特許異議申立
2017-701053
導電性基板用金属粒子分散体、及び導電性基板の製造方法
- 審判番号
- 2017-701053
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-221713
- 登録番号
- 特許第6123214号(P6123214)
- 請求日
- 2017年11月10日
- 審決日
- 2018年06月11日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【異議申立人】秋山 満
- 審判長/審判官
- 審判長 中村 達之
- 審判官 小関 峰夫
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(H05K) / P1651.121-YAA(H05K) / P1651.537-YAA(H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6123214号発明「導電性基板用金属粒子分散体、及び導電性基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6123214号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、2、4〕、〔5、6、8、9〕について訂正することを認める。
特許第6123214号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6123214号の請求項1~9に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成24年10月3日に特許出願され、平成29年4月14日にその特許権の設定登録がされ、同年5月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1~9に係る特許に対して、平成29年11月10日に特許異議申立人秋山満(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年1月18日付けで取消理由が通知され(以下、「取消理由通知」という。)、その指定期間内である同年3月22日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して同年5月23日に異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年3月22日の訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である」とあるのを、
「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、及び請求項4も同様に訂正する。)。
(下線は、特許権者が付与。以下同様。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物であり、且つ、前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上である」とあるのを、
「前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である」とあるのを、
「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6、8及び9も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物であり、且つ、前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上である」とあるのを、
「前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項8及び9も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
訂正前の明細書の段落【0012】に「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である」とあるのを、
「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である」に訂正する。
(6)訂正事項6
訂正前の明細書の段落【0016】に「前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物であり、且つ、前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上である」とあるのを、
「前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である」に訂正する。
(7)訂正事項7
訂正前の明細書の段落【0171】に「実施例12~21」とあるのを、
「実施例12~20、参考例21」に訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の明細書の段落【0181】の【表2】に、「実施例21」とあるのを、
「参考例21」に訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の明細書の段落【0182】に「実施例2~10及び12~21」とあるのを、
「実施例2~10及び12~20」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に「ハロゲン化炭化水素」と記載されているのを、概念的により下位の「ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチル」へと訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
また、「ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチル」の構成は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0016】の「前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。」、及び段落【0120】の「中でも、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される少なくとも1種である」との記載に開示されているから、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1においてハロゲン化炭化水素としてハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルを特定したことに伴い、訂正後の請求項1との関係で、訂正後の請求項2に係る発明において不合理を生じさせないため、「且つ、前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上である」という記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、択一的記載の要素の削除を行うものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3に「ハロゲン化炭化水素」と記載されているのを、概念的により下位の「ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチル」へと訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。
また、「ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチル」の構成は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0016】の「前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。」、及び段落【0120】の「中でも、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される少なくとも1種である」との記載に開示されているから、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正である。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項3においてハロゲン化炭化水素としてハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルを特定したことに伴い、訂正後の請求項5との関係で、訂正後の請求項6に係る発明において不合理を生じさせないため、「且つ、前記ハロゲン化炭化水素が、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上である」という記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、択一的記載の要素の削除を行うものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものでもない。
(5)訂正事項5~9について
訂正事項5~9は、訂正事項1~4に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正で、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、これらの訂正事項は、一群の請求項に対して請求されたものである。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2、4〕、〔5、6、8、9〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上述のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である、導電性基板用金属粒子分散体。
【化1】
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R1は、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I-a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
【化2】
(一般式(I-a)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、置換基を有していてもよく、R2及びR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化3】
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、-[CH(R12)-CH(R13)-O]x-R14又は-[(CH2)y-O]z-R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、又は-CH2COOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【請求項2】
前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である、請求項1に記載の導電性基板用金属粒子分散体。
【化4】
(式(VI)及び式(VII)中、Ra及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Ra’’で示される1価の基であり、Ra’’は、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、-C(Rf)(Rg)-C(Rh)(Ri)-OH、又は、-CH2-C(Rj)(Rk)-CH2-OHで示される1価の基である。
Rbは、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、又は-[(CH2)t-O]u-Reで示される1価の基である。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、-CO-CH=CH2、-CO-C(CH3)=CH2又は-CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
sは1~18の整数、tは1~5の整数、uは1~18の整数を示す。)
【請求項3】
金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と、下記一般式(III)で表される構成単位とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したグラフト共重合体であって、
前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である、導電性基板用金属粒子分散体。
【化5】
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R1は、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I-a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
【化6】
(一般式(I-a)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、置換基を有していてもよく、R2及びR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化7】
(一般式(III)中、R16は、水素原子又はメチル基、Lは、直接結合又は2価の連結基、Polymerは、下記一般式(IV)又は一般式(V)で表される構成単位を少なくとも1種有するポリマー鎖を表す。)
【化8】
(一般式(IV)及び一般式(V)中、R17は水素原子又はメチル基であり、R18は炭化水素基、シアノ基、-[CH(R19)-CH(R20)-O]x-R21、-[(CH2)y-O]z-R21、-[CO-(CH2)y-O]z-R21、-CO-O-R22又は-O-CO-R23で示される1価の基である。R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
R21は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO又は-CH2COOR24で示される1価の基であり、R22は、炭化水素基、シアノ基、-[CH(R19)-CH(R20)-O]x-R21、-[(CH2)y-O]z-R21、-[CO-(CH2)y-O]z-R21で示される1価の基である。R23は炭素数1~18のアルキル基であり、R24は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
mは1~5の整数、n及びn’は5~200の整数を示す。xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【化9】
(式(VI)及び式(VII)中、Ra及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Ra’’で示される1価の基であり、Ra’’は、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、-C(Rf)(Rg)-C(Rh)(Ri)-OH、又は、-CH2-C(Rj)(Rk)-CH2-OHで示される1価の基である。
Rbは、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、又は-[(CH2)t-O]u-Reで示される1価の基である。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、又は-CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、又は、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される1価の炭化水素基、並びに、アルキレン基、及びアリーレン基より選択される2価の炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、又は、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される1価の炭化水素基、並びに、アルキレン基、及びアリーレン基より選択される2価の炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基が、アルキル基の場合、置換基としてハロゲン原子、ニトロ基を有していてもよく、上記炭化水素基が、アリール基又はアラルキル基の場合、芳香環の置換基として、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
sは1~18の整数、tは1~5の整数、uは1~18の整数を示す。)
【請求項4】
前記金属粒子が、金、銀、銅、及びこれらの酸化物から選ばれる1種以上を含む金属粒子である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性基板用金属粒子分散体。
【請求項5】
金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したブロック共重合体である、導電性基板用金属粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成処理する工程とを有する、導電性基板の製造方法。
【化10】
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R1は、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I-a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
【化11】
(一般式(I-a)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、置換基を有していてもよく、R2及びR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化12】
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、-[CH(R12)-CH(R13)-O]x-R14又は-[(CH2)y-O]z-R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、又は-CH2COOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【請求項6】
前記分散剤において、前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である、請求項5に記載の導電性基板の製造方法。
【化13】
(式(VI)及び式(VII)中、Ra及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Ra’’で示される1価の基であり、Ra’’は、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、-C(Rf)(Rg)-C(Rh)(Ri)-OH、又は、-CH2-C(Rj)(Rk)-CH2-OHで示される1価の基である。
Rbは、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、又は-[(CH2)t-O]u-Reで示される1価の基である。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、-CO-CH=CH2、-CO-C(CH3)=CH2又は-CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
sは1~18の整数、tは1~5の整数、uは1~18の整数を示す。)
【請求項7】
金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と、下記一般式(III)で表される構成単位とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したグラフト共重合体であって、
前記酸性有機リン化合物が下記一般式(VI)で表される化合物であり、前記スルホン酸化合物が下記一般式(VII)で表される化合物である、導電性基板用金属粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成処理する工程とを有する、導電性基板の製造方法。
【化14】
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R1は、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I-a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
【化15】
(一般式(I-a)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、置換基を有していてもよく、R2及びR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化16】
(一般式(III)中、R16は、水素原子又はメチル基、Lは、直接結合又は2価の連結基、Polymerは、下記一般式(IV)又は一般式(V)で表される構成単位を少なくとも1種有するポリマー鎖を表す。)
【化17】
(一般式(IV)及び一般式(V)中、R17は水素原子又はメチル基であり、R18は炭化水素基、シアノ基、-[CH(R19)-CH(R20)-O]x-R21、-[(CH2)y-O]z-R21、-[CO-(CH2)y-O]z-R21、-CO-O-R22又は-O-CO-R23で示される1価の基である。R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
R21は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO又は-CH2COOR24で示される1価の基であり、R22は、炭化水素基、シアノ基、-[CH(R19)-CH(R20)-O]x-R21、-[(CH2)y-O]z-R21、-[CO-(CH2)y-O]z-R21で示される1価の基である。R23は炭素数1~18のアルキル基であり、R24は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示す。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
mは1~5の整数、n及びn’は5~200の整数を示す。xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【化18】
(式(VI)及び式(VII)中、Ra及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Ra’’で示される1価の基であり、Ra’’は、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、-C(Rf)(Rg)-C(Rh)(Ri)-OH、又は、-CH2-C(Rj)(Rk)-CH2-OHで示される1価の基である。
Rbは、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、-[(CH2)t-O]u-Re、又は-O-Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-[CH(Rc)-CH(Rd)-O]s-Re、又は-[(CH2)t-O]u-Reで示される1価の基である。
Rc及びRdは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Reは、水素原子、炭素数1~18のアルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、又は-CH2COORe’で示される1価の基であり、Re’は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Rf、Rg、Rh、Ri、Rj及びRkは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、又は、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される1価の炭化水素基、並びに、アルキレン基、及びアリーレン基より選択される2価の炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、Rf及びRhは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環状構造を形成した場合、置換基Rlを有していてもよく、Rlは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される炭化水素基、又は、アルキル基、アラルキル基、及びアリール基より選択される1価の炭化水素基、並びに、アルキレン基、及びアリーレン基より選択される2価の炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。
上記炭化水素基が、アルキル基の場合、置換基としてハロゲン原子、ニトロ基を有していてもよく、上記炭化水素基が、アリール基又はアラルキル基の場合、芳香環の置換基として、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子を有していてもよい。
sは1~18の整数、tは1~5の整数、uは1~18の整数を示す。)
【請求項8】
前記焼成処理する工程が、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマにより焼成処理する工程である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の導電性基板の製造方法。
【請求項9】
前記焼成処理する工程が、パルス光の照射により焼成処理する工程である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の導電性基板の製造方法。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4~6、8及び9に係る特許に対して平成30年1月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.本件特許の請求項1、2及び4~6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2.本件特許の請求項1、2、4~6、8及び9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第1号証:再公表特許第2005/087413号
甲第2号証:特開2008-248255号公報
甲第3号証:特開2004-287366号公報
甲第4号証:特開2006-9085号公報
請求項1、2及び4~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるか、又は請求項1、2、4~6、8及び9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1、2及び4~6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるか、又は請求項1、2、4~6、8及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証(特に、【請求項1】、段落【0033】、【0036】、【0052】、【0054】、【0082】、【0151】を参照。また、段落【0033】に高分子顔料分散剤として「ディスパービッグ2000」が挙げられていることを参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「合金ナノ粒子含有溶液の製造方法及び合金ナノ粒子含有溶液」に関して、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「合金ナノ粒子と、高分子顔料分散剤と、溶媒とを含有し、
前記高分子顔料分散剤が、ディスパービッグ2000である、スクリーン印刷により基材に塗布でき、高耐久性金属調薄膜形成材料、高耐久性導電材料、導電材料等に適用される合金ナノ粒子含有溶液。」
(2)甲第2号証
甲第2号証には、「着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び液晶表示装置」に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
色材、溶剤、分散剤及びバインダ樹脂を含有する着色樹脂組成物であって、バインダ樹脂が(A)エポキシ含有(メタ)アクリレート5~90モル%、(B)(A)成分と共重合し得る他のラジカル重合性化合物10~95モル%を共重合させ、得られた共重合物に含まれるエポキシ基の10~100モル%に(C)不飽和一塩基酸を付加させ、前記(C)成分を付加したときに生成される水酸基の10~100モル%に(D)多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂であって、且つ、分散剤が、(G)側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなる、A-Bブロック共重合体及び/又はB-A-Bブロック共重合体を含有することを特徴とする着色樹脂組成物。
【請求項2】
(G)側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックとからなる、A-Bブロック共重合体及び/又はB-A-Bブロック共重合体のAブロックが、下記一般式(1)で示される部分構造を含有することを特徴とする、請求項1に記載の着色樹脂組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、R1a、R2a及びR3aは各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表す。或いは、R1a、R2a及びR3aのうち2つ以上が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。R4aは、水素原子又はメチル基を表す。Xは、2価の連結基を表し、Y- は、対アニオンを表す。)」
イ 段落【0197】の【表2】、及び段落【0198】の【表3】には、「ビックケミー社製のDisperbyk-2000(変性アクリル系ブロック共重合体)」との記載がある。
(3)甲第3号証
甲第3号証には、「着色レジスト用顔料分散液、感光性着色組成物、及び、カラーフィルター」に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
少なくとも、顔料、少なくとも下記式(A)で表される構成単位と下記式(B)で表される構成単位とが連結した分子構造を含み、且つポリエーテル鎖及び酸性官能基を含まない共重合体からなる顔料分散剤、少なくとも酸性官能基を備えた構成単位と光硬化性官能基を備えた構成単位とSP値が10以上で酸性官能基を含まない構成単位とが連結した分子構造を有する共重合体、及び、有機溶剤を含有する、着色レジスト用顔料分散液。
【化1】
(式中、Ra、Rb及びRcは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、Ra、Rb及びRcのうち2つ以上が互いに結合して環状構造を形成する。Rdは水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表し、Y-は対アニオンを表す。)
【化2】
(式中、Reは水素原子又はメチル基を表す。Rfは置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)」
イ 「【0272】
(試験例1:市販品顔料分散剤)
熱分解GCMS、FT-IR、イオン性ハロゲン塩の測定、及び酸価、アミン価測定を用いた分析試験により、Disperbyk-2000(ビックケミージャパン(株)製)が、本発明に係る上記式(A)で表される構成単位と上記式(B)で表される構成単位とが連結した分子構造を含み、且つ酸性官能基及びポリエーテル鎖を含まない共重合体からなる顔料分散剤であることを確認した。なお、熱分解GCMS及びFT-IRの測定は、下記測定条件により行った。」
ウ 「【0273】
<熱分解GCMS>
・・・(中略)・・・
(結果)
図5にトータルイオンクロマトグラムを示し、拡大チャートと各ピークのマススペクトルを以下の図に示す。図6に示されるように1.967分にメチルメタクリレート由来のピーク(1)が検出された。図7に示されるように7.974分にブチルメタクリレート由来のピーク(2)が検出された。図8に示されるように8.702分にメタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライドの分解ピークであるベンジルクロライド由来のピーク(3)が検出された。 ・・・(後略)」
エ 「【0274】
<FT-IR>
・・・(中略)・・・
(結果)
図12に示されるように、2960cm-1及び1470cm-1に本発明の式(A)の一部に該当するベンジルジメチルアンモニウムクロライド由来のピークが検出され、1740cm-1に本発明の式(B)に該当する(メタ)アクリレート由来のピークが検出された。」
オ 「【0275】
<イオン性ハロゲン塩の測定>
試料単独または試料の有機溶剤溶液を純水と激しく攪拌し、水層に硝酸銀水溶液を加え、不溶物が発生することでイオン性ハロゲンの存在を検出した。その結果、本発明の式(A)に該当するメタクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド由来の塩素イオンが検出された。」
カ 「【0278】
以上の分析結果より、、Disperbyk-2000(ビックケミージャパン(株)製)が本発明に係る上記式(A)で表される構成単位と上記式(B)で表される構成単位とが連結した分子構造を含み、且つポリエーテル鎖及び酸性官能基を含まない共重合体からなる顔料分散剤であることが確認できた。」
(4)甲第4号証
甲第4号証には、「金属微粒子分散体の製造方法、該方法で製造された金属微粒子分散体を用いた導電性インキ、および非接触型メディア」に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項7】
請求項5または6記載の金属微粒子分散体および金属粉を含む導電性インキ。」
イ 「【請求項10】
基材上に、請求項7~9いずれか1項に記載の導電性インキを用いて形成された導電回路と、該導体回路に導通された状態で実装されたICチップとを具備する非接触型メディア。」
4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「合金ナノ粒子」は、本件発明1の「金属粒子」に相当する。
以下同様に、「高分子顔料分散剤」は、「分散剤」に、
「溶媒」は、「溶剤」に、
「合金ナノ粒子含有溶液」は、「金属粒子分散体」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の合金ナノ粒子含有溶液は、「スクリーン印刷により基材に塗布でき、高耐久性金属調薄膜形成材料、高耐久性導電材料、導電材料等に適用される」から、「導電性基板」に用いるものであるということができる。
甲第2号証及び甲第3号証における記載から、ディスパービッグ2000は、甲第3号証に記載の式(A)及び式(B)(「3(3)ア」を参照。)で表される構成単位をブロック部として有する変性アクリルブロック共重合体であることが理解される。
更に、甲第3号証(「3(3)ウ~オ」を参照。)の記載から、ディスパービッグ2000の式(A)における第4級アンモニウム塩の部位は、ジメチルアミノ基をハロゲン化炭化水素であるベンジルクロライドと反応させて塩を形成したものであることが理解される。
ここで、甲第3号証に記載の式(A)及び式(B)は、それぞれ本件発明1の一般式(I)及び一般式(II)と同じであるから、ディスパービッグ2000は、
「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ベンジルクロライドとが塩を形成したブロック共重合体」であり、
「(一般式I)(省略)
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R1は、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I-a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
(一般式I-a)(省略)
(一般式(I-a)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、置換基を有していてもよく、R2及びR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(一般式II)(省略)
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、-[CH(R12)-CH(R13)-O]x-R14又は-[(CH2)y-O]z-R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、又は-CH2COOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)」
との構成を備えているといえる。
ここで、上記「ベンジルクロライド」と、本件発明1の「ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチル」とは、「ハロゲン化炭化水素」という限りにおいて共通する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。
「金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化炭化水素とが塩を形成したブロック共重合体である、導電性基板用金属粒子分散体。
(一般式I)(省略)
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R1は、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I-a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
一般式(I-a)(省略)
(一般式(I-a)中、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、置換基を有していてもよく、R2及びR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(II)(省略)
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、-[CH(R12)-CH(R13)-O]x-R14又は-[(CH2)y-O]z-R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、-CHO、-CH2CHO、又は-CH2COOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)」
一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
分散剤における、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と塩を形成するものに関して、
本件発明1においては、「酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上」であるのに対して、
甲1発明においては、ベンジルクロライドである点。
上記相違点について検討する。
(ア)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
上記相違点は、分散剤において、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と塩を形成するものに関して異なるから、実質的な相違点である。
そして、上記相違点に係る本件発明1の構成については、甲第1号証に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)ということはできない。
(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
甲1発明においては、市販されているディスパービッグ2000を用いている。
当該ディスパービッグ2000の、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と塩を形成するものを、ベンジルクロライドに代えて、「酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化アリル、及びハロゲン化メチルよりなる群から選択される1種以上」とする点については、甲第1~4号証のいずれにも記載も示唆もされていないし、周知技術であると認める証拠があるものではない。
そうすると、上記相違点に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
なお、異議申立人は、平成30年5月23日の意見書において、甲第5及び6号証を挙げ、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と塩を形成するものとして「有機リン酸化合物」を用いることに進歩性は認められない旨を主張している。
しかし、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と塩を形成するものとして「酸性有機リン化合物」(有機リン酸化合物)を用いる点は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されているから、異議申立人の上記主張は、訂正の請求の内容に付随して生じたものではなく、実質的に新たな理由及び証拠を提示するものである。
したがって、上記主張は、新たな取消理由としては採用しない(特許庁「審判便覧」の「67-05.4 P」の「1.(2)」を参照。)。
(ウ)小括
以上のことから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)ということはできないし、また、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
イ 本件発明1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2及び4について
本件発明1の記載を直接又は間接的に引用する本件発明2及び4は、本件発明1をさらに限定したものであるので、同様に、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)ということはできないし、また、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
ウ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明1に係る導電性基板用金属粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成処理する工程とを有する、導電性基板の製造方法に関するものであって、上記相違点に係る本件発明1の構成と同じ構成を備えるものである、
そうすると、本件発明5は、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)ということはできないし、また、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
エ 本件発明5の記載を直接又は間接的に引用する本件発明6、8及び9について
本件発明5の記載を直接又は間接的に引用する本件発明6、8及び9は、本件発明5をさらに限定したものであるので、同様に、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)ということはできないし、また、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第29条第2項(進歩性)について
(ア)本件発明3について
本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。
[相違点]
分散剤における、一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したものに関して、
本件発明3においては、「グラフト共重合体」であるのに対して、
甲1発明においては、ブロック共重合体である点。
上記相違点について検討する。
甲1発明においては、市販されているディスパービッグ2000を用いている。
当該ディスパービッグ2000の、一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上とが塩を形成したものを、ブロック共重合体に代えて、「グラフト共重合体」とする点については、甲第1~4号証のいずれにも記載も示唆もされていないし、周知技術であると認める証拠があるものではない。
そうすると、上記相違点に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(イ)本件発明3の記載を引用する本件発明4について
本件発明3の記載を引用する本件発明4は、本件発明3をさらに限定したものであるので、同様に、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(ウ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明3に係る導電性基板用金属粒子分散体を含む塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成する工程と、当該塗膜を焼成処理する工程とを有する、導電性基板の製造方法に関するものであって、上記相違点に係る本件発明3の構成と同じ構成を備えるものである、
そうすると、本件発明7は、本件発明3と同様に、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(エ)本件発明7の記載を引用する本件発明8及び9について
本件発明7の記載を引用する本件発明8及び9は、本件発明7をさらに限定したものであるので、同様に、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
イ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(ア)異議申立人は、本件発明1~9において、ブロック共重合体の変性量が何ら特定されていないところ、本件特許明細書等の実施例では限られた範囲の変性量しか実施されておらず、それ以外の変性量の場合の効果に関して何も実証されていないから、本件発明1~9は明細書の開示範囲を逸脱するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する(異議申立書32ページ3行~8行)。
しかし、本件特許明細書等の段落【0121】の「本発明で用いられる重合体において、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上の含有量は、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位に対して、0.05~2.0モル当量程度、好ましくは0.1~1.0モル当量、より好ましくは0.2~0.8モル当量とすることが、金属粒子の分散性、分散安定性を向上し、沈降を抑制し、有機成分の残存の少ない金属膜を得ることができる点から好ましい。尚、上記酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素を2種以上併用する場合、これらを合計した含有量が上記範囲内にあればよい。」との記載、及び技術常識を踏まえれば、変性量を変化させても、効果の程度が変わるというにすぎず、また、発明を実施するにあたって、変性量は当業者が適宜設定する事項であるといえる。
そうすると、本件発明1~9において、ブロック共重合体の変性量が何ら特定されていないとしても、それによって、本件発明1~9の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。
(イ)異議申立人は、本件発明1及び5において、ブロック共重合体の塩を形成する化合物として、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、ハロゲン化炭化水素という広い範囲で化合物を特定し、本件発明3及び7においても同様に広い範囲で化合物を特定しているところ、本件特許明細書等の実施例では特定の化合物しか使用されておらず、それ以外の種類の化合物を使用した場合の効果に関しては何も実証されていないから、本件発明1~9は明細書の開示範囲を逸脱するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張する(異議申立書32ページ9行~17行)。
しかし、本件特許明細書等の段落【0095】の「本発明の分散剤は、上記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素よりなる群から選択される1種以上(以下、変性剤と称することがある。)とが塩を形成した重合体である。本発明においては、上記特定の変性剤を用いることにより、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位を塩形成することにより、前記金属粒子との親和性が向上し、金属粒子の分散性及び分散安定性に優れたものとすることができ、沈降を抑制できる。」、及び段落【0096】の「酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素は、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位と塩形成し得るものの中から、適宜選択して用いることができる。」との記載、並びに技術常識を踏まえれば、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と塩を形成すればよいのであり、また、本件特許明細書等の段落【0097】~【0120】には、酸性有機リン化合物、スルホン酸化合物、及びハロゲン化炭化水素の具体例について多数列挙されている。
そうすると、本件発明1~9において、実施例で用いられた具体的な化合物が特定されていないとしても、それによって、本件発明1~9の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701053