特許異議申立
2017-700539
強化ポリアミド樹脂ペレット
- 審判番号
- 2017-700539
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-201367
- 登録番号
- 特許第6034463号(P6034463)
- 請求日
- 2017年05月29日
- 審決日
- 2017年12月27日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】旭化成株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【権利者代理人】秋山 祐子
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 小野寺 務
- 審判官 西山 義之
- 審判官 橋本 栄和
- 分類
- P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6034463号発明「強化ポリアミド樹脂ペレット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6034463号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし9〕について訂正することを認める。
特許第6034463号の請求項1、3ないし7、9に係る特許を維持する。
特許第6034463号の請求項2、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6034463号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成24年5月23日(優先権主張 平成23年5月27日、特願2011-118723号)を国際出願日とする特願2013-517999号の一部を平成27年10月9日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月4日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数9)がされ、その後、その特許に対し、平成29年5月29日付け(受理日:同年5月31日)で特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)がされ、同年8月4日付けで取消理由が通知され、同年10月6日付け(受理日:同年10月6日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年11月2日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、特許異議申立人から応答がされなかったものである。
第2 本件訂正請求の適否
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1ないし10のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6I/6より選ばれる少なくとも1種であるポリアミド樹脂」と記載されているのを「ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」に訂正する。
また、当該請求項1を引用する請求項3も併せて訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の」と記載されているのを「請求項1に記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6I/6より選ばれる少なくとも1種であるポリアミド樹脂」と記載されているのを「ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」に訂正する。
また、当該請求項4を引用する請求項5ないし7、9も併せて訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に「請求項4乃至8のいずれか一項に記載の」と記載されているのを「請求項4乃至7のいずれか一項に記載の」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0010】に、
「〔1〕
(A)融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6I/6より選ばれる少なくとも1種であるポリアミド樹脂と、
・・・(略)・・・
〔2〕
前記(A)ポリアミド樹脂がポリアミド66/6Iである、前記〔1〕に記載の成形品の外観安定性を改善する方法。
〔3〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載の成形品の外観安定性を改善する方法(但し、前記強化ポリアミド樹脂ペレットが滑剤ペレットを含むものを除く。)。
〔4〕
(A)融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6I/6より選ばれる少なくとも1種であるポリアミド樹脂と、
・・・(略)・・・
〔8〕
前記(A)ポリアミド樹脂がポリアミド66/6Iである、前記〔4〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット。
〔9〕
前記〔4〕乃至〔8〕のいずれか一に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット(但し、滑剤ペレットを含むペレットブレンド物を除く。)。」
と記載されているのを、
「〔1〕
(A)融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂と、
・・・(略)・・・
〔2〕
(削除)
〔3〕
前記〔1〕に記載の成形品の外観安定性を改善する方法(但し、前記強化ポリアミド樹脂ペレットが滑剤ペレットを含むものを除く。)。
〔4〕
(A)融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂と、
・・・(略)・・・
〔8〕
(削除)
〔9〕
前記〔4〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット(但し、滑剤ペレットを含むペレットブレンド物を除く。)。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0071】に「<実施例15>」と記載されているのを「<参考例15>」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0077】の【表1】に「実施例15」と記載されているのを「参考例15」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0078】に「実施例3~5、7、9~15」と記載されているのを「実施例3~5、7、9~14、参考例15」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項
(1)訂正事項1、4について
訂正事項1、4は、それぞれ、訂正前の請求項1、4の「ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6I/6より選ばれる少なくとも1種であるポリアミド樹脂」を、ポリアミド66/6I/6という選択肢を削除して「ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項1、4は、願書に添付した明細書の段落【0014】、【0015】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2、5について
訂正事項2、5は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項2、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項2、5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、6について
訂正事項3、6は、それぞれ、訂正前の特許請求の範囲の請求項3、9が引用する請求項から、訂正事項2、5で削除された請求項2、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項3、6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項7ないし10について
訂正事項7ないし10は、訂正事項1ないし6により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項7ないし10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、訂正事項7ないし10は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正請求は、請求項1ないし9について行うものであり、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われている。
(5)一群の請求項
本件訂正請求による訂正は、訂正後の請求項1ないし3及び請求項4ないし9、並びにそれらに関係する明細書についての訂正であるが、訂正前の請求項2、3は訂正前の請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項5ないし9は訂正前の請求項4を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし3及び請求項4ないし9は、それぞれ一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第4項、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明9」といい、削除されていない請求項に係る発明を総称して「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(A)融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有するポリアミド樹脂組成物を成形する際に、
長さが1~4mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3~2.3である強化ポリアミド樹脂ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を改善する方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の成形品の外観安定性を改善する方法(但し、前記強化ポリアミド樹脂ペレットが滑剤ペレットを含むものを除く。)。
【請求項4】
(A)融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂と、
(B)チョップドストランドガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、アパタイト、リン酸ナトリウム、蛍石、窒化珪素、チタン酸カリウム、二硫化モリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材と、
を、含有し、
長さが1~4mmであり、断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3~2.3である強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項5】
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記(B)無機充填材1~300質量部を含有する、請求項4に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項6】
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記(B)無機充填材1~100質量部を含有する、請求項4又は5に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項7】
前記断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.76~2.3である、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の強化ポリアミド樹脂ペレット(但し、滑剤ペレットを含むペレットブレンド物を除く。)。」
第4 特許異議申立人が主張する取消理由
特許異議申立人が特許異議申立書において主張する取消理由の概要は、次のとおりである。
・本件特許の請求項1、2、4ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、請求項1、2、4ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・本件の請求項1ないし9に係る発明についての特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
・本件の請求項1、3ないし7、9に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。
なお、甲第1、2号証、及び添付された甲第3号証は、次のとおりである。
甲第1号証:特開2008-133465号公報
甲第2号証:特開平11-129246号公報
甲第3号証:平成29年5月19日付けの 東レ株式会社 樹脂技術部 樹脂開発室長 高村元 による実験報告書
第5 当審が通知した取消理由
当審が通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「1)本件の請求項1ないし9に係る発明についての特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2)本件の請求項1、3ないし7、9に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
第1 特許法第36条第4項第1号について
・・・(略)・・・
してみると、ストランドの水浸漬長さ及びペレタイザーの引き取りロール圧の調節のみしか記載がなく、その他のストランドの冷却度合いに影響する条件について開示されていない発明の詳細な説明の開示に基づいて、当業者が、請求項1、4に係る発明を実施するための条件を決定するためには、過度の試行錯誤が必要になるものと認められる。
したがって、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明は、請求項1、4、及び、請求項1又は4を引用する請求項2、3、5ないし9に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
よって、請求項1ないし9に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
第2 特許法第36条第6項第1号について
・・・(略)・・・
してみると、ポリアミド樹脂がポリアミド66/6Iでない場合や、ポリアミド樹脂がポリアミド66/6I/6であっても、無機充填材がチョップドストランドガラス繊維であり、ペレットの長さが2.9mmであり、かつペレット断面の長径/短径の比が1.92である特定のペレットでない場合においてまでも、上記課題を解決することができるとはいえない。
したがって、請求項1、4、及び、請求項1又は4を引用し、ポリアミド樹脂がポリアミド66/6Iであることが特定されない請求項3、5ないし7、9に係る発明は、発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものではなく、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
よって、請求項1、3ないし7、9に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」
第6 当審の判断
1.特許法第36条第4項第1号について
特許権者は、平成29年10月6日付け(受理日:同年10月6日)意見書において、当該意見書に添付された参考文献1(村上健吉編、「押出成形」、改訂第7版、株式会社プラスチックス・エージ、1985年12月10日、210~213頁)に基づき、概略、以下のとおり主張している。
本件特許明細書の段落【0049】に開示した方法は、所謂ストランドカット方式において、ストランドを冷却する際の水浸漬長さを通常より短くするなどして冷却を控えめにし、ペレタイザーのカッターローラーであえて押しつぶすことによって、断面の長径/短径比が1.3~2.3であるやや扁平なペレットを製造するというものである。
このような製造原理はシンプルなものであって、円形樹脂ペレットの一般的な製造方法の一つであるストランドカット方式(例えば、参考文献1参照)を知る当業者であれば、本件特許明細書の段落【0049】の記載から当然に理解する。
本来円形断面を有するペレットを製造するためのストランドカット方式を利用して、やや扁平、すなわち、わずかに円形をつぶした形状である断面形状を有するペレットを製造するには、冷却度合いに影響する各種条件は円形ペレットを製造する通常の場合から大きく変える必要がないことは明らかである。
本件特許明細書の段落【0049】には、ダイノズルから押し出されたストランドの温度(230~350℃)や水浸漬長さ(90cm以下)といった、ストランドの冷却度合いに影響する主要条件の目安を具体的に記載している。
前述の製造原理に照らせば、ストランドの冷却度合いが低ければ、ストランドは柔らかく押しつぶされやすいので、得られるペレットの扁平度合い(長径/短径比)が大きくなり、逆に冷却度合いが高ければ、ストランドは固くつぶされにくいので、円(長径/短径比が1)に近づくという傾向があることは明らかであり、このような傾向が分かっていれば、得られるペレットの断面の長径/短径比が所望の値となるよう冷却条件を微調整することは当業者にとって難しいことではない。
また、参考文献1は、以下の事項が記載されている。
ストランドカット方式はいずれの場合でも、ダイ(ノズル)から円形断面のストランドを押出して冷却後切断を行うので、コールドカット方式とも呼ばれる(211頁右欄下から1行~212頁左欄3行)。
ストランドカット方式において、ペレット径は通常2.5~3.2φ程度で、これに対して4~4.8φくらいのノズル穴が用いられる(212頁右欄10、11行)。
通常のストランドカット方式では、水槽の中のガイドロールによって冷却長を調整して、もろい材料では過度の冷却となる前に切断を行ったり、融点の高い材料では自熱により付着水分を乾燥させるなどの操作を行う。この水槽中のストランド掛けなどはすべて人力で行うのでストランド本数200~240本、引取速度50~60m/minが操作限界で、能力に対応する(213頁左欄1~9行)。
本件特許明細書には、強化ポリアミド樹脂をダイノズルから押し出した後のストランドの温度、水浸漬長さ、ペレタイザーのロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度を調整することが記載されているが、実施例において、その具体的な条件、数値等は記載されず、その他の必要な条件、数値等についても記載されていない。
しかしながら、上記意見書及び参考文献1によれば、ストランドの冷却を控えめにし、ペレタイザーのカッターローラーであえて押しつぶすことが製造原理であること、ストランドの冷却度合いと長径/短径比とが相関関係を有すること、ストランドカット方式は、通常ダイ(ノズル)から円形断面のストランドを押出すものであって、ペレット径は通常2.5~3.2φ程度で、これに対して4~4.8φくらいのノズル穴が用いられること、材料によって水槽における冷却長を調整すること、引取速度には操作限界があること等が、当業者の技術常識であること、また、本件発明は、円形樹脂ペレットの一般的な製造方法の一つであるストランドカット方式による樹脂ペレットの製造において、通常の条件から大きく変える必要がないことが理解できる。
また、本件特許明細書の段落【0014】にポリアミド樹脂の融点が200~270℃であること、段落【0049】にストランドの温度が230~350℃であること、さらに、実施例3~5、7、9~14に水浸漬長さを60cm以下とし、ロール引き取り圧力を調節することが記載されている。
そうすると、当業者の技術常識及び本件特許明細書の記載から、当業者であれば、ストランドを冷却し、ローラーで押しつぶすという製造原理、ストランドの冷却度合いと長径/短径比との相関関係、通常のストランドカット方式におけるペレット径、水槽における冷却長調整の必要性、引取速度、ポリアミド樹脂の融点とストランドの温度範囲等を理解した上で、ストランドの温度、水浸漬長さ、ロール引き取り圧力、ペレタイザーのカッターの回転速度、及び、その他の必要な条件、数値等を具体的に設定し、得られたペレットの長さ、長径/短径比を計測し、その上で、長径/短径比が1.3を下廻っている場合には、水浸漬長さを短くするか、ロール引き取り圧力を上げることにより、長径/短径比を1.3以上とし、逆に長径/短径比が2.3を上廻っている場合には、水浸漬長さを長くするか、ロール引き取り圧力を下げることにより、長径/短径比を2.3以下とすることができるといえるし、ペレットの長さについても1mmを下廻っている場合には、ペレタイザーのカッターの回転速度を小さくすることにより、ペレットの長さを1mm以上とし、逆にペレットの長さが4mmを上廻っている場合には、ペレタイザーのカッターの回転速度を大きくすることにより、ペレットの長さを4mm以下とすることができるといえ、これらの条件、数値等の設定を変えることは、当業者であれば、数度程度の変更により達成できるものであるといえ、過度の試行錯誤を要するものであるとまではいえない。そうすると、当業者であれば、ペレットの長さ、長径/短径比を、過度の試行錯誤をすることなく、本件発明の範囲内とすることができるといえるので、本件発明を実施することができるものである。
したがって、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明は、本件発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
2.特許法第36条第6項第1号について
請求項1、4において、「ポリアミド66/6I、及びポリアミド66/6I/6より選ばれる少なくとも1種であるポリアミド樹脂」が「ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」に訂正されたことにより、本件発明は、発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとなり、発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。
3.取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号について
甲第1号証には、本件発明1、4の発明特定事項である、強化ポリアミド樹脂ペレットが、「融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」を含有すること、及び「断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3~2.3である」ことについて記載も示唆もない。
したがって、本件発明1、4、及び本件発明5ないし7は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
(2)特許法第29条第2項について
甲第1号証には、本件発明1、4の発明特定事項である、強化ポリアミド樹脂ペレットが、「融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」を含有すること、及び「断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3~2.3である」ことについて記載も示唆もない。
一方、甲第2号証には、樹脂ペレットが記載されているが、「融点が200~270℃であり、ポリアミド66/6Iであるポリアミド樹脂」を含有する強化ポリアミド樹脂ペレットについては記載も示唆もなく、甲第1号証に記載された発明においてそのような特定のポリアミド樹脂を含有させる動機付けとなる記載はない。また、甲第2号証には、「断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.3~2.3である」樹脂ペレットは記載されているが、長径と短径との比をそのように特定することにより、「連続成形時の可塑化時間安定性、外観安定性に優れる強化ポリアミド樹脂ペレットとすることができる。」という効果(本件特許明細書の段落【0045】)を奏することについては記載も示唆もなく、当該効果はたとえ当業者であっても予測し得るものではない。
そうすると、本件発明1、4、及び本件発明3、5ないし7、9は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
(3)特許法第36条第4項第1号(特許異議申立書の3 (4)エ(ア))について
特許異議申立人は、明細書の発明の詳細な説明が、樹脂としてポリアミド66/6Iを用いた場合以外の、訂正前の請求項1、3ないし7、9に係る発明を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨を主張しているが、訂正後の本件発明においては、ポリアミド樹脂がポリアミド66/6Iであると特定されており、かかる主張は理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由、並びに特許異議申立書に記載した特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1、3ないし7、9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3ないし7、9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2、8は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、8に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700539