特許異議申立
2017-700429
セラミックス-金属接合体
- 審判番号
- 2017-700429
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-037977
- 登録番号
- 特許第6023829号(P6023829)
- 請求日
- 2017年04月28日
- 審決日
- 2017年07月18日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本碍子株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人アイテック国際特許事務所
- 【異議申立人】徳田 あけみ
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 瀧口 博史
- 審判官 宮澤 尚之
- 分類
- P1651.121-Y (C04B) / P1651.536-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6023829号発明「セラミックス-金属接合体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6023829号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6023829号の請求項1~3に係る特許についての出願(特願2015-37977号)は、平成22年2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成21年2月20日、米国)を国際出願日とする特願2011-500663号の一部を平成27年2月27日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人徳田あけみ(以下、「申立人」という。)より請求項1~3に係る特許に対して異議の申立てがされたものである。
2 本件発明
請求項1~3に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明3」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~3に記載される以下のとおりのものである。
【請求項1】
セラミックス製のプレートと金属製の支持台とを樹脂からなる接合シートで接合した、半導体プロセスにおいて使用する接合体であって、
前記樹脂は、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂であり、
120℃,100Paの真空環境下で300時間加熱した場合の前記接合シートの重量変化が50μg/cm2(ここで単位は接合面平方センチあたり)以下である、
セラミックス-金属接合体。
【請求項2】
セラミックス製のプレートと金属製の支持台とを樹脂からなる接合シートで接合した、半導体プロセスにおいて使用する接合体であって、
前記樹脂は、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂であり、
120℃,100Paの真空環境下で300時間加熱した場合の前記プレートと前記接合シートとの接合界面や前記支持台と前記接合シートとの接合界面に気泡が発生しない、
セラミックス-金属接合体。
【請求項3】
前記セラミックス-金属接合体は、半導体プロセスにおいてウエハーを吸着固定するのに使用する静電チャック、又は、半導体プロセスにおいて反応ガスをチャンバー容器に分散供給するのに使用するシャワーヘッドである、
請求項1又は2に記載のセラミックス-金属接合体。
3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1~5号証を提出し、以下の理由により、特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1) 証拠
甲第1号証:特開平7-335731号公報
甲第2号証:特開2006-182973号公報
甲第3号証:特許第3699349号公報
甲第4号証:特開平6-124998号公報
甲第5号証:特開2000-68250号公報
(2) 理由
ア 特許法第29条第2項について
本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明と、甲第1号証ないし甲第5号証における記載事項とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 特許法第36条第6項第1号について
本件特許明細書には、アクリル樹脂製又はシリコーン樹脂製の接合シートを予め加熱してシート中の揮発成分を減らすプリベイクを行ってから、接合シートをプレートと支持台との間に挟んだ状態で気密バッグに入れ、さらにその気密バッグを減圧してオートクレーブに入れて加圧しながら接合して得られたセラミック-金属接合体のみが開示されており、本件特許発明1、2の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるといえないから、本件特許発明1、2及びこれらを引用する本件特許発明3は、サポート要件を満たしていない。
ウ 特許法第36条第4項第1号について
(ア)本件特許明細書には、プリベイクや気密バッグを用いた加圧といった特定の手段を組み合わせた製造方法のみが開示されているため、本件特許発明1~3のセラミックス-金属接合体を得ることは、当業者に過度な実験や特殊な知識を求めることとなるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(イ)本件特許明細書には、セラミックスと金属とを接合した場合のプリベイク条件としては、【0042】に記載されたアルミナとAlとの接合におけるプリベイク条件と、【0046】に記載されたSiCとAlとの接合におけるプリベイク条件としか記載されていないから、本件特許発明1~3のセラミックス-金属接合体を得ることは、当業者に過度な実験や特殊な知識を求めることとなるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(ウ)発明の詳細な説明に記載されたプリベイクや気密バッグを用いた加圧といった特定の手段を用いたとしても、接合シートの厚みが0.25mmより大きい場合には、請求項1に特定される重量変化を満たさない場合があるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1~3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
4 判断
事案に鑑み、上記3(2)に記載した理由イ、ウ、アの順に検討する。
(1)特許法第36条第6項第1号について
本件特許発明1~3の解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0004】、【0005】の記載からみて、「80℃以上の高温使用時に接合材からガスが発生し、プレートと接合材との間や支持台と接合材との間に気泡が生成し、この気泡によりプレートと支持台との間の接触面積が低下したり接着性にバラツキが生じたりすることがあり、吸着しているウエハーの均熱性が悪化すること」、また、「気泡の発生による熱伝達量の変化により、温度制御が困難になること」である。
これに対し、本件特許発明1~3は、「120℃,100Paの真空環境下で300時間加熱した場合」に、「前記接合シートの重量変化が50μg/cm2(ここで単位は接合面平方センチあたり)以下である」こと、または、「前記プレートと前記接合シートとの接合界面や前記支持台と前記接合シートとの接合界面に気泡が発生しない」ことを発明特定事項としているから、「80℃以上の高温使用時に接合材からガスが発生し、プレートと接合材との間や支持台と接合材との間に気泡が生成」しない物であって、上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
すなわち、本件特許発明1~3は、物の発明であって、課題解決手段が、その製造工程にあるわけではない。
(2)特許法第36条第4項第1号について
ア 上記3(2)ウ(ア)について
発明の詳細な説明には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂のそれぞれを用いた場合について、製法が開示されており、本件特許発明1~3の実施に他の製法の開示を要するとはいえない。
イ 上記3(2)ウ(イ)について
接合シートから発生するガスに、被接合部材が影響するといえず、被接合部材の材質を変更した場合に、本件特許発明1~3の実施に過度な実験や特殊な知識を要するとはいえない。
ウ 上記3(2)ウ(ウ)について
厚みが大きい場合には、樹脂に起因する単位体積あたりの発生ガスが少なくても、界面に気泡が生じるおそれがあるところ、本件特許発明1は、重量変化を、接合面単位面積あたり(すなわち、〔単位体積あたりの重量変化〕×〔厚み〕)で特定するものであるから、厚みが大きいために気泡が生じる場合は含まれない。
また厚みについて、実施例2の0.25mmが上限であるとする根拠もない。
そして、申立人が主張する態様は、発明の詳細な説明に記載されたならば、比較例ないし参考例とされることが明らかなものである。
(3)特許法第29条第2項について
ア 甲第1号証に記載された事項
(ア) 「【0053】先ず、図3(A)に示す形状に金属製のベース12を製作する。シリコン系の接着剤を真空中に放置し、接着剤そのものに混入している気泡を取り除く。
【0054】次に、金属製のベース12の上面12a上に、図5の複数の層形成工程100、気泡除去工程200、最終的固化処理工程300を経て接着部13を形成し、保護部形成工程400を経て保護部14を形成する方法を説明する。」
(イ) 「【0057】所定のスクリーン印刷により金属製のベース12の上面12bに数十μmの厚さのシリコン系接着剤を塗布する(図6の101)。この結果、金属製のベース12の上面12b上に第1の接着層13aが形成される(図3(B)参照)。
【0058】この塗布後に、上記120℃の半分程度の温度にて簡易固化処理を行う(102)。この簡易固化処理の温度は、シリコン系の接触剤が半分程度ゲル状に固化され表面が撥水性を有しない温度である。
【0059】さらに、簡易固化処理が施された第1の接着層13aの上に上記スクリーン印刷(101)と同じ処理を行う(103)。この結果、シリコン系接着剤が2層に形成される。すなわち、金属製のベース12の上面12b上に第1の接着層13aおよび第2の接着層13bが形成される(図3(C)参照)。
【0060】さらに、上記簡易処理(102)と同じ処理を行い(104)、さらに、上記スクリーン印刷(101)と同じ処理を行う(105)。この結果、シリコン系接着剤が3層に形成される。すなわち、金属製のベース12の上面12b上に第1の接着層13a、第2の接着層13bおよび第3の接着層13cが形成される(図3(D)参照)。
【0061】このように、スクリーン印刷と簡易熱処理とを処理を繰り返すことにより、接着層13a、13b、13cを3層に均一に厚く塗布したものの形成が可能となる。
【0062】次に、図3および図7を参照して図5の気泡除去工程200を説明する。
【0063】図3(D)の状態で第3の接着層13c上にセラミック板11を重ね合わせる(図7の201)。
【0064】この後、セラミック板11および金属製のベース12同士を互いに押し付けながら、真空中に放置する(202)。この結果、セラミック板11の下面と接着層13a,13b,13cとの隙間および金属製のベース12の上面12bと接着層13a,13b,13cとの隙間に混入している気泡が除去される。
【0065】シリコン系接着剤の場合、1torr、180秒の処理時間でウェーハ20の温度分布特性に悪影響を与える気泡を除去することができる。
【0066】次に、図5の最終的固化処理工程300を行う。」
イ 甲第2号証に記載された事項
(ア) 「【0002】フィルム状シリコーンゴム接着剤は公知である。…ところが、かかるシリコーンゴム接着剤は、…硬化条件によっては、硬化した接着剤層と基材との界面にボイドが発生する等して接着強度が低下する場合があるという問題があった。」
(イ) 「【0006】本発明のフィルム状シリコーンゴム接着剤は、取り扱いが簡単で作業性に優れており、長期間保存した後でも表面にオイル状滲出物が認められず、これを被着体である基材に適用した場合は、接着剤内部や接着界面にボイドなどの欠陥の発生がなく接着強度のばらつきが少ないため、接着不良を発生することなく強固な接着構造体を得ることができるという特徴を有している。このことから、かかる特徴が要求される分野、例えば、自動車工業、電気電子工業、土木建設工業など種々の産業におけるガラス、セラミックス、金属、樹脂、繊維など種々の基材に対する接着剤や被覆剤として好適に使用できる。」
(ウ) 「【0023】…さらに、本接着剤を130℃のオーブンで30分間加熱し硬化させた時の加熱減量が0.25%以下であることが好ましい。これ以上であると、オーブン加熱で硬化させた場合、本接着剤内部あるいは基材との接着界面に、ボイドや密着不良などの接着不良を起こしやすくなるからである。」
(エ) 「【0025】…本発明のフィルム状シリコーンゴム接着剤は、(D)成分を含むので、接着界面にボイドが発生しやすくなる120℃以上の加熱硬化条件においても、接着界面にボイドや浮きなどの欠陥が生じにくく、強固な接着構造体を得ることができるという特徴がある。」
ウ 検討
上記ア(ア)~(イ)を踏まえると、甲第1号証には、最終的固化処理工程を行う前に、接着剤そのものに混入している気泡を取り除くこと、および、最終的固化処理前に、簡易固化処理が施された接着層13a,13b,13cとの隙間に混入している気泡を除去することは記載されているものの、この気泡は、本件特許発明が課題とする高温使用時に接合材から発生するガスによるものとは異なり、高温長時間の評価試験による重量変化や気泡発生の有無を特定することを示唆するものでない。
また、上記イ(ア)~(エ)を踏まえると、甲第2号証には、加熱硬化条件における加熱減量が所定量以下である、接着界面にボイドや浮きなどの欠陥が生じにくいフィルム状シリコーンゴム接着剤は記載されているものの、この加熱減量は、本件特許発明が課題とする高温使用時に接合材から発生するガスによるものとは異なり、高温長時間の評価試験による重量変化や気泡発生の有無を特定することを示唆するものでない。
さらに、甲第3~5号証は、半導体プロセスにおける接合体の使用温度、使用頻度、使用圧力について記載されているにすぎず、使用時に接合材からガスが発生する課題は記載されていないから、高温長時間の評価試験による重量変化や気泡発生の有無を特定することを示唆するものでない。
してみると、「120℃,100Paの真空環境下で300時間加熱した場合」に、「前記接合シートの重量変化が50μg/cm2(ここで単位は接合面平方センチあたり)以下である」こと、または、「前記プレートと前記接合シートとの接合界面や前記支持台と前記接合シートとの接合界面に気泡が発生しない」ことについて、甲第1~5号証には、記載も示唆もされていない。
そうであるから、本件特許発明1~3は、甲第1号証に記載された発明と、甲第1号証ないし甲第5号証における記載事項とをどのように組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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