特許異議申立
2017-700623
畜肉練り製品およびその製造方法
- 審判番号
- 2017-700623
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-538609
- 登録番号
- 特許第6048413号(P6048413)
- 請求日
- 2017年06月20日
- 審決日
- 2018年04月17日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】高島 一
- 【権利者代理人】鎌田 光宜
- 【権利者代理人】土井 京子
- 【権利者代理人】竹井 増美
- 【異議申立人】岡田 晃明
- 審判長/審判官
- 審判長 紀本 孝
- 審判官 窪田 治彦
- 審判官 井上 哲男
- 分類
- P1651.113-ZDA(A23L) / P1651.121-ZDA(A23L) / P1651.16 -ZDA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6048413号発明「畜肉練り製品およびその製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6048413号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2,〔3-4〕,5について訂正することを認める。
特許第6048413号の請求項2に係る特許を取り消す。
特許第6048413号の請求項1及び5に係る特許を維持する。
特許第6048413号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯の概略
特許第6048413号(以下「本件特許」という。)に係る出願は,2012年10月11日(優先権主張:2011年10月12日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成28年12月2日に特許権の設定登録がなされ,平成28年12月21日に特許掲載公報が発行されたところ,平成29年6月20日に特許異議申立人岡田晃明により全請求項について特許異議の申立てがなされた。
当審において,平成29年8月22日付けで取消理由を通知したところ,特許権者より平成29年10月20日付けで意見書と訂正請求書が提出され,特許異議申立人より平成29年11月22日付けで意見書が提出された。
その後,当審において,平成30年1月4日付けで取消理由を通知したが(決定の予告),特許権者より何らの応答はなかった。
以下,平成29年10月20日付けの訂正請求書を「本件訂正請求書」といい,これに係る訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は,本件特許の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものであって,その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「原料肉100gあたり」と記載されているのを,「つなぎを使用せず,原料肉100gあたり」に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「原料肉100gあたり」,「食塩無添加の畜肉練り製品の製造方法」と記載されているのを,それぞれ,「つなぎを使用せず,原料肉100gあたり」,「結着性の向上した食塩無添加の畜肉練り製品の製造方法」に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「原料肉100gあたり」と記載されているのを,「つなぎを使用せず,原料肉100gあたり」に訂正する。
2 本件訂正の適否について
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は,請求項1の「畜肉練り製品の製造方法」について,「つなぎを使用せず」に,畜肉練り製品を製造する方法に減縮する訂正であるから,訂正事項1に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,本件訂正前の特許請求の範囲には「つなぎを使用せず,原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニンまたはその塩を用いることを特徴とする,つなぎ不使用の畜肉練り製品の製造方法。」(【請求項3】)と記載され,本件特許明細書には,「(3)つなぎを使用せず,原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニンまたはその塩を用いることを特徴とする,つなぎ不使用の畜肉練り製品の製造方法。」(【0003】)と記載されている。
よって,訂正事項1は,新規事項を追加するものではない。
そして,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は,請求項2の「食塩無添加の畜肉練り製品の製造方法」について,「つなぎを使用せず」に,「結着性の向上した」食塩無添加の畜肉練り製品を製造する方法に減縮する訂正であるから,訂正事項2に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,前記(1)の記載に加え,本件訂正前の特許請求の範囲には,「原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニン又はその塩を添加することを特徴とする,食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法。」(【請求項5】)と記載され,本件特許明細書には,「(6)原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニン又はその塩を添加することを特徴とする,食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の歩留り向上方法又は物性向上方法。」(【0003】)と記載されている。
よって,訂正事項2は,新規事項を追加するものではない。
そして,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(3) 訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は,それぞれ,請求項3及び請求項4を削除するものであるから,訂正事項3及び4に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,訂正事項3及び4は,新規事項を追加するものではないとともに,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(4) 訂正事項5について
訂正事項5は,請求項5の「畜肉練り製品の歩留まり向上方法又は結着性向上方法」について,「つなぎを使用せず」に,畜肉練り製品の歩留まりを向上させる方法又は結着性を向上させる方法に減縮する訂正であるから,訂正事項5に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,本件訂正前の特許請求の範囲,本件特許明細書の前記記載(前記(1))からすると,訂正事項5は,新規事項を追加するものではないとともに,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
(5) さらに,本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。
(6) 以上のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって,同条4項及び同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,2,〔3-4〕,5について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1~5に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って,「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
つなぎを使用せず,原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニン又はその塩を添加することを特徴とする,食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の製造方法。
【請求項2】
つなぎを使用せず,原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニン又はその塩を用いることを特徴とする,結着性の向上した食塩無添加の畜肉練り製品の製造方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
つなぎを使用せず,原料肉100gあたりアルギニン換算で0.0001g~10gのアルギニン又はその塩を添加することを特徴とする,食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法。
第4 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は,概ね,次のとおりである。
1 本件特許の請求項1及び5に係る発明は,その優先日前の特許出願であって,その優先日後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲2号証(下記4)に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件特許の請求項1~5に係る発明は,本件特許の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された甲7号証又は甲8号証(下記4)に記載された発明であって,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 本件特許の請求項1~5に係る発明は,本件特許の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された甲4号証,甲7号証又は甲8号証(下記4)に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
4 証拠方法
特許異議申立人が提出した証拠方法(甲1~8号証)は以下のとおりである。以下各証拠を,その証拠番号に従い「甲1」などという。
甲1:特開2012-147768号公報(特願2011-77578号)
甲2:特開2011-254762号公報(特願2010-132838号)
甲3:特開2011-147373号公報
甲4:国際公開第2011/074219号
甲5:特公昭43-11727号公報
甲6:特開平7-155138号公報
甲7:特開昭63-126470号公報
甲8:特開昭48-5967号公報
第5 甲1~8について
1 甲1
甲1に記載された事項(特に,【0071】~【0078】(実施例6))からすると,甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲1発明」という。)。
(甲1発明)
「豚肉ブロック500gに対して,ピックル液を150g注入し,ピックル液150g注入後の,原料肉中の食塩及びアルギニン濃度が,それぞれ,0%,0.7%であり,その後,タンブリング処理を6時間施し,4℃の冷蔵庫で3日間熟成後,ファイブラスケーシングに充填し,加熱及び冷却を行い,4℃の冷蔵庫で冷水に漬け,2回冷水を入れ替えながら2日間又は8日間浸漬して脱塩処理を行った,ブロック状の脱塩ハムの製造方法。」
2 甲2
(1) 甲2に記載された事項
・「【0014】
本発明において,牛肉加工食品とは,牛肉を原料としていれば特に限定されず,例えば,香辛料,調味料等で味付けされた加工食肉,ビーフソーセージ,ビーフハム,ロ-ストビ-フ,コーンドビーフ,ビーフハンバーグといった食肉製品や食肉加工品が挙げられる。」
・「【0016】
アルギニンの添加量は,製造される最終的な牛肉加工食品の重量に対して,遊離アルギニン換算で0.3重量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.5重量%以上である。この範囲でアルギニンが添加されると,優れたマスキング効果に加え,食感の向上が達成され,畜臭がマスキングされた牛肉加工食品を製造することができる。上限は特に限定されない。」
・「【0061】
(実施例5)ハンバーグの製造:従来のマスキング剤との比較
本発明のアルギニン添加により製造したハンバーグ,並びに特開2007-97587号公報,特開2009-165411号公報の記載に従い,従来のマスキング剤を添加したハンバーグを製造し,マスキング効果を評価した。
【0062】
以下では,マスキング剤を添加しないコントロールを試験区1とし,本発明のアルギニンを添加することにより製造したハンバーグを試験区2とし,特開2007-97587号公報の記載に従い製造したハンバーグを試験区3,特開2009-165411号公報の記載に従い製造したハンバーグを試験区4とした。
【0063】
表11~13に,各ハンバーグ製造時の処方を示した。表12は,表11のうち試験区3のマスキング剤の処方を示したものであり,表13は試験区4のマスキング剤の処方を示したものである。各表中,単位はgである。なお,試験区3,試験区4の処方は,各文献の記載に従った。
【0064】
【表11】
・・・
【0067】
各試験区のハンバーグの製造は以下の手順で行った。3mmで牛肉をミンチし,表11の組成で,ミンチした牛肉と添加物を混ぜ合わせ,よく捏ねて,捏ねあがりの温度を6~10℃とした。その後,100g前後の小判型に整形した。その後,フライパンで片面1分程度焼き,フタをして弱火で10~15分焼き,中心が70℃以上になるまで加熱した。
【0068】
(官能評価結果)
16名のパネルに試験区1~4のハンバーグの畜臭(獣臭,グラス臭)のマスキング効果について,臭いをかいだ時,食べた時,それぞれについて評価してもらった。表14のような結果となった。評価方法は実施例1と同様である。
【0069】
【表14】
【0070】
(pHと歩留りの結果)
焼成後のハンバーグの歩留りを表15に示す。表15中,歩留りの単位は%である。歩留りは加熱前後の重量を測定することで算出した。
【0071】
【表15】
」
(2) 甲2に記載された事項からすると,甲2に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲2発明」という。)。
(甲2発明)
「ミンチした牛肉700g,食塩3.4g,澱粉3.5g,醤油10.5g,アルギニン3.5gを混ぜ合わせ,よく捏ねて,捏ねあがりの温度を6~10℃とし,100g前後の小判型に整形し,その後,フライパンで片面1分程度焼き,フタをして弱火で10~15分焼き,中心が70℃以上になるまで加熱した,ハンバーグの製造方法。」
3 甲3
甲3に記載された事項(特に,【0070】,【0071】(実施例5))からすると,甲3には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲3発明」という。)。
(甲3発明)
「鶏ムネ肉を3cm程度に細切したもの1000gに,食塩10g,アルギニン5.5g含むピックル液を100g添加し,これをよく混ぜ,一晩熟成し,半凍結状態で厚さ8mm直径5cm程度の楕円形に成型し,これにバッターを付け,フライ加熱を行った,チキンナゲットの製造方法。」
4 甲4
(1) 甲4に記載された事項
・「[0001] 本発明は,鶏肉からなる肉片を結合させてなる鶏肉加工食品の製造方法に関する。」
・「[0002] 食肉加工製品としては数多くの種類が知られているが,なかでも,挽き肉程度の大きさの肉小塊(肉片)同士を結着させてなるソーセージや,さらに大きな肉塊をつなぎにより結合させたプレスハム類製品では,結着性なる性質が要求される。
・・・
[0004] 従来,食肉加工食品において結着性を向上させるために食品添加物(いわゆる結着剤)が使用されており,現在ではポリリン酸塩が最も広く使用されている・・・。
[0005] ところが,ポリリン酸塩を使用することにより結着性が向上するのは,牛肉や豚肉に限られており,鶏肉に対してはポリリン酸塩の結着性向上効果が十分には発揮されなかった。
[0006] ポリリン酸塩の代替添加物としてカルボキシル基を一基含むアミノ酸からなる結着剤が数々提案されており,その中に塩基性アミノ酸からなる結着剤が示されている・・・。しかし,鶏肉における結着性の改善効果は記載も示唆もない。
・・・」
[0009] 以上のとおり,鶏肉からなる挽き肉等の肉片を結合させてできるソーセージ,及びつなぎが添加されたプレスハム等の鶏肉加工食品を製造するにあたって,それら鶏肉加工食品の結着性を大幅に向上させ,それら鶏肉加工食品の食感を改良することができる食品添加物は知られていなかった。
[0010] 本発明は,上記現状に鑑み,鶏肉からなる挽き肉等の肉片を結合させてなるソーセージ,及びつなぎが添加されたプレスハム等の鶏肉加工食品の結着性を向上させることが可能で,より弾力があり食感が改良された鶏肉加工食品の製造方法を提供することを目的とする。」
・「[0011] そこで本発明者らは,鶏肉において塩基性アミノ酸の中でも特にアルギニンを添加した場合に高い結着性の向上がもたらされたことを見出し,本発明に至った。
[0012] 本発明は,鶏肉加工食品の製造方法であって,鶏肉からなる肉片集合体に対しアルギニンを添加し,混合した後,得られた混合物をケーシングに充填して加熱処理又は乾燥処理を行うことを特徴とする,鶏肉加工食品の製造方法に関する。」
・「[0015] 本発明によって,鶏肉からなる挽き肉等の肉片を結合させてなるソーセージ,及びつなぎが添加されたプレスハム等の鶏肉加工食品の結着性を向上させることが可能となり,結着性が向上することで,より弾力があり,食感が優れた鶏肉加工食品を提供することが可能となる。しかも,添加物がアミノ酸であるので,人体に対する安全性の点でも優れている。」
・「[0020] 一般的に,つなぎは,肉塊をミンチしたものに,食塩,澱粉,植物性蛋白質,調味料等の添加物を添加し,高速でカッティングすることにより製造されるが,本発明ではアルギニンを添加することにより,澱粉や植物性蛋白質を使用しなくとも製造することができる。」
・「[0050] (実施例4)アルギニンとゼラチンを添加したチキンソーセージの製造
鶏肉1400gを5mm目のチョッパーにて挽肉とし,表4に示す配合で副原料を加え,ミキサーで生地の温度が約7℃になるまで練り,直径10cmのセルロースケーシングおよび羊腸に充填した。なお,ゼラチンには新田ゼラチン株式会社のAP-100粗粒タイプを使用した。スモークハウスにて乾燥,燻煙,蒸煮を行い,中心温度が70℃になるまで加熱した。1℃の冷蔵庫で冷却後,得られたチキンソーセージについて官能評価を行った。
[0051]
[表4]
」
[0052] (官能評価)
8名のパネルにこれらのソーセージを試食してもらったところ,8名全員が無添加区よりも,アルギニン添加区,あるいはアルギニンとゼラチン添加区の方が,弾力があり,食感として好ましいと回答した。また。アルギニンとゼラチン添加区の方が,アルギニン添加区に比べて,より弾力があって,かつ,ジューシーな食感と回答した。
[0053] (まとめ)
アルギニンに加えて,ゼラチンを添加することで,ソーセージにより適度な弾力及びジューシー感が付与された。また,アルギニンとゼラチン添加区のソーセージは170kcal程度であり,五訂日本食品成分表示表のソーセージ(ウインナーソーセージは321kcal,ボロニアソーセージは251kcal)よりも,大幅にカロリーを抑えることができた。」
・「[請求項1] 鶏肉加工食品の製造方法であって,
鶏肉からなる肉片集合体に対しアルギニンを添加し,混合した後,得られた混合物をケーシングに充填して加熱処理又は乾燥処理を行うことを特徴とする,鶏肉加工食品の製造方法。
・・・
[請求項3] 遊離アルギニンを合計0.3重量%以上の濃度で含有することを特徴とする鶏肉加工食品。」
(2) 甲4に記載された事項からすると,甲4には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲4発明」という。)。
(甲4発明)
「鶏肉1400gを5mm目のチョッパーにて挽肉とし,大豆タンパク・澱粉100g,加水500.0g,食塩20.0g,砂糖4.0g,グルタミン酸ナトリウム4.0g,醤油30.0g,香辛料8.4g,アルギニン10.0g,亜硝酸ナトリウム0.1g,アスコルビン酸ナトリウム4.0gを加え,ミキサーで生地の温度が約7℃になるまで練り,直径10cmのセルロースケーシングおよび羊腸に充填し,スモークハウスにて乾燥,燻煙,蒸煮を行い,中心温度が70℃になるまで加熱し,1℃の冷蔵庫で冷却した,チキンソーセージの製造方法。」
5 甲5
(1) 甲5に記載された事項
・「本発明は畜肉及び魚肉練製品の製造にあたり,原料に1種又は2種以上の塩基性のアミノ酸を添加して処理することを特徴とする練製品の製造法に関し,その目的とするところは練製品の足を強め,きめを細くし,品質の向上せしめると共に製品の栄養価値を高めることにある。」(1頁左欄2~7行)
・「本発明の最大の特徴は,畜肉及び魚肉練製品の製造にあたり,塩基性アミノ酸を1種又は2種以上添加して処理する点にあり,従来かかるアミノ酸を加える事によつて畜肉及び魚肉練製品の結着性や足を強めたという例は全くみられない。」(1頁右欄17~21行)
・「実施例 4
豚肩赤肉の細切れ肉1.2kgに対し食塩25g,硝石2gの混合物を添加し良く混合して,平板バツトに堆積せしめ,これを2~3℃の低温で5日間つけ込みし,しかる後にミンチにかけた。
上述ミンチ肉 1.0kg
豚背脂肪肉のミンチ肉 200g
小麦澱粉 100g
砂糖 25g
香辛料 11g
L-グルタミン酸 5g
を配合し,これに遊離型アルギニンを12.0g添加して,サイレントカツターで約10分間練り合せた。
この擂潰肉をケーシング肉詰にして80℃に2時間浸漬加熱し,しかる後に30分間冷水に浸漬して最終製品とした。
以上と全く同様にして,アルギニンのみ添加しないで製造したものを対照区とした。両製品を特別に訓練されたパネル42名により結着性,弾力性について審査せしめたところ,42名中37名が,本方法による製品の方が対照区に比して結着性或いは弾力性が優れており食べた時の食感が好ましいと答えた。」(2頁右欄下から15行~3頁左欄9行)
(2) 甲5に記載された事項からすると,甲5には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲5発明」という。)。
(甲5発明)
「豚肩赤肉の細切れ肉1.2kgに対し食塩25g,硝石2gの混合物を添加し良く混合し,平板バットに堆積させ,これを2~3℃の低温で5日間つけ込みし,その後にミンチにかけ,当該ミンチ肉1.0kg,豚背脂肪肉のミンチ肉200g,小麦澱粉100g,砂糖25g,香辛料11g,L-グルタミン酸5gを配合し,これに遊離型アルギニンを12.0g添加して,サイレントカッターで約10分間練り合わせ,この擂潰肉をケーシング肉詰にして80℃に2時間浸漬加熱し,その後に30分間冷水に浸漬して最終製品とした,畜肉練製品の製造方法。」
6 甲6
甲6に記載された事項(特に,【0029】~【0031】(実施例6))からすると,甲6には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲6発明」という。)
(甲6発明)
「赤肉(豚又は牛)10部,水20部,試料(L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩)0.3部をとり,赤肉をチョッピングし(8m/m),水を加え混合し,試料を加え軽く混合した後,放置した(5℃1晩),肉スラリーの製造方法。」
7 甲7
(1) 甲7に記載された事項
・「(1)L-グルタミン酸,L-システイン,L-メチオニン,L-ロイシン及びL-アルギニンを下記割合に配合して成るアミノ酸配合物を,もしくは該アミノ酸配合物と他のアミノ酸とを肉製品の製造工程において添加することを特徴とする熟成風味を有する肉製品の製造法:
L-グルタミン酸 20~40重量%
L-システイン 1~5重量%
L-メチオニン 5~20重量%
L-ロイシン 39~20重量%
L-アルギニン 35~15重量%
合計 100重量%」(1頁左下欄「特許請求の範囲」)
・「本発明は,熟成風味を有する肉製品を短期間に製造する目的でなされたものであつて,従来の酵素作用による熟成で得られる熟成味のある肉製品に近似した風味を有する肉製品を短期間に大量生産方式で製造し得る方法を提供することを課題とする。」(2頁左上欄4~9行)
・「実施例2
本例はハンバーグステーキの製造を対象とし,下記配合の原材料を用いて常法により製造した。
原材料の配合:
(g)
ひき肉(牛肉:豚肉 6:4) 1200
パン粉 50
玉ネギ 200
卵 50
塩化ナトリウム 8
牛乳 30
香辛料 0.2
アミノ酸配合物
L-グルタミン酸 0.84
L-システイン 0.08
L-メチオニン 0.3
L-ロイシン 0.7
L-アルギニン 0.46
上記配合の原材料のうちひき肉,アミノ酸配合物,香辛料,玉ネギ(炒めたもの)を混合して良く練り合わせ,次いでこれに卵,パン粉を加えて更に良く練った後,その適当量を手で取って成型した。この成型物を,よく加熱されたフライパンを用いて中心部まで十分加熱されるまで中火にて焼成してハンバーグステーキを得た。
得られたハンバーグステーキについて分析型パネラー(21名)により評価させたところ,全員熟成味があり,美味であると評価した。」(4頁右上欄2行~左下欄10行)
(2) 甲7に記載された事項からすると,甲7には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲7発明」という。)。
(甲7発明)
「ひき肉(牛肉:豚肉 6:4)1200g,パン粉50g,玉ネギ200g,卵50g,塩化ナトリウム8g,牛乳30g,香辛料0.2g,L-グルタミン酸0.84g,L-システィン0.08g,L-メチオニン0.3g,L-ロイシン0.7g,L-アルギニン0.46gを混合して良く練り合わせた後,その適当量を手で取って成型し,この成型物を,よく加熱されたフライパンを用いて中心部まで十分加熱されるまで中火にて焼成した,ハンバーグステーキの製造方法。」
8 甲8
(1) 甲8に記載された事項
・「L-アルギニン,L-リジン,L-オルニチン,L-ヒスチジン,グリシン,L-アラニン,L-セリン,L-システイン,L-スレオニン,L-バリン,L-ロイシン,L-イソロイシン,L-フエニルアラニン,L-チロシン,L-トリプトフアンおよびそれらの塩類より選ばれた1種または2種以上とアルミニウム,マグネシウム,鉄,ナトリウム,カリウムおよびカルシウムの塩類より選ばれた1種または2種以上とを含有してなる魚畜肉食品の発色剤。」(1頁左下欄「特許請求の範囲」)
・「・・・その目的とするところは,従来の発色剤と同等あるいはそれに優る発色効果を有し,かつ毒性がきわめて少ない発色剤を提供するにある。」(1頁右下欄1~4行)
・「実施例2
鯨肉30%,まぐろ50%,豚脂肪20%を混合し,この混合物に対し,次の各区分のものを加えた。
試験区:L-アルギニン0.5%,L-オルニチン塩酸塩0.5%,硫酸第一鉄0.05%,氷水5%,調味料・香辛料2.33%(グルタミン酸モノソーダ0.7%,イノシン酸ソーダ0.03%,砂糖1%,胡椒0.3%,ナツメグ0.2%,メース0.1%)
・・・
次にこれをサイレントカツターで5分間細切りし,エアー・スタツフアーにてポリエチレンフイルムに充填する。充填後85℃の熱湯中で60分加熱,冷水中で30分冷却し魚肉ソーセージを製造した。
・・・試験区は対照区IIとほぼ同様の発色を示し・・・た。」(3頁左下欄下から10行~右下欄末行)
(2) 甲8に記載された事項からすると,甲8には,次の発明が記載されているといえる(以下「甲8発明」という。)。
(甲8発明)
「鯨肉30%,まぐろ50%,豚脂肪20%を混合し,この混合物に対し,L-アルギニン0.5%,L-オルニチン塩酸塩0.5%,硫酸第一鉄0.05%,氷水5%,調味料・香辛料2.33%(グルタミン酸モノソーダ0.7%,イノシン酸ソーダ0.03%,砂糖1%,胡椒0.3%,ナツメグ0.2%,メース0.1%)を加え,次にこれをサイレントカッターで5分間細切りし,エアー・スタッファーにてポリエチレンフィルムに充填し,充填後85℃の熱湯中で60分加熱,冷水中で30分冷却した,魚肉ソーセージの製造方法。」
第6 取消理由1(29条の2)について
1 本件発明1について
(1) 本件発明1と甲2発明とを,その機能に照らして対比すると,甲2発明の「澱粉」,「ミンチした牛肉」,「アルギニン」,「食塩」,「ハンバーグ」は,それぞれ,本件発明1の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲2発明におけるアルギニンの添加量は,ミンチした牛肉100gあたり0.005g(=3.5/700×100)である。
そして,本件発明1において,食塩含量とは,原料肉に対する食塩添加量の割合であると認められるから(本件特許明細書【0003】,【0006】~【0012】),甲2発明における食塩含量は,0.49%(=3.4/700×100)である。
そうすると,本件発明1と甲2発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点1)
本件発明1は,「つなぎを使用」しないのに対し,甲2発明は,つなぎである「澱粉」を使用する点。
(2) 本件発明1は,相違点1に係る構成を有することにより,低塩で「つなぎ不使用でも,歩留りや物性の良好な畜肉練り製品を製造することができる。」(同【0003】)といった効果を奏し,実施例7において,つなぎを使用せず,「アルギニンの添加量が0.0001%~10%であり,食塩の添加量が0.01%~0.9%である領域の全ての試験区において,歩留り,破断距離ともに,相乗効果が確認された。」(同【0012】)ものであるから,この点は実質的なものである。
よって,本件発明1は甲2発明と同一であるとは認められない。
2 本件発明5について
(1) 本件発明5と,甲2発明とを,その機能に照らして対比すると,甲2発明の「澱粉」,「ミンチした牛肉」,「アルギニン」,「食塩」,「ハンバーグ」は,それぞれ,本件発明5の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲2発明における,アルギニンの添加量,食塩含量は,前記1(1)のとおりである。
そして,甲2発明により,ハンバーグの焼成後の歩留りが向上しているところ(甲2【0070】,【0071】),「結着性の弱い畜肉練り製品は,ボソボソとして崩れ易く,歩留りも低下する」こと(本件特許明細書【0002】),「畜肉練り製品における食塩の重要な機能として結着性の向上が挙げられ,それにより弾力やしなやかさ,保水性が向上するが,当試験における加熱歩留りは保水性と相関があ(る)」(同【0006】)ことからすると,甲2発明は,本件発明5と同様に,「畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性の向上方法」といえる。
そうすると,本件発明1と甲2発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点2)
本件発明5は,「つなぎを使用」しないのに対し,甲2発明は,つなぎである「澱粉」を使用する点。
(2) 相違点2は,実質的に相違点1(前記1(1))と同じであるから,同様の理由により(前記1(2)),実質的なものである。
よって,本件発明5は甲2発明と同一であるとは認められない。
第7 取消理由2(29条1項3号)及び取消理由3(29条2項)について
1 甲4に関し
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲4発明とを,その機能に照らして対比すると,甲4発明の「大豆タンパク・澱粉」,「鶏肉」,「アルギニン」,「食塩」,「チキンソーセージ」は,それぞれ,本件発明1の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲4発明における,アルギニンの添加量は,鶏肉100gあたり0.71g(=10/1400×100)であり,食塩含量は1.4%(=20/1400×100)である。
そうすると,本件発明1と甲4発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点3)
本件発明1は「つなぎを使用せず」,「食塩含量0.01%~0.9%」であるのに対し,甲4発明は,つなぎである「大豆タンパク・澱粉」を使用し,食塩含量が1.4%である点。
イ 甲4には,「アルギニンを添加することにより,澱粉や植物性蛋白質を使用しなくとも製造することができる。」([0020])と記載され,つなぎを使用しないことについて示唆があるが,食塩の添加量に特段着目しておらず,低塩に関する記載・示唆はない。結着性の観点で,つなぎの有無,アルギニン・食塩の添加量を関連づけて具体的に検討しているものではないから,低塩化が広く知られた要請であっても,甲4発明において,相違点3に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び低塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明1は,相違点3に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第6・1),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲4発明において,相違点3に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(2) 本件発明2について
ア 本件発明2と甲4発明とを,その機能に照らして対比すると,甲4発明の「大豆タンパク・澱粉」,「鶏肉」,「アルギニン」,「食塩」,「チキンソーセージ」は,それぞれ,本件発明2の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲4発明における,アルギニンの添加量,食塩含量は,前記(1)アのとおりである。
そして,甲4発明により,結着性が向上するから(甲4[0015]),甲4発明は,本件発明2と同様に,「結着性の向上した」「畜肉練り製品の製造方法」であるといえる。
そうすると,本件発明2と甲4発明1とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点4)
本件発明2は「つなぎを使用せず」,「食塩無添加」であるのに対し,甲4発明はつなぎである「大豆タンパク・澱粉」を使用し,「食塩」を添加する点。
イ 既に述べたとおり,甲4には,つなぎを使用しないことについて示唆があるが,食塩の添加量に特段着目しておらず,食塩無添加に関する記載・示唆はなく,結着性の観点で,つなぎ・食塩の有無,アルギニンの添加量を関連づけて具体的に検討しているものではないから,食塩無添加が広く知られた要請であっても,甲4発明において,相違点4に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び無塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明2は,相違点4に係る構成を有することにより,食塩無添加で「つなぎ不使用でも,歩留りや物性の良好な畜肉練り製品を製造することができる。」(同【0003】)といった効果を奏し,実施例7において,つなぎを使用せず食塩無添加であるが歩留りが向上していることが確認されたものであるから((同【0012】),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲4発明において,相違点4に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(3) 本件発明5について
ア 本件発明5と甲4発明とを,その機能に照らして対比すると,甲4発明の「大豆タンパク・澱粉」,「鶏肉」,「アルギニン」,「食塩」,「チキンソーセージ」は,それぞれ,本件発明5の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲4発明における,アルギニンの添加量,食塩含量は,前記(1)アのとおりである。
そして,甲4発明により,結着性が向上するから(前記(2)ア),甲4発明は,本件発明5と同様に,「畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるといえる。
そうすると,本件発明5と甲4発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点5)
本件発明5は「つなぎを使用せず」,「食塩含量0.01%~0.9%」であるのに対し,甲4発明はつなぎである「大豆タンパク・澱粉」を使用し,食塩含量は1.4%である点。
イ 相違点5は,実質的に相違点3(前記(1)ア)と同じであるから,同様の理由により(前記(1)イ),甲4発明において,相違点5に係る本件発明5の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
2 甲7に関し
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲7発明とを,その機能に照らして対比すると,甲7発明の「パン粉」,「ひき肉」,「L-アルギニン」,「塩化ナトリウム」,「ハンバーグステーキ」は,それぞれ,本件発明1の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲7発明における,L-アルギニンの添加量は,ひき肉100gあたり0.038g(=0.46/1200×100)であり,食塩含量は0.67%(=8/1200×100)である。
そうすると,本件発明1と甲7発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点6)
本件発明1は「つなぎを使用」しないのに対し,甲7発明は,つなぎである「パン粉」を使用する点。
イ このように,本件発明1と甲7発明とは相違するから,本件発明1は甲7発明であるとは認められない。
また,甲7発明は,熟成味に着目した発明であって畜肉練り製品の結着性に着目したものではなく,甲7には,つなぎを使用しないことに関する記載・示唆はない。つなぎを使用しないハンバーグステーキが知られているとしても,甲7発明において,相違点6に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び低塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明1は,相違点6に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第6・1),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲7発明において,相違点6に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(2) 本件発明2について
ア 本件発明2と甲7発明とを,その機能に照らして対比すると,甲7発明の「パン粉」,「ひき肉」,「L-アルギニン」,「塩化ナトリウム」,「ハンバーグステーキ」は,それぞれ,本件発明1の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲7発明における,L-アルギニンの添加量,食塩含量は,前記(1)アのとおりである。
そして,アルギニンの添加により結着性が向上するから(甲4及び5),甲7発明は,本件発明2と同様に,「結着性の向上した」「畜肉練り製品の製造方法」であるといえる。
そうすると,本件発明2と甲7発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点7)
本件発明2は「つなぎを使用せず」,「食塩無添加」であるのに対し,甲7発明は,つなぎである「パン粉」を使用し,「塩化ナトリウム」を添加するものである点。
イ このように,本件発明2と甲7発明とは相違するから,本件発明2は甲7発明であるとは認められない。
また,既に述べたとおり,甲7発明は,畜肉練り製品の結着性に着目したものではなく,甲7につなぎを使用しないことや食塩無添加に関する記載・示唆はないから,ハンバーグステーキにおいてつなぎを使用しないことが知られ,食塩無添加が広く知られた要請であるとしても,甲7発明において,相違点7に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び無塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明2は,相違点7に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記1(2)イ),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲7発明において,相違点7に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(3) 本件発明5について
ア 本件発明5と甲7発明とを,その機能に照らして対比すると,甲7発明の「パン粉」,「ひき肉」,「L-アルギニン」,「塩化ナトリウム」,「ハンバーグステーキ」は,それぞれ,本件発明5の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲7発明における,L-アルギニンの添加量,食塩含量は,前記(1)アのとおりである。
そして,アルギニンの添加により結着性が向上するから(前記(2)ア),甲7発明は,本件発明5と同様に,「畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるといえる。
そうすると,本件発明5と甲7発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点8)
本件発明5は「つなぎを使用」しないのに対し,甲7発明は,つなぎである「パン粉」を使用する点。
イ このように,本件発明5と甲7発明とは相違するから,本件発明5は甲7発明であるとは認められない。
また,相違点8は,実質的に相違点6(前記(1)ア)と同じであるから,同様の理由により(前記(1)イ),甲7発明において,相違点8に係る本件発明5の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
3 甲8に関し
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲8発明とを,その機能に照らして対比すると,甲8発明の「鯨肉」,「L-アルギニン」,「魚肉ソーセージ」は,それぞれ,本件発明1の「原料肉」,「アルギニン」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲8発明は,本件発明1と同様に,つなぎを使用していない。
そして,甲8発明における,L-アルギニンの添加量は,鯨肉100gあたり,1.7g(=0.5/30×100)であり,食塩含量は0%である。
そうすると,本件発明1と甲8発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点9)
本件発明1は,「食塩含量0.01%~0.9%」であるのに対し,甲8発明は,食塩含量は0%である点。
イ このように,本件発明1と甲8発明とは相違するから,本件発明1は甲8発明であるとは認められない。
また,甲8発明は,魚畜肉食品の発色を目的としたものであって畜肉練り製品の結着性に着目したものではなく,甲8には,食塩の添加や低塩化に関する記載・示唆はない。低塩が知られているとしても,甲8発明において,相違点9に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び低塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明1は,相違点9に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第6・1),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲8発明において,相違点9に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(2) 本件発明2について
ア 本件発明2と甲8発明とを,その機能に照らして対比すると,甲8発明の「鯨肉」,「L-アルギニン」,「魚肉ソーセージ」は,それぞれ,本件発明2の「原料肉」,「アルギニン」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲8発明は,本件発明2と同様に,つなぎを使用しておらず,甲8発明における,L-アルギニンの添加量,食塩含量は,前記(1)アのとおりである。
さらに,アルギニンの添加により結着性が向上するから(甲4及び5),甲8発明は,本件発明2と同様に,「結着性の向上した」「畜肉練り製品の製造方法」であるといえる。
そうすると,本件発明2と甲8発明とは,特段相違するところがないから,本件発明2は甲8発明である。
イ 仮に,結着性の点で相違するとしても,アルギニンの添加により結着性が向上することが広く知られているから(甲4及び5),甲8発明において,L-アルギニンの添加により結着性を向上させることは,当業者が容易に想到できたものと認められる。
(3) 本件発明5について
ア 本件発明5と甲8発明とを,その機能に照らして対比すると,甲8発明の「鯨肉」,「L-アルギニン」,「魚肉ソーセージ」は,それぞれ,本件発明5の「原料肉」,「アルギニン」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲8発明は,本件発明5と同様に,つなぎを使用しておらず,甲8発明における,L-アルギニンの添加量,食塩含量は,前記(1)アのとおりである。
さらに,アルギニンの添加により結着性が向上するから(前記(2)ア),甲8発明は,本件発明5と同様に,「畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるといえる。
そうすると,本件発明5と甲8発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点10)
本件発明5は,「食塩含量0.01%~0.9%」であるのに対し,甲8発明は,食塩含量が0%である点。
イ このように,本件発明5と甲8発明とは相違するから,本件発明5は甲8発明であるとは認められない。
また,相違点10は,実質的に相違点9(前記(1)ア)と同じであるから,同様の理由により(前記(1)イ),甲8発明において,相違点10に係る本件発明5の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
第8 取消理由として採用しなかった特許異議申立ての理由について
1 29条の2について
(1) 甲1に関し
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の「豚肉ブロック」,「アルギニン」,「食塩」は,それぞれ,本件発明1の「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」に相当する。
また,甲1発明における,アルギニンの添加量は,豚肉ブロック100gあたり0.91g(=(500+150)×0.7%×100/500)であり,食塩含量は0%である。
そして,甲1発明は,本件発明1と同様に,つなぎを使用しておらず,本件発明1と畜肉製品の製造方法である点で共通する。
しかしながら,本件発明1と甲1発明とは,本件発明1が「食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の製造方法」であるのに対し,甲1発明が食塩含量が0%である「ブロック状の脱塩ハムの製造方法」である点で相違する。
このように,甲1発明は,対象物が「ブロック状の脱塩ハム」であって,本件発明1とその前提において相違し,食塩含量も異なるから,この点は実質的なものである。
よって,本件発明1は甲1発明と同一であるとは認められない。
イ 本件発明2について
本件発明2と甲1発明とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の「豚肉ブロック」,「アルギニン」,「食塩」は,それぞれ,本件発明2の「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」に相当する。
また,甲1発明における,アルギニンの添加量,食塩含量は,前記アのとおりであり,甲1発明は,本件発明2と同様に,つなぎを使用しておらず,本件発明2と食塩無添加の畜肉製品の製造方法である点で共通する。
しかしながら,本件発明2と甲1発明とは,本件発明2が「結着性の向上した」「食品無添加の畜肉練り製品の製造方法」であるのに対し,甲1発明が食塩含量が0%である「ブロック状の脱塩ハムの製造方法」である点で相違する。
このように,甲1発明は,対象物が「ブロック状の脱塩ハム」であって,結着性も含め,本件発明2とその前提において相違しているから,この点は実質的なものである。
よって,本件発明2は甲1発明と同一であるとは認められない。
ウ 本件発明5について
本件発明5と甲1発明とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の「豚肉ブロック」,「アルギニン」,「食塩」は,それぞれ,本件発明1の「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」に相当する。
また,甲1発明における,アルギニンの添加量,食塩含量は,前記アのとおりであり,甲1発明は,本件発明5と同様に,つなぎを使用しておらず,本件発明5と畜肉製品の製造方法である点で共通する。
しかしながら,本件発明5と甲1発明とは,本件発明5が「食塩含量0.01%~0.9%の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるのに対し,甲1発明が食塩含量が0%である「ブロック状の脱塩ハムの製造方法」である点で相違する。
このように,甲1発明は,対象物が「ブロック状の脱塩ハム」であって,結着性も含め,本件発明5とその前提において相違し,食塩含量も異なるから,この点は実質的なものである。
よって,本件発明5は甲1発明と同一であるとは認められない。
(2) 甲2に関し
本件発明2と甲2発明とを,その機能に照らして対比すると,甲2発明の「澱粉」,「ミンチした牛肉」,「アルギニン」,「食塩」,「ハンバーグ」は,それぞれ,本件発明2の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲2発明における,アルギニンの添加量,食塩含量は,前記第6・1(1)のとおりである。
そして,甲2発明により,ハンバーグの焼成後の歩留りが向上したのであるから(前記第6・2(1)),甲2発明は,本件発明2と同様に,「結着性の向上した」「畜肉練り製品の製造方法」といえる。
しかしながら,本件発明1と甲2発明とは,本件発明2が「つなぎを使用せず」,「食塩無添加」であるのに対し,甲2発明がつなぎである「澱粉」を使用し,「食塩」を添加する点で相違する。
そして,本件発明2は,この点に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから,この点は実質的なものである。
よって,本件発明2は甲2発明と同一であるとは認められない。
2 29条1項3号又は29条2項について
(1) 甲3に関し
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲3発明とを,その機能に照らして対比すると,甲3発明の「鶏ムネ肉」,「アルギニン」,「食塩」は,それぞれ,本件発明1の「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」に相当する。
また,甲3発明における,アルギニンの添加量は,鶏ムネ肉100gあたり0.55g(=5.5/1000×100)であり,食塩含量は1%(=10/1000×100)である。
そして,甲3発明は,本件発明1と同様に,つなぎを使用しておらず,本件発明1と畜肉製品の製造方法である点で共通する。
そうすると,本件発明1と甲3発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点11)
本件発明1は,「食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の製造方法」であるのに対し,甲3発明は,食塩含量が1%であり,「チキンナゲットの製造方法」である点。
(イ) 甲3発明の対象物である「チキンナゲット」は,結着性ではなく接着性を求められる食品であるから(甲3【0006】,【0009】~【0011】,【0070】,【0071】),結着性が求められる畜肉練り製品とはいい難く,本件発明1とはその前提において異なっており,食塩含量も異なっている。
よって,本件発明1は甲3発明であるとは認められない。
また,甲3発明は結着性に着目していないから,甲3発明において,相違点11に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
そして,本件発明1は,相違点11に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものである(前記第6・1)。
よって,甲3発明において,相違点11に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
イ 本件発明2について
(ア) 本件発明2と甲3発明とを,その機能に照らして対比すると,甲3発明の「鶏ムネ肉」,「アルギニン」,「食塩」は,それぞれ,本件発明2の「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」に相当する。
また,甲3発明におけるアルギニンの添加量,食塩含量は,前記ア(ア)のとおりであり,甲3発明は,本件発明2と同様に,つなぎを使用しておらず,本件発明2と畜肉製品の製造方法である点で共通する。
そうすると,本件発明2と甲3発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点12)
本件発明2は,「結着性の向上した食塩無添加の畜肉練り製品の製造方法」であるのに対し,甲3発明は,食塩含量が1%であり,「チキンナゲットの製造方法」である点。
(イ) 甲3発明の対象物は「チキンナゲット」であるから,本件発明2とその前提において異なっており,食塩含量も異なっている。
よって,本件発明2は甲3発明であるとは認められない。
また,甲3発明は結着性に着目していないから,甲3発明において,相違点12に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
そして,本件発明2は,相違点12に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものである(前記第7・1(2)イ)。
よって,甲3発明において,相違点12に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
ウ 本件発明5について
(ア) 本件発明5と甲3発明とを,その機能に照らして対比すると,甲3発明の「鶏ムネ肉」,「アルギニン」,「食塩」は,それぞれ,本件発明5の「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」に相当する。
また,甲3発明におけるアルギニンの添加量,食塩含量は,前記ア(ア)のとおりであり,甲3発明は,本件発明5と同様に,つなぎを使用していない。
そうすると,本件発明5と甲3発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点13)
本件発明5は,「食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるのに対し,甲3発明は,食塩含量が1%であり,「チキンナゲットの製造方法」である点。
(イ) 甲3発明の対象物は「チキンナゲット」であるから,本件発明5とその前提において異なっており,食塩含量も異なっている。
よって,本件発明5は甲3発明であるとは認められない。
また,相違点13は,実質的に相違点11(前記ア(ア))と同じであるから,同様の理由により(前記ア(イ)),甲3発明において,相違点13に係る本件発明5の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(2) 甲5に関し
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲5発明とを,その機能に照らして対比すると,甲5発明の「小麦澱粉」,「豚肩赤肉の細切れ肉」及び「豚背脂肪肉のミンチ肉」,「遊離型アルギニン」,「食塩」,「畜肉練製品」は,それぞれ,本件発明1の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲5発明における,遊離型アルギニンの添加量は,豚肩赤肉の細切れ肉及び豚背脂肪肉のミンチ肉100gあたり1.0g(=12.0/[1200/(1200+25+2)×1000+200]×100)であり,食塩含量は1.7%(=[25/(1200+25+2)×1000]/[1200/(1200+25+2)×1000+200]×100)である。
そうすると,本件発明1と甲5発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点14)
本件発明1は,「つなぎを使用」せず,「食塩含量0.01%~0.9%」であるのに対し,甲5発明は,つなぎである「小麦澱粉」を使用し,食塩含量が1.7%である点。
(イ) このように,本件発明1と甲5発明とは相違するから,本件発明1は甲5発明であるとは認められない。
また,甲5発明は,つなぎの有無や食塩の添加量に特段着目しておらず,甲5には低塩に関する記載・示唆はない(なお,「豚背脂肪肉のミンチ肉」が「原料肉」に相当しないなら,食塩含量はさらに多くなる(2%)。)。結着性の観点で,つなぎの有無,アルギニン・食塩の添加量を関連づけて具体的に検討しているものではないから,低塩化が広く知られた要請であっても,甲5発明において,相違点14に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び低塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明1は,相違点14に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第6・1),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲5発明において,相違点14に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
イ 本件発明2について
(ア) 本件発明2と甲5発明とを,その機能に照らして対比すると,甲5発明の「小麦澱粉」,「豚肩赤肉の細切れ肉」及び「豚背脂肪肉のミンチ肉」,「遊離型アルギニン」,「食塩」,「畜肉練製品」は,それぞれ,本件発明2の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲5発明における,遊離型アルギニンの添加量,食塩含量は,前記ア(ア)のとおりである。
そして,甲5発明により,結着性が向上するから(甲5・2頁右欄下から15行~3頁左欄9行),甲5発明は,本件発明2と同様に,「結着性の向上した」「畜肉練り製品の製造方法」であるといえる。
そうすると,本件発明2と甲5発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点15)
本件発明2は「つなぎを使用せず」,「食塩無添加」であるのに対し,甲5発明はつなぎである「小麦澱粉」を使用し,「食塩」を添加する点。
(イ) このように,本件発明2と甲5発明とは相違するから,本件発明2は甲5発明ではない。
また,既に述べたとおり,甲5発明は,つなぎの有無や食塩の添加量に特段着目しておらず,甲5には食塩無添加に関する記載・示唆はなく,結着性の観点で,つなぎの有無,アルギニン・食塩の添加量を関連づけて具体的に検討しているものではないから,食塩無添加が広く知られた要請であっても,甲5発明において,相違点15に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び無塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明2は,相違点15に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第7・1(2)イ),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲5発明において,相違点15に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
ウ 本件発明5について
(ア) 本件発明5と甲5発明とを,その機能に照らして対比すると,甲5発明の「小麦澱粉」,「豚肩赤肉の細切れ肉」及び「豚背脂肪肉のミンチ肉」,「遊離型アルギニン」,「食塩」,「畜肉練製品」は,それぞれ,本件発明5の「つなぎ」,「原料肉」,「アルギニン」,「食塩」,「畜肉練り製品」に相当する。
また,甲5発明における,遊離型アルギニンの添加量,食塩含量は,前記ア(ア)のとおりである。
そして,甲5発明により,結着性が向上するから(前記イ(ア)),甲5発明は,本件発明5と同様に,「畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるといえる。
そうすると,本件発明5と甲5発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点16)
本件発明5は,「つなぎを使用」せず,「食塩含量0.01%~0.9%」であるのに対し,甲5発明は,つなぎである「小麦澱粉」を使用し,食塩含量が1.7%である点。
(イ) このように,本件発明5と甲5発明とは相違するから,本件発明5は甲5発明であるとは認められない。
また,相違点16は,実質的に相違点14(前記ア(ア))と同じであるから,同様の理由により(前記ア(イ)),甲5発明において,相違点16に係る本件発明5の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
(3) 甲6に関し
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲6発明とを,その機能に照らして対比すると,甲6発明の「赤肉(豚又は牛)」,「L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩」は,それぞれ,本件発明1の「原料肉」,「アルギニン又はその塩」に相当する。
また,甲6発明における,L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩の添加量は,赤肉100gあたり3g(=0.3/10×100)であり,食塩含量は0%である。
そして,甲6発明は,本件発明1と同様に,つなぎを使用していない。
そうすると,本件発明1と甲6発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点17)
本件発明1は,「食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の製造方法」であるのに対し,甲6発明は,食塩含量が0%である「肉スラリーの製造方法」である点。
(イ) このように,甲6発明は「肉スラリーの製造方法」であるところ,その実体は肉スラリーの粘性の増加を確認するための試験であって(甲6【0029】~【0031】(実施例6)),本件発明1とはその前提において相違しているから,本件発明1は甲6発明であるとは認められない。
また,甲6発明は,食塩の添加量に特段着目しておらず,甲6には低塩に関する記載・示唆はない。結着性の観点で,つなぎの有無,アルギニン又はその塩と食塩の添加量を関連づけて具体的に検討しているものではなく,肉スラリーの粘性の増加を確認するための試験から,当然に,同様の組成の畜肉練り製品を想定することができるとも認められないから,甲6発明において,相違点17に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び低塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明1は,相違点17に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第6・1),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲6発明において,相違点17に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
イ 本件発明2について
(ア) 本件発明2と甲6発明とを,その機能に照らして対比すると,甲6発明の「赤肉(豚又は牛)」,「L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩」は,それぞれ,本件発明2の「原料肉」,「アルギニン又はその塩」に相当する。
また,甲6発明における,L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩の添加量,食塩含量は,前記ア(ア)のとおりであり,甲6発明は,本件発明2と同様に,つなぎを使用していない。
そして,甲6発明は,結着作用,弾力増強作用等の重合燐酸塩効果に関するものであるから(甲6【0004】,【0029】),本件発明2と同様に,結着性の向上したものであるといえる。
そうすると,本件発明2と甲6発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点18)
本件発明2は,「結着性の向上した」「畜肉練り製品の製造方法」であるのに対し,甲6発明は,「肉スラリーの製造方法」である点。
(イ) このように,甲6発明は「肉スラリーの製造方法」であって,本件発明2とはその前提において相違しているから,本件発明2は甲6発明であるとは認められない。
また,甲6発明は,食塩の添加量に特段着目しておらず,甲6には食塩無添加に関する記載・示唆はない。結着性の観点で,つなぎの有無,アルギニン又はその塩と食塩の添加量を関連づけて具体的に検討しているものではなく,肉スラリーの粘性の増加を確認するための試験から,当然に,同様の組成の畜肉練り製品を想定することができるとも認められないから,甲6発明において,相違点18に係る構成とすることについて,特段動機付けは認められない。
他の証拠をみても,つなぎを使用せずに,アルギニン・食塩の添加量を,畜肉練り製品の結着性及び無塩化の観点で検討することに関する記載はない。
そして,本件発明2は,相違点18に係る構成を有することにより,格別な効果を奏するものであるから(前記第7・1(2)イ),この点は単なる設計的事項とは認められない。
よって,甲6発明において,相違点18に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
ウ 本件発明5について
(ア) 本件発明5と甲6発明とを,その機能に照らして対比すると,甲6発明の「赤肉(豚又は牛)」,「L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩」は,それぞれ,本件発明5の「原料肉」,「アルギニン又はその塩」に相当する。
また,甲6発明における,L-アルギニン,L-アルギニンL-アスパラギン酸塩又はL-アルギニンL-グルタミン酸塩の添加量,食塩含量は,前記ア(ア)のとおりであり,甲6発明は,本件発明5と同様に,つなぎを使用していない。
そして,甲6発明は,結着作用,弾力増強作用等の重合燐酸塩効果に関するものであるから(前記イ(ア)),本件発明5と同様に,結着性が向上するといえる。
そうすると,本件発明5と甲6発明とは,以下の点で相違し,その余の点で一致する。
(相違点19)
本件発明5は,「食塩含量0.01%~0.9%の畜肉練り製品の歩留り向上方法又は結着性向上方法」であるのに対し,甲6発明は,食塩含量が0%であり,「肉スラリー」の結着性が向上する方法である点。
(イ) このように,甲6発明は「肉スラリー」に関するものであって,本件発明5とはその前提において相違しているから,本件発明5は甲6発明であるとは認められない。
また,相違点19は,実質的に相違点17(前記ア(ア))と同じであるから,同様の理由により,甲6発明において,相違点19に係る本件発明5の構成とすることは,当業者が容易に想到できたものとは認められない。
第9 本件特許の請求項3及び4についての特許異議の申立てについて
前記第2のとおり,本件訂正が認められるので,本件特許の請求項3及び4についての特許異議の申立ては,その対象が存在しないものとなった。
よって,本件特許の請求項3及び4についての特許異議の申立ては,不適法であって,その補正をすることができないものであることから,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により,却下すべきものである。
第10 むすび
以上のとおり,本件特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
本件発明2は,甲8発明である,又は甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明2に係る特許(請求項2に係る特許)は特許法29条1項3号又は同条2項の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
本件発明1及び5に係る特許(請求項1及び5に係る特許)は,特許法29条1項3号,同条2項又は29条の2の規定に違反してされたものとは認められないから,取消理由1~3及び異議申立ての理由により,取り消すことはできない。
本件特許の請求項3及び4についての特許異議の申立ては,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700623