特許異議申立
2017-700276
古紙パルプの漂白方法
- 審判番号
- 2017-700276
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-159525
- 登録番号
- 特許第6023953号(P6023953)
- 請求日
- 2017年03月16日
- 審決日
- 2018年06月29日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ナルコジャパン合同会社
- 【権利者代理人】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
- 【権利者】株式会社片山化学工業研究所
- 【権利者代理人】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
- 【異議申立人】和田 直人
- 【異議申立人】椎名 一男
- 審判長/審判官
- 審判長 渡邊 豊英
- 審判官 蓮井 雅之
- 審判官 井上 茂夫
- 分類
- P1651.113-YAA(D21C) / P1651.121-YAA(D21C) / P1651.536-YAA(D21C) / P1651.537-YAA(D21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6023953号発明「古紙パルプの漂白方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6023953号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第6023953号の請求項1、2、4~7、9に係る特許を維持する。
特許第6023953号の請求項3及び8に係る特許についての申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第6023953号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成25年7月31日の出願であって、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立て期間内である平成29年3月16日に特許異議申立人和田直人(以下「申立人1」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年5月9日に特許異議申立人椎名一男(以下「申立人2」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年7月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年9月25日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年10月26日に申立人1より意見書が提出され、平成29年10月31日に申立人2より意見書が提出され、平成30年1月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年3月23日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年4月19日に申立人2より意見書が提出され、平成30年4月26日に申立人1より意見書が提出されたものである。
なお、平成29年9月25日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求
1.訂正の内容
平成30年3月23日の訂正の請求は、「特許第6023953号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「古紙パルプスラリーを、モノクロラミン及び/又はモノブロラミン並びに過酸化水素と接触させる」とあるのを、
「モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させる」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び9についても同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「接触させることを含む、古紙パルプの漂白方法」とあるのを、
「接触させることを含み、
前記モノクロラミンの濃度が、残留塩素量として、1~25mg/Lである、古紙パルプの漂白方法」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び9についても同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「古紙パルプスラリーを、モノクロラミン及び/又はモノブロラミン並びに過酸化水素と接触させる」とあるのを、
「モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させる」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~7及び9についても同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に
「接触させることを含む、古紙パルプの白色度向上方法」とあるのを、
「接触させることを含み、
前記モノクロラミンの濃度が、残留塩素量として、1~25mg/Lである、古紙パルプの白色度向上方法」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~7及び9についても同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、及びこれらの少なくとも2種以上の混合物」とあるのを、
「硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及びこれらの混合物」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7及び9についても同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から3のいずれかに記載の漂白方法又は請求項4から8のいずれかに記載の白色度向上方法」とあるのを、
「請求項1又は2のいずれかに記載の漂白方法又は請求項4から7のいずれかに記載の白色度向上方法」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0033】に
「含水率を32%に調整し、32%パルプ原料を得た」とあるのを、
「含水率を調整し、32%パルプ原料を得た」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0033】に
「含水率を16%に調整し、16%パルプ原料を得た」とあるのを、
「含水率を調整し、16%パルプ原料を得た」に訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1は、訂正前の請求項1の「古紙パルプスラリーを、モノクロラミン及び/又はモノブロラミン並びに過酸化水素と接触させる」を、古紙パルプに接触させる薬剤及び接触の順序について、「モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させる」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正事項1は、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び9についても上記のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項1は古紙パルプに接触させる薬剤及び接触の順序について限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び9に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書」という。」)の「本開示は、過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白方法において、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンに接触させた古紙パルプスラリーに、過酸化水素による漂白を行うことにより、過酸化水素の使用量を大幅に削減でき、また、白色度が向上された古紙パルプが製造できる、との本発明者らによって見出された知見に基づく。」(【0008】)という記載に基づくものである。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア.訂正事項2は、モノクロラミンの濃度について、訂正前の請求項1には特定がなかったものを「モノクロラミンの濃度が、残留塩素量として、1~25mg/Lである」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正事項1は、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び9についても上記のとおり減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項2はモノクロラミンの濃度について限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び9に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項2は、本件特許明細書の「モノクロラミン及び/又はモノブロラミンの濃度は、一又は複数の実施形態において、残留塩素量として、0.5~30mg/Lであり、漂白性向上の点から、1~30mg/Lが好ましく、経済性の点から、1~25mg/L又は1~20mg/Lが好ましい。残留塩素量は、一又は複数の実施形態において、要求される漂白性(白色度)によって決定できる。」(【0016】)という記載に基づくものである。
よって、訂正事項2は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア.訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4)訂正事項4について
ア.訂正事項4は、訂正前の請求項4の「古紙パルプスラリーを、モノクロラミン及び/又はモノブロラミン並びに過酸化水素と接触させる」を、古紙パルプに接触させる薬剤及び接触の順序について、「モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させる」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正事項4は、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5~7及び9についても上記のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項4は古紙パルプに接触させる薬剤及び接触の順序について限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5~7及び9に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項4は、本件特許明細書の「本開示は、過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白方法において、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンに接触させた古紙パルプスラリーに、過酸化水素による漂白を行うことにより、過酸化水素の使用量を大幅に削減でき、また、白色度が向上された古紙パルプが製造できる、との本発明者らによって見出された知見に基づく。」(【0008】)という記載に基づくものである。
よって、訂正事項4は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(5)訂正事項5について
ア.訂正事項5は、モノクロラミンの濃度について、訂正前の請求項4には特定がなかったものを「モノクロラミンの濃度が、残留塩素量として、1~25mg/Lである」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正事項5は、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5~7及び9についても上記のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項5はモノクロラミンの濃度について限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5~7及び9に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項5は、本件特許明細書の「モノクロラミン及び/又はモノブロラミンの濃度は、一又は複数の実施形態において、残留塩素量として、0.5~30mg/Lであり、漂白性向上の点から、1~30mg/Lが好ましく、経済性の点から、1~25mg/L又は1~20mg/Lが好ましい。残留塩素量は、一又は複数の実施形態において、要求される漂白性(白色度)によって決定できる。」(【0016】)という記載に基づくものである。
よって、訂正事項5は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(6)訂正事項6について
ア.訂正事項6は、アンモニア化合物について、訂正前の請求項6の「硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、及びこれらの少なくとも2種以上の混合物」を「硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及びこれらの混合物」と選択肢を減らして限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正事項6は、訂正後の請求項6を引用する訂正後の請求項7及び9についても上記のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項6はアンモニア化合物について限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項6を引用する訂正後の請求項7及び9に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項6は、本件特許明細書の「(調製例A)次亜塩素酸ナトリウムと硫酸アンモニウムとの混合液の調製・・・ (調製例D)次亜塩素酸ナトリウムと塩化アンモニウムとの混合液の調製」(【0032】)という記載に基づくものである。
よって、訂正事項6は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(7)訂正事項7について
ア.訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(8)訂正事項8について
ア.訂正事項8は、請求項9が引用する請求項から、削除された請求項3及び8を除くものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項8は、請求項9が引用する請求項から、削除された請求項3及び8を除くものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項8は、請求項9が引用する請求項から、削除された請求項3及び8を除くものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(9)訂正事項9について
ア.願書に最初に添付した明細書の【0043】の「・・・パルプ濃度20%に脱水した。得られた20%パルプ原料に・・・」との記載、及び同【0017】の「本開示の漂白方法において、パルプ濃度は、一又は複数の実施形態において、5~30重量%、好ましくは10~25重量%である。」との記載から、「○○%パルプ原料」の「○○%」は、パルプ濃度(固形分濃度重量%)を指すことは、明らかである。そうすると、「含水率を32%に調整し、」と「32%(当審注:32%のパルプ濃度、すなわち含水率68%)パルプ原料を得た」とは矛盾するから、訂正前の【0033】の「含水率を32%に調整し、32%パルプ原料を得た」の記載は、明らかな誤記であり、訂正事項9は、その誤記を訂正して「含水率を調整し、32%パルプ原料を得た」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項9は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項9は、本件特許明細書の【0017】、【0033】及び【0043】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項9は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(10)訂正事項10について
ア.訂正事項9で述べた理由と同様の理由により、訂正事項10は、誤記を訂正して「含水率を調整し、16%パルプ原料を得た」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ.上記ア.の理由から明らかなように、訂正事項10は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ.訂正事項10は、本件特許明細書の【0017】、【0033】及び【0043】の記載に基づくものである。
よって、訂正事項10は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
3.一群の請求項について
訂正前の請求項9は、請求項1~8を引用しているので、訂正前の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項9及び10は、当該一群の請求項1~9を対象とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。
4.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第4項ないし第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1、2、4~7、9に係る発明(以下「本件発明1、2、4~7、9」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~7、9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白方法であって、
モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させることを含み、
前記モノクロラミンの濃度が、残留塩素量として、1~25mg/Lである、古紙パルプの漂白方法。
【請求項2】
前記過酸化水素の添加率が、対パルプあたり0.5~5.0重量%である、請求項1記載の漂白方法。
【請求項4】
過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白工程において、
モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させることを含み、
前記モノクロラミンの濃度が、残留塩素量として、1~25mg/Lである、古紙パルプの白色度向上方法。
【請求項5】
前記漂白は、次亜塩素酸ナトリウム及びアンモニウム化合物が添加された古紙パルプスラリーに、過酸化水素を添加することを含む、請求項4記載の向上方法。
【請求項6】
前記アンモニウム化合物が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5記載の向上方法。
【請求項7】
前記過酸化水素の添加率が、対パルプあたり0.5~5.0重量%である、請求項5又は6記載の向上方法。
【請求項9】
請求項1又は2のいずれかに記載の漂白方法又は請求項4から7のいずれかに記載の白色度向上方法を行うことを含む、古紙パルプの製造方法。」
第4 当審の判断
1.取消理由の概要
平成29年7月26日付け取消理由及び平成30年1月19日付け取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、申立人1及び申立人2の申し立てた特許異議申立理由は全て通知した。
<理由1>
本件発明1、2、4~7、9は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
<理由2>
本件発明1、2、4~7、9は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<理由3>
本件特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
記
以下、申立人1による特許異議申立書を「申立書1」、申立人2による特許異議申立書を「申立書2」とする。 また、「刊行物1に記載された発明」等を「刊行物1発明」等といい、「刊行物1に記載された事項」等を「刊行物1記載事項」等という。
<刊行物等一覧>
刊行物1:特開2009-160580号公報(申立書1の甲第1号証)
刊行物2:米国特許出願公開第2003/0121868号明細書(申立書1の甲第2号証)
刊行物3:特開2010-236166号公報(申立書1の甲第3号証)
刊行物4:特表平8-507932号公報(申立書1の甲第4号証)
刊行物5:特表2003-514569号公報(申立書1の甲第5号証)
刊行物6:欧州特許出願公開第2202206号明細書(申立書1の甲第6号証)
刊行物7:特許第4713081号公報(申立書2の甲第1号証)
1.<理由1:第29条第1項第3号>及び<理由2:第29条第2項>
(1)刊行物1を主たる引用例とする理由
本件発明1、2、4~7、9は、刊行物1発明である。
本件発明1、2、4~7、9は、刊行物1発明及び周知技術(刊行物3~刊行物6)に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。
(2)刊行物7を主たる引用例とする理由
本件発明1、5、9は、刊行物7発明である。
本件発明1、2、4~7、9は、刊行物7発明に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。
(3)刊行物3を主たる引用例とする理由
本件発明1は、刊行物3発明及び刊行物1記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2、4~7、9は、刊行物3発明及び刊行物3、刊行物1記載事項に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。
2.<理由3:第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び第2号>
(1)請求項1、4には、「モノブロラミン」なる用語が記載されているが、「モノブロラミン」は、一般的な技術用語とはいえず、「モノブロラミン」がどのような物質を指すの不明である。
よって、本件発明1、4、及びそれらを引用する本件発明2、5、6、9は明確でない。
(2)本件発明1、4の「モノブロラミン」を用いたものについて、発明の詳細な説明には、段落【0012】に、「本開示の漂白方法において、モノクロラミン等との接触は、一又は複数の実施形態において、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを生成する薬剤、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを含む薬剤を使用することにより行うことができる。このような薬剤としては、一又は複数の実施形態として、次亜塩素酸ナトリウムと、硫酸アンモニウム及び/又は臭化アンモニウムとを含む薬剤等が挙げられる。・・・モノブロラミンは、一又は複数の実施形態において、次亜臭素酸ナトリウムと、アンモニウム化合物とを混合することにより生成できる。・・・」と記載されるだけで、実施例を挙げる等して、当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。
よって、本件発明1、4及びそれらを引用する本件発明2、5~7、9は、発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載したものではない。
(3)本件発明1、2、4~7、9は、「過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白において、過酸化水素の使用量を低減できる」(本件特許明細書【0007】)という課題を解決するものである。
本件発明1、4の「モノブロラミン」を用いたものに関して、発明の詳細な説明には、上記課題を解決し得るものなのか、実施例を挙げて実証的な説明がなされていない。
よって、本件発明1、4及びそれらを引用する本件発明2、5~7、9は、上記課題を解決し得ないものを含み得るものであり、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
(4)本件発明6の「次亜塩素酸ナトリウム」及び「スルファミン酸アンモニウム」を用いたものについて、発明の詳細な説明には、実施例を挙げる等して当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。
よって、本件発明6、及び本件発明6を引用する本件発明7~9は、発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載したものではない。
(5)本件発明6、7、9は、「過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白において、過酸化水素の使用量を低減できる」(本件特許明細書【0007】)という課題を解決するものである。
本件発明6の「次亜塩素酸ナトリウム」及び「スルファミン酸アンモニウム」を用いたものに関して、発明の詳細な説明には、上記課題を解決し得るものなのか、実施例を挙げて実証的な説明がなされていない。
よって、本件発明6及び本件発明6を引用する本件発明7及び9は、上記課題を解決し得ないものを含み得るものであり、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。
(6)本件発明1は、モノクロラミン及び過酸化水素と接触させる古紙パルプスラリーのパルプ濃度が10~25重量%であるが、【0033】~【0036】の(実施例1)~(実施例4)、【0043】~【0044】の(実施例5)~(実施例6)のいずれも、モノクロラミン及び過酸化水素と接触させる古紙パルプスラリーのパルプ濃度が10~25重量%の範囲のものではないので、(実施例1)~(実施例6)のいずれも、本件発明1の実施例ではない。したがって、本件発明1が、本件発明1の課題「過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白において、過酸化水素の使用量を低減可能な古紙パルプの漂白方法を提供する」(明細書【0004】)を解決していることについて、発明の詳細な説明には具体的な実施例等を用いて実証的に説明されていない。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。
2.理由3(特許法第36条第4項第1号、同第36条第6項第1号及び第2号)についての判断
事案に鑑み、まず理由3について検討する。
(1)特許法第36条第6項第2号に係る理由
理由3の(1)について(「モノブロラミン」に関して)、本件訂正により、本件発明1及び4は、「モノブロラミン」に関する特定を含まないものとなった。
よって、本件発明1、4及びそれらを引用する本件発明2、5~7、9は明確でないとはいえない。
(2)特許法第36条第4項第1号に係る理由
ア.理由3の(2)について(「モノブロラミン」に関して)
本件訂正により、本件発明1及び4は、「モノブロラミン」に関する特定を含まないものとなった。
よって、本件発明1、4及びそれらを引用する本件発明2、5~7、9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載したものではないとはいえない。
イ.理由3の(4)について(「次亜塩素酸ナトリウム」及び「スルファミン酸アンモニウム」に関して)
本件訂正により、本件発明6は、「次亜塩素酸ナトリウム」及び「スルファミン酸アンモニウム」に関する特定を含まないものとなった。
よって、本件発明6及びそれらを引用する本件発明7、9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載したものではないとはいえない。
(3)特許法第36条第6項第1号に係る理由
ア.理由3の(3)について(「モノブロラミン」に関して)
本件訂正により、本件発明1及び4は、「モノブロラミン」に関する特定を含まないものとなった。
よって、本件発明1、4及びそれらを引用する本件発明2、5~7、9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。
イ.理由3の(5)について(「次亜塩素酸ナトリウム」及び「スルファミン酸アンモニウム」に関してに関して)
本件訂正により、本件発明6は、「次亜塩素酸ナトリウム」及び「スルファミン酸アンモニウム」に関する特定を含まないものとなった。
よって、本件発明6及びそれらを引用する本件発明7、9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。
ウ.理由3の(6)について(「古紙パルプスラリーのパルプ濃度」に関して)
本件訂正により、本件発明1及び4は、「古紙パルプスラリーのパルプ濃度」に関する特定を含まないものとなった。
よって、本件発明1、4及びそれらを引用する本件発明2、5~7、9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明でないとはいえない。
(4)小括
よって、本件特許明細書の記載及び本件発明1、2、4~7、9は、特許法第36条第4項第1項、第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、本件発明1、2、4~7、9に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、理由3によっては、取り消されるべきものとすることはできない。
3.理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)についての判断
(1)刊行物記載事項及び刊行物発明
ア.刊行物1
刊行物1(特に、【0001】、【0020】、【0249】~【0261】の【実施例5】及び【実施例6】、【0250】の【表5】の(NH4Cl+NaOClの58ppm、128ppmの行))には、以下の刊行物1発明が記載されている。
「NH4Cl+NaOClで生成したモノクロロアミン(MCA)を、H2O2とカタラーゼを有する古紙の脱インクプロセス水に加え、カタラーゼのH2O2を分解する作用を不活性にし、H2O2の残留濃度の減少を防ぐ方法。」
イ.刊行物3
刊行物3(特に、【請求項1】、【0001】、【0010】~【0014】、【0030】の[実施例1])には、以下の刊行物3発明が記載されている。
「過酸化水素を用いた、古紙を原料とした脱墨パルプの漂白方法であって、
古紙を原料とした脱墨パルプに、過酸化水素を含む薬品と過酸化水素によって分解されない化合物であるカタラーゼ抑制剤を混合して添加する、古紙を原料とした脱墨パルプの漂白方法。」
ウ.刊行物7
刊行物7は、刊行物1に係る出願の原出願の特許公報であり、実質的に刊行物1発明と同じ刊行物7発明が記載されている。
(2)刊行物1を主たる引用例とする理由1
ア.本件発明1について
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「モノクロロアミン(MCA)」、「H2O2」は、それぞれ、本件発明1の「モノクロラミン」、「過酸化水素」に相当する。
そうすると、本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1では、モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させているのに対して、刊行物1発明では、モノクロラミンを、過酸化水素とカタラーゼを有する古紙の脱インクプロセス水に加えている点。
上記相違点1-1について検討する。
刊行物1の【0253】には「あらゆる実用的な目的のため、MCA及びFuzzicide BACは適正費用のバイオフィルム生成を阻害するのに最適化された供給量レベルで投与されると、過酸化物分解酵素を非活性化する効果を持たない。従って、過酸化物分解酵素カタラーゼに対するこれらバイオフィルム阻害物質の作用形態は、酵素の直接不活性化以外の機構に従って作用しなければならない。本実施例は、H2O2と即座に反応するHOCI及びHOBrとは異なり、MCA及びFuzzicide BACがH2O2を酸化しないことを示している。この特性は、MCA及びFuzzicide BACが、高い背景濃度のH2O2の存在下、又はH2O2を含む混合物中でバイオフィルム阻害物質として用いられることを可能にする。」(下線は当審で付与。)と、また、同じく【0254】には「脱インクシステムは、古紙1トン当たり7~10kgのH2O2を用いていた。グルタルアルデヒド等の従来の殺生剤を用いたH2O2の酵素分解を制御するためのこれまでの試みは、このシステムでの費用効率の高い結果をもたらさなかった。同一の工場の並列した脱インクシステムは同一供給源からの古紙に同様の脱インクプロセスを利用しており、グルタルアルデヒドを含む市販の化学的処方で首尾よく処理された:この脱インクプロセスにおける平均H2O2消費率が古紙1トン当たり約4kgのH2O2にまで低減した。Fuzzicide BAC技術での試験開始に先立って行われた測定は、脱インク工場の種々の部分で高い微生物負荷が存在することを示し、多量のスライムの蓄積を示唆した。大量のH2O2の初期投与にもかかわらず、システムの流路に沿った種々の点にて検出したH2O2の残留物は極めて僅かであった。」と、また同じく、【0255】には、「次に特許文献7において説明される産生/供給システムでその場で産生されたFuzzicide BACを、850分間にわたってプロセス水に連続的に供給した。」と記載されており、これらの記載からすると、バイオフィルム阻害物質(モノクロラミン)は、H2O2が含まれる脱インキプロセスに投入されるものであり、本件発明1のように、モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させているものではない。
よって、上記相違点1-1は実質的なものであり、本件発明1は、刊行物1発明ではない。
イ.本件発明4について
本件発明4と刊行物1発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1-2>
本件発明4では、モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させているのに対して、刊行物1発明では、モノクロラミンを、過酸化水素とカタラーゼを有する古紙の脱インクプロセス水に加えている点。
上記相違点1-2は、上記ア.の本件発明1について検討した相違点1-1と実質的に同じであるから、同様の理由により、実質的な相違点である。
よって、本件発明4は、刊行物1発明ではない。
ウ.本件発明2、5~7、9について
本件発明2、5~7、9は、本件発明1又は本件発明4の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1又は本件発明4について述べた理由と同様の理由により、刊行物1発明ではない。
(3)刊行物7を主たる引用例とする理由1
刊行物7発明は、刊行物1発明と実質的に同じであるから、上記(2)で述べた理由と同様の理由により、本件発明1、5、9は、刊行物7発明ではない。
(4)刊行物1を主たる引用例とする理由2
ア.本件発明1について
本件発明1と刊行物1発明とは、少なくとも上記相違点1-1で相違する。
上記相違点1-1について検討する。
刊行物1発明は、「工業用水及び吸水ラインにおけるバイオフィルムの生成の制御」(刊行物1【0001】)に関するもので、刊行物1には、「モノクロラミンと接触させた古紙パルプスラリーを、過酸化水素と接触させている」点は、記載されていないし示唆もない。また、周知技術として挙げられている刊行物3~刊行物6にも、その点は記載されていないし、示唆もない。
一方、本件発明1は、「過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白において、過酸化水素の使用量を低減可能な古紙パルプの漂白方法を提供する」(本件特許明細書【0004】)ことを課題とするもので、相違点1-1に係る構成を有することにより、「本開示の漂白方法によれば、過酸化水素を単独で使用する場合と比較して、過酸化水素の使用量を、一又は複数の実施形態において、5~50重量%、好ましくは10~50重量%削減することができる。」(本件特許明細書【0019】)という作用効果を奏する。
したがって、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、刊行物1発明及び周知技術(刊行物3~刊行物6)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ.本件発明4について
本件発明4と刊行物1発明とは、少なくとも上記相違点1-2で相違する。
上記相違点1-2を検討する。
相違点1-2は、上記ア.の本件発明1について検討した相違点1-1と実質的に同じであるから、同様の理由により、相違点1-2に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明4は、刊行物1発明及び周知技術(刊行物3~刊行物6)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ.本件発明2、5~7、9について
本件発明2、5~7、9は、本件発明1又は本件発明4の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1又は本件発明4について述べた理由と同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術(刊行物3~刊行物6)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)刊行物7を主たる引用例とする理由2
刊行物7発明は、刊行物1発明と実質的に同じであるから、上記(4)で述べた理由と同様の理由により、本件発明1、2、4~7、9は、刊行物7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)刊行物3を主たる引用例とする理由2
ア.本件発明1について
本件発明1と刊行物3発明とを対比すると、古紙を原料とする脱墨パルプの処理工程では、パルプをスラリーで処理を行うことは、製紙分野の技術常識であるから、刊行物3発明の「古紙を原料とした脱墨パルプ」は、本件発明1の「古紙パルプスラリー」に相当する。
そうすると、本件発明1と刊行物3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3-1>
過酸化水素水とともに使用する薬剤を、本件発明1では、過酸化水素水との接触に先立ち古紙パルプスラリーと接触させるのに対して、刊行物3発明では、過酸化水素と混合して添加する点。
<相違点3-2>
過酸化水素水と一緒にパルプに接触される物質が、本件発明1では、残留塩素量として1~25mg/Lであるモノクロラミンであるのに対して、刊行物3発明では、過酸化水素によって分解されない化合物であるカタラーゼ抑制剤である点。
上記相違点3-1を検討する。
刊行物3発明は、「脱墨パルプ製造工程において、過酸化水素を含む薬品を添加する工程におけるカタラーゼを効果的に不活性化し、最終的な過酸化水素添加量の低減による漂白薬品コストの低減」(刊行物3【0010】)を課題としている。そして、刊行物3発明は、「本発明の脱墨パルプの製造方法によれば、脱墨パルプの製造工程において、カタラーゼ抑制剤と過酸化水素を含む薬品を混合して添加するという簡便な方法により漂白効率を向上させることが可能となり、過酸化水素の使用量の低減、あるいは同等の過酸化水素の添加量で比較した場合は白色度を向上させることができる。」(刊行物3【0013】)という効果するものである。したがって、「カタラーゼ抑制剤と過酸化水素を含む薬品を混合して添加する」ことを前提とする、刊行物3発明において、過酸化水素水とともに使用する薬剤(カタラーゼ抑制剤)を、過酸化水素水との接触に先立ち古紙パルプスラリーと接触させるようにすることは、刊行物3発明の課題や効果に反することから、刊行物3発明において、相違点3-1に係る構成を採用する動機付けがない。また、刊行物1にも、「過酸化水素水とともに使用する薬剤(モノクロラミン)を、過酸化水素水との接触に先立ち古紙パルプスラリーと接触させる」点について記載も示唆もない。
一方、本件発明1は、「過酸化水素を用いた古紙パルプの漂白において、過酸化水素の使用量を低減可能な古紙パルプの漂白方法を提供する」(本件特許明細書【0004】)ことを課題とするもので、相違点3-1に係る構成を有することにより、「本開示の漂白方法によれば、過酸化水素を単独で使用する場合と比較して、過酸化水素の使用量を、一又は複数の実施形態において、5~50重量%、好ましくは10~50重量%削減することができる。」(本件特許明細書【0019】)という作用効果を奏する。
したがって、相違点3-1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明1は、上記相違点3-2を検討するまでもなく、刊行物3発明及び刊行物1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ.本件発明4について
本件発明4と刊行物3発明とを対比すると、本件発明4と刊行物3発明とは、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3-3>
過酸化水素水とともに使用する薬剤を、本件発明1では、過酸化水素水との接触に先立ち古紙パルプスラリーと接触させるのに対して、刊行物3発明では、過酸化水素と混合して添加する点。
<相違点3-4>
過酸化水素水と一緒にパルプに接触される物質が、本件発明1では、残留塩素量として1~25mg/Lであるモノクロラミンであるのに対して、刊行物3発明では、過酸化水素によって分解されない化合物であるカタラーゼ抑制剤である点。
上記相違点3-3を検討する。
相違点3-3は、上記ア.の本件発明1について検討した相違点3-1と実質的に同じであるから、同様の理由により、相違点3-3に係る本件発明4の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明4は、上記相違点3-4を検討するまでもなく、刊行物3発明、刊行物3記載事項及び刊行物1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ.本件発明2、5~7、9について
本件発明2、5~7、9は、本件発明1又は本件発明4の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1又は本件発明4について述べた理由と同様の理由により、刊行物3発明、刊行物3記載事項及び刊行物1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)小括
以上のとおり、本件発明1、2、4~7、9は、刊行物1発明ではなく、本件発明1、5、9は、刊行物7発明ではない。
よって、本件発明1、2、4~7、9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号には該当せず、特許法第113条第2号に該当せず、理由1によっては、取り消されるべきものとすることはできない。
また、以上のとおり、本件発明1、2、4~7、9は、刊行物1発明及び周知技術(刊行物3~刊行物6)、あるいは、刊行物7発明、あるいは、刊行物3発明及び刊行物1記載事項、あるいは、刊行物3発明、刊行物3記載事項及び刊行物1記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件発明1、2、4~7、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、特許法第113条第2号に該当せず、理由2によっては、取り消されるべきものとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1、2、4~7、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2、4~7、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項3及び8は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項3及び8に対して申立人1及び2がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項3及び8に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700276