特許異議申立
2017-700760
偏光板および画像表示装置、ならびにそれらの製造方法
- 審判番号
- 2017-700760
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-253721外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月01日
- 審決日
- 2018年08月27日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZDA(G02B) / P1651.537-ZDA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6071459号発明「偏光板および画像表示装置、ならびにそれらの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6071459号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5、11、15、16〕、〔6-10〕、〔12-14、17〕について、訂正することを認める。
特許第6071459号の請求項12及び17に係る特許を取り消す。
特許第6071459号の請求項11、13及び14に係る特許を維持する。
特許第6071459号の請求項1-10、15及び16に係る特許についての申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6071459号の請求項1-17に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成24年11月19日に特許出願され、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、同年2月1日に特許掲載公報が発行され、その特許について、同年8月1日に特許異議申立人 鶴谷裕二により特許異議の申立てがされたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 9月21日:取消理由通知書
平成29年11月24日:訂正請求書及び意見書
平成29年11月29日:通知書(訂正請求があった旨の通知)
平成29年12月28日:意見書(特許異議申立人)
平成30年 2月 6日:取消理由通知書(決定の予告)
平成30年 4月 9日:訂正請求書(以下この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)及び意見書
平成30年 5月 7日:通知書(訂正請求があった旨の通知)
平成30年 6月 7日:意見書(特許異議申立人)
なお、平成29年11月24日付け訂正請求書によりなされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 一群の請求項について
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし17の引用関係からみて、本件訂正請求は、請求項〔1-5、11-17〕、〔6-10〕ごとにされたものである。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
2 請求項〔1-5、11-17〕からなる一群の請求項に係る訂正について
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1(なお、「訂正事項」の用語に付した数字は、訂正請求書の「訂正事項」で用いたものと同じものを用いた。以下同様。)
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
カ 訂正事項11-1
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光板」と記載されているのを、「偏光板」(下線は合議体が付した。以下同じ。)に訂正し、「粘着剤層を備え、」との記載の後に、「前記偏光板は、偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており、偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であり、前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり、前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、」を付加する。
キ 訂正事項11-2
特許請求の範囲の請求項11において、上記訂正事項11-1により付加した「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、」との記載と「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は」との記載の間に、「かつ厚みが70μm以下であり、」を付加する。
ク 訂正事項11-3
特許請求の範囲の請求項11において、上記訂正事項11-1により付加した「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、」との記載の後に、「かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであり、」を付加する。
ケ 訂正事項11-4
特許請求の範囲の請求項11に「少なくとも一方の面に粘着剤層を備え」と記載されているのを、「両方の面に粘着剤層を備え」に訂正し、上記訂正事項11-3により付加した「かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであり、」との記載の後に、「前記粘着剤層は、前記偏光板の一方の面に設けられ、画像表示セルと貼り合わせるための第一粘着剤層、および前記偏光板の他方の面に設けられ、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルと貼り合わせるための第二粘着剤層であり、」を付加する。
コ 訂正事項11-5
特許請求の範囲の請求項11に「前記粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下」と記載されているのを、「前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、いずれも粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下」と訂正する。
サ 訂正事項12-1
特許請求の範囲の請求項12に、「画像表示セルの視認側表面に請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光板が接着剤層を介して貼り合せられている画像表示パネルと、前面透明部材と、を備え、」と記載されているのを、「画像表示セルの視認側表面に偏光板が接着剤層を介して貼り合せられている画像表示パネルと、前面透明部材と、を備え、前記偏光板は、偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており、偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であり、前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり、前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、」と訂正する。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様に訂正する。
シ 訂正事項12-2
特許請求の範囲の請求項12において、上記訂正事項12-1により付加した「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、」との記載と「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は」との記載との間に、「かつ厚みが70μm以下であり、」を付加する。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様に訂正する。
ス 訂正事項12-3
特許請求の範囲の請求項12において、上記訂正事項12-1により付加した「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、」との記載の後に、「かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであり、」を付加する。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様に訂正する。
セ 訂正事項12-4
特許請求の範囲の請求項12に、「前記画像表示パネルの視認側の面に、前記前面透明部材が、接着剤層を介して貼り合せられている」と記載されているのを、「前記画像表示パネルの視認側表面の前記偏光板に、前記前面透明部材が、接着剤層を介して貼り合せられ、」と訂正する。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様に訂正する。
ソ 訂正事項12-5
特許請求の範囲の請求項12において、上記訂正事項12-4による「接着剤層を介して貼り合せられ、」との記載の後に、「前記偏光板と前記前面透明部材との間の空間が前記接着剤層により層間充填されており、」を付加する。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様に訂正する。
タ 訂正事項12-6
特許請求の範囲の請求項12において、上記訂正事項12-5により付加した「前記接着剤層により層間充填されており、」との記載の後に、「前記前面透明部材が、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルである、」を付加する。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様に訂正する。
チ 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
ツ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
テ 訂正事項15-1
特許請求の範囲の請求項17に、「請求項12~16のいずれか1項に記載の画像表示装置を製造する方法」と記載されているのを、「請求項12~14のいずれか1項に記載の画像表示装置を製造する方法」と訂正する。
ト 訂正事項15-2
特許請求の範囲の請求項17に、「ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面のそれぞれに飽和吸水量が2.5g/m2以下である透明保護フィルムを有する」と記載されているのを、「ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面のそれぞれに飽和吸水量が2.5g/m2以下かつ厚みが70μm以下である透明保護フィルムを有し」と訂正する。
ナ 訂正事項15-3
特許請求の範囲の請求項17に、上記訂正事項15-2による「透明保護フィルムを有し」との記載の後に、「前記透明保護フィルムの少なくとも一方は透湿度が300g/m2・24h以上でありかつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムである」を付加する。
ニ 訂正事項15-4
特許請求の範囲の請求項17に「前記偏光板の水分量が7g/m2以下となるように」と記載されているのを、「前記偏光板の水分量が6.5g/m2以下となるように」と訂正する。
ヌ 訂正事項16
本件特許の願書に添付した明細書の【0118】、【0131】の【表1】及び【0132】に「実施例2」と記載されているのを、「参考例2」とし、【0132】に「実施例1,2」と記載されているのを、「実施例1および参考例2」と訂正する。
ネ 訂正事項17
本件特許の願書に添付した明細書の【0137】に「比較例7」及び「比較例6」と記載されているのを、それぞれ「比較例5」及び「比較例4」に訂正する。
ノ 訂正事項18
本件特許の願書に添付した明細書の【0140】及び【0142】に「層間重点」と記載されているのを、「層間充填」と訂正する。
(2)訂正の適否
ア 訂正事項1
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1を削除するものである。したがって、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
イ 訂正事項2
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項2を削除するものである。したがって、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ウ 訂正事項3
訂正事項3による訂正は、本件訂正前の請求項3を削除するものである。したがって、訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
エ 訂正事項4
訂正事項4による訂正は、本件訂正前の請求項4を削除するものである。したがって、訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
オ 訂正事項5
訂正事項5による訂正は、本件訂正前の請求項5を削除するものである。したがって、訂正事項5による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
カ 訂正事項11-1
訂正事項11-1による訂正は、本件訂正前の請求項11の記載が本件訂正前の請求項1の記載を引用する形式であったものを、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へと書き改めるとともに、本件訂正前の請求項11が引用する請求項1における「偏光板の単位面積当たりの水分量が7g/m2以下」との記載を「偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項11-1による訂正は、本件特許の明細書の【0131】【表1】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
キ 訂正事項11-2
訂正事項11-2による訂正は、本件訂正前の請求項11が引用する請求項1における「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方」が「厚みが70μm以下であ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項11-2による訂正は、本件特許の明細書の【0067】、【0116】及び【0118】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ク 訂正事項11-3
訂正事項11-3による訂正は、本件訂正前の請求項11が引用する請求項1における「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方」が「厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項11-2による訂正は、本件特許の明細書の【0067】、【0116】及び【0118】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ケ 訂正事項11-4
訂正事項11-4による訂正は、本件訂正前の請求項11の「偏光板の少なくとも一方に面に」備えられていた「粘着剤層」が、「偏光板の両方の面」に備えられたものに限定し、この両方の面に設けられた粘着剤層について、「前記粘着剤層は、前記偏光板の一方の面に設けられ、画像表示セルと貼り合わせるための第一粘着剤層、および前記偏光板の他方の面に設けられ、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルと貼り合わせるための第二粘着剤層であ」ると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項11-4による訂正は、本件特許の明細書の【0005】、【0078】、【0082】及び【0102】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
コ 訂正事項11-5
訂正事項11-5による訂正は、本件訂正前の請求項11の「前記粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下」との記載を、「前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、いずれも粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下」とし、上記訂正事項11-4により、偏光板の両方の面に粘着剤層を備えることが特定されたことに伴って、有機酸モノマー含有量が100ppm以下である粘着剤層を偏光板の両方の面の粘着剤層に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項11-5による訂正は、本件特許の明細書の【0090】及び図3の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
サ 訂正事項12-1
訂正事項12-1による訂正は、本件訂正前の請求項12の記載が本件訂正前の請求項1の記載を引用する形式であったものを、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へと書き改めるとともに、本件訂正前の請求項12が引用する請求項1における「偏光板の単位面積当たりの水分量が7g/m2以下」との記載を「偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項12-1による訂正は、本件特許の明細書の【0131】【表1】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様である。
シ 訂正事項12-2
訂正事項12-2による訂正は、本件訂正前の「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方」が「厚みが70μm以下であ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項12-2による訂正は、本件特許の明細書の【0067】、【0116】及び【0118】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様である。
ス 訂正事項12-3
訂正事項12-3による訂正は、本件訂正前の「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方」が「厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項12-3による訂正は、本件特許の明細書の【0067】、【0116】及び【0118】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様である。
セ 訂正事項12-4
訂正事項12-4による訂正は、本件訂正前の請求項12の「前面透明部材」が「接着剤層を介して貼り合せられ」るのが、「前記画像表示パネルの視認側表面の前記偏光板」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項12-4による訂正は、本件特許の明細書の【0029】及び図3の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様である。
ソ 訂正事項12-5
訂正事項12-5による訂正は、偏光板と前面透明部材との間の空間が両者を貼り合わされる接着剤層により層間充填されていると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項12-5による訂正は、本件特許の明細書の【0006】、【0059】及び【0082】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様である。
タ 訂正事項12-6
訂正事項12-6による訂正は、前面透明部材が「透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルである」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項12-6による訂正は、本件特許の明細書の【0005】及び【0102】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
本件特許の請求項12の記載を引用する請求項13、14及び17についても同様である。
チ 訂正事項13
訂正事項13による訂正は、本件訂正前の請求項15を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ツ 訂正事項14
訂正事項14による訂正は、本件訂正前の請求項16を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
テ 訂正事項15-1
訂正事項15-1による訂正は、訂正事項13及び14による請求項15及び16の削除に伴うものであり、本件訂正前の請求項17が請求項15及び16の記載を引用していたものを、これらの請求項を引用しないものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ト 訂正事項15-2
訂正事項15-2による訂正は、本件補正前の請求項17における「透明保護フィルムの両方」が「厚みが70μm以下」であるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項15-2による訂正は、本件特許の明細書の【0067】、【0116】及び【0118】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ナ 訂正事項15-3
訂正事項15-3による訂正は、本件訂正前の請求項17における「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方」のうち、「透湿度が300g/m2・24h以上である」ものについては、「厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであ」るものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項15-3による訂正は、本件特許の明細書の【0067】、【0116】及び【0118】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ニ 訂正事項15-4
訂正事項15-4による訂正は、本件訂正前の請求項17における「偏光板の単位面積当たりの水分量」を「7.0g/m2以下」から「6.5g/m2以下」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項15-4による訂正は、本件特許の明細書の【0131】【表1】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ヌ 訂正事項16
訂正事項16による訂正は、本件訂正後の請求項11、12及び17において、「偏光板の」「水分量が6.5g/m2以下」と訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ネ 訂正事項17
訂正事項17による訂正は、「比較例7」及び「比較例5」と記載されているのを、それぞれ「比較例5」及び「比較例4」と、誤記の訂正を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ノ 訂正事項18
訂正事項18による訂正は、「層間重点」との記載を「層間充填」と誤記の訂正を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
3 請求項〔6-10〕からなる一群の請求項に係る訂正について
(1)訂正の内容
ア 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
イ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
ウ 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
エ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
オ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(2)訂正の適否
ア 訂正事項6
訂正事項6による訂正は、本件訂正前の請求項6を削除するものである。したがって、訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
イ 訂正事項7
訂正事項7による訂正は、本件訂正前の請求項7を削除するものである。したがって、訂正事項7による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
ウ 訂正事項8
訂正事項8による訂正は、本件訂正前の請求項8を削除するものである。したがって、訂正事項8による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
エ 訂正事項9
訂正事項9による訂正は、本件訂正前の請求項9を削除するものである。したがって、訂正事項9による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
オ 訂正事項10
訂正事項10による訂正は、本件訂正前の請求項10を削除するものである。したがって、訂正事項10による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正である。
4 訂正における一群の請求項の取扱い
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし17の引用関係からみて、本件訂正請求は、請求項〔1-5、11-17〕、〔6-10〕ごとにされたものである。
そして、特許権者から、訂正後の請求項12-14、17についてそれぞれ訂正が認められるときは請求項11とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1-5、11、15、16〕、〔6-10〕、〔12-14、17〕について一群の請求項ごとに訂正したものとして取り扱う。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
上記4からみて、訂正後の一群の請求項は、請求項〔1-5、11、15、16〕、〔6-10〕、〔12-14、17〕である。
よって、訂正後の請求項〔1-5、11、15、16〕、〔6-10〕、〔12-14、17〕について、訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5、11、15、16〕、〔6-10〕、〔12-14、17〕について本件訂正が認められるから、請求項11-14、17に係る発明は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項11-14、17に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである(以下、本件特許の請求項11-14、17に係る発明をそれぞれ「本件発明11」等といい、本件発明11-14、17を総称して「本件発明」という。)。
「 【請求項11】
偏光板の両方の面に粘着剤層を備え、
前記偏光板は、
偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており、
偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であり、
前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり、
前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、かつ厚みが70μm以下であり、
前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであり、
前記粘着剤層は、前記偏光板の一方の面に設けられ、画像表示セルと貼り合わせるための第一粘着剤層、および前記偏光板の他方の面に設けられ、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルと貼り合わせるための第二粘着剤層であり、
前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、いずれも前記粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である、粘着剤層付き偏光板。
【請求項12】
画像表示セルの視認側表面に偏光板が接着剤層を介して貼り合せられている画像表示パネルと、前面透明部材と、を備え、
前記偏光板は、
偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており、
偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であり、
前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり、
前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、かつ厚みが70μm以下であり、
前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムであり、
前記画像表示パネルの視認側表面の前記偏光板に、前記前面透明部材が、接着剤層を介して貼り合せられ、前記偏光板と前記前面透明部材との間の空間が前記接着剤層により層間充填されており、
前記前面透明部材が、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルである、画像表示装置。
【請求項13】
前記偏光板の画像表示セル側表面に付設される第一接着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である、請求項12に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記偏光板の視認側表面に付設される第二接着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である、請求項12または13に記載の画像表示装置。
【請求項17】
請求項12~14のいずれか1項に記載の画像表示装置を製造する方法であって、
ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面のそれぞれに飽和吸水量が2.5g/m2以下かつ厚みが70μm以下である透明保護フィルムを有し前記透明保護フィルムの少なくとも一方は透湿度が300g/m2・24h以上でありかつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムである偏光板と、画像表示セルとを、第一接着剤層を介して貼り合わせるパネル形成工程、
前記偏光板の水分量が6.5g/m2以下となるように、前記画像表示パネルを加熱するエージング工程、および
前記偏光板の視認側表面に第二接着剤層を介して前記前面透明部材を貼り合わせる工程、を有する、画像表示装置の製造方法。」
第4 特許異議の申立てについて
1 特許異議の申立ての概要
(1)理由1:本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
ア 本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下「訂正前発明1」等という。また、訂正前発明1ないし11を総称して「訂正前発明」という。)が解決しようとする課題は、層間充填構成の画像表示装置が高温環境に暴露された場合に生じる透過率の低下を抑制することであるが、訂正前発明1ないし11では、「偏光板」が層間充填構成の画像表示装置に用いられることの特定はされていない。
よって、訂正前発明1ないし11では、本件の発明の課題を解決するための手段の前提条件となる構成が記載されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっており、サポート要件を満たさない。
イ 本件特許の明細書によれば、偏光子のポリエン化を抑制し、偏光板の耐久性を向上させることができるかどうかは、接着剤層と偏光子の間に介在する保護フィルムの厚みにも依存するものであるところ、訂正前発明1では、「偏光板」の透明保護フィルムの厚さの特定はされていない。そうすると、訂正前発明1では、偏光板が高温環境に暴露された場合に生じる透過率の低下を抑制するという訂正前発明1の課題を解決することができない。
よって、訂正前発明1では、本件の発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっており、サポート要件を満たさない。訂正前発明2ないし17についても同様である。
(2)理由2
訂正前発明1、2、5ないし7は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証(以下、甲第1号証ないし甲第12号証をそれぞれ「甲1」ないし「甲12」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
(3)理由3
訂正前発明1ないし17は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1ないし甲8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(4)理由4
訂正前発明1ないし5、12は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲9に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
(5)理由5
訂正前発明1ないし17は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲9、甲10、甲5ないし甲7に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(6)理由6
訂正前発明1、2、5ないし7は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲12に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
(7)理由7
訂正前発明1ないし17は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲12、甲2ないし8に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
記
甲1:国際公開第2009/139284号
甲2:高野智史企画編集、「光学用透明樹脂における材料設計と応用技術」、第1版、株式会社技術情報協会、2007年4月27日、第63頁
甲4:特開2003-29043号公報
甲5:特開2009-193047号公報
甲6:J.M.Morancho et al,"Thermal Analysis of Enhanced Poly(vinyl alcohol)-Based Proton-Conducting Membranes Crosslinked with Sulfonation Agents for Direct Methanol Fuel Cells", Journal of Applied Polymer Science,Vol.124,E57-E65,(2012)
甲7:大島篤著、「Inside of iPhone ~3DCGでよくわかる!iPhoneの中身とその仕組み~」、初版、株式会社シーアンドアール研究所、2012年6月15日、第22頁~第27頁、第38頁
甲8:エドワード・P・ムーア・Jr.編著、「ポリプロピレンハンドブック」、初版、株式会社工業調査会、1998年10月15日、第363頁~第364頁
甲9:特開2008-203400号公報
甲10:特開2011-90336号公報
甲12:国際公開第2009/072357号
2 平成30年2月6日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
(1)平成29年11月24日に提出された訂正請求書による訂正の請求によりなされた訂正後の請求項1、2、5ないし7、9、10に係る発明(以下、それぞれ「第一訂正発明1」等という。)は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
(2)第一訂正発明1ないし14、17は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて、甲9に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて、甲12に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
上記(1)及び(2)のとおり、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
第5 当合議体の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)甲1
本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された甲1(国際公開第2009/139284号)には、次の事項が記載されている。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は偏光板及び液晶表示装置に関する。」
イ 「実施例
[0227] 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0228] 実施例1
・・・略・・・
[0238] 表1記載のアクリル樹脂含有フィルム1の残留溶剤量は0.1%であり、膜厚は60μm、巻長は4000mであった。
[0239] 以下、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の種類と組成比を表1、表2記載のように変えた以外は、アクリル樹脂含有フィルム1と同様にして、アクリル樹脂含有フィルム2~34を作製した。
[0240] 尚、アクリル樹脂含有フィルムは、表1、表2に示すように下記紫外線吸収剤を追加してドープを作製した。添加量は、紫外線吸収剤を含まないドープの固形分量(アクリル樹脂とセルロース樹脂の和を100質量部とした)に対して、表1、表2の示す種を下記質量部添加して溶解してドープを調製して上記のようにフィルムを作製した。また、アクリル樹脂含有フィルム34は溶融法で作製した。
[0241] アクリル樹脂含有フィルム34として、溶融流延法により製膜した試料を下記のように、通常の方法によって作製した。
[0242] アクリル樹脂BR85とCAP482-20(イーストマンケミカル(株)製)を70:30の割合で混ぜ、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて90℃で2時間乾燥して水分を充分に除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押し出し成形機(Tダイ幅500mm)を使用し、溶融樹脂温度240℃、Tダイ温度240℃の成形条件にて押し出し、MD方向に1.2倍、TD方向に1.2倍延伸し、アクリル樹脂含有フィルム34を製膜した。成形したフィルムの厚さは60μmであった。
紫外線吸収剤
チヌビン109(チバ・ジャパン(株)製) 1.5質量部
チヌビン171(チバ・ジャパン(株)製) 0.7質量部
LA-31(ADEKA(株)製) 1.5質量部
また、表1、表2のセルロースエステル樹脂において、セルロースエステル樹脂のアシル基は、acはアセチル基、pはプロピオニル基、bはブチリル基、bzはベンゾイル基、phはフタリル基を表す。
[0243] 表1、表2において、使用した素材は以下の通り、
略 号 分子量 組 成
BR52 85000 MS
BR80 95000 MMA
BR83 40000 MMA
BR85 280000 MMA
BR88 480000 MMA
80N 100000 MMA
略号は以下の通り、
MS:メチルメタクリレート・スチレン共重合体
MMA:メチルメタクリレート
BRシリーズと80Nは、それぞれ、デルペット80N(旭化成ケミカルズ社製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88、BR102(三菱レイヨン社製)である。
[0244][表1]
[0245][表2]・・・略・・・
[0246]〈アクリル粒子(C1)の調製〉
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。APS0.36gを投入し、5分間攪拌後にMMA1657g、BA21.6g、およびALMA1.68gからなる単量体混合物を一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持して最内硬質層の重合を完結させた。
[0247] 次に、APS3.48gを投入し、5分間攪拌後にBA8105g、PEGDA(200)31.9g、およびALMA264.0gからなる単量体混合物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して,軟質層の重合を完結させた。
[0248] 次に、APS1.32gを投入し、5分間攪拌後にMMA2106g、BA201.6gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して最外硬質層1の重合を完結した。
[0249] 次いで、APS1.32gを投入し、5分後にMMA3148g、BA201.6g、およびn-OM10.1gからなる単量体混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。ついで95℃に昇温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させた。
[0250] このようにして得られた重合体ラテックスを少量採取し、吸光度法により平粒子径を求めたところ0.10μmであった。残りのラテックスを3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造のアクリル粒子(C1)を得た。
[0251] 上記の略号は各々下記材料である。
[0252] MMA;メチルメタクリレート
BA;n-ブチルアクリレート
ALMA;アリルメタクリレート
PEGDA;ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200)
n-OM;n-オクチルメルカプタン
APS;過硫酸アンモニウム
〈アクリル樹脂含有フィルム25-1の作製〉
(ドープ液組成)
ダイヤナールBR80(三菱レイヨン(株)製) 66.5質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=100000) 28.5質量部
上記調製したアクリル粒子(C1) 5質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
上記組成物を、加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。
[0253] 以下、アクリル樹脂(A)、セルロースエステル樹脂(B)、アクリル粒子(C)、組成比を表3記載のように変えた以外は、表2に記載のアクリル樹脂含有フィルム25の製造方法と同様にして、アクリル樹脂含有フィルム25-1~25-5までを作製した。具体的なアクリル粒子を含むアクリル樹脂含有フィルムの組成を表3に示す。
[0254] 尚、アクリル樹脂含有フィルム25-1~25-5は、下記紫外線吸収剤をさらに添加して溶解してドープを調製後、フィルムを作製した。
[0255]
チヌビン109(チバ・ジャパン(株)製) 1.5質量部
チヌビン171(チバ・ジャパン(株)製) 0.7質量部
またアクリル樹脂含有フィルム25-4は、アクリル粒子C1の替わりにC2としてメタブレンW-341(三菱レイヨン社製)を、アクリル樹脂含有フィルム25-5は単層構造であるMR-2G(綜研化学社製)をC3として用いた。
[0256] 得られたアクリル樹脂含有フィルム25-1~25-5について、樹脂とアクリル粒子の状態、すなわちフィルムを構成する樹脂に対してアクリル微粒子が不均一な状態で存在するか、連続層に相溶した状態であるか、以下のように確認した。
[0257] 作製したアクリル樹脂含有フィルム25-1に関して、フィルム試料を12g測り取り、再び上記組成のメチクロ/エタノール溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで0.1μmの孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターT010A(ADVANTEC社製)を用いて濾過し、濾過された不溶物を充分に乾燥させてから重さを測ったところ、1.8gであった。
[0258] また、この不溶物を再び溶媒に分散させ、マルバーン(マルバーン社製)を用いて粒度分布を測定したところ、0.10~0.20μm付近に分布が見られた。
[0259] 以上のことから、添加したアクリル粒子(C)の90質量%以上が微粒子として存在していることが分かった。
[0260] 同様に、アクリル樹脂含有フィルム25-2~25-5について同様な測定を行ったところ、同様にアクリル粒子が存在していることを確認した。
[0261][表3]
[0262]《評価方法》
得られたアクリル樹脂含有フィルム1~34、25-1~25-5及び、コニカミノルタタックKC4UY(以後4UYともいう)コニカミノルタオプト(株)製、並びに後述する脂環式オレフィン樹脂フィルム(表4記載のゼオノア)について以下の評価を実施し表4と表5に示す。
[0263]
脂環式オレフィン樹脂(ガラス転移温度136℃)からなる厚み200μmのフィルム(オプテス社製、ゼオノアフィルムZF-14)を、同時二軸延伸機を使用して、オーブン温度(予熱温度、延伸温度、熱固定温度)138℃、フィルムの繰り出し速度1m/分、縦延伸倍率1.45倍、横延伸倍率1.35倍で同時二軸延伸を行い、厚み100μmの脂環式オレフィン樹脂フィルムを得た。フィルムの光学的なリタデーションは、常法に従い測定を行った。リタデーションは、例えば23℃、55%RHの環境下で、590nmの光源を用いて、アッベ屈折率計-4Tでフィルムを構成する材料の平均屈折率を測定し、KOBRA-21ADH(王子計測機器(株))の測定時に、アッベ屈折率計による平均屈折率を入力して、求めることができる。
・・・略・・・
[0270][表4]
[0271][表5]
[0272] 表4及び表5から、本発明に係るアクリル樹脂含有フィルムは、ヘーズ、張力軟化点、延性破壊及びフィルムの透湿度において、何れも優れていることが判る。
[0273]〈偏光板の作製〉
表6、表7に示す各々のフィルム試料を偏光板保護フィルムとした偏光板を以下のようにして作製した。
[0274]
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して乾燥して偏光子を作った。
[0275]
このとき偏光膜作製中の延伸温度湿度の変動は温度が50±0.1℃、湿度が95%±0.5%であった。搬送方向に延伸する前のポリビニルアルコールフィルムの含水率は、120℃で十分に乾燥させて質量差の測定により33%であった。延伸乾燥後の含水率は後述のカールフィッシャー水分計により測定を精密におこなったところ3%であった。
[0276] 次に、この偏光子の片面に偏光板の保護フィルムとして用いる本発明および比較のフィルムを用意して、偏光子と接する面を予め春日電機(株)製コロナ放電処理装置(HFS-202)を用いて、12W・min/m2の条件によって表面処理した後、下記組成のウレタン系接着剤を用いて貼り合わせた。
[0277]<ウレタン系接着剤>
ウレタン樹脂の水性エマルジョン
(大日本インキ化学工業(株)製ハイドランAP-20) 100質量部
多官能グリシジルエーテル
(大日本インキ化学工業(株)製CR-5L) 5質量部
貼り合わせにおいては、ローラーで偏光子と両面に各々1枚ずつの偏光板保護フィルムとの積層物の端から過剰の接着剤及び気泡を取り除き貼り合わせた。ローラーの圧力は20~30N/cm2、スピードは約2m/分で貼合した。次いで、80℃の乾燥機中に前記貼り合わせた試料を7分間乾燥し、これを乾燥工程1として偏光板を作製した。また、80℃の乾燥時間を7分から14分に延長し、それ以外は同様にして、これを乾燥工程2として偏光板を作製した。
[0278] 片側の偏光板保護フィルムをT1側のフィルムと定義する。
[0279] 同時に偏光子のもう一方の面(この面に貼合するフィルムをT2側のフィルムと定義する)に偏光板保護フィルムであるコニカミノルタオプト社製KC4UYをウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ偏光板1を作製した。同様にしてアクリル樹脂含有フィルム2~34、25-1~25-5、4UY、上記で延伸処理したゼオノアフィルムを用いて表6、表7の構成の偏光板A-2~50を作製した。尚、表6、表7において、T1側とT2側のフィルムの欄で数字のみのものは、上述したアクリル樹脂含有フィルムの番号を示す数である。
・・・略・・・
[0281](偏光板の水分率の測定方法)
偏光板は、上記偏光板工程で作製したのち、大きさが15インチ液晶テレビに一致する大きさに断裁し、15インチの液晶テレビに用いる偏光板と同じサイズの厚さ1mmのガラス側に、断裁した偏光板のT-2側が同ガラス側になるようにして20μmのアクリル粘着層を介して貼合し、これを23℃、55%RHで24時間調湿した。その後偏光板の中心部をガラスから剥がし、粘着層がついたままサイズ10mm×30mmに切り出し、カールフィッシャー水分計を用いて、150±1℃の加熱炉に粘着層付き偏光板を入れ、窒素ガス(200ml/分)を滴定セル溶液中にバブリングさせて測定を行い、乾燥工程1による偏光板の水分率下記判定を行った。
[0282] 次に乾燥工程2で作製した偏光板についても同様にして水分率を測定し、乾燥工程2による偏光板の水分率下記判定を行った。評価基準は以下の通り。
○:粘着層のついた偏光板の水分量が3%未満
△:粘着層のついた偏光板の水分量が3%以上~5%未満
×:粘着層のついた偏光板自身の水分量が5%以上。
[0283] また比較試料として、100μmの厚さの市販のゼオノアフィルム(ZF-14)を1枚もちいて、粘着層を介してガラスに貼合し23℃、55%RHで24時間調湿したのちに、偏光板の水分率測定と同様に行ったところ、粘着層20μmを伴うフィルムの水分量は、0.2%であった。一方、23℃、55%RHで24時間調湿したゼオノアフィルムのみを同様に測定したところ水分率は0.0%であったので、本測定では、小数点の1ケタ目の0.2%の変動が粘着層によるものといえるので、上記の偏光板の水分量の変動は、水分量の測定から0.2%を差し引いて、粘着層以外の偏光板自身の変動を表しているとみなして評価した。
[0284](偏光子劣化)
上記方法で作製した偏光板について先ず平行透過率と直交透過率を島津UV2200分光光度計で測定し、下記式にしたがって偏光度を算出した。その後各々の偏光板を60℃、90%の条件下で1000時間の強制劣化後、再度平行透過率と直交透過率を測定し、下記式に従って偏光度を算出した。偏光度変化量を下記式により求めた。
偏光度P=((H0-H90)/(H0+H90))0.5×100
偏光度変化量=P0-P1000
H0:平行透過率
H90:直交透過率
P0:強制劣化前の偏光度
P1000:強制劣化1000時間後の偏光度
可視域の波長を400nm~700nmとして、可視域の偏光度変化量を各偏光板試料について求め、以下の基準で偏光度変化について評価した。
[0285] ここで、偏光子劣化1は、偏光板製造時の乾燥工程1で行った試料の評価結果である。
[0286] 偏光子劣化2は、偏光板製造時の乾燥工程2で行った試料の評価結果である。
○:可視域すべての波長の偏光度変化量が3%未満
△:可視域で偏光度変化量が大きい部分が3%以上、8%未満であり、偏光板としての実用レベルを満たす。
×:可視域の一部またはすべての偏光度変化量が8%以上
△と○は実用上問題のないレベルである。
[0287] 乾燥工程1による偏光板の水分率は、乾燥工程2による偏光板の水分率と同じであるか、あるいは水分率の高い試料である。本工程の実施において、生産ラインの乾燥ゾーンを短くすることで工場設備の投資を抑制するか、または同じ乾燥能力のゾーンを搬送させる速度を高めること、または少ない熱量で乾燥することで省エネルギーに寄与でき、偏光板の生産性が高いことに寄与できる。
[0288] 偏光板の水分率が高いと、配向したポリビニルアルコールとヨウ素間の相互作用が水分の存在によって低下するために、二色比が低下することが考えられ、この挙動が偏光子の劣化試験と関連していると思われる。乾燥工程1よりも乾燥工程2の方が偏光板を製造するときの乾燥時間が長いことから、乾燥が進行していることが推察でき、水分率を低下させているために偏光子劣化試験は偏光子劣化1よりも偏光子劣化2の方がよい。本発明において、アクリル樹脂にセルロース樹脂を相溶化させている意味は、一般的なアクリル樹脂よりも高くかつ適度な透湿度をもたせることが優位な特質にあり、これは偏光板の製造時に乾燥速度を適度に増加させ、生産性の向上に寄与できる点で優れている。同時に本発明の偏光板の用いる光学フィルムは、一般的なセルロース樹脂よりも透湿度が低くかつ適度な透湿度をもつために高い耐久性をもった偏光板が、高い生産性を兼ね備えた点で優れている。
[0289]〈液晶表示装置の作製〉
上記作製した偏光板を2枚使用して、本発明のアクリル樹脂含有フィルムの表示特性評価を行った。
[0290] 横電解モード型液晶表示装置である日立製液晶テレビWoooW32-L7000を用いて、予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれT2側が液晶セルのガラス面側になるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が一致するように観察側とバックライト側に厚さ20μmのアクリル系粘着剤を介して貼合し、液晶表示装置を各々作製した。尚、液晶表示装置の番号は用いた偏光板の番号と一致する。
[0291]《評価方法》
以上のようにして作製した液晶表示装置A-1~50を用いて下記の評価を行った。
[0292](正面コントラスト)
打ち抜く前の偏光板を23℃、55%RHで24時間の環境で静置したフィルムを用いて液晶表示装置を上述のように作製し、ELDIM社製EZ-Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。劣化試験前の偏光板を用いて作製した液晶表示装置におけるコントラストの測定方法は、液晶パネルの白表示と黒表示時のコントラストがパネル面に対する法線方向のランク付けを行った。
[0293] また偏光板は、上記偏光板工程で作製したのち、大きさが15インチ液晶テレビに一致する大きさに断裁し、15インチの液晶テレビに用いる偏光板と同じサイズの厚さ1mmのガラス側に、断裁した偏光板のT-2側が同ガラス側になるようにして20μmのアクリル粘着層を介して貼合し、これを23℃、55%RHで24時間調湿した。
[0294] 同様に上記偏光板と同種の試料を、偏光板劣化試験1に準じて、15インチの液晶テレビに用いる偏光板と同じサイズの厚さ1mmのガラス側に、呉工業CRCシリコンスプレー潤滑・離型剤をスプレーした以外は偏光板劣化試験1と同様に劣化試験を行った。劣化処理後の偏光板を粘着層毎ガラスから剥がし2枚に断裁し、上記日立製液晶テレビに同様に貼合して、正面コントラスト測定をおこない、これを劣化試験後の偏光板を用いたコントラストとしてランク付けを行った。
○:1000以上
△:500以上1000未満
×:500未満
△と○は実用上問題のないレベルである。
[0295](偏光板の光漏れ判定)
劣化試験前の偏光板を用いて作製した上記液晶表示装置を用いて、偏光板の断裁面がみえるように、カバーをはずし暗室下で、黒表示を行った。
○:液晶表示装置の画面は、偏光板を介した正面からどの部分をみても黒表示である
×:液晶表示装置の画面を正面から観察すると、偏光板の断裁面である周辺部分にひび状の光漏れがある。
[0296] 以上の評価の結果を表6、表7に示す。
[0297][表6]・・・略・・・
[0298][表7]
[0299] 表6、表7から、本発明の液晶表示装置は、正面コントラストが高く、劣化試験後の偏光板を備えた液晶表示装置においても正面コントラストが維持されているか、あるいは劣化が小さい点で優れている。更に、本発明の偏光板は、偏光板の断裁面がなめらかでありクラックがないために、液晶表示装置に用いたときに光漏れがない。しかし、比較例の中で断裁性が劣る偏光板をもちいた液晶表示装置は、偏光板の周辺において打ち抜きして断裁した部分から微小にひびがはいった形状で光漏れが観察された。これは光学フィルムが脆く延性破壊を起こしているか、あるいは偏光板として加工したときに断裁性に劣る構成となっていると考えられる。本発明の要件を満たす偏光板を用いると優れた画像が表示できることは明白である。」
ウ 上記ア及びイから、甲1には、実施例の記載のうち、[0273]ないし[0288]に偏光板の作成に関する記載があり、[0289]及び[0290]に2枚の偏光板を使用して作製した液晶表示装置に関する記載があり、[0270][表4]の記載から、アクリル樹脂含有フィルム1の透湿度が316g/m2・24hであり、ゼオノアフィルムの透湿度が1g/m2・24hであることが把握でき、[0298][表7]の記載から、保護フィルムT1としてアクリル樹脂含有フィルム1を用い、保護フィルムT2としてゼオノアフィルムを用いた偏光板A-40が把握できる。
以上からみて、甲1には、偏光板A-40、該偏光板A-40を用いた液晶表示装置A-40、該液晶表示装置A-40の製造方法に関し、次の(ア)ないし(ウ)の発明が記載されているものと認められる。
(ア)「厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して乾燥して偏光子を作り、この偏光子の片面に保護フィルムT1として、膜厚60μmで透湿度が316g/m2・24hであるアクリル樹脂含有フィルム1をウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、同時に偏光子のもう一方の面に保護フィルムT2として、厚み100μmで透湿度が1g/m2・24hであるゼオノアフィルムをウレタン系接着剤を用いて貼り合わせて作成した偏光板A-40であって、
水分量が3%未満である、
偏光板A-40。」(以下「甲1偏光板発明」という。)
(イ)「上記甲1偏光板発明の偏光板A-40をゼオノアフィルム側が液晶セルのガラス面側になるように、観察側とバックライト側に厚さ20μmのアクリル系粘着剤を介して貼合し作製した液晶表示装置A-40。」(以下「甲1表示装置発明」という。)
(ウ)「上記甲1偏光板発明の偏光板A-40をゼオノアフィルム側が液晶セルのガラス面側になるように、観察側とバックライト側に厚さ20μmのアクリル系粘着剤を介して貼合した、
液晶表示装置の製造方法。」(以下「甲1表示装置製造方法発明」という。)
(2)甲2
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲2(「光学用透明樹脂における材料設計と応用技術」)には、その63頁の表9に、「FPD用光学フィルム性能一覧」が記載されており、当該表9には、ゼオノアの比重が1.01であり、光弾性係数が6.5×10-12/Paであることが記載されている。同じく当該表9には、トリアセチルセルロース(TAC)の比重が1.3であることが記載されている。同じく当該表9には、アートンの比重が1.08であり、吸水率が0.4%であり、光弾性係数が4.1×10-12/Paであるることが記載されている。
(3)甲3
上記取消理由通知で引用された甲3(華陽物産株式会社ホームページ、「プラスチック物性一覧表(熱可塑性)」[online]、平成29年7月21日検索、インターネット(URL:http://www.kayo-corp.co.jp/common/pdf/pla_propertylist01.pdf))は、本件特許の出願後に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるが、プラスチックの物性に関する技術常識として、アクリル系樹脂は、その比重が最大で1.20程度であり、吸水率が0.2ないし0.4%であることが示されている。
(4)甲4
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲4(特開2003-29043号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、偏光子の製造方法および当該製造方法により得られた偏光子に関する。また本発明は当該偏光子を用いた偏光板、さらには当該偏光板を用いた液晶表示装置に関する。」
イ 「【0002】
【従来の技術】従来、液晶表示装置等に用いる偏光子としては高い透過率と偏光度を兼ね備えていることから、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムが用いられている。また当該偏光子は、通常、その片面または両面にトリアセチルセルロースフィルムなどの保護フィルムが貼合された偏光板として用いられている。
【0003】近年では、液晶表示装置はその広範な利用に伴い高温条件下等で長期間使用される場合も多くなり、その利用される用途に応じた色相の変化の少ない液晶表示装置が求められている。それに伴い偏光板にも、高温条件下に放置したときや高温恒湿条件下に放置したときの光学特性が劣化しないような耐久性が求められている。
【0004】たとえば、特開昭54-16575号公報、特開昭61-175602号公報、特開2000-35512号公報等では、ヨウ素染色されたポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子に適度な量の亜鉛イオンを含有させることで耐久性を向上できることが示されている。詳しくは、耐久性として特に高温条件下に放置した際に発生する直交ニコルでの赤抜け(長波長光の偏光ぬけ)を防止できることが示されている。これらの公報に記載の偏光子の製造方法では、偏光子に亜鉛イオンを含ませる処理を、ホウ酸、亜鉛イオンおよびヨウ素イオンを同時に含む溶液で処理している。しかし、このような方法で亜鉛イオンを含浸させた場合には、含浸浴から取り出した偏光子の表面に若干の処理液が残り、偏光子を乾燥した際にホウ酸が析出し、保護フイルムを貼り合わせても外観不具合となる問題がある。」
ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヨウ素染色され、かつホウ酸処理され、しかも亜鉛を含有する耐久性のよいポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子を、ホウ酸の析出による不具合を発生させることなく製造する方法を提供することを目的とする。また当該製造方法によって得られた偏光子を提供すること、当該偏光子を用いた偏光板、さらには当該偏光板を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。」
(5)甲5
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲5(特開2009-193047号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法に関する。当該偏光板はこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDP等の画像表示装置を形成しうる。」
イ 「【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。特に、TV等の用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光板においてもまずます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
偏光子としては、例えばポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が高透過率、高偏光度を有することから、最も一般的な偏光子として広く使用されている。一般的に偏光板は、偏光子の両面に透明保護フィルムを、ポリビニルアルコール系の材料を水に溶かしたいわゆる水系接着剤により貼り合わせたものが用いられている(特許文献1,特許文献2)。透明保護フィルムとしては、透湿度の高いトリアセチルセルロース等が用いられる。
【0004】
しかし、前記のように偏光板を製造する際に、ポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤を用いた場合には、偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。偏光板の製造工程で乾燥工程が存在することは、偏光板の生産性を向上させるうえで好ましくない。
【0005】
また水系接着剤(いわゆるウェットラミネーション)を使用する場合には、接着剤との接着性を高めるために、偏光子の水分率も相対的に高くしておかないと(通常偏光子の水分率は30%程度)、水系接着剤による接着性が良好な偏光板を得ることができない。しかし、こうして得られた偏光板は、高温や、高温高湿度化では、寸法変化が大きいことなどの問題がある。一方、前記寸法変化を抑えるには、偏光子の水分率を下げたり、透湿度の低い透明保護フィルムを用いたりすることができる。しかし、こうした偏光子と透明保護フィルムを、水系接着剤を用いて貼り合わせると、乾燥工程における能率が下がったり、偏光特性が下がったり、または外観の不具合が発生し実質上有用な偏光板を得ることができない。
【0006】
また、特にTVで代表されるように、近年、画像表示装置の大画面化が進むにつれ、偏光板の大型化も生産性やコストの面(歩留まり、取り数アップ)から非常に重要になっている。しかし、前述の水系接着剤を用いた偏光板では、バックライトの熱により偏光板が寸法変化を引き起こし、それがムラになって画面全体のうち一部分で黒表示が白く見えるといったいわゆる光抜け(ムラ)が顕著になってくるという問題がある。
【0007】
上記のような理由から、水系接着剤の代わりに、活性エネルギー線硬化型(特に紫外線硬化型)接着剤を使用することが多く提案されている。例えば、接着剤として、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリルオリゴマーに、アクリル又はメタクリル系モノマーを希釈剤とした紫外線硬化型接着剤が提案されている(特許文献3)。しかし、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いてポリビニルアルコール系偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせた偏光板では、加熱条件下において著しい透過率の低下や、赤変現象が見られ、高温下における耐久性を満足できていなかった。・・・略・・・」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板およびその製造方法により前記目的に達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤層を介して透明保護フィルムが設けられている偏光板であって、
偏光子は、二色性物質により染色されており、かつ硫酸イオンを含有する、延伸処理されたポリビニルアルコール系フィルムであり、
接着剤層は、少なくとも1種の硬化性成分を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤により形成されていることを特徴とする偏光板、に関する。」
エ 「【発明の効果】
【0020】
本発明の偏光板では、偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤として、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、無溶剤型の接着剤であるため、水系接着剤のように乾燥工程を施すことなく、偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせを行うことができる。また、活性エネルギー線硬化型接着剤では、活性エネルギー線の照射により、接着剤層を形成させるため、水系接着剤に比べて高速生産が可能である。
【0021】
上記偏光板に用いる活性エネルギー線硬化型接着剤としては、電子線硬化型接着剤が好適である。電子線硬化型接着剤は、紫外線硬化型接着剤に比べて生産性がよく、また、偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせるために用いる接着剤の硬化方法に電子線を用いることによって、紫外線硬化法のような、加熱工程が不要になり、生産性を非常に高くすることができる。また、電子線硬化型接着剤を用いることによって、紫外線硬化型接着剤に比べて、偏光板の耐久性を向上させることができる。
【0022】
一方、上記のように、偏光板の作成に際し、偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤として、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、当該接着剤に活性エネルギー線を照射して当該接着剤を硬化させる際に、偏光子および透明保護フィルムにも活性エネルギー線が照射される。偏光板が高温下での耐久性を満足できないのは、偏光子(ポリビニルアルコール系フィルム)に、活性エネルギー線が照射されると、ポリビニルアルコールは脱水反応によりポリエン化されて、当該ポリエン化配向フィルムが偏光子として用いられる結果ではないかと考えた。そこで、本発明では、偏光子に硫酸イオンを含有させている。本発明では、偏光子(ポリビニルアルコール系フィルム)中に硫酸イオンを含有させることによって、偏光子に活性エネルギー線が照射された場合にも、ポリビニルアルコールのポリエン化を抑えることができ、加熱条件下においても透過率の低下や、赤変現象が抑えられ、高温下での耐久性を満足できたものと考えられる。
【0023】
また、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化性成分として、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、特に、前記N-置換アミド系モノマーは、接着性の点で好ましく、特に、電子線硬化型接着剤として適している。例えば、低水分率の偏光子を用いた場合にも、また、透明保護フィルムとして透湿度の低い材料を用いた場合にも、電子線硬化型接着剤は、これらに対して良好な接着性を示し、その結果、寸法安定性の良好な偏光板が得られる。
【0024】
上記硬化性成分を用いる場合には、寸法変化が小さい偏光板を作製できるため、偏光板の大型化にも容易に対応でき、歩留まり、取り数の観点から生産コストを抑えることができる。また、本発明で得られた偏光板は寸法安定性がよいことから、バックライトの外部熱による画像表示装置のムラの発生を抑えることができる。」
(6)甲6
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲6("Thermal Analysis of Enhanced Poly(vinyl alcohol)-Based Proton-Conducting Membranes Crosslinked with Sulfonation Agents for Direct Methanol Fuel Cells")には、そのE63頁の"Stablility analysis"の12行ないし14行に、「The presence of acidic compounds can promote and accelerate these elimination reactions by protoniating OH groups.」(日本語訳:酸化化合物の存在は、OH基の水素化により、これらの脱離反応を促進・加速させる可能性がある。)と記載されている。
(7)甲7
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲7(「Inside of iPhone ~3DCGでよくわかる!iPhoneの中身とその仕組み~」)には、次の事項が記載されている。
ア 「
」(24頁)
上記の図の下欄には、「カバーガラス、タッチパネル、液晶パネルの各部材間を接着することで、光の反射が起こる界面を6面から2面にすることができる。この図に示した表面反射だけではなく、部材内部での光の損失もあり、特に液晶パネルで光の多くが失われる。バックライトから放射された光のうち、カバーガラスから出ることができるのは10%にも満たない。」と記載されている。
イ 「
」(38頁)
上記の図の下欄には、「2枚の偏光板を貼り、配向膜を形成した2枚のガラス基板の間に液晶層を挟んだのが液晶パネルの基本構造。カラー液晶パネルの場合は上側のガラス基板にR・G・Bのカラーフィルター層を持つ。また、IPS液晶の場合は下側のガラス基板にTFTと電極が形成されている。」と記載されている。
ウ 上記アからみて、液晶パネルの視認側に接着剤を介してタッチパネルを貼り付けていることが看取できる。また、上記イからみて、液晶パネルは、最表裏面に2枚の偏光板を貼り、配向膜を形成した2枚のガラス基板の間に液晶層を挟んだものであることが把握できる。
(8)甲8
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲8(「ポリプロピレンハンドブック」)には、その364頁の「図9.2 配向の様式」に、機械方向の延伸倍率をDRとすると、1軸延伸の場合、その厚みは、1/√(DR)になることが記載されている。
(9)甲9
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲9(特開2008-203400号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルム付偏光板、液晶セルの少なくとも一方の側にその表面保護フィルム付偏光板を有する表面保護フィルム付液晶パネル、および、その表面保護フィルム付偏光板を少なくとも1枚含む、液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。」
イ 「【0089】
〔表面保護フィルム付液晶パネル〕
本発明の表面保護フィルム付液晶パネルは、液晶セルの少なくとも一方の側に本発明の表面保護フィルム付偏光板を有する。すなわち、本発明の表面保護フィルム付偏光板は、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよい。
図2は、本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルム付液晶パネルの概略断面図である。液晶パネル100は、液晶セル10と、液晶セル10の一方の側(図示例では視認側)に配置された粘着剤層35、透明保護層(A)32、偏光子31、透明保護層(B)33、および表面保護フィルム34と、液晶セル10の他方の側に配置された任意の適切な偏光板30’’とを備える。偏光板30’’は本発明の表面保護フィルム付偏光板であっても良い。また、液晶セルと透明保護層(A)32の間や、液晶セルと偏光板30’’の間には、任意の適切な位相差板が配置されていても良い。
液晶セル10の駆動モードとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な駆動モードが採用され得る。
本発明の表面保護フィルム付液晶パネルは、代表的には、表面保護フィルムを有する偏光板を液晶セルに貼り付けて作製するため、液晶セルへの貼り付け時の偏光板のカールが抑制され、精度良く液晶セルの主面に貼り付けることが可能となる。特に、偏光子の両面に配置される透明保護層が互いに異なる種類のものである場合には、表面保護フィルムのない状態の偏光板とした際に大きなカールが生じるおそれがあるため、本発明の表面保護フィルム付偏光板を用いて表面保護フィルム付液晶パネルとすることは高品位の液晶パネル、ひいては高品位の画像表示装置を提供する上で有用である。
本発明の表面保護フィルム付液晶パネルにおいては、当該液晶パネルを作製した後の任意の時点で、表面保護フィルムを剥離して除去することが好ましい。例えば、本発明の表面保護フィルム付液晶パネルを作製後、表面保護フィルムを剥離して除去して液晶パネルとし、その後に画像表示装置を作製しても良いし、あるいは、本発明の表面保護フィルム付液晶パネルを作製後、表面保護フィルムを付したまま画像表示装置を作製し、その後に表面保護フィルムを剥離して除去しても良い。」
ウ 「【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例には限定されない。なお、特に示さない限り、実施例中の部およびパーセント(%)は重量基準である。
・・・略・・・
【0098】
〔製造例1〕:偏光子の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、5重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=1/10)のヨウ素水溶液中で染色した。次いで、3重量%のホウ酸および2重量%ヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬し、さらに4重量%のホウ酸および3重量%のヨウ化カリウムを含む水溶液中で5.5倍まで延伸した後、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に浸漬した。その後、40℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ30μmの偏光子を得た。
・・・略・・・
【0102】
〔実施例1〕
製造例1で得られた偏光子の一方の面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカ製、商品名:KC4UYW、厚み40μm)を、もう一方の面に、特開2006-171464号公報に記載のラクトン環含有アクリル系樹脂フィルム(厚み40μm)を、ラミネートロールを用いて貼り合わせて、積層体(1-1)を得た。このとき、貼り合わせ面に、製造例3で得られた接着剤水溶液(A)を塗工し、貼り合わせ後に乾燥した。
得られた積層体(1-1)のラクトン環含有アクリル系樹脂フィルム面に放電量70w・min/m2にてコロナ処理を施し、製造例2で得られた粘着剤層を積層して、積層体(1-2)を得た。
さらに、上記で得られた積層体(1-2)のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム面に、曲げ弾性率が8000MPaの粘着剤層付ポリエチレンテレフタレート系フィルム(日東電工製、PPF-100T)を積層して、偏光板(1)を得た。
偏光板(1)についての評価結果を表1に示す。」
エ 「【図2】
」
オ 上記アないしエから、甲9には、実施例1として、偏光板(1)の発明を把握することができ、また、甲9の【0089】の記載より、前記偏光板(1)を用いた液晶パネルを用いて作製された画像表示装置の発明及び該画像表示装置の製造方法の発明を把握することができる。そうすると、甲9には、次の(ア)ないし(ウ)の発明が記載されているものと認められる。
(ア)「ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で染色し、次いで延伸して偏光子を得、該偏光子の一方の面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカ製、商品名:KC4UYW、厚み40μm)を、もう一方の面に、ラクトン環含有アクリル系樹脂フィルム(厚み40μm)を、ラミネートロールを用いて貼り合わせて、積層体(1-1)を得、該積層体(1-1)のラクトン環含有アクリル系樹脂フィルム面に放電量70w・min/m2にてコロナ処理を施し、粘着剤層を積層して、積層体(1-2)を得、該積層体(1-2)のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム面に、曲げ弾性率が8000MPaの粘着剤層付ポリエチレンテレフタレート系フィルム(日東電工製、PPF-100T)を積層して、得た、
偏光板(1)。」(以下「甲9偏光板発明」という。)
(イ)「液晶セルの少なくとも一方の側に上記甲9偏光板発明の偏光板(1)を有する液晶パネルを用いて作製された画像表示装置であって、
液晶セル10と、液晶セル10の視認側に、粘着剤層35、透明保護層(A)32、偏光子31、透明保護層(B)33、および表面保護フィルム34の順に積層されるように配置された偏光板(1)と、液晶セル10のバックライト側に配置された任意の適切な偏光板30’’とを備えた液晶パネルを用いて作製された画像表示装置。」(以下「甲9表示装置発明」という。)
(ウ)「液晶セルの少なくとも一方の側に上記甲9偏光板発明の偏光板(1)を有する液晶パネルを用いて作製された画像表示装置であって、
液晶セル10と、液晶セル10の視認側に、粘着剤層35、透明保護層(A)32、偏光子31、透明保護層(B)33、および表面保護フィルム34の順に積層されるように配置された偏光板(1)と、液晶セル10のバックライト側に配置された任意の適切な偏光板30’’とを備えた液晶パネルを用いて作製された画像表示装置の製造方法。」(以下「甲9表示装置製造方法発明」という。)
(9)甲10
本件特許の出願前に頒布された刊行物であり、上記取消理由通知で引用された甲10(特開2011-90336号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に使用される偏光板の製造方法に関する。特に本発明は、高温下ないしは高湿下のような過酷な環境下でも光線透過率、偏光度、画像の色相などの変化が少なく環境耐久性に優れた偏光板の製造方法に関する。」
イ 「【0013】
本発明の、少なくともPVA系偏光子と、それを挟持する2枚の保護フィルムからなる偏光板においては、前記偏光板の水分率が3重量%以下(以下、単に水分率重量%を水分率%として表示する。)であることが必要であり、更により耐久性の良い偏光板とするには、水分率が1%以下であることが好ましい。偏光板の水分率が3%より大きい場合には、高温ないし高湿環境下での透過率変化量、偏光度変化量あるいは色相変化量が大きくなり耐久性の良い偏光板を得ることが出来ない。」
(10)甲12
本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された甲12(国際公開第2009/072357号)には、次の事項が記載されている。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、偏光板、液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。」
イ 「発明の開示
[0005] そこで、本発明は、偏光板からの光漏れをできる限り抑え、わずかな輝度ムラの発生さえも防止された偏光板、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置を提供することを目的とする。
[0006]
前記目的を達成するために、本発明の偏光板は、透明保護フィルム、偏光子および光学補償層が、この順序で積層され、前記透明保護フィルムの透湿度と前記光学補償層の透湿度とが異なる偏光板であって、前記光学補償層が、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む位相差フィルムであり、前記偏光板の水分率が、3%以下であることを特徴とする。」
ウ 「発明を実施するための最良の形態
[0012] 本発明の偏光板において、前記光学補償層のNz係数は、1~2の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1~1.6の範囲であり、さらに好ましくは、1~1.4の範囲である。
[0013] 本発明の偏光板において、前記偏光子と前記光学補償層とが、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤から形成された接着層を介して積層されていることが好ましい。
[0014] 本発明の偏光板において、前記ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤が、さらに、金属化合物コロイドを含み、前記接着層が、前記金属化合物コロイド由来の金属化合物微粒子を含むことが好ましい。
[0015] 本発明の偏光板において、前記透明保護フィルムは、特に限定されないが、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムであってもよい。
・・・略・・・
[0021] 本発明の第2の液晶パネルにおいて、前記第2の光学補償層が、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂を含有する位相差フィルムであることが好ましい。
[0022] 本発明の第2の液晶パネルにおいて、前記第2の光学補償層が、ポリイミド系樹脂を含有する位相差層(B1)、セルロース系樹脂を含有する位相差層(B2)、および前記位相差層(B1)と前記位相差層(B2)との積層体(C)のいずれかであることが好ましい。
[0023] 本発明の第1および第2の液晶パネルにおいて、前記液晶セルが、VAモードであることが好ましい。
[0024] つぎに、本発明の偏光板、液晶パネルおよび液晶表示装置について、例をあげて詳細に説明する。
[0025] 〔A.定義等〕
本発明において、偏光板の水分率(%)は、例えば、加熱処理前後の偏光板の重量を測定することで、下記式(I)により算出できる。例えば、前記偏光板の水分率(%)は、後述の実施例に記載の方法で算出できる。
水分率(%)={(W0-W1)/W0}×100 (I)
W0:加熱処理前の偏光板の重量
W1:加熱処理後の偏光板の重量
・・・略・・・
[0034] 〔B.本発明の偏光板〕
〔B-1.本発明の偏光板の全体構成〕
図1の模式断面図に、本発明の偏光板の構成の一例を示す。同図においては、分かりやすくするために、各構成部材の大きさ、比率等は、実際とは異なっている。図示のとおり、この偏光板10は、透明保護フィルム11、偏光子12、および光学補償層13が、この順序で積層され構成されている。前記透明保護フィルム11の透湿度と前記光学補償層13の透湿度とは、異なる。ここで、前記偏光板10の水分率は、3%以下である。このため、前記偏光板10では、バックライト点灯時の熱による歪みが抑制される。この結果、前記偏光板10では、前記歪みによる輝度ムラの発生が防止される。前記偏光板の水分率は、好ましくは、2.5%以下であり、より好ましくは、2.0%以下である。
[0035] 前記偏光板の各構成部材(光学部材)の間には、任意の接着層(図示せず)や、任意の光学部材(好ましくは、等方性を示すもの)が配置されてもよい。前記「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。前記接着層を形成する材料としては、例えば、従来公知の接着剤、粘着剤、アンカーコート剤等が挙げられる。前記接着層は、接着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
[0036] 本発明の偏光板の全体厚みは、例えば、20~300μmの範囲である。前記範囲の厚みとすることで、より機械的強度に優れた偏光板を得ることができる。
[0037] 〔B-2.透明保護フィルム〕
前記透明保護フィルムは、色付が無いことが好ましい。前記透明保護フィルムの面内位相差値Re[550]は、例えば、0~10nmの範囲であり、好ましくは、0~6nmの範囲であり、さらに好ましくは、0~3nmの範囲である。前記透明保護フィルムの厚み方向の位相差値Rth[550]は、例えば、0~20nmの範囲であり、好ましくは、0~10nmの範囲であり、より好ましくは、0~6nmの範囲であり、さらに好ましくは、0~3nmの範囲である。
[0038] 前記透明保護フィルムの厚みは、例えば、20~200μmの範囲であり、好ましくは、30~100μmの範囲であり、より好ましくは、35~95μmの範囲である。
[0039] 前記透明保護フィルムとしては、例えば、セルロース系フィルムが用いられる。一般的に保護フィルムとして用いられているセルロース系フィルムは、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの場合、厚み40μmにおいて、厚み方向の位相差値(Rth)は、40nm程度であり、大きい。厚み方向の位相差値(Rth)の大きいセルロース系フィルムについては、厚み方向の位相差値(Rth)を小さくするための適当な処理を施すことが好ましい。
・・・略・・・
[0054] 〔B-3.偏光子〕
前記偏光子は、例えば、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を含む高分子フィルムを延伸して得ることができる。前記偏光子のヨウ素含有量は、後述のとおりである。前記偏光子は、さらに、カリウムを含むことが好ましい。前記カリウムの含有量は、例えば、0.2~1.0重量%の範囲であり、好ましくは、0.3~0.9重量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.4~0.8重量%の範囲である。前記偏光子は、さらに、ホウ素を含むことが好ましい。前記ホウ素の含有量は、例えば、0.5~3.0重量%の範囲であり、好ましくは、1.0~2.8重量%の範囲であり、さらに好ましくは、1.5~2.6重量%の範囲である。
・・・略・・・
[0110] 〔C.第1の液晶パネル〕
〔C-1.第1の液晶パネルの全体構成〕
前述のとおり、本発明の第1の液晶パネルは、液晶セルと、偏光板とを含む液晶パネルであって、前記偏光板が、前記本発明の偏光板であり、前記偏光板が、前記光学補償層が前記液晶セル側に位置する状態で、前記液晶セルの少なくとも一方の側に配置されていることを特徴とする。図2の模式断面図に、本発明の第1の液晶パネルの構成の一例を示す。同図において、図1と同一部分には、同一符号を付している。図示のとおり、この第1の液晶パネル30では、前記本発明の偏光板10が、前記光学補償層13が前記液晶セル41側に位置する状態で、前記液晶セル41の視認側(同図において上側)およびバックライト側(同図において下側)の双方に配置されている。なお、この例の第1の液晶パネルでは、前記液晶セルの視認側およびバックライト側の双方に、前記本発明の偏光板が配置されている。ただし、本発明は、これに限定されない。本発明の第1の液晶パネルにおいて、前記本発明の偏光板は、前記液晶セルの視認側およびバックライト側の少なくとも一方の側に配置されていればよい。 」
エ 「[0154] 本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
[0155] 好ましくは、本発明の液晶表示装置の用途は、テレビである。前記テレビの画面サイズは、好ましくは、ワイド17型(373mm×224mm)以上であり、より好ましくは、ワイド23型(499mm×300mm)以上であり、さらに好ましくは、ワイド32型(687mm×412mm)以上である。
実施例
[0156] つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例によってなんら限定ないし制限されない。また、各実施例および各比較例における各種特性および物性の測定および評価は、下記の方法により実施した。
[0157] (偏光板の水分率)
偏光板の水分率は、下記の方法で測定した。
(1)偏光板から、幅方向(TD方向)に等間隔で10cm×10cmのサンプルを5つ切り出した。各サンプルの重量を測定し、初期のサンプル重量(W0)とした。
(2)前記各サンプルを、120℃のオーブン(エスペック(株)製、商品名「クリーンオーブン PVHC-211」)に12時間以上投入することで、加熱処理を行った。その後、前記オーブンから取り出した直後の前記各サンプルの重量を測定し、加熱処理後のサンプル重量(W1)とした。
(3)下記式(II)により前記各サンプルの水分率(%)を算出し、前記5つのサンプルの水分率の平均値を、その偏光板の水分率とした。
水分率(%)={(W0-W1)/W0}×100 (II)
W0:初期のサンプル重量
W1:加熱処理後のサンプル重量
・・・略・・・
[0164] 〔透明保護フィルム〕
[参考例1]
厚み80μmのTACフィルム(富士フイルム(株)製、商品名「80UL」)を準備した。これを、透明保護フィルムとした。
[0165] 〔偏光子〕
[参考例2]
厚み75μmのポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(クラレ(株)製、商品名「VF-PS#7500」)を下記[1]~[5]の条件の5浴に、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、最終的な延伸倍率がフィルム元長に対し、6.2倍になるように延伸した。この延伸フィルムを40℃の空気循環式オーブン内で1分間乾燥させて、偏光子を作製した。
<条件>
[1]膨潤浴:30℃の純水。
[2]染色浴:水100重量部に対し、0.032重量部のヨウ素と、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液。
[3]第1の架橋浴:3重量%のヨウ化カリウムと、3重量%のホウ酸とを含む、40℃の水溶液。
[4]第2の架橋浴:5重量%のヨウ化カリウムと、4重量%のホウ酸とを含む、60℃の水溶液。
[5]水洗浴:3重量%のヨウ化カリウムを含む、25℃の水溶液。
[0166] 〔第1の光学補償層〕
[参考例3]
厚み140μmのノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を、テンター延伸機を用いて、固定端横一軸延伸法(長手方向を固定し、幅方向に延伸する方法)により、155℃の空気循環式恒温オーブン内で2.8倍に延伸して、第1の光学補償層AR1を作製した。この第1の光学補償層AR1の屈折率は、nx>ny>nzの関係を示し、厚み40μm、T[590]=91%、Re[590]=120nm、Rth[590]=160nm、波長590nmにおけるNz係数=1.33、C[590]=4.0×10-12m2/Nであった。
・・・略・・・
[0176]〔液晶セル〕
[参考例7] VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置((株)ソニー製、32インチ液晶テレビ、商品名「BRAVIA」)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板等の光学フィルムを全て取り除いた。この液晶セルのガラス板の表裏を洗浄し、液晶セルを得た。
[0177] [実施例1]
〔第1の偏光板〕
前記参考例2の偏光子の一方の側に、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して、前記参考例3の第1の光学補償層AR1を、前記第1の光学補償層AR1の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とが直交するように、貼着した。つぎに、前記偏光子の他方の側に、前記参考例1の透明保護フィルムを、前記水溶性接着剤を介して、貼着した。このようにして得られた積層体を、60~90℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)で5分間乾燥させた。
[0178] 前記乾燥後、前記積層体を、80℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)内を10分間かけて通過させることにより、加熱処理(アニール処理)を行った。このようにして、第1の偏光板AP1を作製した。
[0179] 〔第2の偏光板〕
前記参考例2の偏光子の両面に、それぞれ、前記参考例1の透明保護フィルムを、ポリビニルアルコール系ポリマーを含有する水溶性接着剤(日本合成化学工業(株)製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を介して、貼着した。このようにして、第2の偏光板AP2を作製した。
[0180] 〔第1の液晶パネルおよび液晶表示装置〕
前記参考例7の液晶セルの視認側に、前記第1の偏光板AP1を、第1の光学補償層AR1側を前記液晶セル側とし、前記第1の偏光板AP1の吸収軸方向が、前記液晶セルの長辺方向と平行となるように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着した。ついで、前記液晶セルのバックライト側に、前記第2の偏光板AP2を、前記第2の偏光板AP2の吸収軸方向が、前記液晶セルの長辺方向と直交となるように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着し、第1の液晶パネルAL1を得た。このとき、前記第1の偏光板AP1の吸収軸と前記第2の偏光板AP2の吸収軸とは直交していた。前記第1の液晶パネルAL1を、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、液晶表示装置AD1を作製した。
[0181] [実施例2]
第1の偏光板の作製において、75℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)内を10分間かけて通過させることにより、加熱処理(アニール処理)を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、第1の偏光板BP1、第1の液晶パネルBL1および液晶表示装置BD1を作製した。
[0182] [実施例3]
第1の偏光板の作製において、75℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)内を8分間かけて通過させることにより、加熱処理(アニール処理)を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、第1の偏光板CP1、第1の液晶パネルCL1および液晶表示装置CD1を作製した。
[0183] [実施例4]
第1の偏光板の作製において、60℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)内を23分間かけて通過させることにより、加熱処理(アニール処理)を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、第1の偏光板DP1、第1の液晶パネルDL1および液晶表示装置DD1を作製した。
[0184] [実施例5]
第1の偏光板の作製において、前記偏光子と前記第1の光学補償層との貼着に、前記参考例6の水溶性接着剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、第1の偏光板EP1、第1の液晶パネルEL1および液晶表示装置ED1を作製した。
[0185] [実施例6]
第1の偏光板の作製において、前記偏光子と前記第1の光学補償層との貼着に、前記参考例6の水溶性接着剤を用いたこと以外は、実施例2と同様の方法で、第1の偏光板FP1、第1の液晶パネルFL1および液晶表示装置FD1を作製した。
[0186] [実施例7]
第1の偏光板の作製において、前記偏光子と前記第1の光学補償層との貼着に、前記参考例6の水溶性接着剤を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で、第1の偏光板GP1、第1の液晶パネルGL1および液晶表示装置GD1を作製した。
[0187] [実施例8]
第1の偏光板の作製において、前記偏光子と前記第1の光学補償層との貼着に、前記参考例6の水溶性接着剤を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で、第1の偏光板HP1、第1の液晶パネルHL1および液晶表示装置HD1を作製した。
・・・略・・・
[0223]このようにして得られた各実施例および各比較例の第1の偏光板、液晶パネルおよび液晶表示装置について、各種特性の測定若しくは評価を行った。なお、偏光板の歪みの測定においては、32インチの1/4の大きさに切断した偏光板を用い、4種類の異なる偏光板の歪みの測定を同時に行った。この結果を、実施例1~16および比較例1、2については下記表1に、実施例17~32および比較例3、4については下記表2に示す。また、実施例1~4および比較例1、2の縦方向(TD方向)の偏光板の歪みの経時変化を、図6のグラフに、横方向(MD方向)の偏光板の歪みの経時変化を、図7のグラフに示す。さらに、実施例17~20および比較例3、4の縦方向(TD方向)の偏光板の歪みの経時変化を、図8のグラフに、横方向(MD方向)の偏光板の歪みの経時変化を、図9のグラフに示す。なお、下記表1および2において、TD歪みは、50±3℃のオーブンに120分投入した後の縦方向(TD方向)の偏光板の歪みであり、MD歪みは、50±3℃のオーブンに120分投入した後の横方向(MD方向)の偏光板の歪みである。
[0224][表1]
・・・略・・・
[0226] 前記表1および2に示すように、水分率が3%以下の実施例1~32の第1の偏光板では、偏光板の歪みが抑制され、それを用いた液晶表示装置の黒輝度比が1.83以下と低く、黒表示時の輝度ムラの発生が防止されていた。一方、水分率が3%以上の比較例1~4の第1の偏光板では、偏光板に歪みが生じ、それを用いた液晶表示装置の黒輝度比も2.01以上と高く、黒表示時に輝度ムラが生じた。また、実施例1~4、9~12、17~20、25~28および比較例1~4のクニックの評価結果がBであったのに対し、偏光子と第1の光学補償層との積層に、金属化合物コロイドを含むポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤を用いた実施例5~8、13~16、21~24および29~32では、クニックの評価結果がAであった。
産業上の利用可能性
[0227] 以上のように、本発明の偏光板は、わずかな輝度ムラの発生さえも防止された偏光板である。本発明の偏光板、それを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置の用途は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等が挙げられ、その用途は限定されず、広い分野に適用可能である。」
オ 「請求の範囲
[1] 透明保護フィルム、偏光子および光学補償層が、この順序で積層され、前記透明保護フィルムの透湿度と前記光学補償層の透湿度とが異なる偏光板であって、前記光学補償層が、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂を含む位相差フィルムであり、前記偏光板の水分率が、3%以下であることを特徴とする偏光板。
[2] 前記光学補償層のNz係数が、1~2の範囲である請求の範囲1記載の偏光板。
[3] 前記偏光子と前記光学補償層とが、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤から形成された接着層を介して積層されている請求の範囲1記載の偏光板。
[4] 前記ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤が、さらに、金属化合物コロイドを含み、前記接着層が、前記金属化合物コロイド由来の金属化合物微粒子を含む請求の範囲3記載の偏光板。
[5] 前記透明保護フィルムが、トリアセチルセルロースフィルムである請求の範囲1記載の偏光板。
[6] 50℃±3℃で120分間加熱処理を施した後のTD方向の歪み(με)が、700以下であり、MD方向の歪み(με)が、600以下である請求の範囲1記載の偏光板。
[7] 液晶セルと、偏光板とを含む液晶パネルであって、前記偏光板が、請求の範囲1記載の偏光板であり、前記偏光板が、前記光学補償層が前記液晶セル側に位置する状態で、前記液晶セルの少なくとも一方の側に配置されていることを特徴とする液晶パネル。
[8] 第1の偏光板、第2の偏光板および液晶セルを有する液晶パネルであって、前記第1の偏光板は、請求の範囲1記載の偏光板であり、前記第1の偏光板において、前記透明保護フィルムが、第1の透明保護フィルムであり、前記偏光子が、第1の偏光子であり、前記光学補償層が、第1の光学補償層であり、前記第2の偏光板は、第2の透明保護フィルム、第2の偏光子および第2の光学補償層が、この順序で積層された偏光板であり、前記第1の偏光板が、前記第1の光学補償層が前記液晶セル側に位置する状態で、前記液晶セルの視認側に配置されており、前記第2の偏光板が、前記第2の光学補償層が前記液晶セル側に位置する状態で、前記液晶セルのバックライト側に配置されていることを特徴とする液晶パネル。
[9] 前記第1の光学補償層の屈折率が、nx>ny≧nzの関係を示し、前記第2の光学補償層の屈折率が、nx=ny>nzの関係を示し、前記第2の偏光板の透過率(T2)が、前記第1の偏光板の透過率(T1)よりも大きい請求の範囲8記載の液晶パネル。
[10] 前記第2の偏光板の透過率(T2)と、前記第1の偏光板の透過率(T1)との差(ΔT=T2-T1)が、0.1~6.0%の範囲である請求の範囲9記載の液晶パネル。
[11] 前記第1の偏光板の透過率(T1)が、38.3~43.3%の範囲である請求の範囲9記載の液晶パネル。
[12] 前記第2の偏光板の透過率(T2)が、41.1~44.3%の範囲である請求の範囲9記載の液晶パネル。
[13] 前記第2の光学補償層が、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂を含有する位相差フィルムである請求の範囲8記載の液晶パネル。
[14] 前記第2の光学補償層が、ポリイミド系樹脂を含有する位相差層(B1)、セルロース系樹脂を含有する位相差層(B2)、および前記位相差層(B1)と前記位相差層(B2)との積層体(C)のいずれかである請求の範囲8記載の液晶パネル。
[15] 前記液晶セルが、VAモードである請求の範囲7記載の液晶パネル。
[16] 前記液晶セルが、VAモードである請求の範囲8記載の液晶パネル。
[17] 偏光板を含む液晶表示装置であって、前記偏光板が、請求の範囲1記載の偏光板である液晶表示装置。
[18] 液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが、請求の範囲7記載の液晶パネルである液晶表示装置。
[19] 液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが、請求の範囲8記載の液晶パネルである液晶表示装置。」
カ 「[図1]
[図2]
」
キ 上記アないしカから、甲12には、[0177]ないし[0178]に記載された実施例1として、第1の偏光板AP1、並びに、前記第1の偏光板AP1を用いた液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法に関し、次の(ア)ないし(ウ)の発明が記載されているものと認められる。
(ア)「ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを、水100重量部に対し、0.032重量部のヨウ素と、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液による染色浴を含むものに、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、延伸することにより、偏光子を作製し、
該偏光子の一方の側に、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する水溶性接着剤を介して、ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を延伸して作製した厚み40μmの光学補償層AR1を、前記光学補償層AR1の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とが直交するように、貼着し、前記偏光子の他方の側に、透明保護フィルムとして厚み80μmのTACフィルムを、前記水溶性接着剤を介して、貼着して得られた積層体を、60~90℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)で5分間乾燥させ、前記乾燥後、前記積層体を、80℃のオーブン(岡崎機械工業(株)製)内を10分間かけて通過させることにより、加熱処理(アニール処理)を行って作製した、
水分率が1.32%である、
第1の偏光板AP1。」(以下「甲12偏光板発明」という。)
(イ)「液晶セルの視認側に、上記甲12偏光板発明の第1の偏光板AP1を、第1の光学補償層AR1側を前記液晶セル側とし、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着し、前記液晶セルのバックライト側に、第2の偏光板AP2を、第2の偏光板AP2の吸収軸方向が、前記液晶セルの長辺方向と直交となるように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着し、第1の液晶パネルAL1を得、前記第1の液晶パネルAL1を、バックライトユニットと結合し、作製した、液晶表示装置AD1。」(以下「甲12表示装置発明」という。)
(ウ)「液晶セルの視認側に、上記甲12偏光板発明の第1の偏光板AP1を、第1の光学補償層AR1側を前記液晶セル側とし、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着し、前記液晶セルのバックライト側に、第2の偏光板AP2を、前記第2の偏光板AP2の吸収軸方向が、前記液晶セルの長辺方向と直交となるように、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して、貼着し、第1の液晶パネルAL1を得、前記第1の液晶パネルAL1を、バックライトユニットと結合し、作製した、液晶表示装置AD1の製造方法。」(以下「甲12表示装置製造方法発明」という。)
5 甲12に記載された発明に基づく進歩性欠如について
(1)対比
ア 本件発明11と甲12偏光板発明とを対比する。
(ア)甲12偏光板発明の「偏光子」及び「第1の偏光板AP1」は、それぞれ本件発明11の「偏光子」及び「偏光板」に相当する。甲12偏光板発明の「ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を延伸して作製した厚み40μmの光学補償層AR1」及び「透明保護フィルムとして厚み80μmのTACフィルム」は、技術常識に照らし、本件発明11の「透明保護フィルム」に相当するといえる。
(イ)甲12偏光板発明は、「偏光子」の一方の側に、「ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を延伸して作製した厚み40μmの光学補償層AR1」を、前記「偏光子」の他方の側に、「厚み80μmのTACフィルム」を貼着しているから、甲12偏光板発明は、本件発明11の「偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており」との構成を備える。
(ウ)甲12偏光板発明の「偏光子」は、「ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを、水100重量部に対し、0.032重量部のヨウ素と、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液フィルムによる染色浴を含むものに、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、延伸することにより」作製されたものであるから、甲12偏光板発明は、本件発明11の「前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり」との構成を備える。
(エ)上記(ア)ないし(ウ)からみて、本件発明11と甲12偏光板発明とは、
「偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており、
前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムである、
偏光板。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点12-1
本件発明11では、「偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であ」るのに対し、
甲12偏光板発明では、偏光板の水分率が1.32%であるものの、単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であるかどうかが明らかでない点。
・相違点12-2
本件発明11では、「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、かつ厚みが70μm以下であ」るのに対し、
甲12偏光板発明では、厚み40μmの光学補償層AR1及び厚み80μmのTACフィルムが偏光子のそれぞれの面に貼り合わされるとともに、両フィルムの飽和吸水量については明らかでない点。
・相違点12-3
本件発明11では、「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルム」であるのに対し、
甲12偏光板発明では、偏光子の他方の側に、TACフィルムを貼着しているが、厚みが80μmであり、透湿度については明らかでない点。
・相違点12-4
本件発明11では、「偏光板の両方の面に粘着剤層を備え」ているのに対し、
甲12偏光板発明では、そのような特定がない点。
・相違点12-5
上記相違点12-4の粘着層について、本件発明11では、「前記粘着剤層は、前記偏光板の一方の面に設けられ、画像表示セルと貼り合わせるための第一粘着剤層、および前記偏光板の他方の面に設けられ、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルと貼り合わせるための第二粘着剤層であり、前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層は、いずれも粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である」、「粘着剤層付き偏光板」であるのに対し、
甲12偏光板発明では、偏光板の両方の面に粘着剤層を備えていない点。
イ 本件発明12と甲12表示装置発明とを対比する。
(ア)甲12表示装置発明の「偏光子」及び「第1の偏光板AP1」は、それぞれ本件発明12の「偏光子」及び「偏光板」に相当する。甲12表示装置発明の「ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を延伸して作製した厚み40μmの光学補償層AR1」及び「透明保護フィルムとして厚み80μmのTACフィルム」は、技術常識に照らし、本件発明12の「透明保護フィルム」に相当するといえる。
(イ)甲12表示装置発明は、「偏光子」の一方の側に、「ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を延伸して作製した厚み40μmの光学補償層AR1」を、前記「偏光子」の他方の側に、「厚み80μmのTACフィルム」を貼着しているから、甲12表示装置発明は、本件発明12の「偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており」との構成を備える。
(ウ)甲12表示装置発明の「偏光子」は、「ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを、水100重量部に対し、0.032重量部のヨウ素と、0.2重量部のヨウ化カリウムとを含む、30℃の水溶液フィルムによる染色浴を含むものに、フィルム長手方向に張力を付与しながら浸漬し、延伸することにより」作製されたものであるから、甲12表示装置発明は、本件発明12の「前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムであり」との構成を備える。
(エ)甲12表示装置発明の「液晶セル」、「第1の液晶パネルAL1」及び「液晶表示装置AD1」は、それぞれ本件発明12の「画像表示セル」、「画像表示パネル」及び「画像表示装置」に相当する。甲12表示装置発明の「液晶表示装置AD1」は、「液晶セル」(画像表示セル)の視認側に、「第1の偏光板AP1」(偏光板)を、第1の光学補償層AR1側を前記「液晶セル」側とし、アクリル系粘着剤(厚み:20μm)を介して貼着して「第1の液晶パネルAL1」を得ているから、甲12表示装置発明と、本件発明12とは、「画像表示セルの視認側表面に偏光板が貼り合せられている画像表示パネルを備え」た「画像表示装置」である点で一致する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)からみて、本件発明12と甲12表示装置発明とは、
「画像表示セルの視認側表面に偏光板が貼り合せられている画像表示パネルを備え、
前記偏光板は、
偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合せられており、
前記偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムである、
画像表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点12-6
本件発明12では、「偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であ」るのに対し、
甲12表示装置発明では、単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下であるかどうかが明らかでない点。
・相違点12-7
本件発明12では、「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの両方は、いずれも飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、かつ厚みが70μm以下であ」るのに対し、
甲12表示装置発明では、厚み40μmの光学補償層AR1及び厚み80μmのTACフィルムが偏光子のそれぞれの面に貼り合わされるとともに、両フィルムの飽和吸水量については明らかでない点。
・相違点12-8
本件発明12では、「前記偏光子に隣接して貼り合せられた透明保護フィルムの少なくとも一方は、透湿度が300g/m2・24h以上であり、かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルム」であるのに対し、
甲12表示装置発明では、偏光子の他方の側に、TACフィルムを貼着しているが、厚みが80μmであり、透湿度については明らかでない点。
・相違点12-9
画像表示セルの視認側表面に貼り合わせられる偏光板が、
本件発明12では、「接着剤層」を介して貼り合わせられるのに対し、
甲12表示装置発明では、「アクリル系粘着剤(厚み:20μm)」を介して貼り合わせられている点。
・相違点12-10
本件発明12では、「前面透明部材」「を備え」、「視認側表面の前記偏光板に、前記前面透明部材が、接着剤層を介して貼り合せられ、前記偏光板と前記前面透明部材との間の空間が前記接着剤層により層間充填されており、前記前面透明部材が、透明樹脂板もしくはガラス板を用いたウインドウ層、またはタッチパネルである」のに対し、
甲12表示装置発明では、この構成を具備しない点。
ウ 本件発明13と甲12表示装置発明とを対比すると、本件発明13と甲12表示装置発明とは、上記相違点12-6ないし12-10に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。
・相違点12-11
本件発明13では、「前記偏光板の画像表示セル側表面に付設される第一接着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である」のに対し、
甲12表示装置発明では、有機酸モノマー含有量が100ppm以下である接着剤層を偏光板の画像表示セル側表面に備えているかどうか明らかでない点。
エ 本件発明14と甲12表示装置発明とを対比すると、本件発明14と甲12表示装置発明とは、上記相違点12-6ないし12-11に加え、以下の点でさらに相違する。
・相違点12-12
本件発明14では、「前記偏光板の視認側表面に付設される第二接着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である」のに対し、
甲12表示装置発明では、有機酸モノマー含有量が100ppm以下である接着剤層を偏光板の視認側表面に備えているかどうか明らかでない点。
オ 本件発明17(請求項12の記載を引用し、請求項13及び請求項14の記載は引用しないもの)と甲12表示装置製造方法発明とを対比すると、上記イと同様であるから、本件発明17と甲12表示装置製造方法発明とは、上記相違点12-6ないし12-10に加え、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
・相違点12-13
本件発明17では、「ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光子の両面のそれぞれに飽和吸水量が2.5g/m2以下かつ厚みが70μm以下である透明保護フィルムを有し前記透明保護フィルムの少なくとも一方は透湿度が300g/m2・24h以上でありかつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルムである偏光板と、画像表示セルとを、第一接着剤層を介して貼り合わせるパネル形成工程」を有するのに対し、
甲12表示装置製造方法発明では、液晶セルの視認側にアクリル系粘着剤を介して貼着された第1の偏光板AP1と、前記液晶セルのバックライト側に第2の偏光板AP2とを備える第1の液晶パネルAL1を用いて液晶表示装置AD1を作製するものであるものの、偏光子の両面に貼り合わされる両透明保護フィルムの飽和吸水量については明らかではなく、両透明保護フィルムの厚さが70μm以下ではなく、各透明保護フィルムの透湿度についても明らかでない点。
・相違点12-14
本件発明17では、「前記偏光板の水分量が6.5g/m2以下となるように、前記画像表示パネルを加熱するエージング工程」を有するのに対し、
甲12表示装置製造方法発明では、そのような工程を有しているか明らかでない点。
・相違点12-15
本件発明17では、「前記偏光板の視認側表面に第二接着剤層を介して前記前面透明部材を貼り合わせる工程」を有するのに対し、
甲12表示装置製造方法発明では、そのような工程を有しているか明らかでない点。
(2)本件発明12についての判断
事案に鑑み、本件発明12から検討する。
ア 上記相違点12-6について検討する。
(ア)甲12偏光板発明の「第1の偏光板AP1」は、「水分率が1.32%未満である」。そこで、甲12表示装置発明の「第1の偏光板AP1」の水分率が1.32%であると仮定して、単位面積当たりの水分量を算出することとする。
ここで、算出の前提となる事項として、まず、アートンの比重が、甲2からみて1.08g/cm3であること、偏光子の比重がPVAの比重とすると1.3g/cm3(例.特開2012-82395号公報の【0035】参照。)であることが挙げられる。それに加えて、甲12表示装置発明のTACの比重は、甲2の記載より1.3g/cm3である。また、甲12表示装置発明における偏光子は、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを6.2倍で搬送方向に一軸延伸しているから、延伸後の膜厚は甲8の記載に基づけば、延伸前膜厚を延伸倍率の平方根で除した値になるので、甲12表示装置発明の偏光子の厚みは、30.1μm(=75(μm)/√(6.2))と想定できる。
(イ)上記(ア)を踏まえて、甲12表示装置発明において、偏光板の単位面積(1m2)当たりの水分量を算出すると、10000cm2(=1m2)×{40μm(アートンの厚み)×1.08(アートンの比重)+30.1μm(偏光子の厚み)×1.3(PVAの比重)+80μm(TACフィルムの厚み)×1.3(TACフィルムの比重)}×1.32%=2.46g/m2となり、「単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下」であることを満たすものであるから、上記相違点12-6は実質的な相違点ではない。
(ウ)上記(ア)における、甲12表示装置発明の「第1の偏光板AP1」の水分率が1.32%であるとの仮定については、甲12には、例えば、請求の範囲[17]の液晶表示装置が偏光板を含み、該偏光板が請求の範囲[1]記載の偏光板であり、請求の範囲[1]記載の偏光板は水分率が3%以下であることが記載されている。当該記載からみて、偏光板を液晶表示装置に組み込む前後に関わらず、該偏光板の水分率が変動しないように取り扱われていることは明らかである。そうしてみると、甲12表示装置発明における偏光板の水分量が、6.5g/m2以下を満たすといえるから、上記(イ)の判断に影響を及ぼさない。
イ 上記相違点12-7及び12-8について検討する。
(ア)甲12表示装置発明のノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルム(JSR(株)製、商品名「ARTON」)を延伸して作製した厚み40μmの光学補償層AR1において、ARTONの比重1.08と吸水率0.4%(アートンの吸水率(甲2))から飽和吸水量を算出すると、0.173g/m2程度(=10000cm2(=1m2)×40μm(アートンの厚み)×1.08(アートンの比重)×0.4%)である。そうしてみると、甲12表示装置発明の高分子フィルムが、延伸されたものであることを考慮しても、「飽和吸水量が2.5g/m2以下」を満たすことは明らかである。
(イ)甲12には、[0038]に「前記透明保護フィルムの厚みは、例えば、20~200μmの範囲であり、好ましくは、30~100μmの範囲であり、より好ましくは、35~95μmの範囲である。」と、[0039]に「一般的に保護フィルムとして用いられているセルロース系フィルムは、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムの場合、厚み40μmにおいて、・・・」と、それぞれ記載されている。当該記載に基づけば、直接的に「厚み40μmのTACフィルム」を使うことが明示されているとはいえないにしても、「厚み40μmのTACフィルム」を使うことの示唆があるとまではいうことができ、しかも、甲12の請求の範囲[5]の記載によれば、トリアセチルセルロースフィルムは、その厚さの限定がなく、任意の厚さでもよいことが理解できる。そして、甲12表示装置発明の液晶セルは、具体的には、32インチ液晶セル(甲12の[0176]参照。)のものであるが、甲12の[0154]、[0227]には、液晶表示装置の用途として、タッチパネルを通常必要とする携帯電話、携帯情報端末(PDA)、カーナビゲーションシステム用モニター等が例示されており、このような用途の場合においては、保護フィルムに薄いことが求められるから、TACフィルムの厚みを40μmにすることに積極的な動機付けがあるといえる。したがって、当業者ならば、甲12表示装置発明において、TACフィルムは80μmの厚みのものに限られず、具体的に厚み40μmのものを用いることも想定できる。
そうすると、甲12表示装置発明において、80μmの厚みのTACフィルムに換えて、厚み40μmのものを用いることは当業者が適宜なし得ることである。そして、40μm厚のTACフィルムは、本件特許の明細書の【0116】の記載のとおり、飽和吸水量が1.8g/m2、透湿度が1122g/m2・24h程度であるといえるから、厚み40μmのTACフィルムを用いた甲12表示装置発明は、上記相違点12-7の「飽和吸水量が2.5g/m2以下であり、かつ厚みが70μm以下」及び上記相違点12-8の「透湿度が300g/m2・24h以上であり、かつ厚みが50μm以下のセルロース系フィルム」を満たすこととなる。
(ウ)以上のとおりであるから、甲12表示装置発明において、上記相違点12-7及び12-8に係る本件発明12の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。
ウ 上記相違点12-9について検討する。
接着剤と粘着剤とは、区別なく用いられることがあり、甲12表示装置発明において、画像表示セルの視認側表面に偏光板を貼り合せるために用いる粘着剤に換えて、接着剤を用いることは当業者が適宜なし得たことである。なお、本件特許の明細書でも、例えば、「【0097】・・・画像表示セル50と偏光板10との貼り合せには、接着剤層31として粘着剤層(粘着シート)が好適に用いられる。」と記載されているように、接着剤と粘着剤とが文言として区別なく用いられている。
エ 上記相違点12-10について検討する。
液晶表示装置に視認側にタッチパネルを備えることは周知(例.甲7)であり、さらに甲7には、液晶パネルに接着剤を介してタッチパネルを貼り付けたことが記載されている。また、甲12には、液晶表示セル視認側の偏光板に接着剤層を設けて、その上面に透明部材を貼り合わせることを排除する記載は見当たらない。また、上記イ(イ)でも述べたとおり、甲12の[0154]、[0227]には、液晶表示装置の用途として、タッチパネルを通常必要とする携帯電話、携帯情報端末(PDA)、カーナビゲーションシステム用モニター等が例示されている。そうしてみると、甲12表示装置発明において、画像表示パネルの視認側の面に、タッチパネルを接着剤を介して貼り合わせることは、当業者が甲7の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。
なお、タッチパネルを接着剤で画像表示パネルに取り付ける際に、偏光板の主面全体を接着剤層で覆わない態様としたり、接着剤層を吸湿性等を有するものとすることにより、アクリル樹脂含有フィルムの機能を損なわないようにすることは可能であるから、画像表示パネルの視認側の面に、タッチパネルを接着剤を介して貼り合わせることに阻害要因はない。
オ 特許権者の主張について
(ア)特許権者は、平成30年4月9日に提出した意見書において、概略、以下のように主張している。
a 甲12表示装置発明に甲7の構成を付加することが当然に容易であるとすることはできない。また、決定の予告における「甲12表示装置発明において、画像表示パネルの視認側のポリエチレンテレフタレート系フィルムを剥離した後の面にタッチパネルを接着剤層を介して貼り合わせることは、当業者が甲7の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。」との記載は、甲12表示装置発明がポリエチレンテレフタレート系フィルムを具備していないことから、不明な記載である。
b 甲12表示装置発明の80μmのTACの厚みを40μmとすることは動機付けや示唆を欠いている。
c 甲12表示装置発明において、偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下を満たすことに異論はないが、表面保護フィルムの剥離後タッチパネルを貼り合わせるまでの間の吸湿により偏光板の水分量が増加し、画像表示装置における偏光板の水分量が、6.5g/m2以下を満たすとはいえない。
(イ)特許権者の上記(ア)の主張について検討する。
a 上記(ア)aについて
上記エで説示したとおり、甲12表示装置発明の用途としては、タッチパネルを通常必要とする携帯電話、携帯情報端末(PDA)、カーナビゲーションシステム用モニター等が想定されるから、甲7の記載事項を甲12表示装置発明に適用することは当業者にとって格別困難なことではない。また、決定の予告において「甲12表示装置発明において、画像表示パネルの視認側のポリエチレンテレフタレート系フィルムを剥離した後の面に・・・」との記載は、甲12表示装置発明がポリエチレンテレフタレート系フィルムを具備していないことが明らかであるから、誤記であることは自明であり、この点は特許権者も意見書において認識しているとおりである。
b 上記(ア)bについて
上記イで説示したとおりであり、甲12には、「厚み40μmのTACフィルム」を使うことの示唆があるということができる。
c 上記(ア)cについて
上記ア(ウ)で述べたとおりであり、甲12表示装置発明における偏光板の水分量が、6.5g/m2以下を満たすといえる。
カ 効果について
本件発明12が奏する効果は、甲12表示装置発明における効果及び各甲号証の記載事項の効果から当業者が予測できた程度のものである。
キ 小括
以上のとおりであるから、本件発明12は、甲12に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(3)本件発明13及び14についての判断
偏光板に関する分野において、粘着剤又は接着剤に含まれる残存の有機酸が水分により移行して、ポリビニルアルコールのポリエン化が生じ、偏光板の単体透過率が低下するとの課題やその解決手段が公知であると認めることができない。また、甲12表示装置発明は、接着剤の組成については特定されておらず、該透明保護フィルムに接する接着剤に酸が存在するか否かも不明である。そうしてみると、前記技術常識及び前記周知の事項を考慮しても、甲12表示装置発明において、粘着剤層の有機酸モノマー含有量を可能な限りゼロに近づけること、すなわち100ppm以下となすことは当業者が容易になし得たことではない。
(4)本件発明17についての判断
ア 上記相違点12-13については、甲12表示装置製造方法発明が、液晶セルの視認側に第1の偏光板AP1をアクリル系粘着剤を介して貼着しているのであり、上記(2)ウのとおり、粘着剤を接着剤に換えることも適宜なし得ることであるから、「偏光板と、画像表示セルとを、第一接着剤層を介して貼り合わせるパネル形成工程」を備えることは明らかである。そして、その余の偏光板自体の特定事項の点については、上記(2)アないしエで示した理由のとおりである。
イ 偏光板を含む表示パネルを組み立てた後に加熱エージング処理を行うことは周知(例.特開2001-33624号公報(【0031】参照。)であり、甲12表示装置製造方法発明において、画像表示パネルを加熱するエージング処理をすることは当業者が適宜なし得たことである。また、画像表示パネルを加熱するエージング処理を行う際に、前記水分量が上昇しないような措置を講ずることは当業者が配慮すべき事項であり、水分量を6.5g/m2以下となるように前記エージング処理を実施することは明らかである。してみると、甲12表示装置製造方法発明において、上記相違点12-14に係る本件発明17の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。
ウ 上記(2)の「エ 上記相違点12-10について検討する。」で示したように、甲12表示装置発明において、画像表示パネルの視認側の面に、タッチパネルを接着剤を介して貼り合わせることは、当業者が甲7の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。そうしてみると、甲12表示装置製造方法発明においても、画像表示パネルの偏光板の視認側表面に、前面透明部材としてのタッチパネルを接着剤を介して貼り合わせる工程を採用し、上記相違点12-15に係る本件発明17の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。
エ 効果について
本件発明17が奏する効果は、甲12表示装置製造方法発明における効果及び各甲号証の記載事項の効果から当業者が予測できた程度のものである。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明17は、甲12に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(5)本件発明11についての判断
本件発明11は、本件発明13及び14と同様に、偏光板において、「粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である」という特定事項を含むから、上記(3)と同様に、甲12表示装置発明において、粘着剤層の有機酸モノマー含有量を可能な限りゼロに近づけること、すなわち100ppm以下となすことは当業者が容易になし得たことではない。
4 甲1に記載された発明に基づく進歩性欠如について
(1)本件発明11について
本件発明11は、偏光板において、「粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である」という特定事項を含み、甲1には、接着剤の組成については特定されておらず、該透明保護フィルムに接する接着剤に酸が存在するか否かも不明であるから、甲1偏光板発明において、粘着剤層の有機酸モノマー含有量を可能な限りゼロに近づけること、すなわち100ppm以下となすことは当業者が容易になし得たことではない。
してみると、本件発明11は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明12についての判断
甲1表示装置発明において、単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下となる蓋然性が高いとはいえず、また、甲1には、水分量をさらに低減することについての記載や示唆があるとはいえないから、本件発明12は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件発明13、14及び17についての判断
上記(2)のとおり、本件発明12が、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明12の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明13、14及び17も同様に、甲1に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
5 甲9に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如について
(1)本件発明11についての判断
本件発明11は、偏光板において、「粘着剤層中の有機酸モノマー含有量が、100ppm以下である」という特定事項を含み、甲9には、接着剤の組成については特定されておらず、該透明保護フィルムに接する接着剤に酸が存在するか否かも不明であるから、上記3(3)と同様に、甲9偏光板発明において、粘着剤層の有機酸モノマー含有量を可能な限りゼロに近づけること、すなわち100ppm以下となすことは当業者が容易になし得たことではない。
してみると、本件発明11は、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明12についての判断
甲9には、偏光板のトリアセチルセルロースフィルムの耐湿熱性に関する記載があるものの、偏光板自体の水分量に関しては記載も示唆もなく、該水分量と耐湿熱性との関連についての記載も示唆もない。
そうすると、甲9表示装置発明における「積層体1-2」を放置したとしても、偏光板内の水分量が不明なのであるから、水分がトリアセチルセルロースフィルムから外部へ拡散しても、水分量が6.5g/m2以下となることは導き出せない。
してみると、本件発明12は、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件発明13、14及び17についての判断
上記(2)のとおり、本件発明12が、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明12の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明13、14及び17も同様に、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
ア 上記第4の1(1)アについて
(ア)本件訂正後の明細書(以下「本件明細書」という。)には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
・・・略・・・
【0010】
これらの検討結果から、高温環境における偏光板の透過率の著しい低下は、偏光板の一方の面が画像表示セルと貼り合せられ、他方の面がタッチパネルや前面透明板等の透明部材と貼り合せられている層間充填構成を採用する画像表示装置が高温環境に暴露された場合に特有の問題であるといえる。
【0011】
本発明は、このような新たな課題に鑑み、層間充填構成の画像表示装置に用いられた場合においても、高温環境下での透過率の低下が小さく、耐久性に優れる偏光板およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記に鑑みて本発明者らがさらに検討したところ、加熱試験後に透過率が著しく低下した偏光板は、1100cm-1付近(=C-C=結合に由来)および1500cm-1付近(-C=C-結合に由来)にラマン散乱ピークを有しており、ポリエン構造-(C=C)n-が形成されていると考えられた。ラマン散乱により検出されたポリエンは、偏光子を構成するポリビニルアルコールが脱水によりポリエン化されて生じたものであると推定された。
【0013】
上記推定に基づいて本発明者らが検討の結果、偏光子と貼り合わせられる透明保護フィルムとして飽和吸水量が所定範囲のものが用いられ、かつ偏光板の水分量が小さい場合は、層間充填構成の画像表示装置においても、高温環境下での偏光板の透過率の低下が抑制されることを見出し、本発明にいたった。」
(イ)上記(ア)からみて、本件明細書には、偏光板は、その水分量が小さい場合、高温環境下でのポリビニルアルコールのポリエン化が抑制され、透過率の低下が抑制でき、「層間充填構成の画像表示装置に用いられた場合」においても、同様に透過率の低下が抑制できることが記載されていると認められる。そうすると、本件発明に「層間充填構成の画像表示装置」であることの特定がないとしても、それをもって、サポート要件を満たさないということはできない。
イ 上記第4の1(1)イについて
保護フィルムがあれば、その厚みに応じた程度だけ偏光子のポリエン化を防止できることは明らかであるとともに、本件特許明細書の特に【0068】の記載より、偏光板の透明保護フィルムの厚みを小さくすることにより高温環境下での透過率の低下を抑制できるものであり、透明保護フィルムの厚みの上限が特定されている本件発明により、課題を解決できることは明らかである。そうすると、本件発明がサポート要件を満たさないということはできない。
ウ 上記第4の1(1)ウについて
本件発明において、「偏光板の単位面積当たりの水分量が6.5g/m2以下」であることが特定されており、偏光板の水分量は、実用上の環境下で一義的に特定できるものであり、不明瞭な記載であるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明12及び17は、甲12に記載された発明及び各甲号証の記載事項に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明12及び17の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明12及び17の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項11、13及び14に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に請求項11、13及び14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらにまた、本件特許の請求項1ないし10、15及び16に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1ないし10、15及び16に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700760