特許異議申立
2017-700726
発光装置
- 審判番号
- 2017-700726
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-048776外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月24日
- 審決日
- 2017年12月13日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日亜化学工業株式会社
- 【権利者代理人】鮫島 睦
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【異議申立人】西林 博
- 分類
- P1652.113-Y (H01L) / P1652.121-Y (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6065135号発明「発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6065135号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6065135号の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成28年3月11日(優先権主張平成27年4月2日)に特許出願され、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1~10に係る特許に対し、特許異議申立人西林博により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第6065135号の請求項1~10の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に複数の側面とを有し、前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有し、前記第2の面側に一対の電極を有する発光素子と、
複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの前記側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材と、
前記一対の電極を露出させるよう、前記発光素子の露出した前記角部と前記透光性部材の外面を覆う被覆部材と、を含み、
前記被覆部材と前記発光素子との熱膨張率差が、前記透光性部材と前記発光素子との熱膨張率差よりも小さい、発光装置。
【請求項2】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に複数の側面とを有し、前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有し、前記第2の面側に一対の電極を有する発光素子と、
複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの前記側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材と、
前記一対の電極を露出させるよう、前記発光素子の露出した前記角部と前記透光性部材の外面を覆う被覆部材と、を含み、
前記被覆部材の熱膨張率が、前記透光性部材の熱膨張率よりも低い、発光装置。
【請求項3】
前記透光性部材の前記外面は、前記発光素子の前記第2の面側から前記第1の面側に向かって外向きに傾斜する、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子が、前記角部を4つ有する略直方体形状であり、
前記4つの角部のうち、対角に位置する2つが前記被覆部材によって覆われている請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子が、前記角部を4つ有する略直方体形状であり、
前記4つの角部のうちの隣接する2つの角部と、当該隣接する2つの角部の間の辺の一部とが前記被覆部材によって覆われている請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記4つの角部の全てが前記被覆部材によって覆われている請求項4又は5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子は、透光性基板と半導体積層体とを含み、
前記透光性基板は、前記発光素子の前記第1の面側に配置され、前記半導体積層体は、前記第2の面側に配置されている請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記透光性部材は透光性樹脂からなり、前記被覆部材は光反射性樹脂からなることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記透光性部材は、前記発光素子の前記第1の面と面一の第1の面を有し、
前記発光素子の前記第1の面と前記透光性部材の前記第1の面とが、波長変換部材に覆われている請求項1~8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記発光素子の前記第1の面は、前記透光性部材に覆われている請求項1~9のいずれか1項に記載の発光装置。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人西本博は、証拠として特開2012-4303号公報(以下「甲第1号証」という。)を提出し、請求項1~3、7、8、10に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、請求項1~3、7、8、10に係る特許を取り消すべきものである旨主張し、また、主たる証拠として甲第1号証または特開2010-219324号公報(以下「甲第2号証」という。)及び従たる証拠として特開2001-250843号公報(以下「甲第3号証」という。)、特開平8-125275号公報(以下「甲第4号証」という。)、特開2009-164275号公報(以下「甲第5号証」という。)、特開2012-41428号公報(以下「甲第6号証」という。)を提出し、請求項1~10に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
第4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付与したものである。以下同様。
「【0022】
【図1】実施形態1の発光装置の断面図。
【図2】実施形態1の発光装置の反射材料層15の傾斜面130が(a)直線状である場合、(b)外側に凸の曲面である場合、(c)内側に凸の曲面である場合、のそれぞれの断面図。
【図3】(a)~(e)実施形態1の発光装置の製造工程を示す説明図。
・・・(途中省略)・・・
【0024】
(実施形態1)
図1に、実施形態1の発光装置の断面図を示す。この発光装置は、発光素子側面に近い位置に、光取り出しのための反射面を備えている。
【0025】
具体的には、上面に配線が形成されたサブマウント基板10の上に、フリップチップタイプの発光素子11が、複数のバンプ12により接合されることにより実装されている。発光素子11の上面には、発光素子11の発する光に対して透明な透明材料層13が搭載され、その上に板状の波長変換層14が搭載されている。
【0026】
発光素子11の外側には、枠体16が配置され、発光素子11と枠体16との間の空間は反射材料層15により充填されている。反射材料層15は、非導電性で反射率の高い材料が用いられる。反射材料層15は、発光素子11、透明材料層13および波長変換層14の外周側面を覆っている。また、反射材料層15は、バンプ12の間を埋めるように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空間も充填している。
【0027】
このように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空隙をバンプ12を取り囲むように反射材料層15で充填することにより、発光素子11の下面側に出射される光を、反射材料層15で反射して上方に向けて出射することができる。よって、発光素子11の底面と基板10の上面との間で光が繰り返し反射されて減衰するのを防止できるため、上方への光の取り出し効率を向上させることができる。
【0028】
波長変換層14の主平面方向の大きさは、発光素子11よりも若干大きく、反射材料層15と透明材料層13との境界で形成される傾斜面130が、発光素子11および波長変換層14の側面方向への出射光を反射する反射面となる。反射材料層15は、波長変換層14の側面に接しているため、反射材料層15の開口(発光面)は、波長変換層14の面積と等しく、発光面積の小さい光源を提供できる。
【0029】
反射材料層15と透明材料層13との境界の傾斜面130は、図2(a)のように、発光素子11の底面と波長変換層14の下面を直線的に結ぶ傾斜面、図2(b)のように外側(枠体16側)に凸の曲面、図2(c)のように内側(発光素子11の中心に向かう側)に凸の曲面に形成可能である。本実施形態では、上面への光の出射効率を向上させるために、図2(a)のように直線的な傾斜面である場合と、図2(b)の内側に凸の曲面である場合が好ましい。特に好ましいのは、図2(b)の内側に凸の曲面であって、その曲率が5以下の場合である。
【0030】
また、傾斜面130の発光素子11側の一端は、必ずしも図2(a)~(c)のように底面と同じ高さにある必要はなく、少なくとも発光素子11の側面にあればよい。傾斜面130の発光素子11側の一端は、少なくとも発光素子11の上面よりも基板10側にあれば発光素子11側面からの光を反射する傾斜面130となる。また、発光素子11は、基板10にフリップチップ実装されることが好ましい。フリップチップ実装の場合、発光面が発光素子の底面に近い位置にあるため、傾斜面130による反射を最も利用することができるためである。」
「【0040】
つぎに、本実施形態の発光装置の製造方法について図3(a)~(e)を用いて説明する。まず、図3(a)のように、サブマウント基板10の上面の配線パターンに、フリップチップタイプの発光素子11の素子電極をバンプ12を用いて接合し、実装する。図3(b)のように、シリコーン樹脂等の透明材料(未硬化)13’を発光素子11の上面に塗布(滴下)し、発光素子11の上面より若干大きいプレート状の波長変換層14を搭載する。これにより、図3(c)のように未硬化の透明材料13’が発光素子の側面の少なくとも一部を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子11の側面と波長変換層14の下面を接続する傾斜面130が形成される。
【0041】
このとき、透明材料13’の量が少なければ、図2(c)のように発光素子11側に凸の曲面の傾斜面130が形成され、透明材料13’の量を増やすと図2(a)、図3(c)のように直線的な傾斜面130が形成され、さらに透明材料13’の量を増やすと図2(b)のように外側に凸の曲面の傾斜面130が形成される。
【0042】
透明材料13’を所定硬化処理により硬化させ、透明材料層13を形成する。なお、この後の工程で透明材料層13の形状が変わらないのであれば、完全に硬化させず、半硬化となる条件で硬化させても良い。」
「【0046】
さらに、塗布する透明材料13’の量を調整することにより、反射材料層15の傾斜面130の形状を変えることができる。」
「【0048】
つぎに、本実施形態の反射材料層15の傾斜面130の曲率の好ましい範囲について説明する。傾斜面130は、発光素子11側に凸であることが好ましいが、凸形状の曲率の好ましい範囲を求めるため、凸の形状を変化させ、発光素子11から発せられた光が波長変換層14に到達する光線数をシミュレーションにより求めた。シミュレーションにおいて、発光素子11は、上面側に位置する素子基板が屈折率1.8で厚さ90μmのサファイア、その下の半導体層が屈折率2.54で厚さ10μmの窒化ガリウム系、素子全体の厚さ0.1mmとした。発光素子11の吸収は、反射率は、0.71として置き換えて考慮した。透明材料層13は、屈折率1.54で、発光素子11の直上部の厚さ0.01mmとした。反射材料層15の傾斜面130の反射率は0.98とした。」
「【0069】
<実施例1>
本発明の実施例として、図1の構造の発光装置を図3(a)~(e)の製造方法により製造した。
【0070】
lmm角で厚さ100μmのフリップチップタイプの発光素子11が実装されたサブマウント基板10を用意し、発光素子11上面に透明材料13’としてシリコーン樹脂を2.3×10-5ml塗布した。その上面から1.2mm角のYAGプレートを波長変換層14としてマウントした。シリコーン樹脂を硬化させるために150℃で4時間加熱した。その後、サブマウント基板10上に枠体16としてセラミックリングをシリコーン樹脂により接着して、150℃で4時間硬化させた。TiO2フィラーを分散させたシリコーン樹脂を反射材料としてリング枠体16内に充填し、150℃にて4時間加熱し硬化させ、反射材料層15を形成した。これにより、図1の形状の発光装置を製造した。」
図2(a)は、以下のとおりのものであり、断面図において、傾斜面130の発光素子11側の一端は、発光素子11の底面と同じ高さにあることが見て取れる。
「【図2】(a)
」
図3は、以下のとおりのものである。
「【図3】
」
イ 甲1発明
以上の記載事項から甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「発光素子側面に近い位置に、光取り出しのための反射面を備えている発光装置であって、
上面に配線が形成されたサブマウント基板10の上に、フリップチップタイプの発光素子11が、複数のバンプ12により接合されることにより実装されるものであり、
シリコーン樹脂等の透明材料(未硬化)13’を発光素子11の上面に塗布(滴下)することにより、透明材料13’が発光素子の側面の少なくとも一部を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子11の側面と波長変換層14の下面を接続する傾斜面130が形成され、透明材料13’を所定硬化処理により硬化させ、透明材料層13を形成し、
TiO2フィラーを分散させたシリコーン樹脂を反射材料としてリング枠体16内に充填し、加熱し硬化させ、反射材料層15を形成し、
反射材料層15は、発光素子11、透明材料層13および波長変換層14の外周側面を覆っており、
反射材料層15は、バンプ12の間を埋めるように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空間も充填しており、
反射材料層15と透明材料層13との境界で形成される傾斜面130が反射面となり、
断面図において、傾斜面130の発光素子11側の一端は、発光素子11の底面と同じ高さにある、
発光装置。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
(実施の形態1)
図1,2は、本発明の実施の形態1に係る発光装置100であり、図1(a)の断面は、概略上面の図1(b)のA-Aにおける概略断面図であり、図2はその光源部周辺の概略断面図である。図1に示す例の発光装置100は、発光面90を有する面発光型の発光装置である。この発光装置100は、主として、成長基板1上に半導体素子構造11を有する発光素子10と、発光面90となる表面21が露出され、該表面21と対向する受光面22を有する板状の光透過部材20と、発光素子10の出射光を光透過部材20に導光する導光部材30と、光反射性材料45を含有する被覆部材40と、から構成される。発光素子10は、その成長基板1の裏面である出射面を光透過部材の受光面22に対向させて、基板50の配線層51上にフリップチップ実装されており、介在する導光部材30により光透過部材20と光結合されている。基板50上には、発光素子10および光透過部材20を包囲する枠体55が設けられており、その内側に被覆部材40が充填されて、発光素子10と光透過部材20の一部は被覆部材40により被覆されている。このような発光装置100の発光領域つまり光放出の窓部は、実質的に光透過部材20の表面21にほぼ限定され、この表面21を発光面90とする面発光型の発光装置となる。また、発光装置100は、光透過部材20の表面21の形状、大きさによって、この表面21すなわち発光面90から放出される光の輝度、並びに配光の分布を制御可能となっている。さらに、発光面内の輝度、色度が比較的均一な発光装置となる。ここで、光透過部材、発光素子の平面形状は図示するように矩形状であり、平面で発光素子が光透過部材に内包されている。
【0015】
図2を用いて、その光源部を詳述すると、導光部材30は、発光素子10と光透過部材20とを互いに対向させて接合する接合領域31を有し、より詳細には、光透過部材の受光面22において、発光素子10の出射面と対向する領域に設けられる。具体例、例えば後述の実施例、において、この接合領域の厚さは、0.01μm~100μm程度である。導光部材30が接合領域で介在することで、発光素子と光透過部材とが離間され、大気などの気体が介在する場合に比して、発光素子10の出射面における屈折率差を緩和し、発光素子10から光を効率良く取り出すことができる。したがって、発光素子10の出射面からの光は、接合領域31内に透過されて光透過部材の受光面22に直接的に光結合する。
【0016】
本実施の形態では光透過部材の受光面22は、発光素子10の出射面より大きく、それを内包して、受光面22の一部が発光素子10の出射面より外側に突出している。言い換えれば、光透過部材20の側面は発光素子10の側面より外側に位置し、その周縁全体に突出部が設けられている。このような発光装置100は、発光装置の発光面90を、素子の出射面より、比較的大きい光放出の窓部として、放出光の光束を高くできる。そして、導光部材30は、上述の接合領域31から延在して、光透過部材の突出表面と、発光素子10の側面の一部に垂下した該側面とを被覆する第1の被覆領域32を有し、具体的には、この領域は上記接合領域より外側に突出した領域に設けられている。ここで、発光素子10から出射光は、通常、出射面だけでなく、側面や底面側(実装面側)からも放射されるため、その光の一部は主に発光素子の側面から第1の被覆領域32に入射され、導光される。つまり、上述の接合領域の場合と同様に、第1の被覆領域32においても、その発光素子の放射面の屈折率差を緩和し、光取り出し効率を高くできる。ここで、第1の被覆領域32の被覆部材40側に面する外表面、すなわち第1の被覆領域32の発光素子10の側面と対向する外表面は、発光素子10の出射光を、光透過部材20側に反射させる第1の反射面33を有し、従ってその出射光の反射光は、第1の反射面33により光透過部材20の受光面22側に反射されて導光されて、光透過部材20に光結合される。このように、発光素子10から側方への出射光を導光部材30内に一度取り出してから第1の反射面33により反射させることで、導光部材から露出され、発光素子10を光反射性の被覆部材40により直接被覆する形態に比して、発光素子10内での吸収による光の損失を低減でき、一旦、導光部材内で光が伝搬して広がることから、光結合効率や発光特性を高めることができる。」
「【0018】
また、発光装置100において、第1の被覆領域32の発光素子10の側面と対向する面は、該側面から光透過部材の受光面22側に傾斜した傾斜面であることが好ましい。これにより、発光素子10から側方に出射される光を光透過部材の受光面22側に良好に反射させることができ、また断面幅が突出表面に向かって広がる形態のため良好な光結合とできる。さらに、この傾斜面は平面であってもよいが、接合領域31に向かって凸な凸曲面であることで、平面である場合に比して第1の反射面33の表面積を増大でき、光の反射効率を高めることができるので好ましい。」
「【0020】
なお、導光部材30を構成する樹脂材料は、発光素子10又は光透過部材20の突出部から直接又は発光素子10の側面を伝って滴り、実装基板50上に達することがある。図3は、そのような導光部材36に垂下部が設けられる形態を説明するための概略断面図である。本発明と比較されるこの形態は、図3に示すように、導光部材36の接着樹脂が発光素子10の側面を伝って実装基板50上にまで連続的に垂れると、その垂下部で光経路が形成される。このため、発光素子10から側方又は下方に出射された光が、この垂下部により実装基板50側に導光されて、実装基板50の表面や配線51に到達して、吸収による光損失を生じる。また、垂下部の形成によって、発光素子10と基板50との間の領域へのアンダーフィル70等の形成、被覆部材40の浸入が遮断される場合があり、その空洞化で光の漏れる場合に光損失が起きる。特に、樹脂材料の塗布量が多過ぎると光透過部材20の突出部から基板50上に導光部材36が直接垂下したり、上記接合領域から分離して発光素子10と基板50と架橋したり、しても上記同様に光経路が形成され、光損失を招く虞がある。また、後述の実施の形態3では、本実施の形態のように光透過部材が突出する場合に比して、形成され難い構造であるものの同様に側面を被覆して実装基板に到達する垂下部が設けられ得る。そのため、樹脂材料の塗布量が過剰とならないように適宜調節し、また後述のように突出表面の面積、突出部の位置で調節する。
【0021】
したがって、第1の被覆領域32の外表面は、発光素子10の底面、実装面より前記光透過部材20側に位置していることが好ましく、第1の被覆領域32が被覆する範囲は、発光素子10の側面の途中までであることが好ましい。つまり、図1,2に示すように、発光素子10の側面において、導光部材に対して、出射面(上方)側に被覆された領域(第1の被覆領域32)と、底面、実装面(下方)側に露出された領域と、が設けられていることが望ましい。さらには、この露出領域は、被覆部材40で被覆されていることが好ましい。より具体的には、発光素子10が素子構造である半導体層11と該半導体層より出射面側の基板1とを有する場合、導光部材30が該基板の側面まで延在して被覆し、該半導体層11の側面を露出させていることが好ましい。これにより、発光層を含む半導体層11側の光反射性を高める一方、基板側の光透過性を高めることができる。また、第1の被覆領域32は、接合領域31から発光素子10の側面に一様に延在して形成されてもよいが、離散的、部分的に接合領域31から発光素子10の側面に垂下して形成されてもよい。」
「【0027】
(窒化物半導体発光素子)
発光素子10の一例として、図4の窒化物半導体の発光素子10では、成長基板1であるC面サファイア基板の上に、第1の窒化物半導体層2であるn型半導体層、活性層3である発光層、第2の窒化物半導体層4であるp型半導体層が順にエピタキシャル成長されている。そして、n型層2の一部が露出されて第1の電極7であるn型パッド電極を形成し、p型層4のほぼ全面にITO等の透光性導電層5、第2の電極6であるp型パッド電極が形成されている。さらに、保護膜8をn型、p型パッド電極6,7の表面を露出し、半導体層を被覆して設けられる。なお、n型パッド電極7は、p型同様に透光性導電層を介して形成してもよい。成長基板1は、C面サファイアの他、R面、及びA面、スピネル(MgAl2O4)のような絶縁性基板、また炭化珪素(6H、4H、3C)、Si、ZnS、ZnO、GaAs、GaNやAlN等の半導体の導電性基板がある。窒化物半導体の例としては、一般式がInxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)の他、BやP、Asを混晶してもよい。また、n型、p型半導体層2,4は、単層、多層を特に限定されず、活性層3は単一(SQW)又は多重量子井戸構造(MQW)が好ましい。青色発光の素子構造11の例としては、サファイア基板上に、バッファ層などの窒化物半導体の下地層、例えば低温成長薄膜GaNとGaN層、を介して、n型半導体層として、例えばSiドープGaNのn型コンタクト層とGaN/InGaNのn型多層膜層が積層され、続いてInGaN/GaNのMQWの活性層、更にp型半導体層として、例えばMgドープのInGaN/AlGaNのp型多層膜層とMgドープGaNのp型コンタクト層が積層された構造がある。」
「【0038】
(導光部材)
導光部材30は、発光素子10と光透過部材20との間に介在して双方の部材を固着する接着剤に用いられる。この導光部材は、透光性を有して、発光素子10の出射光を光透過部材側へ導光でき、双方の部材を光学的に結合できる材質が好ましい。その材料としては上記各部材に用いられる樹脂材料が挙げられ、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂など透光性の熱硬化性樹脂がよく、シリコーン樹脂は耐熱性、耐光性に優れるため好ましい。また、シリコーン樹脂を使用すれば、上記フッ素系離型剤の効果が高いため好ましい。さらに、ジメチル系シリコーン樹脂であれば高温耐性など信頼性において優れ、フェニル系シリコーン樹脂であれば屈折率を高くして発光素子10からの光の取り出し効率を高めることができる。」
「【0041】
(発光装置の製造方法)
図1に示される例の発光装置100の製造方法の一例として以下に説明する。まず、実装基板50上または発光素子10にバンプ60を形成しフリップチップ実装する。この例では個片化前の基板50上で、1つの発光装置に対応する領域に1個のLEDチップを並べて実装する。次に、発光素子10の出射面側(サファイア基板裏面あるいはLLOで基板除去した場合であれば窒化物半導体露出面)に、導光部材30を塗布して、光透過部材20を積層し、その樹脂30を熱硬化して接合する。次に、発光素子10の周囲に立設された枠体55内に、光透過部材20の側面を被覆するように、ディスペンサ(液体定量吐出装置)等により、被覆部材40を構成する樹脂をポッティングする。滴下された樹脂40は、表面張力によって発光素子10、光透過部材20の側面を這い上がり被覆し、表面21より枠体55に向かって低くなる傾斜表面が形成される。また、樹脂40の表出面を表面21と略同一面となるよう平坦化してもよい。そして、樹脂40を硬化させた後、所定の位置でダイシングを行い、所望の大きさに切り出して発光装置100を得る。」
「【0069】
(実施例1)
実施例1の発光装置の光源部は、図5に示すように、AlNのセラミックス基板50の配線51上に、発光素子10として約1mm×1mmの略正方形のLEDチップ(サファイア基板10上に窒化物半導体11が積層された構造で発光波長455nm)2個をフリップチップ実装し、その上に板状の光変換部材である光透過部材20としてYAGとアルミナ(Al2O3)との焼結体、この表面21及び受光面22の外形は約1.1mm×2.2mmの略矩形状であり、厚みは約150μm、を1枚載置し、導光部材30により互いに接合する。このとき、導光部材30となるシリコーン樹脂は、各LEDの出射面(基板1の裏面)上に適量をピンセットで塗布し、その上に光透過部材20をピンセットで載置し、発光素子10の側面の一部に垂下させ、150℃のオーブン内で60分間樹脂を熱硬化し、図示するように2つのLEDが光透過部材の受光面に内包されるように接着する。このようにして、導光部材30に、LEDと光透過部材間の接合領域31と、LEDの光源の外側の側面を被覆する第1の被覆領域32と、LED間の内側の側面を被覆する第2の被覆領域34が形成され、この時、LED側面は、基板と、半導体層11の一部又は略全部に導光部材が形成される。そして、図1に示すように、基板50の配線51上にLEDを実装し、発光素子10及び光透過部材20を包囲する枠体の内側の凹所に被覆部材40を充填し、光透過部材20の表面21が発光面として露出される状態、発光素子10および光透過部材20が被覆部材40により被包し、図8に示すように枠体を除去して発光装置を得る。ここで、被覆部材40は、粒径約270nmのTiO2の微粒子である光反射性材料45を約23重量パーセント濃度で含有するシリコーン樹脂である。この実施例1の発光装置は、電流350mAで駆動させると、光束約167[lm](色度y値約0.339)、最大輝度6086[cd/cm2]、平均輝度3524[cd/cm2]で発光する、高光束かつ高輝度のものが得られる。」
図1は、以下のとおりのものである。
「【図1】
」
図2は、以下のとおりのものである。
「【図2】
」
イ 甲2発明
上記図2の記載から、導光部材30の第1の被覆領域32及び発光素子10の側面において、導光部材に対して、底面、実装面(下方)側に露出された領域は、被覆部材40で被覆されており、発光素子10のバンプ60と実装基板50の配線51とが接続され、被覆部材40はバンプ60どうしの間に介在していることが見て取れる。してみると、以上の記載事項から甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「発光装置100は、成長基板1上に半導体素子構造11を有する発光素子10と、発光面90となる表面21が露出され、該表面21と対向する受光面22を有する板状の光透過部材20と、発光素子10の出射光を光透過部材20に導光する導光部材30と、光反射性材料45を含有する被覆部材40と、から構成され、
導光部材30は、光透過部材の突出表面と、発光素子10の側面の一部に垂下した該側面とを被覆する第1の被覆領域32を有し、
第1の被覆領域32の発光素子10の側面と対向する面は、該側面から光透過部材の受光面22側に傾斜した傾斜面であり、
第1の被覆領域32が被覆する範囲は、発光素子10の側面の途中までであり、つまり、発光素子10の側面において、導光部材に対して、出射面(上方)側に被覆された領域(第1の被覆領域32)と、底面、実装面(下方)側に露出された領域と、が設けられ、この露出領域及び導光部材30の第1の被覆領域32は、被覆部材40で被覆されており、
発光素子10は、第1の電極7であるn型パッド電極、第2の電極6であるp型パッド電極、及びバンプ60が形成され、フリップチップ実装されるものであり、
発光素子10のバンプ60と実装基板50の配線51とが接続され、被覆部材40はバンプ60どうしの間に介在し、
導光部材30はシリコーン樹脂であり、
被覆部材40は、TiO2の微粒子である光反射性材料45を含有するシリコーン樹脂である、
発光装置100。」
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【0004】図10は、従来のベアチップを回路基板上に実装させた例を示す図である。ベアチップ2の回路形成面(ここでは図の下側の面)に、アルミ電極2aが所定のパターンで形成してあり、このアルミ電極2aが、この電極2aの所定箇所に取付けられた突起電極(バンプ)3を介して、回路基板4の回路パターン4aと接続させてある。突起電極3は、例えば金などの導電性の良い部材が使用される。図10では接合時の圧力により突起電極3が変形した状態で示してある。
【0005】このようにして回路基板4にベアチップ2を取付ける際には、熱硬化樹脂5を使用して、基板上に固定させるようにしてある。即ち、ベアチップの実装作業時には、例えば基板4のベアチップ取付け部に熱硬化樹脂5を塗布した後、図11に示すように、その熱硬化樹脂5を塗布した箇所にベアチップ2を配置する。そして、上からボンディングヘッド6で圧力を加えなから加熱し、熱硬化樹脂5を硬化させることで、回路基板4上に固定される。図12は、その回路基板4上にベアチップ2が実装された状態を、斜め上から見た図であり、図13はベアチップ2の真上から見た図である。」
「【図10】
」
「【図12】
」
「【図13】
」
イ 段落0004、0005、図10、12、13の記載から、甲第3号証には、以下の技術事項が記載されている。
「直方体状のベアチップを熱硬化樹脂で固定する際、ベアチップの側面と、上側の面とが接する辺の一部は熱硬化樹脂で覆われ、ベアチップの上側の角部は熱硬化樹脂から露出した状態となること。」
(3)甲第4号証
ア 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「【0020】
【表1】
」
イ 以上の記載事項から甲第4号証には以下の技術事項が記載されている。
表1の記載から、基板や半導体材料の線熱膨張係数は、およそ10-6K-1のオーダーであることが読み取れる。
(3)甲第5号証
ア 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「【0070】
試験1と同様にして、フィラーであるアルミナA-42-6(昭和電工株式会社製;製品名)を80質量部に、ビニルメトキシシランであるシランカップリング剤SZ6300(東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)を、乾式法によりシランカップリング処理し、シランカップリング剤で処理したアルミナのフィラー(添加配合数0、150、300phr:phrはパーツハンドレッドラバー:parts hundred rubber)を夫々調製した。それを、バインダーであるシリコーン樹脂KJR632(信越化学工業株式会社製;商品名)に充填し、コンプレッション成形により、成形して、シリコーン樹脂基材(試験基材No.4-1~4-3)を得た。この基材について、JIS K7197のプラスチックの熱機械分析による線膨率試験方法を行い、線膨張係数の物性を測定した。その結果を表2、及び図4に示す。
【0071】
【表2】
」
イ 段落0070及び表2の記載から、甲第5号証には以下の技術事項が記載されている。
「試験基材No.4-1であるシリコーン樹脂(フィラーなし)の線膨張係数(×10-5/℃)が19.00である。」
(3)甲第6号証
ア 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「【0040】
(C)顔料
(C)顔料は硬化物の着色や強度の向上及び線膨張係数を低減させるために添加する。本発明のシリコーン樹脂組成物をリフレクター用途として使用する場合には、反射を目的とするため、白色顔料(白色着色剤)が好ましい。該白色顔料としては、二酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を単独で又は二酸化チタンと併用して使用することもできる。これらのうち、二酸化チタン、酸化マグネシウウム、硫酸バリウム及びアルミナが好ましく、特に二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンの結晶形はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が好ましく使用される。」
イ 段落0040には、顔料は線膨張係数を低減させるために添加するものであり、シリコーン樹脂組成物をリフレクター用途として使用する場合には、反射を目的とするため、白色顔料を使用することが記載されてることから、甲第6号証には以下の技術事項が記載されている。
「白色顔料を添加したシリコーン樹脂組成物は、添加しない場合よりも線膨張係数が低減する。」
第5 判断
1 請求項1に係る発明について
(1)甲1発明との対比、判断
ア 対比
甲1発明の「発光素子11」の「底面」は、請求項1に係る発明の「発光素子」の「第2の面」に相当する。また、甲1発明の「発光素子11」の「底面」と対向する面は、請求項1に係る発明の「第1の面と対向する第2の面」の「第1の面」に相当する。
甲1発明の「発光素子11」は、「フリップチップタイプ」であり、「複数のバンプ12により接合されることにより実装されるもの」であるから、請求項1に係る発明の「第2の面側に一対の電極を有する」構成を備えている。
そして、甲1発明の「発光素子11」が、請求項1に係る発明の「第2の面と複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有」する構成を備えていることは、甲第1号証の図面の記載から明らかである。
甲1発明の「透明材料13’が発光素子の側面の少なくとも一部を覆いつつ表面張力を保つことによって、発光素子11の側面と波長変換層14の下面を接続する傾斜面130が形成され、透明材料13’を所定硬化処理により硬化させ、透明材料層13を形成し、」「反射材料層15と透明材料層13との境界で形成される傾斜面130が反射面となり、断面図において、傾斜面130の発光素子11側の一端は、発光素子11の底面と同じ高さにあ」るから、甲1発明の「透明材料層13」と、請求項1に係る発明の「複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの前記側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材」は、共に「少なくとも1つの側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材」である点で共通する。
甲1発明の「反射材料層15は、発光素子11、透明材料層13および波長変換層14の外周側面を覆っており、」「バンプ12の間を埋めるように、発光素子11の底面と基板10の上面との間の空間も充填して」いるから、甲1発明の「反射材料層15」と、請求項1に係る発明の「一対の電極を露出させるよう、発光素子の露出した角部と透光性部材の外面を覆う被覆部材」は、共に「一対の電極を露出させるよう、透光性部材の外面を覆う被覆部材」である点で共通する。
シリコーン樹脂(フィラーなし)の線膨張係数(×10-5/℃)は19.00であり(甲第5号証等参照。)、「白色顔料を添加したシリコーン樹脂組成物は、添加しない場合よりも線膨張係数が低減する」(甲第6号証等参照。)ものであり、発光素子を形成する基板や半導体材料の線膨張係数は、およそ10-6K-1のオーダーである(甲第4号証等参照。)ことに鑑みるに、甲1発明の「シリコーン樹脂」の「透明材料13’を所定硬化処理により硬化させ、透明材料層13を形成し」た「透明材料層13」は、「シリコーン樹脂(フィラーなし)」から形成されたものであり、「TiO2フィラーを分散させたシリコーン樹脂を反射材料として」「加熱し硬化させ、反射材料層15を形成し」た「反射材料層15」は、「白色顔料を添加したシリコーン樹脂組成物」であるから、甲1発明の「透明材料層13」と「反射材料層15」及び「発光素子11」の線膨張係数は、この順で減小するものである。
してみると、「反射材料層15」と「発光素子11」の線膨張率差は、「透明材料層13」と「発光素子11」の線膨張率差よりも小さいものである。
ここで、「熱膨張率」は、1度の温度変化の際の体積や長さの寸法変化を表すパラメータであり、「長さ」の場合には、「線膨張係数」というものであるから、甲1発明における「反射材料層15」と「発光素子11」の線膨張率差と、「透明材料層13」と「発光素子11」の線膨張率差の関係は、請求項1に係る発明の「前記被覆部材と前記発光素子との熱膨張率差が、前記透光性部材と前記発光素子との熱膨張率差よりも小さい」という関係を有しているといえる。
したがって、請求項1に係る発明と甲1発明とは、
「第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に複数の側面とを有し、前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有し、前記第2の面側に一対の電極を有する発光素子と、
少なくとも1つの前記側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材と、
前記一対の電極を露出させるよう、前記透光性部材の外面を覆う被覆部材と、を含み、
前記被覆部材と前記発光素子との熱膨張率差が、前記透光性部材と前記発光素子との熱膨張率差よりも小さい、発光装置。」である点で一致する。
一方、請求項1に係る発明は、「透光性部材」が、「複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう」、「少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆」い、「被覆部材」が、その「露出した前記角部」を覆うという被覆関係になっているのに対し、甲1発明は、透明材料層13と反射材料層15がそのような被覆関係になっているのか不明である点で相違する(以下「相違点1」という。)。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
甲1発明の発光装置において、「側面よりも発光素子の中央から遠い位置にある角部には、透明材料13’が側面に比べ到達しにくいという現象」(異議申立書第31頁第9行ないし第25行参照。)が、その製造過程では生じうるとしても、甲1発明は製造された後の「物」の発明であり、甲1発明の発光装置において、「断面図において、傾斜面130の発光素子11側の一端は、発光素子11の底面と同じ高さにあり」、透明材料層13が発光素子11の底面の高さに達しているものであるから、透明材料層13は、発光素子11の側面と底面の接する辺だけでなく角部の全てを被覆していると解するのが自然である。
したがって、請求項1に係る発明は、甲1発明であるとはいえない。
また、甲第1号証の他の記載及び甲第2号証ないし甲第6号証の記載を見ても、請求項1に係る発明の「透光性部材」が、「複数の前記角部の1つ以上を露出させ」、「少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆」い、「被覆部材」が、その「露出した前記角部」を覆うという被覆関係についての記載や示唆はない。
そして、請求項1に係る発明は、相違点1に係る構成を有することにより、「透光性部材が発光素子から剥離するのを抑制でき、発光装置の信頼性を向上することができる。」(本件明細書段落【0006】参照。)という効果を奏するものである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)甲2発明との対比、判断
ア 対比
甲2発明の「発光素子10」の「底面」は、請求項1に係る発明の「発光素子」の「第2の面」に相当する。また、甲2発明の「発光素子10」の「底面」と対向する面は、請求項1に係る発明の「前記第1の面と対向する第2の面」の「第1の面」に相当する。
甲2発明の「発光素子10は、第1の電極7であるn型パッド電極、第2の電極6であるp型パッド電極、及びバンプ60が形成され、フリップチップ実装されるものであ」るから、請求項1に係る発明の「前記第2の面側に一対の電極を有する」構成を備えている。
そして、甲2発明の「発光素子10」が、請求項1に係る発明の「前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有」する構成を備えていることは、甲第2号証の図面の記載から明らかである。
甲2発明において、「導光部材30は、光透過部材の突出表面と、発光素子10の側面の一部に垂下した該側面とを被覆する第1の被覆領域32を有し、第1の被覆領域32の発光素子10の側面と対向する面は、該側面から光透過部材の受光面22側に傾斜した傾斜面であり、第1の被覆領域32が被覆する範囲は、発光素子10の側面の途中までであり、発光素子10の側面において、導光部材に対して、出射面(上方)側に被覆された領域(第1の被覆領域32)と、底面、実装面(下方)側に露出された領域と、が設けられ」るから、甲2発明の「導光部材30」と、請求項1に係る発明の「複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの前記側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材」は、共に「複数の角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの側面の一部を覆う透光性部材」である点で共通する。
甲2発明において、「導光部材30の第1の被覆領域32は、被覆部材40によって被覆されており、発光素子10の側面において、導光部材に対して底面、実装面(下方)側に露出された領域は、被覆部材40によって被覆されており、発光素子10のバンプ60と実装基板50の配線51とが接続され、被覆部材40はバンプ60どうしの間に介在し」ているから、甲2発明の「被覆部材40」は、請求項1に係る発明の「一対の電極を露出させるよう、発光素子の露出した角部と透光性部材の外面を覆う被覆部材」に相当する。
シリコーン樹脂(フィラーなし)の線膨張係数(×10-5/℃)は19.00であり(甲第5号証等参照。)、「白色顔料を添加したシリコーン樹脂組成物は、添加しない場合よりも線膨張係数が低減する」(甲第6号証等参照。)ものであり、発光素子を形成する基板や半導体材料の線膨張係数は、およそ10-6K-1のオーダーである(甲第4号証等参照。)ことに鑑みるに、甲2発明の「導光部材30はシリコーン樹脂であり、被覆部材40は、TiO2の微粒子である光反射性材料45を含有するシリコーン樹脂である」ことは、「シリコーン樹脂(フィラーなし)」の「導光部材30」と、「白色顔料を添加したシリコーン樹脂組成物」の「被覆部材40」であるから、甲2発明の「導光部材30」と「被覆部材40」及び「発光素子10」の線膨張係数は、この順で減小するものである。
ここで、「熱膨張率」は、1度の温度変化の際の体積や長さの寸法変化を表すパラメータであり、「長さ」の場合には、「線膨張係数」というものであるから、甲2発明における「被覆部材40」と「発光素子10」の線膨張率差と、「導光部材30」と「発光素子10」の線膨張率差の関係は、請求項1に係る発明の「前記被覆部材と前記発光素子との熱膨張率差が、前記透光性部材と前記発光素子との熱膨張率差よりも小さい」という関係を有しているといえる。
したがって、請求項1に係る発明と甲2発明とは、
「第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に複数の側面とを有し、前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有し、前記第2の面側に一対の電極を有する発光素子と、
複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの前記側面の一部を覆う透光性部材と、
前記一対の電極を露出させるよう、前記発光素子の露出した前記角部と前記透光性部材の外面を覆う被覆部材と、を含み、
前記被覆部材と前記発光素子との熱膨張率差が、前記透光性部材と前記発光素子との熱膨張率差よりも小さい、発光装置。
」である点で一致する。
そして、請求項1に係る発明は、「透光性部材」が、「少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆」っているのに対し、甲2発明は、「発光素子10の側面において、導光部材に対して底面、実装面(下方)側に露出された領域」は、「被覆部材40で被覆されて」いる点で相違する(以下、「相違点2」という。)。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
甲2発明では、「発光素子10の側面において、導光部材に対して底面、実装面(下方)側に露出された領域」は、「被覆部材40で被覆されて」おり、発光素子10の側面と底面の接する辺及び角部の全てが被覆部材40で被覆されているものである。
また、甲第2号証には、段落【0021】に「また、第1の被覆領域32は、接合領域31から発光素子10の側面に一様に延在して形成されてもよいが、離散的、部分的に接合領域31から発光素子10の側面に垂下して形成されてもよい。」との記載があるが、甲2発明において、発光素子10の側面と底面の接する辺及び角部を区別し、発光素子10の側面と底面の接する辺は、導光部材によって被覆し、発光素子10の側面と底面の接する角部を被覆部材40によって被覆することまで、示唆するものではない。
そして、甲第2号証の他の記載及び甲第1号証、甲第3号証ないし甲第6号証の記載を見ても、請求項1に係る発明の相違点2に係る構成とする記載や示唆はない。
さらに、請求項1に係る発明は、相違点2に係る構成を有することにより、「透光性部材が発光素子から剥離するのを抑制でき、発光装置の信頼性を向上することができる。」(本件明細書段落【0006】参照。)という効果を奏するものである。
したがって、請求項1に係る発明は、甲2発明及び甲第1号証ないし甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 請求項2に係る発明について
(1)甲1発明との対比、判断
ア 対比
上記1(1)「ア 対比」での相当関係を踏まえると、請求項2に係る発明と甲1発明は、
「第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に複数の側面とを有し、前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有し、前記第2の面側に一対の電極を有する発光素子と、
少なくとも1つの前記側面の一部と、当該少なくとも1つの側面と前記第2の面とが接する辺の一部とを覆う透光性部材と、
前記一対の電極を露出させるよう、前記透光性部材の外面を覆う被覆部材と、を含み、
前記被覆部材の熱膨張率が、前記透光性部材の熱膨張率よりも低い、発光装置。」である点で一致し、上記相違点1と同じ相違点を有する。
イ 判断
相違点1に対する判断は、上記1(1)「イ 判断」で説示したとおりである。
したがって、請求項2に係る発明は、甲1発明であるとはいえない。
また、請求項2に係る発明は、甲1発明及び甲第1号証ないし甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(2)甲2発明との対比、判断
ア 対比
上記1(2)「ア 対比」での相当関係を踏まえると、請求項2に係る発明と甲2発明は、
「第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に複数の側面とを有し、前記第2の面と前記複数の側面のうち2つとが接する角部を複数有し、前記第2の面側に一対の電極を有する発光素子と、
複数の前記角部の1つ以上を露出させるよう、少なくとも1つの前記側面の一部を覆う透光性部材と、
前記一対の電極を露出させるよう、前記発光素子の露出した前記角部と前記透光性部材の外面を覆う被覆部材と、を含み、
前記被覆部材の熱膨張率が、前記透光性部材の熱膨張率よりも低い、発光装置。」である点で一致し、上記相違点2と同じ相違点を有する。
イ 判断
相違点2に対する判断は、上記1(2)「イ 判断」で説示したとおりである。
したがって、請求項2に係る発明は、甲2発明及び甲第1号証ないし甲第6号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 請求項3~10に係る発明について
請求項3、7、8、10に係る発明は、請求項1又は2に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1又は2に係る発明についての判断と同様の理由により、甲1発明であるとはいえない。
請求項3~10に係る発明は、請求項1又は2に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1又は2に係る発明についての判断と同様の理由により、甲1発明又は甲2発明並びに甲第1号証~甲第6号証に記載された技術事項から当業者が容易になし得るものではない。
(4)小括
以上のとおり、請求項1~3、7、8、10に係る発明は、甲1発明であるとはいえないから、請求項1~3、7、8、10に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるとはいえない。
また、請求項1~10に係る発明は、甲1発明又は甲2発明並びに甲第1号証~甲第6号証に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~10に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700726