特許異議申立
2017-700400
壁面仕上げ方法
- 審判番号
- 2017-700400
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-267800外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月20日
- 審決日
- 2017年12月11日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】アイカ工業株式会社
- 【異議申立人】エスケー化研 株式会社
- 分類
- P1651.113-YAA(E04F) / P1651.121-YAA(E04F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6013162号発明「壁面仕上げ方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6013162号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第6013162号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6013162号の請求項1に係る特許についての出願は、平成24年12月7日(優先権主張平成24年5月21日)に特許出願され、平成28年9月30日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人エスケー化研株式会社(以下「申立人」という。)より、請求項1に対して特許異議の申立てがされ、平成29年6月28日付けで取消理由(発送日同年7月4日)が通知され、その指定期間内である同年8月31日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年10月11日に申立人から意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項1に「ウールローラーで塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。」とあるのを、「ウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。」に訂正する。
(2)訂正事項2
段落0011に「ウールローラーで塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法」とあるのを、「ウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法」に訂正する。
(3)訂正事項3
段落0023に「平坦面への塗布量は0.2~0.5kg/m2となる。」とあるのを「平坦面への塗布量は0.02~0.05kg/m2となる。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、ウールローラーによる塗布状態について限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1はウールローラーによる塗布状態について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1に関して、明細書には「【0023】・・・この範囲であれば、凹部まで塗料が付着することもなく、塗布回数は1~5回で済ませることができる。」と記載されており、訂正事項1は明細書に記載されているものと認められる。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
本件明細書には「【0023】・・・乾燥後、色調が異なる砂壁状塗料を・・・15mm以下のウールローラーで塗布をして表面を仕上げる。このとき、平坦面への塗布量は0.2~0.5kg/m2となる。・・・この範囲であれば、凹部まで塗料が付着することもなく、塗布回数は1~5回で済ませることができる。」と記載されているのに対し、実施例1~3では砂壁状塗料の塗布量に関して、それぞれ「【実施例1】【0026】・・・JR-188(アイカ工業(株)、商品名、図1の賦型ローラー、凹凸の差は略6mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m2であった。凸部に質感が同じで色味が異なる塗料を塗布することで、凸部がこすれたように仕上がり、櫛引模様(図4のローラー転写模様)にさらに重厚感を付与することができた。」、「【実施例2】【0027】・・・JR-186(アイカ工業(株)、商品名、図2の賦型ローラー、凹凸の差は略0.5mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m2であった。仕上がりは図5のようになった。」、「【実施例3】【0028】・・・JR-184(アイカ工業(株)、商品名、図3の賦型ローラー、凹凸の差は略5mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m2であった。仕上がりは図6のようになった。」と記載されており(下線は当決定で付した。)、砂壁状塗料の塗布量に関して、段落【0023】の数値範囲(0.2~0.5kg/m2)と実施例1~3の数値(0.05kg/m2)は大きく乖離している。
ここで、訂正請求書に添付された平成29年8月28日付け実験成績証明書には、上記塗布量を0.2kg/m2、0.5kg/m2、0.05kg/m2とした場合の仕上がり写真が掲載されており、上記本件実施例1~3にそれぞれ対応するJR-188、JR-186、JR-184の仕上がり写真と、本件実施例1~3の仕上がりをそれぞれ示す本件図4~6を見比べると、JR-188、JR-186、JR-184における塗布量が0.05kg/m2である場合の仕上がり写真と本件図4~6の仕上がりがほぼ同じ仕上がりであることから、本件明細書の段落【0026】~【0028】の塗布量0.05kg/m2は、本件図4~6の仕上がりとして適正な値であると解することが自然である。
一方、本件明細書の段落【0023】の塗布量0.2~0.5kg/m2は、上記段落【0026】~【0028】の塗布量0.05kg/m2から大きく乖離しており、更に上記したように塗布量0.05kg/m2は適正な値と解されること、及び小数点が一ケタずれれば同様の数値となることから総合的に判断すると、0.2~0.5kg/m2の記載は0.02~0.05kg/m2の誤記であると解するのが相当である。
よって、訂正事項3は誤記の訂正を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、誤記を訂正するものであり、特許請求の範囲に影響を与えるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、誤記を訂正するものであり、新たな技術事項を生み出すものではないから、訂正事項3は明細書に記載されているものと認められる。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項~第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3 当審の判断
1 訂正後の請求項1に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)
本件訂正発明
「【請求項1】
下地に、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、0.5mm以上で6.5mm以下に凹凸形状を付与されたローラーで賦型し、乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を,15mm以下の繊維長のウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。」
2 刊行物の記載
甲第1号証:特開2010-248304号公報
甲第2号証:特開平6-346566号公報
甲第3-1号証:大塚刷毛製造株式会社、「PAINTING TOMORROW BRUSHES,ROLLERS,TOOLS & EQUIPMENTS CATALOGUE(総合カタログ)」、第8集第1版、表紙、p.117、裏表紙
甲第3-2号証:大塚刷毛製造株式会社、「PAINTING TOMORROW マルテーニュース SPRING vol.80」、2011年4月15日、表紙、p.3
甲第3-3号証:大塚刷毛製造株式会社ホームページ/トピックス/バックナンバー2011年4月、[online]、2011年4月、インターネット<http://www.maru-t.co.jp/topics/index.php?ktype=2&m=2011-04>
甲第4号証:JISハンドブック 8 建築I材料、日本規格協会、2007年1月19日、表紙、p.753、裏表紙
(甲第3号証は、当決定において三つに分割した。)
(1)取消理由通知において引用した甲第1号証には、図面とともに次の記載があり、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている(申立書3頁2行~4頁15行)。
ア 「【0013】
本発明の砂壁状塗料組成物及び改修工法は、既存塗材表面の凹凸感やテクスチャーを損なうことがなく、色替えを行なうことができると共に、砂壁状の風合いや質感を甦らせることができるという効果がある。」
イ 「【0021】
本発明の砂壁状塗料組成物は、市販のローラー刷毛によって既存の塗材の上に塗布されるが、既存塗材の凹凸感及び風合いを損なわないように、0.5kg/m2~1.0kg/m2で塗布することが好ましく、また砂壁状塗料組成物の適正粘度としては、30~150Pa・sが好ましく、このような粘度とするには、適当量の水を加えることで調製することが出来る。」
ウ 「【0035】
試験体作成方法
タイカボード(JISA6901チヨダウーテ社製石膏ボード商品名)にジョリパット水系シーラーJS-90(アクリルエマルション系下塗り材、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2になるように塗布・乾燥し、ジョリパットJP-100(JISA6909アクリル樹脂エマルション系薄塗り仕上げ塗材E、アイカ工業株式会社製、商品名)を1.0kg/m2になるように塗布・乾燥し、仕上げのテクスチャーとして、図1に示すような、骨材ムラや隠蔽性の差異が顕著にわかるあやめランダムカット仕上げとした。このテクスチャーは凹凸部分の段差が大きく(約1~2mm程度)、凸部分に骨材が均一に載らない場合に、ムラに見える傾向にあるためである。これに、実施例1~4及び比較例1~6までの配合の砂壁状塗料を0.4kg/m2になるように汎用ウールローラースモールローラーB(大塚刷毛株式会社製、商品名)で塗布・乾燥させた。
【0036】
あやめランダムカット仕上げの作製方法
仕上げのテクスチャーとして使用したあやめランダムカット仕上げの作製方法について示す。ジョリパットJP-100を2.0kg/m2になるよう均一に配り塗りをする。直後にあやめローラーJR-30(アイカ工業株式会社製、商品名)を横方向に転がし塗布量が均一となるようムラ切りした後、いわゆるクロス掛けをして×印をランダムに描くようローラーを転がして、パターン付けを行う。直後にヘッドカットローラーJR-26(アイカ工業株式会社製、商品名)を灯油に浸してから、表面を軽く押さえる。」
エ 甲1発明
「下地に、
合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、
あやめローラーJR-30でパターン付けし、
乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を、
汎用のウールローラーで塗布する壁面仕上げ方法。」
(2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下、それぞれ「甲2発明」という。)が記載されている(申立書5頁18行~22行)。
甲2発明
「下地に、
合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、
あやめローラーJR-30で1~5mmの凹凸面となるようにパターン付けし、
トップコート用コーティングを塗付する壁面仕上げ方法。」
(3)取消理由通知において引用した甲第3-1号証~甲第3-3号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されている(申立書6頁4行)。
甲3技術
「15mm以下の繊維長のウールローラー。」
3 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第1項第3号、第29条第2項)について
(1)対比・判断
ア 本件訂正発明について
(ア)本件訂正発明と甲1発明の対比
本件訂正発明と、甲1発明を対比すると、以下の一致点で一致し、相違点1~3で相違する。
<一致点>
「下地に、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、凹凸形状を付与されたローラーで賦型し、乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を、ウールローラーで塗布する壁面仕上げ方法。」
<相違点1>
ローラーについて、本件訂正発明が「0.5mm以上で6.5mm以下に凹凸形状を付与された」ローラーを用いるのに対し、甲1発明がそのような特定がなされていない点。
<相違点2>
ウールローラーについて、本件訂正発明が「15mm以下の繊維長の」ウールローラーを用いるのに対し、甲1発明がそのような特定がなされていない点。
<相違点3>
本件訂正発明が「凹部まで塗料を付着させずに」塗布するのに対し、甲1発明がそのような特定がなされていない点。
(イ)判断
相違点3について検討するに、甲第1号証には、砂壁状塗料を凹部まで付着させずに塗布することを示唆する記載はなく、また、甲第1号証の
「【0037】評価方法
【0038】骨材の均一性・・・評価は下記とした。
○・・・テクスチャー凹凸部に関わらず充填材が均一に載っている状態
△・・・○と×の中間
×・・・テクスチャー凹凸部の凹部に大部分の充填材が埋まっている状態」
の記載から見て、甲第1号証では凹凸部両方に砂壁状塗料組成物である充填材が存在することが前提となっていると解され、本件訂正発明のように「凹部まで塗料を付着させずに」塗布するようにすることには阻害要因があるというべきである。
また、甲第2号証~甲第4号証において、相違点3に関する事項及び上記阻害要因に影響を与える事項は記載されていない。
申立人は、平成29年10月11日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)において「甲第1号証には、・・・「凹部まで塗料が入り込んでしまった状態」には至っておらず、「凹部まで塗料が付着していない状態」となっていることが窺われます。そうすると・・・本件特許発明は・・・新規性・進歩性を有さず、取り消されるべきものです。」(申立人意見書2頁19行~3頁2行)と主張するが、上記したように甲第1号証では、段落【0038】において凹凸部両方に砂壁状塗料組成物である充填材が存在することが前提となっている記載があることから、申立人の上記主張は採用できない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明は、本件訂正発明と同一ではないし、甲1発明において相違点3に係る本件訂正発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(2)まとめ
したがって、本件訂正発明は、甲1発明と同一ではなく、その特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件訂正発明は、甲1発明及び甲第2号証~甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、平成29年6月28日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700400