特許異議申立
2017-700170
内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体
- 審判番号
- 2017-700170
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-124233外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月23日
- 審決日
- 2017年05月09日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三井金属鉱業株式会社
- 【権利者代理人】栗原 浩之
- 【異議申立人】赤松 智信
- 分類
- P1651.113-Y (B01J) / P1651.121-Y (B01J) / P1651.537-Y (B01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5976891号発明「内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5976891号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5976891号は、平成27年6月19日に出願された特願2015-124233号について、平成28年7月29日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1~2に係る特許に対し、特許異議申立人 赤松 智信により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明の認定
上記特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された次の事項により特定されるとおりのもの(以下、請求項ごとに「本件特許発明1」~「本件特許発明2」という。)と認められる。
【請求項1】
CeO2-ZrO2の固溶体からなるコア材の表面にCeO2が担持された内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体であって、該コア材中のCeO2の量が該担体の質量の5~35質量%であり、前記コア材の表面に担持されたCeO2の量が前記担体の質量の5~17質量%であることを特徴とする内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体。
【請求項2】
該コア材中のCeO2の量と該コア材の表面に担持されたCeO2の量との合計が該担体の質量の10~40質量%であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体。
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、上記特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない(以下、「申立理由1」という)特許出願に対してされたものであり、また、証拠として下記甲第1号証(以下、「甲1」という。)を提出し、上記特許に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定に違反(以下、「申立理由2」という)するものだから、その特許は取り消すべきものである旨主張している。
甲1:特開2003-117393号公報
第4 申立理由1について
1.明確性要件違反1について
(1)特許異議申立人は、本件特許発明1は、「コア材中のCeO2の量が該担体の質量の5~35質量%であ」ることや、「コア材の表面に担持されたCeO2の量が前記担体の質量の5~17質量%である」ことを発明特定事項としているものの、当該数値限定は、その技術的意義が不明瞭な「有効CeO2率」なる事項の優位性を根拠にされたものであり、「有効CeO2率」の技術的意義が不明瞭である以上、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2は、ともに明確性要件に違反する旨主張している(特許異議申立書第17頁第7行~第19頁第7行)。
そこで、本件特許発明1及び本件特許発明2のCeO2の含有量の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に違反するか否かについて検討する。
(2)本件特許発明1及び本件特許発明2は、「有効CeO2率」なる事項を特定するものではないし、「有効CeO2率」の技術的意義が仮に明らかでなかったとしても、コア材中のCeO2の量及びコア材の表面に担持されたCeO2の量の数値範囲自体は、それぞれ明確である。
したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2のCeO2率の含有量の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に違反するものではない。
なお、有効CeO2率の技術的意義については、「3.(4)」を参照されたい。
2.明確性要件違反2について
(1)特許異議申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明2は、「コア材の表面」という技術的事項を発明特定事項としているが、本件特許発明1の「コア材の表面に担持されたCeO2」とは、層状のものも含んでおり、また、当該層状の中に他の化合物を含んでいても構わないものと理解されるし、コア材と同様の組成であることも排除されておらず、そのような場合、担体のどこの部分を「表面」として規定しているのか明確ではないから、本件特許発明1及び本件特許発明2は、ともに明確性要件に違反する旨主張している(特許異議申立書第19頁第8行~第25行)。
そこで、本件特許発明1及び本件特許発明2の「コア材の表面」との記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に違反するか否かについて検討する。
(2)本件特許発明1及び本件特許発明2に記載された「コア材」は、「CeO2-ZrO2の固溶体からなる」ものであって、本件特許発明1及び本件特許発明2の「担体」は、「コア材の表面」に「CeO2」が担持されているものであるから、「コア材の表面」とは、「担体」における「CeO2-ZrO2の固溶体からなる」部分(コア材)の表面であることは明らかである。
また、本件明細書には、コア材の表面に担持されるものとして、「CeO2」のみの場合しか記載されていないから、申立人が主張しているような、層状であって、当該層状の中に他の化合物を含んでいるものや、コア材と同様の組成である層は、本件特許発明1,2におけるコア材の表面に担持された「CeO2」に該当しないものと認められる。
したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2の「コア材の表面」との記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に違反するものではない。
3.サポート要件違反について
(1)特許異議申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明2は、「コア材の表面」をどのように定義するか不明瞭である結果、従来技術と対比した際の有利な作用効果を見出すことができないから、本件特許発明1及び本件特許発明2は、ともにサポート要件に違反する旨主張している(特許異議申立書第20頁第1行~第11行)。
そこで、本件特許発明1及び本件特許発明2が、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件に違反するか否かについて検討する。
(2)上記2.で検討したとおり、本件特許発明1及び本件特許発明2に記載された「コア材の表面」の定義は明確であるから、かかる主張は理由がない。
(3)次に本件特許発明1及び本件特許発明2は、コア材中のCeO2の量及びコア材の表面に担持されたCeO2の量の数値範囲を発明特定事項としているので、上記数値範囲が、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件に違反するか否かについても検討する。
(4)本件明細書の第3表~第6表には、本件特許発明1及び本件特許発明2の具体例が示されており、有効CeO2率の技術的意義が仮に不明であっても、下記第5表等に示されたOSCの測定結果をみれば、コア材及び表面のCeO2量との相関性は認められるから当該数値範囲を定める根拠は明らかである。
してみれば、当該具体例から、本件特許発明1及び本件特許発明2の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるといえる。
したがって、本件特許発明1及び本件特許発明2は、この点でも特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件に違反するものではない。
4.まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第5 申立理由2について
1.引用発明の認定
甲1には、以下の事項が記載されている。
(甲1-1)
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のエンジンなどからの排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒に関し、詳しくは耐久性に優れた排ガス浄化用触媒に関する。」
(甲1-2)
「【0020】【発明の実施の形態】本発明の排ガス浄化用触媒では、多孔質酸化物よりなる核体に少なくともPtを担持した触媒粒子の表面に、Al,Zr及びCeから選ばれる少なくとも一種の酸化物又は複合酸化物からなる被覆層が形成されている。すなわち核体に担持されている少なくともPtは、少なくともその表面の一部が被覆層で覆われているか、あるいはPt粒子の周囲に被覆層の壁が形成されている。」
(甲1-3)
「【0021】多孔質酸化物よりなる核体としては、 Al2O3、ZrO2、CeO2、TiO2、SiO2など種々の多孔質酸化物を用いることができるが、CeO2-ZrO2複合酸化物粒子からなる核体、又はAl2O3-CeO2-ZrO2複合酸化物粒子よりなる核体とすることが望ましい。CeO2-ZrO2複合酸化物粒子からなる核体とすることによりCeO2の耐熱性が向上し、Ptの粒成長抑制効果と相まって耐久後も高いOSCが発現される。また高いOSCを得るためにはPtをCeO2と近接して担持することが望ましいが、このような複合酸化物粒子を核体とすることでそれが達成される。」
(甲1-4)
「【0022】このCeO2-ZrO2複合酸化物は、固溶体であることが特に望ましい。この固溶体は、原子比で 0.3≦Zr/(Ce+Zr)≦0.8の範囲が好ましく、0.4≦Zr/(Ce+Zr)≦0.6の範囲が特に好ましい。Zrの含有率が30モル%以下になると、固溶体の結晶中でZrの骨格を形成する作用が弱まり、酸素の脱離により蛍石構造の立方晶を維持することが困難となるため、酸素が脱離できなくなりOSCが低下する。」
(甲1-5)
「【0040】被覆層は、Al,Zr及びCeから選ばれる少なくとも一種の酸化物又は複合酸化物から構成される。」
甲1-1から甲1-5の記載によれば、甲1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「CeO2-ZrO2複合酸化物の固溶体よりなる核体にPtを担持した触媒粒子の表面にCeの酸化物からなる被覆層を有する自動車のエンジンなどからの排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒粉末」
2.対比・判断
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「CeO2-ZrO2複合酸化物の固溶体」、「核体」、「自動車のエンジンなどからの排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒」は、本件特許発明1の「CeO2-ZrO2の固溶体」、「担体」、「内燃機関排気ガス浄化用触媒」に相当するから、両者は「CeO2-ZrO2の固溶体を有する内燃機関排気ガス浄化用触媒のための担体」で一致するが、本件特許発明1は、「CeO2-ZrO2の固溶体からなるコア材の表面にCeO2が担持された担体」であるのに対し、引用発明は「CeO2-ZrO2の固溶体よりなる担体」である点で相違する。
すなわち、本件特許発明1は、コア材の表面に担持されたCeO2が担体を構成するのに対して、触媒であるPtを担持した後に被覆する引用発明のCeの酸化物は担体を構成していないものである。
そして、甲1には、Pt担持前にCeの酸化物を被覆することについて記載も示唆もない。
してみれば、本件特許発明1は甲1に記載された発明とはいえないし、また、上記相違点が設計上の微差と認める理由もないから、本件特許発明1は甲1に記載された発明及び甲1の記載から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
本件特許発明1を引用する本件特許発明2についても同様である。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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