特許異議申立
2019-700138
伸縮性コアヤーン及びその製造方法
- 審判番号
- 2019-700138
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-064441
- 登録番号
- 特許第6387136号(P6387136)
- 請求日
- 2019年02月20日
- 審決日
- 2020年02月25日
- 公報発行日
- 2020年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
- 【権利者代理人】竹沢 荘一
- 【権利者代理人】竹ノ内 勝
- 【権利者代理人】横堀 芳徳
- 【異議申立人】柏木 里実
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 横溝 顕範
- 審判官 杉山 悟史
- 分類
- P1651.113-YAA(D02G) / P1651.121-YAA(D02G) / P1651.536-YAA(D02G) / P1651.537-YAA(D02G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6387136号発明「伸縮性コアヤーン及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6387136号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第6387136号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6387136号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成23年11月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年11月12日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特願2013-538108号の一部を、平成29年3月29日に新たな特許出願とし、平成30年8月17日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:同年9月5日)がされたものであって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年2月20日
特許異議申立人 柏木里実(以下「申立人」という。)による
本件特許の請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
平成31年4月26日付け
取消理由通知
令和元年8月6日
特許権者による意見書の提出及び訂正請求
(当該訂正請求による訂正を以下「本件訂正」という。)
令和元年9月13日
申立人による意見書の提出
令和元年12月13日付け
訂正拒絶理由通知
令和2年2月4日
特許権者による手続補正書及び意見書の提出
第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである。
なお、訂正箇所に下線を付し、また削除された文字の前後1文字に下線を付した。
(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)
ア.訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に、
「破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ、」
とあるのを、
「破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができ、」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する)
イ.訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ、」
とあるのを、
「前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸長させることができ、」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する)
ウ.訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法、共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており、」
とあるのを、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており、」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する)
エ.訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項1に、
「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり、」
とあるのを、
「1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する)
オ.訂正事項1-5
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてあることを特徴とする伸縮性コアヤーン。」
とあるのを、
「もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり、
前記第1の繊維(4)は、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸されており、もって結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており、
前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維(4,5)を含む前記伸縮性コアヤーン(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されていることを特徴とする伸縮性コアヤーン。」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~10も同様に訂正する)
(2)訂正事項2(請求項5に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項5に、
「結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であり、最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内であること」
とあるのを、
「結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であること」
に訂正する。
(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~10も同様に訂正する)
(3)訂正事項3(請求項6に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項6に、
「1m当たりの撚り数は、300~600の範囲であり、好ましくは350~550の範囲であり、最も好ましくは450~525の範囲であること」
とあるのを、
「1m当たりの撚り数は、450~525の範囲であること」
に訂正する。
(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~10も同様に訂正する)
(4)訂正事項4(請求項8に係る訂正)
ア.訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項8に、
「エラストマーからなり、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができる第1の繊維(4)と、」
とあるのを、
「エラストマーからなり、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができる第1の繊維(4)と、」
に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する)
イ.訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項8に、
「初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができる第2の繊維(5)とを、」
とあるのを、
「初期長の少なくとも20%まで伸長させることができる第2の繊維(5)とを、」
に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する)
ウ.訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項8に、
「かつ前記第1及び第2の繊維(4,5)が単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法、共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で結合する工程を有し、」
とあるのを、
「かつ前記第1及び第2の繊維(4,5)が実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で結合するか、共押出法により連続的に結合する工程であって、」
に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する)
エ.訂正事項4-4
特許請求の範囲の請求項8に、
「前記第1及び第2の繊維を撚糸法により結合する場合、1m当たりの結合点の数又は撚り数を、75~125とは異なり、前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くすることを特徴とする方法。」
とあるのを、
「前記第1及び第2の繊維を撚糸法により結合する場合、1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とし、もって前記撚り数を、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにする工程と;
結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸する工程とを有し、
前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸することを特徴とする方法。」
に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び10も同様に訂正する)
(5)訂正事項5(請求項10に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項10に、
「前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となり、好ましくは3.0~4.0となり、より好ましくは約3.5となるように延伸すること」
とあるのを、
「前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となるように延伸すること」
に訂正する。
(6)訂正事項6(発明の詳細な説明の段落【0014】に係る訂正)
ア.訂正事項6-1
段落【0014】に、
「破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ、」
とあるのを、
「破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができ、」
に訂正する。
イ.訂正事項6-2
段落【0014】に、
「前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ、」
とあるのを、
「前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸長させることができ、」
に訂正する。
ウ.訂正事項6-3
段落【0014】に、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法、共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており、」
とあるのを、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており、」
に訂正する。
エ.訂正事項6-4
段落【0014】に、
「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり、」
とあるのを、
「1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、」
に訂正する。
オ.訂正事項6-5
段落【0014】に、
「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてあることを特徴とする。」
とあるのを、
「もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり、
前記第1の繊維(4)は、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸されており、もって結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており、
前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維(4,5)を含む前記伸縮性コアヤーン(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されていることを特徴とする。」
に訂正する。
(7)訂正事項7(発明の詳細な説明の段落【0015】に係る訂正)
ア.訂正事項7-1
段落【0015】に、
「エラストマーからなり、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができる第1の繊維(4)と、」
とあるのを、
「エラストマーからなり、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができる第1の繊維(4)と、」
に訂正する。
イ.訂正事項7-2
段落【0015】に、
「初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができる第2の繊維(5)とを、」
とあるのを、
「初期長の少なくとも20%まで伸長させることができる第2の繊維(5)とを、」
に訂正する。
ウ.訂正事項7-3
段落【0015】に、
「かつ前記第1及び第2の繊維(4,5)が単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法、共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で結合する工程を有し、」
とあるのを、
「かつ前記第1及び第2の繊維(4,5)が実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で結合するか、共押出法により連続的に結合する工程であって、」
に訂正する。
エ.訂正事項7-4
段落【0015】に、
「前記第1及び第2の繊維を撚糸法により結合する場合、1m当たりの結合点の数又は撚り数を、75~125とは異なり、前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くすることを特徴とする。」
とあるのを、
「前記第1及び第2の繊維を撚糸法により結合する場合、1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とし、もって前記撚り数を、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにする工程と;
結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸する工程とを有し、
前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸することを特徴とする。」
に訂正する。
(8)訂正事項8(発明の詳細な説明の段落【0017】に係る訂正)
ア.訂正事項8-1
段落【0017】に、
「(4) 前記第1及び第2の繊維(4,5)が交絡している場合、結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であり、最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である。」
とあるのを、
「(4) 前記第1及び第2の繊維(4,5)が交絡している場合、結合点の数は、好ましくは80~120ポイント/メートルの範囲内であり、より好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である。」
に訂正する。
イ.訂正事項8-2
段落【0017】に、
「(5) 前記第1及び第2の繊維(4,5)は、撚糸法により結合されており、1m当たりの撚り数は、300~600の範囲であり、より好ましくは350~550の範囲であり、最も好ましくは450~525の範囲である。」
とあるのを、
「(5) 前記第1及び第2の繊維(4,5)は、撚糸法により結合されており、1m当たりの撚り数は、好ましくは450~525の範囲である。」
に訂正する。
(9)訂正事項9(発明の詳細な説明の段落【0021】に係る訂正)
段落【0021】に、
「通常、第1の繊維は、少なくとも400%伸縮させることができ、第2の繊維は、弾性には劣るが、少なくとも20%伸縮させることができる。」
とあるのを、
「通常、第1の繊維は、少なくとも400%伸長させることができ、第2の繊維は、弾性には劣るが、少なくとも20%伸長させることができる。」
に訂正する。
(10)訂正事項10(発明の詳細な説明の段落【0036】に係る訂正)
段落【0036】に、
「これらの繊維は、同程度の弾性特性を有し、一般に初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができる(例えば破断伸びとして)。」
とあるのを、
「これらの繊維は、同程度の弾性特性を有し、一般に初期長の少なくとも400%まで伸長させることができる(例えば破断伸びとして)。」
に訂正する。
(11)訂正事項11(発明の詳細な説明の段落【0064】に係る訂正)
段落【0064】に、
「【0064】
実施例1
番手試験」
とあるのを、
「【0064】
番手試験」
に訂正する。
(12)訂正事項12(発明の詳細な説明の段落【0065】に係る訂正)
段落【0065】に、
「【0065】
実施例2
ヤーン均一性試験」
とあるのを、
「【0065】
ヤーン均一性試験」
に訂正する。
(13)訂正事項13(発明の詳細な説明の段落【0066】に係る訂正)
ア.訂正事項13-1
段落【0066】に、
「【0066】
実施例3
強度、弾性及び破断荷重の測定」
とあるのを、
「【0066】
強度、弾性及び破断荷重の測定」
に訂正する。
イ.訂正事項13-2
段落【0066】に、
「デシテックス番手システムとして、測定した番手(実施例1)を入力した。」
とあるのを、
「デシテックス番手システムとして、測定した番手(上記番手試験)を入力した。」
に訂正する。
(14)訂正事項14(発明の詳細な説明の段落【0067】に係る訂正)
段落【0067】に、
「【0067】
実施例4
綿+T-400のコアスパン」
とあるのを、
「【0067】
比較例1
綿+T-400のコアスパン」
に訂正する。
(15)訂正事項15(発明の詳細な説明の段落【0068】に係る訂正)
段落【0068】に、
「【0068】
実施例5
綿+エラスタンのコアスパン」
とあるのを、
「【0068】
比較例2
綿+エラスタンのコアスパン」
に訂正する。
(16)訂正事項16(発明の詳細な説明の段落【0069】に係る訂正)
段落【0069】に、
「【0069】
実施例6
T-400+エラスタン」
とあるのを、
「【0069】
実施例1
T-400+エラスタン」
に訂正する。
(17)訂正事項17(発明の詳細な説明の段落【0070】に係る訂正)
ア.訂正事項17-1
段落【0070】に、
「【0070】
実施例7
綿+T-400+エラスタン」
とあるのを、
「【0070】
綿+T-400+エラスタン」
に訂正する。
イ.訂正事項17-2
段落【0070】に、
「実施例4及び5の記載と同様にして、T-400+エラスタンのコアヤーンを用いて、綿ヤーンによるコア精紡を行った。」
とあるのを、
「比較例1及び2の記載と同様にして、T-400+エラスタンのコアヤーンを用いて、綿ヤーンによるコア精紡を行った。」
に訂正する。
(18)訂正事項18(発明の詳細な説明の段落【0071】に係る訂正)
段落【0071】に、
「弾性に関する限り、実施例7による本発明のヤーンは、綿/エラスタンのみのヤーンと同等で、綿/T400のみのヤーンより比べて優れていた。」
とあるのを、
「弾性に関する限り、実施例1による本発明のヤーンは、綿/エラスタンのみのヤーンと同等で、綿/T400のみのヤーンより比べて優れていた。」
に訂正する。
(19)訂正事項19(発明の詳細な説明の段落【0072】に係る訂正)
ア.訂正事項19-1
段落【0072】に、
「【0072】
実施例8
綿+T400を用いた伸縮性横糸織物」
とあるのを、
「【0072】
比較例3
綿+T400を用いた伸縮性横糸織物」
に訂正する。
イ.訂正事項19-2
段落【0072】に、
「実施例4に記載の方法で製造した綿+T400のコアスパンヤーンを用いて、横糸ストレッチデニムを製造した。」
とあるのを、
「比較例1に記載の方法で製造した綿+T400のコアスパンヤーンを用いて、横糸ストレッチデニムを製造した。」
に訂正する。
(20)訂正事項20(発明の詳細な説明の段落【0073】に係る訂正)
ア.訂正事項20-1
段落【0073】に、
「【0073】
実施例9
綿+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物」
とあるのを、
「【0073】
比較例4
綿+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物」
に訂正する。
イ.訂正事項20-2
段落【0073】に、
「実施例2に記載の方法で製造した綿+エラスタンのコアスパンヤーンを用いて、横糸ストレッチデニムを製造した。」
とあるのを、
「比較例2に記載の方法で製造した綿+エラスタンのコアスパンヤーンを用いて、横糸ストレッチデニムを製造した。」
に訂正する。
ウ.訂正事項20-3
段落【0073】に、
「横糸:Ne12/1の綿+エラスタンのコアスパン(実施例5)」
とあるのを、
「横糸:Ne12/1の綿+エラスタンのコアスパン(比較例2)」
に訂正する。
(21)訂正事項21(発明の詳細な説明の段落【0074】に係る訂正)
ア.訂正事項21-1
段落【0074】に、
「【0074】
実施例10
綿+T-400+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物
実施例3で記載の方法で製造した綿+T400+エラスタンのコアスパンヤーンを用いて、横糸ストレッチデニムを製造した。」
とあるのを、
「【0074】
実施例2
綿+T-400+エラスタンを用いた伸縮性横糸織物
実施例1で記載の方法で製造した綿+T400+エラスタンのコアスパンヤーンを用いて、横糸ストレッチデニムを製造した。」
に訂正する。
イ.訂正事項21-2
段落【0074】に、
「横糸:Ne12/1の綿+T400+ライクラのコアスパン(実施例7)」
とあるのを、
「横糸:Ne12/1の綿+T400+ライクラのコアスパン(実施例1)」
に訂正する。
(22)訂正事項22(発明の詳細な説明の段落【0075】に係る訂正)
段落【0075】に、
「【0075】
実施例11
試験
デニムの織物試験用サンプルを、実施例8,9及び10で製造した織物から調製した。」
とあるのを、
「【0075】
試験
デニムの織物試験用サンプルを、実施例2,並びに比較例3及び4で製造した織物から調製した。」
に訂正する。
(23)訂正事項23(発明の詳細な説明の段落【0079】に係る訂正)
段落【0079】に、
「【0079】
本発明の織物の伸縮性は、綿/エラスタンのみのヤーンを含む、より弾性の高い織物の伸縮性と同等であった。」
とあるのを、
「【0079】
実施例2で製造した本発明の織物の伸縮性は、綿/エラスタンのみのヤーンを含む、より弾性の高い織物の伸縮性と同等であった。」
に訂正する。
(24)訂正事項24(発明の詳細な説明の段落【0080】に係る訂正)
段落【0080】に、
「【0080】
本発明の織物の残留伸び(3.1)は、伝統的な織物の残留伸び(7.8)の半分未満であり、本発明のヤーンから優れた結果が得られることが確認された。」
とあるのを、
「【0080】
実施例2で製造した本発明の織物の残留伸び(3.1)は、伝統的な織物の残留伸び(7.8)の半分未満であり、本発明のヤーンから優れた結果が得られることが確認された。」
に訂正する。
2.訂正請求に係る補正の可否
令和元年8月6日の訂正請求書は、令和2年2月4日の手続補正書により、以下のように補正されている。
なお、補正箇所に下線を付した。
ア.補正事項1(請求項8に係る補正)
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項8に、上記訂正事項4-4として、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」
とあるのを、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」
に補正する。
イ.補正事項2(発明の詳細な説明の段落【0015】に係る補正)
本件訂正後の段落【0015】に、上記訂正事項7-4として、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」
とあるのを、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」
に補正する。
ウ.補正事項3(訂正請求書に係る補正)
訂正請求書の「7請求の理由」の2)エに、
『(x)「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」を追加する』
とあるのを、
『(x)「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」を追加する』
に補正する。
エ.補正事項4(訂正請求書に係る補正)
訂正請求書の「7請求の理由」の2)キに、
『(x)「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コア繊維(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」を追加する。』
とあるのを、
『(x)「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」を追加する。』
に補正する。
オ.補正事項5(訂正請求書に係る補正)
訂正請求書の「7請求の理由」の3)イ(ア)aに、
「訂正事項1の(ix)は、伸縮性コア繊維(2)における第1の繊維の処理履歴を特定し、限定するものである。訂正事項1の(x)は、撚糸法により結合された第1及び第2の繊維を含む伸縮性コア繊維(2)の処理履歴を特定し、限定するものである。」
とあるのを、
「訂正事項1の(ix)は、伸縮性コアヤーン(2)における第1の繊維の処理履歴を特定し、限定するものである。訂正事項1の(x)は、撚糸法により結合された第1及び第2の繊維を含む伸縮性コアヤーン(2)の処理履歴を特定し、限定するものである。」
に補正する。
カ.補正事項6(訂正請求書に係る補正)
訂正請求書の「7請求の理由」の3)イ(ア)bに、
「訂正事項1の(ix)は、伸縮性コア繊維(2)における第1の繊維の処理履歴を限定するものであり、訂正事項1の(x)は、撚糸法により結合された第1及び第2の繊維を含む伸縮性コア繊維(2)の処理履歴を限定するものであり、」
とあるのを、
「訂正事項1の(ix)は、伸縮性コアヤーン(2)における第1の繊維の処理履歴を限定するものであり、訂正事項1の(x)は、撚糸法により結合された第1及び第2の繊維を含む伸縮性コアヤーン(2)の処理履歴を限定するものであり、」
に補正する。
(2)補正の許否
補正事項1~6は全て、「伸縮性コア繊維(2)」を「伸縮性コアヤーン(2)」に補正するものであり、これは、「伸縮性コア繊維(2)」という用語を、「伸縮性コアヤーン(2)」というその他に記載された用語に統一するためのものであるから、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではないことが明らかであるので、これを認める。
3.一群の請求項
本件訂正前の請求項1~10において、請求項2~10は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、本件訂正前の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはされてないから、本件訂正請求は、一群の請求項である訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項〔1~10〕を訂正単位とするものであり、訂正事項1~5は、一体の訂正事項として取り扱われるものである。
4.本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1-1及び1-2
訂正事項1-1及び1-2は、訂正前の「伸縮」が、伸びと縮みのいずれを意味するものであるのか不明瞭であったところ、「伸長」に訂正することで、伸びを意味することを明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、
「第1の繊維4に適する材料は、エラスタン、スパンデックス等のポリウレタン繊維である。これらの繊維は、同程度の弾性特性を有し、一般に初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができる(例えば破断伸びとして)。・・・」(段落【0036】)
「第2の繊維5は、弾性レベルが比較的低い(第1の繊維より低いが、少なくとも20%はある)が、高い回復性(第1の繊維より高い)を有する。」(段落【0037】)
と記載されており、「破断伸び」が伸長の場合を意味することは自明であるから、訂正事項1-1及び1-2は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項1-1及び1-2は、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項1-1及び1-2は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項1-3
訂正事項1-3は、訂正前の「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように」、及び「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させる」という記載と、「交絡法、共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており」という記載の関係が不明瞭なものであったところ、「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように」と、「交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており」に訂正することで、第1及び第2の繊維(4,5)が単繊維として機能することと、交絡法、共押出法、撚糸法それぞれの場合の結合態様を明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書等には、
「本発明のヤーンのコアにおける結合した第1及び第2の繊維は、従来技術の態様で生じることとは異なり、実質的に単繊維として機能することに注目すべきである。」(段落【0026】)
「交絡法は、開放型又は閉鎖型の交絡ジェット等を用いる当技術分野において公知の技術により行われる。そのシステムは、結合点の数が、・・・となるようになっている。」(段落【0023】)
「本発明の典型的な実施態様では、伸縮性コアヤーンは、撚糸法により結合されている。これは、撚糸を緩く行うのではなく・・・1m当たりの撚り数を、両繊維を結合させるために十分に多くすることを意味する。」(段落【0024】)
「共押出繊維は、実質的に連続的に結合され、交絡繊維は、複数のポイントで結合されている。」(段落【0035】)
と記載されており、「ポイント」が結合部分を意味することは自明であるから、訂正事項1-3は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
よって、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項1-3が特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項1-3は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項1-4
訂正事項1-4は、訂正前の「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり」という記載が不明瞭なものであったところ、「1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり」に訂正することで、撚り数の数値範囲を特定するものであることを明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書等には、
「2成分繊維及びエラスタンの撚糸法において、1m当たりの撚り数は、好ましくは300~600の範囲であり、より好ましくは350~550であり、通常は少なくとも400であり、最も好ましくは450~525である。」(段落【0025】)
と記載されているから、訂正事項1-4は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
よって、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項1-4が特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項1-4は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
エ.訂正事項1-5
(ア)訂正事項1-5A
訂正事項1-5Aは、訂正前の「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」なる記載が、何をどの程度高くするものであるのか不明瞭であったところ、「もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり」に訂正することで、撚り数と結合力の関係であることを明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書等には、
「本発明のヤーンのコアにおける結合した第1及び第2の繊維は、従来技術の態様で生じることとは異なり、実質的に単繊維として機能することに注目すべきである。」(段落【0026】)
「本発明の典型的な実施態様では、伸縮性コアヤーンは、撚糸法により結合されている。これは、撚糸を緩く行うのではなく・・・1m当たりの撚り数を、両繊維を結合させるために十分に多くすることを意味する。」(段落【0024】)
と記載されているから、訂正事項1-5Aは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
よって、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項1-5Aが特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項1-5Aは、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項1-5B
訂正事項1-5Bは、「伸縮性コアヤーン(2)」について、「前記第1の繊維(4)は、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸されており、もって結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており」という構成を追加することにより、「伸縮性コアヤーン(2)」の構成を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書等には、
「好ましい実施態様では、結合後の繊維が回復し、その長さを減少させるように、第1及び第2の繊維を結合する前に、少なくとも第1の繊維を延伸する。」(段落【0026】)
と記載されているから、訂正事項1-5Bは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
そして、訂正事項1-5Bは、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項1-5C
訂正事項1-5Cは、「伸縮性コアヤーン(2)」について、「前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維(4,5)を含む前記伸縮性コアヤーン(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されている」という構成を追加することにより、「非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成するために使用される」ことに限定されている「伸縮性コアヤーン(2)」が、「伸縮性ヤーン(1)」において「1.12~1.14の範囲内の比で延伸されている」状態を経て使用されることをさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書等には、
「本発明によれば、伸縮性コアヤーンを、ステープルファイバーとともに精紡する前に、伸縮性コアヤーンの延伸比が、1.05~1.16の範囲内となり、好ましくは1.12~1.14の範囲内となるように延伸する。」(段落【0029】)
「本発明によると、コアヤーン2を、綿粗糸と複合化する前に延伸する。・・・上記のように、複合コアの延伸比は、1.05~1.16の範囲内であり、好ましくは1.10~1.14の範囲内であり、最も好ましくは1.12~1.14の範囲内である。」(段落【0055】)
と記載されているから、訂正事項1-5Cは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
そして、訂正事項1-5Cは、上記のように、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の「結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であり、最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である」という記載が、どのような条件の時に「最も好ましい」ものであるのか不明瞭であったところ、「結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内である」に訂正することで明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして訂正事項2は、訂正前に2つの選択肢として記載されていたうちの1つを削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項2が特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の「1m当たりの撚り数は、300~600の範囲であり、好ましくは350~550の範囲であり、最も好ましくは450~525の範囲である」という記載が、どのような条件の時に「好ましく」、「最も好ましく」であるのか不明瞭であったところ、「1m当たりの撚り数は、450~525の範囲であること」に訂正することで明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして訂正事項3は、訂正前に3つの選択肢として記載されていたうちの2つを削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項3が特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア.訂正事項4-1及び4-2
訂正事項4-1及び4-2は、請求項8が引用する請求項1について、上記訂正事項1-1及び1-2に係る訂正がなされたことに対応して、請求項8についても同様に訂正前の「伸縮」を「伸長」に訂正するものであるから、上記訂正事項1-1及び1-2と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると共に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項4-3
訂正事項4-3は、請求項8が引用する請求項1について、上記訂正事項1-3に係る訂正がなされたことに対応して、請求項8についても同様に「前記第1及び第2の繊維(4,5)が実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように」、「交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で結合するか、共押出法により連続的に結合する工程」と訂正するものであるから、上記訂正事項1-3と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると共に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項4-4
(ア)訂正事項4-4A
訂正事項4-4Aは、請求項8が引用する請求項1について、上記訂正事項1-4及び1-5Aに係る訂正がなされたことに対応して、請求項8についても同様に「1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とし」、「もって前記撚り数を、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにする工程」と訂正するものであるから、上記訂正事項1-4及び1-5Aと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると共に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項4-4Aは、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項4-4B
訂正事項4-4Bは、請求項8が引用する請求項1について、上記訂正事項1-5Bに係る訂正がなされたことに対応して、請求項8についても同様に「結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸する」と訂正するものであるから、上記訂正事項1-5Bと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると共に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項4-4Bは、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項4-4C
訂正事項4-4Cは、上記補正事項1により、
「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」(以下「訂正事項4-4C’」という。)
に補正されている。
そして、訂正事項4-4C’は、請求項8が引用する請求項1について、上記訂正事項1-5Cに係る訂正がなされたことに対応して、請求項8についても同様に「前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸する」と訂正するものであるから、上記訂正事項1-5Cと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると共に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項4-4Cは、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の「前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となり、好ましくは3.0~4.0となり、より好ましくは約3.5となるように延伸すること」という記載が、どのような条件の時に「好ましく」、「より好ましく」であるのか不明瞭であったところ、「前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となるように延伸すること」に訂正することで明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして訂正事項5は、訂正前に3つの選択肢として記載されていたうちの2つを削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項5が特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6及び7について
訂正事項6及び7は、それぞれ以下のように対応している。
・訂正事項6は、請求項1の発明特定事項を記載した段落【0014】に係る訂正で、上記訂正事項1に対応。
・訂正事項7は、請求項8の発明特定事項を記載した段落【0015】に係る訂正で、上記訂正事項4に対応。
よって、訂正事項6及び7は、訂正前の明細書の記載において、請求項の発明特定事項を記載した箇所の記載を、本件訂正後の請求項のものに整合させるためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項8について
ア.訂正事項8-1
訂正事項8-1は、訂正前の段落【0017】における「80~120ポイント/メートルの範囲内」と「最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内」の関係が不明瞭であったところ、「好ましくは80~120ポイント/メートルの範囲内であり、より好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内」に訂正することで明瞭にするためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書等には、
「交絡法は、開放型又は閉鎖型の交絡ジェット等を用いる当技術分野において公知の技術により行われる。そのシステムは、結合点の数が、50~200ポイント/メートルの範囲内であり、好ましくは80~120ポイント/メートルの範囲内であり、最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内となるようになっている。」(段落【0023】)
と記載されているから、50~200ポイント/メートルの範囲よりも80~120ポイント/メートルの範囲の範囲が好ましく、80~120ポイント/メートルの範囲よりも95~105ポイント/メートルの範囲が好ましいことは明らかであり、訂正事項8-1は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。
よって、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項8-1が特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、訂正事項8-1は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項8-2
訂正事項8-2は、請求項6の発明特定事項を記載した段落【0021】に係る訂正で、上記訂正事項3に対応するものである。
よって、訂正事項8-2は、訂正前の明細書の記載において、請求項の発明特定事項を記載した箇所の記載を、本件訂正後の請求項のものに整合させるためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項9及び10について
訂正事項9及び10は、請求項1に係る上記訂正事項1-1及び1-2、請求項8に係る上記訂正事項4-1及び4-2と同様に、段落【0021】及び【0036】に記載された「伸縮」を「伸長」に訂正することで、伸びを意味することを明瞭にするためのものであるから、上記訂正事項1-1、1-2、4-1及び4-2と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると共に、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、訂正事項9及び10は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項11~13について
ア.訂正事項11~13-1は、段落【0064】、【0065】、【0066】において、明らかに実施例ではない「番手試験」、「ヤーン均一性試験」、「強度、弾性及び破断荷重の測定」について「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」と記載されていた誤記を訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項11~13-1は、新規事項を追加するものでないことが明らかであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであるから、訂正事項11~13-1は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.また、訂正事項13-2は、上記訂正事項11により段落【0064】から「実施例1」が削除されたことに伴い、「実施例1」を「上記番手試験」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(10)訂正事項14及び15について
訂正事項14及び15は、段落【0067】及び【0068】において、明らかに実施例ではなく比較例とすべきものについて「実施例4」及び「実施例5」と記載されていた誤記を、「比較例1」及び「比較例2」に訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項14及び15は、新規事項を追加するものでないことが明らかであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであるから、訂正事項14及び15は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(11)訂正事項16について
訂正事項16は、上記訂正事項11~13によって実施例1~3が削除され、上記訂正事項14及び15によって実施例4及び5が比較例1及び2に訂正されたことに伴い、段落【0069】に記載された「実施例6」を「実施例1」に繰り上げるために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(12)訂正事項17について
ア.訂正事項17-1
訂正事項17-1は、段落【0070】において、明らかに実施例ではないものについて「実施例7」と記載されていた誤記を訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項17-1は、新規事項を追加するものでないことが明らかであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであるから、訂正事項17-1は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項17-2
訂正事項17-2は、上記訂正事項14及び15によって段落【0067】及び【0068】に記載されていた「実施例4」及び「実施例5」が、「比較例1」及び「比較例2」に訂正されたことに伴い、段落【0070】に記載された「実施例4及び5」を「比較例1及び2」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(13)訂正事項18について
訂正事項18は、上記訂正事項16によって「実施例6」が「実施例1」に訂正され、上記訂正事項17-1によって「実施例7」が削除されたことに伴い、段落【0071】に記載された「実施例7」を「実施例1」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(14)訂正事項19について
ア.訂正事項19-1
訂正事項19-1は、段落【0072】において、明らかに実施例ではなく比較例とすべきものについて「実施例8」と記載されていた誤記を、「比較例3」に訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項19-1は、新規事項を追加するものでないことが明らかであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであるから、訂正事項19-1は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項19-2
訂正事項19-2は、
訂正事項19-2は、上記訂正事項14によって段落【0067】に記載されていた「実施例4」が、「比較例1」に訂正されたことに伴い、段落【0072】に記載された「実施例4」を「比較例1」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(15)訂正事項20について
ア.訂正事項20-1
訂正事項20-1は、段落【0073】において、明らかに実施例ではなく比較例とすべきものについて「実施例9」と記載されていた誤記を、「比較例4」に訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項20-1は、新規事項を追加するものでないことが明らかであり、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであるから、訂正事項20-1は、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項20-2及び20-3
訂正事項20-2及び20-3は、上記訂正事項11~13によって実施例1~3が削除され、上記訂正事項15によって実施例5が比較例2に訂正されたことに伴い、段落【0073】に記載された「実施例2」及び「実施例5」を、「比較例2」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(16)訂正事項21について
訂正事項21-1及び21-2は、上記訂正事項11~13によって実施例1~3が削除され、上記訂正事項16によって実施例6が実施例1に訂正され、上記訂正事項17-1によって実施例7が削除され、上記訂正事項19-1により実施例8が比較例3に訂正され、上記訂正事項20-1により実施例9が比較例4に訂正されたことに伴い、段落【0074】に記載された「実施例10」を「実施例2」に、「実施例3」を「実施例1」に、「実施例7」を「実施例1」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(17)訂正事項22について
訂正事項22のうち、「実施例11」を削除する訂正は、明らかに実施例ではないものについて「実施例11」と記載されていた誤記を訂正しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項を追加するものでないことが明らかであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項22のうち、「実施例8,9及び10」を「実施例2,並びに比較例3及び4」とする訂正は、上記訂正事項19-1により実施例8が比較例3に訂正され、上記訂正事項20-1により実施例9が比較例4に訂正され、上記訂正事項21により実施例10が実施例2に訂正されたことに伴って訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(18)訂正事項23及び24について
訂正事項23及び24は、訂正前の段落【0079】及び【0080】において、「本発明の織物」の具体的な実施例番号が明記されていなかったところ、段落【0074】に記載されていた織物の製造に関する実施例が上記訂正事項21により「実施例2」に訂正されたことに伴い、「実施例2で製造した本発明の織物」と訂正することで、具体的な実施例を明記して明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(19)訂正事項6~24について
明細書に係る訂正である訂正事項6~24は、請求項1~10の全てについて訂正が請求されているものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。
5.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~10〕についての訂正を認める。
第3.本件発明
本件訂正が認められることにより、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、令和2年2月4日の手続補正書の訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成するために使用される伸縮性コアヤーン(2)であって、弾性特性を有する第1及び第2の繊維(4,5)を含み、前記第1の繊維(4)はエラストマーであり、前記第2の繊維(5)はポリエステル系重合体又は共重合体であり、前記第2の繊維(5)の含有量は前記伸縮性コアヤーン(2)の60~90重量%の範囲であり、
破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができ、前前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸長させることができ、かつ前記第1の繊維(4)より高い弾性回復性を有し、
前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており、前記第1及び第2の繊維が交絡法により結合されている場合、結合点の数は50~200ポイント/メートルの範囲内であり、前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり、
前記第1の繊維(4)は、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸されており、もって結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるようになっており、
前記撚糸法により結合された前記第1及び第2の繊維(4,5)を含む前記伸縮性コアヤーン(2)は1.12~1.14の範囲内の比で延伸されていることを特徴とする伸縮性コアヤーン。
【請求項2】
前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より高い、少なくとも93%の弾性回復性を有していることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性コアヤーン。
【請求項3】
前記第1の繊維(4)はポリオレフィン又はポリウレタンのエラストマーであり、前記第2の繊維(5)はエラストマルティスター2成分繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性コアヤーン。
【請求項4】
前記第1の繊維(4)はエラスタンであり、前記第2の繊維(5)はPTT/PET2成分繊維であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮性コアヤーン。
【請求項5】
前記第1及び第2の繊維(4,5)が交絡している場合、結合点の数は、80~120ポイント/メートルの範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の伸縮性コアヤーン。
【請求項6】
前記第1及び第2の繊維(4,5)は、撚糸法により結合されており、1m当たりの撚り数は、450~525の範囲であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の伸縮性コアヤーン。
【請求項7】
前記伸縮性コアヤーン(2)中の前記第2の繊維(5)の含有量は75~87重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の伸縮性コアヤーン。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の伸縮性コアヤーンの製造方法であって、
エラストマーからなり、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができる第1の繊維(4)と、
ポリエステル系重合体又は共重合体からなり、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸長させることができる第2の繊維(5)とを、
前記第2の繊維(5)の含有量が、前記伸縮性コアヤーン(2)の60~90重量%の範囲となり、かつ前記第1及び第2の繊維(4,5)が実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で結合するか、共押出法により連続的に結合する工程であって、
前記第1及び第2の繊維を交絡法により結合する場合、結合点の数を50~200ポイント/メートルの範囲内とし、
前記第1及び第2の繊維を撚糸法により結合する場合、1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とし、もって前記撚り数を、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにする工程と;
結合後における前記伸縮性コアヤーン(2)が回復し、その長さを減少させるように、前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸する工程とを有し、
前記第1及び第2の繊維(4,5)を前記撚糸法により結合した場合、前記伸縮性コアヤーン(2)を1.12~1.14の範囲内の比で延伸することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より高い、少なくとも93%の弾性回復性を有していることを特徴とする請求項8に記載の伸縮性コアヤーンの製造方法。
【請求項10】
前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となるように延伸することを特徴とする請求項8又は9に記載の伸縮性コアヤーンの製造方法。」
第4.取消理由の概要
本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した平成31年4月26日付けの取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、申立人が特許異議申立書において申し立てた理由は、全て通知された。
1)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2)本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
4)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
5)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
1.理由1(特許法第36条第6項第2号)について
本件特許の請求項1、5、6、8、10、及び請求項1、5、6、8を引用する請求項2~4、7、9に係る発明は、下記(1)~(9)に示すとおり明確でない。
(1)請求項1の「破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ、前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ」は、不明確である。
(2)請求項1の「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように」、「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させる」なる記載は、不明確である。
(3)請求項1の「少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており」なる記載は、不明確である。
(4)請求項1の「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり」なる記載は、不明確である。
(5)請求項1の「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」なる記載は、何をどの程度高くするのか不明確である。
(6)請求項2の「93%の弾性回復性」は、その測定条件が不明確である。
(7)請求項5の「最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である」なる記載は、不明確である。
(8)請求項6の「好ましくは350~550の範囲であり、最も好ましくは450~525の範囲である」なる記載は、不明確である。
(9)請求項10の「好ましくは3.0~4.0となり、より好ましくは約3.5となるように延伸すること」なる記載は、不明確である。
2.理由2(特許法第36条第4項第1号)について
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、下記(1)~(7)に示すとおり、本件発明1~10に係る発明を当業者が正確に理解し、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
(1)下記(ア)~(シ)に示すとおり、発明の詳細な説明には、本件発明1~10を実施した実施例、及びその効果が記載されていない。
(ア)段落【0064】の実施例1は、番手試験の機器に関する説明であって、本件発明1~10の実施例ではない。
(イ)段落【0065】の実施例2は、ヤーン均一性試験の機器、パラメータに関する説明であって、本件発明1~10の実施例ではない。
(ウ)段落【0066】の実施例3は、強度、弾性及び破断荷重の測定の機器、パラメータに関する説明であって、本件発明1~10の実施例ではない。
(エ)段落【0067】の実施例4は、綿+T-400のコアスパンを用いたコア精紡に関する説明であって、第1及び第2の繊維からなる伸縮性コアヤーンではないから、本件発明1~10の実施例ではない。
(オ)段落【0068】の実施例5は、綿+エラスタンのコアスパンを用いたコア精紡に関する説明であって、第1及び第2の繊維からなる伸縮性コアヤーンではないから、本件発明1~10の実施例ではない。
(カ)段落【0069】の実施例6は、T-400+エラスタンのコアヤーンの製造に関する説明であって、本件発明1~10の実施例とはいえない。
(キ)段落【0070】の実施例7は、T-400とエラスタンをどのようにしてコアヤーンとしたかについて、交絡法、共押出法、撚糸法のいずれも記載されておらず、伸縮性コアヤーンにおける第2の繊維の含有量の数値、第1の繊維の破断伸びの数値、第1の繊維と第2の繊維の弾性特性及び弾性回復性の比較、第2の繊維の破断伸び及び弾性回復性の数値、交絡法による結合点の数、第1及び第2の繊維の結合力の高さのいずれも記載されていないから、本件発明1~10の実施例とはいえない。
(ク)段落【0072】の実施例8は、実施例4のコアスパンヤーンを用いた伸縮性横糸織物の製造に関する説明であり、実施例4が本件発明1~10の実施例ではないから、実施例8も本件発明1~10の実施例ではない。
(ケ)段落【0073】の実施例9は、綿+エラスタンのコアスパンヤーンを用いた伸縮性横糸織物の製造に関する説明であり、第1及び第2の繊維からなる伸縮性コアヤーンではないから、本件発明1~10の実施例ではない。
(コ)段落【0074】の実施例10は、T-400とエラスタンをどのようにしてコアヤーンとしたかについて、交絡法、共押出法、撚糸法のいずれも記載されておらず、伸縮性コアヤーンにおける第2の繊維の含有量の数値、第1の繊維の破断伸びの数値、第1の繊維と第2の繊維の弾性特性及び弾性回復性の比較、第2の繊維の破断伸び及び弾性回復性の数値、交絡法による結合点の数、第1及び第2の繊維の結合力の高さのいずれも記載されていないから、本件発明1~10の実施例とはいえない。
(サ)段落【0075】~【0078】の実施例11は、デニムの織物試験用サンプルの調製、試験手順、計算の説明であって、本件発明1~10の実施例ではない。
(シ)各実施例は、その効果が不明である。
(2)本件発明1の「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように」、「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させる」なる発明特定事項について、第1及び第2の繊維が「単繊維として」機能する状態とは、交絡法、共押出法、撚糸法それぞれの場合においてどのような状態であるのか、発明の詳細な説明には記載されておらず、理解も実施もできない。
(3)本件発明1の「少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており」なる発明特定事項について、第1及び第2の繊維が「複数のポイント(P)で互いに結合」されている状態とは、交絡法、共押出法、撚糸法それぞれの場合においてどのような状態であるのか、発明の詳細な説明には記載されておらず、理解も実施もできない。
(4)本件発明1の「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり」なる発明特定事項について、~75とすることは記載されておらず、「十分に多くする」と記載されているから~75とすることは否定されており、理解も実施もできない。
(5)本件発明1の「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」なる発明特定事項について、何をどの程度高くすれば「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与える」ことになるのか、発明の詳細な説明には記載されておらず、理解も実施もできない。
(6)本件発明1の「共押出法」の場合における「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてあること」なる発明特定事項について、発明の詳細な説明には、第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるための共押出法の諸条件が記載されておらず、理解も実施もできない。
(7)本件発明2の「93%の弾性回復性」なる発明特定事項について、発明の詳細な説明には、何%まで伸長するのか、どの程度経過した後の回復率なのか等の弾性回復率の測定条件が記載されておらず、要求される弾性回復性について理解も実施もできない。
3.理由3(特許法第36条第6項第1号)について
本件発明1~10は、上記理由2で述べたように、発明の詳細な説明の記載がその実施をすることができるように明確かつ十分なものではないから、「大きな弾性、及び優れた伸縮回復性を有し、特に使用に伴い、繊維を通してコアが表出することのない伸縮性ヤーンを構成するために使用される伸縮性コアヤーンであって、これを被覆する非弾性繊維シースとともに伸縮性ヤーンを構成する伸縮性コアヤーンを提供すること」(段落【0012】)という技術的課題を解決できないものといわざるを得ない。
4.理由4(特許法第29条第1項第3号)について
本件発明1~10は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
5.理由5(特許法第29条第2項)について
本件発明1~10は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-297646号公報(甲第1号証)
第5.当審の判断
1.理由1(特許法第36条第6項第2号)について
(1)訂正前の請求項1における「前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができ」及び「前記第2の繊維(5)は、前記第1の繊維(4)より弾性特性には劣るが、初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができ」という記載は、「伸縮」について、一般的に「伸縮」は伸びと縮みの両方を意味するから、初期長の20%まで縮むことができることを文言上含んでいたところ、本件訂正によって「伸縮」が「伸長」に訂正(上記訂正事項1-1及び1-2)したことで、伸びを意味するものであることが明確となった。
請求項8における「エラストマーからなり、初期長の少なくとも400%まで伸縮させることができる第1の繊維(4)」及び「初期長の少なくとも20%まで伸縮させることができる第2の繊維(5)」についても同様に、本件訂正によって「伸縮」が「伸長」に訂正(上記訂正事項4-1及び4-2)したことで明確となった。
(2)訂正前の請求項1における「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように」、「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させる」という記載は、第1及び第2の繊維が「共押出法」により結合されている場合は、第1及び第2の繊維が溶融により完全に一体化して一本の繊維となっているから単繊維といえるが、第1及び第2の繊維が「交絡法」、又は「撚糸法」により結合されている場合は、第1及び第2の繊維は組み合わされているだけで完全には一体化していないから単繊維とはいえず、「単繊維として」なる構成が、どのような技術的な意味を持つのか明確でなかったところ、本件訂正により、「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており、」及び「前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させる」に訂正(上記訂正事項1-3及び1-5)したことで、交絡法及び撚糸法では複数の部分での結合であり、共押出法では連続的な結合であることが明確になり、また、完全に一体化した単繊維ではなく、実質的に単繊維として機能すればよいことが明確となった。
請求項8における「前記第1及び第2の繊維(4,5)が単繊維として伸縮及び回復するように、交絡法、共押出法又は撚糸法により、少なくとも複数のポイント(P)で結合する工程」及び「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させる」についても同様に、本件訂正によって「前記第1及び第2の繊維(4,5)が実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で結合するか、共押出法により連続的に結合する工程」及び「前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させる」に訂正(上記訂正事項4-3及び4-4)したことで明確となった。
(3)訂正前の請求項1における「少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており」という記載は、「複数のポイント(P)」が、交絡法、共押出法、撚糸法それぞれの場合においてどのようなものであるのか明確でなかったところ、本件訂正により、「交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており」に訂正(上記訂正事項1-3)したことで、交絡法と撚糸法の場合は複数の部分、共押出法の場合は連続的な結合であることが明確となった。
訂正前の請求項8における「少なくとも複数のポイント(P)で結合する工程」も同様に、本件訂正によって「交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で結合するか、共押出法により連続的に結合する工程」に訂正(上記訂正事項4-3)したことで明確となった。
(4)訂正前の請求項1における「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり」なる記載は、75~125と異なるどのような数値範囲であるか明確でなかったところ、本件訂正により、「1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり」に訂正(上記訂正事項1-4)したことで明確となった。
訂正前の請求項8における「1m当たりの結合点の数又は撚り数を、75~125とは異なり」も同様に、本件訂正により「1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とし」に訂正(上記訂正事項4-4)したことで明確となった。
(5)訂正前の請求項1における「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」という記載は、何をどの程度高くするのか明確でなかったところ、本件訂正により、「もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり」に訂正(上記訂正事項1-5A)したことで明確となった。
訂正前の請求項8における「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くすること」も同様に、本件訂正により、「もって前記撚り数を、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにする工程」に訂正したことで明確となった。
(6)請求項2の「93%の弾性回復性」の測定条件については、本件特許明細書等を参酌すれば、段落【0066】にUSTERTENSORAPID-3(Uster社,スイス)を用いた測定パラメータが記載されており、また繊維の弾性率測定に関する技術常識を鑑みれば、DIN53835等の規格に準じた測定条件は、当業者であれば理解が可能であるから、請求項2の記載は明確である。
(7)訂正前の請求項5における「最も好ましくは95~105ポイント/メートルの範囲内である」という記載は明確でなかったところ、本件訂正により、当該記載を削除(上記訂正事項2)したことで明確になった。
(8)訂正前の請求項6における「1m当たりの撚り数は、300~600の範囲であり、好ましくは350~550の範囲であり、最も好ましくは450~525の範囲である」という記載は明確でなかったところ、本件訂正により、「1m当たりの撚り数は、450~525の範囲である」に訂正(上記訂正事項3)したことで明確となった。
(9)訂正前の請求項10における「前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となり、好ましくは3.0~4.0となり、より好ましくは約3.5となるように延伸すること」という記載は明確でなかったところ、本件訂正により、「前記第1の繊維(4)を、前記第2の繊維(5)と結合する前に、延伸比が2.5~4.2となるように延伸すること」に訂正(上記訂正事項5)したことで明確となった。
(10)小括
以上のとおり、本件特許の請求項1~10の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしているから、その特許は特許法第113条第4号に該当するものとはいえない。
2.理由2(特許法第36条第4項第1号)について
(1)本件訂正により、本件特許明細書等は、以下のように訂正された。
(ア)段落【0064】の実施例1は、実施例ではなくなった
(イ)段落【0065】の実施例2は、実施例ではなくなった
(ウ)段落【0066】の実施例3は、実施例ではなくなった
(エ)段落【0067】の実施例4は、比較例1になった
(オ)段落【0068】の実施例5は、比較例2になった
(カ)段落【0069】の実施例6は、実施例1になった
(キ)段落【0070】の実施例7は、段落【0069】に記載されたコアヤーンを用いて作成された、本発明のヤーンを示す実施例1になった
(ク)段落【0072】の実施例8は、比較例3になった
(ケ)段落【0073】の実施例9は、比較例4になった
(コ)段落【0074】の実施例10は、段落【0070】に記載された実施例1のヤーンを用いた織物を示す実施例2になった
(サ)段落【0075】の実施例11は、実施例ではなくなった
上記(ア)~(サ)を踏まえ、本件特許明細書等によれば、実施例1として、段落【0069】のコアヤーンを用いて段落【0070】のヤーンが作成できること、及び実施例2として、段落【0074】の織物が作成できることが理解できる。
(シ)実施例1(段落【0069】~【0070】)のヤーンは、比較例に比して弾性その他のパラメータは同等かより優れたものであり(段落【0071】)、実施例2(段落【0074】)の織物は、より弾性の高い織物の伸縮性と同等(段落【0079】)、かつ残留伸びは伝統的な織物の残留伸びの半分未満(段落【0080】)という効果を有していることが記載されている。
(2)訂正前の請求項1における「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、単繊維として伸縮及び回復するように」及び「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させる」という記載は、本件訂正により、「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように、交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており、」及び「前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させる」に訂正(上記訂正事項1-3及び1-5)したから、本件発明1は、交絡法及び撚糸法では複数の部分での結合であり、共押出法では連続的な結合であることが明確になり、また、完全に一体化した単繊維ではなく、実質的に単繊維として機能すればよいものである。
そして、本件特許明細書等には、
「本発明のヤーンのコアにおける結合した第1及び第2の繊維は、従来技術の態様で生じることとは異なり、実質的に単繊維として機能することに注目すべきである。」(段落【0026】)
「交絡法は、開放型又は閉鎖型の交絡ジェット等を用いる当技術分野において公知の技術により行われる。そのシステムは、結合点の数が、・・・となるようになっている。」(段落【0023】)
「本発明の典型的な実施態様では、伸縮性コアヤーンは、撚糸法により結合されている。これは、撚糸を緩く行うのではなく・・・1m当たりの撚り数を、両繊維を結合させるために十分に多くすることを意味する。」(段落【0024】)
「共押出繊維は、実質的に連続的に結合され、交絡繊維は、複数のポイントで結合されている。」(段落【0035】)
と記載されているから、本件発明1の上記構成は、発明の詳細な説明に実施可能な程度に記載されている。
(3)訂正前の請求項1における「少なくとも複数のポイント(P)で互いに結合されており」という記載は、本件訂正により、「交絡法又は撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されているか、共押出法により連続的に結合されており」に訂正(上記訂正事項1-3)したから、本件発明1は、交絡法と撚糸法の場合は複数の部分、共押出法の場合は連続的な結合である。
そして、本件特許明細書等には、
「交絡法は、開放型又は閉鎖型の交絡ジェット等を用いる当技術分野において公知の技術により行われる。そのシステムは、結合点の数が、・・・となるようになっている。」(段落【0023】)
「本発明の典型的な実施態様では、伸縮性コアヤーンは、撚糸法により結合されている。これは、撚糸を緩く行うのではなく・・・1m当たりの撚り数を、両繊維を結合させるために十分に多くすることを意味する。」(段落【0024】)
「共押出繊維は、実質的に連続的に結合され、交絡繊維は、複数のポイントで結合されている。」(段落【0035】)
と記載されているから、本件発明1の上記構成は、発明の詳細な説明に実施可能な程度に記載されている。
さらに念のため、共押出法について検討する。
共押出法について、発明の詳細な説明には、「図1aは、両繊維を共押出した実施態様を示し、・・・。共押出繊維は、実質的に連続的に結合され、・・・」(段落【0035】)と記載され、【図1a】から、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)とが連続的に結合されたコア繊維が視認できる。
ここで「共押出」とは、通常の用語では、複数の樹脂を溶融して一緒に押し出して複合材料を製造することを意味するが、本件発明1の場合、そのように解すると、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)とが連続的に結合された伸縮性コアヤーンが製造できたとしても、本件発明1の「前記第1の繊維(4)は、前記第2の繊維(5)と結合する前に延伸されており」という要件を同時に満たすことは不可能である。
そうすると、本件発明1における「共押出」とは、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)とを、繊維の状態のまま、口金やローラを用いて、両繊維を相互に圧接することで連続的に結合することと解するほかない。
そしてこの理解は、発明の詳細な説明における「2種の繊維を交絡法、撚糸法又は共押出法により結合し、この組合せ型コアヤーンを綿シース中に入れる。このようにして、最高の弾性及び回復性、並びに優れた綿の感触を有するヤーンが得られる。」(段落【0044】)という記載と符合するものである。
したがって、共押出法の場合についても、発明の詳細な説明に実施可能な程度に記載されている。
(4)訂正前の請求項1における「1m当たりの結合点の数又は撚り数は、75~125とは異なり」という記載は、本件訂正により、「1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり」に訂正(上記訂正事項1-4)したから、本件発明1は、1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とするものである。
そして、本件特許明細書等には、
「2成分繊維及びエラスタンの撚糸法において、1m当たりの撚り数は、好ましくは300~600の範囲であり、より好ましくは350~550であり、通常は少なくとも400であり、最も好ましくは450~525である。」(段落【0025】)
と記載されているから、本件発明1の上記構成は、発明の詳細な説明に実施可能な程度に記載されている。
(5)訂正前の請求項1における「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてある」という記載は、本件訂正により、「もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり」に訂正(上記訂正事項1-5)し、それ以前の「前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、」との記載と合わせみれば、本件発明1は、撚糸法の場合において1m当たりの撚り数を350~550の範囲内とすることによって、第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるものである。
そして、本件特許明細書等には、
「本発明のヤーンのコアにおける結合した第1及び第2の繊維は、従来技術の態様で生じることとは異なり、実質的に単繊維として機能することに注目すべきである。」(段落【0026】)
「本発明の典型的な実施態様では、伸縮性コアヤーンは、撚糸法により結合されている。これは、撚糸を緩く行うのではなく・・・1m当たりの撚り数を、両繊維を結合させるために十分に多くすることを意味する。」(段落【0024】)
「2成分繊維及びエラスタンの撚糸法において、1m当たりの撚り数は、好ましくは300~600の範囲であり、より好ましくは350~550であり、通常は少なくとも400であり、最も好ましくは450~525である。」(段落【0025】)
と記載されているから、本件発明1の上記構成は、発明の詳細な説明に実施可能な程度に記載されている。
(6)訂正前の請求項1における「前記第1及び第2の繊維を単繊維として伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるように十分に高くしてあること」は、共押出法の場合を含むものであったところ、本件訂正により、「もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあり」に訂正(上記訂正事項1-5)したから、共押出法の場合を含むものではなくなった。
そして撚糸法の場合については、上記(5)で述べたとおり、発明の詳細な説明に実施可能な程度に記載されている。
(7)本件発明2の「93%の弾性回復性」については、上記1.(6)で述べたとおり、段落【0066】のUSTER TENSORAPID-3(Uster社,スイス)を用いた測定パラメータに関する記載や、繊維の弾性率測定に関する技術常識を鑑みれば、DIN53835等の規格に準じた測定条件は、当業者であれば理解が可能である。
(8)小括
以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~10を、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項の規定を満たしているから、その特許は特許法第113条第4号に該当するものとはいえない。
3.理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)上記理由2.で述べたとおり、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~10を、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、「大きな弾性、及び優れた伸縮回復性を有し、特に使用に伴い、繊維を通してコアが表出することのない伸縮性ヤーンを構成するために使用される伸縮性コアヤーンであって、これを被覆する非弾性繊維シースとともに伸縮性ヤーンを構成する伸縮性コアヤーンを提供すること」(段落【0012】)という技術的課題を解決できるものである。
(2)さらに念のため検討する。
ア.本件発明の課題は、「大きな弾性、及び優れた伸縮回復性を有し、特に使用に伴い、繊維を通してコアが表出することのない伸縮性ヤーンを構成するために使用される伸縮性コアヤーンであって、これを被覆する非弾性繊維シースとともに伸縮性ヤーンを構成する伸縮性コアヤーンを提供すること」(段落【0012】)にある。
イ.本件発明1、8の各構成は、段落【0002】、【0014】、【0015】、【0020】~【0026】、【0028】~【0030】、【0034】~【0037】、【0041】、【0045】~【0047】、【0055】、【0069】、【0070】等に記載されている。
本件発明2~7、9、10の各構成は、段落【0017】、【0026】、【0038】等に記載されている。
なお、共押出法については、上記2.(3)で述べたとおりである。
ウ.段落【0026】、【0041】、【0079】等の記載によれば、本件発明の構成を備える伸縮性コアヤーンは、最終的な織物に伸縮性と優れた回復性を同時にもたらすという効果が、段落【0029】の記載によれば、伸縮性コアヤーンを1.12~1.14の範囲の比で延伸したヤーンは、ステープルファイバーを通してコアが表出することが全くないという効果がある。
エ.よって、本件発明1~10は、発明の詳細な説明に記載されたものであって、本件発明1~10は、大きな弾性、及び優れた伸縮回復性という課題と、繊維を通してコアが表出することがないという課題のいずれも解決しているものである。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~10は、本件発明の課題を解決できるものであって発明の詳細な説明に記載した発明であり、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしているから、その特許は特許法第113条第4号に該当するものとはいえない。
4.理由4(特許法第29条第1項第3号)について
(1)刊行物の記載
引用文献1(特開2008-297646号公報(甲第1号証))には、以下の記載がある。
ア.「【請求項1】
芯が少なくとも2本以上のフィラメント糸の合撚糸であり、鞘が短繊維からなることを特徴とする、芯鞘構造複合紡績糸。
・・・
【請求項3】
請求項1又は2記載の芯鞘構造複合紡績糸であって、芯がポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸との合撚糸からなるストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸。
・・・
【請求項5】
鞘がセルロース系短繊維からなり、該セルロース系短繊維の含有率が重量比率で60%以上である、請求項3又は4記載のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は糸の抗ピリング性に優れ、更には糸の抗ピリング性及び均整性に優れる芯鞘構造複合紡績糸及び該芯鞘構造複合紡績糸を用いた布帛に関する。」
ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたものであり、その解決しようとする課題は、抗ピリング性及びソフト感に優れる芯鞘構造複合紡績糸、及び、該芯鞘構造複合紡績糸を用いた、毛羽が発生しにくい、ソフトな風合いの布帛を提供することである。
【0005】
また、特に、抗ピリング性及びソフト感に優れるとともに、伸長率及び回復率がともに良好な優れたストレッチ性を有する芯鞘構造複合紡績糸、及び、該芯鞘構造複合紡績糸を用いた、毛羽が発生しにくく、ソフトな風合いで、伸長率及び回復率がともに良好な布帛を提供することである。」
エ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
・・・
【0009】
従来から、長短複合糸は、・・・本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、芯が2本以上のフィラメント糸の合撚糸であることにより、1本のフィラメント糸(長繊維)を芯にした従来の芯鞘構造の複合紡績糸では達成困難であった要求特性を満たす芯鞘構造の複合紡績糸を得ることができ、また、鞘成分の短繊維が芯成分の2本以上のフィラメント糸の間に巻き込まれて拘束されて、毛羽の発生が抑制されることから、抗ピリング性に優れた複合紡績糸を実現することができる。また、撚り数を比較的低く設定できるので、ソフト感に優れる複合紡績糸を実現できる。さらに、本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、芯成分が2本以上のフィラメント糸の合撚糸であることから、外力を受けたときの芯成分と鞘成分(短繊維)間の摩擦力が大きく、鞘成分(短繊維)の糸の平行方向(軸線方向)へのずれが生じにくい、均整性の高い紡績糸になるという利点もある。」
オ.「【0013】
2本以上のフィラメント糸の撚り方向は、・・・また、撚り数(インチ当たり回数)は、撚り合せるフィラメント糸の種類によっても異なるが、撚り数が少な過ぎると、撚り合せるフィラメント糸間で剥離が生じやすくなって、後工程での取り扱いが困難となる傾向となり、また、撚り数が多過ぎると、後工程において、合撚糸と鞘を構成する短繊維との交絡度合いが低くなって、芯と鞘のずれが多くなり、毛羽が発生しやすい傾向となる。従って、一般的には2本以上のフィラメント糸の撚り数は5~20回(好ましくは8~16回)程度である。」
カ.「【0018】
撚り数(実撚りの回数)は、紡績糸の太さ(英式綿番手)との関係から、下記式(1)で定義される、撚り係数Kが3.6~5.0となる範囲となる撚り数とする。
【0019】
【数1】
」
キ.「【0023】
芯となる合撚糸の一方のフィラメント糸であるポリエステル系複合長繊維糸としては、少なくとも一層としてポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層を含むサイドバイサイド型複合または偏芯シースコア型複合のポリエステル系複合長繊維糸が好ましく、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層と、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層とがサイドバイサイド型または偏芯シースコア型に複合されたポリエステル系複合長繊維糸であり、とりわけ好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層と、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層とがサイドバイサイド型に複合されたポリエステル系複合長繊維糸である。
【0024】
ポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするエステルポリマーの層であり、エチレンテレフタレート単位以外の他のエステル結合を形成可能な共重合成分を20モル%以下の割合で含まれていてもよい。共重合可能な化合物として、たとえば、イソフタル酸、・・・
【0025】
ポリトリメチレンテレフタレートを主体とするポリエステル層は、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするエステルポリマー(すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステル)の層であり、トリメチレンテレフタレート単位以外の他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよい。共重合可能な化合物として、例えば、イソフタル酸、・・・」
ク.「【0028】
かかるポリエステル系複合長繊維糸は、潜在捲縮性を有することから、伸縮性(ゴム弾性)を有し、特に、回復率、耐薬品性、長期耐久性、寸法安定性がポリウレタン系弾性糸に比べて優れている。
【0029】
一方、合撚糸の他方のフィラメント糸であるポリウレタン系弾性糸は、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタンなどのポリウレタン系弾性材料からなり、通常の紡糸手段で得られたものが使用され、糸の太さは44~145dtx程度が好ましい。ポリウレタン系弾性糸は極めて良好な伸長性を有するが、ポリエステル系複合長繊維糸に比べて、耐薬品性、長期耐久性、寸法安定性が劣る。」
ケ.「【0030】
ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸とからなる合撚糸は、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸を3~5倍に伸長した状態で撚り数(インチ当り回数)5~20回(好ましくは8~16回)にて撚り合わせるのが適当である。・・・」
コ.「【0031】
なお、合撚糸におけるポリエステル系複合長繊維糸/ポリウレタン系弾性糸の重量比率は、布帛とした場合の伸長率、回復率の観点から、70/30~95/5であるのが好ましく、より好ましくは80/20~90/10である。」
サ.「【0032】
このようにして得られた合撚糸を、精紡機にて、1.1倍以上のテンションを加え、精紡機のフロントローラーから供給し、その周りを短繊維にてカバーリングして紡績する。・・・
【0033】
芯を構成するポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸の合撚糸に精紡機で加えるテンションが1.1倍未満であると、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸との剥離が起こった状態で、精紡機のフロントローラーへ供給されるおそれがあり、かかる剥離状態でのフロントローラーへの供給がなされると、カバーリング状態の悪化や染めムラの原因となり、布帛とした場合の伸長率、回復率にも影響するため好ましくない。なお、精紡機で加えるテンションが高すぎる場合、精紡機のドラフト部にかかる負担が大きくなり、部品の消耗がおこり、品質不良の原因となるため、当該テンションは1.2倍以下であるのが好ましい。」
シ.「【0043】
(実施例1)
ポリエステル系複合長繊維糸として、ポリトリメチレンテレフタレート層/ポリエチレンテレフタレート層=50/50のサイドバイサイド型複合繊維(56dtx 24フィラメント、東レ株式会社製のT-400)を用意し、ポリウレタン系弾性糸として、オペロンテックス社製スパンデックス(LYCRA、T127C、44dtx)を用意した。また、セルロース系短繊維として、綿100%の短繊維粗糸(紡出ゲレン 20.0g/30yd)を用意した。
まず、村田製作所社製合糸機608を用いて、スパンデックスを3.5倍にドラフトしたものと、ポリトリメチレンテレフタレート層/ポリエチレンテレフタレート層のサイドバイサイド型複合繊維(T-400)を引き揃えて合糸し、ダブルツイスターを用いてS方向に実撚9.5回/inchの撚りを加えて複合合撚糸とした。
この複合合撚糸を精紡工程におけるフロントローラー部へ1.19倍のテンションを加えて供給し、綿100%の短繊維粗糸(繊度:4.8マイクロネア)をバックローラーからフロントローラーへ供給し、Z方向へ、撚り係数K=4.5にて撚りを加え、英式綿番手で10番手のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を製造した。
得られたストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を緯糸に使用し、緯密度58の3/1R組織にて織物を作製した。
織物の特性は表1に示すとおりであり、優れた抗ピリング性を有し(毛羽が発生しにくく)、ソフト感に優れ、伸長率及び回復率がともに良好であった。」
ス.上記イ.及びウ.によると、伸長率及び回復率がともに良好な優れたストレッチ性を有する芯鞘構造複合紡績糸である。
セ.上記ア.及びエ.によると、芯は、ポリエステル系複合長繊維糸とポリウレタン系弾性糸との合撚糸からなり、鞘は、セルロース系短繊維からなるものである。
ソ.上記オ.によると、芯の撚り数(インチ当たり回数)は5~20回(好ましくは8~16回)程度である。そして、上記オ.に「撚り数(インチ当たり回数)」、上記カ.に「実撚りの回数(回/インチ)」と記載されているから、芯の撚り数について、インチ当たりの撚り数「5~20回(好ましくは8~16回)程度」を、1m当たりの撚り数に換算すると、「196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度」となる。
タ.上記キ.によると、ポリエステル系複合長繊維糸は、ポリエステル系共重合体である。
チ.上記ク.によると、ポリエステル系複合長繊維糸は、伸縮性(ゴム弾性)を有し、特に、回復率がポリウレタン系弾性糸に比べて優れている。また、ポリウレタン系弾性糸は、極めて良好な伸長性を有しており、3~5倍に伸長した状態で撚ることができるから、少なくとも5倍に伸長することができる。
ツ.上記コ.によると、合撚糸におけるポリエステル系複合長繊維糸/ポリウレタン系弾性糸の重量比率は、80/20~90/10であるから、ポリエステル系複合長繊維糸の含有量は、芯の80~90重量%の範囲である。
テ.上記サ.によると、撚りを加えて複合合撚糸とされた芯は、セルロース系短繊維と一体化してストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸とする際に、1.1倍以上、1.2倍以下のテンションが加えられる
ト.上記シ.によると、実施例1では、ポリエステル系複合長繊維糸として「ポリトリメチレンテレフタレート層/ポリエチレンテレフタレート層=50/50のサイドバイサイド型複合繊維(56dtx 24フィラメント、東レ株式会社製のT-400)」を、ポリウレタン系弾性糸として「オペロンテックス社製スパンデックス(LYCRA、T127C、44dtx)」を、セルロース系短繊維として「綿100%の短繊維粗糸(紡出ゲレン 20.0g/30yd)」を用いて、ポリウレタン系弾性糸であるスパンデックスを3.5倍にドラフトしてから、ポリエステル系複合長繊維糸であるサイドバイサイド型複合繊維(T-400)を引き揃えて合糸し、S方向に実撚9.5回/inchの撚りを加えて複合合撚糸として芯を得ている。その後、複合合撚糸に1.19倍のテンションを加えて、セルロース系短繊維である綿100%の短繊維粗糸(繊度:4.8マイクロネア)を鞘としてZ方向へ撚りを加えることでストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を製造している。
上記ア.~ト.から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「セルロース系短繊維の鞘とともにストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成するために使用される芯であって、芯は、ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸を含み、ポリエステル系複合長繊維糸はポリエステル系共重合体であり、ポリエステル系複合長繊維糸の含有量は、芯の80~90重量%の範囲であり、
ポリウレタン系弾性糸は、少なくとも5倍に伸長することができ、ポリエステル系複合長繊維糸は、ポリウレタン系弾性糸より回復率が優れており、
ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸は、撚りを加えて複合合撚糸とされ、1m当たりの実撚りの回数は、196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度であり、
ポリウレタン系弾性糸は、ポリエステル系複合長繊維糸と撚りを加えて複合合撚糸とする前に3.5倍にドラフトされており、
撚りを加えて複合合撚糸とされた芯は、1.1倍以上、1.2倍以下のテンションが加えられる、
芯。」
(2)本件発明1
本件発明1においては、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)との結合方法について、交絡法、共押出法、撚糸法の3つのいずれかによることが規定されているため、それらを分けて検討する。
ア.交絡法の場合
本件発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1の「ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸」は、本件発明1の「伸縮性ヤーン(1)」に相当する。
引用発明1のポリウレタン系弾性糸は、極めて良好な伸長性を有しており(上記(1)ク.)、ポリエステル系複合長繊維糸は、伸縮性(ゴム弾性)を有している(上記(1)ク.)から、ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸は、いずれも弾性特性を有するものである。よって、引用発明1の「ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸」は、本件発明1の「弾性特性を有する第1及び第2の繊維(4,5)」に相当する。そして、弾性特性を有する「ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸」で構成された引用発明1の「芯」は、本件発明1の「伸縮性コアヤーン(2)」に相当する。
引用発明1の「セルロース系短繊維」は、「綿100%の短繊維粗糸(繊度:4.8マイクロネア)」(上記(1)シ.)であり、本件発明1の「非弾性繊維シース(3)」として本件特許明細書の段落【0039】、【0070】等には、「綿ステープルファイバー」、「綿」が記載されている。よって、引用発明1の「セルロース系短繊維」は、本件発明1の「非弾性繊維シース(3)」に相当する。
そうすると、引用発明1の「セルロース系短繊維」は、鞘として芯を覆うことでストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成するものであるから、引用発明1の「セルロース系短繊維の鞘とともにストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成するために使用される芯」は、本件発明1の「非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成するために使用される伸縮性コアヤーン(2)」に相当する。
引用発明1の「ポリエステル系複合長繊維糸の含有量は、芯の80~90重量%の範囲であり」は、本件発明1の「前記第2の繊維(5)の含有量は前記伸縮性コアヤーン(2)の60~90重量%の範囲であり」の範囲内である。
引用発明1のポリウレタン系弾性糸は、「オペロンテックス社製スパンデックス(LYCRA、T127C、44dtx)」(上記(1)シ.)であり、LYCRAは、米国やカナダではスパンデックスとして、ヨーロッパではエラスタンとして知られるもの(必要なら特表2008-539940号公報の段落【0021】参照)であり、エラスタンはエラストマー(必要なら特開2002-120558号公報の段落【0090】を参照)である。
引用発明1の「ポリウレタン系弾性糸は、少なくとも5倍に伸長することができ」は、本件発明1の「破断伸びにおいて、前記第1の繊維(4)は、初期長の少なくとも400%まで伸長させることができ」に相当する。
引用発明1の「ポリエステル系複合長繊維糸」は、「ポリトリメチレンテレフタレート層/ポリエチレンテレフタレート層=50/50のサイドバイサイド型複合繊維(56dtx 24フィラメント、東レ株式会社製のT-400)」(上記(1)シ.)であり、このT-400の伸縮伸長率は少なくとも95%(必要なら特開2004-360145号公報の段落【0048】~【0049】を参照)である。
引用発明1においては、「ポリウレタン系弾性糸」の方が「極めて良好な伸長性を有して」いる(上記(1)ク.)ものであるから、「ポリエステル系複合長繊維糸」は、「ポリウレタン系弾性糸」より弾性特性には劣るものである。
引用発明1の「ポリエステル系複合長繊維糸は、ポリウレタン系弾性糸より回復率が優れており」は、本件発明1の「前記第2の繊維(5)は、」「前記第1の繊維(4)より高い弾性回復性を有し」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1は、少なくとも以下の点で相違していることが明らかである。
<相違点A>
2種の繊維の結合について、本件発明1は、「交絡法により、少なくとも複数の部分で互いに結合」されているのに対して、引用発明1は、撚糸法による結合であって、交絡法ではない点。
上記<相違点A>は、明らかに実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用発明1であるとはいえない。
イ.共押出法の場合
本件発明1と引用発明1の対比については、上記ア.のとおりである。
そうすると、本件発明1と引用発明1は、少なくとも以下の点で相違していることが明らかである。
<相違点B>
2種の繊維の結合について、本件発明1は、「共押出法により連続的に結合」されているのに対して、引用発明1は、撚糸法による結合であって、共押出法ではない点。
上記<相違点B>は、明らかに実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用発明1であるとはいえない。
ウ.撚糸法の場合
本件発明1と引用発明1を対比すると、上記ア.に加えて、引用発明1の「ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸は、撚りを加えて複合合撚糸とされ」は、本件発明1の「前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合」に相当し、引用発明1の「1m当たりの実撚りの回数は、196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度」は、本件発明1の「1m当たりの撚り数は、75~125とは異なり」の範囲内である。
そうすると、本件発明1と引用発明1は、少なくとも以下の点で相違していることが明らかである。
<相違点C>
本件発明1は、「撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合」され、「前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにしてあ」るのに対して、引用発明1は、ポリウレタン系弾性糸とポリエステル系複合長繊維糸は、撚りを加えて複合合撚糸とされ、1m当たりの実撚りの回数は、196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度である点。
<相違点C>について検討する。
本件発明1は、「前記第1及び第2の繊維(4,5)は、実質的に単繊維として機能することによって伸縮及び回復するように」「撚糸法により、少なくとも複数の部分で互いに結合されている」ものであって、そのために、「前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにして」あるものである。
そして、本件発明1の伸縮性コアヤーン(2)は、単体で用いられるものではなく、「非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成」するものとして専ら用いられるのだから、「実質的に単繊維として機能すること」とは、「非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成」したときに伸縮性コアヤーン(2)が「実質的に単繊維として機能する」ことを意味するのは明らかである。
すなわち、本件発明1においては、「非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成」したときに、伸縮性コアヤーン(2)が「実質的に単繊維として機能する」ために「前記第1及び第2の繊維が撚糸法により結合されている場合、1m当たりの撚り数は350~550の範囲内であり、もって前記撚り数は、前記第1及び第2の繊維を実質的に単繊維として機能させて伸縮及び回復させるに足る両繊維間の結合力を与えるようにして」あるのだから、伸縮性ヤーン(1)を構成した状態において1m当たりの撚り数が350~550の範囲内となっているものであることは、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載から明らかである。
(特許権者の令和元年8月6日付け意見書21ページ26~29行、令和2年2月4日付け意見書6ページ24行~7ページ2行も参照)
これに対して、引用発明1は、芯単体の状態における1m当たりの実撚りの回数は、196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度ではあるものの、引用文献1には、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成した状態における芯の実撚りの回数をそのような範囲内にすることについての記載がない。
むしろ、引用文献1には、
「・・・精紡機にて芯鞘構造複合紡績糸に加える撚りは、2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向とは逆方向の撚りを加えることが重要である。すなわち、2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向がS方向である場合、Z方向に撚りを加え、2本以上のフィラメント糸の合撚糸の撚り方向がZ方向である場合、S方向に撚りを加える。・・・」(段落【0017】)
「紡績糸に加える撚りの方向を合撚糸の撚り方向と逆方向にすることで、精紡機にてフロントローラーより出た直後の撚り合わせ時に、合撚糸の撚りが解撚され、無撚状態となった部分に短繊維フリースが挟み込まれ、さらに撚りが加えられ、芯鞘構造複合紡績糸が得られる。従って、芯を構成する合撚糸と鞘を構成する短繊維の交絡度合いが高くなって、芯と鞘がずれにくい、毛羽の発生が起こりにくい複合紡績糸となる。・・・」(段落【0020】)
と記載されているから、芯は、一度解撚されてからセルロース系短繊維の鞘を挟み込みつつ撚りが加えられて、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成するものであり、これによって、
「・・・鞘成分の短繊維が芯成分の2本以上のフィラメント糸の間に巻き込まれて拘束されて、毛羽の発生が抑制されることから、抗ピリング性に優れた複合紡績糸を実現することができる。また、撚り数を比較的低く設定できるので、ソフト感に優れる複合紡績糸を実現できる。・・・」(段落【0009】)
という効果を発揮するものである。
すなわち、引用発明1には、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成した状態において、芯の1m当たりの実撚りの回数を196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度とする技術思想はなく、一度解撚されているのだから、実質的に単繊維として機能するという技術思想もない。
さらに、引用文献1の段落【0043】に記載された実施例をみると、芯は、「S方向に実撚9.5回/inchの撚りを加えて複合合撚糸」としているから、1m当たりの実撚りの回数が約374回であり、「Z方向へ、撚り係数K=4.5にて撚りを加え、英式綿番手で10番手のストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を製造」しているから、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸の1m当たりの実撚りの回数は、約560回であるから、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成した状態における芯の1m当たりの実撚りの回数は、単純計算でも約186回である。
この回数は、引用発明1の196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度から外れたものであるし、本件発明1の「350~550」から大きく外れたものである。
したがって、上記<相違点C>は、明らかに実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用発明1であるとはいえない。
エ.小括
以上のとおり、交絡法、共押出法、撚糸法の3つのいずれの場合においても、本件発明1は、引用発明1であるとはいえないから、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
(3)本件発明2~10
本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものである。
そして、上記(2)に示したように、本件発明1は引用発明1であるとはいえないから、本件発明2~10についても同様に、本件発明2~10は引用発明1であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
5.理由5(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1
刊行物に記載された発明については、上記4.(1)で述べたとおりである。
上記4.(2)と同様に、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)との結合方法について、交絡法、共押出法、撚糸法の3つの場合に分けて検討する。
ア.交絡法の場合
本件発明1と引用発明1の対比、及び相違点については、上記4.(2)ア.のとおりである。
<相違点A>について検討する。
2種の繊維の結合について、引用文献1には、交絡法とすることについての記載も示唆もない。
さらに、引用文献1には、
「本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、芯が2本以上のフィラメント糸の合撚糸であることにより、1本のフィラメント糸(長繊維)を芯にした従来の芯鞘構造の複合紡績糸では達成困難であった要求特性を満たす芯鞘構造の複合紡績糸を得ることができ、また、鞘成分の短繊維が芯成分の2本以上のフィラメント糸の間に巻き込まれて拘束されて、毛羽の発生が抑制されることから、抗ピリング性に優れた複合紡績糸を実現することができる。また、撚り数を比較的低く設定できるので、ソフト感に優れる複合紡績糸を実現できる。さらに、本発明の芯鞘構造複合紡績糸は、芯成分が2本以上のフィラメント糸の合撚糸であることから、外力を受けたときの芯成分と鞘成分(短繊維)間の摩擦力が大きく、鞘成分(短繊維)の糸の平行方向(軸線方向)へのずれが生じにくい、均整性の高い紡績糸になるという利点もある。」(段落【0009】)
と記載されているから、引用発明1は、課題を解決するために撚糸法による結合であることが必須の発明である。
そうすると、引用発明1には、撚糸法に換えて交絡法による結合に変更することに阻害事由がある。
よって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
イ.共押出法の場合
本件発明1と引用発明1の対比、及び相違点については、上記4.(2)イ.のとおりである。
<相違点B>について検討する。
上記ア.で述べたとおり、引用発明1は、課題を解決するために撚糸法による結合であることが必須の発明であり、撚糸法に換えて共押出法による結合に変更することに阻害事由がある。
よって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ.撚糸法の場合
本件発明1と引用発明1の対比、及び相違点については、上記4.(2)ウ.のとおりである。
<相違点C>について検討する。
上記4.(2)ウ.で述べたとおり、引用発明1には、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成した状態において、芯の1m当たりの実撚りの回数を196.9~787.4回/m(好ましくは315~630回/m)程度とする技術思想はなく、一度解撚されているのだから、実質的に単繊維として機能するという技術思想もない。また、引用文献1の記載によれば、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成した状態における芯の1m当たりの実撚りの回数は、単純計算でも約186回である。
さらに、段落【0009】の「また、撚り数を比較的低く設定できるので、ソフト感に優れる複合紡績糸を実現できる。」という記載から、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸を構成した状態の芯の実撚り回数を、本件発明1の350~550という2倍以上の回数まで増すために、ストレッチ性芯鞘構造複合紡績糸の撚り回数を大きく増加することに阻害事由がある。
よって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ.小括
以上のとおり、交絡法、共押出法、撚糸法の3つのいずれの場合においても、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
(2)本件発明2~10
本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に限定するものである。
そして、上記(1)に示したように、本件発明1は引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2~10についても同様に、本件発明2~10は引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。
第6.申立人の主張について
申立人は、令和元年9月13日付け意見書において、以下のように主張している。
『本件訂正発明1及び8には、「コアヤーン」(合撚糸)を短繊維と引き揃え、芯鞘構造の紡績糸を形成するとき、どの方向に撚るのか特定されていない。言い換えると、甲1発明の撚り方向も含んでいる。「コアヤーン」(合撚糸)を短繊維と引き揃え、芯鞘構造の紡績糸を形成する際には、撚りを加えないと一体化できない。撚りを加えることは必須である。
しかし、本件訂正発明1及び8には、「コアヤーン」(合撚糸)と短繊維とを引き揃え、芯鞘構造の紡績糸を形成する際に、撚りを加えることも、どの方向に撚るのかも特定されていない。
このことは、明細書の詳細な説明にも実施例にも一切記載がない。
したがって、本件訂正発明1及び8は不明瞭であり、かつ当業者が容易に理解することができない。よって、前記発明を引用する全請求項の発明を含めて、特許法第36条第6項第2号、同法第36条第4項第1号に違反する。』(8ページ21~34行)
そこで検討する。
上記主張は、本件発明1~10が、特許法第36条第6項第2号、同法第36条第4項第1号に違反する理由を追加するものであるが、訂正前の本件発明1における「非弾性繊維シース(3)で被覆することによって、前記非弾性繊維シース(3)とともに伸縮性ヤーン(1)を構成」するときの「伸縮性ヤーン(1)」の撚りに関するものであるから、本件訂正によって生じた理由ではない。
よって、上記主張は新たな理由を追加するものであるから、これを採用しない。
さらに、念のため検討する。
上記第5.4.(2)、第5.5.(1)と同様に、第1の繊維(4)と第2の繊維(5)との結合方法について、交絡法、共押出法、撚糸法の3つの場合に分けて検討する。
交絡法、共押出法の場合、伸縮性コアヤーン(2)と非弾性繊維シース(3)を一体化する際に撚りを加えるとしても、伸縮性コアヤーン(2)の構成には影響しないから、伸縮性ヤーン(1)を構成するときに撚りを加えることやその方向は、本件発明の伸縮性コアヤーン(2)における必須の構成ではない。
撚糸法の場合、伸縮性コアヤーン(2)と非弾性繊維シース(3)を一体化する際に撚りを加えるとしても、撚りを加えて伸縮性ヤーン(1)を構成した状態における伸縮性コアヤーン(2)の1m当たりの撚り数が350~550の範囲内であることが本件発明1で規定されているのだから、伸縮性ヤーン(1)の撚り回数や方向は、伸縮性コアヤーン(2)の撚り回数が当該範囲内に収まる程度とすればよいことが明らかである。
よって、本件発明は、交絡法、共押出法、撚糸法いずれの場合でも明確であり、実施可能であることは明らかである。
したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。
第7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700138