特許異議申立
2017-700734
保護フィルム付き接着シート
- 審判番号
- 2017-700734
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-107658外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月26日
- 審決日
- 2019年01月22日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人酒井国際特許事務所
- 【権利者代理人】酒井 宏明
- 【権利者代理人】香島 拓也
- 【異議申立人】松井 佳章
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項2号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6075406号発明「保護フィルム付き接着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6075406号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2,4~12〕について訂正することを認める。
特許第6075406号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6075406号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成27年5月27日(優先権主張 平成26年6月18日)に出願した特願2015-107658号であって、平成29年1月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年7月26日に特許異議申立人 松井 佳章(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年10月17日付けで取消理由が通知され、同年12月20日に特許権者 味の素株式会社より訂正請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされるとともに意見書が提出され、平成30年1月11日付けで訂正請求があった旨の通知がされ、同年2月14日に特許異議申立人より意見書が提出され、同年4月27日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年6月6日に特許権者より意見書が提出され、同年8月3日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年10月5日に特許権者より意見書の提出があり、これに対し、同年11月29日付けで異議申立人より上申書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
本件訂正の請求は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2,4~12について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」とあるのを、それぞれ、「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項5~12についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」とあるのを、それぞれ、「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5~12についても、請求項4を訂正したことに伴う訂正をする。
そして、上記訂正事項1に係る訂正前の請求項5~10はそれぞれ請求項2を直接引用し、請求項11及び12は請求項2を間接的に引用しているものであるから、上記訂正事項1に係る訂正後の請求項2,5~12は、一群の請求項を構成するものである。
また、上記訂正事項2に係る訂正前の請求項5~10はそれぞれ請求項4を直接引用し、請求項11及び12は請求項4を間接的に引用しているものであるから、上記訂正事項2に係る訂正後の請求項4,5~12は、一群の請求項を構成するものである。
2 訂正事項の訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2に「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」とあるのを、それぞれ、「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」に訂正し、訂正前の請求項2に記載された「VSIコンタクトモード」について、非接触型表面粗さ計に一般に備えられている「VSIモード」へと改めて技術的に明瞭な記載とするものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0020】には、「保護フィルムの第1及び第2の表面の算術平均粗さは、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。」と記載されており、ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」などの非接触型表面粗さ計には、測定モードとして「VSIモード」が備えられていることを鑑みれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、訂正前の請求項2に記載された「VSIコンタクトモード」について、非接触型表面粗さ計に一般に備えられている「VSIモード」へと改めて技術的に明瞭な記載とするものであることから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」とあるのを、それぞれ、「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)」及び「非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)」に訂正するものであるから、技術的に明瞭な記載とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書の【0020】には、「保護フィルムの第1及び第2の表面の算術平均粗さは、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。」と記載されており、ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」などの非接触型表面粗さ計には、測定モードとして「VSIモード」が備えられていることを鑑みれば、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、訂正前の請求項4に記載された「VSIコンタクトモード」について、非接触型表面粗さ計に一般に備えられている「VSIモード」へと改めて技術的に明瞭な記載とするものであることから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
3 小括
上記「2」、「3」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔2,4~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし12に係る発明(以下、各請求項に係る発明を項番に対応して「本件発明1」などといい、併せて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上であり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が120nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面に非シリコーン離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、保護フィルム付き接着シート。
【請求項2】
第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、
非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上であり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が120nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面に非シリコーン離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、保護フィルム付き接着シート。
【請求項3】
第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上であり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が120nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む、プリント配線板の絶縁層用保護フィルム付き接着シート。
【請求項4】
第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が100nm以上であり、
非接触型表面粗さ計を用いてVSIモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上であり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が120nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む、プリント配線板の絶縁層用保護フィルム付き接着シート。
【請求項5】
樹脂組成物層中の無機充填材の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項6】
保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が250nm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項7】
保護フィルムの厚さが、10~30μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項8】
支持体の厚さが、10~50μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項9】
樹脂組成物層の厚さが、1~25μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シートがロール状に巻き取られたロール状保護フィルム付き接着シート。
【請求項11】
(I)請求項10に記載のロール状保護フィルム付き接着シートを用いて、カットされた接着シートが内層基板の表面に設けられた積層体を形成する工程、
(II)積層体を加熱及び加圧し、内層基板に接着シートをラミネート処理する工程、及び
(III)接着シートの樹脂組成物層を熱硬化し、絶縁層を形成する工程
を含む、プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
工程(I)が、
(a-1)請求項10に記載のロール状保護フィルム付き接着シートから保護フィルム付き接着シートを搬送しながら、保護フィルムを剥離すること、
(a-2)樹脂組成物層が露出した接着シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように配置すること、
(a-3)接着シートの一部を支持体側から加熱及び加圧することで部分的に接着シートを内層基板に接着すること、及び
(a-4)接着シートを内層基板のサイズに応じてカッターでカットすることにより、カットされた接着シートを内層基板の表面に設けること
を含む、請求項11に記載の方法。」
第4 平成30年8月3日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
標記取消理由の概要は、以下のとおりである。
すなわち、本件特許の請求項1~12に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載の発明及び甲第2~4,6,7号証に記載の技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2014-024961号公報
甲第2号証:特開2013-026456号公報
甲第3号証:特開2006-312263号公報
甲第4号証:特開2002-252458号公報
甲第5号証:王子アルファンホームページカタログ
http://www.ojif-tex.co.jp/alphan/pdf/pro/function_film.pdf
甲第6号証:特開平11-092720号公報
甲第7号証:特開2009-202422号公報
甲第7-1号証:土木学会論文集 A1(構造・地震工学)、Vol.67、No.2、PP.446-453、2011
(甲第1~7号証及び甲第7-1号証は、平成29年7月26日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に添付されたものである。)
なお、上記取消理由は、申立理由のうち、甲第1号証を主引例とする訂正前の請求項1ないし12に対する進歩性欠如に関する理由と同趣旨である。
第5 取消理由に関する当審の判断
1 甲各号証に記載の事項(以下、甲第1号証を「甲1」などという。)
(1)甲1(特開2014-024961号公報)
甲1には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与したものであり、以下、同様である。
(1-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体及び該支持体と接合している樹脂組成物層からなる接着シートと、該接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
樹脂組成物層が無機充填材及び熱硬化性樹脂を含み、
樹脂組成物層中の無機充填材の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、60質量%以上であり、
樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)と、樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)とが、SA-SB≧0.0020[kgf/cm]を満たす、保護フィルム付き接着シート。
【請求項2】
SBが0.0080kgf/cm以下である、請求項1に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項3】
[(樹脂組成物層の最低溶融粘度温度)-10℃]以下の温度条件下で、樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設けて得られる、請求項1又は2に記載の保護フィルム付き接着シート。
【請求項4】
支持体及び保護フィルムのそれぞれの厚みが5μm~75μmであり、保護フィルムが支持体よりも薄い、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
・・・
【請求項6】
支持体が、樹脂組成物層と接合している側の表面に離型層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。
・・・
【請求項9】
プリント配線板のビルドアップ層用保護フィルム付き接着シートである、請求項1~8のいずれか1項に記載の保護フィルム付き接着シート。」
(1-2)「【0037】
一実施形態において、本発明の保護フィルム付き接着シートに含まれる樹脂組成物層は、上述の無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤を含む。樹脂組成物層に対する支持体及び保護フィルムの剥離強度(SA及びSB)が所望の範囲にある保護フィルム付き接着シートを製造する観点から、樹脂組成物層は、無機充填材としてシリカを、エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は1:0.1~1:5、好ましくは1:0.5~1:4)を、硬化剤として含窒素フェノール系硬化剤(好ましくはトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤)及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上を、それぞれ含むことが好ましい。斯かる特定の成分を組み合わせて含む樹脂組成物層に関しても、無機充填材、エポキシ樹脂、及び硬化剤の好適な含有量は上述のとおりであるが、中でも、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、無機充填材の含有量が60質量%~95質量%、エポキシ樹脂の含有量が3質量%~30質量%であることが好ましく、無機充填材の含有量が60質量%~90質量%、エポキシ樹脂の含有量が5質量%~25質量%であることがより好ましい。硬化剤の含有量については、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、硬化剤の反応基の合計数との比が、1:0.2~1:2になるように含有させることが好ましく、1:0.5~1:1.5になるように含有させることがより好ましい。
・・・
【0057】
離型層付き支持体を用いる場合、オートカッター装置において、保護フィルム付き接着シートを搬送する過程で、支持体と樹脂組成物層との間に剥離(浮き)が起こり易くなる。剥離が発生した場合、オートカッター装置における保護フィルム剥離時に樹脂剥がれの問題が発生し易くなるなどの不具合を生じる。このような支持体と樹脂組成物層との間の剥離を抑制するためには、保護フィルム付き接着シートにおける樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)は、好ましくは0.0055kgf/cm以上、より好ましくは0.0060kgf/cm以上、さらに好ましくは0.0065kgf/cm以上、特に好ましくは0.0070kgf/cm以上、0.0080kgf/cm以上、0.0090kgf/cm以上、0.0100kgf/cm以上、0.0110kgf/cm以上、0.0120kgf/cm以上、0.0130kgf/cm以上、又は0.0140kgf/cm以上である。かかる剥離強度の上限は特に設定されず、接着シートを回路基板にラミネート処理した後に支持体が剥離可能であればよく、一般的には0.2kgf/cm以下の範囲に収まることとなる。なお本発明において、樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)とは、支持体を樹脂組成物層に対して垂直方向(90度方向)に引き剥がしたときの剥離強度(90度ピール強度)をいう。樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)は、支持体を樹脂組成物層に対して垂直方向(90度方向)に引き剥がしたときの剥離強度を引っ張り試験機で測定することにより求めることができる。引っ張り試験機としては、例えば(株)TSE製のAC-50C-SL等が挙げられる。本発明におけるSAの値は、実施例記載の方法に従って測定した値である。
【0058】
離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、接着シートを回路基板にラミネート処理した後に支持体を剥離可能にし、かつ、保護フィルム付き接着シートにおける樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)が上記好ましいとなるようなものであれば特に限定はされない。好適な離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。なお、離型層に汎用されるシリコーン系離型剤は、一般に離型性に優れており、これを主成分とする離型層を使用した場合、保護フィルム付き接着シートにおける樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)を上記好ましい範囲とするのが困難な場合がある。ただし、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体やアルキド樹脂等を配合することにより、シリコーン系離型剤の離型性を調整することができるため、かかる離型性の調整によって、支持体の剥離強度(SA)を上記好ましい範囲とし得る離型層を調製してもよい。
なお、離型層付き支持体における離型層の厚みは、通常、0.01μm~1μm程度であり、好ましくは0.01μm~0.2μmである。
・・・
【0060】
上記剥離強度(SA)は支持体の厚みが大きいほど増大する傾向にある。しかしながら、支持体の厚みが大きすぎると、オートカッター装置においてバキューム吸着による搬送が困難となるなど、連続生産が困難となる傾向にある。また、支持体の厚みが小さすぎると、剥離強度が小さくなりすぎる傾向にあり、また回路基板の表面に仮付けされた接着シートがロール状に巻かれる(カールする)現象が起こるなど、連続生産が困難となる傾向にある。従って、本発明において、支持体の厚みは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましく、20μm~50μmの範囲がさらに好ましく、20μm~45μmの範囲がさらにより好ましく、23μm~40μmの範囲が特に好ましい。なお、本発明における支持体の厚みは、支持体が離型層付き支持体である場合、離型層付き支持体全体の厚みである。
・・・
【0064】
本発明の保護フィルム付き接着シートにおいて、オートカッター装置における保護フィルム剥離時の樹脂剥がれを防止する観点から、樹脂組成物に対する支持体の剥離強度(SA)と、樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)とは、SA-SB≧0.0020[kgf/cm]を満たすことが重要である。オートカッター装置における保護フィルム付き接着シートの搬送速度が高い条件下においても樹脂剥がれの問題を防止する観点から、樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)と、樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)とは、SA-SB≧0.0022[kgf/cm]を満たすことがより好ましく、SA-SB≧0.0025[kgf/cm]、SA-SB≧0.0030[kgf/cm]、SA-SB≧0.0035[kgf/cm]、SA-SB≧0.0040[kgf/cm]、SA-SB≧0.0045[kgf/cm]、SA-SB≧0.0050[kgf/cm]、SA-SB≧0.0055[kgf/cm]、又はSA-SB≧0.0060[kgf/cm]を満たすことがさらに好ましい。かかるSA-SBの上限は特に設定されないが、一般的にはSA-SB≦0.20[kgf/cm]、SA-SB≦0.020[kgf/cm]などの範囲に収まることとなる。
【0065】
本発明の保護フィルム付き接着シートにおいて、支持体及び保護フィルムのそれぞれの厚みは、上記のとおり5μm~75μmの範囲であることが好ましい。樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)と樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)との差(SA-SB)を特定範囲とする観点から、保護フィルムは支持体よりも薄いことが好ましい。支持体の厚みをDAとし、保護フィルムの厚みをDBとするとき、DB/DAの比は、1未満が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましく、0.7以下が特に好ましい。
【0066】
本発明の保護フィルム付き接着シートは、例えば、下記工程(1)及び(2)を含む製造方法により製造することができる。
(1)支持体と接合するように樹脂組成物層を設けて接着シートを形成する工程、
(2)上記(1)で得た接着シートの樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設ける工程
・・・
【0069】
樹脂ワニスの乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。樹脂組成物層中に溶剤が多く残留すると、硬化後に膨れが発生する原因となるため、樹脂組成物中の残留溶剤量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。
樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)と樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)との差(SA-SB)を特定範囲とする観点から、樹脂組成物中の残留溶剤量が、より好ましくは0.2質量%~5質量%の範囲、さらに好ましくは0.5質量%~4.5質量%の範囲、特に好ましくは1.6質量%~4.0質量%の範囲となるように乾燥させる。
・・・
【0073】
樹脂組成物層に対する支持体及び保護フィルムの剥離強度(SA及びSB)が所望の範囲にある保護フィルム付き接着シートが得られ易い観点から、工程(2)においては、ロールやプレス圧着等で保護フィルムを接着シートの樹脂組成物層にラミネート処理することが好ましい。
【0074】
工程(2)におけるラミネート処理において、圧着圧力は、通常0.02kgf/cm2~11kgf/cm2(0.196×104N/m2~107.9×104N/m2)の範囲であり、好ましくは0.03kgf/cm2~5kgf/cm2(0.294×104N/m2~78.4×104N/m2)の範囲、より好ましくは0.04kgf/cm2~2kgf/cm2(0.392×104N/m2~49×104N/m2)の範囲である。
【0075】
樹脂組成物層に対する支持体及び保護フィルムの剥離強度(SA及びSB)が所望の範囲にある保護フィルム付き接着シートを製造するにあたり、[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-10℃]以下の温度条件にて工程(2)を実施することが好ましい。支持体や保護フィルムと樹脂組成物層との十分な密着性を得ると共に、オートカッター装置における保護フィルム剥離時の樹脂剥がれを防止する観点から、工程(2)は、[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-20℃]以下の温度条件にて実施することがより好ましく、[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-80℃]~[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-30℃]の範囲の温度条件にて実施することがさらに好ましく、[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-55℃]~[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-30℃]の範囲の温度条件にて実施することが特に好ましい。
【0076】
樹脂組成物層の組成にもよるが、樹脂組成物層に対する支持体及び保護フィルムの剥離強度(SA及びSB)が所望の範囲にある保護フィルム付き接着シートを製造する観点から、
工程(1)において、樹脂組成物中の残留溶剤量が0.2質量%~5質量%の範囲及び樹脂組成物層の最低溶融粘度温度が60℃~170℃の範囲となるように樹脂ワニスを乾燥して樹脂組成物層を形成し、かつ、工程(2)において、[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-80℃]~[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-10℃]の範囲の温度にて、圧着圧力0.02kgf/cm2~11kgf/cm2(0.196×104N/m2~107.9×104N/m2)の範囲の条件で、樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設けることが好ましく、
工程(1)において、樹脂組成物中の残留溶剤量が0.5質量%~4.5質量%の範囲及び樹脂組成物層の最低溶融粘度温度が70℃~160℃の範囲となるように樹脂ワニスを乾燥して樹脂組成物層を形成し、かつ、工程(2)において、[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-55℃]~[樹脂組成物層の最低溶融粘度温度-20℃]の範囲の温度にて、圧着圧力0.04kgf/cm2~2kgf/cm2(0.392×104N/m2~49×104N/m2)の範囲の条件で、樹脂組成物層と接合するように保護フィルムを設けることがより好ましい。」
(1-3)「【0080】
[カットされた接着シートが回路基板の表面に設けられた積層体の製造方法]
本発明のロール状保護フィルム付き接着シートを用いて、カットされた接着シートが回路基板の表面に設けられた積層体(以下、単に「積層体」ともいう。)を連続的に製造することができる。
【0081】
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、下記工程(a-1)乃至(a-4)を含む。
(a-1)本発明のロール状保護フィルム付き接着シートから保護フィルム付き接着シートを搬送しながら、保護フィルムを剥離する工程、
(a-2)樹脂組成物層が露出した接着シートを、樹脂組成物層が回路基板と接合するように配置する工程、
(a-3)接着シートの一部を支持体側から加熱及び加圧することで部分的に接着シートを回路基板に接着する工程、及び
(a-4)接着シートを回路基板のサイズに応じてカッターでカットすることにより、カットされた接着シートを回路基板の表面に設ける工程
・・・
【0100】
[プリント配線板の製造方法]
上記で得られた、カットされた接着シートが回路基板の表面に設けられた積層体を用いて、プリント配線板を製造することができる。
【0101】
本発明のプリント配線板の製造方法は、下記工程(b-1)及び(b-2)を含む。
(b-1)本発明の方法で製造された積層体を加熱及び加圧し、回路基板に接着シートをラミネート処理する工程、及び
(b-2)樹脂組成物層を熱硬化し、絶縁層を形成する工程」
(1-4)「【0118】
<実施例1>
下記の方法に従ってロール状保護フィルム付き接着シートを製造した。
【0119】
(樹脂ワニスの調製)
ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「EXA4032SS」)6質量部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱化学(株)製「YX4000HK」)12質量部、及びビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量約290、日本化薬(株)製「NC3000H」)9質量部を、メチルエチルケトン(MEK)4質量部及びソルベントナフサ25質量部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル硬化剤(活性基当量約223、DIC(株)製「EXB-9460S-65T」、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)45質量部、フェノキシ樹脂(重量平均分子量35000、三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEK溶液)5質量部、硬化促進剤として4-ジメチルアミノピリジンの5質量%のMEK溶液5質量部、及びフェニルアミノシラン(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理した球形シリカ((株)アドマテックス製「SC2500SQ」、平均粒子径0.5μm、単位面積当たりのカーボン量0.39mg/m2)160質量部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
【0120】
(接着シートの調製)
支持体としてアルキド樹脂系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、リンテック(株)製、「AL5」)を用意した。上記で得た樹脂ワニスを、該支持体の離型層側表面に、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃~105℃(平均90℃)で4.5分間乾燥させて樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層は、厚み30μm、残留溶剤量2.5質量%、最低溶融粘度温度115℃であった。
【0121】
(ロール状保護フィルム付き接着シートの製造)
上記で得た接着シートの樹脂組成物層側表面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製、「アルファンMA-411」の平滑面側、厚み15μm)を、常圧下、60℃、圧着圧力0.06kgf/cm2にてラミネート処理し、保護フィルム付き接着シートを製造した。得られた保護フィルム付き接着シートをロール状に巻き取った(巻き取り長50m)。得られたロール状体を幅507mmにスリットして、ロール状保護フィルム付き接着シートを2本得た。」
(2)甲2(特開2013-026456号公報)
甲2には、次の記載がある。
(2-1)「【0017】
本発明の一態様においては、接着防止フィルムの、絶縁層と接触する側の主面の表面粗さRaを0.2μm以上とすることができる。接着防止フィルムは、多層配線基板などのような素子の構成要素ではないので、上述のようにして平坦化プレスを実施した後は、絶縁層から剥離することになるが、上述のような表面粗さRaで規定されるように、絶縁層と接触する側の主面を粗しておくことにより、接着防止フィルムの、絶縁層からの剥離を容易に行うことができる。」
(2-2)「【0043】
また、キャリアフィルム16の、絶縁層14と接触する側の面の表面粗さRaを0.2μm以上とすることができる。このように絶縁層14と接触する側の面を上記の程度で粗しておくことにより、キャリアフィルム16の、絶縁層14からの剥離を容易に行うことができ、接着防止フィルムとしての機能をより向上させることができる。なお、表面粗さRaの上限は0.3um程度であることが好ましい。これよりも大きいと、絶縁層14と接触した際にその表面を粗してしまい、平坦化プレスによる絶縁層14の平坦化の効果が低減してしまう。」
(3)甲3(特開2006-312263号公報)
甲3には、次の記載がある。
(3-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上からなる積層フィルムであって、少なくとも一方の最表面を構成する層が、平均粒径3~10μmの無機粒子または有機粒子を3~30重量%含有し、その表面粗度Ra(算術平均粗さ)が0.30~1.00μmであることを特徴とする積層マット調ポリエステルフィルム。」
(3-2)「【0017】
本発明の積層マット調ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.30~1.00μmであることが必要であり、好ましくは0.40~0.90μm、さらに好ましくは0.50~0.80μmの範囲である。Raが0.30μm未満では、目的とする剥離性が得られない傾向にある。一方、Raが1.00μmを超える場合には、フィルム表面の凹凸が大きくなり過ぎる傾向にあり、熱プレス時に粒子が脱落して熱板に付着する等の問題が生じることがある。」
(4)甲4(特開2002-252458号公報)
甲4には、次の記載がある。
(4-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.1~1.0μmであって、180℃、3分におけるフィルム長手方向および幅方向の熱収縮率が3%以下であることを特徴とする多層プリント配線板製造用ポリエステルフィルム。」
(4-2)「【0011】不活性粒子をフィルムに配合する場合、その含有量は、ポリエステルフィルムの全配合中の比として、通常0.2~5重量%、好ましくは0.5~4重量%、さらに好ましくは1~3.5重量%である。不活性粒子の含有量が0.2重量%未満の場合は、フィルム表面に十分な凹凸が形成されず、所望の光沢度、すなわち剥離性が得られない傾向にある。一方、含有量が5重量%を超える場合には、フィルム表面の凹凸が大きくなり過ぎる傾向にある。本発明のポリエステルフィルムの固有粘度(dl/g)は、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。極限粘度が0.5未満の場合、十分な機械的強度を有するフィルムが得られず好ましくない。本発明のポリエステルフィルム表面の中心線平均粗さ(Ra)は、0.1~1.0μmであることが必要であり、好ましくは0.15~0.8μm、さらに好ましくは0.2~0.6μmの範囲である。Raが0.1μm未満では、目的とする剥離性が得られない傾向にある。一方、Raが1.0μmを超える場合には、フィルム表面の凹凸が大きくなり過ぎる傾向にあり、熱プレス時に粒子が脱落して熱板に付着する等の問題が生じることがある。」
(5)甲5(王子アルファンホームページカタログ
http://www.ojif-tex.co.jp/alphan/pdf/pro/function_film.pdf)
甲5には、次の記載がある。
(5-1)「
」
(6)甲6(特開平11-092720号公報)
甲6には、次の記載がある。
(6-1)「【請求項1】 粘着剤層とその両面側に接触するシリコ―ン処理を施していない剥離ライナとを有する両面粘着シ―ト類において、上記の剥離ライナはポリオレフイン系フイルムにより構成され、かつこのポリオレフイン系フイルムの表面粗さが中心線平均表面粗さ〔Ra〕で0.1~1.0μmの範囲にあることを特徴とする両面粘着シ―ト類。」
(6-2)「【0002】
【従来の技術】電気、電子、建築、自動車などの業界では、製品が多品種化した部品群から成り立つている。これら部品の接着接合は、従来では、液状接着剤などでの接着が一般的であつたが、最近では、作業環境の向上、作業性の点より、両面粘着シ―ト類を用いて接着接合することが多くなつてきた。」
(6-3)「【0006】本発明は、このような事情に照らし、シリコ―ン処理を施していない剥離ライナを用い、電子機器などの用途にも使用可能な両面粘着シ―ト類であつて、上記剥離ライナの剥離性にすぐれるものを提供することを目的とする。」
(6-4)「【0025】その結果、上記フイルム1の主面側剥離面11の剥離力(Fa)が背面側剥離面12の剥離力(Fb)より小さく、通常は、両者の比〔Fb/Fa〕が1.5~25、好ましくは1.8~20、より好ましくは2.0~15となり、このフイルム1からなる剥離ライナを粘着剤層2の主面21側でより軽い力で剥離できるようになり、剥離作業をスム―スに行うことができる。」
(7)甲7(特開2009-202422号公報 )
甲7には、次の記載がある。
(7-1)「【請求項1】
絶縁樹脂層の一方の面に基材、他方の面にカバーフィルムを有する積層シートであって、前記カバーフィルムは、エンボス加工を施されており、カバーフィルムの最大高さ粗さRzが2~50umであることを特徴とする積層シート。」
(7-2)「【0010】
まず、本発明の積層シートについて説明する。
本発明の積層シートは、絶縁樹脂層の一方の面に基材、他方の面にカバーフィルムより構成される。前記カバーフィルムは、エンボス加工を施されており、カバーフィルムの最大高さ粗さRzが2~50umである。このことにより、多層プリント配線板の製造工程において、内層回路基板に積層シートを貼り付ける直前まで、カバーフィルムが剥がれることがなく、内層回路基板に積層する直前に、カバーフィルムを剥がしても積層シートの絶縁樹脂層の一部がカバーフィルムへ付着や、絶縁樹脂層に割れなどの欠陥が生じるという問題がない。」
(8)甲7-1(土木学会論文集 A1(構造・地震工学)、Vol.67、No.2、PP.446-453、2011 )
甲7-1には、次の記載がある。
(8-1)「(1)Raと,RZJIS,RZの間には高い相関がある。RZJISとRZから,以下の式を用いて,精度よく算術平均粗さRaを推定することができる。
Ra=0.185×RZJIS Ra=0.137×RZ」(453頁左欄9行~12行)
2 甲1に記載の発明
(1)甲1発明Aについて
甲第1号証には、上記1(1)(1-1)の請求項1に「支持体及び該支持体と接合している樹脂組成物層からなる接着シートと、該接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
樹脂組成物層が無機充填材及び熱硬化性樹脂を含」む保護フィルム付き接着シートが記載されている。また、同(1-4)の実施例1に、前記樹脂組成物の樹脂材料としてエポキシ樹脂が選択され、硬化剤として活性エステル硬化剤を使用し、支持体としてアルキド樹脂系離型層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、支持体の離型層側表面に樹脂組成物層を形成し、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(アルファンMA-411)を用い、その平滑面側を樹脂組成物層側表面にラミネート処理を行った例が記載されている。
そうすると、甲1には、「支持体と樹脂組成物層とからなる接着シートと、接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
保護フィルムが、ポリプロピレンフィルム(アルファンMA-411)であり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面にアルキド樹脂系離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、保護フィルム付き接着シート」(以下、「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。
(2)甲1発明Bについて
甲1には、上記1(1)(1-1)及び(1-4)の記載に加え、同(1-3)に、「(a-1)本発明のロール状保護フィルム付き接着シートから保護フィルム付き接着シートを搬送しながら、保護フィルムを剥離する工程、
(a-2)樹脂組成物層が露出した接着シートを、樹脂組成物層が回路基板と接合するように配置する工程、
(a-3)接着シートの一部を支持体側から加熱及び加圧することで部分的に接着シートを回路基板に接着する工程、及び
(a-4)接着シートを回路基板のサイズに応じてカッターでカットすることにより、カットされた接着シートを回路基板の表面に設ける工程」を含む積層体の製造方法及び、「(b-1)本発明の方法で製造された積層体を加熱及び加圧し、回路基板に接着シートをラミネート処理する工程、及び
(b-2)樹脂組成物層を熱硬化し、絶縁層を形成する工程」を含むプリント配線板の製造方法が記載されている。
そうすると、甲1には、「支持体と樹脂組成物層とからなる接着シートと、接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
保護フィルムが、ポリプロピレンフィルム(アルファンMA-411)であり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面にアルキド樹脂系離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、ロール状保護フィルム付き接着シートを用いて、カットされた接着シートが回路基板の表面に設けられた積層体を形成する工程、
積層体を加熱及び加圧し、回路基板に接着シートをラミネート処理する工程、
及び
樹脂組成物層を熱硬化し、絶縁層を形成する工程
を含む、プリント配線板の製造方法。」(以下、「甲1発明B」といい、上記「甲1発明A」と合わせて「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
3 本件発明と甲1発明との対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明Aとの一致点・相違点
本件発明1と甲1発明Aを対比する。
甲1発明Aの「支持体」、「保護フィルム」は、2つの面を有していることは明らかであるから、それぞれ、本件発明1の「第1及び第2の表面を有する支持体」、「第1及び第2の表面を有する保護フィルム」に相当するといえる。また、甲1発明Aの「ポリプロピレンフィルム」は、プラスチック材料からなることは明らかであるから、本件発明1の「プラスチック材料からなるフィルム」であるといえ、甲1発明Aの「アルキド樹脂系離型剤」は、非シリコーンの離型剤であることは明らかであるから、本件発明1の「非シリコーン離型剤」に相当するといえる。 さらに、甲1発明Aにおいて、保護フィルムとして使用されるアルファンMA-411は、甲5(参考資料:アルファンFG-201及びE-201FのJIS B 0601で測定した数値が上記(5-1)の表と一致する。)によると、JIS B 0601で測定したと認められる保護フィルムの算術平均粗さが粗化面側はRaが0.45μmであり、平滑面側は0.05μmであるから、 保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さRap1は450nm、第2の表面の算術平均粗さRap2は50nmであり、保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さRap1と支持体の第1の表面の算術平均粗さRas1との合計は450nm以上となることは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aは、「第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が450nmであり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が450nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面に非シリコーン離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、保護フィルム付き接着シート。」 である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)本件発明1は、「JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上」であるのに対して、甲1発明Aにおいて、保護フィルムの樹脂層と接する平滑面側の算術平均粗さ(Rap2)は50nmである点。
イ 相違点に関する判断
上記(相違点)について検討する。
(ア)まず、甲1の記載をみると、甲1の上記1(1)(1-1)の請求項1には、「支持体の剥離強度(SA)と、樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)とが、SA-SB≧0.0020[kgf/cm]を満たす」ことが規定されている。そして、当該規定は、同(1-2)の段落【0064】によると、樹脂剥がれを防止する観点から定められたものであることが分かる。
そして、上記規定は、樹脂組成物層に対する保護フィルムの剥離強度(SB)を樹脂組成物層に対する支持体の剥離強度(SA)よりも一定程度以上低くすることを定めたものであるから、甲1に記載の発明においても、樹脂組成物層に対する保護フィルムの接着力を弱くすることが重要である旨認識されていたと理解できる。
ここで、接着力を弱くする方法として、甲1の同(1-2)には、特定の無機充填材、エポキシ樹脂および硬化剤を含む樹脂組成物層を形成すること(段落【0037】)、接着シートを回路基板にラミネート処理した後に支持体が剥離可能である程度に支持体に離型剤を使用して上記支持体の剥離強度(SA)を高くすること(段落【0057】及び【0058】)、支持体の厚みを大きくする手段で上記支持体の剥離強度(SA)を高くすること(段落【0060】)、保護フィルムの厚みを薄くすること(段落【0065】)、樹脂組成物中の残留溶剤量を規定すること(段落【0069】)、保護フィルムを樹脂組成物層にラミネート処理する際の圧着圧力や温度条件を規定すること(段落【0073】~【0076】)が記載されており、上記(1-4)には、これらを実際に実施して上記関係式を満たすようにした具体例が記載されている。
(イ)一方、樹脂組成物層に接触する側のフィルム面の表面粗さを大きくして接着力を弱める、すなわち、剥離強度を低くすることは本件発明の優先日当時に当業者によく知られた技術であり、例えば、甲2の上記(2-1)及び(2-2)、甲3の上記(3-1)及び(3-2)、甲4の上記(4-1)及び(4-2)、甲6の上記(6-1)~(6-4)、甲7の上記(7-1)及び(7-2)には、他層と接する面の算術平均粗さ(Ra)を本件発明1の「第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上」と一部重複する範囲とすることが記載されている。
(ウ)上記(ア)、(イ)を併せ考えると、上記(イ)のとおり、樹脂組成物層に接触する側のフィルム面の表面粗さを大きくして接着力を弱め、剥離強度を低くする手段はよく知られた手段であって、樹脂組成物層に接する保護フィルムの表面粗さを本件発明1に記載の程度に大きくすることが公知の技術であったとしても、甲1発明は、甲1の実施例1に着目して導出したものであり、すでに樹脂剥がれを防ぐという目的を達成している上、上記(ア)のとおり、甲1には、接着力を弱める方法として、当該公知の技術とは異なる具体的な手段が既に種々列挙されていることから、甲1発明Aにおいて、敢えて当該公知の技術を採用することを、動機付ける程の事実は見当たらないといわざるを得ない。
また、仮に、甲1発明Aにおいて当該公知の技術を採用して、その保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さを再設計し得るとしても、その際その値を本件発明1の数値範囲内のものとすることまで容易想到の事項ということはできないし、当該再設計に際し、第1の表面の算術平均粗さの数値(上記アにおいて本件発明1との一致点とした点)をそのまま維持しなければならない事情は見当たらないから、甲1発明Aにおいて、当該第1の表面の算術平均粗さの数値をそのままにして、第2の表面の算術平均粗さの数値のみを本件発明1の数値の範囲内に再設計することが容易想到の事項ということもできない。
(エ)そして、本件発明1の効果についてみると、本件明細書の段落【0120】~段落【0142】の実施例、特に【表1】には、本件発明1の表面粗さを有する保護フィルム及び支持体を使用した実施例1~4が、樹脂剥がれのみならず、巻きずれについても良好な結果が示されているから、本件発明1は、上記(相違点)に係る発明特定事項を含む、特定の構成により、所期の効果を奏するものと認められる。
(オ)そうすると、本件発明1は、甲1発明A及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、保護フィルム及び支持体表面の算術平均粗さの測定方法において本件発明1と相違するにすぎず、本件発明1のように上記(相違点)に係る発明特定事項を具備するものである。
そうすると、本件発明2と甲1発明Aとは、上記(1)で検討したのと同様の相違点を有することになるから、本件発明2は、上記(1)において説示した理由と同様の理由により、甲1発明A及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、保護フィルム付き接着シートの用途を「プリント配線板の絶縁層用」に限定すると同時に支持体層の非シリコーン離型剤からなる離型層の要件を削除した点で本件発明1と相違するにすぎず、本件発明1のように上記(相違点)に係る発明特定事項を具備するものである。
そうすると、本件発明3と甲1発明Aとは、上記(1)で検討したのと同じ相違点を有することになるから、本件発明3は、上記(1)において説示した理由と同じ理由により、甲1発明A及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4について
本件発明4は、保護フィルム付き接着シートの用途を「プリント配線板の絶縁層用」に限定すると同時に支持体層の要件を削除した点で本件発明2と相違するにすぎず、本件発明1のように上記(相違点)に係る発明特定事項を具備するものである。
そうすると、本件発明4と甲1発明Aとは、上記(2)で検討したのと同様の相違点を有することになるから、本件発明4は、上記(1)において説示した理由と同様の理由により、甲1発明A及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明5~10について
本件発明5は、樹脂組成物層中の無機充填材の含有量を特定した点、本件発明6は、保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)をさらに限定した点、本件発明7~9は、それぞれ、保護フィルム、支持体又は樹脂組成物層の厚さをさらに限定した点で、本件発明10は、保護フィルム付き接着シートがロール状に巻き取られたものである点で本件発明1と相違するにすぎず、本件発明1のように上記(相違点)に係る発明特定事項を具備するものである。
そうすると、本件発明5~10と甲1発明Aとは、上記(1)で検討したのと同じ相違点を有することになるから、本件発明5~10は、上記(1)において説示した理由と同じ理由により、甲1発明A及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件発明11について
本件発明11と甲1発明Bを対比する。
甲1発明Bの「支持体」、「保護フィルム」は、2つの面を有していることは明らかであるから、それぞれ、本件発明1の「第1及び第2の表面を有する支持体」、「第1及び第2の表面を有する保護フィルム」に相当するといえる。また、甲1発明Bの「ポリプロピレンフィルム」は、プラスチック材料からなることは明らかであるから、本件発明1の「プラスチック材料からなるフィルム」であるといえ、甲1発明Bの「アルキド樹脂系離型剤」は、非シリコーンの離型剤であることは明らかであるから、本件発明1の「非シリコーン離型剤」に相当するといえる。 さらに、甲1発明Bにおいて、保護フィルムとして使用されるアルファンMA-411は、甲5(参考資料)によると、JIS B 0601で測定した保護フィルムの算術平均粗さが粗化面側はRaが0.45μmであり、平滑面側は0.05μmであるから、保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さRap1は450nm、第2の表面の算術平均粗さRap2は50nmであり、保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さRap1と支持体の第1の表面の算術平均粗さRas1との合計は450nm以上となることは明らかである。加えて、甲1発明Bの「回路基板」は、本件明細書の段落【0102】の記載からみて、本件発明11の「内層基板」に相当するといえる。
そうすると、本件発明11と甲1発明Bは、「第1及び第2の表面を有する支持体と該支持体の第2の表面と接合している樹脂組成物層とからなる接着シートと、第1及び第2の表面を有し且つ該第2の表面が接着シートの樹脂組成物層と接合するように設けられた保護フィルムとを含む保護フィルム付き接着シートであって、
JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)が450nmであり、
保護フィルムの第1の表面の算術平均粗さ(Rap1)と、支持体の第1の表面の算術平均粗さ(Ras1)との合計が450nm以上であり、
保護フィルムが、プラスチック材料からなるフィルムであり、
樹脂組成物層が、無機充填材、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
支持体が、樹脂組成物層と接合する面に非シリコーン離型剤からなる離型層を有する離型層付き支持体である、ロール状保護フィルム付き接着シートを用いて、カットされた接着シートが内層基板の表面に設けられた積層体を形成する工程、
積層体を加熱及び加圧し、内層基板に接着シートをラミネート処理する工程、
及び
樹脂組成物層を熱硬化し、絶縁層を形成する工程
を含む、プリント配線板の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)本件発明11は、「JIS B 0601に準拠して測定した保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さ(Rap2)が100nm以上」であるのに対して、甲1発明Bにおいて、保護フィルムの樹脂層と接する平滑面側の算術平均粗さ(Rap2)は50nmである点。
当該相違点については、すでに、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明11は、甲1発明B、甲1に記載された事項及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7)本件発明12について
本件発明12は、本件発明11の(I)工程において、さらに限定した点で本件発明11と相違するにすぎず、本件発明11のように上記(相違点)に係る発明特定事項を具備するものである。
そうすると、本件発明12と甲1発明Bとは、上記(6)で検討したのと同じ相違点が存在するのであるから、本件発明12は、上記(1)において説示した理由と同じ理由により、甲1発明B及び甲2~4,6,7に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 異議申立人の平成30年11月29日付け上申書(以下、単に「上申書」という。)における主な主張について
上記3(1)イ(ウ)における容易想到性の判断に関し、異議申立人は、上申書において、(i)下記参考資料9、乙4号証によると、甲1発明Aは、保護フィルムの表と裏を意図的に使い分けているものであり、保護フィルムの粗面を樹脂組成物層ではない側に意図的に配するものであるから、当該甲1発明Aには、保護フィルムの粗面を接着シートの外側に配することが必須の事項として内在すること、及び、(ii)下記参考資料4~8によると、保護フィルムの粗面を外側に配する、つまり、保護フィルムの露出面に相当する面の「滑り摩擦係数」を一定範囲とするという手段により、ロール状としたフィルムの保管時の巻きずれという課題が達成できることは周知であり、当該課題は甲1発明Aにも内在することを理由に、保護フィルムの第2の表面の算術平均粗さを再設計する際には、第1の表面の算術平均粗さをそのまま維持する必要がある旨主張する。
しかしながら、乙第7号証によると、甲1の実施例2の保護フィルム(AL5)の表面算術平均粗さは、両面とも40nm程度であり、特に、甲1に記載された技術思想全般に渡って、第1の表面の算術平均粗さを意図的に高くするような配慮は認められないから、甲1発明Aにおいて、異議申立人が主張するような事項が内在しているとまではいえない。
したがって、甲1発明Aにおいて、第1の表面の算術平均粗さをそのまま維持しなければならない事情を見出すことはできないから、上記異議申立人の主張は採用できない。
参考資料4:浅井希、“ウェブ”ロールtoロールの搬送、巻取り技術 そのトラブル発生メカニズムと対策、第1版第1刷、2013年11月29日、p.32~39
参考資料5:特開平10-333328号公報
参考資料6:特開2002-36334号公報
参考資料7:特開2002-187148号公報
参考資料8:特開平5-310346号公報
参考資料9:特開2010-73355号公報
乙第4号証:特開2016-74788号公報
乙第7号証:保護フィルム(AL5)の表面算術平均粗さを示す実験成績証明書
5 小括
以上のとおりであるから、上記取消理由によって本件特許1ないし12を取り消すことはできない。
第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった申立理由
異議申立人は、申立理由として、非接触3次元表面解析装置を用いてVSIモードにてデータを取り込んだ後、表面粗さRaの数値を求める際に、どの「補正処理」を採用するか及び「フィルター処理」を行うか否かによって当該数値に大きく影響を及ぼすことから、請求項2,4に記載の当該装置によって得られる表面粗さRaの数値は一義的に定まらないとして、本件発明2,4~12に対して、特許法第36条第6項第2号違反であることを主張する。
以下に、「補正処理」及び「フィルター処理」についてそれぞれ検討する。
1 補正処理について
非接触型表面粗さ計を用いた表面粗さの測定において、選択し得る補正処理としては、Tilt補正(傾斜補正)、Cylinder補正(円柱補正)の他、Curvature補正(曲率補正)がある。斯かる補正処理は、測定に使用される干渉計の構成や測定対象サンプルの形状の影響を除外して、正確な表面粗さを得るために行われる構成処理である。
そして、乙第1号証(WYKO CORPORATION、WYKO Surface Profilers Technical Reference Manual、1996年5月、P.4-3,4-7~4-9)の4章3頁を参酌するに、傾斜補正(Tilt補正)は、測定に使用される干渉計の構成に起因した影響を除外するために選択すべき校正処理であり、測定対象サンプル自体の形状が平坦であったとしても行うべき必須の校正処理である。他方、円柱補正(Cylinder補正)や曲率補正(Curvature補正)は、測定対象サンプル自体の形状が平坦でない場合に、その形状の影響を除外するために選択される校正処理である。ゆえに、何れの補正処理(校正処理)を選択すべきかは、表面粗さを計測する者であれば理解しているべき、基本的な事項である。
例えば、特開2000-9931号公報の請求項1及び段落【0087】~【0092】には、円筒形パイプを試料ホルダーとして使用する場合には、「cylinder and tilt」(円柱+傾斜補正)を選択し、試料ホルダーとしてガラス板を使用する場合は、「tilt only」(傾斜補正)を選択しており、上述の測定対象サンプルの形状に応じた適切な補正処理が行われていることが理解できる。
したがって、傾斜補正のみとするか、円柱+傾斜補正とするか、曲率+傾斜補正とするかは、測定対象サンプルの形状に応じて、表面粗さを計測する者であれば適切に選択し得る、基本的な事項であり、本件明細書において、特段の記載がなくとも、明瞭であるといえる。
2 フィルター処理において
非接触型表面粗さ計を用いた表面粗さの測定において、選択し得るフィルター処理としては、ローパスフィルター処理、ハイパスフィルター処理、中間フィルター処理がある。斯かるフィルター処理は、測定測定データからある周波数領域のデータの寄与を軽減させることにより特定周波数のデータを強調して示すエフェクト処理である。
そして、乙第1号証の4章7~9頁を参酌するに、ローパスフィルター処理は、測定データにおける高周波数データの寄与を軽減し低周波数データを強調して示すことが可能であるため、測定対象サンプル表面のうねりや間隔が広い不規則性等の情報を得る際に使用し得る。ハイパスフィルター処理は、測定データにおける低周波数データの寄与を軽減し、高周波数データを強調して示すことが可能であるため、測定対象サンプル表面の間隔が接近している不規則性等の情報を得る際に使用し得る。さらに、中間フィルター処理は、測定データにおける中間領域の周波数データを強調して示すことが可能であるため、エッジやステップといった表面特性に関する情報を得る際に使用し得る。ゆえに、特定部データに着目した検討を行う特段の必要がない場合、フィルター処理を実施しないことが理解され、実際に、本件明細書の実施例において使用する非接触型表面粗さ計「NT3300」では、フィルター処理のデフォルト設定が「None」とされている。
例えば、特開2014-218586号公報の段落【0075】には、フィルター処理を行わない場合がある旨記載されているが、当該公報には、測定データのうち特定周波数データに着目した検討を行うことを前提とする記載はなく、追加的なエフェクト処理であるフィルター処理を行っていないことは明らかである。
したがって、特定周波数データに着目した検討を行う特段の必要がない場合に、フィルター処理を採用しないことは、表面粗さを計測する者であれば理解しているべき基本的な事項であり、本件明細書において、特段の記載がなくとも、明瞭であるといえる。
3 小括
よって、本件特許発明2,4~12に係る特許請求の範囲の記載は、明瞭であるといえ、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
第7 むすび
上記「第5」及び「第6」で検討したとおり、本件特許1ないし12は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記申立理由によっては、本件特許1ないし12を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1ないし12を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり、決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700734