特許異議申立
2022-701240
遮熱断熱塗料組成物
- 審判番号
- 2022-701240
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-193969
- 登録番号
- 7086431
- 請求日
- 2022年12月13日
- 審決日
- 2023年04月27日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社清水
- 【権利者代理人】弁理士法人創成国際特許事務所
- 【異議申立人】エスケー化研 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 亀ヶ谷 明久
- 審判官 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-Y (C09D) / P1651.121-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7086431号発明「遮熱断熱塗料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7086431号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7086431号の請求項1の特許についての出願は、令和3年11月30日を出願日とするものであって、令和4年6月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月20日にその特許掲載公報が発行され、その請求項1の発明の特許に対し、令和4年12月13日に特許異議申立人であるエスケー化研株式会社(以下、「申立人」ともいう。)によって、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
特許第7086431号の請求項1の発明(以下、「本件発明1」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、補正箇所を示すための下線は、当審が削除した。
「【請求項1】
アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、ルチル型二酸化チタンと、アクリル中空ビ-ズとを含む遮熱断熱性塗料組成物であって、
塗料組成物の全量に対し、35~50質量%の範囲のアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、20~30質量%の範囲のルチル型二酸化チタンと、5~20質量%の範囲のアクリル中空ビ-ズとを含み、
前記アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンは、固形分として42~55質量%の範囲のアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物を含むことを特徴とする遮熱断熱性塗料組成物。」
第3 申立の理由及び証拠方法
1 申立人は、全請求項(請求項1)に係る発明の特許を取り消すべきであると主張し、その理由として、下記2の申立ての理由を主張し、また、下記3の証拠方法を提出している。
また、申立ての理由1、2は、主たる刊行物等として甲第1号証を引用するものである。
2 申立ての理由
(1)申立ての理由1
本件特許の請求項1の発明は、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立ての理由2
本件特許の請求項1の発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2017/099171号
甲第2号証:特開2015-123364号公報
甲第3号証:特開2017-179268号公報
甲第4号証:特開2004-940号公報
以下、甲第1号証~甲第4号証を、甲1~甲4ともいう。
第4 当審の判断
当審は、申立の理由1~2は、いずれも、採用できないと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 申立ての理由1、2について
(1)証拠の記載事項
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
ア-1
「請求の範囲
・・・
[請求項7] スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョン又はアクリル酸ブチルスチレン共重と、白色顔料と、アクリル中空ビーズとを含むことを特徴とする断熱性塗料組成物において、前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物の固形分又は前記アクリル酸ブチルスチレン共重の固形分と前記アクリル中空ビーズとの質量比(前記アクリル中空ビーズ/前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物)が、1以下であることを特徴とする断熱性塗料組成物。
[請求項8] 請求項7記載の断熱性塗料組成物において、前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョンの固形分又は前記アクリル酸ブチルスチレン共重の固形分100質量部に対し、前記アクリル中空ビーズ45~85質量部とを含むことを特徴とする断熱性塗料組成物。」
ア-2
「[0006] 本発明は、前記事情に鑑み、住宅の外壁又は内壁の表面等に形成されたときに優れた断熱性能及び遠赤外線の反射性能を得ることができかつ、付着性及び耐久性に優れる断熱性塗膜及び、該断熱性塗膜の形成に用いる断熱性塗料組成物を提供することを目的とする。」
ア-3
「[0030] 本発明の断熱性塗料組成物において、前記白色顔料はルチル型二酸化チタンであることが好ましく、ルチル型二酸化チタンは、スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物又はアクリル酸ブチルスチレン共重の固形分100質量部に対し、74~143質量部であって、0.1~10μmの範囲の平均粒子径を備えることが好ましい。・・・」
ア-4
「[0035] 前記断熱性塗膜は、例えば、固形分50質量%のスチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョン100質量部に対し、ルチル型二酸化チタン37~71.5質量部と、アクリル中空ビーズ17~32質量部とを含む断熱性塗料組成物を、住宅等の建造物の外壁又は内壁の表面等の基材に塗布して乾燥させることにより形成することができる。・・・
[0036] 前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョンは水性エマルジョンであり、例えば、BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名)を用いることができ、乾燥後には比重1.1のスチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物を形成する。また、前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョンの代わりに、同様の性質を持つアクリル酸ブチルスチレン共重、例えば、BASF社製Acronal(登録商標)296 D na(商品名)を用いてもよい。なお、BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名)は、固形分が50%、水分が50%で構成され、塗膜を形成する場合、水分の50%は蒸発する。したがって、本製品で塗膜を形成する場合、スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョンは、固形分の50%が残存することとなる。」
ア-5
「[0041] 本実施形態の断熱性塗料組成物の第1の具体例として、全量に対し、スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物水性エマルジョン(BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名))50質量%、平均粒子径1.0μmの赤外線遮蔽二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-1000(商品名))8質量%、平均粒子径0.28μmの白色顔料用二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-603(商品名))18質量%、平均粒子径10~40μmの炭化水素ガスを充満したアクリル中空ビ-ズ16質量%、可塑剤0.5質量%、造膜助剤3.0質量%、消泡剤0.4質量%、分散剤0.4質量%、防腐剤0.1質量%、凍結防止剤3.0質量%、25%アンモニア水0.16質量%、増粘剤0.3質量%を含み、残部が調整水であるものを挙げることができる。」
ア-6
「[0048]
・・・
次に、本発明の実施例を示す。
実施例
[0049]〔実施例1〕
本実施例では、まず、スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物水性エマルジョン(BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名))100質量部に、平均粒子径1.0μmの赤外線遮蔽二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-1000(商品名))16質量部、平均粒子径0.28μmの白色顔料用二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-603(商品名))36質量部、平均粒子径10~40μmの炭化水素ガスを充満したアクリル中空ビーズ32質量部、可塑剤1質量部、造膜助剤6質量部、消泡剤0.8質量部、分散剤0.8質量部、防腐剤0.2質量部、凍結防止剤6.0質量部、25%アンモニア水0.32質量部、増粘剤0.6質量部、調整水0.28~0.4質量部を添加し、混合することにより、断熱性塗料組成物を調製した。」
イ 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
イ-1
「【0029】
・・・
上述、受容性アクリル系樹脂としてはアクリル酸ブチル/スチレン重合体を使用することが望ましく、特定的にはメタクリル酸メチル10又は、50重量%、アクリル酸ブチル2又は、10重量%、(メチル)アクリル酸0.1又は、2重量%、Nアクリル酸ブチル5又は、20重量%、5又は、10重量%、2-ヒドロオキシアクリル酸メチル5又は、10重量%、ヘキシルアクリル酸エチル5又は、10重量%、スチレンモノマー10又は、30重量%に重合された樹脂が水に分散されたエマルジョンポリマーを使用する方が良い。この際、上述エマルジョンは、固形粉配合量が、45又は、55重量%であるアクリル系樹脂を使用することが望ましい。例を挙げると、Basf社のACRONAL 296D(登録商標)などがあり、これに限定されるわけではない。」
ウ 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
ウ-1
「【請求項1】
エマルション樹脂(a)と、中空フィラー(b)と、シリコーン系消泡剤(c)とを含む塗料組成物であって、
前記エマルション樹脂(a)はガラス転移点が10~50℃であり、
前記中空フィラー(b)は、該中空フィラーを構成する外殻(シェル)の熱伝導率が0.4W/m・K以下であり、且つ、平均粒子径(D50)が150μm未満であり、
前記シリコーン系消泡剤(c)は、組成中に有機変性ポリシロキサン、パーフルオロアルキル基含有シリコーン化合物、及びフッ素変性ポリシロキサンのうち少なくともいずれか1種を含むものであり、
前記塗料組成物から得られる塗膜中における前記中空フィラー(b)の体積は、50~80体積%であり、
前記シリコーン系消泡剤(c)の含有量は、前記塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.2~10質量部であり、
前記塗料組成物から得られる塗膜の50℃における抗張力が10kgf/cm2以上であり、
前記塗料組成物から得られる塗膜の熱伝導率が0.1W/m・k以下である塗料組成物。
・・・
【請求項5】
更に赤外線反射性粒体(f)を含み、
前記赤外線反射性粒体(f)の含有量は、前記塗料組成物の全固形分100質量部に対して0質量部より多く30質量部以下であり、
前記塗料組成物から得られる塗膜は、JIS K 5602に規定される日射反射率が80~92%である請求項1~4いずれかに記載の塗料組成物。」
ウ-2
「【0018】
本実施形態に係る塗料組成物は、建築物の外装面、特に屋根表面に遮熱断熱塗膜を形成するために好ましく用いられる。
・・・」
ウ-3
「【0020】
[エマルション樹脂(a)]
エマルション樹脂(a)は、アクリルエマルション等の合成樹脂エマルションである。本実施形態に係る塗料組成物において、エマルション樹脂(a)と共に架橋剤(d)が更に含まれることが好ましい。塗料組成物にエマルション樹脂(a)と共に架橋剤(d)が含まれることにより、エマルション樹脂(a)が常温架橋し、強固な塗膜を形成できる。」
ウ-4
「【0027】
エマルション樹脂(a)の原料となるモノマー混合物には、上記のケトン基又はアルデヒド基含有アクリルモノマーやカルボキシル基含有アクリルモノマーの他にも、任意のモノマー成分を含有させてもよい。任意のモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、水酸基を有する、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等、アミド基を有する、(メタ)アクリルアミド等、ポリアルキレンオキサイドユニットを有する、M90G、M230G(ともに新中村化学工業株式会社製)、ブレンマーAE-350、ブレンマーPE-90、ブレンマーPE-200、ブレンマーPE-350(いずれも日油株式会社製)等が挙げられる。これらのモノマー成分は、2種以上のモノマーを併用してもよい。」
ウ-5
「【0036】
中空フィラー(b)の材質としては特に制限されないが、例えば、架橋又は非架橋のアクリル樹脂等を原料とする有機系バルーンを用いる事が好ましい。・・・」
ウ-6
「【0051】
赤外線反射性粒体(f)は、塗料組成物中に含有されることで、形成される塗膜の日射反射率を向上させ、遮熱性を向上させる機能を有する。赤外線反射性粒体の粒子形状は、球状、粒状、多面体状、針状等のいずれであってもよい。赤外線反射性粒体(f)の赤外線反射性は、740nmの波長における反射率が70%以上であることが好ましい。
赤外線反射性粒体(f)として用いられる物質の具体例としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、アルミナ等が挙げられる。耐光性等の付加機能は特に要求されないが、形成される塗膜の低熱伝導率性と高日光反射性を両立させる観点から、PVC(顔料容積濃度)3%以下の酸化チタンを用いることが好ましい。
本実施形態において赤外線反射性粒体(f)は、塗料組成物の全固形分100質量部に対して0質量部より多く30質量部以下含有されることが好ましい。赤外線反射性粒体(f)の含有量が、塗料組成物の全固形分100質量部に対して30質量部よりも多い場合、形成される塗膜の熱伝導率が高くなり、塗膜の好ましい断熱性が得られない。」
ウ-7
「【0066】
[エマルション樹脂1~9の調製]
調製例1
ビーカーに脱イオン水45質量部とアクアロンHS-10(反応性乳化剤、第一工業製薬株式会社製)2質量部、スチレン30質量部、メチルメタクリレート21質量部、n-ブチルアクリレート20質量部、2-エチルヘキシルアクリレート27質量部、及び、アクリル酸2質量部を入れ撹拌し乳化物を得た。これとは別に、撹拌機、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、脱イオン水60質量部とアクアロンHS-10 0.4質量部を仕込み、80℃に昇温後、上記乳化物を3時間かけて滴下し、これと同時に10%過硫酸アンモニウム水溶液20質量部を滴下した。滴下終了後、2時間、80℃に保持した後、反応液を室温まで冷却し、その後10%アンモニア水を添加してpHを8.5に調整した。次いで200メッシュの金網で濾過することで、合成樹脂エマルション1を調製した。合成樹脂エマルション1における固形分はNV50%であった。」
エ 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
エ-1
「【請求項1】
建築物外装面の表面に対し、
(a)ガラス転移温度(以下「Tg」という)が-50~50℃であり、反応性官能基を有する架橋反応型合成樹脂エマルション、(b)中空粒子、及び(c)赤外線反射性粉体を含有し、その重量比率が(a)成分の固形分100重量部に対し(b)成分0.5~200重量部、(c)成分1~400重量部である水性断熱性塗料を塗付した後、
水蒸気透過性を有する水性上塗塗料を塗付することを特徴とする断熱性塗膜の形成方法。」
エ-2
「【0016】
(a)成分を構成するモノマーとしては、種々のモノマーを使用することができる。使用可能なモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等のカルボキシル基含有モノマー;
N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等のアミノ基含有モノマー;
ビニルピリジン等のピリジン系モノマー;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。」
エ-3
「【0028】
本発明の水性断熱性塗料における(b)中空粒子は、塗膜に断熱性を付与する成分である。(b)成分としては、例えば、中空セラミックビーズ、中空樹脂ビーズ等が挙げられる。中空セラミックビーズを構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、カーボン、アルミナ、シラス、黒曜石等が挙げられる。中空樹脂ビーズを構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、アクリル-アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル-スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル-メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル-アクリロニトリル-メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。(b)成分の構成成分が樹脂成分であるものは、熱伝導率が低い点で有利である。
(b)成分の形状としては、球形、楕円球形、偏平球形等が挙げられる。」
エ-4
「【0032】
本発明の水性断熱性塗料における(c)赤外線反射性粉体は、太陽光による塗膜の蓄熱を抑制する機能を有する成分である。(c)成分としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ等が挙げられる(但し、(b)成分を除く)。これらは1種または2種以上で使用することができる。このうち、本発明では酸化チタン、酸化亜鉛から選ばれる1種以上が好適である。」
エ-5
「【0035】
断熱性塗料における各成分の重量比率は、(a)成分の固形分100重量部に対し、(b)成分を0.5~200重量部(好ましくは1~100重量部)、(c)成分を1~400重量部(好ましくは2~200重量部)とする。断熱性塗料において各成分をこのような比率で混合することにより、断熱性、赤外線反射性に優れるとともに、上塗塗料との密着性が高く、十分な塗膜強度を有する塗膜を形成することが可能となる。」
エ-6
「【0062】
(合成例1)
反応容器に、脱イオン水70重量部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2重量部を仕込み、攪拌及び窒素置換を行いながら70℃まで昇温し、過硫酸アンモニウム0.4重量部を添加した。これに、別途用意したコア部形成用乳化モノマー(脱イオン水20重量部にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部を溶解させた水溶液に、スチレン21.05重量部、n-ブチルアクリレート54.14重量部、グリシジルメタクリレート2.50重量部を乳化分散させたもの)を3時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後2時間熟成を行った後、シェル部形成用乳化モノマー(脱イオン水10重量部にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量部を溶解させた水溶液に、スチレン5.24重量部、n-ブチルアクリレート13.54重量部、メタクリル酸1.51重量部、アクリルアミド2.00重量部を乳化分散させたもの)を2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後2時間熟成を行った。次いで、アンモニア水を添加してpHを7.5に調整した後、200メッシュの金網にてろ過することにより多層構造エマルション1を得た。」
(2)証拠に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1には、その実施例1の記載(上記(1)アのア-6を参照。)に基き、以下の発明(以下、「甲1発明」ともいう。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物水性エマルジョン(BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名))100質量部に、平均粒子径1.0μmの赤外線遮蔽二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-1000(商品名))16質量部、平均粒子径0.28μmの白色顔料用二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-603(商品名))36質量部、平均粒子径10~40μmの炭化水素ガスを充満したアクリル中空ビーズ32質量部、可塑剤1質量部、造膜助剤6質量部、消泡剤0.8質量部、分散剤0.8質量部、防腐剤0.2質量部、凍結防止剤6.0質量部、25%アンモニア水0.32質量部、増粘剤0.6質量部、調整水0.28~0.4質量部を添加し、混合することにより調製した、
断熱性塗料組成物。」
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1の「ルチル型二酸化チタン」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件特許明細書」ともいう。)の段落【0020】には「前記ルチル型二酸化チタンとしては、赤外線遮蔽二酸化チタン又は白色顔料用二酸化チタンを挙げることができ、両者を併用してもよい。赤外線遮蔽二酸化チタンとしては、例えば、0.1~10μmの範囲、好ましくは1.0μmの平均粒子径を備え、比重4.2のものを挙げることができ、このような赤外線遮蔽二酸化チタンとして、例えば、堺化学工業株式会社製アナタースR-38L(商品名)、テイカ株式会社製JR-1000(商品名)、石原産業株式会社製タイペークPFR404(商品名)等を用いることができる。また、白色顔料用二酸化チタンとしては、例えば0.28μmの平均粒子径を備え、比重4.0のものを挙げることができ、このような白色顔料用二酸化チタンとして、例えば、石原産業株式会社製タイペークR930(商品名)、堺化学工業株式会社製ルチルSTR-100n(商品名)、テイカ株式会社製JR-603(商品名)等を用いることができる。」と記載されている(下線は、当審による。)。
そうすると、甲1発明の「平均粒子径1.0μmの赤外線遮蔽二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-1000(商品名))16質量部」、及び、「平均粒子径0.28μmの白色顔料用二酸化チタン(テイカ株式会社製JR-603(商品名))36質量部」は、本件発明1の「ルチル型二酸化チタン」に相当する。
また、その含有量は、合計で52質量部であり、甲1発明の「断熱性塗料組成物」の総量は、200~200.12質量部と計算されるから、その含有割合は、概ね26質量%(=52/(200~200.12)×100)である。したがって、甲1発明は、本件発明1の「20~30質量%の範囲のルチル型二酸化チタン」を充足する。
甲1発明の「平均粒子径10~40μmの炭化水素ガスを充満したアクリル中空ビーズ32質量部」は、本件発明1の「アクリル中空ビ-ズ」に相当する。
また、その含有割合は、概ね16質量%(=32/(200~200.12)×100)であるから、甲1発明は、本件発明1の「5~20質量%の範囲のアクリル中空ビ-ズ」を充足する。
甲1発明の「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物水性エマルジョン(BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名))100質量部」は、本件発明1の「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョン」と、「共重合物の水性エマルジョン」である点で対応する。
また、その含有割合は、概ね50質量%(=100/(200~200.12)×100)であるから、甲1発明は、本件発明1の「35~50質量%の範囲の共重合物の水性エマルジョン」を充足する。
また、「BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名)」の固形分は、50.0質量%である(本件特許明細書の段落【0039】を参照。)から、甲1発明は、本件発明1の「共重合物の水性エマルジョンは、固形分として42~55質量%の範囲の共重合物を含む」を充足する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「共重合物の水性エマルジョンと、ルチル型二酸化チタンと、アクリル中空ビ-ズとを含む遮熱断熱性塗料組成物であって、
塗料組成物の全量に対し、35~50質量%の範囲の共重合物の水性エマルジョンと、20~30質量%の範囲のルチル型二酸化チタンと、5~20質量%の範囲のアクリル中空ビ-ズとを含み、
前記共重合物の水性エマルジョンは、固形分として42~55質量%の範囲の共重合物を含む遮熱断熱性塗料組成物。」
<相違点1>
「共重合物」について、本件発明1は、「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物」(3種類のモノマーの共重合物)であることが特定されているのに対して、甲1発明は、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」(2種類のモノマーの共重合物)である点
イ 相違点1について
甲1には、甲1発明の「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」について、「前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョンは水性エマルジョンであり、例えば、BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名)を用いることができ、乾燥後には比重1.1のスチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物を形成する。また、前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物エマルジョンの代わりに、同様の性質を持つアクリル酸ブチルスチレン共重、例えば、BASF社製Acronal(登録商標)296 D na(商品名)を用いてもよい。」(上記(1)アのア-4を参照。)と記載されている。
そうすると、甲1には、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」の水性エマルジョンの市販品の具体例として「BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap」が例示され、また、「アクリル酸ブチルスチレン共重」(「アクリル酸ブチルスチレン共重合物」の誤記と認める。以下、同様。)の水性エマルジョンの市販品の具体例として「BASF社製Acronal(登録商標)296 D na(商品名)」が例示されているが、「ブチル」は、「アルキル」(例えば、メチル、エチルなど)の具体例の1つであるから、結局、甲1には、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」の水性エマルジョンの市販品の具体例として「BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap」と「BASF社製Acronal(登録商標)296 D na(商品名)」が例示されているに留まるのであって、「共重合物」に関して、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」に含まれない共重合物(例えば、スチレンとアクリル酸アルキルエステルの他に第3のモノマーが共重合された3種類のモノマーの共重合物)については記載も示唆もない。
また、一般に化学構造が異なる物質はその性質も異なっているから、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」とは異なる化学構造を備えた共重合物、例えば、「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物」が、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」と「同様の性質を持つ」といえるか否かは不明であるといわざるを得ない。
そうすると、当業者といえども、甲1発明において、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」を「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物」に代えることを容易になし得たとは認められない。
また、後記エでも説明するとおり、甲2~4には、甲1発明において、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」を「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物」に代えることを動機づけるような記載や示唆はない。
したがって、当業者といえども、甲1発明において、「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物」を「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物」に代えることを容易になし得たとは認められない。
ウ 効果について
本件発明1は、前記相違点1に係る構成を備えることにより、共重合物の配合量を少なくしても、基材に対する十分な付着性を有するとともに、優れた遮熱断熱性を備える塗膜を形成することができる遮熱断熱性塗料組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、また、その効果は、実施例1及び比較例1の記載によって具体的に裏付けられているものであって、この効果は、甲1~4の記載に触れた当業者といえども予測することができないものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、概ね、下記(ア)、(イ)の主張をしている。
(ア) 甲1には、「アクリル酸ブチルスチレン共重」の水性エマルジョンの市販品の具体例として「BASF社製Acronal(登録商標)296 D na(商品名)」が例示されているが、当該市販品は、甲2を参照すると、「アクリル酸ブチル、スチレンと共に、メタクリル酸エステルであるメタクリル酸メチルが共重合された樹脂エマルジョン」であり、したがって、甲1には、「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物」が記載されているも同然であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明である(特許異議申立書23頁1~17行)。
(イ) 甲3、4によれば、「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、ルチル型二酸化チタンと、アクリル中空ビ-ズとを含む遮熱断熱性塗料組成物」は周知であるから、甲1発明の「スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物水性エマルジョン」を「アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョン」に代えることを容易になし得る(特許異議申立書23頁18~26行)。
しかしながら、申立人が指摘した甲2の記載(上記(1)イのイ-1を参照。)は、「受容性アクリル系樹脂」として、「アクリル酸ブチル/スチレン重合体を使用すること」が望ましいことや、「特定的にはメタクリル酸メチル10又は、50重量%、アクリル酸ブチル2又は、10重量%、(メチル)アクリル酸0.1又は、2重量%、Nアクリル酸ブチル5又は、20重量%、5又は、10重量%、2-ヒドロオキシアクリル酸メチル5又は、10重量%、ヘキシルアクリル酸エチル5又は、10重量%、スチレンモノマー10又は、30重量%に重合された樹脂が水に分散されたエマルジョンポリマーを使用する方が良い」ことや、「上述エマルジョンは、固形粉配合量が、45又は、55重量%であるアクリル系樹脂を使用することが望ましい」ことを説明した上で、「例を挙げると、Basf社のACRONAL 296D(登録商標)など」があると記載しているのであるから、「Basf社のACRONAL 296D(登録商標)」が、「アクリル酸ブチル/スチレン重合体を使用すること」と、「特定的にはメタクリル酸メチル10又は、50重量%・・・樹脂が水に分散されたエマルジョンポリマー」と、「上述エマルジョンは、固形粉配合量が、45又は、55重量%であるアクリル系樹脂」のいずれについての例なのかは不明であって、「アクリル酸ブチル、スチレンと共に、メタクリル酸エステルであるメタクリル酸メチルが共重合された樹脂エマルジョン」であるとはいえない。
したがって、主張(ア)は採用できない。
また、甲3には、「任意のモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレート」(上記(1)ウのウ-4を参照。)等を含みうることが記載され、甲4には、「種々のモノマーを使用することができる。使用可能なモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート」(上記(1)エのエ-2を参照。)等と記載されているが、甲1のスチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物水性エマルジョン(BASF社製Acronal(登録商標)295 DN ap(商品名))に代えて、甲3又は甲4の共重合体を用いる動機があるということはできない。
したがって、主張(イ)も採用できない。
オ 申立ての理由1、2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1~4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
したがって、申立ての理由1、2によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1の特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701240