特許異議申立
2017-700093
冷感増強剤
- 審判番号
- 2017-700093
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-287846外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年02月02日
- 審決日
- 2017年04月05日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 分類
- P1651.113-Y (A61K) / P1651.121-Y (A61K) / P1651.536-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5964047号発明「冷感増強剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5964047号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5964047号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成23年12月28日に特許出願され、平成28年7月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年2月2日に特許異議申立人 永井 望 により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第5964047号の請求項1ないし11の特許に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明11」といい、本件発明1ないし11を総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの本件発明1は以下のとおりである。
(本件発明1)
「 【請求項1】
(A)冷感剤、(B)カチオン界面活性剤及び(C)25℃におけるlogPが-2~-1の多価アルコールを10~50質量%含有し、
一価のアルコールの含有量が0質量%以上10質量%未満であり、かつ
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((C)/(B))が、3~50である冷感増強剤。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として、下記の甲第1号証及び甲第2号証、従たる証拠として下記の甲第3号証ないし甲第6号証を提出し、(1)本件発明1、3ないし8、10及び11は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、(2)本件発明1ないし11は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、上記(1)及び(2)より本件発明1ないし11に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから同法第113条第2号に該当し取り消すべきものであり、さらに、本件発明1ないし11に係る特許は、(3)その特許請求の範囲が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、(4)その発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、上記(3)及び(4)より同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである旨主張している。
特許異議申立人が提出した甲第1号証ないし甲第6号証
甲第1号証:特開2009-13144号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2010-241775号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2002-114649号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2011-195550号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証:特開2011-241188号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開2008-105995号公報(以下「甲6」という。)
第4 各証拠の記載事項
1 甲1の記載事項
(1)甲1には、以下の記載がある。
(甲1-1)「【0001】
本発明は、毛髪外用の剤に関する発明である。さらに具体的には、本発明は、染毛を行った毛髪に対して退色を防止し、さらに、毛髪一般に対して毛髪からのタンパク質の流出を抑制することを通じて、毛髪の強化を行うことが可能な毛髪外用の剤と組成物あるいは毛髪化粧料に関する発明である。」
(甲1-2)「【0005】
本発明の課題は、上記の毛髪化粧料の開発の流れから、さらに有用な毛髪損傷抑制成分を見出し、これを毛髪化粧料分野において活用する手段を提供することにある。」
(甲1-3)「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記特許文献1にて開示された、「ジペンタエリスリトールと12-ヒドロキシステアリン酸重合物をエステル化することによって得られる、水酸基価が20~70mgKOH/gであり、酸価が3mgKOH/g以下であるエステル化反応生成物(エステル化油分)」に着目し、当該成分の毛髪損傷抑制作用について鋭意検討を行った。特許文献1には、当該成分を配合した毛髪化粧料が開示されているが(特許文献1段落[0194]~[0217])、これらの毛髪化粧料における、当該成分の効果は、毛髪化粧料を用いる際の官能評価に止まり、当該成分を毛髪損傷抑制成分として用いることについては全く開示されていない。
【0007】
その結果、驚くべきことに、当該成分に非常に優れた毛髪損傷抑制作用が認められることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ジペンタエリスリトールと12-ヒドロキシステアリン酸重合物をエステル化することによって得られる、水酸基価が20~70mgKOH/gであり、酸価が3mgKOH/g以下であるエステル化油分(以下、特定エステル化油分ともいう)、からなる毛髪損傷抑制剤(以下、本毛髪損傷抑制剤ともいう)を提供する発明である。」
(甲1-4)「【0023】
特定エステル油分は、市販品を用いることも可能であり、当該市販品としては、サラコス WO-6(商品名:日清オイリオ社製)が挙げられる。 サラコス WO-6は、上記の特定エステル油分の代表的な市販品である。」
(甲1-5)「【0029】
本毛髪用組成物には、本発明の効果を、より現実的な実施態様として好適にするために、化粧料分野で配合可能な成分を必要に応じて含有させることができる。当該選択的成分として、特に好適なものとして、下記式(3)にて表される第4級アンモニウム塩とシリコーン油を挙げることができる。」
(甲1-6)「【0037】
その他、油性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、粉末成分、香料、水、色素等を必要に応じて、本毛髪用組成物において配合することが可能である。」
(甲1-7)「【0053】
以下に、本毛髪損傷抑制用組成物又は当該用途の毛髪化粧料のその他の処方例を、実施例として示す。これらの毛髪用組成物又は化粧料は、毛髪の退色抑制用途にも、毛髪タンパク質の流出抑制用途にも用いることが可能であり、いずれの用途としても、その使用により、上記試験の良好な結果を得ることができる。」
(甲1-8)「【0082】
[実施例20] ヘアトリートメント
配合成分 配合量(質量%)
(1) 1,3-ブチレングリコール 10.0
(2) ジメチコン(100万cSt) 3.5
(3) ジメチコン(100cSt) 5.0
(4) サラコス WO-6 0.5
(5) ソルビトール 7.0
(6) 水素添加ナタネ油アルコ-ル 6.0
(7) ベヘントリモニウムクロリド 3.0
(8) オレイン酸グリセリル 1.5
(9) アミノプロピルジメチコン 0.5
(10)グルタミン酸 0.25
(11)クレアチン 0.1
(12)タウリン 0.1
(13)N-メチルタウリン 0.1
(14)紅藻BG抽出液 0.01
(15)PEG-70M 0.02
(16)オクチルドデカノール 0.1
(17)セタノール 0.1
(18)エタノール 1.0
(19)フェノキシエタノール 1.0
(20)調合香料 適量
(21)ハチミツエキス 0.01
(22)L-メントール 0.15
(23)トウガラシチンキ 0.1
(24)大豆レシチン 0.01
(25)加水分解小麦タンパク・加水分解小麦でんぷん 0.02
(26)N-ラウロイルグルタミン酸
ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル) 0.1
(27)トレハロース 1.0
(28)アルキル(C12,14)オキシヒドロキシ
プロピルアルギニン塩酸塩 0.2
(29)スクワラン 1.0
(30)ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.1
(31)ピロリドンカルボン酸 0.2
(32)ローヤルゼリーエキス 0.01
(33)精製ゴマ油 0.1
(34)ポリクオタニウム-64 0.5
(35)クオタニウム-80 3.0
(36)ラベンダー抽出液 0.01
(37)精製水 残余」
(2)甲1に記載された発明
(甲1-1)ないし(甲1-8)の記載から、甲1には、
「 以下の配合成分(1)ないし(37)からなる毛髪損傷抑制用途のヘアトリートメント。
配合成分 配合量(質量%)
(1) 1,3-ブチレングリコール 10.0
(2) ジメチコン(100万cSt) 3.5
(3) ジメチコン(100cSt) 5.0
(4) サラコス WO-6 0.5
(5) ソルビトール 7.0
(6) 水素添加ナタネ油アルコ-ル 6.0
(7) ベヘントリモニウムクロリド 3.0
(8) オレイン酸グリセリル 1.5
(9) アミノプロピルジメチコン 0.5
(10)グルタミン酸 0.25
(11)クレアチン 0.1
(12)タウリン 0.1
(13)N-メチルタウリン 0.1
(14)紅藻BG抽出液 0.01
(15)PEG-70M 0.02
(16)オクチルドデカノール 0.1
(17)セタノール 0.1
(18)エタノール 1.0
(19)フェノキシエタノール 1.0
(20)調合香料 適量
(21)ハチミツエキス 0.01
(22)L-メントール 0.15
(23)トウガラシチンキ 0.1
(24)大豆レシチン 0.01
(25)加水分解小麦タンパク・加水分解小麦でんぷん 0.02
(26)N-ラウロイルグルタミン酸
ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル) 0.1
(27)トレハロース 1.0
(28)アルキル(C12,14)オキシヒドロキシ
プロピルアルギニン塩酸塩 0.2
(29)スクワラン 1.0
(30)ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.1
(31)ピロリドンカルボン酸 0.2
(32)ローヤルゼリーエキス 0.01
(33)精製ゴマ油 0.1
(34)ポリクオタニウム-64 0.5
(35)クオタニウム-80 3.0
(36)ラベンダー抽出液 0.01
(37)精製水 残余」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
2 甲2の記載事項
(1)甲2には、以下の記載がある。
(甲2-1)「【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する発明である。」
(甲2-2)「【0007】
本発明は、特に、洗髪時におけるヘアコンディショナーやヘアリンス等の塗布の際の毛髪感触に着目し、当該感触(以下、塗布時感触ともいう)を向上させるための手段を提供することを課題とする発明である。」
(甲2-3)「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題の解決に向けて検討を行ったところ、驚くべきことに、下記の構成の毛髪化粧料を提供することにより解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記成分(1)~(5)を含有する毛髪化粧料(以下、本発明の毛髪化粧料ともいう)を提供する発明である。
(1)下記式(I)にて表される第四級アミン化合物を、化粧料の0.01~10質量%
【0010】
【化1】
(式省略)
【0011】
[式中、R1は炭素数6~35の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R2、R3及びR4は同一又は異なって、水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xはハロゲンイオン又は有機アニオンである。]
(2)高級アルコール及び/又は高級脂肪酸を、化粧料の0.1~20質量%
(3)サリチル酸類塩
(4)有機酸
(5)水
【0012】
本発明の毛髪化粧料には、
(6)平均粒子径が0.2~20μmの高重合オルガノポリシロキサンの水性エマルションを配合することにより、乾燥後の毛髪感触をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、洗髪時におけるコンディショナーやヘアリンスの塗布の際の毛髪感触に優れる毛髪化粧料が提供される。」
(甲2-4)「【0031】
(2)その他の成分
その他、本発明の毛髪化粧料には、必要に応じて、上記以外の成分を、本発明の効果を実質上損なわない質的、量的な範囲内で配合することができる。例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アシルメチルタウリン酸、N-アシルグルタミン酸塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミン等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。さらに、炭化水素油、エステル油、揮発性シリコーン油等の上記の高級脂肪酸と高級アルコール、さらには高分子シリコーン油以外の油分;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の保湿剤;カチオン化セルロース等のカチオン性高分子等のコンディショニング剤;トリクロロカルバニリド、イオウ、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノール等の抗フケ用薬剤;増粘剤;粘度調整剤;乳濁剤;金属イオン封鎖剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;粉末成分;血行促進剤、局所刺激剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、角質溶解剤、殺菌剤、消炎剤、アミノ酸、ビタミン類、生薬エキス類等の育毛薬剤;pH調整剤;色素;香料;低級アルコール等が挙げられる。」
(甲2-5)「【0053】
[処方例3] ヘアトリートメント
配合成分 配合量(質量%)
(1)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
(2)グリコール酸 0.5
(3)ステアリルアルコール 5.0
(4)ステアリン酸 0.3
(5)サリチル酸ナトリウム 0.3
(6)ピロリドンカルボン酸 0.05
(7)香料 0.4
(8)ジメチコン(6mPa・s) 10.0
(9)高重合メチルポリシロキサン(100万mPa・s) 1.0
(10)アモジメチコン(1000mPa・s) 2.0
(11)シリコーンエマルション1(平均粒径0.3μm) 5.0
(12)シリコーンエマルション2(平均粒径8.0μm) 5.0
(13)ソルビトール 15.0
(14)ジグリセリン 2.0
(15)ジプロピレングリコール 10.0
(16)高重合ポリエチレングリコール(Mw200万) 0.2
(17)ヒドロキシエチルセルロース 0.2
(18)メントール 0.1
(19)バラ抽出液 0.4
(20)大豆レシチン 0.2
(21)精製水 残余」
(2)甲2に記載された発明
(甲2-1)ないし(甲2-5)の記載から、甲2には、
「 以下の配合成分(1)ないし(21)からなるヘアトリートメント。
配合成分 配合量(質量%)
(1)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.0
(2)グリコール酸 0.5
(3)ステアリルアルコール 5.0
(4)ステアリン酸 0.3
(5)サリチル酸ナトリウム 0.3
(6)ピロリドンカルボン酸 0.05
(7)香料 0.4
(8)ジメチコン(6mPa・s) 10.0
(9)高重合メチルポリシロキサン(100万mPa・s) 1.0
(10)アモジメチコン(1000mPa・s) 2.0
(11)シリコーンエマルション1(平均粒径0.3μm) 5.0
(12)シリコーンエマルション2(平均粒径8.0μm) 5.0
(13)ソルビトール 15.0
(14)ジグリセリン 2.0
(15)ジプロピレングリコール 10.0
(16)高重合ポリエチレングリコール(Mw200万) 0.2
(17)ヒドロキシエチルセルロース 0.2
(18)メントール 0.1
(19)バラ抽出液 0.4
(20)大豆レシチン 0.2
(21)精製水 残余」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
3 甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。
(甲3-1)「【請求項1】冷感物質およびカチオン型界面活性剤を含有することを特徴とする冷感効果向上組成物。」
(甲3-2)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、カチオン型界面活性剤に注目し、これに冷感物質であるL-メントールを並存させた組成物を調製し、この組成物を含有する毛髪処理剤製品はなぜか冷感効果、とくに湿時冷感効果が向上されることを見出した。さらに、上記組成物に温感物質であるバニリルブチルエーテルを配合すると冷感効果、とくに湿時冷感効果が向上され、しかもその効果が持続されることを見出し、さらに研究を重ね、ついに本発明を完成した。」
(甲3-3)「【0027】
【実施例1】参考例1の処方例1よりメントールを含まないシャンプーを調製し、また、本発明の冷感効果向上剤組成物を含む下記のような処方のヘアーコンディショナーを調製した。12人のパネラーがそのシャンプーで洗髪した後、さらに下記ヘアーコンディショナーで毛髪を処理し、処理後の冷感効果を評価した。1日1回の洗髪を10日間行い、前半の5日間は一方のヘアーコンディショナーで処理し、後半の5日間は他方のヘアーコンディショナーで処理した。5日後の処理後に冷感効果を評価した。
【0028】
処方例3(ヘアーコンディショナー1)
精製水 42.03部
塩化[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.200
水酸化ナトリウム 0.005
パラオキシ安息香料酸メチル 0.20
パラオキシ安息香料酸プロピル 0.10
エデト酸4ナトリウム 0.05
ポリオキシエチレンセチルエーテル 0.500
セタノ-ル 2.000
べへニルアルコール 2.000
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3.000
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.200
2‐エチルへキサン酸セチル 0.500
メチルポリシロキサン 2.000
香料 0.500
メントール 0.100
バニリルブチルエーテル 0.050
【0029】
処方例4(ヘアーコンディショナー2)
精製水 42.03部
塩化[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.200
水酸化ナトリウム 0.005
パラオキシ安息香料酸メチル 0.20
パラオキシ安息香料酸プロピル 0.10
エデト酸4ナトリウム 0.05
ポリオキシエチレンセチルエーテル 0.500
セタノ-ル 2.000
べへニルアルコール 2.000
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3.000
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.200
2‐エチルへキサン酸セチル 0.500
メチルポリシロキサン 2.000
香料 0.500
メントール 0.100
メントキシプロパン-1,2-ジオール 0.200
【0030】評価方法;参考例で記載された方法と同じ方法により評価した。
評価結果
評価 ヘアーコンディショナー1 ヘアーコンディショナー2
5と評価した 5 1
4 3 6
3 2 3
2 1 1
1 1 1
数字はパネラーの人数を示す。
上記結果に示すように、メントール(冷感物質)を含まないシャンプーで洗髪した後に、処方例3や4に示すようなヘアーコンディショナーで毛髪を洗うとほどよい冷感効果を得ることができ、70%程度のパネラーが冷感効果を認めた。メントール(冷感物質)を含まないシャンプーで洗髪した後での冷感効果はないのであるから、本発明の冷感効果向上組成物は優れた冷感効果があることが判った。」
(甲3-4)「【0036】
【実施例5】 冷感効果の持続性試験
下記記載の処方例5に従って、本発明冷感効果向上組成物を含有するヘアーコンディショナー3を調製した。実施例1で用いたメントールを配合していないシャンプーで洗髪後、ヘアーコンディショナー3及びヘアーコンディショナー2で髪を処理した。処理後に感じる冷感効果の持続性について実施例3と同様な方法で官能評価した。パネラーは、30歳代から50歳代計25人であった。
【0037】
処方例5(ヘアーコンディショナー3の処方)
精製水 42.03部
塩化[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.200
水酸化ナトリウム 0.005
パラオキシ安息香料酸メチル 0.20
パラオキシ安息香料酸プロピル 0.10
エデト酸4ナトリウム 0.05
ポリオキシエチレンセチルエーテル 0.500
セタノ-ル 2.000
べへニルアルコール 2.000
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3.000
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 0.200
2‐エチルへキサン酸セチル 0.500
メチルポリシロキサン 2.000
香料 0.500
メントール 0.100
メントキシプロパン-1,2-ジオール 0.200
バニリルブチルエーテル 0.05
【0038】
評価結果
冷感効果 比較例 本発明1 本発明2
1) 直ぐに消失した 8 6 0
2) 5分ぐらいで消失した 17 0 0
3) 10分ぐらいで消失した 0 15 14
4) 30分ぐらいで消失した 0 3 10
5) 1時間ぐらいで消失した 0 1 1
本発明1とはヘアーコンディショナー3で毛髪を処理したとき、また本発明2とはヘアーコンディショナー2で毛髪を処理したときを意味する。なお、コントロール(比較例)は実施例3と同様である。図2の棒グラフに示されるように市販のトニックシャンプーのみの使用では、5分後には冷感効果が無くなってしまう。それに対して、メントールを配合しないシャンプー使用後直ぐに本発明冷感効果向上剤組成物より調製されたヘアーコンディショナー3やヘアーコンディショナー2で毛髪を処理し、洗髪した後の冷感効果ならびに冷感効果の持続性を評価すると、図2の棒グラフに示されるように洗髪後10~30分経過しても冷感効果が認められた。つまり、本発明冷感効果向上剤組成物を含有する毛髪処理剤製品は冷感効果の持続性が極めてすぐれていることが判った。」
(甲3-5)「【0041】
【発明の効果】本発明により、従来にない冷感効果を実感させること、ならびに冷感効果を持続させることができ、さらに、これらのテクニックをシャンプーヘアーコンディショナー、ヘアートニックなどの毛髪処理剤製品に使用する事で長時間に渡って冷感効果を、清涼効果を付与する事ができる。つまり、本発明の冷感効果向上組成物は、塗布時の頭皮への爽快刺激感を与え、タオル等によって頭部を乾燥した後もその爽快感を長く持続させることを可能とした。
【0042】より詳しく説明すると、従来のヘアーケアー製品における冷感物質の使用量は、冷感物質としてメントールを用いたトニックシャンプーであっても通常メントール配合量が0.5%以上である。このトニックシャンプーを用いると冷感効果が感じられることが知られているが、一方、目や皮膚に対して及ぼす刺激が強く、また、男性的なイメージのみを与えるなどの不都合さがあった。そこで、メントールの使用量を減らしてみると、今度はシャンプーを行った場合満足するような冷感効果を得ることができなかった。しかしながら、シャンプー中に冷感物質などを含まないもので洗浄した後に、メントールと他の一種の冷感物質(例えばメントキシプロパン-1,2-ジオール)およびカチオン型界面活性剤を添加して作成した冷感効果向上剤組成物、及びメントール、温感物質(VBE)およびカチオン型界面活性剤を添加した本発明の冷感効果向上剤組成物で毛髪を処理すると、驚くことに、これまでとは異なった冷感効果を得ることができた(実施例1)。
【0043】また、メントールのクール感を増強するには、冷感物質を添加するよりもむしろ、温感物質といわれるバニリルアルキルエーテルを添加した場合、あきらかに冷感効果を増強する事が判った。しかも、一度、毛髪をシャンプーすることにより洗浄された毛髪に対しさらに、このような組み合わせの本発明の冷感効果向上剤組成物を用いることで冷感効果を著しく増大させることが分かった。(実施例3、4、5、6)
【0044】さらに、アニオン界面活性剤を主として使用するシャンプーよりカチオン型界面活性剤を主として用いる毛髪処理剤の方が刺激(冷感効果)を得られる効果が大きく、さらにシャンプーである程度の刺激を与えた後にカチオン型界面活性剤を配合するヘアーコンディショナーを使用する事でより一層高い冷感効果を与えることを可能にした。すなわち、シャンプーに配合するメントールの量を低減し、効率良い冷感効果を与えるヘアーケア-システムを構築する事ができた。」
4 甲4の記載事項
甲4には以下の記載がある。
(甲4-1)「【0029】
本発明の皮膚外用剤は、人間や動物の皮膚に直接塗布されたり、接触したりして用いられてもよいし、台所・浴室・トイレ用洗剤、ガラスクリーナー、メガネ・コンタクトレンズ用洗浄剤、自動車用洗剤、衛生用品、ウェットペーパーなどに配合されて用いられてもよい。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれの分野においても用いることができる。例えば、乳液、クリーム、化粧水(ローション)、パック、美容液、洗浄剤、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、オイル、リップ、口紅、ファンデーション、アイライナー、頬紅、マスカラ、アイシャドー、マニキュア・ペディキュア(及び除去剤)、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、パーマネント剤、染毛料、ひげ剃り剤、ゲル剤、エッセンス剤、洗浄剤、浴用剤、打粉、石けん(ハンドソープ、ボディソープ、洗顔料など)、歯磨き剤、洗口料等に好適に用いられる。」
5 甲5の記載事項
甲5には以下の記載がある。
(甲5-1)「【0032】
前記皮膚外用剤は、例えば、表皮正常化用外用剤として用いられ得る。また、表皮正常化用化粧料などの化粧料(化粧品)、表皮正常化用医薬部外品などの医薬部外品、医薬品等の態様で用いられ得る。
【0033】
前記皮膚外用剤の具体的な態様としては、例えば、1)局所又は全身用の皮膚洗浄料又は皮膚塗布用化粧料類、2)頭皮や頭髪に適用する頭皮又は頭髪化粧料類、3)浴湯に投じて使用する浴用化粧料類、4)人体用の消臭防臭用化粧料、5)洗口剤等の口腔用化粧料類、6)皮膚貼付用シート、化粧用コットン、ウエットティッシュなどに担持されてなるシート状化粧料類が挙げられる。また、前記皮膚外用剤は、固形状、溶液状、ゲル状、エマルジョン状などの形態になり得るものであり、また、シート状担体、スプレー、アンプル、カプセル、粉末(パウダー)など利用上適宜適当な剤型に適用されて用いられ得る。
【0034】
皮膚塗布用化粧料類としては、具体的には、例えば、ローション、乳液、クリーム、スプレー、軟膏、ジェル、美容液、オイル、パック、ミストなどの基礎化粧料、ファンデーション、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラなどのメークアップ化粧料などが挙げられる。また、皮膚洗浄料類としては、洗顔料、クレンジングなどが挙げられ、頭髪化粧料類としては、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアートニック、育毛・養毛料などが挙げられる。」
6 甲6の記載事項
甲6には以下の記載がある。
(甲6-1)「【0054】
〔実施例6〕皮膚外用剤調製例4
本例では、ラニ・シンカ及びロウロの溶剤抽出物を用いて皮膚外用剤の一例として、表4の組成からなるヘアートリートメントを調製した。
【0055】
【表4】
(表省略)
【0056】
得られたヘアートリートメント(調製例1及び2)は、毛髪及び頭皮を保護し、毛成長促進効果を有し、また使用感に優れるものであった。」
第5 判断
1 特許法第29条の規定に係る申立てについて
(1)本件発明1について
ア 甲1発明を引用発明とする対比・判断
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1は冷感増強剤であるのに対し、甲1発明はヘアトリートメントである点(以下「相違点1」という。)において少なくとも相違する。
そして、冷感増強剤とヘアトリートメントとは、その用途として明確に区別されるものであり、冷感増強剤がヘアトリートメントに比して新たな用途を提供するものではないということはできない。
よって、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
特許異議申立人は、甲1発明は、本件発明1の組成に係る発明特定事項を全て充足するから冷感増強剤に該当すると主張している。
確かに、甲1発明は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載された実施例において冷感剤として用いているL-メントールを含んでいるが、甲1にはL-メントールを用いる理由についての記載はなく、(甲1-6)に記載された配合することが可能であるその他の成分に冷感剤は含まれておらず、甲1全体の記載を見ても冷感に関する記載は見あたらない。一般に、L-メントールは冷感剤以外にも香料等としても用いられるものであり、冷感を付与することがヘアトリートメントに通常求められる機能であるとも認められない。してみると、甲1発明が含有するL-メントールが冷感剤であるとは必ずしもいうことはできない。
そして、甲1発明は毛髪損傷抑制を意図したものであるから、甲1発明が冷感増強剤であるということはできない。
(イ)上記相違点1について検討する。
甲1発明は、その組成として、L-メントール、及び第4級アンモニウム塩として、カチオン界面活性剤として知られるベヘントリモニウムクロリドを含んでいる。
そして、(甲3-1)ないし(甲3-5)から、甲3には、冷感物質であるL-メントールとカチオン型界面活性剤を並存させた組成物により、冷感効果を向上させる技術が記載されていると認められる。
しかしながら、上記(ア)で説示したように甲1発明のL-メントールが必ずしも冷感剤として用いられているとはいえず、甲3に触れた当業者といえども、毛髪損傷抑制を意図した甲1発明を冷感増強剤として用いることを容易に想起するとは認められない。
また、甲2及び甲4ないし6にも、甲1発明を冷感増強剤として用いることを想起させる記載があるとは認められない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2ないし6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 甲2発明を引用発明とする対比・判断
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比すると、本件発明1は冷感増強剤であるのに対し、甲2発明はヘアトリートメントである点(以下「相違点2」という。)において少なくとも相違する。
そして、冷感増強剤とヘアトリートメントとは、その用途として明確に区別されるものであり、冷感増強剤がヘアトリートメントに比して新たな用途を提供するものではないということはできない。
よって、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。
特許異議申立人は、甲2発明は、本件発明1の組成に係る発明特定事項を全て充足するから冷感増強剤に該当すると主張している。
確かに、甲2発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例において冷感剤として用いているメントールを含んでいるが、甲2にはメントールを用いる理由についての記載はなく、(甲2-4)に記載された配合することができるその他の成分に冷感剤は含まれておらず、甲2全体の記載を見ても冷感に関する記載は見あたらない。一般に、メントールは冷感剤以外にも香料等としても用いられるものであり、冷感を付与することがヘアトリートメントに通常求められる機能であるとも認められない。してみると、甲2発明が含有するメントールが冷感剤であるとは必ずしもいうことはできない。
そして、甲2発明は塗布時の毛髪感触向上を意図したものであるから、甲2発明が冷感増強剤であるということはできない。
(イ)上記相違点2について検討する。
甲2発明は、その組成として、メントール及び第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤として塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを含んでいる。
そして、甲3には、冷感物質であるL-メントールとカチオン型界面活性剤を並存させた組成物により、冷感効果を向上させる技術が記載されている。
しかしながら、上記(ア)で説示したように甲2発明のL-メントールが必ずしも冷感剤として用いられているとはいえず、甲3に触れた当業者といえども塗布時の毛髪感触向上を意図した甲2発明を冷感増強剤として用いることを容易に想起するとは認められない。
また、甲1及び甲4ないし6にも、甲2発明を冷感増強剤として用いることを想起させる記載があるとは認められない。
よって、本件発明1は、甲2発明並びに甲1及び甲3ないし6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2及び9について
本件発明2及び9は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記「(1)本件発明1について」の対比・判断と同様の理由により、甲1発明又は甲2発明、及び甲1ないし6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3ないし8、10及び11について
本件発明3ないし8、10及び11は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記「(1)本件発明1について」の対比・判断と同様の理由により、甲1又は甲2に記載された発明ではなく、甲1発明又は甲2発明、及び甲1ないし6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
2 特許法第36条第6項第1号に規定する要件に係る申立てについて
特許異議申立人は、本件発明の解決しようとする課題は、冷感剤によりもたらされる冷感効果を充分に高め、かつこれを長時間に亘り有効に発揮する剤を提供することであるが、本件発明の具体的な開示である実施例においてさえ、比較例2と比較して冷感効果を充分に高めかつこれを長時間に亘り有効に発揮させているとはいえないから、本件発明はその課題を解決できるものと認識できるものではなく、また、実施例に開示された発明が本件発明の課題を解決できると仮定しても、各成分の種類及び含有量として実施例よりも広い範囲を包含する本件発明の範囲全体に亘ってその課題を解決できるものと認識することはできない旨主張している。
しかしながら、本件特許についての出願の願書に添付した図面の図1ないし5に記載された温感及び冷感の評価試験の結果を見るに、総じて実施例1ないし12は比較例1、3及び4と比較して冷感が高められ、冷感効果の持続性も向上していると認められる。
そして、比較例2と比較しても、比較例2は強い冷感を示す時期はあるものの、冷感の程度が変動しているのに対し、比較例2と最も成分が類似する実施例1、8及び10(比較例2と実施例1、8及び10とは、比較例2が1価のアルコールであるセタノールを25.00質量%含有するのに対し、実施例1、8及び10は1価のアルコールを含まず、成分(C)の多価アルコールを25.00質量%含有する点で相違するが、他の成分は一致している。)は、総じて時間経過に伴い冷感が増加する傾向にあり、冷感効果を長時間に亘り有効に発揮する点で優れているものと認められる。
また、実施例1ないし12は、カチオン界面活性剤について4種類のカチオン界面活性剤を単独で用いた実施例、多価アルコールについて、3種類の多価アルコールを単独で用いた実施例及び含有量が20~40質量%である実施例、カチオン界面活性剤の含有量と多価アルコールの含有量との質量比が4~25である実施例を包含するものであって、各実施例において冷感を高め、冷感効果の持続性を向上させる効果が確認されており、各実施例の含有成分及び含有量に類似する成分及び含有量を有する剤においても、各実施例が奏する効果に近い効果を奏するものと推測されることから、本件発明が発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであるとまではいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張は理由がない。
3 特許法第36条第4項第1号に規定する要件に係る申立てについて
特許異議申立人は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載からは、冷感が増強されたと評価するための基準及びそこからの変化の程度、並びに増強効果が持続していると評価できる経過時間を理解することができず、本件発明に包含される広範な組成において、本件発明の課題を解決した冷感増強剤と評価し得る組成を見出すことは、当業者に過度の試行錯誤を強いるものである旨主張している。
しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0039】及び【0040】には評価方法に関する記載があり、当該記載に基づいた評価を行うことにより冷感の増強及び持続の評価をすることが可能であると認められることから、本件発明の課題を解決した冷感増強剤と評価し得る組成を見出すことは、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を強いるものであるとまではいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700093