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特許異議申立

2017-701012

伸縮性複合ヤーン、その製造方法及び織物

審判番号
2017-701012
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-538108
登録番号
特許第6121332号(P6121332)
請求日
2017年10月24日
審決日
2018年08月08日
公報発行日
2018年11月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
  • 【権利者代理人】竹沢 荘一
  • 【権利者代理人】竹ノ内 勝
  • 【権利者代理人】横堀 芳徳
  • 【異議申立人】柏木 里実
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 門前 浩一
  • 審判官 蓮井 雅之
分類
P1651.113-YAA(D02G) / P1651.121-YAA(D02G) / P1651.536-YAA(D02G) / P1651.537-YAA(D02G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第4号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第126条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の4第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6121332号発明「伸縮性複合ヤーン、その製造方法及び織物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6121332号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6121332号の請求項1-12に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6121332号の請求項1-12に係る特許についての出願は、平成23年11月14日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年11月12日 欧州特許庁)とする出願であって、平成25年7月8日に国際出願翻訳文が提出され、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされ(設定登録時の明細書を以下「本件明細書」という。)、その後、その特許について、平成29年10月24日に特許異議申立人 柏木 里実(以下「本件申立人」という。)により、全請求項に対して特許異議の申立てがされ、平成29年12月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年3月20日に意見書の提出及び訂正(以下「本件訂正」という。)の請求があり、本件訂正の請求等に対して本件申立人から平成30年6月5日に意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正による訂正の内容は、以下の(1)~(23)のとおりである。なお、平成30年3月20日提出の訂正請求書における訂正の内容を当審で整理している。また、「第2」内において、\は、改行を表すものとする。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1について、(i)「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、」を「1m当たりの撚り数は」に訂正し、(ii)「75~125とは異なり」を「350~550の範囲内であり」に訂正し、(iii)「前記第1と第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」を「もって前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり、\ 前記第1の繊維は、前記第2の繊維と結合する前に延伸されており、もって結合後の前記伸縮性コア繊維(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており、\ 前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維を含む前記伸縮性コア繊維(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されている」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~12も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3について、「結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であり、最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である」を「結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内である」と訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5~12も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4について、(i)「1m当たりの撚り数は、300~600の範囲であり、好ましくは350~550の範囲であり、最も好ましくは450~525の範囲である」を、「1m当たりの撚り数は、450~525の範囲である」と訂正し、(ii)「請求項2に記載の」を「請求項1又は2に記載の」と訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~12も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5について、(i)「デシテックス番手は1,181~148の範囲内(英式綿番手において5~40の範囲内)であり、好ましくは984~197の範囲内(英式綿番手において6~30の範囲内)であり、前記コア繊維」を、「デシテックス番手は1,181~148の範囲内(英式綿番手において5~40の範囲内)であり、前記コア繊維」と訂正し、(ii)「前記最終ヤーン(1)中における前記シース(3)を構成する繊維の含有量は60~95重量%の範囲内であり、好ましくは70~92重量%の範囲内である」を、「前記最終ヤーン(1)中における前記シース(3)を構成する繊維の含有量は60~95重量%の範囲内である」と訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6~12も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9について、(i)「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、」を「1m当たりの撚り数は」に訂正し、(ii)「75~125とは異なり」を、「350~550の範囲内であり」に訂正し、(iii)「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある伸縮性コア繊維(2)を作製する工程;」を、「もって前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてある伸縮性コア繊維(2)を作成する工程;\ 結合後の前記伸縮性コア繊維(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維を、前記第2の繊維と結合する前に延伸する工程;」と訂正し、(iv)「前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.05~1.16の範囲内となるように、近接する2つの延伸手段(11,12;14)間で延伸させる工程を有する」を、「前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.05~1.16の範囲内となるように、近接する2つの延伸手段(11,12;14)間で延伸させる工程を有し、\ 前記第1及び第2の繊維を前記撚糸法により結合した場合、前記延伸工程において、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」と訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10について、「前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、」を、「前記第1及び第2の繊維を前記交絡法又は前記共押出法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11及び12も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項11について、「請求項10に記載の」を「請求項9又は10に記載の」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項12について、「延伸比が2.5~4.2となり、好ましくは3.0~4.0となり、より好ましくは約3.5となるように延伸する」を、「延伸比が2.5~4.2となるように延伸する」と訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0014】について、(i)「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、」を「1m当たりの撚り数は」に訂正し、(ii)「75~125とは異なり」を「350~550の範囲内であり」に訂正し、(iii)「前記第1と第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」を「もって前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり、\ 前記第1の繊維は、前記第2の繊維と結合する前に延伸されており、もって結合後の前記伸縮性コア繊維(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており、\ 前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維を含む前記伸縮性コア繊維(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されている」と訂正する (10)訂正事項10 明細書の段落【0016】について、(i)「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、」を「1m当たりの撚り数は」に訂正し、(ii)「75~125とは異なり」を、「350~550の範囲内であり」に訂正し、(iii)「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある伸縮性コア繊維(2)を作製する工程;」を、「もって前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてある伸縮性コア繊維(2)を作製する工程;\ 結合後の前記伸縮性コア繊維(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維を、前記第2の繊維と結合する前に延伸する工程;」と訂正し、(iv)「前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.05~1.16の範囲内となるように、近接する2つの延伸手段(11,12;14)間で延伸させる工程を有する」を、「前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.05~1.16の範囲内となるように、近接する2つの延伸手段(11,12;14)間で延伸させる工程を有し、\ 前記第1及び第2の繊維を前記撚糸法により結合した場合、前記延伸工程において、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」と訂正する。 (11)訂正事項11 明細書の段落【0028】について、「1m当たりの撚り数は、好ましくは300~600の範囲であり、より好ましくは350~550であり、通常は少なくとも400であり、最も好ましくは450~525である。」を、「1m当たりの撚り数は、通常は少なくとも400であり、好ましくは450~525である。」と訂正する。 (12)訂正事項12 明細書の段落【0067】について、「実施例1\番手試験」を、「番手試験」に訂正する。 (13)訂正事項13 明細書の段落【0068】について、「実施例2\ヤーン均一性試験」を、「ヤーン均一性試験」に訂正する。 (14)訂正事項14 明細書の段落【0069】について、(i)「実施例3\強度,弾性及び破断荷重の測定」を、「強度,弾性及び破断荷重の測定」と訂正し、(ii)「測定した番手(実施例1)を入力した。」を「測定した番手(上記番手試験)を入力した。」と訂正する。 (15)訂正事項15 明細書の段落【0070】について、「実施例4\綿+T-400のコアスパン」を、「比較例1\綿+T-400のコアスパン」と訂正する。 (16)訂正事項16 明細書の段落【0071】について、「実施例5\綿+エラスタンのコアスパン」を、「比較例2\綿+エラスタンのコアスパン」と訂正する。 (17)訂正事項17 明細書の段落【0073】について、「実施例6\T-400+エラスタン」を、「実施例1\T-400+エラスタン」と訂正する。 (18)訂正事項18 明細書の段落【0074】について、「実施例7\綿+T-400+エラスタン\ 実施例4及び5の記載と同様にして、」を、「綿+T-400+エラスタン\ 比較例1及び2の記載と同様にして、」と訂正する。 (19)訂正事項19 明細書の段落【0076】について、「実施例7による本発明のヤーン」を「実施例1による本発明のヤーン」に訂正する。 (20)訂正事項20 明細書の段落【0077】について、「実施例8\綿+T400を用いた伸縮性横糸織物\ 実施例4に記載の方法で製造した」を「比較例3\綿+T400を用いた伸縮性横糸織物\ 比較例1に記載の方法で製造した」と訂正する。 (21)訂正事項21 明細書の段落【0078】について、(i)「実施例9\綿+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物\ 実施例2に記載の方法で製造」を、「比較例4\綿+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物\ 比較例2に記載の方法で製造」と訂正し、(ii)「コアスパン(実施例5)」を「コアスパン(比較例2)」に訂正する。 (22)訂正事項22 明細書の段落【0079】について、(i)「実施例10\綿+T-400+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物\ 実施例3で記載の方法で製造した」を「実施例2\綿+T-400+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物\ 実施例1で記載の方法で製造した」と訂正し、(ii)「コアスパン(実施例7)」を「コアスパン(実施例1)」に訂正する。 (23)訂正事項23 明細書の段落【0080】について、「実施例11\試験\ デニムの織物試験用サンプルを、実施例8,9及び10で製造した織物から」を「試験\ デニムの織物試験用サンプルを、実施例2,並びに比較例3及び4で製造した織物から」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 請求項2ないし12は、いずれも直接または間接的に請求項1を引用するものであるから、請求項1ないし12は、特許法120条の4第4項に規定する一群の請求項を構成し、本件訂正は一群の請求項に対してなされたものである。そこで、他の訂正要件について以下検討する。 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 (ア)訂正事項1の(i)について この訂正事項は、コア繊維を構成する第1の繊維と第2の繊維とを結合する場合に、1m当たりの「撚り数」により特定する選択肢を残し、「結合点の数」により特定する選択肢を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解される。訂正請求書において、撚糸法を用いた場合には「1m当たりの結合点の数」は明瞭でないから、この訂正事項は、明瞭でない記載の釈明に該当すると説明するが、交絡法と同様に目視観察により、定義することは不可能ではないと考えられるから、上記のように当審で目的を認定した。 (イ)訂正事項1の(ii)について 1m当たりの撚り数に関して、この訂正事項によって、数値範囲が訂正前よりも狭くなっているから、この訂正事項1の(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項1の(iii)について 訂正前の「十分に高くしてある」という記載は、その基準が明瞭でないから、これを削除した訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当する。また、訂正によって、第2の繊維と結合する前に、第1の繊維が延伸されること、及び、伸縮性コア繊維が第1の繊維と第2の繊維が撚糸法により結合された場合(すなわち伸縮性コア繊維が交絡法及び共押出法により結合された場合を除かれる。)には、伸縮性コア繊維が非弾性繊維シースに被覆される際に、自然長の1.12~1.14倍に延伸されることを特定することで、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。したがって、訂正事項1の(iii)は、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項1の(i)について 訂正事項1の(i)は、上記ア(ア)において認定したように選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)訂正事項1の(ii)について 1m当たりの撚り数を、350~550の範囲と限定することは、本件明細書の段落【0028】に記載された事項であり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)訂正事項1の(iii)について 訂正前の「十分に高くしてある」という記載を削除した訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、第2の繊維と結合する前に、第1の繊維が延伸されることは、本件明細書の段落【0029】に記載されており、さらに、伸縮性コア繊維が非弾性繊維シースに被覆される際に、自然長の1.12~1.14倍に延伸されることを特定した訂正は、本件明細書の段落【0058】に記載された事項であるから、新規事項を追加するものではない。また、これらの訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項3において、2つ記載されている数値範囲のうち、「最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である」発明特定事項を削除することにより、結合点の数の範囲を明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、訂正前の請求項3の選択肢の一部を削除する訂正であるから、新規事項を追加するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 (ア)訂正事項3の(i) 訂正事項(3)の(i)は、訂正前の請求項4において、3つ記載されていた数値範囲の選択肢のうち、2つを削除するものである。したがって、上記(2)アと同様、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)訂正事項3の(ii) 訂正事項3の(ii)は、訂正前の請求項4における数値範囲の選択肢のうちの1つ「350~550」を訂正後の請求項1に移したことにより、その数値範囲より狭い「450~525」を発明特定事項とする訂正後の請求項4について、請求項1も引用することを明示したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項3の(i) 上記ア(ア)で認定したように、この訂正事項は、選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)訂正事項3の(ii) 訂正事項3の(ii)によって、請求項1を引用する請求項4が追加されているが、請求項1の撚り数「350~550の範囲内」を請求項4を引用することにより範囲を限定して「450~525の範囲内」とするものであって、訂正後の請求項1の範囲内にあり、この訂正事項は、新たな技術事項を追加するものではなく、新規事項を追加するものとはいえない。また、請求項1を引用する請求項4が追加されたことで、この訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとまではいえない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 (ア)訂正事項4の(i) この訂正事項は、デシテックス番手について、訂正前の請求項5において、選択的に2つ記載されていた数値範囲のうち、1つの数値範囲を削除するものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)訂正事項4の(ii) この訂正事項は、最終ヤーン中におけるシースを構成する繊維の含有量について、訂正前の請求項5において、選択的に2つ記載されていた数値範囲のうち、1つの数値範囲を削除するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項4の(i) 上記ア(ア)で認定したように、この訂正事項は、選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)訂正事項4の(ii) 上記ア(イ)で認定したように、この訂正事項は、選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的 (ア)訂正事項5の(i) この訂正事項は、コア繊維を構成する第1の繊維と第2の繊維とを結合する場合に、1m当たりの「撚り数」により特定する選択肢を残し、「結合点の数」により特定する選択肢を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解される。訂正請求書において、撚糸法を用いた場合には「1m当たりの結合点の数」は明瞭でないから、この訂正事項は、明瞭でない記載の釈明に該当すると説明するが、交絡法と同様に目視観察により、定義することは可能ではないと考えられるから、上記のように当審で目的を認定した。 (イ)訂正事項5の(ii) 1m当たりの撚り数に関して、この訂正事項によって、数値範囲が訂正前よりも狭くなっているから、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正事項5の(iii) 訂正前の「十分に高くしてある」という記載は、明瞭でないから、これを削除した訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当する。また、この訂正によって、第2の繊維と結合する前に、第1の繊維が延伸されることを追加した訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 (エ)訂正事項5の(iv) この訂正により、シース繊維に対するコア繊維の延伸比は、第1の繊維を撚糸法により第2の繊維と結合する場合に限って、訂正前の1.05~1.16の範囲内から、訂正後の1.12~1.14の範囲内へと減縮されており、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (ア)訂正事項5の(i) この訂正事項は、上記ア(ア)において認定したように選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものでなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (イ)訂正事項5の(ii) 1m当たりの撚り数を、350~550と限定することは、本件明細書の段落【0028】に記載されているから、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)訂正事項5の(iii) 訂正前の「十分に高くしてある」を削除した補正は、新規事項を追加するものでなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。第2の繊維と結合する前に、第1の繊維が延伸されることを追加した訂正は、本件明細書の段落【0029】に記載されており、新規事項を追加するものでなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (エ)訂正事項5の(iv) 本件明細書の段落【0032】には、「弾性複合コアを、ステープルファイバーとともに精紡する前に、複合コアの延伸比が、1.05~1.16の範囲内となり、好ましくは1.12~1.14の範囲内となるように延伸する」と記載されており、また、本件明細書の段落【0025】には、「本発明の好ましい態様では、第1及び第2の繊維を、交絡法、共押出法、又は撚糸法により結合する・・・」と記載されているから、これらの結合方法から、撚糸法を選択した上で、1.12~1.14の範囲内となるように延伸するよう限定することは、本件明細書に記載された範囲内であって、新規事項の追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的 訂正事項5の(iv)に伴い、撚糸法により第1の繊維と第2の繊維とを結合する場合に、伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する発明は、請求項9に規定されているから、請求項10では、結合方法を交絡法または共押出法に限定したものであって、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 本件明細書の段落【0025】には、上記(5)イ(エ)の記載があり、交絡法または共押出法に限定することは、新規事項の追加するものではない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的 この訂正は、訂正事項5に伴って、「非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.05~1.16の範囲内となるよう延伸する」際に、第1の繊維と第2の繊維との結合方法が撚糸法の場合には、請求項9に規定され、交絡法または共押出法の場合には、請求項10に規定されることになったため、引用する請求項を9又は10としたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 この訂正前の請求項9、10、11に記載された事項以外の事項が追加されているわけではないから、この訂正が新規事項の追加するものとはいえない。また、この訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的 延伸比について、訂正前の3つの数値範囲について、訂正により、そのうち2つを削除し、1つを残したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 この訂正により選択肢を減少させたのであるから、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項9~11 ア 訂正の目的 訂正事項9~11は、明細書の段落【0014】、【0016】及び【0028】の記載を、特許請求の範囲を訂正する訂正事項1、3、5に合わせるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1、3及び5と同様に新規事項の追加ではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 本件明細書の訂正に係る請求項について 上記訂正事項9は、請求項1の訂正に伴う訂正事項であり、上記訂正事項10は、請求項3の訂正に伴う訂正事項であり、上記訂正事項11は、請求項4の訂正に伴う訂正事項である。上記のように、本件特許の請求項2~12は、請求項1を直接または間接的に引用するものであって、請求項1~12は、一群の請求項を構成するものであるところ、訂正事項9~11により、一群の請求項がすべて訂正されることになるから、訂正事項9~11は、当該一群の請求項を対象とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条4項の規定に適合するものである。 (10)訂正事項12~23 ア 訂正の目的 上記訂正事項は、[a]本来実施例との表記が不要であるのに、実施例と表記されていたり(訂正事項12~14、18、22の(i)、23)、[b]本来比較例である例が実施例と表記されていたり(訂正事項15、16、20、21の(i))した、誤記の訂正を目的とするものであり、その誤記の訂正にともない、実施例の番号を振り替えた(訂正事項17、22)ものであって、いずれも誤記の訂正を目的とするものである。そして、これら実施例や比較例の変更に伴う、他の訂正(訂正事項18、19、20、21の(i)及び(ii)、22の(ii)、23)は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと解される。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項により、新たな技術事項は導入されておらず、新規事項を追加するものではない、また、これらの訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 本件明細書の訂正に係る請求項について 訂正後の実施例1は、訂正後の請求項1に係る発明に対応し、訂正後の実施例2は、訂正後の請求項7に係る発明に対応するものであるが、上記(9)ウと同様に、訂正事項12~23により、一群の請求項がすべて訂正されることになるから、訂正事項12~23は、当該一群の請求項を対象とするものであり、特許法第120条の5第9項の規定で準用する特許法126条4項の規定に適合するものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号~第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明12」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 伸縮性コア繊維(2)及び前記コア繊維(2)を被覆する非弾性繊維シース(3)を含む伸縮性ヤーン(1)であって、前記伸縮性コア繊維(2)は、第1及び第2の繊維(4,5)を含み、前記第1の繊維(4)は、エラストマーからなり、前記第2の繊維(5)はポリエステル系重合体又は共重合体からなり、前記第2の繊維の含有量は、前記伸縮性コア繊維(2)の60~90重量%の範囲であり、 前記第1及び第2の繊維(4,5)は弾性特性を有し、破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ、前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ、 前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より高い、少なくとも93%の弾性回復性を有し、 前記第1及び第2の繊維は、単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法,共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており、前記第1及び第2の繊維が交絡法により結合されている場合、結合点の数は50~200ポイント/メートルの範囲内であり、前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、もって前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり、 前記第1の繊維は、前記第2の繊維と結合する前に延伸されており、もって結合後の前記伸縮性コア繊維(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており、 前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維を含む前記伸縮性コア繊維(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されていることを特徴とする伸縮性ヤーン。 【請求項2】 前記第2の繊維(5)は、エラストマルティスター2成分繊維であり、前記第1の繊維は、ポリオレフィン又はポリウレタンのエラストマーであることを特徴とする請求項1に記載のヤーン。 【請求項3】 前記第1及び第2の繊維が交絡している場合、結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヤーン。 【請求項4】 前記第1及び第2の繊維(4,5)は、撚糸法により結合されており、1m当たりの撚り数は、450~525の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヤーン。 【請求項5】 デシテックス番手は1,181~148の範囲内(英式綿番手において5~40の範囲内)であり、前記コア繊維(2)の含有量は前記ヤーンの全重量の3~35重量%であり、前記複合コア繊維(2)中の前記第2の繊維の含有量は75~87重量%の範囲内であり、前記最終ヤーン(1)中における前記シース(3)を構成する繊維の含有量は60~95重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のヤーン。 【請求項6】 前記シース(3)を構成する繊維は綿繊維であり、前記第1の繊維はエラスタンであり、前記第2の繊維はPTT/PET2成分繊維であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のヤーン。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載のヤーンを含むことを特徴とする伸縮性織物。 【請求項8】 請求項7に記載の伸縮性織物を含むことを特徴とする衣類。 【請求項9】 請求項1~6のいずれか1項に記載のヤーンの製造方法であって、弾性特性を有する第1及び第2の繊維(4,5)を含み、これらが、単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法,共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で結合されている伸縮性コア繊維(2)であって、前記第1の繊維(4)はエラストマーであり、前記第2の繊維(5)はポリエステル系重合体又は共重合体であり、前記第2の繊維の含有量は前記伸縮性コア繊維(2)の60~90重量%の範囲であり、 破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ、前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ、 前記第1及び第2の繊維が交絡法により結合されている場合、結合点の数は50~200ポイント/メートルの範囲内であり、前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、もって前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてある伸縮性コア繊維(2)を作製する工程; 結合後の前記伸縮性コア繊維(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維を、前記第2の繊維と結合する前に延伸する工程; 前記コア繊維(2)を延伸する工程; 前記コア繊維(2)を完全に被覆する非弾性のステープルファイバー(3)のシースを作製する工程;及び 前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.05~1.16の範囲内となるように、近接する2つの延伸手段(11,12;14)間で延伸させる工程を有し、 前記第1及び第2の繊維を前記撚糸法により結合した場合、前記延伸工程において、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸することを特徴とする方法。 【請求項10】 前記第1及び第2の繊維を前記交絡法又は前記共押出法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を、前記非弾性繊維(3)とともに精紡する前に、前記複合コア繊維(2)の延伸比が1.12~1.14の範囲内となるように、近接する2つの延伸手段(11,12;14)間で延伸させることを特徴とする請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記伸縮性コア繊維(2)のヤーンを、前記延伸比に延伸する前に、予備延伸させることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。 【請求項12】 前記第1の弾性繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となるように延伸することを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。」 2 取消理由の概要 平成29年12月18日付け取消理由通知の理由は、概略以下のとおりである。なお、本件申立人による特許異議の申立ての理由は、全て通知されている。 (1)新規性欠如 本件特許の請求項1、2、4~10、12に係る発明は、本件優先日(2010年11月12日)前に頒布された甲1から新規性を欠くため、特許法第29条第1項第3号の規定する発明に該当し、特許を受けることができない発明であるため、特許法第113条第2号に該当し、特許を取り消されるべきである。 (2)進歩性欠如 本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件優先日前に頒布された甲1に記載された発明及び甲1~7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるため、特許法第113条第2号に該当し、特許を取り消されるべきである。 ア 甲1 特開2008-297646号公報 イ 甲2 特開2003-171838号公報 ウ 甲3 特開2010-203016号公報 エ 甲4 特開2002-155442号公報 オ 甲5 特開2002-146641号公報 カ 甲6 特開2006-225798号公報 キ 甲7 社団法人繊維学会編「第2版繊維便覧」、第2刷、丸善株式会社、平成7年2月15日、279頁 (3)記載要件違背 ア サポート要件について (ア)本件特許請求の範囲の記載は、後記(イ)の点で、特許法第36条第6項第1号の規定に適合せず、特許を受けることができないから、特許法第113条第4号に該当し、特許を取り消されるべきである。 (イ)本件特許における、第1の繊維と第2の繊維とを結合させる手段には、「交絡法、共押出法又は撚糸法」であるが、そのうち、共押出法について実施例が存在せず、また、技術常識を考慮しても、第1の繊維と第2の繊維とを、紡糸時に共押出しすることは困難であり、本件発明1ないし12は、明細書によりサポートされていない。 イ 明確性要件について (ア)本件特許請求の範囲の記載は、後記(イ)ないし(エ)の点で、特許法第36条第6項第2号の規定に適合せず、特許を受けることができないから、特許法第113条第4号に該当し、特許を取り消されるべきである。 (イ)本件発明において、第1の繊維と第2の繊維とが撚糸法で結合される場合に、「1m当たりの結合点の数」は、何をもって結合点というかが、明細書に定義されておらず、不明確である。 (ウ)本件発明における「十分に高くしてある」という表現は、どの程度高くするかが当業者であっても理解出来ない。 (エ)本件発明4、5、12における「好ましくは」、本件発明12における「より好ましくは」、本件発明3、4における「最も好ましくは」(3つの語句を合わせて以下「好ましくは等」という。)は、それぞれ、数値範囲を複数示すものであり、発明を不明確としている。 ウ 実施可能要件について (ア)本件特許明細書の記載は、後記(イ)ないし(ス)の点で、特許法第36条第4項第1号の規定に適合せず、特許を受けることができないから、特許法第113条第4号に該当し、特許を取り消されるべきである。 (イ)本件発明1及び9に記載された「共押出法」について、当業者であっても容易に実施できない。 (ウ)本件特許明細書の段落【0067】~【0069】の「実施例1」~「実施例3」は、単なる測定方法が記載されているに過ぎず、実施例に該当しない。 (エ)本件特許明細書の段落【0070】の「実施例4」は、「綿+T400のコアスパン」であり、本件発明1の「第1の繊維」を含んでいない。したがって、この「実施例4」は、本件発明1の実施例に該当しない。 (オ)本件特許明細書の段落【0071】の「実施例5」は、「綿+エラスタンのコアヤーン」であり、本件発明1の「第2の繊維」を含んでいない。したがって、この「実施例5」は、本件発明1の実施例に該当しない。 (カ)本件特許明細書の段落【0073】の「実施例6」は、「T-400+エラスタン」であって、本件発明1の「非弾性繊維シース」を含んでいない。したがって、本件発明1の実施例に該当しない。 (キ)本件特許明細書の段落【0074】の「実施例7」は、本件発明1の構成要件「破断伸びにおいて前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ、前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ」るか否か、また、本件発明1の構成要件「前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より高い、少なくとも93%の弾性回復性を有」するか否かが、記載されておらず、また、技術常識上、明らかでないから、実施例といえない。 (ク)本件特許段落明細書の段落【0076】には、「弾性に関する限り、実施例7による本発明のヤーンは、綿/エラスタンのみのヤーンと同等であり、綿/T400のみのヤーンより比べて優れている。3種のヤーンのその他のパラメータ、例えば抵抗性(破壊全長RKM),破断荷重,厚段等は同等であった。」と記載されているが、本件明細書の段落【0012】~【0013】に記載の目的が達成されたのかは、記載されていない。本件発明の効果がどのようなものか、不明である。 (ケ)本件特許明細書の段落【0077】の「実施例8」は、「綿+T400を用いた伸縮性横糸織物」であり、本件発明1の「第1の繊維」を含んでいない。したがって、この「実施例8」は、本件発明7の実施例に該当しない。 (コ)本件特許明細書の段落【0078】の「実施例9」は、「綿+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物」であり、本件発明1の「第2の繊維」を含んでいない。したがって、この「実施例9」は、本件発明7の実施例に該当しない。 (サ)本件特許明細書の段落【0079】の「実施例10」には、「実施例3で記載の方法で製造した」と記載されているが、実施例3は、「強度,弾性及び破断荷重の測定」が記載されているだけであり、製法は記載されていない。したがって、上記実施例10は、本件特許7の実施例に該当しない。 (シ)本件特許明細書の段落【0080】の「実施例11」には、「試験用サンプルを、実施例8,9及び10で製造した織物から調整した」と記載されているが、前記のように実施例8~10は、いずれも本件発明の実施例でないから、実施例11も当然、本件発明の実施例に該当しない。 (ス)本件特許明細書の段落【0084】、【0085】には、「本発明の織物の伸縮性が、綿/エラスタンのみのヤーンを含む、より弾性の高い織物の伸縮性と同等であることを示している。T400ベースのヤーンから得られる織物の伸縮性は、標準的な「加工していない」織物、すなわち、伸縮性ヤーンを含まない織物の伸縮性と同等であり、それは通常約10%である。 本発明の織物の残留伸び(3.1)は、伝統的な織物の残留伸び(7.8)の半分未満であり、本発明のヤーンから優れた結果が得られることが確認された。」と記載されているが、本件特許明細書の段落【0012】、【0013】に記載の目的が達成されたのかは記載されていない。本件発明の効果がどのようなものなのか不明である。 3 甲各号証の記載 (1)甲1について 本件優先日前に頒布された刊行物である甲1(特開2008-297646号公報)には、次の記載がある。 ア 段落【0007】 「即ち、本発明は、 (1)芯が少なくとも2本以上のフィラメント糸の合撚糸であり、鞘が短繊維からなることを特徴とする、芯鞘構造複合紡績糸、 (2)2本以上のフィラメント糸の合撚糸を、短繊維と引き揃えた後、前記2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向とは逆方向の撚り方向に撚り合わせてなる、上記(1)記載の芯鞘構造複合紡績糸、 (3)上記(1)又は(2)記載の芯鞘構造複合紡績糸であって、芯がポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸との合撚糸からなるストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸、 (4)ポリエステル系複合長繊維糸が、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポ リエステル層とポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層とからなる複合長繊維である、上記(3)記載のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸、 (5)鞘がセルロース系短繊維からなり、該セルロース系短繊維の含有率が重量比率で60%以上である、上記(3)又は(4)記載のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸、 (6)英式綿番手で5~30番手の紡績糸である、上記(3)~(5)のいずれかに記載のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸、 (7)当該芯鞘構造複合紡績糸の撚り係数Kが3.6~5.0の範囲である、上記(1)~(6)のいずれかに記載の芯鞘構造複合紡績糸、及び (8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の芯鞘構造複合紡績糸を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする布帛、に関する。・・・」 イ 段落【0008】 「以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。 本発明の芯鞘構造複合紡績糸(以下、単に「複合紡績糸」ともいう)は、芯が少なくとも2本以上のフィラメント糸の合撚糸であり、鞘が短繊維からなる、複合紡績糸であり、好適には、2本以上のフィラメント糸の合撚糸を、短繊維と引き揃えた後、該2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向とは逆方向の撚り方向に撚り合わせてなる複合紡績糸である。」 ウ 段落【0009】 「従来から、長短複合糸は、紡績糸がもたらすナチュラルな手触り、外観と、長繊維がもたらす好ましい腰・反撥性とを同時に発現できる繊維素材として開発されてきた。しかし、2本以上のフィラメント糸の合撚糸を芯に用いた芯鞘構造の複合紡績糸は提案されていない。本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、芯が2本以上のフィラメント糸の合撚糸であることにより、1本のフィラメント糸(長繊維)を芯にした従来の芯鞘構造の複合紡績糸では達成困難であった要求特性を満たす芯鞘構造の複合紡績糸を得ることができ、また、鞘成分の短繊維が芯成分の2本以上のフィラメント糸の間に巻き込まれて拘束されて、毛羽の発生が抑制されることから、抗ピリング性に優れた複合紡績糸を実現することができる。また、撚り数を比較的低く設定できるので、ソフト感に優れる複合紡績糸を実現できる。さらに、本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、芯成分が2本以上のフィラメント糸の合撚糸であることから、外力を受けたときの芯成分と鞘成分(短繊維)間の摩擦力が大きく、鞘成分(短繊維)の糸の平行方向(軸線方向)へのずれが生じにくい、均整性の高い紡績糸になるという利点もある。」 エ 段落【0013】 「2本以上のフィラメント糸の撚り方向は、S方向、Z方向のいずれでもよいが、一般的にはS方向である。また、撚り数(インチ当たり回数)は、撚り合せるフィラメント糸の種類によっても異なるが、撚り数が少な過ぎると、撚り合せるフィラメント糸間で剥離が生じやすくなって、後工程での取り扱いが困難となる傾向となり、また、撚り数が多過ぎると、後工程において、合撚糸と鞘を構成する短繊維との交絡度合いが低くなって、芯と鞘のずれが多くなり、毛羽が発生しやすい傾向となる。従って、一般的には2本以上のフィラメント糸の撚り数は5~20回(好ましくは8~16回)程度である。」 オ 段落【0014】 「かかる芯成分となる合撚糸の具体例としては、例えば、(a)伸長率及び回復率がともに良好な優れたストレッチ性を有する複合紡績糸を実現するための、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸とからなる合撚糸、(b)織物引き裂き強度に優れたストレッチ性を有する複合紡績糸を実現するための、ポリエステル長繊維とポリウレタン系弾性糸とからなる合撚糸、(c)帯電防止機能を持ち、ストレッチ性を有する複合紡績糸を実現するための、制電機能付きポリエステル長繊維とポリウレタン系弾性糸とからなる合撚糸等が挙げられる。」 カ 段落【0015】 「なお、芯成分となる合撚糸において、それを構成する2本以上のフィラメント糸の重量比率は、目的の複合紡績糸の用途に応じてその比率を調整すればよく、一般的には、各フィラメント糸は合撚糸全体の少なくとも5重量%以上の構成比率となる範囲内で適宜調整される。例えば、2本のフィラメント糸で構成される場合、5/95~95/5の重量比率の範囲内で調整される。」 キ 段落【0016】 「一方、本発明の芯鞘構造複合紡績糸の鞘成分である短繊維は複合紡績糸の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、綿、麻等の天然セルロース系繊維;綿、麻、キュプラ、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン等の再生セルロース系繊維;アセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維;ウール等の獣毛繊維等の種々の短繊維を使用することができる。また、短繊維の断面形状は特に限定されず、丸であっても、多角形、H型、中空などの異形断面であっても良い。・・・」 ク 段落【0017】 「本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、2本以上のフィラメント糸の合撚糸を精紡機にて、所定のテンションを加え、精紡機のフロントローラーから供給し、その周りを上記の短繊維にてカバーリングして紡績することによって得られる。精紡機にて芯鞘構造複合紡績糸に加える撚りは、2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向とは逆方向の撚りを加えることが重要である。すなわち、2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向がS方向である場合、Z方向に撚りを加え、2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向がZ方向である場合、S方向に撚りを加える。また、芯鞘構造複合紡績糸の太さは、当該複合紡績糸の用途や当該複合紡績糸を用いた布帛の用途に応じて適宜決定される。」 ケ 段落【0018】、【0019】 「撚り数(実撚りの回数)は、紡績糸の太さ(英式綿番手)との関係から、下記式(1)で定義される、撚り係数Kが3.6~5.0となる範囲となる撚り数とする。 【数1】 」 コ 段落【0021】 「本発明の芯鞘構造複合紡績糸において、複合紡績糸中の鞘を構成する短繊維の含有率は、重量比率で60%以上であり、好ましくは70~97%である。鞘を構成する短繊維の含有率が重量比率で97%を超える場合、鞘糸の巻き付き構造が顕著で綺麗な外観を呈するが、芯成分(長繊維)の特徴が低下する傾向となり、重量比率で60%未満の場合は、糸加工性が低下し、糸形態も鞘糸の巻き付き構造が緩くなるため、布帛を得る際の製編工程や製織工程での通過性が低下する傾向となる。」 サ 段落【0030】 「ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸とからなる合撚糸は、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸を3~5倍に伸長した状態で撚り数(インチ当り回数)5~20回(好ましくは8~16回)にて撚り合わせるのが適当である。また、撚り方向は、通常、S方向である。撚り数が5~20回であれば、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸間のすべりを高いレベルで防止でき、また、後工程(紡績工程)での芯を構成する当該合撚糸と鞘を構成する短繊維の交絡度合いが好ましい状態となり、ソフト感に優れた紡績糸が得られる。」 シ 段落【0031】 「なお、合撚糸におけるポリエステル系複合長繊維糸/ポリウレタン系弾性糸の重量比率は、布帛とした場合の伸長率、回復率の観点から、70/30~95/5であるのが好ましく、より好ましくは80/20~90/10である。」 ス 段落【0032】 「このようにして得られた合撚糸を、精紡機にて、1.1倍以上のテンションを加え、精紡機のフロントローラーから供給し、その周りを短繊維にてカバーリングして紡績する。このとき、紡績糸に加える撚りの方向をポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸の合撚糸の撚りの方向と逆方向(通常、Z方向)とすることで、抗ピリング性及びソフト感のいずれもが良好で、伸長率及び回復率がともに良好な優れたストレッチ性の芯鞘構造複合紡績糸を実現できる。」 セ 段落【0033】 「芯を構成するポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸の合撚糸に精紡機で加えるテンションが1.1倍未満であると、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸との剥離が起こった状態で、精紡機のフロントローラーへ供給されるおそれがあり、かかる剥離状態でのフロントローラーへの供給がなされると、カバーリング状態の悪化や染めムラの原因となり、布帛とした場合の伸長率、回復率にも影響するため好ましくない。なお、精紡機で加えるテンションが高すぎる場合、精紡機のドラフト部にかかる負担が大きくなり、部品の消耗がおこり、品質不良の原因となるため、当該テンションは1.2倍以下であるのが好ましい。」 ソ 段落【0036】 「当該ストレッチ性の芯鞘構造複合紡績糸の太さは、通常、英式綿番手で5~30であり、好ましくは7~30、より好ましくは8~20である。また、当該ストレッチ性の芯鞘構造複合紡績糸の撚り数(実撚りの回数)は、基本的には、前記の式(1)で定義される撚り係数Kが前記の3.6~5.0の範囲となる撚り数であるが、好ましくは、前記の式(1)で定義される撚り係数Kが4.0~4.6の範囲となる撚り数である。」 タ 段落【0043】 「(実施例1) ポリエステル系複合長繊維糸として、ポリトリメチレンテレフタレート層/ポリエチレンテレフタレート層=50/50のサイドバイサイド型複合繊維(56dtx 24フィラメント、東レ株式会社製のT-400)を用意し、ポリウレタン系弾性糸として、オペロンテックス社製スパンデックス(LYCRA、T127C、44dtx)を用意した。また、セルロース系短繊維として、綿100%の短繊維粗糸(紡出ゲレン 20.0g/30yd)を用意した。 まず、村田製作所社製合糸機608を用いて、スパンデックスを3.5倍にドラフトしたものと、ポリトリメチレンテレフタレート層/ポリエチレンテレフタレート層のサイドバイサイド型複合繊維(T-400)を引き揃えて合糸し、ダブルツイスターを用いてS方向に実撚9.5回/inchの撚りを加えて複合合撚糸とした。 この複合合撚糸を精紡工程におけるフロントローラー部へ1.19倍のテンションを加えて供給し、綿100%の短繊維粗糸(繊度:4.8マイクロネア)をバックローラーからフロントローラーへ供給し、Z方向へ、撚り係数K=4.5にて撚りを加え、英式綿番手で10番手のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を製造した。 得られたストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を緯糸に使用し、緯密度58の3/1R組織にて織物を作製した。 織物の特性は表1に示すとおりであり、優れた抗ピリング性を有し(毛羽が発生しにくく)、ソフト感に優れ、伸長率及び回復率がともに良好であった。」 チ 産業上の利用可能性、段落【0047】 「本発明の芯鞘構造複合紡績糸は抗ピリング性及びソフト感に優れるので、毛羽が発生しにくい、ソフトな風合いの布帛を提供できる。 また、特に、芯にポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸との合撚糸を使用したストレッチ性の芯鞘構造複合紡績糸では、糸の均整性、抗ピリング性及びソフト感に優れるだけでなく、伸長率及び回復率がともに良好な優れたストレッチ性を有し、しかも、長期耐久性にも優れている。よって、ストレッチ性の芯鞘構造複合紡績糸から得られる布帛は毛羽が発生せず、また、バランスのよい伸長率及び回復率を有するため、履きごこち、着ごこちのよい衣料製品を提供することが可能となる。」 (2)甲2ないし甲7の記載 ア 甲2 本件優先日前に頒布された刊行物である甲2(特開2003-171838号公報)には、次の記載がある。 (ア)明細書の段落【0010】 「本発明の被覆弾性糸の芯糸の弾性糸としては、ポリウレタンや、ポリエステルエラストマーからなるものを用いることができる。芯糸の弾性糸はモノフィラメント、マルチフィラメントのいずれでも良いが・・・」 (イ)明細書の段落【0016】 「このようにポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと称する)は単一の同成分であってもよいが、同成分であっても粘度差、収縮差、弾性差を有するバイメタル型(サイドバイサイド型)もしくは同芯型あるいは偏心芯鞘型に接合した組み合わせのものであることが好ましい。さらに、PTTとポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する)、ポリアミド、ポリブチレンなどの異なるポリマーと接合した組み合わせによるバイメタル型もしくは同芯型あるいは偏心芯鞘型であることがさらに好ましい。」 (ウ)明細書の段落【0032】 「実撚に代わり、交絡を有してもよい。交絡が施されることにより、被覆性がさらに向上する。交絡を施すには仮撚り加工工程で連続的に行えるので製造コストは若干高くなるが、特に被覆耐久性などを必要とする用途には適している。」 (エ)明細書の段落【0033】 「その交絡個数としては1m当たり30~150個が好ましい。交絡数を30個以上とすることで、被覆性が向上し目むきを防ぐことができる。また交絡数を150個以下とすることでイラツキを抑えることができる。」 イ 甲3 本件優先日前に頒布された刊行物である甲3(特開2010-203016号公報)には、次の記載がある。 (ア)明細書の段落【0007】 「本発明のループヤーンは、前記課題を解決するため、以下の構成を有する。すなわち、芯糸に繊度が10~235dtexの弾性繊維が、鞘糸に繊度が10~167dtexのフィラメント繊維が配されたループヤーンであって、前記弾性繊維および前記フィラメント繊維は互いにループおよびタルミによって交絡し、糸表面から0.35mm以上のループおよびタルミの合計個数が120個/m以上であることを特徴とするループヤーンである。」 (イ)明細書の段落【0056】 「[実施例4] 図2に示す工程上で、弾性繊維1として78デシテックスのポリウレタン系弾性繊維を用い、フィラメント繊維2として青色に先染めした56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル複合繊維(一方の構成成分はポリエチレンテレフタレートが主成分、他方の構成成分はポリトリメチレンテレフタレートが主成分)を、フィラメント繊維3として56デシテックス48フィラメントのナイロン6フィラメント仮ヨリ加工糸を用いて、下記条件によりエアー加工を施し、ループヤーンを得た。」 (ウ)明細書の段落【0057】 「糸速  :250m/min(デリベリーローラー8) 弾性繊維のプレドラフト:2.4 ノズル :タスランノズル フィードローラー5とデリベリーローラー8間のオーバーフィード:+3% フィードローラー6とデリベリーローラー8間のオーバーフィード:+25% エアー圧力:0.4MPa ・・・」 ウ 甲4 本件優先日前に頒布された刊行物である甲4(特開2002-155442号公報)には、次の記載がある。 (ア)明細書の段落【0019】 「本発明のポリエステル仮撚被覆弾性糸は、ポリウレタン弾性糸を芯部にし、その周囲に鞘部として少なくとも2回の仮撚加工履歴を持つポリエステルマルチフィラメント仮撚捲縮糸が実質的に仮撚により被覆されてなるとともに、糸長さ方向に開繊部と絡合部とを交互に形成した糸構造を有し、前記絡合部の糸長さ方向における数が20~50個/18cmであることを特徴とするポリエステル仮撚被覆弾性糸である。」 (イ)明細書の段落【0022】 「また、ポリエステル仮撚被覆弾性糸は、複合加工が摩擦仮撚加工で実施されることにより、糸長さ方向に開繊部と絡合部を交互に形成し、その交絡部を20~50個/18cmの多数存在させるようになっている。このように絡合部を密に存在させることにより鞘部の被覆性が向上するために、編地にしたとき「目むき」が生じないようになる。」 (ウ)明細書の段落【0042】 「上記のように引き揃えられた両糸は、供給ローラ5から、この供給ローラ5よりも速い表面速度で回転する引き取りローラ8に引き取られながら、摩擦仮撚具7により加撚された後ヒータ6で熱セットされ、冷却後に摩擦仮撚具7で解撚されることにより複合仮撚加工されて、ポリエステル仮撚被覆弾性糸が得られる。このように製造されたポリエステル仮撚被覆弾性糸Yは、巻き取りローラ11でパッケージP3として直接巻き取ってもよいが、巻き取る前に、引き取りローラ8と弛緩ローラ10との間で交絡ノズル9により圧空により交絡処理してもよい。・・・」 エ 甲5 本件優先日前に頒布された刊行物である甲5(特開2002-146641号公報)には、次の記載がある。 (ア)請求項1 「【請求項1】弾性糸を芯糸とし、ポリトリメチレンテレフタレートからなる仮撚捲縮糸を鞘糸として、実質的に仮撚により鞘糸が芯糸を被覆してなることを特徴とする被覆弾性糸。」 (イ)明細書の段落【0009】 「本発明の被覆弾性糸の芯糸の弾性糸としては、ポリウレタンや、ポリエステル・エラストマーからなるものを用いることができる。芯糸の弾性糸はモノフィラメント、マルチフィラメントのいずれでも良いが、取り扱い性の点ではモノフィラメント状にまとまっているのが好ましい。芯糸の繊度は10~110dtexが好ましく、特に一般衣料用としては10~80dtexが好ましい。」 (ウ)明細書の段落【0024】 「また、本発明の被覆弾性糸は交絡部分を有することが好ましく、その個数としては1m当たり30~150が好ましい。交絡数を30個以上とすることで、被覆性が向上し目むきを防ぐことができる。また交絡数を150個以下とすることで、イラツキを抑えることができる。」 (エ)明細書の段落【0025】 「芯糸と鞘糸を引き揃えた後に交絡処理を施すと、被覆弾性糸全体に交絡が付与される。その結果、交絡部分の存在により芯糸をより強固に被覆することが可能となる。」 (オ)明細書の段落【0048】、【0049】 「実施例1 芯糸として44dtexのポリウレタン弾性糸を2.1倍に伸長し、鞘糸に紡糸速度3000m/minで得た複屈折率△n45×10-3、伸度99%、130dtex、36フィラメントポリトリメチレンテレフタレートフィラメント糸のPOYを用いて両糸を引き揃え、オーバーフィード率0% 、交絡圧力0.3Mpaで処理し、ヒータ温度150℃、延伸加工倍率1.6倍、D/Y比率1.8、デリベリローラ速度300m/minにて複合仮撚加工を行い巻き取った。 その結果、芯/鞘糸はほぼ同芯円状に配列し、鞘糸は芯糸を撚回反転しつつ部分を有した実質無撚で被覆した弾性回復率30%伸長時72.7%、ヤング率15.6(cN/dtex)、交絡数66個/mの被覆性に優れた被覆弾性糸を得た。」 オ 甲6 本件優先日前に頒布された刊行物である甲6(特開2002-146641号公報)には、次の記載がある。 「・・・本発明者らは、ポリウレタン弾性糸、フィラメント糸および水溶性糸を組み合わせてなる複合糸は、撚り合せまたは交絡によって良好に製造でき、撚り合せおよび交絡のいずれの形態であっても上記した優れた特性を備えていることを見出した。・・・」 カ 甲7 本件優先日前の技術常識を示す証拠である甲7(第2版繊維便覧、279頁)には、次の記載がある。 (ア)右欄7行 「c.集束 糸は細長い繊維の集合体であって,繊維相互が簡単にずれたり離れたりしないよう,繊維が互いに束縛し合う構造にする必要がある。」 (イ)右欄11~13行 「(i)撚 撚は糸の集束手段として最も多く用いられている.撚糸は繊維が互いに他の周りを巻回する構造・・・」 (ウ)右欄19~22行 「(ii)交絡 繊維相互の絡まりによって繊維束が集束する.交絡は一般にノズルから噴射される空気の流れや渦の作用で繊維相互の配列を乱すことによって形成される。」 4 取消理由についての当審の判断 (1)記載要件について 事案に鑑み、記載要件から検討する。 ア サポート要件違背について (ア)上記2(3)ア(イ)における「共押出法」について、本件明細書には、段落【0038】に「図1aは、両繊維を共押出した実施態様を示し、・・・。共押出繊維は、実質的に連続的に結合され、・・・」と記載され、図1aから、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)とが連続的に結合されたコア繊維が視認できる。 (イ)「共押出」とは、通常の用語では、複数の樹脂を溶融して一緒に押し出して複合材料を製造することを意味するが、本件発明の場合、そのように解すると、上記(ア)の第1の繊維(4)と第2の繊維(5)とが連続的に結合されたコア繊維が製造できたとしても、本件発明の「前記第1の繊維は、前記第2の繊維と結合する前に延伸されており」という要件を同時に満たすことは不可能である。 (ウ)そうすると、本件発明における「共押出」とは、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)とを、繊維の状態のまま、口金やローラを用いて、両繊維を相互に圧接することで連続的に結合することと解するほかない。 (エ)本件特許明細書の段落【0047】「2種の繊維を交絡法,撚糸法又は共押出法により結合し、この組合せ型コアヤーンを綿シース中に入れる。このようにして、最高の弾性及び回復性、並びに優れた綿の感触を有するヤーンが得られる。」という記載は、上記(ウ)の解釈と符合するものである。 (オ)小括 そうすると、本件発明の、第1の繊維と第2の繊維とが「共押出法」により結合される場合について、本件特許明細書に記載された発明でないということはできないから、サポート要件違背があるということはできない。 イ 明確性要件違背について (ア)「結合点の数」の明確性について 上記2(3)イ(イ)における、撚糸法で結合する場合に何を結合点というかが不明確という理由については、上記第2、1(1)の訂正事項1のうち(i)及び同(5)の訂正事項5のうち(i)並びに同(9)の訂正事項9により、請求項1及び9並びに明細書の段落【0014】から「結合点」に関する特定事項が削除する訂正がなされたため、解消された。 (イ)「十分に高く」の明確性について 上記2(3)イ(ウ)における、「十分に高く」とはどの程度高いか明確でないという取消理由については、上記第2、1(1)訂正事項1の(iii)によって、「十分に高く」は削除されたため、解消された。 (ウ)「好ましく」の明確性について 上記2(3)イ(エ)における、「好ましくは」等が、本件発明3、4、5、12を不明確にしているという理由は、上記第2、1(2)の訂正事項2、同(3)の訂正事項3、同(4)の訂正事項4及び同(8)の訂正事項8により「好ましくは」等が訂正されたため、解消した。 (エ)小括 上記(ア)ないし(ウ)のとおり、取消理由で通知した明確性要件違背は、本件訂正により解消したため、本件発明1~12には、明確性要件違背があるということはできない。 ウ 実施可能要件違背について (ア)共押出法について 上記2(3)ウ(イ)における、「共押出法」による結合が実施困難というという取消理由については、上記アにおいて検討したとおり、本件特許明細書の記載から、第1の繊維と第2の繊維とを圧着することで結合することと解されるから、当業者であれば実施可能といえる。 (イ)実施例について a 訂正前の実施例1~3及び11について 訂正前の実施例1~3及び11については、本件発明の実施例でも比較例でもない部分に付されていたが、前記第2、1(12)の訂正事項12、同(13)の訂正事項13、同(14)の訂正事項14及び同(23)の訂正事項23により、当該部分から実施例1~3及び10の表示が削除されたため、実施可能要件には影響がなくなった。 b 訂正前の実施例4~6について 訂正前の実施例4~6は、本件発明1のように、第1の繊維、第2の繊維を含むコア繊維とそれを被覆する非弾性シース繊維、すなわち3種類の繊維からなるヤーンでなく、いずれも2種類の繊維からなるヤーンであるから、いずれも比較例とすべきものであった。上記第2、1(15)の訂正事項15、同(16)の訂正事項16及び同(17)の訂正事項17により、実施例4~6は、比較例1~3に訂正されたため、実施可能要件には影響がなくなった。 c 訂正前の実施例7について 上記第2、1(18)の訂正事項18により、訂正前の実施例7は、実施例1と訂正された。明細書の段落【0074】の訂正後の記載をみると、T-400が本件発明1の「第2の繊維」に対応し、エラスタンが本件発明1の「第1の繊維」に対応するところ、それらの物性が本件発明1に規定された物性を有するものと推認されるから、上記2(3)ウ(キ)で指摘した取消理由は成り立たない。また、上記2(3)ウ(ク)で訂正前の実施例7の定量的な効果が不明であるとしたが、この点は、平成30年3月20日付けの特許権者からの意見書の10頁に記載のとおりであるし、本件特許明細書の記載によったとしても、定量的な効果が不明であるとしても、それによって、本件発明の実施が困難になるというわけではない。上記2(3)ウ(ク)における取消理由は、成り立たない。訂正後の実施例1について、本件特許明細書の記載によって、実施することが困難であると認めることはできない。 d 訂正前の実施例8、9について 訂正前の実施例8、9は、本件発明7のように、第1の繊維、第2の繊維を含むコア繊維とそれを被覆する非弾性シース繊維、すなわち3種類の繊維からなる織物でなく、いずれも2種類の繊維からなる織物であるから、いずれも比較例とすべきものであった。上記第2、1(21)の訂正事項21、及び同(22)の訂正事項22により、実施例8、9は、比較例4、5に訂正されたため、実施可能要件には影響がなくなった。 e 訂正前の実施例10について 訂正前の段落【0079】には、「実施例3に記載の方法」とあるが、これは、訂正前の「実施例7に記載の方法」の誤記であることは明らかである。そして、上記第2、1(22)の訂正事項22により、訂正前の実施例10は、実施例2と訂正された。訂正後の実施例2は、訂正後の実施例1を織物としたものであって、本件特許明細書の記載によって、実施することが困難であると認めることはできない。 (ウ)小括 上記(ア)ないし(イ)のとおり、本件発明1~12は、本件明細書から当業者が容易に実施できるものであり、実施可能要件違背があるということはできない。 エ 記載要件についてのまとめ 上記ア~ウに検討したように、本件特許明細書及び特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第4項第1号または第6項第1号及び第2号の規定に適合しないものということはできないから、特許法第113条第4号に該当せず、本件発明1~12に係る特許は、取り消されるものではない。 (2)新規性・進歩性について ア 検討手法 本件発明1においては、第1の繊維と第2の繊維との結合方法に、交絡法、共押出法、撚糸法の3つのいずれかによることが規定されており、それらを後記イ~エに場合分けして検討する。 イ 交絡法を用いる場合 (ア)本件発明1のうち、交絡法により結合される場合の発明は、本件発明1において「前記第1及び第2の繊維が交絡法により結合されている場合、結合点の数は50~200ポイント/メートルの範囲内」と規定されている。 (イ)これに対して、甲1ないし甲7のいずれにも、コア繊維として2以上の種類の繊維を交絡法により結合したヤーンを用いることが記載も示唆もされていない。 (ウ)本件申立人が、交絡法により結合することが周知技術である証拠として提示する甲2~6についてみると、上記3(2)ア~オにて摘記したように、2種類以上の糸を交絡した交絡糸について記載されているが、この交絡糸をコア繊維としてシースにより被覆する点について記載されておらず、また、甲1に記載の撚糸法によるコア繊維に代えて、交絡糸を用いることが容易に想到し得ると認めるに足りる証拠はない。 ウ 共押出法を用いる場合 (ア)本件発明1のうち、共押出法により結合される場合の発明は、「前記第1及び第2の繊維は、単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法,共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており、」と規定されている。 (イ)これに対して、甲1~7には、共押出法について何ら記載も示唆も見当たらない。したがって、甲1に記載の撚糸法によるコア繊維に代えて、共押出法により結合された糸を用いることが容易に想到し得ると認めるに足りる証拠はない。 エ 撚糸法を用いる場合 (ア)対比 本件発明1と甲1に記載された発明とを対比すると、本件発明1における「伸縮性コア繊維(2)及び前記コア繊維(2)を被覆する非弾性繊維シース(3)を含む伸縮性ヤーン(1)」において、「前記伸縮性コア繊維(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されている」点(以下「本件相違点」という。)が、甲1には記載も示唆もされていない。 (イ)検討 甲1には、前記第3、3(1)スに摘記した「このようにして得られた合撚糸を、精紡機にて、1.1倍以上のテンションを加え、精紡機のフロントローラーから供給し、その周りを短繊維にてカバーリングして紡績する。」との記載があり、同セに摘記したように、合撚糸(本件発明の「コア繊維」に相当。)のテンションを1.1倍以上1.2倍以下とする旨記載されており、また、同タに摘記した実施例1において、合撚糸に1.19倍のテンションを加える点が記載されているが、そのように加えられたテンションによって、コア繊維がどの程度延伸するかは明らかでなく、「1.12~1.14の範囲内の比で延伸されている」ように調整される本件発明1が甲1~7から当業者であっても容易に想到できるということはできない。 オ 本件発明1についての小括 上記イ~エで検討したように、第1の繊維と第2の繊維との結合が、交絡法、共押出法、撚糸法のいずれによったとしても、本件発明1は、甲1に対して新規性を欠くということはできないし、また、甲1~7に対して進歩性を欠くということはできない。 カ 本件発明2~12について 本件発明2~12についても、本件発明1と同じく本件相違点を構成要件としているから、本件発明2、4~10、12は、甲1に対して新規性を欠くということはできないし、また、本件発明2~12は、甲1~7に対して、進歩性を欠くということはできない。 キ 新規性・進歩性についてまとめ 本件発明1~12は、本件相違点を構成要件とするものであるから、特許法第29条第1項第3号に規定した発明に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるということはできない。したがって、本件発明1~12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものとすることはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701012

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