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特許異議申立

2021-701005

重荷重用空気入りタイヤ

審判番号
2021-701005
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-012793
登録番号
6860712
請求日
2021年10月20日
審決日
2023年08月15日
公報発行日
2023年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ブリヂストン
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】杉村 光嗣
  • 【権利者代理人】齋藤 恭一
  • 【権利者代理人】山口 雄輔
  • 【権利者代理人】小松 靖之
  • 【異議申立人】泉 美幸
審判長/審判官
  • 審判長 藤井 昇
  • 審判官 一ノ瀬 覚
  • 審判官 中村 則夫
分類
P1651.121-YAA(B60C) / P1651.536-YAA(B60C) / P1651.537-YAA(B60C) / P1651.841-YAA(B60C) / P1651.851-YAA(B60C) / P1651.853-YAA(B60C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
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特許第6860712号発明「重荷重用空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6860712号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第6860712号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6860712号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年6月20日に出願した特願2016-121449号の一部を令和2年1月29日に新たな特許出願としたものであって、令和3年3月30日にその特許権の設定登録がされ、同年4月21日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年10月20日 :特許異議申立人泉美幸(以下「申立人」と いう。)による特許異議の申立て 令和4年 2月24日付け:取消理由通知書 同年 4月19日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年 6月17日 :申立人による意見書の提出 同年 8月17日付け:訂正拒絶理由通知書 同年 9月12日 :特許権者による意見書の提出 同年12月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和5年 2月 3日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年 4月28日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年2月3日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許6860712号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを請求するものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 なお、令和4年4月19日の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離daは、0.70mm以下である」 と記載されているのを、 「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離daは、0.70mm以下である」 に訂正する(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離dbは、0.70mm以下である」 と記載されているのを、 「平行に隣接している、前記第2のベルト層と前記内側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離dbは、0.70mm以下である」 に訂正する(請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4~6も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離daは、0.70mm以下であり、 前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離dbは、0.70mm以下である」 と記載されているのを、 「前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との前記最短距離daは、0.70mm以下であり、 平行に隣接している、前記第2のベルト層と前記内側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離dbは、0.70mm以下である」 に訂正する(請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5~6も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、 「前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との最短距離をdとし、」 と記載されているのを、 「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記第2のベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離をdとし、」 に訂正する(請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1は、「第1のベルト層の補強素子」と「外側ベルト層の補強素子」との「最短距離da」が、どのような位置におけるものであるのかを限定し、明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 次に、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0021】に「本実施形態では、ベルト3は、第1のベルト層3cと、該第1のベルト層3cのタイヤ径方向内側に位置する(この例では隣接して位置する)第2のベルト層3bとの2層からなる傾斜ベルト3bcと、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向外側に位置する1層の外側ベルト層3dと、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向内側に位置する1層の内側ベルト層3aと、の4層のベルト層3a~3dからなる。」との記載があり、また、図1より、第1のベルト層3cと外側ベルト層3dが隣接して重なるように配置されていることが看取でき、訂正事項1のうち「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層の層間における」という事項は、本件特許明細書等の記載より自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 また、第1のベルト層と外側ベルト層に関し、「前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子の・・・タイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく」(請求項1)という関係を有するものであるから、外側ベルト層の補強素子と第2のベルト層の補強素子は必ず交差部分を有することになり、当該交差部分における両補強素子間の間隔が、タイヤ径方向で一番短いことになることは明らかである。そうすると、訂正事項1のうち「層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離da」という事項も、本件特許明細書等の記載から自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。 ウ さらに、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を行うものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2は、「第2のベルト層の補強素子」と「内側ベルト層の補強素子」との「最短距離db」が、どのような位置におけるものであるのかを限定し、明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 次に、本件特許明細書等の段落【0021】には、上記(1)イで示した記載があり、また、図1より、第2のベルト層3bと内側ベルト層3aが隣接して重なるように配置されていることが看取でき、訂正事項2のうち「平行に隣接している、前記第2のベルト層と前記内側ベルト層の層間における」という事項は、本件特許明細書等の記載より自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 また、第2のベルト層と内側ベルト層に関し、「前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、・・・前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく」(請求項2)という関係を有するものであるから、内側ベルト層の補強素子と第2のベルト層の補強素子は必ず交差部分を有することになり、当該交差部分における両補強素子間の間隔が、タイヤ径方向で一番短いことになることは明らかである。そうすると、訂正事項2のうち「タイヤ径方向外側から見た際の前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離db」という事項も、本件特許明細書等の記載から自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。 ウ さらに、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明の減縮を行うものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3のうち、「最短距離da」の前に「前記」を追加した訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、訂正事項3のうち、その余の訂正は、訂正事項2と同内容である。 したがって、上記(2)と同様に、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について ア 訂正事項4は、「第1のベルト層の補強素子」と「第2のベルト層の補強素子」との「最短距離d」が、どのような位置におけるものであるのかを限定し、明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 次に、本件特許明細書等の段落【0021】には、上記(1)イで示した記載があり、また、図1より、第1のベルト層3cと第2のベルト層3bが隣接して重なるように配置されていることが看取でき、訂正事項4のうち「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記第2のベルト層の層間における」という事項は、本件特許明細書等の記載より自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 また、第1のベルト層と第2のベルト層に関し、「前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びる」(請求項1)という関係を有するものであるから、第1のベルト層の補強素子と第2のベルト層の補強素子は必ず交差部分を有することになり、当該交差部分における両補強素子間の間隔が、タイヤ径方向で一番短いことになることは明らかである。そうすると、訂正事項4のうち「タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離をdとし」という事項も、本件特許明細書等の記載から自明の事項であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項4は、新規事項を追加するものではない。 ウ さらに、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を行うものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 一群の請求項 本件訂正前の請求項2~6は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているので、本件訂正前の請求項1~6は、一群の請求項であり、訂正事項1~4の訂正は、当該一群の請求項〔1~6〕に対して請求されたものである。 4 申立人の令和5年4月28日付け意見書の主張について 申立人は、訂正事項1~4の「平行」に係る事項について、上記意見書において、ベルト層が平行であることが理解できるものではなく、新規事項の追加となる旨主張する。 しかしながら、上記「平行」が、数学的に厳密な意味でないことは明らかであり、上記2で説示したとおり、各ベルト層が隣接して重なるように配置されている程度の意味であると理解できる。したがって、上記「平行」に係る事項は、新規事項を追加するようなものではなく、申立人の上記主張は採用できない。 また、申立人は、特許権者が訂正事項1~4の「平行」に係る事項の根拠とした図4について、距離を説明する模式図であり、交差部分を示唆するものではなく、仮に交差部分を示すのであれば、補強素子が楕円形となるはずである旨も主張する。 しかしながら、図4は申立人もいうように模式図であり、楕円形として記載されていないことのみをもって、交差部分を示さないことにはならず、上記2で説示したとおり、交差部分を有すること、及び、交差部分における両補強素子間の間隔が最短距離となることは明らかであるので、申立人の上記主張も採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について、訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定しようとするものと認められるところ、その記載は次のとおりである。 「【請求項1】 一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、 前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備えた重荷重用空気入りタイヤであって、 前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、 平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離daは、0.70mm以下であることを特徴とする、重荷重用空気入りタイヤ。 【請求項2】 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側にトレッドを備え、 前記トレッドの厚さは、20~35mmである、請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。 【請求項3】 前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、 平行に隣接している、前記第2のベルト層と前記内側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離dbは、0.70mm以下である、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。 【請求項4】 前記外側ベルト層の補強素子及び前記内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく、 前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との前記最短距離daは、0.70mm以下であり、 平行に隣接している、前記第2のベルト層と前記内側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離dbは、0.70mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。 【請求項5】 平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記第2のベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離をdとし、前記第1のベルト層の補強素子の径をr1、前記第2のベルト層の補強素子の径をr2とするとき、d+r1+r2が2.7mm以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。 【請求項6】 前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。」 第4 取消理由通知(決定の予告)の概要 本件訂正前の請求項1~6に対し通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 [取消理由1] 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信の回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、その請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は 取り消されるべきものである。 [取消理由2] 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~6の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである。 [取消理由3] 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~6の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである。 [引用文献一覧] 1:特開2010-120530号公報 2:特開平6-255312号公報 3:特開平4-154405号公報 4:株式会社ブリヂストン編,「自動車用タイヤの基礎と実際」, 株式会社山海堂,2007年5月1日 初版第3刷発行,p.353~359 5:酒井秀夫,「タイヤ工学 入門から応用まで」, 株式会社グランプリ出版,1993年9月17日 第3刷発行,p.143~144 6:特開平2-88309号公報 7:特開2004-9974号公報 8:特表2015-506874号公報 9:特開2003-211911号公報 10:国際公開第2013/031021号 上記引用文献1~7は、それぞれ申立人が提出した「甲第1号証」~「甲第7号証」である。また、上記引用文献8~10は、それぞれ申立人が提出した「参考資料1」~「参考資料3」である。 第5 当審の判断 事案に鑑み、取消理由3、2から検討する。 第5の1 取消理由3について 1 取消理由3の概要 請求項1の「前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との最短距離da」、請求項4の「前記第2のベルト層の補強素子と前記内側ベルト層の補強素子との最短距離db」という記載、及び、請求項5の「前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子との最短距離をd」という記載における「最短距離」とは、どのようなものであるのかが明確でない。 2 判断 本件訂正により、上記各「最短距離」が、平行に隣接している、各層の層間における、タイヤ径方向外側から見た際の各層の補強素子の交差部分での各層の補強素子同士のタイヤ径方向の最短距離であることが特定され、どのようなものであるのかが明確となった。 したがって、本件発明1~6は、明確である。 第5の2 取消理由2について 1 取消理由2の概要 本件の課題は、「転がり抵抗を低減した重荷重用空気入りタイヤを提供すること」(本件特許明細書等の段落【0005】)であるところ、本件の特許請求の範囲の請求項1~6では、「反対向きに」という構成、及び、「内側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、第1のベルト層の補強素子及び第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい」という構成を特定していないから、課題を解決するための手段が反映されていない。 2 判断 本件特許明細書等の段落【0024】に「また、本発明においては、外側ベルト層3dの補強素子と内側ベルト層3aの補強素子とは、タイヤ周方向に対して互いに交差するように同じ向きに(タイヤ周方向の一方側がタイヤ幅方向の同じ方向に傾斜するように)異なる角度で傾斜して延びていてもよい。」と記載されており、補強素子の向きが反対向きであることを必須としていないことが示されている。 また、段落【0034】に「第1のベルト層3cの補強素子と外側ベルト層3dの補強素子との最短距離da」を小さくすることについて、「ここで、外側ベルト層3dの補強素子と第1のベルト層3cの補強素子との間のゴムの歪エネルギーロスをさらに低減させて、転がり抵抗をさらに低減させる観点からは、上記最短距離daは、0.70mm以下とすることがより好ましく、0.60mm以下とすることがさらに好ましい。」(下線は当審で付加。以下同様。)と記載されている。すなわち、必ずしも内側ベルト層の補強素子の傾斜角度と第1のベルト層の補強素子及び第2のベルト層の補強素子の傾斜角度との関係を特定しなくとも、第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子との最短距離daを0.70mm以下としたことにより、転がり抵抗が低減され、上記課題を解決するための効果が得られることが理解できる。 したがって、請求項1~6の記載は、課題を解決するための手段が反映されていないとはいえず、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものである。 第5の3 取消理由1について 1 引用文献 (1)引用文献1について 引用文献1の特許請求の範囲、段落【0001】、【0004】、【0013】~【0019】、【0027】~【0030】及び図1、3、7の記載を総合し、特に段落【0030】の【表2】の各「発明例」及び図7に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明A] 「一対のビードコア2,2間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビードコア2,2にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカス3を有し、 前記カーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルト層4cと、該ベルト層4cのタイヤ径方向内側に位置するベルト層4bとの2層からなり、前記ベルト層4cのコード4ccと前記ベルト層4bのコード4bcとが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して18°の角度で傾斜して延びる、前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bを備え、 前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bのタイヤ径方向外側にトレッドを備えた重荷重用空気入りタイヤ1であって、 前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bのタイヤ径方向外側に、1層のベルト層4dをさらに備え、前記ベルト層4dのコード4dcは、タイヤ周方向に対して、30°以上44°以下の角度で傾斜して延び、 前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bのタイヤ径方向内側に、1層のベルト層4aをさらに備え、前記ベルト層4aのコード4acは、タイヤ周方向に対して、50°の角度で傾斜して延び、 前記ベルト層4dのコード4dcのタイヤ周方向に対する30°以上44°以下の角度は、前記ベルト層4cのコード4cc及び前記ベルト層4bのコード4bcのタイヤ周方向に対する角度18°より大きく、 前記ベルト層4aのコード4acのタイヤ周方向に対する50°の角度は、前記ベルト層4cのコード4cc及び前記ベルト層4bのコード4bcのタイヤ周方向に対する角度18°より大きく、 前記ベルト層4dのコード4dc及び前記ベルト層4aのコード4acのそれぞれのタイヤ周方向に対する30°以上44°以下の角度及び50°の角度は、前記ベルト層4cのコード4cc及び前記ベルト層4bのコード4bcのそれぞれのタイヤ周方向に対する角度18°及び角度18°より大きい、 重荷重用空気入りタイヤ1。」 (2)引用文献6について 引用文献6の第2ページ左上欄第2行~同ページ右上欄第4行、同ページ左下欄第13行~3ページ左上欄第19行、同ページ右下欄、第4ページ左上欄及び第1、2図の記載を総合し、特に、「第1表」の「実施例1」、「第2表」の「実施例2」及び第1、2図に着目すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明B] 「一対のビードコア2,2間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビードコア2,2にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカス6を有し、 前記カーカス6のクラウン部のタイヤ径方向外側に、第2の中のベルトプライ14と、該第2の中のベルトプライ14のタイヤ径方向内側に位置する第1の中のベルトプライ13との2層からなり、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコードと前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードとが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して16°の角度で傾斜して延びる、前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13を備え、 前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13のタイヤ径方向外側にトレッドを備えた重荷重用のラジアルタイヤ1であって、 前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13のタイヤ径方向外側に、1層の外のベルトプライ10をさらに備え、前記外のベルトプライ10のベルトコードは、タイヤ周方向に対して、67°の角度で傾斜して延び、 前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13のタイヤ径方向内側に、1層の内のベルトプライ12をさらに備え、前記内のベルトプライ12のベルトコードは、タイヤ周方向に対して、67°の角度で傾斜して延び、 前記外のベルトプライ10のベルトコードのタイヤ周方向に対する67°の角度は、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコード及び前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードのタイヤ周方向に対する角度16°より大きく、 前記内のベルトプライ12のベルトコードのタイヤ周方向に対する67°の角度は、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコード及び前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードのタイヤ周方向に対する角度16°より大きく、 前記外のベルトプライ10のベルトコード及び前記内のベルトプライ12のベルトコードのそれぞれのタイヤ周方向に対する67°の角度及び67°の角度は、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコード及び前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードのそれぞれのタイヤ周方向に対する角度16°及び角度16°より大きい、 重荷重用のラジアルタイヤ1。」 (3)引用文献9について 引用文献9には、次の記載がある。 ・「【請求項1】トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内部に配されたベルト層とを具えた空気入りタイヤであって、 前記ベルト層は、前記カーカスに隣接して配されたタイヤ半径方向の最内側の第1のベルトプライと、その外側に配された第2のベルトプライと、この第2のベルトプライの外側に配された第3のベルトプライとを少なくとも含むとともに、 タイヤ半径方向で隣接する前記各ベルトプライは、ベルトコードが互いに交差する向きに配されるとともに、 前記第1、第2及び3のベルトプライのタイヤ赤道に対するベルトコードの傾斜角度θ1、θ2及びθ3、 該第1、第2及び3のベルトプライのそれぞれのタイヤ軸方向の巾BW1、BW2及びBW3、 トレッド接地幅TW、 前記第1のベルトプライと前記第2のベルトプライとの間のベルトコード間距離d12、及び前記第2のベルトプライと前記第3のベルトプライとの間のベルトコード間距離23が下式を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。 15゜<θ1<21゜ 15゜<θ2<21゜ 47゜<θ3<53゜ 0.80<BW2/TW<0.95 BW1>BW2>BW3 0.15mm<d12<0.40mm 0.35mm<d23<0.85mm 【請求項2】前記ベルト層は、前記第3のベルトプライの外側に配される第4のベルトプライを含むとともに、 該第4のベルトプライのタイヤ赤道に対するベルトコードの傾斜角度θ4、該第4のベルトプライのタイヤ軸方向の巾BW4、及び該第4のベルトプライと前記第3のベルトプライとの間のベルトコード間距離d34が下式を満足することを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 15゜<θ4<21゜ BW3>BW4 0.15mm<d34<0.40mm」 ・「【0011】 【発明の実施の形態】以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の実施形態としてトラック、バスなどに使用されるチューブレスタイプの重荷重用の空気入りタイヤの断面図、図2はそのトレッド部の拡大断面図、図3はそのベルト層を展開した展開略図を示している。」 ・「【0019】本発明のタイヤ1は、前記カーカス6に隣接して配されたタイヤ半径方向最内側の第1のベルトプライ7Aのベルトコード10が、図7に示した従来のもに比して著しく小さい角度θ1で傾けて配列され、しかも最も広い巾BW1で形成される。発明者らの種々の実験の結果、カーカス6を直に締め付ける第1のベルトプライ7Aのコード角度θ1とプライの巾BW1とをこのように限定すると、ベルト層7によるトレッド補強効果を高め、タイヤ強度を向上させる。同様に第2のベルトプライ7Bと、第4のベルトプライ7Dとにおいても、ベルトコード10の角度θ2、θ4を15゜よりも大かつ21゜よりも小に限定すると、タガ効果をさらに高めトレッド部2の膨張を抑制することができる。 【0020】またベルト層7は、第3のベルトプライ7Bのベルトコード10が、第1、第2及び第4のベルトプライ7A、7B及び7Dのベルトコード10に比してより大きな角度θ2、具体的には47゜よりも大かつ53゜よりも小に設定される。このような角度の大きいベルトコード10を具える第3のベルトプライ7Cは、タイヤ強度を損ねることなしにベルト層7への突起包み込み能力を高めるのに役立つ。即ち、該第3のベルトプライ7Bの前記角度θ2が47゜以下の場合、突起包み込み能力が低下し易く、逆に53゜以上になると、ベルト層7の剛性を低下させ易く耐久性の悪化を招き易くなる。」(合議体注:段落【0019】の「従来のもに」は「従来のものに」の誤記と認める。) ・「【0025】また図4に示すように、第1のベルトプライ7Aと第2のベルトプライ7Bとの間のタイヤ半径方向のベルトコード間距離d12、第2のベルトプライ7Bと第3のベルトプライ7Cとの間のベルトコード間距離d23、及び第3のベルトプライ7Cと第4のベルトプライ7Dとの間のベルトコード間距離d34が下式を満たすように設定される。なお該コード間距離は、タイヤ赤道Cを中心とするトレッド接地巾TWの50%の領域で満たすものとする。 0.15mm<d12<0.40mm 0.35mm<d23<0.85mm 0.15mm<d34<0.40mm」 ・図2は次のとおりである。 [図:0001403609000001.jpg] ・図4は次のとおりである。 [図:0001403609000002.jpg] (4)引用文献10について 引用文献10には次の記載がある。 ・「[請求項1] 周方向補強層を含む複数のベルトプライを積層して成るベルト層を備える空気入りタイヤであって、 前記ベルト層が、少なくとも2枚の前記ベルトプライを前記周方向補強層のタイヤ径方向外側に有し、且つ、 隣り合う前記ベルトプライの各ベルトコード間のタイヤ径方向の距離をコード間距離と呼ぶと共に、前記周方向補強層からタイヤ径方向外側の領域にある複数の前記コード間距離をタイヤ径方向内側の前記コード間距離から順にT1、T2、・・・、Tk(k:前記周方向補強層のタイヤ径方向外側にある前記ベルトプライの枚数)とするときに、 隣り合うベルトプライのコード間距離T1~Tkが、T1≦T2≦・・・≦TkかつT1<Tkの関係を有することを特徴とする空気入りタイヤ。」 ・「[0021][空気入りタイヤ] 図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤ1の一例として、長距離輸送用のトラック、バスなどに装着される重荷重用ラジアルタイヤを示している。」 ・「[0027] ベルト層14は、高角度ベルト141と、一対の交差ベルト142、143と、ベルトカバー144と、周方向補強層145とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される(図2参照)。」 ・「[0039] 一般に、ベルト層が周方向補強層を有する構成では、タイヤ周方向の剛性が大きいため、急制動時および急加速時にトレッド部にかかる負荷が大きい。このため、ベルト層が周方向補強層を有さない構成と比較して、ヒールアンドトゥ摩耗やブロックティアが発生し易いという課題がある。 [0040] そこで、この空気入りタイヤ1では、ベルト層14が以下の構成を有している(図4参照)。 [0041] まず、隣り合うベルトプライの各ベルトコード間のタイヤ径方向の距離を、コード間距離と呼ぶ。このコード間距離は、隣り合うベルトプライについて、それぞれ定義できる。また、コード間距離は、ベルトコード間のゴム材料の厚さとなる。また、周方向補強層145からタイヤ径方向外側の領域にある複数のコード間距離をタイヤ径方向内側のコード間距離から順にT1、T2、・・・、Tk(k:周方向補強層145のタイヤ径方向外側にあるベルトプライの枚数)とする。 ・・・ [0044] このとき、コード間距離T1~Tkが、T1≦T2≦・・・≦TkかつT1<Tkの関係を有する。 [0045] 例えば、図4の構成では、ベルト層14が、高角度ベルト141、内径側交差ベルト142、周方向補強層145、外径側交差ベルト143およびベルトカバー144を、タイヤ径方向内側からこの順に積層して構成されている。したがって、ベルトカバー144がタイヤ径方向の最も外側に配置されている。また、これらのベルトプライ141~145のベルトコード1411~1451が、タイヤ径方向に相互に離間して配置されている。これにより、隣り合うベルトプライについて、それぞれコード間距離が生じている。 [0046] また、周方向補強層145からタイヤ径方向外側の領域にて、周方向補強層145と外径側交差ベルト143との間のコード間距離T1と、外径側交差ベルト143とベルトカバー144との間のコード間距離T2とが、T1<T2の関係を有している。具体的には、シート状の緩衝ゴム146が、外径側交差ベルト143とベルトカバー144との間に配置されて、これらのコード間距離T2が調整されている。これにより、タイヤ径方向の外側にあるコード間距離T2が、内側にあるコード間距離T1よりも大きく設定されている。なお、緩衝ゴム146は、例えば、周方向補強層145のベルトコード1451のコートゴムと同一のゴム材料から構成される。 ・・・ [0048] なお、図4の構成では、コード間距離T2と、内側にあるコード間距離T1とが、2.0≦T2/T1≦4.0の関係を有することが好ましい。また、このとき、コード間距離T1、T2が、0.2[mm]≦T1≦0.5[mm]かつ0.3[mm]≦T2≦1.5[mm]の範囲内にあることが好ましい。これにより、コード間距離T1、T2が適正化される。」 ・「[0106] 図10および図11は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。 ・・・ [0110] 実施例1~21の空気入りタイヤ1は、図4あるいは図8の構成を有し、ベルトプライのコード間距離T1、T2、エンド数E0~E2およびモジュラスM1、M2が適正化されている。また、外径側交差ベルト143のエッジ部と周方向補強層145のエッジ部との位置関係S/Wが、S/W=0.3に設定されている。また、トレッド部がブロックパターン(図示省略)を有している。 [0111] 従来例の空気入りタイヤは、実施例1の空気入りタイヤ1と比較して、ベルトプライのコード間距離T1、T2、エンド数E0~E2、モジュラスM1、M2などにおいて相異している。 [0112] 試験結果に示すように、実施例1~24の空気入りタイヤでは、従来例の空気入りタイヤと比較して、タイヤの耐ヒールアンドトゥ摩耗性能、耐ブロックティア性能および耐久性能が向上することが分かる。」 ・図2は次のとおりである。 [図:0001403609000003.jpg] ・図4は次のとおりである。 [図:0001403609000004.jpg] ・図8は次のとおりである。 [図:0001403609000005.jpg] ・図10は次のとおりである。 [図:0001403609000006.jpg] ・図11は次のとおりである。 [図:0001403609000007.jpg] 2 対比・判断 2-1 引用発明Aを主たる引用発明とした場合 2-1-1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明Aとを対比する。 ア 引用発明Aの「一対のビードコア2,2」は、本件発明1の「ビード部」に相当し、同様に、「カーカス3」は「カーカス」に、「カーカス本体部」は「カーカス本体部」に、「カーカス折返し部」は「カーカス折返し部」及び「カーカス折り返し部」のいずれにも、「クラウン部」は「クラウン部」に、「ベルト層4c」及び「ベルト層4b」はそれぞれ「第1のベルト層」及び「第2のベルト層」に、また、これらはいずれも「傾斜ベルト」に、「ベルト層4cのコード4cc」及び「ベルト層4bのコード4bc」はそれぞれ「第1のベルト層の補強素子」及び「第2のベルト層の補強素子」に、「18°の角度」は「5°~30°の角度」及びその「傾斜角度」に、「重荷重用空気入りタイヤ1」は「重荷重用空気入りタイヤ」に相当する。 さらに同様に、「ベルト層4d」及び「ベルト層4a」はそれぞれ「外側ベルト層」及び「内側ベルト層」に、「ベルト層4dのコード4dc」及び「ベルト層4aのコード4ac」はそれぞれ「外側ベルト層の補強素子」及び「内側ベルト層の補強素子」に、「30°以上44°以下の角度」は「30°~90°の角度」及びその「傾斜角度」に、「50°の角度」は「30°~90°の角度」及びその「傾斜角度」に相当する。 イ 上記アから、引用発明Aの 「一対のビードコア2,2間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビードコア2,2にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカス3を有し、 前記カーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に、ベルト層4cと、該ベルト層4cのタイヤ径方向内側に位置するベルト層4bとの2層からなり、前記ベルト層4cのコード4ccと前記ベルト層4bのコード4bcとが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して18°の角度で傾斜して延びる、前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bを備え」た「重荷重用空気入りタイヤ1であって、 前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bのタイヤ径方向外側に、1層のベルト層4dをさらに備え、前記ベルト層4dのコード4dcは、タイヤ周方向に対して、30°以上44°以下の角度で傾斜して延び、 前記ベルト層4c及び前記ベルト層4bのタイヤ径方向内側に、1層のベルト層4aをさらに備え、前記ベルト層4aのコード4acは、タイヤ周方向に対して、50°の角度で傾斜して延び、 前記ベルト層4dのコード4dcのタイヤ周方向に対する30°以上44°以下の角度は、前記ベルト層4cのコード4cc及び前記ベルト層4bのコード4bcのタイヤ周方向に対する角度18°より大きく、 前記ベルト層4aのコード4acのタイヤ周方向に対する50°の角度は、前記ベルト層4cのコード4cc及び前記ベルト層4bのコード4bcのタイヤ周方向に対する角度18°より大き」い、「重荷重用空気入りタイヤ1。」は、 本件発明1の 「一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、 前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びる、 傾斜ベルトを備えた重荷重用空気入りタイヤであって、 前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大き」い、「重荷重用空気入りタイヤ。」に相当する。 以上から、本件発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点1A> 「一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、 前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備えた重荷重用空気入りタイヤであって、 前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい、重荷重用空気入りタイヤ。」 <相違点1A> 本件発明1では、「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離daは、0.70mm以下である」のに対して、引用発明Aでは、当該交差部分での第1のベルト層の補強素子(ベルト層4cのコード4cc)と外側ベルト層の補強素子(ベルト層4dのコード4dc)とのタイヤ径方向の最短距離が特定されていない点。 (2)判断 まず、引用文献9について検討する。 引用文献9は、第1~4のベルトプライを有する重荷重用の空気入りタイヤに関するものである。そして、本件発明1の「第1のベルト層」、「外側ベルト層」に相当するのは、それぞれ「第3のベルトプライ7C」、「第4のベルトプライ7D」であり、同様に、「最短距離da」に相当するのは、「第3のベルトプライ7Cと第4のベルトプライ7Dとの間のベルトコード間距離d34」であって、その請求項2や段落【0025】に「0.15mm<d34<0.40mm」との記載があり、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項が開示されている。 しかしながら、引用文献9に記載されるものは、その請求項1や段落【0019】、【0020】に示されるように、少なくとも「第1、第2及び3のベルトプライのタイヤ赤道に対するベルトコードの傾斜角度θ1、θ2及びθ3」について、「15゜<θ1<21゜ 15゜<θ2<21゜ 47゜<θ3<53゜」という角度関係を必須のものとするものであり、さらに、「第4のベルトプライ」を有する場合、その請求項2や段落【0019】に示されるように、さらに、「第4のベルトプライのタイヤ赤道に対するベルトコードの傾斜角度θ4」が「15゜<θ4<21゜」であることを要するものである。そして、段落【0019】、【0020】の記載からみて、それら各傾斜角度と各ベルトコード間距離を特定範囲としたことによって、その効果を発揮するものと理解できる。 すなわち、引用文献9に開示される「d34」は、この傾斜角度θ3、θ4を前提とするものであるが、引用発明Aの「第1のベルト層の補強素子(ベルト層4cのコード4cc)」の角度範囲である「5°~30°」及び「外側ベルト層の補強素子(ベルト層4dのコード4dc)」の角度範囲である「30°~90°」は、この傾斜角度θ3及びθ4から外れるものである。そうすると、引用発明Aにおいて、引用文献9の「d34」の数値のみを取り出して適用する動機付けはないというべきである。 したがって、引用文献9を参酌したとしても、引用発明Aにおいて、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項を容易想到とすることはできない。 次に、引用文献10について検討する。 段落[0110]に「実施例1~21の空気入りタイヤ1は、図4あるいは図8の構成を有し」と記載されているが、図10、11の表の「ベルト層構造」の項目は、実施例1~10が図4、実施例11~16が図8、実施例17~20が図9、実施例21~24が図番の記載なしとなっているので、上記段落の記載と整合している実施例1~16について検討する。 引用文献10の実施例1~16は、タイヤ径方向外側から、ベルトカバー144,緩衝ゴム146、交差ベルト143、周方向補強層145、交差ベルト142、高角度ベルト141を積層してなるベルト層14を有する重荷重用ラジアルタイヤに関するものである。そして、本件発明1の「第1のベルト層」、「外側ベルト層」に相当するのは、それぞれ「交差ベルト143」、「ベルトカバー144」であり、同様に、「最短距離da」に相当するのは、「コード間距離T2」であって、図10、11の表には、当該T2について、実施例2は0.5mm、実施例8は0.3mm、実施例12は0.6mm、実施例13は0.7mm、実施例14は0.3mmであることが示され、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項が開示されている。 しかしながら、引用文献10に記載されるものは、その請求項1、段落[0041]、[0044]に示されるように、「隣り合うベルトプライの各ベルトコード間のタイヤ径方向の距離をコード間距離と呼ぶと共に、前記周方向補強層からタイヤ径方向外側の領域にある複数の前記コード間距離をタイヤ径方向内側の前記コード間距離から順にT1、T2、・・・、Tk(k:前記周方向補強層のタイヤ径方向外側にある前記ベルトプライの枚数)とするときに、隣り合うベルトプライのコード間距離T1~Tkが、T1≦T2≦・・・≦TkかつT1<Tkの関係を有する」ことを必須のものとするものであり、「周方向補強層」からタイヤ径方向外側の領域にあるコード間距離の大小関係を特定するものである。そして、段落[0039]~[0041]、[0112]の記載からみて、そのような大小関係を特定することにより、その効果を発揮するものと理解できる。 すなわち、引用文献10に開示される「T2」は、「周方向補強層」を有することを前提とするものであるが、そのような「周方向補強層」を有していない引用発明Aにおいて、引用文献10の一部の実施例の「T2」の数値のみを適用する動機付けはないというべきである。 したがって、引用文献10を参酌したとしても、引用発明Aにおいて、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項を容易想到とすることはできない。 さらに、引用文献2(特に段落【0001】~【0006】、【0026】、図1~3参照。)、引用文献7(特に段落【0001】、【0002】、【0014】、【0015】、【0020】~【0022】、【0038】の表2、図1、4、6、7参照。)、引用文献8(特に請求項1、段落【0001】、【0006】~【0008】、図2参照。)について検討すると、それらに記載されるものは、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項、すなわち、外側ベルト層、第1の傾斜ベルト層、第2の傾斜ベルト層、内側ベルト層のうちの、上記交差部分での第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離を特定するものではなく、引用発明1Aに上記各引用文献に記載された事項を適用したとしても、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項を有するものには至らない。 (なお、申立人は、令和5年4月28日付け意見書の3ページにおいて、特許権者が提出した乙第3号証(特開平11-192810号公報)も、表3に、層間ゲージHが0.54mm、0.58mm、0.60mmであるものが示されている旨主張するが、乙第3号証に記載されるものも、段落【0055】及び図8に記載されるように、上記交差部分での第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離を特定するものではなく、引用発明1Aに乙第3号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項を有するものには至らない。) 加えて、引用文献3~5については、取消理由通知(決定の予告)で指摘したように、トレッド内に複数のベルト層が積層されている場合、隣接するベルト層同士について補強素子の径方向の間隔を狭くすれば、補強素子間に位置するゴム層が薄くなり、そのゴム量が減った分トレッドの重量が軽減されることは技術常識であり、また、トレッドの重量が軽減されることにより転がり抵抗が軽減されることも技術常識であることを示すにとどまり、上記相違点1Aに係る本件発明1の事項を開示するものではない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明A及び引用文献2~5、7~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2-1-2 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、引用発明A及び引用文献2~5、7~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2-2 引用発明Bを主たる引用発明とした場合 2-2-1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明Bとを対比する。 ア 引用発明Bの「一対のビードコア2,2」は、本件発明1の「ビード部」に相当し、同様に、「カーカス6」は「カーカス」に、「カーカス本体部」は「カーカス本体部」に、「カーカス折返し部」は「カーカス折返し部」及び「カーカス折り返し部」のいずれにも、「クラウン部」は「クラウン部」に、「第2の中のベルトプライ14」及び「第1の中のベルトプライ13」はそれぞれ「第1のベルト層」及び「第2のベルト層」に、また、これらはいずれも「傾斜ベルト」に、「第2の中のベルトプライ14のベルトコード」及び「第1の中のベルトプライ13のベルトコード」はそれぞれ「第1のベルト層の補強素子」及び「第2のベルト層の補強素子」に、「16°の角度」は「5°~30°の角度」及びその 「傾斜角度」に、「重荷重用のラジアルタイヤ1」は「重荷重用空気入りタイヤ」に相当する。 さらに同様に、「外のベルトプライ10」及び「内のベルトプライ12」はそれぞれ「外側ベルト層」及び「内側ベルト層」に、「外のベルトプライ10のベルトコード」及び「内のベルトプライ12のベルトコード」はそれぞれ「外側ベルト層の補強素子」及び「内側ベルト層の補強素子」に、「67°の角度」は「30°~90°の角度」及びその「傾斜角度」に相当する。 イ 上記アから、 引用発明Bの 「一対のビードコア2,2間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビードコア2,2にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカス6を有し、 前記カーカス6のクラウン部のタイヤ径方向外側に、第2の中のベルトプライ14と、該第2の中のベルトプライ14のタイヤ径方向内側に位置する第1の中のベルトプライ13との2層からなり、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコードと前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードとが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して16°の角度で傾斜して延びる、前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13を備え」た「重荷重用のラジアルタイヤ1であって、 前記カーカス折返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13のタイヤ径方向外側に、1層の外のベルトプライ10をさらに備え、前記外のベルトプライ10のベルトコードは、タイヤ周方向に対して、67°の角度で傾斜して延び、 前記第2の中のベルトプライ14及び前記第1の中のベルトプライ13のタイヤ径方向内側に、1層の内のベルトプライ12をさらに備え、前記内のベルトプライ12のベルトコードは、タイヤ周方向に対して、67°の角度で傾斜して延び、 前記外のベルトプライ10のベルトコードのタイヤ周方向に対する67°の角度は、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコード及び前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードのタイヤ周方向に対する角度16°より大きく、 前記内のベルトプライ12のベルトコードのタイヤ周方向に対する67°の角度は、前記第2の中のベルトプライ14のベルトコード及び前記第1の中のベルトプライ13のベルトコードのタイヤ周方向に対する角度16°より大き」い、「重荷重用のラジアルタイヤ1。」は、 本件発明1の 「一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、 前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備えた重荷重用空気入りタイヤであって、 前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大き」い、「重荷重用空気入りタイヤ。」に相当する。 以上から、本件発明1と引用発明Bとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点1B> 「一対のビード部間をトロイド状に跨るカーカス本体部と、該カーカス本体部から延び、前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に折り返されてなるカーカス折返し部と、からなるカーカスを有し、 前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に、第1のベルト層と、該第1のベルト層のタイヤ径方向内側に位置する第2のベルト層との2層からなり、前記第1のベルト層の補強素子と前記第2のベルト層の補強素子とが、層間で互いに交差するようにタイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びる、傾斜ベルトを備えた重荷重用空気入りタイヤであって、 前記カーカス折り返し部のタイヤ径方向外側端は、タイヤ最大幅位置よりタイヤ径方向内側に位置し、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向外側に、1層の外側ベルト層をさらに備え、前記外側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記傾斜ベルトのタイヤ径方向内側に、1層の内側ベルト層をさらに備え、前記内側ベルト層の補強素子は、タイヤ周方向に対して、30°~90°の角度で傾斜して延び、 前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい、重荷重用空気入りタイヤ。」 <相違点1B> 本件発明1では、「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子との交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離daは、0.70mm以下である」のに対して、引用発明Bでは、当該交差部分での第1のベルト層の補強素子(第2の中のベルトプライ14のベルトコード)と外側ベルト層の補強素子(外のベルトプライ10のベルトコード)とのタイヤ径方向の最短距離が特定されていない点。 (2)判断 相違点1Bは、上記2-1-1(イ)で検討した相違点1Aと同内容である。 したがって、上記2-1-1(イ)での説示と同様の理由により、本件発明1は、引用発明B及び引用文献2~5、7~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2-2-2 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、引用発明B及び引用文献2~5、7~10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由及び令和5年4月28日付け意見書における本件訂正に係る理由の主張について 1 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件) ア 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の29~30ページの「ウ(理由1)サポート要件」の(ア)~(ウ)において、請求項1に記載される各ベルト層の補強素子の角度の数値範囲について、発明の詳細な説明には、それぞれ一つの角度のものしか記載されておらず、サポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、本件発明は、その課題(転がり抵抗の低減)を、個々のベルト層の補強素子の角度を特定の値とすることによって解決するものではなく、4つのベルト層の補強素子の角度が所定の範囲で組み合わされた構成を前提に、第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離daを特定することにより解決されるものであるから、仮に発明の詳細な説明において、4つのベルト層の補強素子の角度として1組しか提示されていないとしても、請求項1に特定される所定の範囲内の,それ以外の角度の組み合わせでは解決がはかれないとする理由はない。そして、本件明細書等の段落【0028】、【0037】、【0038】には、4つのベルト層の補強素子が請求項1で特定される所定の範囲内の角度にあれば、課題の解決に貢献することも示唆されている。 したがって、請求項1の記載はサポート要件を満たしている。 イ 申立人は、申立書の30~31ページの「ウ(理由1)サポート要件」の(エ)、(オ)において、請求項1の「最短距離daは、0.70mm以下である」ことについて、0.70mmである表1の発明例4は、0.75mmの発明例2及び3よりも転がり抵抗が大きいから、発明を解決するための手段が反映されておらず、サポート要件違反である旨と、表1の発明例は、0.70mmと0.60mmのもののみであるからサポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、発明例4も、表1に記載の0.75mmの比較例より転がり抵抗は少ないことが記載されており、請求項1に課題解決手段が反映されていないとはいえない。また、表1によれば、転がり抵抗は、例えば、比較例(最短距離da=0.75mm)、発明例4(最短距離da=0.70mm)、発明例6(最短距離da=0.60mm)と順に小さくなっており、最短距離daが0.70mm以下であれば、課題を解決することが理解できる。そして、このことは本件特許明細書等の段落【0034】にも記載されている。したがって、請求項1の記載は、サポート要件を満たしている。 ウ 申立人は、申立書の31ページの「ウ(理由1)サポート要件」の(カ)において、請求項2の「トレッドの厚さは、20~35mmである」ことについて、表1に示される発明例は、29.8~30.0mmのもののみであるからサポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書等の段落【0033】には、請求項2に記載の数値範囲とともに、その数値範囲における作用効果が記載されており、請求項2の記載は、サポート要件を満たしている。 エ 申立人は、申立書の31ページの「ウ(理由1)サポート要件」の(キ)において、請求項3、4の「最短距離dbは、0.70mm以下である」ことについて、表1に示される発明例は、0.70mmと0.60mmのもののみであるからサポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書等の段落【0035】、【0036】には、請求項3、4に記載の数値範囲とともに、その数値範囲における作用効果が記載されており、請求項3、4の記載は、サポート要件を満たしている。 オ 申立人は、申立書の32ページの「ウ(理由1)サポート要件」の(ク)において、請求項5の「d+r1+r2が2.7mm以上である」ことについて、表1に示される発明例において、daが0.70mm以下のものは発明4~6のみであり、それらは、d+r1+r2が2.6mmであるからサポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書等の段落【0039】には、請求項5に記載の数値範囲とともに、その数値範囲における作用効果が記載されており、当該作用効果はdaが0.70mm以下においても同様であることが理解できるので、請求項5の記載は、サポート要件を満たしている。 カ 申立人は、申立書の32ページの「ウ(理由1)サポート要件」の(ケ)において、請求項6の「前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より小さい」ことについて、表1に示される発明例において、daが0.70mm以下のものは発明4~6のみであり、それらは、両傾斜角度が等しいものであるからサポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書等の段落【0040】には、請求項6に記載の傾斜角度の関係とともに、その作用効果が記載されており、当該作用効果はdaが0.70mm以下においても同様であることが理解できるので、請求項6の記載は、サポート要件を満たしている。 (2)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件) ア 申立人は、申立書の34~35ページの「オ(理由3)実施可能要件」の(ア)において、発明の実施の形態の記載において、測定手段、具現すべき材料、装置、工程等が不明瞭であり、当業者が各請求項に係る発明を実施できない旨主張する。 しかしながら、本件発明1~6において特定される各ベルト層はその補強素子自体は、タイヤにおいて一般的に用いられるものであり、また、その補強素子の傾斜角度や距離を特定するものも一般的に知られていることである。 そうすると、具体的な測定手段等の記載がなくとも、本件特許明細書等の記載及び技術常識に基づき、当業者が本件発明1~6を実施できないとはいえないので、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしている。 イ 申立人は、申立書の35~37ページの「オ(理由3)実施可能要件」の(イ)、(ウ)において、「最短距離da、db」に関し、発明の詳細な説明の段落【0034】、【0035】に「0.6mm以下であることが好ましい」と記載された後に「0.70mm以下がより好ましく」と記載されているので、前者の前提のもとでは後者を実施できないとして、当業者が各請求項に係る発明を実施できない旨主張する。 しかしながら、一部文章の不整合があったとしても、本件特許明細書等の記載全体をみれば、当業者が本件発明1~6を実施できないとはいえないので、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしている。 ウ 申立人は、申立書の37ページの「オ(理由3)実施可能要件」の(エ)において、「d+r1+r2」に関し、発明の詳細な説明の段落【0039】に「d+r1+r2が2.7mm以上であることが好ましい・・・上記最短距離dを0.64mm以下とした効果を得られやすく・・・従って、補強素子の径r1、r2は、0.8~1.3mmとすることが好ましい」と記載されており、最短距離dを0.64mm以下とする場合、r1+r2が2.06mm以上でなければ、d+r1+r2を2.7mm以上とすることができず、r1、r2が0.8~1.0mmの範囲で、d+r1+r2を2.7mm以上とすることができるのか記載されていないから、当業者が請求項5に係る発明を実施できない旨主張する。 申立人の上記主張は、「r1+r2が2.06mm以上でなければ」ということからみて、「r1、r2が0.8~1.0mmの範囲で」とは、「r1、r2が0.8~1.03mm未満の範囲で」という趣旨と思われるが、いずれにせよ、r1、r2は、上限値1.3mmまで含むものである。また、当該段落【0039】の「r1、r2」の数値範囲は、単に好ましい値を記載しているにすぎず、請求項5にそれらの数値範囲が特定されているわけでもなく、当業者が本件発明5を実施できないとはいえないので、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たしている。 2 令和5年4月28日付け意見書における本件訂正に係る理由の主張について (1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件) ア 申立人は、上記意見書の2ページの(2-1)において、「平行に隣接しているベルト層」及び「タイヤ径方向外側から見た際の補強素子同士の交差部分」は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないので、サポート要件違反である旨主張する。 しかしながら、上記「第2 2(1)」で説示したとおり、当該「平行に隣接しているベルト層」は、各ベルト層が隣接して重なるように配置されている程度の意味であると理解できるところ、各ベルト層に係る説明である段落【0021】の「ベルト3は、第1のベルト層3cと、該第1のベルト層3cのタイヤ径方向内側に位置する(この例では隣接して位置する)第2のベルト層3bとの2層からなる傾斜ベルト3bcと、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向外側に位置する1層の外側ベルト層3dと、傾斜ベルト3bcのタイヤ径方向内側に位置する1層の内側ベルト層3aと、の4層のベルト層3a~3dからなる。」という記載からみれば、申立人のいう「平行に隣接しているベルト層」は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではない。 イ また、各ベルト層の補強素子について、段落【0022】に「図2に示すように、第1のベルト層3cの補強素子と第2のベルト層3bの補強素子とは、層間で互いに交差するように、タイヤ周方向に対して5°~30°の角度で傾斜して延びている。」、段落【0023】に「また、図2に示すように、本実施形態のタイヤでは、外側ベルト層3dの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、第1のベルト層3cの補強素子及び第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい。さらに、図2に示すように、本実施形態では、内側ベルト層3aの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、第1のベルト層3cの補強素子及び第2のベルト層3bの補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きい。」と記載され、各ベルト層間での補強素子はタイヤ径方向外側から見た際に必ず交差部分を有することになるから、申立人のいう「タイヤ径方向外側から見た際の補強素子同士の交差部分」は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものではない。 ウ したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (2)特許法第36条第6項第2号(明確性要件) ア 申立人は、上記意見書の2~3ページの(2-2)において、請求項1の「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間における、タイヤ径方向外側から見た際の前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離da」という記載は、「平行に隣接している」が「前記第1のベルト層と前記外側ベルト層」を修飾するのか、「前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子」を修飾するのか明確でない旨主張する。 しかしながら、請求項1には、「前記外側ベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、前記第1のベルト層の補強素子及び前記第2のベルト層の補強素子のタイヤ周方向に対する傾斜角度より大きく」という事項が特定され、第1のベルト層の補強素子と外側ベルト層の補強素子は平行とはならないものであるから、「平行に隣接している」は「前記第1のベルト層と前記外側ベルト層」を修飾することは明らかである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 イ また、申立人は、「平行に隣接している」が「前記第1のベルト層と前記外側ベルト層」を修飾するとしても、第1のベルト層と外側ベルト層とが全範囲において平行に隣接しているのか、平行に隣接している部分を有するのか明確でなく、さらに、平行に隣接している部分を意味するとしても、どの部分であるのか明確でなく、どのような場合に平行であるのかも明確でない旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書等の段落【0041】、【0042】や図1~3等に示されるように、本件において、各ベルト層の幅は同一でないものも含むものであり、また、隣接するベルト層において、幅方向端部が重ならないもの(段落【0041】及び図1の「最短距離D」参照。)も含むものである。そうすると、「前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間」とは、上記「第2 2(1)」で示したように、「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層」とは、隣接して重なるように配置されているものであり、「前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間」とは、重なるように配置された箇所における「層間」と理解できる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 ウ さらに、申立人は、「交差部分での前記第1のベルト層の補強素子と前記外側ベルト層の補強素子とのタイヤ径方向の最短距離da」は、全ての交差部分が最短距離daを有することを意味するのか、交差部分の中でも最も距離が短い最短距離daが存在することを意味するのか明確でない旨主張する。 しかしながら、「平行に隣接している、前記第1のベルト層と前記外側ベルト層との層間」の理解は、上記イのとおりであるから、隣接して重なるように配置されている箇所における交差部分での最短距離daのことであることは明らかである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 上記ア~ウに関連して、請求項3~5の同様の記載についても明確でない旨主張するが、上記ア~ウで示したのと同様に、当該主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701005

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