特許異議申立
2017-700129
被測定物の測定方法およびそれに用いる測定デバイス
- 審判番号
- 2017-700129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-526908外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月10日
- 審決日
- 2017年04月25日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社村田製作所
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】飯田 進
- 分類
- P1651.121-Y (G01N) / P1651.537-Y (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5967202号発明「被測定物の測定方法およびそれに用いる測定デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5967202号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5967202号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成25年7月22日(優先権主張、平成24年7月23日)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年7月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人飯田進(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
2.本件発明
特許第5967202号の請求項1~8に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
被測定物が保持された空隙配置構造体に電磁波を照射して、前記空隙配置構造体の少なくとも主面で散乱された電磁波の特性を検出することにより、前記被測定物の有無または量を測定する方法であって、
前記空隙配置構造体は、前記主面に垂直な方向に貫通した複数の空隙部を有し、
前記被測定物の少なくとも一部は、樹脂材料およびセラミック材料の少なくともいずれかからなる担体粒子を介して、前記空隙配置構造体の少なくとも前記主面に保持されることを特徴とする、測定方法。
【請求項2】
前記担体粒子は前記空隙部より小さい、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記被測定物を前記担体粒子に吸着させ、その後に前記担体粒子を前記空隙配置構造体に吸着させることにより、前記被測定物の少なくとも一部が担体粒子を介して前記空隙配置構造体に保持される、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記担体粒子を前記空隙配置構造体に吸着させ、その後に前記被測定物を前記担体粒子に吸着させることにより、前記被測定物の少なくとも一部が担体粒子を介して前記空隙配置構造体に保持される、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項5】
前記担体粒子は、その表面に、前記被測定物に吸着する部分および前記空隙配置構造体に吸着する部分を有している、請求項1~4のいずれかに記載の測定方法。
【請求項6】
前記空隙配置構造体は、少なくとも前記主面に、前記担体粒子に吸着する部分を有している、請求項1~5のいずれかに記載の測定方法。
【請求項7】
前記担体粒子において、前記被測定物と吸着する部分は、前記被測定物に特異的に吸着するホスト分子で修飾されている、請求項5に記載の測定方法。
【請求項8】
請求項1に記載の測定方法に用いられる測定デバイスであって、
空隙配置構造体、および、該空隙配置構造体に保持された担体粒子を含み、
前記空隙配置構造体は、その主面に垂直な方向に貫通した複数の空隙部を有し、
前記担体粒子は、その表面に前記被測定物と吸着する部分を有している、測定デバイス。」
3.申立理由の概要
(1)申立理由1(進歩性)
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証~甲第3号証を提出し、請求項1~3、5、6、8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項)に基づき、また、請求項4、7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第1号証に記載された技術的事項、及び周知技術(甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(証拠一覧)
甲第1号証:特開2008-157923号公報
甲第2号証:特開2008-185552号公報
甲第3号証:国際公開第2010/110415号
(2)申立理由2(明確性)
請求項1に係る発明において、「担体粒子を介して」とは、担体粒子が空間的に何かと何かとの間にあるということを意味するのか、担体粒子を用いてということを意味するのか、時間的な順を意味するのか、多義的であって不明確である。請求項1を引用する請求項2~8に係る発明も同様である。
よって、請求項1~8に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
4.甲各号証の記載等
(1)甲第1号証には、以下の記載がある。(下線は、当審において付加したものである。)
ア「【請求項12】
標的物質を、捕捉体物質との結合を介して、固定化することで検出を行う方式の化学センシング方法であって、
該化学センシングを実施する装置として、
光源と、
該光源から照射される光の波長よりも小さい開口を設けた金属薄膜、または該光の波長よりも小さい金属微粒子と、
前記開口を設けた金属薄膜、または金属微粒子をその表面に保持する透明基板と、
前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面、または、前記金属微粒子の表面に結合されている前記捕捉体物質と、
前記開口または金属微粒子の大きさを基準として、その1/10倍以上10倍以下の範囲の大きさを有しており、該捕捉体物質と結合可能な前記標的物質に対して結合されている標識物質と、
前記光源から照射される光を、前記開口を設けた金属薄膜、または金属微粒子に照射した際、該金属薄膜に設ける開口を透過した透過光、または、該金属微粒子から発せられる散乱光を検出する光検出器とを具えてなる装置を使用し、
前記標識物質を結合した標的物質を、前記捕捉体物質との結合を介して、前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面、または、前記金属微粒子の表面に固定化して、
その固定化がなされた際に、該金属薄膜に設ける開口を透過した透過光、または、該金属微粒子から発せられる散乱光に生ずる変化に基づき、標的物質の検出を行う検出方式を用いており、
そのセンシング操作は、
前記標識物質を結合した標的物質を、前記捕捉体物質との結合を介して、前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面、または、前記金属微粒子の表面に固定化する工程と、
前記固定化がなされた際に、前記光源から照射される光を、前記開口を設けた金属薄膜、または金属微粒子に照射する工程と、
前記光源から照射される光を照射した状態で、該金属薄膜に設ける開口を透過した透過光、または、該金属微粒子から発せられる散乱光を前記光検出器で検出する工程とを具えている
ことを特徴とする化学センシング方法。」
イ「【0079】
ここで、標識物質208、307としては、ポリスチレンビーズ等の微小誘電体物質や金ナノ微粒子等の微小金属物質、ナノフェライトビーズ等の微小磁性体物質を選択する。微小金属物質を用いた場合は、照射光203照射時に開口204近傍に励起される局在表面プラズモンや照射光302照射時に金属微粒子303近傍に励起される局在表面プラズモンに強い変調を加えることが可能となる。これは、微小金属物質と金属微粒子の間に発生する電場が増強され、微小金属物質と金属微粒子が一体となった構造としての新たな局在表面プラズモンのモードが現れることによる。その変調効果を利用することにより、より高感度のセンシングが可能となるという効果を有する。」
ウ「【0055】
まず、本発明の第一の形態で利用する検出手法の原理を、図2を用いて説明する。図2(a)に示すように、センサ媒体は、透明基板201上に形成した金属薄膜202中に、照射光203の波長λよりも小さいサイズの微小な開口204が形成されている。開口204の近傍には、捕捉体物質分子1(205)が結合されている。一方、標的物質分子206に対して、捕捉体物質分子2(207)を介して開口204と同程度の大きさの標識物質208を結合させる。
・・・
【0059】
標識物質208を結合させた標的物質206を含む検体液に、センサ媒体を浸漬する。そして、捕捉体物質1(205)と、標的物質206との反応を行わせる。図2(b)に示すように、捕捉体物質2(207)を介して、標識物質208を結合させた標的物質206は、開口204の近傍に固定化がなされる。その際、開口204の近傍に標識物質208が配置された構成となる。」
エ
上記記載事項ア及びイから、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「標的物質を、捕捉体物質との結合を介して、固定化することで検出を行う方式の化学センシング方法であって、
該化学センシングを実施する装置として、
光源と、
該光源から照射される光の波長よりも小さい開口を設けた金属薄膜と、
前記開口を設けた金属薄膜をその表面に保持する透明基板と、
前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面に結合されている前記捕捉体物質と、
前記開口の大きさを基準として、その1/10倍以上10倍以下の範囲の大きさを有しており、該捕捉体物質と結合可能な前記標的物質に対して結合されている標識物質と、
前記光源から照射される光を、前記開口を設けた金属薄膜に照射した際、該金属薄膜に設ける開口を透過した透過光を検出する光検出器とを具えてなる装置を使用し、
前記標識物質を結合した標的物質を、前記捕捉体物質との結合を介して、前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面に固定化して、
その固定化がなされた際に、該金属薄膜に設ける開口を透過した透過光に生ずる変化に基づき、標的物質の検出を行う検出方式を用いており、
そのセンシング操作は、
前記標識物質を結合した標的物質を、前記捕捉体物質との結合を介して、前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面に固定化する工程と、
前記固定化がなされた際に、前記光源から照射される光を、前記開口を設けた金属薄膜に照射する工程と、
前記光源から照射される光を照射した状態で、該金属薄膜に設ける開口を透過した透過光を前記光検出器で検出する工程とを具えており、
ここで、前記標識物質としては、ポリスチレンビーズ等の微小誘電体物質や金ナノ微粒子等の微小金属物質、ナノフェライトビーズ等の微小磁性体物質を選択する、
化学センシング方法。」
(2)甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
空隙配置構造体110は、一定の間隔で形成された複数の空隙112を有する、金属等の導体板により形成される。このようなメッシュ状の導体板は、電磁波に対してその開口面積比を越える透過率を有する。従って、被測定物210を支持しつつ、テラヘルツ波等の電磁波を高効率で透過させることができる。」
(3)甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「[0024] (第一の実施形態)
本実施形態は、上述のような被測定物の特性を測定する方法において、少なくとも一部の表面が導体で形成された回折現象を伴う構造体を用いることが特徴である。本実施形態で用いる回折現象を伴う構造体は、図2(a)の斜視図および(b)の断面図に示すように、一定の間隔で形成された複数の空隙部11を有する構造体1である。回折現象を伴う構造体1の少なくとも一部の表面とは、図2(a)に示す主面10a、側面10b、空隙部側面11aのうちいずれかの一部の表面であるが、少なくとも主面10aの一部の表面は導体で形成されていることが好ましい。」
5.申立理由1(進歩性)の判断
(1)請求項1に係る発明について
ア 対比
請求項1に係る発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「標的物質」、「ポリスチレンビーズ等の微小誘電体物質や金ナノ微粒子等の微小金属物質、ナノフェライトビーズ等の微小磁性体物質」である「標識物質」及び「該光源から照射される光の波長よりも小さい開口を設けた金属薄膜と、前記開口を設けた金属薄膜をその表面に保持する透明基板」が、それぞれ請求項1に係る発明の「被測定物」、「樹脂材料およびセラミック材料の少なくともいずれかからなる担体粒子」及び「主面に垂直な方向に貫通した複数の空隙部を有」する「空隙配置構造体」に対応するところ、少なくとも以下の点で相違する。
(相違点1)請求項1に係る発明は、「前記空隙配置構造体は、前記主面に垂直な方向に貫通した複数の空隙部を有し」ているのに対して、甲1発明は、「該光源から照射される光の波長よりも小さい開口を設けた金属薄膜と、前記開口を設けた金属薄膜をその表面に保持する透明基板」を有している点。
(相違点2)請求項1に係る発明は、「前記被測定物の少なくとも一部は、」「担体粒子を介して、前記空隙配置構造体の少なくとも前記主面に保持され」ているのに対して、甲1発明は、「前記標識物質を結合した標的物質を、前記捕捉体物質との結合を介して、前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面に固定化」している点。
なお、申立人は、特許異議申立書(第16頁第5~9行)において「初めに被測定物を担体粒子に吸着させ、次に被測定物を空隙配置構造体の表面に吸着させること、又は、初めに担体粒子を空隙配置構造体に吸着させ、次に被測定物を空隙配置構造体の表面に吸着させることを述べており、これらの記載から不明確であるが、担体粒子を介してとは、担体粒子を用いてとも読み取れる。」と主張し、上記相違点2を相違点としていないが、請求項1に係る発明の「担体粒子を介して」とは、「担体粒子」が何かと何かとの間にあるという意味であるから、下記6で説示するように、申立人の主張する「担体粒子を用いて」という意味には解されない。
イ 判断
事案に鑑み相違点2について検討する。
請求項1に係る発明は、「被測定物の少なくとも一部は」、「担体粒子を介して、前記空隙配置構造体の少なくとも前記主面に保持される」ものであり、担体粒子が被測定物と空隙配置構造体との間に保持されている。
それに対して、甲1発明の「前記標識物質を結合した標的物質を、前記捕捉体物質との結合を介して、前記開口の近傍の金属薄膜の金属表面に固定化して」とは、上記摘記ウ及びエに記載されているような状態であり、上記アのとおり「標的物質」、「標識物質」及び「金属薄膜」が、それぞれ請求項1に係る発明の「被測定物」、「担体粒子」及び「空隙配置構造体」に対応することから、甲1発明は、請求項1に係る発明の用語に倣えば、被測定物が担体粒子と空隙配置構造体との間に保持されていることになり、上記に示した請求項1に係る発明のように、担体粒子が被測定物と空隙配置構造体との間に保持されている訳ではない。
そして、被測定物と空隙配置構造体との間に担体粒子を保持することは、甲1発明の認定に使用していない甲第1号証の他の記載箇所にも、上記甲第2号証及び上記甲第3号証のいずれにも開示も示唆もされていないし、また、甲1発明において、被測定物と空隙配置構造体との間に担体粒子を保持するように変更する動機付けもない。
そうすると、相違点2に係る「被測定物の少なくとも一部は」、「担体粒子を介して、前記空隙配置構造体の少なくとも前記主面に保持される」という構成は、甲1発明、及び甲第1号証~甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。
そして、請求項1に係る発明は、相違点2に係る構成とすることにより、空隙配置構造体への被測定物の保持量が増加するため、測定感度が上がるという格別の効果も奏するものである。
ウ 小括
以上のとおりであるから、相違点1を検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲1発明、及び甲第1号証~甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(2)請求項2~8に係る発明について
請求項2~8に係る発明は、請求項1に係る発明の構成を全て含むものであるから、請求項2~8に係る発明も、上記(1)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
6.申立理由2(明確性)の判断
ア 判断
請求項1の「前記被測定物の少なくとも一部は、樹脂材料およびセラミック材料の少なくともいずれかからなる担体粒子を介して、前記空隙配置構造体の少なくとも前記主面に保持される」という記載は、「被測定物の少なくとも一部」が「担体粒子」を介して「前記空隙配置構造体の少なくとも前記主面」に保持されるという空間的な位置関係を規定しているものであり、「担体粒子を介して」を、申立人が主張しているように「担体粒子を用いて」あるいは「時間的な順」を意味する技術的事項と、多義的には解されないことから、上記記載は明確であるといえる。
よって、請求項1に係る発明は明確であり、請求項1を引用する請求項2~8に係る発明も明確である。
イ 小括
以上のとおりであるから、請求項1~8に係る特許を、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。
7.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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