審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2017-700274

編物のように見え、かつ機能する織物、その織物を含む物品、及びその織物の製造方法

審判番号
2017-700274
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-554247
登録番号
特許第6033087号(P6033087)
請求日
2017年03月15日
審決日
2018年03月27日
公報発行日
2018年06月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
  • 【権利者代理人】竹沢 荘一
  • 【権利者代理人】竹ノ内 勝
  • 【権利者代理人】横堀 芳徳
  • 【異議申立人】柏木 里実
審判長/審判官
  • 審判長 渡邊 豊英
  • 審判官 谿花 正由輝
  • 審判官 井上 茂夫
分類
P1651.55 -YAA(D03D) / P1651.121-YAA(D03D) / P1651.4 -YAA(D03D) / P1651.536-YAA(D03D) / P1651.537-YAA(D03D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第39条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6033087号発明「編物のように見え、かつ機能する織物、その織物を含む物品、及びその織物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6033087号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-34〕、〔35-40〕について訂正することを認める。 特許第6033087号の請求項1~40に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 特許第6033087号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~40に係る特許についての出願は、平成23年2月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成22年2月26日 米国、平成22年5月12日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年11月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立て期間内である平成29年3月15日に特許異議申立人柏木里実(以下、「申立人」という。)より請求項1~40に対して特許異議の申立てがされ、同年7月14日付けで取消理由が通知され、同年10月17日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、また訂正自体を「本件訂正」という。)がされ、同年11月13日付けで申立人から意見書が提出されたものである。 第2.訂正の適否 1.請求項1~34に係る訂正 (1)訂正の内容 ア.訂正事項1 (ア)請求項1について、 「共に織られてパターンを形成している」とあるのを、 「織機により共に織られたパターンを形成している」に訂正する。 (イ)請求項1について、 「その収縮率」とあるのを、 「前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸(105)の収縮率」に訂正する。 (ウ)請求項1について、 「前記硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、」とあるのを、 「前記硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有しており、」に訂正する。 (エ)請求項1について、 「前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより形成され、外側から視認される連結部(108a)を定めており」とあるのを、 「前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより、前記織物(101)の前記表側面(102)に形成された連結部(108a)を定めており」に訂正する。 イ.訂正事項2 請求項20を削除する。また、請求項20の記載を引用していた請求項21~32、34について、請求項20を引用しないものに訂正する。 ウ.訂正事項3 (ア)請求項33について、 「共に織られてパターンを形成している」とあるのを、 「織機により共に織られたパターンを形成している」に訂正する。 (イ)請求項33について、 「その収縮率」とあるのを、 「前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸(105)の収縮率」に訂正する。 (ウ)請求項33について、 「前記硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、」とあるのを、 「前記硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有しており、」に訂正する。 (エ)請求項33について、 「前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより形成され、外側から視認される連結部(108a)を定めており」とあるのを、 「前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより、前記織物(101)の前記表側面(102)に形成された連結部(108a)を定めており」に訂正する。 エ.訂正事項4 (ア)段落0007について、 「複数の経糸と複数の緯糸でパターンを形成した物品」とあるのを、 「複数の経糸と複数の緯糸で、織機により共に折られたパターンを形成した物品」に訂正する。 (イ)段落0007について、 「前記弾性的な糸の収縮率」とあるのを、 「織機で製造した前記織物を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸の収縮率」に訂正する。 (ウ)段落0007について、 「連結部」とあるのを、 「前記織物の前記表側面に形成された連結部」に訂正する。 オ.訂正事項5 (ア)段落0009について、 「経糸と緯糸とを有する織物」とあるのを、 「織機により共に織られたパターンを形成している経糸と緯糸とを有する織物」に訂正する。 (イ)段落0009について、 「前記第2の緯糸の収縮率」とあるのを、 「織機で製造した前記織物を前記織機から取り外したときの、前記第2の緯糸の収縮率」に訂正する。 カ.訂正事項6 (ア)段落0018の冒頭に、 「本発明の物品の前記硬い緯糸は、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有している。」を追加する。 (イ)段落0018について、 「さらに本発明の別の実施形態によると」とあるのを、 「好ましくは」に訂正する。 キ.訂正事項7 (ア)段落0020について、 「所定のパターン」とあるのを、 「織機により共に織られた所定のパターン」に訂正する。 (イ)段落0020について、 「連結部」とあるのを、 「前記織物の前記表側面に形成された連結部」に訂正する。 (ウ)段落0020について、 「前記弾性的な糸の収縮率」とあるのを、 「織機で製造した前記織物を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸の収縮率」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.訂正事項1について (ア)上記(1)ア.(ア)の訂正事項について 当該訂正事項は、「織機により」という事項により弾性的な糸及び硬い糸の収縮率の差を顕現させる手段を具体的に特定し、「収縮率」を測定する対象を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)の段落0022、0056、0057等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (イ)上記(1)ア.(イ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの」という事項により弾性的な糸及び硬い糸の収縮率の差を顕現させる時期を具体的に特定し、「収縮率」を測定する対象を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0022、0056、0057等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)上記(1)ア.(ウ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「硬い糸」の内容を具体的に特定し更に限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の請求項20の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (エ)上記(1)ア.(エ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「連結部(108a)」の配置を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0028、図1、2、15等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 イ.訂正事項2について 訂正事項2は、請求項20を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、請求項20の記載を引用していた請求項21~32、34について、請求項20を引用しないものとする訂正事項は、請求項20の削除に伴い、請求項21~32、34が引用する請求項の中から請求項20を削除して整合を図るための訂正事項であるから特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ.訂正事項3について (ア)上記(1)ウ.(ア)の訂正事項について 当該訂正事項は、織物における複数の経糸と複数の緯糸の状態を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0022、0056、0057等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (イ)上記(1)ウ.(イ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「収縮率」を測定する対象を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0022、0056、0057等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)上記(1)ウ.(ウ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「硬い糸」の内容を具体的に特定し更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の請求項20の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (エ)上記(1)ウ.(エ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「連結部(108a)」の配置を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0028、図1、2、15等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 エ.訂正事項4~7について 訂正事項4~7は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 オ.一群の請求項について 訂正前の請求項1~34は、請求項2~32が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用し、請求項34が訂正の請求の対象である請求項2~33の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項1~3に係る訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。また、本件訂正は、訂正事項4~7による明細書の訂正に係る請求項1~34の全てについて行われたものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 2.請求項35~40に係る訂正 (1)訂正の内容 ア.訂正事項8 (ア)請求項35について、 「織物(101)を製造するための方法」とあるのを、 「織物(101)を、織機により製造するための方法」に訂正する。 (イ)請求項35について、 「弾性を有していない硬い緯糸(106)」とあるのを、 「弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有する硬い緯糸(106)」に訂正する。 (ウ)請求項35について 「前記硬い緯糸(106)の収縮率より大きな収縮率を有し、かつ弾性を有する弾性的な緯糸(105)を提供するステップと、」とあるのを、 「弾性を有する弾性的な緯糸(105)を提供するステップであって、前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの収縮率が、前記か体緯糸(106)の収縮率より大きい弾性的な緯糸(105)を提供するステップと、」に訂正する。 (エ)請求項35について、 「前記表側面(102)において外側から視認される一連の連結部(108a)」とあるのを、 「前記織物(101)の前記表側面(102)において形成された一連の連結部(108a)」に訂正する。 イ.訂正事項9 (ア)段落0021について、 「織物の製造方法」とあるのを、 「織機による織物の製造方法」に訂正する。 (イ)段落0021について、 「硬い緯糸を提供する」とあるのを、 「弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有する硬い緯糸を提供する」に訂正する。 (ウ)段落0021について、 「前記硬い緯糸の収縮率より大きな収縮率を有する弾性的な緯糸を提供する」とあるのを、 「前記織機で製造した前記織物を前記織機から取り外したときの収縮率が、前記硬い緯糸の収縮率より大きい弾性的な緯糸を提供する」に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.訂正事項8について (ア)上記(1)ア.(ア)の訂正事項について 当該訂正事項は、「織機により」という事項により弾性的な糸及び硬い糸の収縮率の差を顕現させる手段を具体的に特定し、「収縮率」を測定する対象を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0022、0056、0057等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の記載に適合する。 (イ)上記(1)ア.(イ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「硬い糸」の内容を具体的に特定し更に限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の請求項20の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)上記(1)ア.(ウ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの」という事項により弾性的な糸及び硬い糸の収縮率の差を顕現させる時期を具体的に特定し、「収縮率」を測定する対象を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0022、0056、0057等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (エ)上記(1)ア.(エ)の訂正事項について 当該訂正事項は、「連結部(108a)」の配置を明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 また、当該訂正事項は、願書に添付した明細書等の段落0028、図1、2、15等の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 イ.訂正事項9について 訂正事項9は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ.一群の請求項について 訂正前の請求項35~40は、請求項36~40が、訂正の請求の対象である請求項35の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項8に係る訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。また、本件訂正は、訂正事項9による明細書の訂正に係る請求項35~40の全てについて行われたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 3.申立人の意見について 平成29年11月13日付け意見書の第2 1.(1頁)において申立人は、本件発明1、33の「外側から視認される連結部」を「前記織物(101)の前記表側面(102)に形成された連結部(108a)」とする訂正及び本件発明35の「外側から視認される一連の連結部(108a)」を「前記織物(101)の前記表側面(102)に形成された一連の連結部(108a)」とする訂正について、請求前は「外側から視認される」と限定されていたが、訂正後は外側から視認されないものも技術的範囲に含まれるようになったから、実質上特許請求の範囲を拡張するものである旨を主張する。 しかし、請求項1、33、35の当該訂正箇所における「前記表側面(102)」とは、「使用時に外側から視認される表側面(102)」(当該訂正後の請求項1、33、35のそれぞれの冒頭を参照)を指すものであるから、請求項1、33の当該訂正箇所における「前記表側面(102)に形成された連結部(108a)」及び請求項35の当該訂正箇所における「前記表側面(102)に形成された一連の連結部(108a)」も、外側から視認されるものであることは明らかである。 よって、申立人の主張は当を得たものではなく、採用することができない。 4.小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-34〕、〔35-40〕について訂正を認める。 第3.特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正が認められることにより、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~40に係る発明(以下、「本件発明1~40」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~40にそれぞれ記載されたとおりのものと認められ、そのうち、請求項1、33、35の記載は、以下のとおりである。なお、分説は申立書を参考にして当審で付した。 「【請求項1】 1A 使用時に外側から視認される表側面(102)と、使用時にユーザの身体に面する裏側面(103)とを有し、織機により共に織られたパターンを形成している複数の経糸(104)と複数の緯糸(105、106)とを有する織物(101)を備える衣料品において、 1B 前記緯糸は、第1の緯糸である硬い糸(106)と、第2の緯糸である弾性的な糸(105)とを含み、これらは、少なくとも1本の前記硬い糸(106)と、少なくとも1本の前記弾性的な糸(105)とが交互に配置されることによって、所定の配列を形成しており、前記弾性的な糸(105)は弾性を有しており、かつ前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸(105)の収縮率は、前記硬い糸(106)の収縮率より大きく、 1C 前記硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有しており、前記経糸(104)に対して交互に配置された前記裏側面(103)における下部(107)と、前記表側面(102)における上部(108)とを形成しており、前記下部(107)は、前記裏側面(103)から視て、前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより形成され、ループ部(107a)を定めており、前記上部(108)は、前記表側面(102)から視て、前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより、前記織物(101)の前記表側面(102)に形成された連結部(108a)を定めており、 1D 前記硬い糸(106)の各々が、前記ループ部(107a)によって跨ぐ前記経糸(104)の数は、6~24(両端値を含む)の範囲内であり、 1E 前記弾性的な糸(105)は、前記硬い糸(106)による織組織より緊密な織組織で、前記経糸(104)に対して、交互に配置された前記裏側面(103)の下部(109)と、前記表側面(102)の上部(110)とを形成しており、 1F 前記硬い糸(106)の下部(107)により定められる前記ループ部(107a)によって跨がせる前記経糸(104)の数は、前記硬い糸(106)の上部(108)により定められる前記連結部(108a)によって跨がせる前記経糸(104)の数の少なくとも6倍であり、 1G 前記弾性的な糸(105)の数と、前記硬い糸(106)の数との比率は、2:1~1:5(両端値を含む)であり、 1H 隣接する前記硬い糸(106)の、前記裏側面(103)における前記ループ部(107a)及び前記表側面(102)における前記連結部(108a)は、各々前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向に延びるパターンを形成しており、もって前記織物(101)は、緯糸方向のみならず、前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向における弾性を有しており、かつ前記斜め方向にも延ばすことができ、 1I 3回の家庭洗浄の後における経糸密度は25~80本/cmであることを特徴とする 1J 衣料品。」 「【請求項33】 33A 使用時に外側から視認される表側面(102)と、使用時にユーザの身体に面する裏側面(103)とを有し、織機により共に織られたパターンを形成している複数の経糸(104)と複数の緯糸(105、106)とを有する織物(101)であって、 33B 前記緯糸は、第1の緯糸である硬い糸(106)と、第2の緯糸である弾性的な糸(105)とを含み、これらは、少なくとも1本の前記硬い糸(106)と、少なくとも1本の前記弾性的な糸(105)とが交互に配置されることによって、所定の配列を形成しており、前記弾性的な糸(105)は弾性を有しており、かつ前記織機で作成した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸(105)の収縮率は、前記硬い糸(106)の収縮率より大きく、 33C 前記硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有しており、前記経糸(104)に対して交互に配置された前記裏側面(103)における下部(107)と、前記表側面(102)における上部(108)とを形成しており、前記下部(107)は、前記裏側面(103)から視て、前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより形成され、ループ部(107a)を定めており、前記上部(108)は、前記表側面(102)から視て、前記硬い糸(106)が、前記経糸(104)上を交差することにより、前記織物(101)の前記表側面(102)に形成された連結部(108a)を定めており、 33D 前記硬い糸(106)の各々が、前記ループ部(107a)によって跨ぐ前記経糸(104)の数は、6~24(両端値を含む)の範囲内であり、 33E 前記弾性的な糸(105)は、前記硬い糸(106)による織組織より緊密な織組織で、前記経糸(104)に対して、交互に配置された前記裏側面(103)の下部(109)と、前記表側面(102)の上部(110)とを形成しており、 33F 前記硬い糸(106)の下部(107)により定められる前記ループ部(107a)によって跨がせる前記経糸(104)の数は、前記硬い糸(106)の上部(108)により定められる前記連結部(108a)によって跨がせる前記経糸(104)の数の少なくとも6倍であり、 33G 前記弾性的な糸(105)の数と、前記硬い糸(106)の数との比率は、2:1~1:5(両端値を含む)であり、 33H 隣接する前記硬い糸(106)の、前記裏側面(103)における前記ループ部(107a)及び前記表側面(102)における前記連結部(108a)は、各々前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向に延びるパターンを形成しており、もって前記織物(101)は、緯糸方向のみならず、前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向における弾性を有しており、かつ前記斜め方向にも延ばすことができ、 33I 3回の家庭洗浄の後における経糸密度は25~80本/cmであることを特徴とする 33J 織物。」 「【請求項35】 35A 使用時に外側から視認される表側面(102)と、使用時にユーザの身体に面する裏側面(103)とを有する織物(101)を、織機により製造するための方法であって、 35B 経糸(104)を提供するステップと、 35C 弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有する硬い緯糸(106)を提供するステップと、 35D 弾性を有する緯糸(105)を提供するステップであって、前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの収縮率が、前記硬い緯糸(106)の収縮率より大きい弾性的な緯糸(105)を提供するステップと、 35E 少なくとも1本の前記硬い緯糸(106)が、少なくとも1本の前記弾性的な緯糸(105)と交互に配置されている織組織を選択するステップであって、 35F 前記硬い緯糸(106)を、前記経糸(104)と交差させ、前記表側面(102)及び裏側面(103)を交互に通るように延ばし、かつ各交差点間において、所定数の前記経糸(104)を跨がせることにより、前記裏側面(103)における一連の硬い下部(107)と、前記織物(101)の前記表側面(102)において形成された一連の連結部(108a)を定める硬い上部(108)とを形成し、 35G 前記硬い緯糸(106)の各々が、前記各下部(107)によって跨ぐ前記経糸(104)の数を、6~24(両端値を含む)の範囲内とし、 35H かつ前記硬い緯糸(106)の前記下部(107)によって跨がせる前記経糸(104)の数が、前記硬い緯糸(106)の前記上部(108)によって跨がせる前記経糸(104)の数の少なくとも6倍となるようにし、 35I 前記弾性的な糸(105)の数と、前記硬い糸(106)の数との比率が、2:1~1:5(両端値を含む)となるようにし、 35J 前記弾性的な糸(105)を、前記経糸(104)と交差させ、前記表側面(102)及び裏側面(103)を交互に通るように延ばし、かつ各交差点間において、所定数の前記経糸(104)を跨がせることにより、前記裏側面(103)における一連の弾性的な下部(109)と、前記表側面(102)における一連の弾性的な上部(110)とを形成することにより、 35K 隣接する前記硬い緯糸(106)の前記下部(107)及び前記連結部(108a)が、各々前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向に延びるパターンを形成するステップと、 35L 前記選択された織組織に従って前記織物(101)を織るステップと、 35M 得られた織物(101)を収縮させるステップであって、前記弾性的な緯糸(105)を、前記硬い緯糸(106)より大きく収縮させ、これにより、前記硬い下部(107)にループ(107a)を形成させるステップとを備え、 35N もって隣接する前記硬い緯糸(106)の、前記裏側面(103)における前記ループ部(107a)及び前記表側面(102)における前記連結部(108a)により、各々前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向に延びるパターンを有し、緯糸方向のみならず、前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向における弾性を有しており、かつ前記斜め方向にも延ばすことができ、 35O さらに、3回の家庭洗浄の後における経糸密度が25~80本/cmである織物を製造することを特徴とする 35P 方法。」 2.取消理由の概要 訂正前の請求項1~40に係る特許に対して平成29年7月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 以下、甲第1号証等を「甲1」等と、甲1に記載された発明等を「甲1発明」等、甲1に記載された事項等を「甲1事項」等という。 (1)取消理由1 「硬い糸」、「弾性的な糸」、「収縮率」、「外部から視認される連結部」、「外部から視認される一連の連結部」との記載は、用語の意味が明確でないため、本件特許は明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が特許法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)取消理由2 本件発明1~40は、甲1~8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲1:米国特許第2597580号明細書 甲2:特開平11-181649号公報 甲3:特開昭61-282453号公報 甲4:特開2001-295152号公報 甲5:国際公開第2009/094311号 甲6:西ドイツ国特許出願公開第3247651号明細書 甲7:本宮達也ら編「繊維の百科事典」、606頁、660頁、725頁、731-734頁、797ページ、平成14年3月25日、丸善株式会社 甲8:繊維学会編「繊維便覧加工編」、379-380頁、平成3年7月10日、丸善株式会社 3.判断 (1)取消理由1について ア.「硬い糸」、「弾性的な糸」、「収縮率」について (ア)本件発明1、33、35は、その特許請求の範囲の記載のとおり、弾性的な糸(105)が弾性を有しており、硬い糸(106)は、弾性を有しておらず、「収縮率」とは織機で製造した織物を織機から取り外したときの弾性的な糸の収縮率のことであり、弾性的な糸(105)の収縮率は硬い糸(106)の収縮率より大きいものである。 そうすると、請求項1、33、35における「硬い糸」、「弾性的な糸」、「収縮率」に関する記載は、織機から取り外したときの収縮率が、弾性的な糸のものの方が硬い糸のものより大きいことを意味することが明らかである。 (イ)申立人の主張について 特許異議申立書(以下「申立書」という。)の12頁20~28行及び平成29年11月13日付け意見書の3頁1~13行において申立人は、本件特許の明細書の段落0062の表1について、弾性率及び収縮率がどの程度かは記載されておらず、硬い緯糸にポリエステル糸を使い弾性的な緯糸にナイロン糸を使用しているが、ポリエステル糸とナイロン糸はどちらも近似した物性であり、なぜポリエステル糸が硬い糸でナイロン糸が弾性的な糸なのか、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を主張する。 しかし、本件発明1、33、35は、上記(ア)のとおり、織物において、織機から取り外したときの収縮率が、弾性的な糸のものの方が硬い糸のものより大きいものである。 本件特許の明細書の段落0062の表1は、例えば実施例7については、織物の弾性的な緯糸に「70%デニール100%ナイロン糸」、硬い緯糸に「Ne50/1コーマ糸綿100%糸」を用いるものであり、織機から取り外したときの収縮率が、弾性的な緯糸である「70%デニール100%ナイロン糸」の方が硬い緯糸である「Ne50/1コーマ糸綿100%糸」より大きいものである。 同様に実施例9についても、織物の弾性的な緯糸に「デニールポリエステル+40デニールライクラ(3.5ドラフト比)交絡糸」、硬い緯糸に「150デニール100%マイクロポリエステル糸」を用いるものであり、織機から取り外したときの収縮率が、弾性的な緯糸である「デニールポリエステル+40デニールライクラ(3.5ドラフト比)交絡糸」の方が、硬い緯糸である「150デニール100%マイクロポリエステル糸」より大きいものである。 よって、申立書の主張は当を得たものではなく、採用することができない。 また、平成29年11月13日付け意見書の3頁14~30行において申立人は、請求項1、33の「前記織機で製造した前記織物(101)を前記織機から取り外したときの、前記弾性的な糸(105)の収縮率は、前記硬い糸(106)の収縮率より大きく」は製法的な記載であり、最終製品からは判断できない旨を主張する。そしてその具体的な理由として、織機に掛けた上体の緯糸の長さと織機から取り外したときの緯糸の長さを測らなければ収縮率は判断できないことや、加熱により収縮したのか織機から取り外したときに収縮したのか区別することができない旨を主張する。 しかし、請求項1、33における当該記載は、織機で製造された織物において、織機から取り外された後は弾性的な糸は硬い糸より大きく縮み、これにより下部がループ部となった状態であることを示しており(段落0057参照)、またこのことが織機から取り外された後であれば、加熱の有無によらないことが明らかである。 よって、申立書の主張は当を得たものではなく、採用することができない。 イ.「外部から視認される連結部」及び「外部から視認される一連の連結部」について 本件訂正により、当該記載は削除されたから、この点についての記載不備は理由がないものとなった。 ウ.小括 上記ア.及びイ.のとおりであるから、本件特許の明細書及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることができず、その特許は同法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 (2)取消理由2について ア.甲1発明 甲1の記載(特に第2欄第40~51行、第3欄第7~16行を参照)から、甲1には、以下の「甲1発明-1」及び「甲1発明-2」が記載されていると認められる。 《甲1発明-1》 「織機で織られる織物であって、 経糸はノンストレッチ性経糸10からなり、 緯糸はストレッチ性緯糸11及びノンストレッチ性緯糸15からなり、 ストレッチ性緯糸11は延伸させた状態で織られ、 ストレッチ性緯糸11が配置され、 ノンストレッチ性緯糸15が、前のストレッチ性緯糸11から間隔を置いて配置され、 リードによって筬打ちされたノンストレッチ性緯糸15は前のストレッチ性緯糸11の直上の位置に配置され、 織り込まれたノンストレッチ性緯糸15は間隔を置いたノンストレッチ性経糸10によって固定された長いスパン16を有し、 ストレッチ性緯糸11にかけられた張力が緩められ収縮して、ノンストレッチ性緯糸15のスパン16が、ノンストレッチ性経糸10間にループを形成する、織物。」 《甲1発明-2》 「織機で織物を織る方法であって、 経糸はノンストレッチ性経糸10からなり、 緯糸はストレッチ性緯糸11及びノンストレッチ性緯糸15からなり、 ストレッチ性緯糸11を延伸させた状態で織られるものであり、 ストレッチ性緯糸11が配置され、筬打ちされた後、ノンストレッチ性緯糸15が、前のストレッチ性緯糸11から間隔を置いて配置され、 ノンストレッチ性緯糸15がリードによって筬打ちされると、ノンストレッチ性緯糸15は前のストレッチ性緯糸11の直上の位置に配置され、 織り込まれたノンストレッチ性緯糸15は間隔を置いたノンストレッチ性経糸10によって固定された長いスパン16を有し、 織り作業後にストレッチ性緯糸11にかけられた張力が緩められ収縮すると、その収縮によって、ノンストレッチ性緯糸15のスパン16が、ノンストレッチ性経糸10間にループを形成する方法。」 イ.本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明-1とを対比すると、両者は少なくとも下記の《相違点1》で相違する。 《相違点1》 本件発明1の衣料品及び織物は「少なくとも1本の前記硬い糸(106)と、少なくとも1本の前記弾性的な糸(105)とが交互に配置されることによって、所定の配列を形成」(分説1B)しているものであるのに対し、甲1発明-1の織物は、ストレッチ性緯糸15が緯糸11の直上の位置に配置されるものである点。 (イ)判断 甲1には、織物において「少なくとも1本のノンストレッチ性緯糸15と少なくとも1本のストレッチ性緯糸11とが交互に配置される」ことは、記載されていない。また、甲2~8にも、このように配置させることは、記載されていない。 なお、申立人は、本件発明1の上記相違点1に係る構成は甲1に記載されていると主張している(申立書の第22頁第19、20行、第28頁第7、8行(空白行は除いて数える。))。 そこで甲1を参照すると、甲1の第2欄第40~51行には、下記のように記載されている。 「After each stretchable filler yam 11 is laid in and beaten up, one or more non-stretchable filler yarns 15 such as cotton, are woven into the fabric. In the embodiment shown the warp yams are heddled so that the filler 15 passes under every tenth warp and over the intermediate warps. The warp which passes over the filter 15 also passes over the preceding filler 11. When tbe filler 15 is laid it is spaced from the preceding filler 11, as shown in Pig. 2. When it is beaten up by the reed however it takes a position directly over the preceding filler 11, as shown in Fig. 3.」 (和訳) 「各ストレッチ性緯糸11が配置され、筬打ちされた後、1つまたはそれ以上の木綿等のノンストレッチ性緯糸15が、布地に織られる。図示される実施形態では、経糸は、緯糸15が10個毎の経糸の下を通過し、その中間の経糸の上を通過するように、ヘドルにかけられる。緯糸15の上を通過する経糸はまた前の緯糸11の上も通過する。図2に示されるように、緯糸15が配置される際、前の緯糸11から間隔を置いて配置される。しかし、図3に示されるように、緯糸15がリードによって筬打ちされると、前の緯糸11の直上の位置に配置される。」 このように、甲1発明-1における編物は、図3に示されるように、ノンストレッチ性緯糸15が前のストレッチ性緯糸11の直上の位置に配置されるものであって、ノンストレッチ性緯糸15とストレッチ性緯糸11とが交互に配置されるものではない。 平成29年11月13日付け意見書の「第2 3.」において申立人は、甲1の図1、2の編物組織図は、本件発明の編物組織図と同様のものになる旨を主張する。しかし、甲1の図1、2は、ノンストレッチ性緯糸15が「リードによって筬打ち」される前、すなわち「織機により共に織られたパターンを形成」する前の状態を示すものであって、「織機により共に織られたパターンを形成」した状態や、編物の「編組織」を示すものではない。 よって、申立人の主張は、当を得たものではなく、採用することができない。 そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を有することで、編物と同様の外観、感触及び特性を備える、すなわち、織物のように見えたり、感じたり、機能したりする織物を提供する(明細書の段落0005、0006)という効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1発明-1及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ.本件発明2~32について 本件発明2~32は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1についてと同様の理由で、甲1発明-1及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ.本件発明33、34について 本件発明33、34についても、上記イ.及びウ.と同様に、甲1発明-1及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ.本件発明35について (ア)対比 本件発明35と甲1発明-2とを対比する。 本件発明35は、「少なくとも1本の前記硬い糸(106)が、少なくとも1本の前記弾性的な糸(105)と交互に配置されている織組織を選択」(分説35E)し、「前記選択された織組織に従って前記織物(101)を織る」(分説35L)ものである。この「織組織」とは、本件特許の明細書の段落0061を参照すると、「織物の最小限の繰り返し単位(単位部分)」のことである。 これに対し、甲1発明-2における織物の織組織(織物の最小限の繰り返し単位(単位部分))は、ストレッチ性緯糸15が緯糸11の直上の位置に配置されるものである。 よって、本件発明35と甲1発明-2とは、少なくとも下記の《相違点2》で相違する。 《相違点2》 本件発明35は、「少なくとも1本の前記硬い糸(106)が、少なくとも1本の前記弾性的な糸(105)と交互に配置されている」織組織に従って織物を織る方法であるのに対し、甲1発明-2は、1本のストレッチ性緯糸11の真上に1本のノンストレッチ性緯糸15が配置されている織物を織る方法である点。 (イ)判断 甲1には、「少なくとも1本の前記硬い緯糸(106)が、少なくとも1本の前記弾性的な緯糸(105)と交互に配置されている」編組織に従って織物を織ることは、記載されていない。また、甲2~8にも、このような編組織に従って織物を織ることは、記載されていない。 これに対し本件発明35は、上記相違点2に係る構成を有することで、編物と同様の外観、感触及び特性を備える、すなわち、織物のように見えたり、感じたり、機能したりする織物を作る方法を提供する(明細書の段落0005、0006)という効果を奏するものである。 よって、本件発明35は、甲1発明-2及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ.本件発明36~40について 本件発明36~40は、本件発明35の発明特定事項をすべて含むものであり、本件発明35についてと同様の理由で、甲1発明-2及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ.小括 上記ア.~カ.のとおりであるから、本件発明1~40に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 (3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア.特許法第17条の2第3項について (ア)「外部から視認される連結部」、「外部から視認される一連の連結部」について 申立書の14頁19~26行において申立人は、平成28年6月22日付け手続補正書によって請求項1、33に追加された「外部から視認される連結部」及び請求項35に追加された「外部から視認される一連の連結部」との記載は、甲9及び甲10には記載されておらず、新規事項である旨を主張する。 しかし、本件訂正により、当該記載は削除されたから、申立人の前記主張は、判断を要しないものとなった。 (イ)願書に添付した明細書等の表1の実施例5~10の欄について 申立書の14頁27行~15頁3行において申立人は、平成28年6月22日付け誤訳訂正書における本件特許の明細書の段落0062の表1への実施例5~10の追加は、誤訳の訂正ではなく、新規事項の追加に該当する旨を主張する。 当該主張は、当該追加事項が、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(甲10)に記載した事項の範囲内にないから、同法第184条の18の規定により読み替える同法第113条第5号に該当すること(原文新規事項)を主張するものと認める。 しかし、甲10では、Table 1(表1)にExample 5~10(実施例5~10)が記載されている。 したがって、当該追加事項は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(甲10)に記載した事項の範囲内のものであるから、本件発明1~40に係る特許は、同法第184条の18の規定により読み替える同法第113条第5号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 イ.特許法第39条第2項について (ア)申立人の主張 申立書の15頁4~8行において申立人は、本件発明1~40は本件特許の分割出願である甲11(特開2017-20154号公報)の請求項1~49に係る発明と同一であり、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張する。 (イ)本件特許の分割出願に係る発明 本件特許の分割出願であり甲11として出願公開がなされた特願2016-124002号の特許請求の範囲の請求項1~49に係る発明は、平成29年12月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~49に記載されたとおりのものである。 (ウ)対比・判断 a.本件発明1~32について 特願2016-124002号の請求項1~49に係る各発明と本件発明1~32とは、少なくとも以下の事項で相違する。 「1D 前記硬い糸(106)の各々が、前記ループ部(107a)によって跨ぐ前記経糸(104)の数は、6~24(両端値を含む)の範囲内であり、」 「1J 衣料品」に関する発明であること。 よって、本件発明1~32は、特願2016-124002号の請求項1~49に係る発明と同一ではない。 b.本件発明33及び34について 特願2016-124002号の請求項1~49に係る各発明と本件発明33及び34とは、少なくとも以下の事項で相違する。 「33D 前記硬い糸(106)の各々が、前記ループ部(107a)によって跨ぐ前記経糸(104)の数は、6~24(両端値を含む)の範囲内であり、」 よって、本件発明33及び34は、特願2016-124002号の請求項1~49に係る発明と同一ではない。 c.本件発明35~40について 特願2016-124002号の請求項1~49に係る各発明と本件発明35~40とは、少なくとも以下の事項で相違する。 「35C 弾性を有しておらず、Ne10~Ne70(両端値を含む)の英式綿番手を有する硬い緯糸(106)を提供するステップと、」 「35G 前記硬い緯糸(106)の各々が、前記各下部(107)によって跨ぐ前記経糸(104)の数を、6~24(両端値を含む)の範囲内とし、」 「35I 前記弾性的な糸(105)の数と、前記硬い糸(106)の数との比率が、2:1~1:5(両端値を含む)となるようにし、」 「35K 隣接する前記硬い緯糸(106)の前記下部(107)及び前記連結部(108a)が、各々前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向に延びるパターンを形成するステップと、」 「35N もって隣接する前記硬い緯糸(106)の、前記裏側面(103)における前記ループ部(107a)及び前記表側面(102)における前記連結部(108a)により、各々前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向に延びるパターンを有し、緯糸方向のみならず、前記経糸(104)及び前記緯糸(105,106)に対して斜め方向における弾性を有しており、かつ前記斜め方向にも延ばすことができ、」 「35O さらに、3回の家庭洗浄の後における経糸密度が25~80本/cmである織物を製造することを特徴とする」 よって、本件発明35~40は、特願2016-124002号の請求項1~49に係る発明と同一ではない。 (エ)まとめ 以上のことから、本件発明1~40は、特願2016-124002号の請求項1~49に係る発明と、同一ではない。 したがって、本件発明1~40に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものということはできないから、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 第4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~40に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~40に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700274

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決50件(サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス、柏木 里実)
  • 2019-700138異議申立 / 2020-02-25 / 訂正認容伸縮性コアヤーン及びその製造方法
    同じ当事者: サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス、柏木 里実
  • 2017-701012異議申立 / 2018-08-08 / 訂正認容伸縮性複合ヤーン、その製造方法及び織物
    同じ当事者: サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス、柏木 里実
  • 2025-701115異議申立 / 2026-03-02 / 維持熱中症発症リスク判定システム、熱中症発症リスク判定プログラム及び熱中症発症リスク…
    同じ当事者: 柏木 里実
  • 2025-700329異議申立 / 2025-11-21 / 維持熱伝導性樹脂組成物、放熱構造体及び熱伝導性樹脂組成物の製造方法
    同じ当事者: 柏木 里実
  • 2025-700722異議申立 / 2025-10-01 / 維持セルロース繊維を含む不織布
    同じ当事者: 柏木 里実
同じ論点・分野の審決(審決分類)57件(121・D03D、4・D03D、536・D03D ほか)
  • 2024-700102異議申立 / 2025-06-20 / 訂正認容プリプレグ用シリカガラスクロス
    共通の審決分類: 121・D03D、536・D03D、537・D03D、55・D03D
  • 2022-004394拒絶査定不服審判 / 2023-09-05 / 原査定取消(特許/登録すべき)ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板
    共通の審決分類: 121・D03D、536・D03D、537・D03D、55・D03D
  • 2024-700100異議申立 / 2026-03-06 / 訂正認容プリプレグ、及びプリント配線基板
    共通の審決分類: 121・D03D、536・D03D、537・D03D
  • 2025-700879異議申立 / 2026-01-21 / 維持ストレッチ織物
    共通の審決分類: 121・D03D、536・D03D、537・D03D
  • 2024-700172異議申立 / 2025-05-02 / 維持アニールド石英ガラスクロスとその製造方法
    共通の審決分類: 121・D03D、536・D03D、537・D03D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存