなわちサポート要件を満たすものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たすものである。
よって、申立人が主張する取消理由3は、理由がない。
III.当審の判断のまとめ
以上のとおり、申立人が主張する取消理由1ないし3及び当審が通知した取消理由1ないし3は、いずれも理由がないから、本件訂正後の請求項1ないし9に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、本件の請求項1ないし9に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、ほかに本件の請求項1ないし9に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700980