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特許異議申立

2017-700968

インホイールモータ用動力ケーブルおよびその配線構造・選択方法

審判番号
2017-700968
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-204298
登録番号
特許第6113348号(P6113348)
請求日
2017年10月11日
審決日
2018年03月29日
公報発行日
2018年06月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】NTN株式会社
  • 【権利者代理人】野田 雅士
  • 【権利者代理人】杉本 修司
  • 【異議申立人】白澤 哲明
審判長/審判官
  • 審判長 千葉 輝久
  • 審判官 和田 志郎
  • 審判官 山澤 宏
分類
P1651.121-YAA(H01B) / P1651.536-YAA(H01B) / P1651.537-YAA(H01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第36条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6113348号発明「インホイールモータ用動力ケーブルおよびその配線構造・選択方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6113348号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、7について訂正することを認める。 特許第6113348号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6113348号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は、平成28年10月18日に特許出願され、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年10月11日に特許異議申立人白澤哲明より特許異議の申立てがされ、平成29年12月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月13日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人白澤哲明により平成30年3月26日付けで意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正することを請求する。(訂正事項1)なお、下線は訂正部分を示す。以下、同様。 「【請求項1】車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブル。」に訂正する。 なお、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も、請求項1の訂正に伴い連動して訂正されたことになる。 特許権者は、特許請求の範囲の請求項5を以下の事項により特定されるとおりの請求項5として訂正することを請求する。(訂正事項2) 「【請求項5】車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。」 なお、請求項5の記載を引用する請求項6も、請求項5の訂正に伴い連動して訂正されたことになる。 特許権者は、特許請求の範囲の請求項7を以下の事項により特定されるとおりの請求項7として訂正することを請求する。(訂正事項3) 「【請求項7】車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、次の各要件、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件、前記素線がスズメッキ軟銅線である要件、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件、および、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件、を全て充足する電気ケーブルを選択することを特徴とするインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法。」 特許権者は、明細書の段落【0007】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、導体部と、」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、」に訂正することを請求する。(訂正事項4) 特許権者は、明細書の段落【0012】に記載された「前記車体部から前記インホイールモータ駆動装置へ」を、「前記車体上のモータ電力供給源からインホイールモータ駆動装置へ」に訂正することを請求する。(訂正事項5) 特許権者は、明細書の段落【0014】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、インホイールモータ」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブル選択方法は、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ」に訂正することを請求する。(訂正事項6) 特許権者は、明細書の段落【0016】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、導体部と、」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルは、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、」に訂正することを請求する。(訂正事項7) 特許権者は、明細書の段落【0017】に記載された「前記車体部から」を、「前記車体上のモータ電力供給源から」に訂正することを請求する。(訂正事項8) 特許権者は、明細書の段落【0018】に記載された「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、インホイールモータ」を、「この発明のインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法は、車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ」に訂正することを請求する。(訂正事項9) (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1~3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項4、7は、上記訂正事項1に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項4、7は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 訂正事項5、8は、上記訂正事項2に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項5、8は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 訂正事項6、9は、上記訂正事項3に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、訂正事項6、9は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、訂正の対象である請求項1を直接または間接的に引用する関係にあり、請求項6が、訂正の対象である請求項5を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1~9は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1~6]、7について訂正を認める。 3.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1~7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 本件発明1「車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータ用動力ケーブルであって、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含み、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線であり、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブル。」 本件発明2「請求項1に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部の中心に、この動力ケーブルに作用する引っ張り力を負担する引張力負担部材を有するインホイールモータ用動力ケーブル。」 本件発明3「請求項1または請求項2に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記導体部を成す前記複合撚線は、前記集合撚線が撚り合わされた内側複合撚線部と、この内側集合撚線部の外周に前記集合撚線が撚り合わされて並ぶ外側複合撚線部とでなる二重複合撚線であるインホイールモータ用動力ケーブル。」 本件発明4「請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルにおいて、前記シースが軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーであるインホイールモータ用動力ケーブル。」 本件発明5「車輪内部に配置されてこの車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置と、このインホイールモータ駆動装置を車体に上下振動の吸収を可能に連結するサスペンション装置と、一端が前記インホイールモータ駆動装置に設けられる動力線接続部に接続され、他端が前記車体まで延び、前記車体上のモータ電力供給源から前記インホイールモータ駆動装置へ電力を供給する屈曲可能な動力ケーブルとを備え、この動力ケーブルが、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインホイールモータ用動力ケーブルであるインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。」 本件発明6「請求項5に記載のインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造であって、前記サスペンション装置が、前記インホイールモータ駆動装置を、上下方向に延びる転舵軸線を中心として転舵可能に車体に連結するインホイールモータ用動力ケーブルの配線構造。」 本件発明7「車体にサスペンション装置を介して連結されたインホイールモータ駆動装置に一端が接続され、他端が前記車体上のモータ電力供給源に接続されるインホイールモータの動力ケーブルとして使用する電気ケーブルを、既存の、または新たに設計される電気ケーブルの中から選択する方法であって、次の各要件、導体部と、この導体部の外周を覆う絶縁体と、この絶縁体の外周を覆う中空のシールド線と、このシールド線の外周を覆うシースとを含む要件、前記導体部は、素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなる要件、前記素線がスズメッキ軟銅線である要件、前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件、および、前記シールド線が銅箔糸編組ケーブルである要件、を全て充足する電気ケーブルを選択することを特徴とするインホイールモータ用動力ケーブルの選択方法。」 4.取消理由の概要 訂正前の請求項1~7に係る特許に対して平成29年12月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1乃至7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~第6号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1乃至7に係る特許は、取り消されるべきものである。 5.甲号証の記載 ア.甲第1号証 甲第1号証(特開2016-19306号公報)には、図とともに以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。以下、同様。) a. 「【背景技術】 【0002】 近年、自動車の電装化やロボットの普及などにともない、屈曲を繰り返し受ける場所に電気ケーブルを取り付けるケースが多くなっている。例えば、次世代の自動車において、インバータとインホイールモータといった2つの相対的に移動する電気機器を電気ケーブルで接続することが提案されている。この場合、電気ケーブルの一端部はインバータに接続され、電気ケーブルの他端部はインホイールモータに接続される。また、インバータは自動車の車体側に実装され、インホイールモータは自動車のバネ下に位置する車輪側に実装される。このため、インバータとインホイールモータとを接続する電気ケーブルは車体の外(以下、「車外」ともいう。)に露出した状態で取り付けられ、その露出した部分が、車輪の上下動(バウンド、リバウンドなど)によって繰り返し屈曲することになる。よって、屈曲を繰り返し受ける場所に取り付けられる、すなわち2つの相対的に移動する電気機器を接続する電気ケーブルにおける導体には、高い屈曲耐久性が求められる。」 b.「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上述したように、インバータとインホイールモータとを接続する電気ケーブルなどは、車外に露出して取り付けられる。このため、自動車の走行中に飛び石などが電気ケーブルにぶつかる可能性がある。実際に飛び石が電気ケーブルにぶつかると、そのときの衝撃によって電気ケーブルが急激に変形することがある。 【0006】 これに対して、電気ケーブルの両端部には、それぞれ固定金具のスリーブにかしめによって取り付けられており、さらに、これら固定金具はそれぞれインバータの筐体とインホイールモータの筐体とに取り付けられている。このため、自動車の走行中に飛び石などがぶつかって電気ケーブルが急激に変形すると、電気ケーブルに大きな引張力が加わる。電気ケーブルは、相対的に伸びにくい導体と、相対的に伸びやすいシースと、によって構成されている。このため、電気ケーブルに引張力が加わると、相対的に伸びにくい導体に対して、より大きな負荷(引張応力)がかかってしまう。これに起因して、屈曲を繰り返し受ける場所に取り付けられる電気ケーブルにおいては、屈曲耐久性が著しく低下してしまうという問題があった。 【0007】 本発明の主な目的は、相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能な電気ケーブルの取付構造を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一態様は、 導体と、該導体の外側に設けられたシースと、を有する電気ケーブルの両端部にそれぞれ固定具を固定して固定具付電気ケーブルとし、相対的に移動可能に配置された2つの電気機器のうち、一方の電気機器の筐体に前記固定具を用いて前記電気ケーブルを取り付け、他方の電気機器の筐体に前記固定具を用いて前記電気ケーブルを取り付けた、電気ケーブルの取付構造であって、 前記電気ケーブルは、前記シースに対して前記導体が前記電気ケーブル長さ方向に相対的に移動自在に構成され、 前記固定具は、前記シースに対する前記導体の相対移動を許容する状態で前記シースの端部を把持するスリーブを有し、 前記電気ケーブル長さ方向の少なくとも一方側では、前記シースの端部よりも前記導体の端部が前記電気機器の筐体内に突出して配置されるとともに、前記筐体内で前記導体が弛みを付けて曲げられている 電気ケーブルの取付構造である。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能である。」 c. 「【0011】 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。 <電気ケーブルの用途及び取付環境> 本発明の実施の形態に係る電気ケーブルは、例えば産業ロボットや自動車の分野において、電源ケーブル、信号ケーブル、あるいはそれらを複合した複合ケーブルとして用いられる。また、電気ケーブルは、相対的に移動可能に配置された2つの電気機器を接続する場合に用いられる。ここで記述する「相対的に移動可能に配置」とは、一方の電気機器(以下、「第1の電気機器」ともいう。)が固定側に実装され、他方の電気機器(以下、「第2の電気機器」ともいう。)が可動側に実装された状態、あるいは、2つの電気機器がいずれも可動側に実装された状態をいう。産業ロボットや自動車の分野でいえば、2つの電気機器のうち少なくともいずれか一方の電気機器が、ロボットや自動車の可動部分に実装された状態をいう。 【0012】 電気ケーブルの用途について具体的に記述すると、産業ロボットの分野では、例えば、ロボットの本体部(固定側)に第1の電気機器を実装するとともに、ロボットのアーム部(可動側)に第2の電気機器を実装し、それら2つの電気機器を電気ケーブルで接続する場合が考えられる。自動車の分野では、例えば、自動車の車体部分(固定側)に第1の電気機器を実装するとともに、自動車の車輪部分(可動側)に第2の電気機器を実装し、それら2つの電気機器を電気ケーブルで接続する場合が考えられる。 【0013】 本実施の形態に係る電気ケーブルの取付構造は、特に、自動車の分野において、飛び石や雪の塊などがぶつかる可能性のある車体の外に電気ケーブルを露出させて取り付ける場合などに適用して好適なものである。電気ケーブルを車体の外(以下、「車外」ともいう。)に露出させて取り付ける場合とは、例えば上述したように、自動車の車体部分に実装した第1の電気機器と、自動車の車輪部分に実装した第2の電気機器とを、電気ケーブルで接続する場合である。 【0014】 具体的に記述すると、図1に示すように、ハイブリッド自動車などに実装されるインバータ(モータ駆動機器)1とインホイールモータ2とを、電気ケーブル3で接続する場合である。この場合、インバータ1は、自動車の車体4側に実装され、インホイールモータ2は、自動車のバネ5の下に位置する車輪6側に実装される。 【0015】 また、電気ケーブル3の両端部にはそれぞれ固定具の一例として固定金具7が固定されている。電気ケーブル3の一端部は、固定金具7を用いてインバータ1の筐体に取り付けられ、電気ケーブル3の他端部は、固定金具7を用いてインホイールモータ2の筐体に取り付けられる。また、電気ケーブル3の一部は自動車の車外に露出して配置され、この露出したケーブル部分が車体側に支持金具8で支持される。」 d. 「【0018】 <電気ケーブルの構成> 図2は本発明の実施の形態に係る電気ケーブルの取付構造に適用される電気ケーブルの構成例を示す断面図である。 図示した電気ケーブル3は、適度な可撓性を有するものであって、大きくは、電線部11と、この電線部11の外側に設けられた外層部12と、を備えた構成となっている。 本明細書においては、電気ケーブルの長さ方向を「ケーブル長さ方向」、電気ケーブルの直径方向を「ケーブル径方向」、電気ケーブルの中心軸周りの円周方向を「ケーブル円周方向」という。また、ケーブル径方向に関しては、電気ケーブルの中心(中心軸)に近い側を「内側」、電気ケーブルの中心から遠い側を「外側」という。 【0019】 (電線部) 電線部11は、断面が円形の導体13と、この導体13の外周面を覆う絶縁層14と、を有している。導体13は、電気ケーブル3が信号ケーブルであれば信号線路を形成し、電気ケーブル3が電源ケーブルであれば電源線路を形成するものである。 【0020】 (導体) 導体13は、電線部11の芯線として、電線部11の中心に配置されている。導体13は、例えば、スズめっき軟銅からなる線導体(一例として、導体断面積(SQ)=3mm2)を用いて形成することができる。導体13は、1本の線導体、又は複数本の線導体を撚り合わせてなる撚線によって構成することができる。また、導体13は、軟銅線、銀めっき軟銅線、スズめっき銅合金線等の金属線を用いて形成することもできる。 【0021】 (絶縁層) 絶縁層14は、導体13の外周の全面を覆うように、導体13と同心円状に形成されている。これにより、電線部11は、絶縁電線を構成している。絶縁層14の内周面は、ケーブル円周方向の全周にわたって導体13の外周面に接触している。絶縁層14は、一定の厚み寸法(例えば、0.7mm厚)で形成されている。絶縁層14は、例えば、架橋ポリエチレン(Cross-linked polyethylene:XLPE)によって形成することができる。また、絶縁層14は、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、架橋発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の樹脂材料によって形成することもできる。 【0022】 (外層部) 外層部12は、電線部11を保護するもので、電線部11を囲む状態に配置されている。外層部12は、筒状のシース16と、このシース16の内面を覆う補強編組層17と、を有している。 【0023】 (シース) シース16は、電気ケーブル3の外被を構成するものである。シース16は、断面円形に形成されている。このため、外層部12は、全体的に円筒状(チューブ状)に形成されている。外層部12の筒内には、上述した電線部11が挿入されている。シース16は、ケーブル径方向において最も外側に位置している。このため、シース16の外周面は、電気ケーブル3の外周面を構成している。シース16は、絶縁材料によって形成されている。具体的には、シース16は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材料を用いて、0.5mm程度の厚さで形成されている。シース16を形成するゴム材料は、耐熱性、耐候性、及び耐油性に優れた特性を発揮するゴム材料を用いることが好ましい。一例として、ブレーキホース用のゴム材料を用いることができる。」 e. 「【0030】 <電線部と外層部の関係> 次に、電線部11と外層部12の関係について説明する。 まず、従来の電気ケーブルについて簡単に説明する。従来の電気ケーブルでは、ケーブル全体の径をなるべく小さくするという発想から、電線部と外層部を互いに密着させて構成している。このため、従来の電気ケーブルでは、外層部と電線部とが一体化しており、外層部に対して電線部をケーブル長さ方向に相対的に移動させることができない構造になっている。 【0031】 これに対して、本実施の形態に係る電気ケーブル3では、電線部11と外層部12との間に空間18が設けられている。空間18は、電線部11の外径D1と外層部12の内径D2との関係をD1<D2に設定することにより、それらの寸法差に応じて、電気ケーブル3の内部に形成されている。空間18は、導体13とシース16とを同心円状に配置したときに、導体13を有する電線部11とシース16を有する外層部12との間に、ケーブル円周方向の全周にわたって一様な寸法Gmで形成される。また、電線部11の絶縁層14と外層部12の補強編組層17とは、寸法Gmの空間18を介して対向する状態に配置される。 【0032】 このように電気ケーブル3の内部に空間18を設けることにより、外層部12に対して電線部11がケーブル長さ方向に相対的に移動自在となる。ここで記述する「相対的に移動自在」とは、所要の長さの電気ケーブル3を真っ直ぐな姿勢に保持し、その状態で外層部12内の電線部11をケーブル長さ方向に引っ張ったときに、外層部12とは独立して電線部11を移動させることができる状態をいう。また、「所要の長さ」とは、第1の電気機器(例えば、インバータ1)と第2の電気機器(例えば、インホイールモータ2)とを接続するのに必要な長さをいう。また、電気ケーブル3の内部では、空間18の存在により、外層部12に対して電線部11がケーブル径方向にも相対的に移動自在(変位可能)となっている。 【0033】 なお、図2においては、説明の便宜上、電線部11と外層部12とを同心円状に配置しているが、電気ケーブル3内では電線部11がある程度自由に動ける状態になっている。このため、電気ケーブル3を取り付けたときの向きによって、ケーブル径方向における電線部11と外層部12の位置関係が変わる。例えば、電気ケーブル3を水平に取り付けた場合は、電線部11が自重で下側に片寄って配置される。 ・・・中略・・・ 【0037】 (インナースリーブ) インナースリーブ21は、円筒状に形成されている。インナースリーブ21の一端部は連結部24の側面部につながっている。インナースリーブ21は、外層部12の内側に嵌り込む部分となる。インナースリーブ21は、連結部24の厚み方向の一方に突出する状態で形成されている。インナースリーブ21及びガイドスリーブ23の内側には、正面視円形の通し孔26が形成されている。通し孔26は、電線部11を通すための孔である。通し孔26の直径D4は、インナースリーブ21及びガイドスリーブ23の内径に相当する。このため、以降の説明では、通し孔26の直径D4を、インナースリーブ21の内径、あるいは、ガイドスリーブ23の内径とも称する。この直径D4は、電線部11の外径D1よりも大きく設定されている。このため、インナースリーブ21の内側に形成された通し孔26に電線部11を挿入しても、ケーブル長さ方向における電線部11の移動は阻害されることがない。」 f. 「【0052】 <他の実施の形態> 図7は本発明の他の実施の形態において、電気ケーブルと固定金具との結合関係を示す側断面図である。 本発明の他の実施の形態においては、先に述べた実施の形態と比較して、電気ケーブル3の構成が異なる。具体的には、電線部11を構成する絶縁層14の外周がシールド編組層15によって覆われている。シールド編組層15の端部は、固定金具7のインナースリーブ21とアウタースリーブ22との間に、外層部12とともに挿入されている。シールド編組層15は、かしめ部30によりインナースリーブ21に接触した状態で配置されている。また、シールド編組層15の端部は、外層部12の端部で上側に折り返されている。 【0053】 (シールド編組層) シールド編組層15は、電気的なシールド機能を有するもので、絶縁層14の外周面を覆うように形成されている。シールド編組層15は、導体13を芯として絶縁層14と同心円状に形成されている。シールド編組層15の内周面は、絶縁層14の外周面に接触している。シールド編組層15は、繊維又は糸からなる芯の周囲に銅箔が設けられた銅箔糸を用いて形成することができる。シールド編組層15は、複数の銅箔糸を交差させて編み込む、いわゆる編み組によって形成されている。」 g. 図1によれば、「車輪6側に実装されるインホイールモータ2」は、車体に「バネ5」を含むサスペンション装置により連結されていることは明らかである。 以上の記載(特に、下線部)によれば、甲第1号証には、電気ケーブル3について以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「自動車の車体4側に実装されたインバータ1と車体にバネ5を含むサスペンション装置により連結されているインホイールモータ2とを、接続する電気ケーブル3であって、 電気ケーブル3は、適度な可撓性を有するものであって、電線部11と、この電線部11の外側に設けられた外層部12と、を備えた構成となっており、電線部11は、導体13と、この導体13の外周面を覆う絶縁層14と、を有し、電線部11と外層部12との間に空間18が設けられており、電気ケーブル3の内部に空間18を設けることにより、外層部12に対して電線部11がケーブル長さ方向に相対的に移動自在となり、 導体13は、電気ケーブル3が信号ケーブルであれば信号線路を形成し、電気ケーブル3が電源ケーブルであれば電源線路を形成するものであり、電線部11の芯線として、電線部11の中心に配置され、1本の線導体、又は複数本の線導体を撚り合わせてなる撚線によって構成することができ、導体13は、例えば、スズめっき軟銅からなる線導体を用いて形成することができ、また、軟銅線、銀めっき軟銅線、スズめっき銅合金線等の金属線を用いて形成することもでき、 絶縁層14は、導体13の外周の全面を覆うように、導体13と同心円状に形成され、絶縁層14は、例えば、架橋ポリエチレンによって形成することができ、また、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、架橋発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の樹脂材料によって形成することもでき、 外層部12は、電線部11を保護するもので、電線部11を囲む状態に配置された筒状のシース16と、このシース16の内面を覆う補強編組層17と、を有し、 シース16は、電気ケーブル3の外被を構成するものであり、絶縁材料によって形成され、シース16を形成するゴム材料は、耐熱性、耐候性、及び耐油性に優れた特性を発揮するゴム材料を用いることが好ましく、 電線部11を構成する絶縁層14の外周がシールド編組層15によって覆われており、シールド編組層15は、電気的なシールド機能を有するもので、絶縁層14の外周面を覆うように形成されている。シールド編組層15は、導体13を芯として絶縁層14と同心円状に形成され、シールド編組層15の内周面は、絶縁層14の外周面に接触し、繊維又は糸からなる芯の周囲に銅箔が設けられた銅箔糸を用いて形成することができる、電気ケーブル3。」 イ.甲第2号証 甲第2号証(5訂 電線・ケーブルハンドブック,日立電線株式会社編,山海堂,平成2年5月15日,p32-33)には、次の記載がある。 「(4)より線 大容量の電流を流すための導体はサイズが大きなものが必要であるが,この場合単線を使うと,硬く曲げにくいばかりでなく1条の長さがきわめて制限される。したがって、大サイズの導体,または小サイズでも特に可とう性を必要とする場合にはより線が使用される。より線の方式としては,同心より,集合より及び複合よりがある。 (a)同心より 最も多く使われるもので,硬銅線,スズメッキ硬銅線または軟銅線の素線1本ないし数本を中心とし,その上に各層を同心状により合わせる方式・・・中略・・・ (b)集合より 細い心線・・・をひとまとめにして同方向により合わせるより方で,・・・集合より線は主としてコードのような可とう性を必要とする絶縁電線の心線として使用される(一般には導体断面積14mm2以下). (c)複合より ロープよりとも呼ばれ,集合よりまたは同心よりとした軟銅線もしくはスズメッキ軟銅線を素線とし,さらにそれを同心よりにより合わせるより方をいう(図2.16).複合より線は可とう性を必要とする絶縁電線のうち比較的導体サイズの大きい場合の導体として使用される(一般には導体断面積22mm2以上).」(第32頁第26行-第33頁第20行) ウ.甲第3号証 甲第3号証(特開2015-49998号公報)には、図とともに次の記載がある。 「【0013】 以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。 図1及び図2の電源用ケーブル1において、複数本の金属素線を撚り合わせた導体部2、導体部2を滑り素材3で被覆した被覆付き導体部4、導体部2及び/又は(滑り素材3で被覆した)被覆付き導体部4を複数本撚り合わせた複合導体部5、複合導体部5の中央に緩衝材6、複合導体部5の上に抑えの滑り素材7、絶縁体8、シールド層9、外層10が同芯円上に施される。 【0014】 導体部2の構成は、集合撚り、同芯撚り等の撚り線である。材質は、錫めっき軟銅線、銀めっき軟銅線などが好ましい。耐屈曲性及び耐捻回性の観点より、撚り方向は複合導体部5等に統一されている方が好ましい。」 「【0018】 複合導体部5及び抑えの滑り素材7の上には、絶縁体8が施される。絶縁体8の材質としては、特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点から、柔軟性に優れるポリエチレン、軟質フッ素樹脂等が好まれる。 ・・・中略・・・ 【0020】 外層10の材質は特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点より、柔軟性に優れるポリエチレン樹脂、ポリエステルエラストマー等が好ましい。肉厚等の寸法についても特に限定せず、一般的なケーブルに適用されるものとする。」 エ.甲第4号証 甲第4号証(特開平3-25805号公報)には、図とともに次の記載がある。 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、主として産業用ロボット等のメカトロニクス機器を始めとする各種移動機械等、極度の屈曲や激しい震動等の苛酷な条件下で使用される電線用導体に関する。 〔従来の技術〕 従来の電線用導体の構造は、1本の金属線からなる単線、あるいは、細い単線を束ねた集合撚線(撚線を構或する単線を特に素線という)、あるいは、第6図に示すように素線aを同軸状に撚り合わせた同心撚線、又は、第7図に示すように同心撚線bを更に撚り合わせた複合撚線、さらには、集合撚線を更に撚り合わせた複合撚線等がある。」(第1頁右欄第1行-第17行) 「そこで、本発明はこのような問題点を解決し、耐屈曲性及び耐震性に優れ、かつ可撓性に富み、ロボット等のメカトロニクス機器に使用しても充分に耐え得る電線のための導体を提供することを目的とする。 〔課題を解決するための手段〕 本発明は上記課題を解決するために、強靭鐵維から成る補強ベースの周囲に、単線または集合撚線から成る複数本の導体線を同軸状に撚り合わせた。 また、上記補強ベース入り同心撚線の複数本を更に撚り合わせた。 また、複数本の上記補強ベース入り同心撚線を更に強靭繊維から成る別の中心補強ベースの周囲に同心撚りした。」(第2頁左上欄第17行-右上欄第11行) 「〔実施例〕 以下、図示の実施例に基づいて本発明を説明する。 第1図は本発明に係る電線用導体の一実施例を示し、1は、例えばアラミド繊維またはカーボン繊維等の強靭繊維から成る補強ベースであり、耐震性及び耐屈曲性に優れると共に可撓性に富む。該補強ベース1の周囲には、単線または集合撚線から成る複数本の導体線2・・・を同軸状に撚り合わせた同心撚線4をもって、導体を構成している。同図では複数本の同心撚りの導体線2・・・から形成された導体線層3を、2層備えた場合を示したが、これを1層あるいは3層以上にしてもよい。また、補強ベース1の強靭繊維は、ストレート状に束ねてもよいが、撚線にすれば更に耐震性及び耐屈曲性に優れ、可撓性が向上する。」(第2頁右上欄第19行-左下欄第11行) オ.甲第5号証 甲第5号証(特開2006-96968号公報)には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、電線ジャケット用材料、電線ジャケット及びLANに用いるケーブルに関する。 【背景技術】 【0002】 LANに用いるケーブルは、一般に、フッ素樹脂等からなる絶縁材により被覆した銅線を複数本束ねたものを、主に難燃性付与を目的として、電線ジャケットと称する樹脂製チューブ内に擁してなる。」 「【0018】 本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に、更に、軟質樹脂(B)を配合してなるものであってもよい。 本発明の電線ジャケット用材料は、フッ素樹脂(A)に加え更に上記軟質樹脂(B)をも含むものである場合、柔軟性ないし可撓性に特に優れた成形体を得ることができ、一般に高価格であるフッ素樹脂の使用量低減による低価格化をも可能にすることができる。 【0019】 本明細書において、「軟質樹脂(B)」は、電線ジャケット用材料に配合することにより、配合しないものに比べ、得られる成形体に柔軟性ないし可撓性を付与し得る高分子である。 本明細書において、軟質樹脂(B)は、便宜上「樹脂」なる用語を含むが、樹脂のみならず、ゴムであってもよい概念である。」 カ.甲第6号証 甲第6号証(特開2015-160498号公報)には、図とともに次の記載がある。 「【0034】 図1~図6に示すサスペンション装置は、ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置であり、インホイールモータ駆動装置11の上部と連結するアッパアーム22と、インホイールモータ駆動装置11の下部と連結するロアアーム23と、インホイールモータ駆動装置11のバウンド量およびリバウンド量を減衰させるダンパ31とを備える。アッパアーム22、ロアアーム23、およびダンパ31の各部品自体は公知のものでよい。 【0035】 アッパアーム22は図4に示すように略V字状であり、V字の両端になる車幅方向内側端部221,222を基端として図示しない車体側メンバ、例えば車体フレーム、に揺動可能に連結される。これに対しV字の中央部になる車幅方向外側端部223は遊端をなし、第2ボールジョイント24を介して、上下アーム部13の上端部の第2ボールジョイント座部14と回動可能に連結する。第2ボールジョイント24はロードホイールWよりも上方に位置し(図1参照)、アッパアーム22の上下方向位置はローマウント型ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置のアッパアームよりも高いことから、このサスペンション装置はハイマウント型ダブルウィッシュボーン式サスペンション装置である。なお車体側メンバとは、説明される部材からみて車体側にある部材をいうと理解されたい。 【0036】 ロアアーム23は図5に示すように車幅方向に延びる前側アームと、この前側アームの途中から分岐して後方かつ車幅方向内側へ斜めに延びる後側アームからなり、前側の車幅方向内側端部231および後側の車幅方向内側端部232を基端として図示しない車体側メンバ、例えば車体フレーム、に揺動可能に連結される。これに対しロアアーム23の車幅方向外側端部233は遊端をなし、第3ボールジョイント25を介して、インホイールモータ駆動装置11の下部の第3ボールジョイント座部17と回動可能に連結する。 【0037】 このようにロアアーム23の車幅方向外側端部233と、第3ボールジョイント25と、インホイールモータ駆動装置11の下部に設けられた第3ボールジョイント座部17は、ロードホイールWの内空領域に配置される。なお図には示さなかったが、アッパアーム22およびロアアーム23は上述したV字形状あるいは分岐形状以外のアーム部材であってもよいこと勿論である。 【0038】 上側の第2ボールジョイント24および下側の第3ボールジョイント25は、インホイールモータ駆動装置11の転舵を可能にする。すなわち第2ボールジョイント24および第3ボールジョイント25を通る仮想直線はキングピンKを構成する。そして、インホイールモータ駆動装置11とロードホイールWを含む転舵輪は、キングピンKを中心として左右方向に転舵可能にされる。図6は、右方向および左方向に最大転舵角まで転舵する場合のロアアーム23およびインホイールモータ駆動装置11の位置関係を示す。本実施形態は、例えば車両の左右の前輪に使用される。」 6.判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 特許法第29条第2項について (ア)本件発明1について 本件発明1と引用発明とを対比すると、次の相違点を有するといえる。 (相違点1) 「導体部」が、本件発明1では、「素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線」であるのに対し、引用発明では、複数本の線導体を撚り合わせてなる撚線によって構成することができ、スズめっき軟銅からなる線導体を用いて形成することができ、また、軟銅線、銀めっき軟銅線、スズめっき銅合金線等の金属線を用いて形成することもできるものである点。 (相違点2) 「導体部の外周を覆う絶縁体」が、本件発明1では、「軟質フッ素樹脂」であるのに対し、引用発明では、架橋ポリエチレンによって形成することができ、また、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、架橋発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の樹脂材料によって形成することもできるものである点。 上記相違点1、2について検討する。 上記甲第2号証には、集合よりまたは同心よりとした軟銅線もしくはスズメッキ軟銅線を素線とし,さらにそれを同心よりにより合わせるより方をした複合より線は可とう性を必要とする絶縁電線のうち比較的導体サイズの大きい場合の導体として使用されることが記載されており、上記甲第3号証には、複合導体部5及び抑えの滑り素材7の上には、絶縁体8が施され、絶縁体8の材質としては、特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点から、柔軟性に優れるポリエチレン、軟質フッ素樹脂等が好まれることが記載されている。 しかしながら、引用発明は、「相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能な電気ケーブルの取付構造を提供すること」(甲第1号証【0007】)を主な課題とし、課題を解決するための手段として、主に、電気ケーブルがシースに対して導体が電気ケーブル長さ方向に相対的に移動自在に構成するようにしたものであるから、引用発明において、上記甲第2、3号証記載の技術を適用し、スズメッキ軟銅線を素線とした複合より線を導体とし、かつ絶縁体を軟質フッ素樹脂とすることには動機付けがない。 したがって、本件発明1は、引用発明、甲第2~第6号証に記載された技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得るものではない。 (イ)本件発明2~6について 本件発明2~6は本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で、本件発明2~6は、引用発明及び甲第2~第6号証に記載された技術事項から当業者が容易になし得るものではない。 (エ)本件発明7について 本件発明7は本件発明1を減縮したものであり、本件発明1と同様の理由で、本件発明7は、引用発明及び甲第2~第6号証に記載された技術事項から当業者が容易になし得るものではない。 (オ)特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、「本件特許発明において採用されている素線・絶縁体・シールド線・シースの材質は公知ないし周知の材質です。さらに、ケーブル一般に内在する課題やインホイールモータに関して従来から認識されていた課題に接した当業者が、これを解決するために、各甲号証に記載されている公知ないし周知の材質や構造などから好適な材質や構造を選択し、それらを適宜組合せることは、特段の動機付けがなくとも当業者が当然に試みるものです。加えて、各種ケーブルには、その用途や使用環境に応じて様々な特性や耐性が求められることも周知の事実であり、求められる特性や耐性を満たすために、公知ないし周知の材質や構造などから好適な材質や構造を選択し、それらを適宜組合せることは、正に設計事項です。」と主張する。 しかしながら、甲第1号証に記載された発明(引用発明)は、「相対的に移動する2つの電気機器を接続する電気ケーブルに何らかの原因で引張力が加わった場合に、その引張力によって導体にかかる負荷を軽減することができ、もって屈曲耐久性の向上が可能な電気ケーブルの取付構造を提供すること」を主な課題とするものであり、本件発明の「ケーブル最大径が太くなり過ぎずに、大電流を流すため導体部の断面積を十分確保できて、屈曲が頻繁に加わっても、長期間の運用において断線などの不具合回避が可能となり、また製造過程において特殊な工程が不要で安価に得られる」(本件特許明細書【0006】)という課題とは異なるものであり、甲第1号証に記載された発明(引用発明)において、導体を「素線が複数本撚り合わされた、絶縁層を有しない集合撚線が、さらに複数本撚り合わされた複合撚線からなり、かつ前記素線がスズメッキ軟銅線」とし、かつ、導体の外周を覆う絶縁体を「軟質フッ素樹脂」することは、単なる設計的事項であるとは認められないから、かかる主張は理由がない。 イ 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、「本件特許の請求項1には「前記絶縁体が軟質フッ素樹脂であり」と記載され、請求項4には「前記シースが軟質フッ素樹脂またはポリエステルエラストマーである」と記載され、請求項7には、「前記絶縁体が軟質フッ素樹脂である要件」と記載されている。しかし、「軟質フッ素樹脂」がどのような樹脂であるのかについて本件特許明細書には具体的な説明がない。仮に、「軟質フッ素樹脂」が通常の「フッ素樹脂」よりも軟質なフッ素樹脂を意味するとしても、そもそも通常のフッ素樹脂の硬度(硬さや軟らかさ)は一義的ではないばかりか、本件特許明細書には「軟質フッ素樹脂」と「フッ素樹脂」との比較の基準や方法等について一切記載されていない。さらに、フッ素樹脂を軟質化させるためには何らかの物質を添加する必要があると思われるが、添加すべき物質の種類についても、添加の割合(添加量)についても本件特許明細書には一切の説明がない。よって、本件特許明細書の記載は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」と主張(明細書の記載不備(特許法第36条第4項第1号))している。 また、「本件特許請求の範囲の請求項1,4,7には「軟質フッ素樹脂」なる記載がある。しかし、上記「6.明細書の記載不備(特許法第36条第4項第1号)」の欄で述べたとおり、本件特許発明における「軟質フッ素樹脂」がどのようなフッ素樹脂であるのかについては、本件特許明細書の記載を参酌しても明らかではない。よって、「軟質フッ素樹脂」なる記載を含む請求項1、4、7及びこれらの請求項を引用する請求項2,3,5,6に係る発明は不明確であり、本件特許請求の範囲に特許を受けようとする発明が明確に記載されているとはいえない。」とも主張(特許法第36条第項第2号)する。 しかしながら、「フッ素樹脂」の柔軟性を良好にした「軟質フッ素樹脂」は、当業者において知られており(甲第3号証(特開2015-49998号公報)段落【0018】の「絶縁体8の材質としては、特に限定しないが、耐屈曲性及び耐捻回性の観点から、柔軟性に優れるポリエチレン、軟質フッ素樹脂等が好まれる。」の記載、特開2010-272407号公報段落【0005】の「フッ素樹脂は、強靱で機械的強度にも優れているものの柔軟性に乏しいという問題がある。この点を改良したいわゆる軟質フッ素樹脂と称するものも開発されている」の記載参照。)、かかる主張は理由がない。 5.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700968

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