特許異議申立
2017-700507
生薬等含有医薬組成物
- 審判番号
- 2017-700507
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-522466外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年05月24日
- 審決日
- 2018年06月18日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6030130号発明「生薬等含有医薬組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6030130号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第6030130号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6030130号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成25年4月24日(優先権主張 平成24年6月25日)に出願されたものであって、平成28年10月28日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月24日に特許掲載公報が発行され、その後、特許異議申立人 古川慎二(以下、「申立人」ともいう。)から特許異議の申立てがなされたものである。そして、当審において、平成29年7月28日付けで取消理由を通知したところ、同年9月25日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年10月13日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知したところ、同年11月20日付けで申立人から意見書の提出がなされた。さらに同年12月28日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、特許権者からの応答がなく、平成30年4月3日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、同年5月9日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求がなされたものである。
なお、平成30年5月9日に訂正請求がされたが、後記「第2 訂正の可否についての判断」の「4.付記」にて述べるとおり、当該訂正請求については、特許法第120条の5第5項ただし書の規定により、申立人に意見書を提出する機会を与えていない。
第2 訂正の可否についての判断
1.訂正の内容
平成30年5月9日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6030130号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正をすることを求めるものであり、その訂正事項は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「トウガラシ又はその抽出物」と記載されているのを、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「成分(A-6)が、トウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキ、トウガラシ軟エキス、カプサイシン又はノナン酸バニリルアミドである」と記載されているのを、「成分(A-6)が、トウガラシチンキ、トウガラシ軟エキスである」と訂正する。
2.本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正は、請求項1及び2を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2及び3はいずれも請求項1を引用するものであるから、本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定される「一群の請求項」についてするものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)訂正事項1(請求項1に係る訂正)について
訂正事項1は、成分(A-6)について、「トウガラシ又はその抽出物」と記載されているのを、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」と訂正するものであって、当該成分(A-6)を、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコール」という特定の溶媒を抽出溶媒とするトウガラシの抽出物に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、本件特許明細書には、「トウガラシの抽出物」を用いた実施例として、トウガラシの80%エタノール抽出物である軟エキスと認められる(後述する甲第7号証の記載事項(7-1))トウガラシエキス(トウガラシエキスB)を用いた試験例が記載され、さらに、「トウガラシの抽出物」は、オオバクの抽出物の製造方法と同様の方法により製造できる旨記載され(【0038】)、オオバクの抽出物の抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低級一価アルコール等が挙げられ、特に、水、エタノール、又は水/エタノール混液が好ましい(【0015】)ことも記載されているから、それらの記載を併せ見れば、本件特許明細書からは、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」が記載されていると理解できる。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項2(請求項2に係る訂正)について
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載の「トウガラシ、トウガラシ末、トウガラシチンキ、トウガラシ軟エキス、カプサイシン又はノナン酸バニリルアミド」の中から「トウガラシ」、「トウガラシ末」、「カプサイシン」及び「ノナン酸バニリルアミド」なる選択肢を削除するだけのものであるから、当該訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
3.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。
4.付記
以下のとおり、当合議体は、平成30年5月9日付けの訂正請求については、申立人に意見書の提出の機会を与える必要がないものと判断した。
(1)本件訂正後の請求項1について
本件訂正後の請求項1に係る発明は、平成29年9月25日付けの訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と同じであり、当該発明に対しては、平成29年10月13日付け通知により、申立人に意見書を提出する機会が与えられた。
(2)本件訂正後の請求項2について
本件特許権の設定登録時の請求項2、そして平成29年9月25日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲には、「トウガラシチンキ」や「トウガラシ軟エキス」が記載されている。そして、これらは、本件訂正後の請求項1の「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする」との規定の有無によって実質的に異なるものではないから、本件訂正後の請求項2に係る発明については、特許異議の申立て、さらにその後の意見書の提出によって、取消理由を主張する機会が与えられていたものである。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求については、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある。
第3 本件発明
本件訂正後の請求項1~3に係る発明(以下、「本件特許発明1~3」という。また、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)は、平成30年5月9日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
次の成分(A-6)及び(B):
(A-6)水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物
(B)ロキソプロフェン又はその塩
を含有し、且つ含水組成物である医薬組成物(但し、パップ剤を除く)。
【請求項2】
成分(A-6)が、トウガラシチンキ又はトウガラシ軟エキスである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
リニメント剤、ローション剤、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤又はテープ剤である請求項1又は2に記載の医薬組成物。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
平成30年4月3日付けで通知した取消理由は、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものであるというものであり、具体的な理由は、以下のとおりである。
本件特許明細書の【0007】及び【0008】の記載からみて、訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の解決すべき課題は、「トウガラシやそれらの抽出物とともに、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、保存安定性に優れた医薬組成物を提供すること」であると認められるところ、本件特許明細書の試験例6の試験結果、及び段落【0015】及び【0038】の記載を併せ見れば、本件特許明細書からは、トウガラシの低級一価アルコール抽出物や水/低級一価アルコール混液抽出物であれば、ロキソプロフェン添加により、上記試験例6と同様な保存安定性改善効果が得られるものと認められる。
しかしながら、訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は、抽出溶媒の何ら特定されていないトウガラシ抽出物やトウガラシ自体を含有するものであり、実施例において保存安定性改善効果が確認されているトウガラシの水/エタノール混液抽出物と物性の大きく異なる抽出物については、上記試験例6で確認されているような、ロキソプロフェン添加による保存安定性改善作用が達せられるとは推認できない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の解決すべき課題、すなわち、トウガラシやそれらの抽出物とともに、ロキソプロフェン又はその塩を含有せしめることによって、保存安定性に優れた医薬組成物を提供することを解決できることが当業者に認識できるように記載されているとはいえない。
訂正前の本件特許の請求項2及び3に係る発明についても、同様の理由から、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正前の本件特許の請求項2及び3に係る発明の解決すべき課題を解決できることが当業者に認識できるように記載されているとはいえない。
よって、訂正前の本件請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
第5 取消理由についての合議体の判断
本件特許発明1は、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」という特定の抽出溶媒で抽出されたトウガラシの抽出物を含有するものであり、本件特許発明1を引用する本件特許発明2は、当該特定の抽出溶媒で抽出されたトウガラシの抽出物を、具体的に「トウガラシチンキ又はトウガラシ軟エキス」としたものである。
そして、上記「第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要」で説示したように、本件特許明細書からは、「トウガラシの低級一価アルコール抽出物や水/低級一価アルコール混液抽出物」であれば、ロキソプロフェン添加により、試験例6と同様な保存安定性改善効果が得られるものと推認できるから、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」を用いることが特定された本件特許発明1及び当該本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び3は、特許法第36条第6項第1号に係る取消理由が解消していることは明らかである。
したがって、上記取消理由によっては、本件特許発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
なお、申立人は、平成29年11月20日付け意見書において、本件特許が特許法第36条第6項第1号に記載する要件を満たしていないとの主張に関連して、ロキソプロフェン添加により、トウガラシ抽出物の保存安定性が改善したことを示した本件特許明細書の試験例6について、その追試であるとする実験成績証明書(甲第12号証)を提出し、そもそも当該試験例6で示されているロキソプロフェン添加による保存安定性改善効果自体が疑わしいものである旨の主張をしている。
しかしながら、当該甲第12号証は、本件特許異議申立書に添付されたものではなく、上記意見書に添付され提出された新たな証拠であって、訂正請求の内容に付随して生じる理由のために提出されたものでもなく、もともと本件特許明細書に記載され本件特許発明の実施例とされていた試験例6について、新たな取消理由を主張するための、いわば後出しの証拠であるから、これを採用することはできない。
また、甲第12号証の実験成績証明書はその実験者が全く不明であり、当該実験を本件特許明細書の試験例6の追試として適切に行い得る当業者であるかすら分からないものであるから、仮に、甲第12号証が、いわゆる「後出しの証拠」でないとしても、取消理由の根拠として、これを採用することはできない。
第6 申立理由の概要及び提出した証拠
1 申立理由の概要
申立人は、甲第1~11号証を提出し、本件特許は、以下の申立理由1~7により、取り消されるべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引例とした場合の新規性欠如)
本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当する。
(2)申立理由2(甲第1号証を主引例とした場合の進歩性欠如)
本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証の記載に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当する。
(3)申立理由3(甲第4号証を主引例とした場合の新規性欠如)
本件特許発明1~3は、甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当する。
(4)申立理由4(甲第4号証を主引例とした場合の進歩性欠如)
本件特許発明1~3は、甲第4号証に記載された発明と甲第1号証の記載又は本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基づいて当業者が容易に想到できたものであり、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1~3に係る特許は、同法113条第2号に該当する。
(5)申立理由5(サポート要件違反)
本件特許発明1~3は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、本件特許発明1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであり、同法第113条第4号に該当する。
(6)申立理由6(実施可能要件違反)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件特許発明1~3を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1~3に係る特許は、同法第113条第4号に該当する。
(7)申立理由7(明確性要件違反)
本件特許発明1~3は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1~3に係る特許は、同法113条第4号に該当する。
2 証拠方法
(1)甲第1号証:特開平11-199520号公報
(2)甲第2号証:特表2012-505909号公報
(3)甲第3号証:2010年9月1日発行「薬局新聞」,第6頁
(4)甲第4号証:韓国公開特許第10-2005-0078679号公報
(5)甲第5号証:THE MERCK INDEX Eleventh Edition,1989,pp.266-267
(6)甲第6号証:Environmental Science and Pollution Research,February 2004,Volume 11,Issue 1,pp.7-10
(7)甲第7号証:日本粉末薬品株式会社のウェブサイト
(https://web.archive.org./web/20140805125108/http://www.nfy.co.jp:80/medicine/
(8)甲第8号証:医薬品添加物規格 2003(平成15年8月8日発行),第476頁
(9)甲第9号証:日本医薬品集 一般薬 2010-11年版(平成21年9月1日発行),第736,755,760頁
(10)甲第10号証:和光純薬工業 製品詳細情報
(「http://www.siyaku.com/」上で「β-カロテン」を検索して表示される検索結果最上位の「β-カロテン」のPDFデータに相当)
(11)甲第11号証:第十五改正 日本薬局方解説書 生薬等,2006, D-478~D-487
(以下、「甲第1号証」ないし「甲第11号証」をそれぞれ「甲1」ないし「甲11」という。)
第7 甲号証の記載事項
甲1~甲11には、それぞれ以下の記載がある。
1 甲1
(1-1)(【請求項1】)
「非ステロイド系抗炎症剤を含有すると共に、カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質の少なくとも1種以上とを配合してなることを特徴とする皮膚外用剤。」
(1-2)(【0002】)
「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来より、消炎、鎮痛剤として使用されている非ステロイド系抗炎症剤を含有する皮膚外用剤は、炎症を起こしている適用部位に冷たい感じがするのを解消するために温感を付与する物質を配合することが提案されている。」
(1-3)(【0007】)
「以下、本発明をより詳細に説明すると、本発明の皮膚外用剤は、非ステロイド系抗炎症剤を含有し、その剤型は外用製剤であれば特に制限されず、例えば貼付剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤等として調製されるものである。ここで、非ステロイド系抗炎症剤としては、皮膚外用剤に配合し得るものであればその種類が特に制限されるものではなく、例えばアズレン、アセトアミノフェン、アセメタシン、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンピロキシカム、アンフェナク、イソキシカム、イソキセバク、イブフェナク、イブプロフェン、インドシン、インドプロフェン、インドメタシン、エトドラク、エモルファゾン、オキサプロジン、オキサブロフェン、オキシカム、オキセビナク、オルセノン、オルトフェナミン酸、カルプロフェン、クリダナク、クリプロフェン、ケトチフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、アスピリン,サリチル酸メチル,サリチル酸グリコール等のサリチル酸系薬剤、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、シクロプロフェン、ジドメタシン、ジフルニサル、硝酸イソソルビド、スドキシカム、スプロフェン、スリンダク、ゾメビラク、チアプロフェン、チオキサプロフェン、チオビナク、テニラック、テノキシカム、トラマドール、トルメチン、トルフェナム酸、ナプロキセン、ニフルミン酸、ビルプロフェン、ピロキシカム、フェニドン、フェノプロフェン、フェルビナク、フェンクロフェナク、フェンチアザク、フェンブフェン、ブクロキシ酸、ブフェキサマク、プラノプロフェン、フルプロフェン、フルフェナミン酸、フルフェニサル、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フロクタフェニン、プロチジン酸、フロフェナク、ベノキサプロフェン、ベノリレート、ベンダザク、ミロプロフェン、メクロフェナミン酸、メピリゾール、メフェナム酸、リシブフェン、ロキソプロフェン及びこれらの塩等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。本発明の場合、抗炎症作用、安全性などを考慮すると、これらの中でもフルルビプロフェン、フェルビナク、ブフェキサマク、スプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、インドメタシン、ザルトプロフェン、メフェナム酸等が好適であり、特にフルルビプロフェン、フェルビナク、ブフェキサマク、スプロフェン等を含有する場合に効果的である。」
(1-4)(【0009】)
「本発明の皮膚外用剤は、温感付与物質として、カプシコシドと他のトウガラシ由来の温感付与物質とを併用するものであり、カプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質としては、トウガラシから抽出、分離される成分であって、皮膚に適用した時に温感を感じさせる物質であればよく、このような物質として、例えばカプサイシノイド、カプサイシン、ジヒドロキシカプサイシン,カプサンチン等のカプサイシン類似体、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせてカプシコシドと併用できる。本発明の場合、これらの中でも特にトウガラシエキス、トウガラシ末、カプサイシン等が好適である。なお、カプサイシンの具体的成分としては、8-メチル-N-バニリル-6E-ノネンアミド,N-バニリルノナンアミド等、カプサイシノイドの具体的成分としては、N-バニリル-9-オクタデセンアミド等、カプサイシン類似体の具体的成分としては、N-バニリル-アルカジエンアミド,N-バニリル-アルカンジエンニル,N-バニリル-cis-モノ不飽和アルケンアミド等を挙げることができる。」
(1-5)(【0021】)
「貼付剤は常法に従って製造し得、例えば水性パップ剤であれば、上記各成分を練合してペースト状に調製し、これを上記支持体に塗布し、必要によりポリエチレンフィルム等のフェイシングを被覆することによって得られるものである。更に例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系粘着剤組成物の場合は上記支持体表面に薬物と界面活性剤とを含有する粘着剤層が形成され貼付剤が得られる。当該粘着剤層を形成するには、溶剤塗工法、ホットメルト塗工法、電子線エマルジョン塗工法などの種々の塗工法が用いられ得る。」
(1-6)(【0032】)
「
」
(1-7)(【0033】)
「
」
(1-8)(【0039】)
「
」
(1-9)(【0040】)
「
」
2 甲2
(2-1)(【請求項1】)
「局所的に投与可能なビヒクルに、局所的に活性な非ステロイド性抗炎症剤、および少なくとも1種の感覚剤、および任意選択により自己温熱系を含む、これを必要としている患者において疼痛または炎症を軽減するための局所医薬組成物。」
(2-2)(【請求項4】)
「少なくとも1種の感覚剤が、バニロイドを含む、請求項3に記載の組成物。」
(2-3)(【請求項5】)
「バニロイドが、バニリルアルコールn-ブチルエーテル、バニリルアルコールn-プロピルエーテル、バニリルアルコールイソプロピルエーテル、バニリルアルコールイソブチルエーテル、バニリルアルコールn-アミノエーテル、バニリルアルコールイソアミルエーテル、バニリルアルコールn-ヘキシルエーテル、バニリルアルコールメチルエーテル、バニリルアルコールエチルエーテル、ジンゲロール、ショウガオール、パラドール、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、およびこれらの混合物から選択される、請求項4に記載の組成物。」
(2-4)(【0013】)
「(詳細な記述)
驚いたことに、NSAIDを含む局所鎮痛組成物に1種以上の感覚剤および/または自己温熱系を添加することにより、哺乳動物、特にヒトの皮膚による活性剤の吸収速度および程度が劇的に改善され、さらに、このような組成物がこれを必要としている患者の皮膚に局所的に適用されたとき、迅速で完全な疼痛軽減の感覚が付与されることがわかった。」
(2-5)(【0014】)
「NSAIDは、例えば、アリールアルカン酸、例えばジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダク、またはトルメチン;2-アリールプロピオン酸、例えばイブプロフェン、アルミノプロフェン、カルプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、スプロフェン、またはチアプロフェン酸;N-アリールアントラニル酸、例えばメフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、およびトルフェナム酸などであることができる。用語NSAIDは、セレコキシブ、エノール酸群、例えばピロキシカムおよびメロキシカム、アセチルサリチル酸(即ち、アスピリン)、およびサルサレートなどのCOX-2阻害剤も含むものとする。」
(2-6)(【0018】)
「感覚剤は、好ましくは「温熱」感覚剤として機能する。生理的温熱剤には、「バニロイド」、即ちバニリル官能基から誘導されるものとして分類される化合物が含まれ、これにはバニリルアルコールアルキルエーテル誘導体および変異体、例えばバニリルアルコールn-ブチルエーテル、バニリルアルコールn-プロピルエーテル、バニリルアルコールイソプロピルエーテル、バニリルアルコールイソブチルエーテル、バニリルアルコールn-アミノエーテル、バニリルアルコールイソアミルエーテル、バニリルアルコールn-ヘキシルエーテル、バニリルアルコールメチルエーテル、バニリルアルコールエチルエーテル、ジンゲロール、ショウガオール、パラドール、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、およびこれらの混合物が含まれる。」
(2-7)(【0026】)
「疼痛感覚をマスキングする他の温熱感覚剤には、トウガラシ(赤トウガラシ粉末、チンキ、油、オレオレジン、および抽出物)、ショウキョウ抽出物、オレオレジン、および油、サンショウ(Zanthoxylum piperitum)抽出物、サンショオールI、サンショオールII、サンショアミド、黒コショウ抽出物、カビシン、ピぺリン、ならびにスピラントールが含まれる。」
(2-8)(【0029】)
「バニロイドファミリーの別のメンバーであるカプサイシン(8-メチル-N-バニリル-6-ノネンアミドも好ましい(CTFA Monograph ID 7655参照)。カプサイシンはある濃度では、ヒトを含む哺乳動物の刺激物であり、カプサイシンが接触すると組織中に灼熱感を生じる。カプサイシンおよび幾つかの関連化合物は、カプサイシノイドと称され、チリペッパーに由来する。純粋なカプサイシンは疎水性、無色、無臭の結晶性からロウ様化合物である。カプサイシンが感覚剤として用いられるとき、この濃度は0.025重量%未満であるべきである。」
(2-9)(【0076】)
「または、組成物は、水性ゲルを含むことができる。このような組成物は、医薬的に活性な成分、感覚剤、水である少なくとも1種の溶媒、増粘剤、および他の任意選択成分を含むことができる。」
(2-10)(【0078】)
「例えば、ジクロフェナクを含む局所組成物は、ジクロフェナクまたは医薬的に許容されるこの塩を、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなどの溶媒に溶解することによって、調製することができる。この組成物はさらに水を含むことができ、または無水であることができる。」
(2-11)(【0131】)
「ジクロフェナクナトリウムおよびリドカインを、プロピレングリコール、PEG-8、および水の一部の溶液に溶解する。カルボマーをイソプロピルアルコールおよび残りの水に分散して、均一なブレンドを形成する。アンモニア溶液をカルボマーブレンドに添加して、pHを所望の範囲(中性近傍)に調節する。ジクロフェナクナトリウムの溶液をカルボマーブレンドに添加し、混合して均一なゲルを形成する。成分を一緒に約75℃で溶融することによって、ココ-カプリラート/カプラート、鉱油、セテアリルアルコール、およびポリソルベート60からなる油相を形成する。油相が完全に流動性で均一になった後、攪拌および混合しながら油相をゲルに混入し、生成物を約40℃に冷却する。香料、バニリルブチルエーテル、カプサイシン、およびイソプロピルアルコールの一部を一緒に混合し、添加して、生成物を形成する。」
3 甲3
(3-1)(第1段の第19行目~第2段の第17行目)
「消炎鎮痛成分としては、・・・第2世代といわれるスイッチOTC成分のインドメタシン、ケトプロフェン、ピロキシカム、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウムなどがあります。・・・温感刺激成分では、・・・トウガラシ由来のカプサイシンなどがあります。」
4 甲4(甲4は韓国語で記載されているため、日本語の訳文にて記載する。)
(4-1)(請求項1)
「有効成分としてロキソプロフェン及びロキソプロフェンナトリウムを含むパップ剤。」
(4-2)(請求項3)
「水溶性ポリマー、保湿剤、水分、吸収促進剤、賦形剤、刺激緩和剤、薬効補助剤及びpH調整剤から成る群から選択される1つ以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載のロキソプロフェン塩含有パップ剤。」
(4-3)(請求項8)
「水分がハップ剤の全重量あたり3~60重量%である、請求項3に記載のロキソプロフェン塩含有パップ剤。」
(4-4)(請求項14)
「・・・トウガラシ、・・・カプサイシン・・・を含む、請求項3に記載のロキソプロフェン塩含有パップ剤。」
(4-5)(請求項15)
「i)ロキソプロフェンとロキソプロフェンナトリウム塩をそれぞれ必要に応じて吸収促進剤、界面活性剤および水(精製水)に混合して均一に製造する段階;
ii)水溶性高分子を水(精製水)と保湿剤で溶解と混合分散した後、必要に応じて賦形剤、その他の添加剤を添加して、均一な混合液を製造する段階;
iii)工程i)の混合物に工程ii)の混合物を添加して、均一な混合液を製造する段階;と
iv)上記混合液を通常の方法で、基材層の上に薄く塗った後、その上に剥離被覆物を付ける段階で構成されていること、
を特徴とする、
ロキソプロフェン塩含有パップ剤の製造方法。」
5 甲5(甲5は英文であるので、日本語の訳文にて記載する。)
(5-1)(第1772頁右欄~第1773頁左欄「1767.Capsaicin」の項)
「1767.カプサイシン・・・実質的に冷水に不溶。アルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルムに溶けやすい;CS2に僅かに溶ける。」
6 甲6(甲6は英文であるので、日本語の訳文にて記載する。)
(6-1)(第7頁右欄最終段落第3~4行)
「飽和状態であっても、カプサイシンは僅かしか水に溶解しない(~60mg/l)。上述の特許出願や研究調査において、カプサイシンは簡単に処理できるよう、予め有機溶媒に溶解しなければならなかった。」
(6-2)(第8頁右欄下から第19~22行)
「カプサイシンを純粋なメタノール、エタノール又はアセトンに溶解した場合、表1の最初の3行に要約されているとおり、色の変化も沈殿形成も見られなかった。1mlの蒸留水を添加した後でもカプサイシンは溶液のままであった。」
(6-3)(第9頁Table2)
「表2:溶媒蒸発の前に水を添加した場合の異なる溶媒におけるカプサイシンの溶解性
」
7 甲7
(7-1)(第3~15頁の表中、第3頁最下段及び第12頁最上段)
「 販売名 ・・・ 抽出溶媒 ・・・ 剤形
トウガラシエキスB ・・・ 80%エタノール ・・・ 軟エキス」
8 甲8
(8-1)(「ノナン酸バニリルアミド」の「性状」の項)
「本品はエタノール(99.5)に極めて溶けやすく、水にほとんど溶けない」
9 甲9
(9-1)(「アンメルツヨコヨコフェルビナエースz(小林製薬)」の「剤型・成分」項)
「・・・フェルビナク3g、ノナン酸バニリルアミド12mg・・・」
10 甲10
(10-1)(「β-カロテン」の「溶解性」の項)
「エタノールに極めて溶けにくく、水にほとんど溶けない。」
11 甲11
(11-1)(D-483の「トウガラシ末 生薬の性状」の項)
「油滴及び黄赤色の有色体を含む柔組織の破片、厚いクチクラを伴う果皮外面の表皮の破片、側膜が波状に湾曲する果皮内面の石細胞の破片、細い道管の破片、厚膜化した種皮の破片、脂肪油及びアリューロン粒を含む内乳の小形細胞からなる柔組織の破片を認める。」
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての合議体の判断
1. 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)及び申立理由2(特許法第29条第2項)について
ア.特許法第29条第1項第3号について
申立人は、上記甲1の摘記事項(1-1)~(1-9)に基づき、甲1には、「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物である医薬組成物。」の発明が記載されているから、本件特許発明1は甲1に記載された発明である旨、主張する。
しかしながら、摘記事項(1-3)には、「ロキソプロフェン」なる記載が存在するものの、当該記載は、単に、甲1に記載の「非ステロイド系抗炎症剤を含有すると共に、カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質の少なくとも1種以上とを配合してなることを特徴とする皮膚外用剤。」(摘示事項(1-1))における「非ステロイド性抗炎症剤」として、多数列挙されるものの一つとして記載されているに過ぎず、また、甲1に記載の上記皮膚外用剤の具体例を記載する実施例をみても(摘記事項(1-6)、(1-8))、「非ステロイド性抗炎症剤」としてフルルビプロフェンやフェルビナク等を用いたものが示されているのみであって、ロキソプロフェンを用いた組成物は何ら記載されていないから、このような甲1の記載からは、申立人が主張するような「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物である医薬組成物」なる発明を把握することはできない。
さらに、本件特許発明1は、単なる「トウガラシ又はその抽出物」ではなく、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」という特定の抽出溶媒により抽出されたトウガラシの抽出物を用いる発明であるから、甲1に、当該特定のトウガラシの抽出物を含有する医薬組成物が記載されていると理解できるかについても検討するに、摘記事項(1-4)には、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」の一種であると認められる「トウガラシチンキ」なる記載が存在するものの、当該記載は、単に、甲1に記載の「非ステロイド系抗炎症剤を含有すると共に、カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質の少なくとも1種以上とを配合してなることを特徴とする皮膚外用剤。」(摘示事項(1-1))における「カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質」として、多数列挙されるものの一つとして記載されているに過ぎない。また、甲1に記載の上記皮膚外用剤の具体例を記載する実施例をみても(摘記事項(1-6)、(1-8))、「カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質」として、抽出溶媒が不明である「トウガラシエキス」を用いたものは記載されているものの、「トウガラシチンキ」のような、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」に該当する抽出物を用いた組成物は何ら記載されていない。
したがって、、甲1の記載からは、申立人が主張する「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物である医薬組成物。」の発明が記載されていると認めることはできないし、ましてや、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物である医薬組成物。」の発明が記載されているとも認められないから、本件特許発明1が甲1に記載された発明であるとすることはできない。
このことは、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2及び3についても同様である。
よって、申立理由1には理由がない。
イ.特許法第29条第2項について
(1)甲1発明との対比・判断について
甲1には、「非ステロイド系抗炎症剤を含有すると共に、カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質の少なくとも1種以上とを配合してなることを特徴とする皮膚外用剤。」(摘記事項(1-1))との記載があるので、これを「甲1発明」として検討するに、当該甲1発明は水を含む剤であると認められるから(摘記事項(1-6)、(1-8))、本件特許発明1と当該甲1発明とは、「非ステロイド性抗炎症剤、及びトウガラシの抽出物を配合してなることを特徴とする含水医薬組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本件特許発明1においては、「ロキソプロフェン又はその塩」を含有することが規定されるのに対し、甲1発明においては、「非ステロイド性抗炎症剤」を含有することが規定される点。
(相違点2)本件特許発明1においては、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」を含有することが規定されるのに対し、甲1発明においては、「カプシコシドとカプシコシド以外のトウガラシ由来の温感付与物質」を含有することが規定される点。
上記相違点1について、申立人は、甲2には、ジクロフェナクとカプサイシンなどの組み合わせが記載されており、非ステロイド性抗炎症剤の例として、ロキソプロフェンが明記されていること、甲3には、ロキソプロフェンよりも前にスイッチOTC薬として承認されたインドメタシン等と温感刺激成分とを組み合わせても良いこと、甲9には、フェルビナクと温感付与物質としてのノニル酸バニリルアミドを含む外用液が実際に市販されていたこと、がそれぞれ記載されていると指摘し、従来より使用されていた非ステロイド性抗炎症剤に代えて、ロキソプロフェンなどの新たに承認されたスイッチOTC薬を順次採用することは当業界で常に行われていたことといえ、本件特許優先日当時、ロキソプロフェンと温感付与物質であるトウガラシ抽出物を組み合わせて使用する積極的な動機付けがあった旨、主張をしている。
ここで、上記甲2、3及び9の記載を検討するに、甲2には、非ステロイド性抗炎症剤と感覚剤を組み合わせることが記載されており(摘記事項(2-1))、当該非ステロイド性抗炎症剤としてロキソプロフェンが使用できること(摘記事項(2-5))、当該感覚剤としてトウガラシチンキが使用できること(摘記事項(2-7))が記載されているものの、それらは、単に、甲2における「非ステロイド性抗炎症剤」や「感覚剤」として多数列挙されるものの1つとして示されているに過ぎず、甲2には、具体的に、非ステロイド性抗炎症剤としてロキソプロフェンを用いた実施例等の具体的な記載も、感覚剤としてトウガラシエキスを用いた実施例等の具体的な記載も何ら見当たらない。さらに、甲3には、ロキソプロフェンを使用することの記載はなく、甲9に至っては、トウガラシやトウガラシエキス等の種々の成分を含有するトウガラシの抽出物を使用することや、ロキソプロフェンを使用することの記載すらなく、単に、甲3には、外用消炎鎮痛剤の成分として、スイッチOTC成分とされるインドメタシン等の消炎鎮痛成分や、ノニル酸バニリルアミドやカプサイシン等の温感刺激成分があることが(摘記事項(3-1))、また甲9には、フェルビナクとノニル酸バニリルアミドを含む製品が記載されているのみである(摘記事項(9-1))。
そうすると、甲2、3及び9の記載からは、甲1発明において、非ステロイド性抗炎症剤として、特にロキソプロフェンを採用することが当業者に動機付けられるとは認められず、相違点2について検討するまでもなく、当業者が、本件特許発明1の構成に容易に想到し得たものとは認められない。
さらに、本件特許明細書には、トウガラシエキスB(トウガラシ80%エタノール抽出物)は水の共存下で沈殿が生じたこと、当該沈殿はロキソプロフェンを添加することにより抑制されたことが具体的に示されており(試験例6)、当該試験例からは、本件特許発明1は、ロキソプロフェンを含有することにより、水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物を含む含水医薬組成物の安定性を改善するという優れた効果を奏するものと認められ、当該効果は、甲1~3及び9の記載からは当業者が予測できない格別顕著なものである。
したがって、本件特許発明1は、申立人の主張及び甲9に記載の事項を参酌しても、甲1~3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
このことは、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2及び3についても同様である。
よって、申立理由2には理由がない。
なお、本件特許発明1の備える効果について、申立人は、実施例では、ロキソプロフェンによる可溶化効果がトウガラシエキスB(トウガラシ80%エタノール抽出物)なるトウガラシエキスで確認されているものの、当該トウガラシエキスBは80%エタノール抽出物であることから、本件特許発明の含水医薬組成物中に高濃度でエタノールが含まれている場合には、当該抽出物が沈殿せずに溶解できることは明らかであるし、トウガラシの主要成分であるカプサイシンはエタノール等の溶媒中で、多少の水を添加しても沈殿物が生じないこと、ノナン酸バニリルアミドもエタノールに易溶であることが知られているから、本件特許のロキソプロフェンの可溶化効果は、本件特許の優先日当時の技術水準であるエタノールによる可溶化効果を上回るものではなく、当業者が予測可能である旨、主張している。
そこで、この点について検討する。
確かに、トウガラシのエタノール抽出物においては、エタノール割合が増加すればトウガラシ抽出物の溶解性向上が期待できると認められる。
しかしながら、本件特許明細書には、トウガラシエキスは水の存在により沈殿を生じたことが記載されており、この記載からみて、水の存在がトウガラシ抽出物の安定性を低下させるものと認められるところ、ロキソプロフェン添加により、当該沈殿の生成が抑制されたことが具体的に示されているから(試験例6)、当該抽出物を含む含水医薬組成物における保存安定性は、ロキソプロフェンにより改善できることが理解できる。
そうすると、本件特許発明の含水医薬組成物において、エタノール割合が多く水分の割合が少ない場合であっても、当該水の存在が、組成物の安定性に影響を与えるであろうところ、ロキソプロフェンはトウガラシ抽出物を含有する含水医薬組成物の安定性に寄与する作用を奏するものと推認されるから、エタノールを高濃度で含有する場合の本件特許発明1について、含水組成物の安定性の向上という格別顕著な効果が認められないとすることはできない。
以上から、申立人の上記主張は採用できない。
2. 申立理由3(特許法第29条第1項第3号)及び申立理由4(特許法第29条第2項)について
ア.特許法第29条第1項第3号について
申立人は、上記甲4の摘記事項(4-1)~(4-5)に基づき、甲4には、「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物であるパップ剤。」の発明が記載されており、本件特許発明1はパップ剤が除かれている点で、一見甲4発明と相違するものの、甲4の摘記事項(4-5)には、ロキソプロフェン等の成分を支持体にコーティングする前に、それぞれ、溶解して混合することが記載されているから、甲4発明のパップ剤は、その調整前にトウガラシ、ロキソプロフェン、水分を含む水溶液になっている可能性が高く、また、パップ剤においても、トウガラシ、ロキソプロフェンは、溶媒存在下、一部水に溶解した状態で存在している可能性があるから、本件特許発明1は甲4に実質的に記載されており、パップ剤が除かれているとしても、本件特許発明1は甲4発明と実質的に区別できない旨、主張する。
しかしながら、摘記事項(4-4)には、「トウガラシ」が記載されているものの、当該「トウガラシ」は、単に、ロキソプロフェン含有パップ剤に添加できる他の成分として、多数列挙されるものの一つとして示されているに過ぎないものであり、このような記載からは、トウガラシとロキソプロフェンの組み合わせが具体的に把握できるとはいえないから、甲4には、申立人が主張する、「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物であるパップ剤」の発明が記載されていると認めることはできない。そして、そもそも、本件特許発明1は、単なる「トウガラシ又はその抽出物」ではなく、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」という特定の抽出溶媒により抽出されたトウガラシの抽出物を用いる発明であって、当該特定のトウガラシの抽出物を用いる点は、甲4には記載も示唆もされていない。
さらに、甲4の摘記事項(4-1)~(4-5)の記載からみて、甲4には、専らパップ剤の発明が記載されているのみで、当該パップ剤以外の「医薬組成物」は何ら記載されていないから、そのような甲4の記載からは、「含水医薬組成物(但し、パップ剤を除く。)」と規定されている本件特許発明1と甲4発明が、剤型の点において、区別できないものと認めることもできない。
したがって、本件特許発明1は甲4に記載された発明であるとすることはできない。
このことは、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2及び3についても同様である。
よって、申立理由3には理由がない。
イ.特許法第29条第2項について
(1)甲4発明との対比について
上述のとおり、甲4には、「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物であるパップ剤」の発明が記載されているとはいえないが、仮に甲4に「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水組成物であるパップ剤」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているとしても、以下で説示するとおり、申立理由4には理由がない。
本件特許発明1と上記甲4発明とを対比すると、両者は、「トウガラシ又はその抽出物、ロキソプロフェンを含有し、且つ含水医薬組成物」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)本件特許発明1では、パップ剤を除く含水医薬組成物の発明であるのに対し、甲4発明においては、パップ剤に特定されている点。
(相違点2)本件特許発明1においては、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」を含有することが規定されるのに対し、甲1発明においては、「トウガラシ又はその抽出物」を含有することが規定される点。
申立人は、上記相違点1について、周知技術である非ステロイド性抗炎症剤とトウガラシ抽出物との組み合わせは、パップ剤のみならずその他の剤型においても使用されているから、パップ剤を除いたとしても、本件特許発明1が進歩性を有することはない旨、主張している。
しかしながら、甲4の摘記事項(4-1)~(4-5)の記載からみて、甲4には専らパップ剤の発明が開示されているのみで、その他の剤型に変更することを示唆するような記載は何ら存在しないのであるから、甲4発明において、剤型をパップ剤以外とすることが、当業者が容易に想到し得たこととは認められない。
したがって、上記相違点1についての、申立人の主張も採用することはできない。
また、相違点2については、上記「ア.特許法第29条第1項第3号について」に記載のように、甲4には、本件特許発明1で規定される特定のトウガラシの抽出物を用いる点は、記載も示唆もされていない。
一方、本件特許明細書には、トウガラシエキスは水の共存下で沈殿が生じたこと、当該沈殿はロキソプロフェンを添加することにより抑制されたことが具体的に示されており(試験例6)、「ロキソプロフェン」、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」、及び「水」という各成分の組み合わせにより、本件特許発明1は、液剤全体として、保存安定性の改善という優れた効果を奏するものと認められ、当該効果は、甲4の記載、及び本件特許の優先権主張日当時の技術常識からは当業者が予測できない格別顕著なものと認められる。
したがって、本件特許発明1は、甲4の記載及び本件特許の優先権主張日当時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
このことは、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2及び3についても同様である。
なお、申立人は、本件特許発明2について、甲1等の記載から、トウガラシ以外のトウガラシ由来成分についても、パップ剤に配合することは周知である旨の主張をしているが、かかる主張を参酌しても、上記相違点1を有するから、本件特許発明2及び3は、当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
よって、本件特許発明1~3は、甲4及び1の記載、並びに本件特許の優先権主張日当時の技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、申立理由4には理由がない。
3.申立理由6(特許法第36条第4項第1号)について
申立人は、本件特許発明1のうち、トウガラシエキス以外のトウガラシの抽出物について、どのようにすればロキソプロフェンを使用して可溶化できるのか、出願時の技術常識に基づいても、当業者が理解できないから、本件特許は、発明の詳細な説明が、当業者が本件特許発明1を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されているとはいえない旨、主張している。
しかしながら、本件特許発明1の医薬組成物は、申立人が主張するような「可溶化」されたものであることを発明特定事項とするものではないから、発明の詳細な説明が、本件特許発明1を実施することができる程度に明確且つ十分な記載であるというには、発明の詳細な説明に、「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物、ロキソプロフェン又はその塩を含有し、且つ含水組成物である医薬組成物(但し、パップ剤を除く)」なる医薬組成物、即ち、水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物、ロキソプロフェン又はその塩及び水という3成分を含むパップ剤以外の剤型の医薬組成物を製造できるに足る程度の記載があれば十分である。
一方、本件特許の発明の詳細な説明には、「本発明の医薬組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法により製造することができる。・・・例えば、・・・皮膚等に適用する製剤(外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等)などの、第十六改正日本薬局方 製剤総則に記載の剤形とすることができる。・・・」(【0044】)との製造方法の記載や、医薬組成物を製造する際の配合量や配合割合についての詳細な記載もなされている(【0040】~【0043】)から、これらの本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、本件特許発明1に記載の医薬組成物を製造することは、当業者に可能なものである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
本件特許発明2は、本件特許発明1における「トウガラシの抽出物」をさらに特定したものであるが、本件特許発明1と同様に製造できるものと認められるし、本件特許発明3は本件特許発明1あるいは2の医薬組成物の剤型を特定したものであるが、当該剤型は、上記【0044】に記載の製剤総則で製造できるものと認められる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明2及び3に記載の発明についても、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
よって、申立理由6には理由がない。
4.申立理由7(特許法第36条第6項第2号について)
申立人は、本件特許発明1の「抽出物」は、使用する溶媒により抽出される成分が変動するものであり、どのような種類の溶媒をどの程度の量用いて抽出された、どのような成分を含む抽出物であるのか、その範囲が不明確である旨、主張している。
しかしながら、本件特許発明1の「抽出物」は「水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とする、トウガラシの抽出物」という抽出溶媒が具体的に特定された「トウガラシの抽出物」であり、さらに、当該「トウガラシの抽出物」について、本件特許明細書には、「また、医薬組成物の製造時の取扱の便宜等を考慮して、トウガラシに何らかの抽出処理を施したもの(以下、「トウガラシの抽出物」と称する。)を用いてもよい。なお、上記「トウガラシの抽出物」には、抽出処理に加えて、加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施したものも包含される」(【0037】)と記載され、抽出溶媒、抽出温度、抽出時間などの抽出条件も一般的なものであることが示されているから(【0038】、【0015】)、本件特許発明1のトウガラシの「抽出物」は、水と低級一価アルコールとの混液又は低級一価アルコールを抽出溶媒とし、トウガラシの一般的な抽出処理によって得られたもの、あるいは、これにさらに加熱、乾燥、粉砕等の加工処理を施して得られたもの一般を意味するものとして明らかであるといえる。
また、申立人は、本件特許発明1の「含水組成物」との表現では、どの程度の水を含むのか明確ではない旨、主張している。
しかしながら、「含水組成物」はその記載のとおり、「水を含む組成物」一般を示すものとして明確な記載である。
以上のとおり、本件特許発明1の「抽出物」及び「含水組成物」との記載は、何ら不明確なところはない。この点は、本件特許発明1をそれぞれ直接又は間接的に引用する本件特許発明2及び3についても同様である。
よって、申立理由7には理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700507