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特許異議申立

2017-701135

処理装置

審判番号
2017-701135
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-049699
登録番号
特許第6137367号(P6137367)
請求日
2017年11月30日
審決日
2019年04月24日
公報発行日
2019年08月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】富士ゼロックス株式会社
  • 【異議申立人】石井 良和
審判長/審判官
  • 審判長 鳥居 稔
  • 審判官 樫本 剛
  • 審判官 小池 正彦
分類
P1651.841-ZB (H04N) / P1651.855-ZB (H04N) / P1651.537-ZB (H04N) / P1651.113-ZB (H04N) / P1651.121-ZB (H04N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6137367号発明「処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6137367号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6137367号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成23年7月11日出願した特願2011-152614号の一部を平成28年3月14日に出願したものであって、平成29年5月12日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 平成29年5月31日)がされ、平成29年11月30日に特許異議申立人石井良和により請求項1~3に対して特許異議の申立てがされたものである。 そして、その後の経緯は次のとおりである。 平成30年 3月 5日付け 取消理由通知 同年 3月19日   訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年 5月14日   意見書の提出(特許異議申立人) 同年 5月31日付け 訂正拒絶理由通知 同年 6月27日   意見書の提出(特許権者) 同年 8月30日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年10月24日   訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年12月17日   意見書の提出(特許異議申立人) 平成31年 1月31日付け 訂正拒絶理由通知 同年 3月 5日   意見書の提出(特許権者) 第2 訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨、訂正の内容 (1)請求の趣旨 平成30年10月24日に特許権者により行われた、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、特許第6137367号の明細書、特許請求の範囲を本件訂正の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを求める、というものである。 (2)訂正の内容 本件訂正の内容は以下ア~エのとおりである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2のうち「前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」と記載されているのを、「前記熱検出手段により検出された熱の温度分布および予め定められたパターンに基づいて前記移動体の存在が検出され、さらに前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数が予め定められた数よりも多くかつ前記温度分布が相対的に高い場合に、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えると判定し、前記熱検出手段により検出された熱の温度分布および予め定められたパターンに基づいて前記移動体の存在が検出されても、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数が予め定められた数よりも少なくかつ前記温度分布が相対的に低い場合には、前記第2の状態を維持する判定手段」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3のうち「前記請求項1又は請求項2に記載の」と記載されているのを、「前記請求項2に記載の」に訂正する。 エ 訂正事項4 明細書の段落【0009】に「請求項1に記載の発明は、第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段と、移動体の移動に伴い生ずる、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の示す二次元の領域の形状の変化に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段と、を有する処理装置である。請求項2に記載の発明は、第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段と、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段と、を有する処理装置である。請求項3に記載の発明は、コンピュータを、前記請求項1又は請求項2に記載の処理装置として実行させるプログラムである。」と記載されているのを、「請求項2に記載の発明は、第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段と、前記熱検出手段により検出された熱の温度分布および予め定められたパターンに基づいて前記移動体の存在が検出され、さらに前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数が予め定められた数よりも多くかつ前記温度分布が相対的に高い場合に、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えると判定し、前記熱検出手段により検出された熱の温度分布および予め定められたパターンに基づいて前記移動体の存在が検出されても、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数が予め定められた数よりも少なくかつ前記温度分布が相対的に低い場合には、前記第2の状態を維持する判定手段と、を有する処理装置である。請求項3に記載の発明は、コンピュータを、前記請求項2に記載の処理装置として実行させるプログラムである。」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1~3は、一群の請求項1~3に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 訂正事項4による明細書の訂正に係る請求項は、上記訂正事項1~3による訂正に係る請求項と同じであって、上記訂正事項4による明細書の訂正は、一群の請求項の全てについて行われたものであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 したがって、上記訂正事項1~4は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項の規定によって準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項1は、請求項の削除であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 訂正事項1は、請求項の削除であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項2は、訂正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明における「判定手段」の動作をより具体的に特定するものであり、また、訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3に係る発明についても同様に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について (ア)本件明細書等の記載 本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「本件明細書等」という。)には次の記載がある。(下線は強調のため当審で付与した。) 「【0055】 なお、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30は、「人感」としているが、これは、本実施の形態に則した固有名詞であり、少なくとも人が検知(「検出」と同義である)できればよく、言い換えれば、人以外の移動体の検知も含むものである。従って、以下において、人感センサの検出対象を「人」に言及する場合があるが、将来的には、人に代わって実行するロボット等も検知対象範囲である。なお、逆に、人と特定して検知できる特殊センサが存在する場合は、当該特殊センサを適用可能である。以下では、移動体、人、使用者等は、第1の人感センサ28、第2の人感センサ30が検出する対象として同義として扱い、必要に応じて区別することとする。」 「【0063】 図7(B)に示される如く、検出部28Aからの電気信号は、解析部28Bの電気信号受付部50で受け付けられ、画素毎データ格納部52にそれぞれのサーモパイル素子で検出した信号が格納されるようになっている。なお、ここでは、解析部28Bの機能の全てが図4に示す回路基板部28Bに具備することとして説明するが、解析部28Bが当該機能の全てを備える必要はなく、一部が図4に示す監視制御部24の機能であってもよい。 【0064】 この画素毎データ格納部52には、データ抽出部54が接続されており、例えば、1画素単位でデータが抽出され、温度レベル決定部56に送出される。温度レベル決定部56には、電気信号-温度レベル特性テーブル記憶部58が接続されており、受け付けた電気信号に基づく温度レベル(本実施の形態では、図8(C)に示す4段階)の何れかを決定する。 【0065】 決定した温度レベル情報は、検出結果判定部60へ送出されるようになっている。 【0066】 検出結果判定部60には、温度分布-状態照合テーブル記憶部62が接続されている。検出結果判定部60では、この温度分布-状態照合テーブル記憶部62に記憶されている温度分布-状態照合テーブルに基づいて、例えば、基本パターンとして、図8(A)に示すように、検出部28Aの検出領域に人が存在する場合に、その検出結果(温度分布)から状態(ここで、「人が存在する」)を判定する(図8(B)参照)。 【0067】 また、図7に示される如く、検出結果判定部60では、上記図8に示す基本パターンを判定を基礎して、図9~図11に示す応用パターンから人の動作状態を判定し、状態情報出力部64を介して、図4に示す監視制御部24へ送出する。 【0068】 なお、図9~図11では、検出状態に基づく判定と共に、本実施の形態に特化した対応(すなわち、スリープモードからスタンバイモードへ遷移する必要性)を示している。また、以下の応用パターン1~3を組み合わせ、かつ第2の人感センサ30による検出と組み合わせることで、後述する図6のAパターン~Cパターンの見極めるようになっている。」 「【0071】 図9(C)は、人を検出(基本パターンと同等)し、かつ原稿に相当する温度分布があり、スキャン、コピーのための原稿を所持していると判定され、対応としてはスリープモードからスタンバイモードへ立ち上げることになる。なお、直接スタンバイモードへ遷移させるのではなく、例えば、第2の人感センサ30の電力遮断状態である場合は、まず、この第2の人感センサ30に電力を供給するようにしてもよい。」 「【0075】 「応用パターン3(図11)」 図11(A)は、検出領域に何も存在せず、赤外線アレイセンサ28IRの検出状態は無感状態となり、その判定結果は、周囲に誰もいないと判定され、対応としてはスリープモードが維持されることになる。 【0076】 図11(B)は、人を検出(基本パターンと同等)したが、相対的に少ない画素での検出であり、かつ温度分布も相対的に低いため遠方に人がいると判定され、対応としては、装置に接近するか否かが不明な状況であるので、スリープモードが維持されることになる。 【0077】 図11(C)は、人を検出(基本パターンと同等)し、相対的に多い画素での検出であり、かつ温度分布も相対的に高いため近傍に人がいると判定され、対応としては、スリープモードからスタンバイモードへ立ち上げることになる。なお、直接スタンバイモードへ遷移させるのではなく、例えば、第2の人感センサ30の電力遮断状態である場合は、まず、この第2の人感センサ30に電力を供給するようにしてもよい。」 「【図8】 」 「【図11】 」 (イ)訂正後の請求項2の記載 訂正事項2による訂正後の特許請求の範囲の請求項2の記載を次のとおり分節する。請求項中の各構成の符号(A)~(C)は、当審で付与したものであり、以下、請求項の各構成を、構成A~構成Cと称する。また、構成CA1~構成CBDは、構成Cの判定手段に含まれる要素であり、以下、構成CA1~構成Cをまとめて「構成C」という。 (A)第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、 (B)熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段と、 (CA1)前記熱検出手段により検出された熱の温度分布および予め定められたパターンに基づいて前記移動体の存在が検出され、 (CA2)さらに前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数が予め定められた数よりも多く (CA3)かつ前記温度分布が相対的に高い場合に、 (CAD)前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えると判定し、 (CB1)前記熱検出手段により検出された熱の温度分布および予め定められたパターンに基づいて前記移動体の存在が検出されても、 (CB2)前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数が予め定められた数よりも少なく (CB3)かつ前記温度分布が相対的に低い場合には、 (CBD)前記第2の状態を維持する (C)判定手段と、 (A)を有する処理装置。 (ウ)構成Cに関連する本件明細書の記載 構成Cの判定手段に関連する記載としては、特許権者が本件訂正請求書の6(3)イ(イ)cにおいて示しているとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の段落0066、0076、0077の記載が存在する。その記載内容は上記(ア)に示したとおりである。 (エ)発明の詳細な説明に記載の「検出結果判定部60」について 発明の詳細な説明に記載の「検出結果判定部60」は、構成Cの「判定手段」に対応するものと解される。 段落0063には、構成Bに対応する「検出部28A」からの電気信号は、解析部28Bの画素毎データ格納部52に格納されることが記載されている。そして、段落0064には、前記画素毎データ格納部52から1画素単位でデータが抽出され、温度レベルが決定されることが記載され、段落0065には、決定された温度レベル情報が検出結果判定部60に送出されることが記載されている。 段落0066には、検出結果判定部60は、1画素単位で決定された温度レベル情報と、温度分布-状態照合テーブルに基づいて、図8の基本パターンの例のように、検出結果(温度分布)から、状態(「人が存在する」)を判定することが記載されている。 段落0067には、検出結果判定部60は、上記図8に示す基本パターンを用いた判定を基礎にして、人の動作状態を判定し、状態情報出力部64を介して監視制御部24へ送出することが記載されている。なお、当審において、段落0067における「基本パターンを判定を基礎にして」との記載は、「基本パターンを用いた判定を基礎にして」の誤記と認めた。 (オ)発明の詳細な説明の段落0076、0077の記載内容 段落0076及び段落0077の第1文を次のとおり分節する。各段落の各記載の符号(cb1)~(cad)は、当審で付与したものであり、以下、各記載を、記載cb1~記載cadと称する。 (段落0076) 図11(B)は、 (cb1)人を検出(基本パターンと同等)したが、 (cb2)相対的に少ない画素での検出であり、 (cb3)かつ温度分布も相対的に低いため (cbd)遠方に人がいると判定され、対応としては、装置に接近するか否かが不明な状況であるので、スリープモードが維持されることになる。 (段落0077) 図11(C)は、 (ca1)人を検出(基本パターンと同等)し、 (ca2)相対的に多い画素での検出であり、 (ca3)かつ温度分布も相対的に高いため (cad)近傍に人がいると判定され、対応としては、スリープモードからスタンバイモードへ立ち上げることになる。 (カ)記載cb1~cadについて 記載cbd及び記載cadは、検出結果判定部60が判定した「人の動作状態」の判定内容と、当該「人の動作状態」の判定内容への対応として実行される監視制御部24の制御内容と解される。また、記載cb1、記載cb2、記載cb3、記載ca1、記載ca2、記載ca3は、検出結果判定部60の判定内容である。ここで、記載cbdの判定内容は、監視制御部24の制御内容からみて、検出結果判定部60が判定した「人の動作状態」により「スリープモードが維持される」ことを判定したものであり、記載cadの判定内容は、検出結果判定部60が判定した「人の動作状態」により「スリープモードからスタンバイモードへ立ち上げる」ことを判定したものであるといえる。 (キ)構成Cと記載cb1~cadの対応関係について 記載cad及び記載cbdの「スリープモード」は、記載cadの「スタンバイモード」よりも電力供給量の少ない状態であるから、当該「スリープモード」及び「スタンバイモード」は、構成Cの「第2の状態」及び「第1の状態」に相当するものである。よって、判定した「人の動作状態」からみて、記載cad及び記載cbdは、構成CAD及び構成CBDにそれぞれ対応すると解される。 次に、構成CADの判定内容である構成CA1~構成CA3及び構成CBDの判定内容である構成CB1~CB3が、それぞれ対応する判定内容である記載ca1~記載ca3及び記載cb1~記載cb3と一致するものであるか検討する。 記載ca2、記載cb2で検出する画素は、それぞれ記載ca1、記載cb1の「基本パターンと同等」の検出に用いられた画素と解される。 これに対し、構成CA2、構成CB2の「前記素子」における「素子」は、構成Bには「熱を検出する複数の素子」と特定されているのに対して、構成CA1、構成CB1には「素子」について何ら特定はない。したがって、構成CA2、構成CB2の「素子の個数」は、構成CA1、構成CB1の移動体の存在の検出に用いられた「素子の個数」に一致せず、移動体の存在の検出に用いられなかった素子(予め定められたパターンに基づいて検出されたもの以外の素子)も含むものとなっている。 よって、構成CA2及び構成CB2は、記載ca2及び記載cb2とは異なるものである。また、本件明細書等において、ほかに構成CA2及び構成CB2に対応するものは存在しない。 したがって、構成CA2及び構成CB2は、本件明細書等には記載されていないし、当業者からみて本件明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。 (ク)意見書の主張について 平成31年3月5日に提出された意見書において、特許権者は、平成31年1月31日付けで通知した訂正拒絶理由に対して次のとおり主張している。 『 たしかに、請求項2に記載された「前記素子」における「素子」は、「熱を検出する複数の素子」と特定されており、移動体の存在の検出に用いられた素子だけでなく、移動体の存在の検出に用いられなかった素子も含むものとなっている。 しかしながら、本件明細書等に接した当業者であれば、移動体の存在の検出に用いられなかった素子の個数や温度分布を基に、第2の状態から第1の状態へ切り替えるか否かを判定することは、自明な事項である。 以下に、その理由を詳説する。 請求項2に記載された「移動体」とは、「処理装置を操作する可能性がある」ものである点を特定している。また、本件明細書の段落【0055】には、「少なくとも人が検知・・・できればよく、言い換えれば、人以外の移動体の検知も含むものである。従って・・・人に代わって実行するロボット等も検知対象範囲である。」と記載されている。この記載から、「処理装置を操作する可能性がある移動体」とは、人や人に代わって実行するものであることは自明である。 そして、本件明細書の段落【0071】には、「人を検出(基本パターンと同等)し、かつ原稿に相当する温度分布があり・・・」という構成(応用パターン1)が開示されている。すなわち、移動体の存在の検出に用いられなかった素子として、原稿を検出した素子の情報を用いた構成が開示されている。なぜなら、「移動体」とは、人や人に代わって実行するものであって、原稿は「移動体」ではないからである。 次に、本件明細書の段落【0075】-【0077】及び図11には、遠方に人がいるか、近傍に人がいるかを判定するために、人の存在の検出に用いられた素子の個数および温度分布を参照する構成(応用パターン3)が開示されている。 また、本件明細書の段落【0068】には、「・・・また、以下の応用パターン1~3を組み合わせ・・・見極めるようになっている。」と記載されていることから、応用パターン1と応用パターン3とを組み合わせた構成についても開示されている。 ここで、応用パターン1と応用パターン3とを組み合わせた場合は、遠方に原稿を所持している人がいるか、近傍に原稿を所持している人がいるかを判定するために、原稿の存在の検出に用いられた素子(移動体の存在の検出に用いられなかった素子)の個数および温度分布を参照するのは、本件明細書等に触れた当業者にとって、自明な事項である。 よって、訂正事項2に係る訂正を認めたとしても、第三者への不足の不利益の防止という、特許法第120条の5第9項の準用する特許法第126条第5項の規定の趣旨を損なうことはない。』 上記主張について検討する。 上記(キ)のとおり、構成CA2、構成CB2の「前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子」における「前記素子」は、構成Bの「熱を検出する複数の素子」のことと解されるから、当該「熱を検出する複数の素子」のうち「予め定められた温度以上の熱を検出した素子」は、「移動体の存在の検出に用いられた素子」とそれ以外の「移動体の存在の検出に用いられなかった素子」とで構成され、構成CA2、構成CB2は、当該両者の素子の個数を予め定められた数と比較するものである。 そして、本件訂正後の請求項2には、前記個数が予め定められた数と比較される前記「予め定められた温度以上の熱を検出した素子」のうちの「移動体の存在の検出に用いられなかった素子」(以下、「個数比較対象素子」という。)が、原稿の存在の検出に用いられた素子に限定されること、すなわち、個数比較対象素子から原稿の存在の検出に用いられなかった素子が除かれることは記載されていないから、特許権者が自明と主張する「原稿の存在の検出に用いられた素子を参照する」という構成は、本件訂正後の請求項2に係る発明の構成とは認められない。 よって、特許権者の上記主張は、本件訂正後の請求項2に係る発明に対応したものでないから、採用することができない。 (ケ)新規事項の追加の有無についてのまとめ したがって、上記構成CA2、構成CB2の訂正を含むものである訂正事項2は、本件明細書等に記載されたすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないため、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 上記イのとおり、請求項2及び請求項3に係る訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項3は、訂正事項1により請求項1を削除したことに伴い、請求項3が引用していた請求項から請求項1を削除することにより、多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものである。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項3は、請求項の引用請求項数を削減するものであり、新たな技術的事項を導入するものでないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 訂正事項3は、請求項の引用請求項数を削減するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項4は、上記訂正事項1~3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無について 訂正事項4は、上記訂正事項1~3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから、訂正事項4も上記(2)イと同様の理由により、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 訂正事項4は、上記訂正事項1~3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから、訂正事項4も上記(2)ウと同様の理由により、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。 4 訂正の適否についてのまとめ 以上のように、本件訂正は、その訂正事項2及び訂正事項4において、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合しないから、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認めない。 第3 本件特許発明 本件訂正は上記第2のとおり認められないところ、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、「本件特許発明1」~「本件特許発明3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 (本件特許発明1) 第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、 熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段と、 移動体の移動に伴い生ずる、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の示す二次元の領域の形状の変化に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段と、 を有する処理装置。 (本件特許発明2) 第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、 熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段と、 前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段と、 を有する処理装置。 (本件特許発明3) コンピュータを、前記請求項1又は請求項2に記載の処理装置として実行させるプログラム。 第4 取消理由通知の概要 平成30年3月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (理由1)本件特許発明1~本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (理由2)本件特許発明1は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由3)本件特許発明1及び本件特許発明2は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証~甲第7号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:特開平8-123544号公報 甲第2号証:特開平6-119090号公報 甲第3号証:特開2002-208493号公報 甲第4号証:特開2007-315965号公報 甲第5号証:特開平6-189048号公報 甲第6号証:特開平6-261320号公報 甲第7号証:特許第2517098号公報 第5 本件特許発明についての判断 1 理由1(特許法第36条第6項第1号)について (1)本件特許発明1について 本件特許発明1における「移動体の移動に伴い生ずる、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の示す二次元の領域の形状の変化に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」は、「前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替え」及び「形状の変化に基づいて」に係る構成(以下、それぞれ「構成1」及び「構成2」という。)が、発明の詳細な説明に記載されていない。その理由は以下のとおりである。 ア 構成1について 上記構成1に関連する発明の詳細な説明の記載として、次の記載が存在する。(下線は当審において付した。) 「【0071】 図9(C)は、人を検出(基本パターンと同等)し、かつ原稿に相当する温度分布があり、スキャン、コピーのための原稿を所持していると判定され、対応としてはスリープモードからスタンバイモードへ立ち上げることになる。なお、直接スタンバイモードへ遷移させるのではなく、例えば、第2の人感センサ30の電力遮断状態である場合は、まず、この第2の人感センサ30に電力を供給するようにしてもよい。」 「【0076】 図11(B)は、人を検出(基本パターンと同等)したが、相対的に少ない画素での検出であり、かつ温度分布も相対的に低いため遠方に人がいると判定され、対応としては、装置に接近するか否かが不明な状況であるので、スリープモードが維持されることになる。 【0077】 図11(C)は、人を検出(基本パターンと同等)し、相対的に多い画素での検出であり、かつ温度分布も相対的に高いため近傍に人がいると判定され、対応としては、スリープモードからスタンバイモードへ立ち上げることになる。なお、直接スタンバイモードへ遷移させるのではなく、例えば、第2の人感センサ30の電力遮断状態である場合は、まず、この第2の人感センサ30に電力を供給するようにしてもよい。 【0078】 (第2の人感センサ28) 一方、本実施の形態に係る第2の人感センサ30の仕様は、移動体の有無(存在・不存在)を検出するものが適用されている。この第2の人感センサ30に適用されるセンサは、投光部と受光部とを備えた反射型センサ等が代表的である(反射型センサ)。なお、投光部と受光部とが分離された形態であってもよい。」 「【0102】 本実施の形態の画像処理装置10では、予め定められた条件(例えば、第2の人感センサ30による移動体(使用者)立ち去り情報、或いはシステムタイマのタイムアップによる立ち下げトリガ出力)が揃うと、スリープモードへ移行する。このスリープモードでは、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240の各デバイスのみならず、節電中監視制御部24を除くメインコントローラ200、並びにUIタッチパネル216に対しても電力供給を遮断する。この場合、メインコントローラ200に接続されている節電制御ボタン26の機能も停止されることが好ましい。このため、周囲から画像処理装置10を見ると、メイン電源スイッチが切られている状態とほぼ同等の状態となる。すなわち、スリープモードが確実に実行されていることが、周囲から確認可能な状態となる(「見える化」の実現)。 【0103】 画像処理装置10のデバイス(ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240)に関しては、第1の人感センサ28及び第2の人感センサ30に基づき、省エネ性及び利便性という二律背反の目的を相互に考慮し、適正なモード遷移(特に、スリープモードからの立ち上げ、並びにスリープモードへの立ち下げ)を行っている。この場合、第1の人感センサ28及び第2の人感センサ30等の検出系については、常時、電力が供給される前提となっている。なお、第1の人感センサ28のみを常時電力供給対象とし、この第1の人感センサ28で移動体(使用者)を検出した時点で、第2の人感センサ30に電力を供給するようにしてもよい。」 段落0102には、第2の状態であるスリープモードへの移行に第2の人感センサが用いられることが記載されているが、当該第2の人感センサは段落0078の記載によれば反射型センサである。 また、段落0103には、第1の人感センサ28及び第2の人感センサ30に基づき、スリープモードからの立ち上げ、及びスリープモードへの立ち下げを行うことが記載されているが、段落0071及び段落0077において、赤外線アレイセンサを使ってスリープモードからの立ち上げを行うことが記載され、段落0102において、反射型センサを使ってスリープモードへの移行を行うことが記載されていることから、前記「第1の人感センサ28及び第2の人感センサ30に基づき、スリープモードからの立ち上げ、及びスリープモードへの立ち下げを行うこと」は、赤外線アレイセンサを使ってスリープモードからの立ち上げを行うこと、及び、反射型センサを使ってスリープモードへの移行を行うことをまとめて記載したものと認められる。 以上から、いずれの記載においても、熱を検出した素子では、スリープモードである第2の状態へ切り替えるか否かの判定は行われていないから、上記「移動体の移動に伴い生ずる、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の示す二次元の領域の形状の変化に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」における「前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替え」は、発明の詳細な説明に記載されていない。 イ 構成2について 上記構成2に関連する発明の詳細な説明の記載としては、段落0071には、「人を検出(基本パターンと同等)し、かつ原稿に相当する温度分布があり」との条件に基づき判定を行うことが記載されているが、前記「人を検出(基本パターンと同等)」及び「原稿に相当する温度分布」は、形状であって形状の変化ではない。また、段落0077における、「人を検出(基本パターンと同等)」も、同様に、形状であって形状の変化ではない。 よって、上記「移動体の移動に伴い生ずる、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の示す二次元の領域の形状の変化に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」における「形状の変化に基づいて」は、発明の詳細な説明に記載されていない。 以上から、本件特許発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2における「前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」は、発明の詳細な説明に記載されていない。 上記構成に関連する発明の詳細な説明の段落0076、0077(上記(1)アを参照。)に記載されている構成は、予め定められた温度以上の熱を検出した素子であっても、基本パターンに一致しない素子は上記判定に係る個数に含まないものであるから、「予め定められた温度以上の熱を検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する」ものが発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 よって、本件特許発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明1及び本件特許発明2を引用する本件特許発明3についても、上記(1)及び(2)と同様の理由が存在する。 よって、本件特許発明3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 理由2(特許法第29条第1項第3号)について (1)本件特許発明1について ア 甲第1号証について 上記甲第1号証には、以下の記載がある。(下線は当審において付した。) 「【0011】焦電素子の数を複数(n*m)にすることで、空間部をn*m個に分割でき、温度の2次分布が検知できる。赤外線集光レンズ3を広角にすれば、広い範囲の温度分布を得ることができる。また、モータにより、素子面を回転させると1次元のセンサから2次元の温度分布情報が得られる。 【0012】温度情報より、30℃以上の部分を人体とみなせば、その空間部のどこに人がいるかが検出できる。さらに、空間分解能を上げるか、検出空間を狭めることにより、人体の姿勢や、手や足を上げた場合などの形状の違いを検知することができる。さらに、チョッパー4の動きを10Hzに設定すると、0.1秒毎の熱画像が得られるため、位置の移動や手の動きが検出できる。 【0013】寝室を例にとると、図2に示すように、寝室の壁面に赤外線センサ8を取り付けておき、照明9、テレビ10、エアコン11をそれぞれ制御部7とつないでコントロールできるシステムを構築する。赤外線センサ8は寝室の入口(8a)とベッド近くの壁(8b)に設置する。赤外線センサ8aはタテ1*ヨコ4合計4個の素子からなり、チョッピングスピードを20Hzにする。人が入室すると、赤外線センサ8aの前を横切るため、図3に示すように入口側の素子から時間経過とともに遠い側の素子へと人体検知が移るため、人の移動方向が検出できる。人の入室を赤外線センサ8aがキャッチし、制御部7に入室の信号を送ると制御部7から照明9にonの信号を送り、照明がつく。逆に退室を検知して照明やテレビを消すことも可能である。 【0014】赤外線センサ8bは、タテ5*ヨコ5合計10個の素子からなり、チョッピング速度は10Hzとし、ベッド上の空間タテ100cm*ヨコ90cm*オクユキ180cmの温度分布を検知するように設置する。ベッドに入って手を枕側へあげると、赤外線センサ8bが手を上げた形状を図4(a)から認識して制御部7に伝え、制御部7よりテレビ10のスイッチをつける信号を送り、テレビをつける。また、暑かった場合は、手を横に突き出すと、赤外線センサ8bが図4(b)からその信号を認識して、制御部7に伝達し、エアコン11を稼動させる。眠りにはいるときは、両手を上げると全ての機器がoff状態になると決めておけば、赤外線センサ8bが図4(c)を認識して制御部7に信号を送り、各機器をoff状態にする。また、ベッドから起きあがったら、その姿勢の変化を赤外線センサ8bが図4(d)としてとらえ、制御部7を通して、照明9をつける。このように、予め、制御したい機器に送る信号(赤外線センサが検知できる姿勢、動き)を決めて各々の機器を信号のやりとりができるように制御部と接続しておくと、赤外線センサを介して、複数の機器の制御が可能となる。」 「【図2】 」 「【図4】 」 ここで、上記段落0014によれば、赤外線センサ8bは人の手の動作を認識することによって、テレビをつけたりoff状態にしたりするものであり、かつ、通常のテレビの操作は人の手によって行われるものであることから、前記赤外線センサ8bは、テレビを操作する可能性がある人の手の温度を検出するものと解される。 以上から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「制御部にテレビ及び赤外線センサがつながれたシステムであって、 タテ5*ヨコ5合計10個の素子からなり、テレビを操作する可能性がある人の手の温度を検出する、赤外線センサと、 上記赤外線センサにおいて30℃以上の部分を検出することによって、人が両手を上げる動きを検知すると、テレビがついた状態からテレビのoff状態にする制御部と、 を有するシステム。」 イ 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、次のことがいえる。 甲1発明における「制御部にテレビ及び赤外線センサがつながれたシステム」は、本件特許発明1の「処理装置」に相当する。 また、甲1発明におけるテレビの「off状態」は、テレビがついた状態よりも電力供給元からの電力供給量が少ないものと認められるから、前記「テレビがついた状態」、「テレビのoff状態」は、本件特許発明1における「第1の状態」、「第2の状態」に相当する。 以上から、甲1発明は、本件特許発明1における「第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置」に相当する装置であるといえる。 甲1発明における「人の手」、「人が両手を上げる動き」は、本件特許発明1における「移動体」、「移動体の移動」に相当する。 よって、甲1発明における「タテ5*ヨコ5合計10個の素子からなり、テレビを操作する可能性がある人の手の温度を検出する、赤外線センサ」は、本件特許発明1における「熱を検出する複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体の熱を検出する、一の熱検出手段」に相当する。 甲1発明における「30℃以上の部分を検出する赤外線センサによって、人が両手を上げる動きを検知すると、テレビがついた状態からテレビのoff状態にする制御部」は、本件特許発明1における「移動体の移動に伴い生ずる、前記素子のうち予め定められた温度以上の熱を検出した素子の示す二次元の領域の形状の変化に基づいて、前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」に相当する。 ウ 小括 したがって、本件特許発明1は甲1発明と一致するものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 3 理由3(特許法第29条第2項)について (1)本件特許発明1について 上記2(1)において、仮に、甲1発明における「制御部にテレビ及び赤外線センサがつながれたシステム」が、本件特許発明1の「処理装置」に相当するとはいえないとしても、上記甲1発明におけるシステムを、制御部及び赤外線センサを備えたテレビという処理装置としての構成とすることは、当業者にとって格別困難なものとはいえない。 したがって、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件特許発明2について ア 甲第2号証について 上記甲第2号証には、以下の記載がある。(下線は当審において付した。) 「【0007】図1は本発明の情報処理装置の概略機能構成を示し、操作媒体あるいはユーザーが接近あるいは接触したか否かの状況に応じて動作する例である。100はペンや指等の操作媒体、101は例えば音声等ユーザーに付随する媒体であり、以降特に断わらない限りこれらを総称して“操作媒体等”と言う。102は操作媒体等100、101が接近あるいは接触したか否かを検出するためのセンサーであり、例えばタブレット、イメージセンサー、マイクロフォンあるいは温度センサー等がある。103は装置が使用可か待機中かをユーザーに知らせるための状態表示部で、センサー102と表示部103は筺体部104の一部になっている。105は操作媒体等100、101の接近または接触状況に応じて、装置内の消費電力に係わる被制御対象106を制御する省電力制御部である。ここで、被制御対象106には、後述のように、センサー102や状態表示部103の全体あるいは一部が含まれている。操作媒体等100、101がセンサー102に接近あるいは接触すれば、信号107を介して省電力制御部105を動作させ、信号108を介して被制御対象106を非節電状態にするとともに、信号110を介して表示部103に装置が使用可であることを表示する。また、省電力制御部105は図のようにタイマー109を含み、操作媒体等100、101がセンサー102から離反してからその継続時間を計数し始め、離反状態が所定の時間以上継続すれば、被制御対象106全体または一部を節電状態に設定するとともに、装置が待機中であることを表示部103に表示する。ここに、状態表示部103および信号110は、本発明においては必須要件ではないが、これらを付加することにより、以下の実施例で説明する高い操作性を実現できる。」 「【0015】ところで、本実施例における省電力制御のための被制御対象106としては、大別して電源電圧およびクロックパルスの2種類ある。 【0016】まず、電源電圧を制御する方法としては、以下のような例がある。 【0017】(1)装置に内蔵される全てのあるいは一部の電子回路の電源電圧を高電圧から低電圧に設定する(高電圧、低電圧の組合わせとしては、例えば5V、3Vあるいは3V、2V等)。」 「【0041】図10はテレビカメラ等によるイメージ情報を利用して、操作媒体等が接近したか否かを検出できる装置の概念図である。これは、テレビカメラ1001のイメージセンサーから得られる操作媒体等のイメージ情報が大きく変化することを利用して、操作媒体等1000の接近あるいは離反を検出するものである。ここに1002は表示部である。また、テレビカメラ1001のレンズを例えば魚眼レンズのような広角レンズを用いることにより、装置周辺の広い視野が検出可能になり、操作媒体等1000の接近をより確実に映像として撮えることができる。しかも広角レンズの場合、被写体深度は浅いため遠くの情景映像の濃淡変化は小さくなり、無視することができる。 【0042】図11は、テレビカメラ1001によるイメージ信号を2値化したイメージ中の黒画素計数値B(t)と装置状態の時間的関係を表わす。図10において、最初装置周辺に何もない状態から操作媒体等1000が接近して来て装置を操作した後、やがて離反して行くまでの距離と、それに伴う2値化イメージ中の黒画素計数値B(t)の時間的変化を表わす。図のように装置周辺に何もない場合、遠くの方の情景だけ変化するが、ピントが合っていないために、B(t)の値は殆ど変らない。この場合装置は節電状態の待機中になっている。しかし、操作媒体等等1000が接近してくるとピントが合い始め、そのイメージも大きくなるためイメージ情報が大きく変化し、B(t)の値も大きくなる。ある距離以内になると閾値θより大きくなり、装置は非節電状態に入り使用可であることを表示する。ユーザーが操作媒体等1000を使って操作している間は、手や指の動きに応じてB(t)の値は変化しθよりも小さくなることもあるが、その継続時間は短く非節電状態を継続する。やがて、ユーザーが装置から離反すると、B(t)の値は小さくなりθよりも小さくなった状態で落ち着く。この状態が所定時間Tよりも長くなると、装置は再び節電状態の待機中になる。」 「【図1】 」 「【図10】 」 「【図11】 」 ここで、上記段落0042によれば、黒画素はイメージ信号を2値化したものであるから、検出値が所定値以上の画素部分であると解される。 また、上記段落0042におけるテレビカメラは、複数のイメージセンサーが二次元に配置されたものであると解され、さらに、上記段落0007によれば、操作媒体は情報処理装置を操作する可能性がある移動体であると解される。 以上から、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「非節電状態と、前記非節電状態よりも電力供給元からの電力供給量が少ない節電状態とを、有する情報処理装置であって、 イメージを検出する複数のイメージセンサーが二次元に配置された、情報処理装置を操作する可能性がある操作媒体のイメージを検出するテレビカメラと、 前記イメージセンサーのうち所定値以上の値を黒画素として検出したイメージセンサーの個数に基づいて、前記節電状態から非節電状態にする省電力制御部と、 を有する情報処理装置。」 イ 対比 本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、次のことがいえる。 甲2発明における「非節電状態」、「節電状態」及び「情報処理装置」は、本件特許発明2における「第1の状態」、「第2の状態」及び「処理装置」に相当するから、甲2発明は、「第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置」に相当する装置であるといえる。 甲2発明における「イメージセンサー」、「テレビカメラ」及び「操作媒体」は、本件特許発明2における「素子」、「検出手段」及び「移動体」に相当するから、甲2発明は、「複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体を検出する一の検出手段」に相当する手段を有している。 甲2発明における「検出したイメージセンサーの個数に基づいて、前記節電状態から非節電状態にする省電力制御部」は、本件特許発明2における「検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段」に相当する。 以上のことから、本件特許発明2と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「第1の状態と、前記第1の状態よりも電力供給元からの電力供給量の少ない第2の状態とを、有する処理装置であって、 複数の素子が二次元に配置された、処理装置を操作する可能性がある移動体を検出する、一の検出手段と、 検出した素子の個数に基づいて、前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるか否かを判定する判定手段と、 を有する処理装置。」 (相違点1) 素子及び検出手段の検出対象が、本件特許発明2では、熱であるのに対し、甲2発明では、イメージである点。 (相違点2) 個数の対象となる素子の検出内容が、本件特許発明2では、予め定められた温度以上の熱を検出したものであるのに対し、甲2発明では、所定値以上の値を黒画素として検出したものである点。 ウ 判断 以下、相違点について検討する。 (相違点1について) 移動体の検知手段として、イメージセンサーと熱を検出する素子とが相互に置換可能なものであることは、甲第3号証の段落0027、0040、及び、甲第4号証の段落0077、0078、0103、0104、0106にも記載されているように、周知の事項であり、上記甲2発明においても、イメージセンサーに替えて熱を検出する素子を用いることは、当業者であれば容易に想到しうるものである。 (相違点2について) 甲2発明は所定値以上の値を検出するものあるから、上記相違点1における熱を検出する素子を用いる際には、予め定められた温度以上の熱を検出する構成とすることは、当業者であれば容易に想到する事項であるといえる。 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件特許発明2の奏する作用効果は、甲2発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ 小括 したがって、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の記載に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 さらに、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の記載に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701135

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決28件(富士ゼロックス株式会社、石井 良和)
  • 2022-700727異議申立 / 2023-06-13 / 訂正認容受動中継装置、マイクロ波ネットワーク、及び中継装置を設計する方法
    同じ当事者: 石井 良和
  • 2021-701219異議申立 / 2022-10-13 / 訂正認容電波吸収体
    同じ当事者: 石井 良和
  • 2021-701068異議申立 / 2022-09-27 / 訂正認容発塵抑制用組成物および水硬性粉状組成物
    同じ当事者: 石井 良和
  • 2021-701220異議申立 / 2022-07-08 / 維持電波吸収体
    同じ当事者: 石井 良和
  • 2020-700222異議申立 / 2021-03-05 / 訂正認容画像読取装置及び画像形成装置
    同じ当事者: 富士ゼロックス株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,381件(113・H04N、121・H04N、537・H04N ほか)
  • 2021-700020異議申立 / 2022-06-30 / 訂正認容情報処理装置、カメラ制御方法、プログラム、カメラ装置、および画像処理システム
    共通の審決分類: 113・H04N、121・H04N、537・H04N、841・H04N ほか1件
  • 2022-700882異議申立 / 2023-10-12 / 訂正認容画像検査システム、画像検査設定方法、および画像検査設定プログラム
    共通の審決分類: 113・H04N、121・H04N、537・H04N、841・H04N
  • 2019-700050異議申立 / 2020-08-18 / 訂正認容半導体装置
    共通の審決分類: 113・H04N、121・H04N、841・H04N、855・H04N
  • 2012-800149無効審判 / 2018-02-01 / 請求成立(無効)同時圧縮方式デジタルビデオ制作システム
    共通の審決分類: 113・H04N、121・H04N、537・H04N、841・H04N
  • 2024-700733異議申立 / 2025-01-17 / 請求成立(取消)情報処理装置及び情報処理装置、並びに情報処理システム
    共通の審決分類: 113・H04N、121・H04N、537・H04N

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