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特許異議申立

2017-700122

タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

審判番号
2017-700122
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-024462外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年02月09日
審決日
2017年08月22日
公報発行日
2017年11月24日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5965657号発明「タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5965657号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-15]及び訂正明細書について訂正することを認める。 特許第5965657号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 主な手続の経緯等 特許第5965657号(設定登録時の請求項の数は15。以下、「本件特許」という。)は、平成24年2月7日にされた特願2012-24462号の出願に係るものであって、平成28年7月8日に設定登録された。 特許異議申立人 三和圭二郎(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成29年2月9日(受入日:同年同月10日)に、本件特許の請求項1ないし15に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当合議体において、平成29年4月10日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年6月12日(受入日:同年同月同日)に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正を以下、「本件訂正」という。)及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人から意見書が提出されなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正による訂正の内容は以下の(1)ないし(3)のとおりである。 なお、下線部は訂正個所である。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含むゴム成分」とあるのを、 「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分」 に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用している請求項2ないし15についても同様の訂正をする。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「(B)ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、」 とあるのを、 「(B)ロジン系樹脂、C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、」 に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用している請求項2ないし15についても同様の訂正をする。 (3) 訂正事項3 明細書の段落【0063】に、 「また、本発明のコム組成物には、」 とあるのを、 「また、本発明のゴム成分には、」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前請求項1において、「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含むゴム成分」と特定しているが、「合成ゴムを含むゴム成分」の記載からみて、ゴム成分には、天然ゴムを含み得ると解し得るものである。 これに対して、訂正後の請求項1は、「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分」とするものであるから、ゴム成分が合成ゴム成分であり、実質的に天然ゴムを含まないことを明確化するものである。 したがって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 そして、当該訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1において、「(B)ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、」とあるのを、訂正後では、テルペン系樹脂を削除し、さらに、「石油系樹脂」にあっては、「C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂」に減縮し、「フェノール系樹脂」を、「アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂」に減縮するものである。 したがって、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そして、当該訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正前の明細書段落【0063】の「また、本発明のコム組成物には、天然ゴムを含まない」との記載における「コム」は「ゴム」の明らかな誤記であり、また、「組成物」は、特許請求の範囲との用語の整合性を考慮すると、「成分」の誤記であると認めることができるから、「また、本発明のゴム成分には、」とする当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。 そして、当該訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項3は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正請求は、全ての請求項について行われているので、当該明細書の訂正に係る全ての請求項について行われている。 (4) そして、これら訂正は一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1ないし3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明15」という。)は、平成29年6月12日(受入日:同年同月同日)に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)(A-1)シス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体10~50質量%と、(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分と、ゴム成分100質量部に対し、(B)ロジン系樹脂、C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80~200℃である熱可塑性樹脂5~60質量部と(D)オイル30質量部以上を含むことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項2】 (A)ゴム成分100質量部に対し、さらに(C-1)シリカ50~95質量%及び(C-2)カーボンブラック50~5質量%からなる補強用充填剤40~140質量部を加えた請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項3】 (A)ゴム成分100質量部に対し、(D)オイル50~135質量部を加えた請求項2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項4】 (E)シランカップリング剤を(C-1)成分のシリカに対して5~20質量%の割合で含む請求項2又は3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項5】 (A)ゴム成分100質量部に対し、(F)下記一般式(VII)で表される無機フィラー5~30質量部を含む請求項1~4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 aM1・bSiOy・cH2O・・・・・・(VII) [式中、M1 は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、a、b、y及びcは、それぞれ1~5の整数、0~10の整数、2~5の整数、及び0~10の整数である。] 【請求項6】 (A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に第1次変性と同じ又は異なるヒドロカルビルオキシシラン化合物により第2次変性してなるものである請求項1~5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項7】 (A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項1~5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項8】 (A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物残基と未反応ヒドロカルビルオキシシラン化合物とを縮合反応させてなるものである請求項1~5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項9】 (A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、第2次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項6に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項10】 (A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、縮合反応後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項8に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項11】 ヒドロカルビルオキシシラン化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)で表わされる化合物及びその部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1~10のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 一般式(I) 【化1】 [式中、A1は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R1は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R2及びR3は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0~2の整数であり、R2が複数ある場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよく、OR3が複数ある場合、複数のOR3は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない] 一般式(II) 【化2】 [式中、A2は、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R4は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0~2の整数であり、R5が複数ある場合、複数のR5は同一でも異なっていてもよく、OR6が複数ある場合、複数のOR6は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。] 一般式(III) 【化3】 [式中、A3は、アルコール、チオール、一級アミン及びそのオニウム塩、環状二級アミン及びそのオニウム塩、非環状二級アミン及びそのオニウム塩、環状三級アミンのオニウム塩、非環状三級アミンのオニウム塩、アリール又はアリールアルキルSn結合を有する基、スルフォニル、スルフィニル及びニトリルから選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R7は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R8及びR9は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、qは0~2の整数であり、R8が複数ある場合、複数のR8は同一でも異なっていてもよく、OR9が複数ある場合、複数のOR9は同一でも異なっていてもよい。] 【請求項12】 多価アルコールのカルボン酸部分エステルが、ソルビタン脂肪酸のモノエステル,ジエステル又はトリエステルである請求項7、9及び10のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項13】 縮合促進剤が、下記一般式(IV)、一般式(V)及び一般式(VI)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と水とからなるものである請求項6又は8に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 一般式(IV) Sn(OCOR10)2・・・・・・(IV) [式中、R10は、炭素数2~19の有機基であり、複数ある場合は同一でも異なっていてもよい] で表される酸化数2のスズの炭素数3~20のカルボン酸塩、 一般式(V) R11rSnA4tB1(4-t-r)・・・・・・(V) [式中、rは1~3の整数、tは1又は2の整数であり、かつ、t+rは3又は4の整数である。R11は炭素数1~30の脂肪族炭化水素基、B1はヒドロキシル基又はハロゲンである。A4は、(a)炭素数2~30の脂肪族カルボン酸残基、(b)炭素数5~30の1,3-ジカルボニル含有基、(c)炭素数3~30のヒドロカルビルオキシ基、及び(d)炭素数1~20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換(同一でも異なっていてもよい)されたシロキシ基から選ばれる基であり、R11が複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、A4が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい] で表される酸化数4のスズ化合物、 一般式(VI) A5xTiB2(4-x) ・・・・・・(VI) [式中、xは2又は4の整数である。A5は(1)炭素数3~30のヒドロカルビルオキシ基、(2)炭素数1~30のアルキル基及び/又は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換されたシロキシ基であり、A5が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。B2は、炭素数5~30の1,3-ジカルボニル含有基であり、B2が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい] で表される酸化数4のチタン化合物。 【請求項14】 (A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、変性ポリブタジエンである請求項1~13のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。 【請求項15】 請求項1~14のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムに用いた空気入りタイヤ。」 第4 取消理由の概要 平成29年4月10日付けで通知した取消理由は、本件特許の請求項1ないし15に係る発明は、本件特許の出願日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであり(以下、「取消理由A」という。)、また、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由B」という。)、というものである。 刊行物1:特開2007-262206号公報(異議申立人の証拠方法である甲第1号証。以下、「甲1文献」という。) 刊行物2:特開2009-263587号公報(異議申立人の証拠方法である甲第2号証。以下、「甲2文献」という。) 第5 当合議体の判断 当合議体は、以下述べるように、本件特許の本件訂正発明1ないし15は取消理由で通知した刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、その発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、取り消すべきものではないと判断する。 また、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものではないと判断する。 そして、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものではないと判断する。 さらに、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものではないと判断する。 1 取消理由Aについて (1) 甲1文献の記載及び甲1発明 甲1文献の実施例1及び特許請求の範囲の記載からみて、甲1文献には、「SBR-1を70質量%、SBR-2を15質量%、製造例1で製造された変性ポリブタジエンAである、シス-1,4-結合の含有量が96.8%であり、活性末端が3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPMOS)により変性してなる変性BRを15質量%、SBR-1に含まれているオイルを26.3質量%、A/OMIXオイルを7.5質量%、スピンドルオイルを10質量%、カーボンブラックを15質量%、シリカを75質量%、シランカップリング剤を6質量%、を含有するタイヤトレッド用ゴム組成物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2) 本件訂正発明1と甲1発明との対比 ア 本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の相違点1で相違し、当該相違点以外の点では一致するものであると認められる。 (相違点1) 本件特許発明1では、タイヤトレッド用ゴム組成物に、「(B)ロジン系樹脂、C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80~200℃である熱可塑性樹脂5~60質量部」を含むことが特定されているのに対し、甲1発明では上記の点が特定されていない点。 イ 以下、相違点1について検討する。 甲1文献には、タイヤトレッド用ゴム組成物に、ロジン系樹脂、C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80~200℃である熱可塑性樹脂5~60質量部を含むことについては、何ら記載されておらず、それを示唆する記載もない。 そして、甲2文献には、オールシーズン用タイヤのトレッドに好適なゴム組成物であり(段落【0099】)、ゴム成分に、石油樹脂に例示される脂肪族系炭化水素樹脂、脂環式系炭化水素樹脂、テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選ばれた少なくとも1種である、軟化点が、50~150℃である熱可塑性樹脂を、ゴム成分100質量部に対して、前記熱可塑性樹脂5~20質量部を配合させることが開示されている(請求項1、20~22、段落【0075】~【0080】)ものの、タイヤトレッド用ゴム組成物に、ロジン系樹脂、C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80~200℃である熱可塑性樹脂5~60質量部を含むことについては、何ら記載されておらず、それを示唆する記載もない。 そうすると、甲1発明に、上記相違点1に係る構成について何ら記載や示唆のない甲1文献や甲2に記載された事項とを組み合わせても、タイヤトレッド用ゴム組成物に、ロジン系樹脂、C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80~200℃である熱可塑性樹脂5~60質量部を含むことは、たとえ当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲1~甲2文献に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (3) 本件訂正発明2ないし15について 本件請求項2ないし15は、直接あるいは間接的に本件請求項1または本件請求項2を引用するものであるから、本件訂正発明2ないし15は、(2)で述べたのと同じ理由により、甲1発明及び甲1~甲2文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 2 取消理由Bについて 取消理由Bは、上記訂正事項1による訂正により、本件請求項1の(A)のゴム成分中に、天然ゴムを含まないことが明らかとなったことから、取消理由Bは解消している。 したがって、本件請求項1、本件請求項1を直接又は間接的に引用する本件請求項2ないし15に係る発明は、明確でないものとはいえない。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について 異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1、6ないし15に係る特許は、充填剤の特定がなく、充填剤を実質的に含まないタイヤトレッドゴム用組成物が含まれるところ、充填剤を実質的に含まないタイヤトレッド用ゴム組成物を当業者が実施することができないと主張している。 しかしながら、少なくとも本件特許明細書の実施例の記載に基づけば、その限りにおいて本件訂正発明を実施することができることは明らかであって、この点は異議申立人も争っていない。 そして、本件訂正発明1、6ないし15において、本件特許明細書の実施例において具体的に用いられているゴム組成物以外のもの、例えば、充填剤を実質的に含まないものにおいても、本件特許明細書の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、原料の配合を適宜変更することにより、当業者であれば本件訂正発明1、6ないし15に係るタイヤトレッドゴム用組成物を容易に製造することができると認められるのであるから、本件特許明細書の記載が、当業者にとり過度の試行錯誤が必要になるものであるとはいえない。 そうすると、本件特許の請求項1、6ないし15に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、この主張は採用することができない。 (2)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について 異議申立人は、特許異議申立書において、本件請求項1、6ないし15に係る特許は、充填剤の特定がなく、充填剤を実質的に含まないタイヤトレッドゴム用組成物が含まれるところ、実施例、比較例において、充填剤を実質的に含まない組成物は製造されていないから、明細書の記載を請求項1に記載の範囲まで拡張することはできないと主張している。 しかしながら、本件特許明細書の記載によれば、特にその実施例及び比較例を対比すれば、本件訂正発明1、6ないし15の構成を備えることにより、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性を有するタイヤトレッド用ゴム組成物を提供するという本件訂正発明1、6ないし15が解決しようとする課題を解決することができることが理解される。 そうすると、確かに、本件特許明細書の実施例において具体的に用いられているのは、充填剤を使用したもののみではあるものの、現在の明細書の記載及び提出された証拠からは、本件訂正発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物により、本件の課題が解決できると認識できるから、本件特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えているとはいえない。 また、異議申立人は、証拠として、本件特許明細書に記載の実施例の条件で充填剤の量や有無を追試したとする甲第3号証の実験報告書を提出し、シリカを含まずカーボンブラックを含む実験例I、カーボンブラックを含まずシリカを含む実験例II、充填剤を含まない実験例IIIのゴム組成物が、比較例に比してグリップ性、耐摩耗性の少なくともいずれかが劣り、本件訂正発明1、6ないし15のゴム組成物は、その発明が解決しようとする課題を解決しない旨を主張している。 しかしながら、甲第3号証の実験報告書「3.評価方法」に記載の、実施例I~IIIに係る耐摩耗性及びグリップ性の評価方法と、本件特許明細書の段落【0091】及び【0092】に記載の、比較例及び実施例に係る耐摩耗性及びグリップ性の評価方法とは異なるものである。そうすると、評価方法が異なる、実施例I~IIIの数値と、実施例1、2、6、7の数値とを直接比較して、その優劣を評価することは、評価方法として妥当であるとはいえない。 また、実施例I~IIIと比較例1の組成物の配合を比較すると、実施例I~IIIと比較例とは、充填剤の種類や配合量も異なるし、ゴム成分の種類や、樹脂の配合の有無も異なるものであるから、実施例I~IIIと比較例1とを直接比較することに、何らかの意義を見出すこともできない。 したがって、甲第3号証を証拠とする異議申立人の主張も、採用することができない。 そうすると、本件特許の請求項1、6ないし15に係る特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、この主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700122

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