特許異議申立
2017-700705
溶解パルプ製造工程で発生する付着物の洗浄方法
- 審判番号
- 2017-700705
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-093392
- 登録番号
- 特許第6064141号(P6064141)
- 請求日
- 2017年07月21日
- 審決日
- 2017年09月12日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ナルコジャパン合同会社
- 【権利者代理人】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
- 【権利者】株式会社片山化学工業研究所
- 【権利者代理人】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
- 【異議申立人】椎名 一男
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 谿花 正由輝
- 審判官 蓮井 雅之
- 分類
- P1651.121-Y (D21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6064141号発明「溶解パルプ製造工程で発生する付着物の洗浄方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6064141号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6064141号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成27年4月30日に特許出願され、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年7月21日に特許異議申立人椎名一男(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
溶解パルプ製造工程における付着物の洗浄方法であって、
水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下とを、溶解パルプ製造工程水系に添加して溶解パルプ製造工程水系を洗浄することを含む、洗浄方法(但し、セルロース原料に、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方並びに過酸化水素供給化合物を添加する場合を除く)。
【請求項2】
洗浄対象である付着物は、50重量%以上の強熱(灼熱)減量と、1重量%以上の硫黄分とを含有する付着物を含む、請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方と過酸化水素供給化合物とを、黒液濃縮工程系に添加することを含む、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
洗浄対象である付着物は、黒液濃縮工程系のエバポレータの付着物である、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方と過酸化水素供給化合物とを、前加水分解釜とブローポンプとの間に添加することを含む、請求項1又は2に記載の
洗浄方法。
【請求項6】
洗浄対象である付着物は、前加水分解釜と蒸解釜との間に配置されたブローポンプの付着物である、請求項1、2又は5に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記過酸化水素供給化合物は、過酸化水素、過酢酸、過ホウ酸、過炭酸、ペルオキシ硫酸、過酸化尿素及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から6のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項8】
溶解パルプ製造工程における付着物の洗浄方法であって、
水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下とを、黒液濃縮工程系、及び前加水分解釜とブローポンプとの間の少なくとも一方に添加して溶解パルプ製造工程水系を洗浄することを含む、洗浄方法。
【請求項9】
溶解パルプ製造工程における付着物の洗浄方法であって、
水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下とを、溶解パルプ製造工程水系に添加して溶解パルプ製造工程水系を洗浄することを含み、
前記洗浄対象である付着物は、黒液濃縮工程系のエバポレータの付着物、及び前加水分解釜と蒸解釜との間に配置されたブローポンプの付着物の少なくとも一方の付着物を含む、洗浄方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の洗浄方法によって溶解パルプ製造工程水系を洗浄する工程を含む、溶解パルプの製造方法。」
第3 申立理由の概要
甲第1号証:江草清行、「原質・パルプ工程の付着物の洗浄」(報文概要)、紙パ技協誌第53巻第9号、紙パルプ技術協会、1999年9月1日発行、051頁
甲第2号証:特開平3-244698号公報
甲第3号証:内田洋介、「溶解パルプ製造をベースとしたバイオリファイナリー事業の概要」、第58回―2015年 紙パルプ技術協会年次大会 講演要旨集、紙パルプ技術協会、2015年10月7日発行、187~191頁
甲第4号証:腰塚哲夫、「パルプの過酸化水素漂白―過酸化水素を取り扱うための基礎知識―」、紙パ技協誌第49巻第4号、紙パルプ技術協会、1995年4月1日発行、657~664頁
以下、「特許異議申立書」を単に「申立書」という。また、「甲第1号証」等を単に「甲1」等という。
申立人は、証拠として甲1~4を提出し、請求項1~10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1~10に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
第4 甲号証の記載
1 甲1の記載
甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「原質・パルプ工程における、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが殆どであり、無機粒子同士に強い接着力が働いた緻密な構造のものであるスケールの洗浄方法であって、主に、キレート剤、界面活性剤、苛性ソーダを組み合わせたものを、原質・パルプ工程に添加して原質・パルプ工程水系を洗浄することを含む、洗浄方法。」
2 甲2の記載
甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている(請求項1、請求項4、「(ロ)従来の技術」欄、「(ハ)発明が解決しようとする課題」欄参照)。
「紙・パルプ製造工程における、金属塩類やカチオン化でんぷんを構成成分とする難剥離性のスラッジの洗浄法であって、特定の有機ホスホン酸又はその塩を有効成分として含有してなる洗浄剤を紙・パルプ製造工程に添加して紙・パルプ製造工程水系を洗浄することを含む、洗浄方法。」
3 甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(1)
「王子製紙(株)米子工場において、1954年には日本で最初の前加水分解-クラフトパルプ化法による溶解パルプ製造をスタートし、その後、1973年に溶解パルプの製造を終了するが、2014年、2系晒クラフトパルプ製造設備に前加水分解塔を挿入して溶解パルプ製造設備に転換し、溶解パルプの製造、販売を行っていること。」(第188頁、「2. 工場概要」参照。)
(2)
「前加水分解-クラフト法における溶解パルプの製造工程において、前加水分解液にはヘミセルロース以外に木材由来の少量リグニンが含まれており、これが加熱酸処理工程の各所で析出しスケールを発生させ、また「前加水分解時には、木材から酸可溶性の低分子リグニンが溶出し、これが酸性、高温化で高分子化して析出し、スケール化すること。」(特に第191頁「4.3現在の課題について」を参照。)
4 甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
「H2O2の活性酸素は非常に有機物の分解に優れ、水処理に応用した場合難分解性の有機化合物を完全に二酸化炭素や水にまで分解できる。・・・過酸化水素は漂白、排水処理等環境分野への応用・・・等多方面への用途が考えられる。」(特に第664頁左欄参照)。
第5 当審の判断
1 本件発明1について
申立人は、甲1発明及び甲2発明のいずれを主たる引用発明とするか明らかにしていないから、それぞれを主たる引用発明とした場合について、以下に検討する。
(1)甲1発明を主たる引用例とした場合について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の洗浄方法は、「溶解パルプ」の製造工程における付着物の洗浄を対象とし、「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下と」を、パルプ製造工程水系に添加してパルプ製造工程水系を洗浄するものである(但し、セルロース原料に、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方並びに過酸化水素供給化合物を添加する場合を除く)のに対し、甲1発明のものは、「原質・パルプ」の製造工程における「硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが殆どであり、無機粒子同士に強い接着力が働いた緻密な構造のものであるスケール」の洗浄を対象とし、「主に、キレート剤、界面活性剤、苛性ソーダを組み合わせたもの」を、原質・パルプ工程に添加して原質・パルプ工程水系を洗浄するものである点。
イ 判断
相違点1について、検討する。
本件発明1は、溶解パルプの製造工程における付着物の洗浄方法の発明である。溶解パルプは、レーヨンやセロファン等の原料として利用されるものであり、セルロースの純度が高いことが望まれることから、科学的に特別な精製によりヘミセルロースをできるだけ除去しセルロースの純度が高められるように製造されるものであり、パルプ中のセルロースの純度は通常90%を超えるものであって、パルプの歩留り向上の点からヘミセルロースを積極的に残すように製造される製紙パルプとは異なるものである(本件特許明細書段落0005参照)。そして、溶解パルプの製造工程における付着物は硫黄分を含み、かつ有機物を主体とするものであって、無機物を主体とする製紙パルプの製造工程における付着物とは組成が異なるものであるから、従来のパルプ製造工程における洗浄方法では十分に洗浄できないものである(同、段落0013参照)。
本件発明1は、このように製紙パルプとは製造方法及び組成が異なり、付着物の組成も異なり、製造工程で発生する付着物が従来の洗浄方法では十分に洗浄できない溶解パルプの製造工程において、「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下と」を、パルプ製造工程水系に添加してパルプ製造工程水系を洗浄することで、非常に高い付着物の除去率を得るものである(本件明細書段落0006、0036、0037等参照)。
一方、甲1発明の付着物は、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが殆どであり、無機粒子同士に強い接着力が働いた緻密な構造のものであって、無機物を主体とするものであり、その洗浄方法においても「主に、キレート剤、界面活性剤、苛性ソーダを組み合わせたもの」を、原質・パルプ工程に添加するものである。そうすると、本件発明1と甲1発明とは、洗浄対象が異なったものに対し、異なった洗浄方法を適用するものである。
そして、各甲号証のいずれにも、上記のような「溶解パルプ」の製造工程における付着物の洗浄に「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下と」を用いて相違点1の構成を備えるようにして、非常に高い付着物の除去率を得ることは、記載もないし、示唆する記載もない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の意見について
申立書の第14頁下から2行~第16頁第9行において、申立人は、前加水分解クラフトパルプ化法による溶解パルプ製造においてリグニンが析出してスケール化することは甲3に記載のように周知の課題であり、また甲4に記載の「過酸化水素のアルカリ性液が、非常に有機物の分解に優れること」は技術常識であるから、過酸化水素を溶解パルプ製造工程で発生する「有機物主体のスケール」の洗浄剤として用いてみることは容易想到である旨を主張する。
しかし、甲4には、汚水中の有機物の分解については記載されてはいるものの、溶解パルプの製造工程において発生するスケールの洗浄についてまでは記載されていない。仮に、「過酸化水素のアルカリ性液が、汚水中の有機物の分解に非常に優れること」が技術常識であったとしても、溶解パルプの製造工程において生じる有機物主体のスケールの洗浄においても優れることはただちにいえないから、申立人の主張を採用することはできない。
また、申立書の同箇所において申立人は、過酸化水素は紙パルプ産業で多用されてきたものであることから、溶解パルプ製造工程で発生する有機物主体のスケールの洗浄剤として用いてみることは容易想到である旨を主張する。
しかし、甲4によれば過酸化水素は紙パルプ産業の漂白工程で多用されてきたものであって(甲4の「1.はじめに」を参照)、これを溶解パルプ製造工程のスケールの洗浄剤として用いてみることが容易想到であるとはいえない。
なお、甲3は、本件特許の出願日の平成27年(2015年)4月30日より後の平成27年(2015年)10月7日に発行されたものであるが、申立人は、本願発明が解決しようとする課題自体が、甲3に記載されるように本件出願前に周知の課題であったと主張している。しかし、たとえそうした本願発明が解決しようとする課題自体が本件特許の出願前に周知であったとしても、上記のとおり本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
(2)甲2発明を主たる引用例とした場合について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明1の洗浄方法は、「溶解パルプ」の製造工程における付着物の洗浄を対象とし、「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下と」を、パルプ製造工程水系に添加してパルプ製造工程水系を洗浄するものである(但し、セルロース原料に、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方並びに過酸化水素供給化合物を添加する場合を除く)のに対し、甲2発明のものは、「紙・パルプ」の製造工程における「金属塩類やカチオン化でんぷんを構成成分とする難剥離性」のスラッジの洗浄方法であって、「特定の有機ホスホン酸又はその塩を有効成分として含有してなる洗浄剤」を紙・パルプ製造工程に添加して紙・パルプ製造工程水系を洗浄するものである点。
イ 判断
相違点2について、検討する。
上記「第5 1(1)イ」に示したとおり、本件発明1は、製紙パルプとは製造方法及び組成が異なり、製造工程で発生する付着物が従来の洗浄方法では十分に洗浄できない溶解パルプの製造工程において、「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下と」を、パルプ製造工程水系に添加してパルプ製造工程水系を洗浄することで、非常に高い付着物の除去率を得るものである(本件明細書段落0006、0036、0037等参照)。
一方、甲2発明のスラッジは、金属塩類やカチオン化でんぷんを構成成分とする難剥離性のものであり、その洗浄方法においても「特定の有機ホスホン酸又はその塩を有効成分として含有してなる洗浄剤」を紙・パルプ製造工程に添加するものである。そうすると、本件発明1と甲2発明は、洗浄対象が異なったものに対して異なる洗浄方法を適用するものである。
そして、各甲号証のいずれにも、「溶解パルプ」の製造工程における付着物の洗浄に「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも一方を5000mg/L以上150000mg/L以下と、過酸化水素供給化合物を過酸化水素換算で3000mg/L以上50000mg/L以下と」を用いて相違点2の構成を備えるようにして、非常に高い付着物の除去率を得ることは、記載もないし、示唆する記載もない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1、3、4に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の意見について
申立書の第16頁第10~21行において、申立人は、甲2の実施例5、6の効果について、以下のように主張する。
「この実施例5、6の効果は、実施例のテストピースの汚れが、紙力増強剤として「カチオン化デンプン」を用いた硫酸バン土を使用した製紙による強固に付着したスラッジ状汚れであるため、過酸化水素を併用することで、有機物である「カチオン化デンプン」を除去できたためであることが明らかである。すなわち、甲2には、紙・パルプ製造工程用洗浄剤における「過酸化水素-アルカリ剤系」のスケール中の有機物の除去効果を示しているということができる。」
しかし、カチオン化デンプンの除去に効果があったとしても、それがただちに、溶解パルプの製造工程における付着物の洗浄に効果があることを、少なくとも示唆する記載があるとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。
(3)小括
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 本件発明2~7について
本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものである。そして、上記「1(1)~(3)」に示したとおり本件発明1は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。したがって、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定された本件発明2~7は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
3 本件発明8について
(1)甲1発明を主たる引用例とした場合について
本件発明8と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも上記「1(1)ア」に示した相違点1で相違するが、上記「1(1)イ」に示したとおり、これらの点は容易想到ではない。
(2)甲2発明を主たる引用例とした場合について
本件発明8と甲2発明とを対比すると、両者は上記「1(2)ア」に示した相違点2で相違するが、上記「1(2)イ」に示したとおり、これらの点は容易想到ではない。
(3)小括
よって、本件発明8は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 本件発明9について
(1)甲1発明を主たる引用例とした場合について
本件発明9と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも上記「1(1)ア」に示した相違点1で相違するが、上記「1(1)イ」に示したとおり、これらの点は容易想到ではない。
(2)甲2発明を主たる引用例とした場合について
本件発明9と甲2発明とを対比すると、両者は上記「1(2)ア」に示した相違点2で相違するが、上記「1(2)イ」に示したとおり、これらの点は容易想到ではない。
(3)小括
よって、本件発明9は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1~9のいずれかを引用するものであって、本件発明1~9のいずれかの発明特定事項をすべて含むものである。そして、上記「1~3」に示したとおり本件発明1~9は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。したがって、本件発明1~9のいずれかの発明特定事項を全て含みさらに限定された本件発明10は、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲2発明及び甲1、3、4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 まとめ
よって、本件発明1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~10を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~10を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700705