特許異議申立
2017-700574
易接着フィルムおよびその製造方法
- 審判番号
- 2017-700574
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-227415
- 登録番号
- 特許第6044698号(P6044698)
- 請求日
- 2017年06月07日
- 審決日
- 2017年12月12日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【異議申立人】内野 房子
- 審判長/審判官
- 審判長 小野寺 務
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 西山 義之
- 分類
- P1652.537-YAA(C08J) / P1652.536-YAA(C08J) / P1652.113-YAA(C08J) / P1652.121-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6044698号発明「易接着フィルムおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6044698号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕及び5について訂正することを認める。
特許第6044698号の請求項1及び5に係る特許を維持する。
特許第6044698号の請求項2に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6044698号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成24年6月8日に出願した特願2012-130663号の一部を平成27年11月20日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月25日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数5)がされ、その後、その特許に対し、平成29年6月7日に特許異議申立人 内野 房子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、2及び5)がされ、当審において同年7月31日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年9月29日付け(受理日:同年10月2日)で特許権者 東洋紡株式会社より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年10月4日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、特許異議申立人からは応答がされなかったものである。
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成29年9月29日付け(受理日:同年10月2日)でされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記塗布層が色素および界面活性剤を含有し、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、」とあるのを「前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の易接着フィルム。」とあるのを「塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の易接着フィルム。」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「(1)少なくとも色素および界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程」とあるのを「(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程」と訂正する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の【0009】に「前記塗布層が色素および界面活性剤を含む塗工液を塗布、乾燥して形成され、」とあるのを「前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布、乾燥して形成され、」と訂正する。
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の【0010】に「即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. 透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が色素および界面活性剤を含有し、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
2. 界面活性剤がシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする上記第1に記載の易接着フィルム。
3. 界面活性剤が水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする上記第1また第2に記載の易接着フィルム。
4. 塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、架橋剤を含有することを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載の易接着フィルム。
5. 透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であり、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくとも色素および界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程」とあるのを「即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. 透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
2. (削除)
3. (削除)
4. 塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする上記第1に記載の易接着フィルム。
5. 透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であり、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程」と訂正する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の【0012】に「(ポリエステルフィルム基材)
本発明で基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン?2,6?ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6?ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。」とあるのを「(ポリエステルフィルム基材)
本発明で基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。」と訂正する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の【0044】に「該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、N?プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N?ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2?メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸N?ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。」とあるのを「該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸N-ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。」と訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の【0065】に「真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネ?ション法等の通常の成形法を利用し、」とあるのを「真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用し、」と訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の【0066】に「ここで、高耐久防湿フィルムとは耐候性を向上させる目的で積層されるものであり、高耐久防湿フィルムとしては、例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)、4?フッ化エチレン?パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4?フッ化エチレン?6?フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2?エチレン?4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3?フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニデン(PVDF)、もしくはポリフッカビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等の樹脂に紫外線吸収剤を練り混んだ樹脂組成物からなるフィルムが挙げられる。」とあるのを「ここで、高耐久防湿フィルムとは耐候性を向上させる目的で積層されるものであり、高耐久防湿フィルムとしては、例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)、4-フッ化エチレン-パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4-フッ化エチレン-6-フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2-エチレン-4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3-フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニデン(PVDF)、もしくはポリフッカビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等の樹脂に紫外線吸収剤を練り混んだ樹脂組成物からなるフィルムが挙げられる。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件等
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における塗布層の含有物を「ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂」に限定し、訂正前の請求項1に係る発明における界面活性剤を「シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、訂正前の請求項2及び3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2及び3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2及び3によって請求項2及び3を削除したことに伴い、請求項4における引用関係を整理する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る発明における塗工液の含有物をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項6及び7について
訂正事項6及び7は、訂正事項1ないし5により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6及び7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項6及び7は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、請求項1ないし5について行うものであり、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われている。
(6)訂正事項8ないし11について
訂正事項8ないし11は、いずれも、いわゆる文字化けにより生じた「?」という記載を「-」又は「ー」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項8ないし11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項8ないし11は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、請求項1ないし5について行うものであり、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われている。
(7)一群の請求項
訂正前の請求項2ないし4は訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし4は、一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、請求項1ないし4を包含する請求項1ないし5についてされたものである。
したがって、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1ないし4については、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(8)独立特許要件
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1、2及び5に対してされているので、訂正後の請求項1及び5に係る発明については、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
他方、訂正後の請求項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされた訂正後の請求項1を引用するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされたものである。そして、訂正前の請求項4は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、訂正後の請求項4に係る発明については、訂正を認める要件として上記独立特許要件が課せられる。
そこで、訂正後の請求項4に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。
訂正後の請求項4は、訂正後の請求項1を引用するものであるから、まず、訂正後の請求項1に係る発明について検討する。
訂正後の請求項1に係る発明は、下記第3 1の【請求項1】に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、下記第3 2及び3のとおり、訂正後の請求項1に係る発明は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由により特許を受けることができないものではない。
他方、訂正後の請求項4に係る発明は、下記第3 1の【請求項4】に記載された事項により特定されるとおりのものであり、訂正後の請求項1を引用するものであって、訂正後の請求項1に係る発明を、「架橋剤を含有する」という発明特定事項により、さらに限定するものである。そして、「架橋剤を含有する」という発明特定事項については、本件特許の発明の詳細な説明に詳細に記載され、その実施例も記載されていることから、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由により特許を受けることができないものではない。
また、他に訂正後の請求項4に係る発明が特許を受けることができないとする理由も発見しない。
したがって、訂正後の請求項4に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1ないし11は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1、2又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、本件訂正の請求は、明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われており、訂正事項1ないし11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正後の特許請求の範囲の請求項4に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4ないし6項及び同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし4〕及び5について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕及び5について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、平成29年9月29日付け(受理日:同年10月2日)で提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の易接着フィルム。
【請求項5】
透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であって、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程」
2 取消理由について
(1)取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。
(理由1)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由2)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
なお、該取消理由は、訂正前の本件特許の請求項1、2及び5に係る発明に対して通知されたものである。
(2)取消理由についての判断
ア 理由1について
(ア)サポート要件
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、本件特許発明に関して、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かを検討する。
(イ)発明の課題
本件特許の発明の詳細な説明の【0008】等の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「接着層を設ける工程上で欠点の把握が容易であり、かつ良好なコート外観と経時での密着性を両立した易接着フィルムを提供する」ことである。
(ウ)検討
本件特許の発明の詳細な説明の【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0038】、【0052】、【0055】、【0067】ないし【0126】、【0145】及び【0146】等の記載によると、樹脂として、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂を含有し、界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤を含有する易接着フィルムは、本件特許の発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
そして、本件特許発明1及び5は、樹脂として、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂を含有し、界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤を含有することを、発明特定事項として有するものである。
したがって、本件特許発明1及び5に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるので、特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合する。
イ 理由2について
(ア)実施可能要件
物の発明について、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載を要する。
また、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用することができる程度の記載を要する。
そこで、本件特許発明1及び5に関して、発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かを検討する。
(イ)検討
本件特許の発明の詳細な説明(特に、【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0038】、【0052】、【0055】、【0067】ないし【0126】、【0145】及び【0146】等を参照。)には、本件特許発明1及び5の個々の発明特定事項について詳細に記載されており、その具体的な実施例も記載されている。
したがって、本件特許発明1に関して、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度に記載されているといえるし、また、本件特許発明5に関して、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用することができる程度に記載されているといえるので、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。
ウ 取消理由についての判断のむすび
以上のとおり、取消理由に関して、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。
3 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について
(1)取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由の概要
平成29年6月7日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の内、取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
訂正前の本件特許の請求項2及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
訂正前の本件特許の請求項2及び5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、訂正前の本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2012-4487号公報
甲第2号証:特開2011-146659号公報
(2)取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由についての判断
そこで、検討するに、本件特許発明1及び5は、いずれも、「塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下」という発明特定事項を少なくとも有するものであるが、該発明特定事項は、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1及び5は、いずれも、本件特許の発明の詳細な説明の【0147】の記載によると、「本発明の易接着フィルムを太陽電池バックシート部材として使用した場合、バックシートと封止材の接着面にコート欠点起因の密着不良を防止できるため、長期間に渡って封止材との密着性を保持することにより太陽電池モジュールの長寿命化に寄与することが出来る。また、該易接着フィルムを長期間保管しても封止材との密着性が良好であるため、バックシートの保管期間によらず安定的な太陽電池モジュールの作成が可能となり、産業界に寄与することが大である。」という甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明からみて格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証のいずれかに記載された発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではない。
また、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではない。
さらに、本件特許発明5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由に関して、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2は、訂正により削除されたため、請求項2に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700574