特許拒絶査定不服審判
2017-011933
積層半導体装置の製造方法
- 審判番号
- 2017-011933
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-260135外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月09日
- 審決日
- 2018年07月23日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ニコン
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .55 -Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-260135「積層半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開,特開2014-107448〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成24年11月28日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年11月27日 手続補正書の提出
平成28年10月12日付け 拒絶理由通知書
平成28年12月14日 意見書,手続補正書の提出
平成29年 5月10日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 8月 9日 審判請求書,手続補正書
(以下,「本件補正」という。)の提出
第2 平成29年8月9日になされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月9日になされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。以下,本件補正後の請求項1に係る発明を「本件補正発明1」という。)。
「受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して積層半導体装置を製造する製造方法であって、
前記受光基板の表面および前記処理基板の表面を研磨する研磨段階と、
前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階と、
前記積層段階より前に、前記処理回路に接続される他の処理回路を有する他の処理基板を前記処理基板に積層する処理基板積層段階と、
前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階と、
前記積層段階より後に、前記受光基板を薄化する受光基板薄化段階と、
前記積層段階より後であって前記受光基板薄化段階より前に、前記他の処理基板を薄化する他の処理基板薄化段階と、
を備える積層半導体装置製造方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成28年12月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して積層半導体装置を製造する製造方法であって、
前記受光基板の表面および前記処理基板の表面を研磨する研磨段階と、
前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階と、
前記積層段階より後に、前記受光基板を薄化する受光基板薄化段階と、
前記積層段階より後であって前記受光基板薄化段階より前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階と、
を備える積層半導体装置製造方法。」
(3)本件補正により補正された補正箇所のうち「前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に,前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階」について検討すると,願書に最初に添附した明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0027】
次に、図4に示すように、積層基板300において、処理基板200の支持基板210を、例えば500μm程度まで薄化する。支持基板210は、例えば、化学機械研磨により薄化できる。これにより、支持基板210の図中下面には、貫通電極256の端部が露出する。」
「【0057】
図20は、更に他の積層基板303の断面図である。積層基板303は、図5に示した状態の積層基板300に、複数の処理基板201を1枚ずつ順次積層して形成される。即ち、支持基板110を残した状態の積層基板300に対して、支持基板210を薄化する前の処理基板201を接合し、支持基板210を薄化し、バンプ220を形成する段階を繰り返すことにより、多層の積層基板303を形成できる。」
すなわち,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)には,「処理基板」の薄化について,「前記積層段階」,すなわち,「前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階」の後に行うことは記載されているが,「前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階」より前に行うことは記載されていない。
(4)また,「前記処理基板積層段階よりも後」であって,「前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階」より前に「処理基板」の薄化処理を行った際には,「前記処理基板積層段階」において「処理基板」の他の処理基板に対向する面は,当該他の処理基板に積層されることから,前記薄化処理は,「処理基板」の「受光基板」に対向する面に対して行われることとなる。そうすると,「処理基板」の「受光基板」に対向する面は,当該薄化処理によって貫通電極の端部が露出した状態となり,「前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階」のためには,薄化処理した「処理基板」の「受光基板」に対向する面に,バンプを形成した上で,この面を常温接合することができるように研磨する必要があると認められるが,当初明細書等には対応する記載が認められない。
(5)しかも,本願補正発明1は,他の発明特定事項を備えると同時に,前記「前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階」を備えることによって,審判請求書の請求の理由において,審判請求人が,「本願発明の有利な効果」として主張する,「本願の請求項1に記載の発明によると、受光基板を複層の処理基板と積層して積層半導体装置を製造する場合に、まず、処理基板同士を積層して積層処理基板とした後、積層処理基板を受光基板と積層する。また、受光基板は、積層処理基板に積層した後に薄化される。更に、積層処理基板および受光基板を積層する前に、処理基板を薄化する。このような方法により、基板の薄化により生じる機械的負荷を受光基板が受ける回数を、積層半導体装置が形成された場合に最外層に露出する処理基板を薄化するための1回と、受光基板自体を薄化するための1回とを合わせた2回だけにすることができる。このような、薄化により受光基板が機械的負荷を受ける回数は、積層半導体装置を形成する処理基板の枚数が増加した場合でも変わらない。よって、本願発明によると、イメージセンサ等のように集積度が高い受光基板を用いて積層半導体装置を製造する場合に、薄化加工の機械的負荷による品質低下を抑制できる。」という,当初明細書等には記載されていない効果を奏するものであり,また,当該効果,すなわち,「受光基板を複層の処理基板と積層して積層半導体装置を製造する場合に、」「基板の薄化により生じる機械的負荷を受光基板が受ける回数を、積層半導体装置が形成された場合に最外層に露出する処理基板を薄化するための1回と、受光基板自体を薄化するための1回とを合わせた2回だけにすることができる。このような、薄化により受光基板が機械的負荷を受ける回数は、積層半導体装置を形成する処理基板の枚数が増加した場合でも変わらない。」という効果は,当初明細書等に記載されているに等しい事項であるとも認められない。
すなわち,本件補正により付加された事項は,発明の課題解決に寄与する技術的な意義を有する事項に該当するから,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
(6)そうすると,上記補正の「前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階」は,願書に最初に添附した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとは認められない。
(7)審判請求人は,平成29年8月9日提出の審判請求書において,補正の根拠について,
「3.補正の内容
(1)出願人は、本審判請求書と同日に提出した手続補正書により、特許請求の範囲を補正した。補正後の特許請求の範囲に記載の発明は下記の通りである。
なお、補正により変更された箇所を下線で示す。また、補正により変更された箇所の右に、出願当初の明細書等における記載箇所を示す。下記の通り、当該補正は、請求項1を補正前請求項5の特徴により限定的に減縮した補正である。
[請求項1]
受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して積層半導体装置を製造する製造方法であって、
前記受光基板の表面および前記処理基板の表面を研磨する研磨段階と、
前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階と、
前記積層段階より前に、前記処理回路に接続される他の処理回路を有する他の処理基板を前記処理基板に積層する処理基板積層段階と、(補正前請求項5)
前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階と、(段落0061)
前記積層段階より後に、前記受光基板を薄化する受光基板薄化段階と、
前記積層段階より後であって前記受光基板薄化段階より前に、前記他の処理基板を薄化する他の処理基板薄化段階と、
を備える積層半導体装置製造方法。」
旨主張している。
しかしながら,補正前請求項5には,「前記積層段階より前に、前記処理回路に接続される他の処理回路を有する他の処理基板を前記処理基板に積層する処理基板積層段階を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の積層半導体装置製造方法。」と記載されているのみで,上記補正の「前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階」について記載されていない。
また,出願当初の明細書の詳細な説明には,
「【0061】
なお、上記のような積層基板303を作製する場合も、個々の積層段階ではアニール処理なしに低温で接合し、全ての基板が積層された後に一括してアニール処理してもよい。これにより、初期に積層された基板が繰り返しアニール処理の熱にさらされることが防止される。」
と記載されているのみであって,上記補正の「前記処理基板積層段階よりも後であって前記積層段階よりも前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階」について記載されていない。
(8)したがって,この補正は,願書に最初に添附した明細書,特許請求の範囲又は図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり,願書に最初に添附した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえず,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(9)以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年8月9日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成28年12月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して積層半導体装置を製造する製造方法であって、
前記受光基板の表面および前記処理基板の表面を研磨する研磨段階と、
前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階と、
前記積層段階より後に、前記受光基板を薄化する受光基板薄化段階と、
前記積層段階より後であって前記受光基板薄化段階より前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階と、
を備える積層半導体装置製造方法。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし9に係る発明は,その出願日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2006-191081号公報
引用文献2:特開平04-287365号公報
引用文献3:特開2001-339057号公報
引用文献4:特開2005-353996号公報
引用文献6:特開2009-049081号公報
引用文献7:特表2011-523779号公報
3 引用文献
(1)引用文献1
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサに関し、特に、3次元集積構造の高性能CMOSイメージセンサ及びその製造方法に関する。」
「【0034】
以下では、上記した構成を有するイメージセンサの製造方法を説明する。
【0035】
図4A~図4Cは、本発明の実施の形態に係るCMOSイメージセンサの製造方法の各工程を示す断面図である。
【0036】
図4Aに示しているように、第1基板400がSOI構造を有するように第1基板400内部に第1絶縁膜401を形成する。第1絶縁膜401は、酸化膜系を用いて0.3μm~10μmの厚さに形成する。
【0037】
エピタキシャル成長(Epitaxial growth)工程を実施し、第1絶縁膜401上の第1基板400にエピタキシャル層402を形成する。エピタキシャル層402は、0.3μm~10μmの厚さに形成する。
【0038】
以下では、エピタキシャル層402が、P型の導電型である場合を一例として説明する。
【0039】
エピタキシャル層402に、P型及びN型の導電領域403、404が積層された構造のフォトダイオードPDを形成する。P型及びN型のフォトダイオード用の不純物領域403、404は、イオン注入、または蒸着及び成長などの方法を利用して形成できる。
【0040】
P型導電領域403は、50Å~1000Åの厚さに形成することが好ましい。
【0041】
エピタキシャル層402上にゲート電極407を形成し、その両側のエピタキシャル層402の上部にソース/ドレインの不純物領域405、406を形成する。
【0042】
フォトダイオードPDから、生成された光電荷を移動させるために、N型導電領域404と不純物領域405との一部が重畳するように形成する。
【0043】
ゲート電極407と不純物領域405、406とは、フォトダイオードPDから、生成された光電荷を、フローティング拡散領域の役割を果す不純物領域406に伝達する役割を果たすトランスファトランジスタTxを構成する。
【0044】
トランスファトランジスタTx上に第2絶縁膜408を形成する。第2絶縁膜408は、酸化膜系の絶縁性物質の膜である。
【0045】
第2絶縁膜408を選択的にエッチングし、不純物領域406を露出させた後、不純物領域406に電気的に接続した接続部409を形成する。
【0046】
接続部409は、フローティング拡散領域の役割をする不純物領域406に蓄積された光電荷を周辺回路側に伝達する役割をする。
【0047】
接続部409は、Ti、TiN、TiW、タングステンプラグなどを、単独で、またはこれらを積層して用い、100Å~1000Åの厚さに形成する。
【0048】
接続部409上に接続部409と電気的に接続し、周辺回路部と接続されるCuボンディングパッド411A~411Cを、第3絶縁膜410に囲まれるように形成する。
【0049】
Cuボンディングパッド411A~411Cは、0.3μm~2.0μmの厚さに形成する。
【0050】
Cuボンディングパッド411A~411Cは、ダマシン処理により形成することもでき、通常のリソグラフィにより形成することができる。
【0051】
以上、図4Aに示した構造を形成して、3次元集積以前の受光素子を形成する工程は完了する。
【0052】
次いで、図4Bに示すような3次元集積以前の周辺回路を形成する工程を実施する。
・・・ 中 略 ・・・
【0066】
次に、図4Cに示しているように、受光素子が形成された第1基板400と周辺回路が形成された第2基板500とが互いに対向するようにボンディング(接合)される。
【0067】
この時、それぞれのCuボンディングパッド411A~411Cと506A~506Cとが対応するようにした後、300℃~600℃の温度で熱処理を実施することによって、2つの基板400、500の間の接合がなされる。
【0068】
2つの基板400、500を接合する時、第1基板400の背面が上部に位置するようにする。これは、第1基板400の背面部分にフォトダイオードPDが形成され、この上にマイクロレンズが形成されるためである。
【0069】
次に、図4Dに示しているように、第2基板500の背面を一部除去して、第2接続部504Bが露出するようにする。この時、エッチングされる第2基板500の背面の厚さは、残存する第2基板500の厚さが5μm~50μm程度残るようにすることによって決まる。
【0070】
この時、機械的研磨(Mechanical grinding)とCMPを用いることができる。
【0071】
露出した第2接続部504Bに接続するように、入出力パッド507を形成した後、入出力パッド507の上部だけをオープンさせ、他の部分は覆う保護膜508を形成する。
【0072】
次に、第1基板400のを全て除去して第1絶縁膜401が露出するようにする。この時、物理的研磨またはウェットエッチングを用いる。」
イ 上記「ア」より,引用文献1には,以下の発明が記載されている。(以下,「引用発明」という。)
「3次元集積構造の高性能CMOSイメージセンサの製造方法であって,
受光素子が形成された第1基板400と周辺回路が形成された第2基板500とが,それぞれのCuボンディングパッド411A~411Cと506A~506Cとが対応するようにした後,300℃~600℃の温度で熱処理を実施することによって互いに対向するようにボンディング(接合)し,
次に,機械的研磨(Mechanical grinding)とCMPを用い,第2基板500の背面を一部除去して、第2接続部504Bが露出するようにし,
次に,物理的研磨を用い,第1基板400を全て除去して第1絶縁膜401が露出するようにする,
3次元集積構造の高性能CMOSイメージセンサの製造方法。」
(2)引用文献6
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6には,図面とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電極が形成された2体のウェハを常温に近い温度にて電極を介して接合する接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、ディジタルカメラ等の携帯電子機器の製造にとって、メモリやMPU等の電子部品を高密度に実装する技術は最重要技術である。このための技術としてフリップチップ実装技術の開発が従来から行われており、最近ではこの技術を利用して半導体チップを積層して更なる高密度電子装置を得るための開発が盛んに行われている。このフリップチップ技術による実装では半導体装置(半導体チップ)を配線基板に接合する際や半導体チップを半導体チップ上に重ね接合する際に、接合電極としてバンプを形成することが行われている。このバンプ形成にあたっては、電極材として金、銅、アルミニウム等が使用されているが、導電性や酸化されにくいという点、さらに価格の点から銅が一般的に使用されている。
【0003】
このような電極接合を行う一般的な方法として加圧と加熱による拡散接合方式がとられている。しかしながら、電極接合をチップレベルで行う場合には問題ないが、ウェハレベルで接合を行う場合には接合物間の熱膨張率の違いによる電極位置ずれの問題が発生する。この問題点を解消する方法として、加熱により生じる熱膨張を伴わない常温接合方式が検討されている。この方式は物質が本来有している原子間結合力を利用するもので、接合面を清浄にして接合面どうしを数nm以下の間隔にすることにより実現される。従って、この接合方法を用いる場合の条件は、(1)接合面が平坦面であること、(2)接合面には酸化層や異物の付着がないこと、である。このような条件を満足させた接合装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。」
「【0026】
平坦化装置10:
図2に実施の形態に使用される平坦化装置10の概略構成を示す。
【0027】
図2において、平坦化装置10は、CMP装置11と、洗浄装置12と、乾燥装置13とから構成されている。
【0028】
CMP装置11は、接合用の電極が形成されたウェハをCMPにより研磨を行う装置である。研磨液としては、電極材が銅である場合、一般的にはスラリーが使用される。この研磨により、接合すべき電極表面は平坦化され、且つそれ以前に形成された酸化層が除去される。研磨処理が終了すると、研磨材等を取り除くために洗浄装置12を用いて表面から研磨材等を除去する処理が行われる。表面が清浄化されると、ウェハは乾燥装置13による乾燥処理にかけられる。この一連の処理は、通常の半導体装置製造方法における研磨工程→乾燥工程の周知の方法が適用される。乾燥処理が完了すると、ウェハはロードロック51に搬送される。」
「【0036】
アライメント装置及び重ね合わせ装置30:
図4に実施の形態に使用されるアライメント装置及び重ね合わせ装置30の概略構成を示す。
【0037】
図4において、アライメント装置30Aは2視野顕微鏡30a,XYステージ30b、ティルトステージ30cより構成されている。ウェハの搬送手順を基にして、その他の関連装置の説明を行う。CMPにより表面が平坦化され、活性化処理が終了したウェハ2は図1のロードロック52の搬送装置50により開かれたゲートバルブ54(図1(b)参照)を通って搬送台30d上にセットされる。ウェハ2受け渡しの際には搬送台30dに設けられたリフトピン30eを介して受け渡される。ウェハ2が搬送台30dにセットされると、ゲートバルブ54が閉じられ、真空装置30fが稼働を始めてチャンバ内を真空雰囲気にする。所定の真空度に達するとゲートバルブ55が開かれ、ウェハ2は搬送装置50により搬送台30dから下保持板30gに搬送される。
【0038】
次に同様な操作を経て、接合されるべき電極を有する他方のウェハ2が上保持板30hに保持される。上下の保持板にはウェハ2、2を静電的に吸着する静電吸着機構が設けられている。接合すべき電極を有するウェハ2、2がそれぞれ保持板に保持されると、近接したウェハ2,2間に2視野顕微鏡30aを挿入してウェハ2,2間の位置合わせ情報を得る。位置あわせ情報が得られると、XYステージ30b,ティルトステージ30cを駆動させてウェハ2,2上の電極間の位置合わせを行う。位置合わせが完了すると、重ね合わせ装置30Bを動作させる。
【0039】
重ね合わせ装置30Bは、上下の保持板30h、30g、上部固定梁30i,基盤30j上のZステージ(高さ方向)30kである。位置あわせ情報により、Zステージ30kが動作し、2枚のウェハ2,2は重ね合わされる。重ね合わせ時には仮固定用の樹脂が塗布されていて、次工程である加圧工程まで搬送可能になされている。
【0040】
このアライメント装置及び重ね合わせ装置30が置かれる雰囲気は電極表面の再酸化を防止するために真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気である。従って、このチャンバには真空装置30mが取りつけられていたり、不図示の不活性ガス供給路と制御バルブが取りつけられている。」
イ 上記「ア」より,引用文献6には,以下の事項が記載されている。(以下,「技術的事項6-1」及び「技術的事項6-2」という。)
「電極材として銅を使用することが一般的な電極接合を行う際には,一般的な方法として知られている加圧と加熱による拡散接合方式では,
ウェハレベルで接合を行う場合には,
接合物間の熱膨張率の違いによる電極位置ずれの問題が発生することが知られていること。」
「加圧と加熱による拡散接合方式に換えて,
接合用の電極が形成されたウェハをCMPにより研磨し表面を平坦化し,
接合されるべき電極を有する他方のウェハを同様に処理し,
2枚のウェハを重ね合わす,
加熱により生じる熱膨張を伴わない常温接合方式,
を採用することで,上記の問題が解消されること。」
(3)引用文献7
ア 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献7には,図面とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野および背景技術】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの層を支持体に転写することによって作られる多層半導体構造または基板(多層半導体ウェハとも呼ばれる)の製造分野に関する。転写層は、第1のウェハを第2のウェハすなわち支持体に分子結合することによって形成され、この第1のウェハは、一般に、接合後に薄化される。第1のウェハはまた、マイクロコンポーネントの1つ以上の層を最終支持体へ転写することを必要とするコンポーネントの三次元(3D)集積化の場合や、例えば、バックライト付きイメージングデバイスの作製のような回路転写の場合のように、コンポーネントまたは複数のマイクロコンポーネントのすべてまたは一部を含んでもよい。」
「【0024】
図1Aから分かるように、第1のウェハ101と第2のウェハ102、例えば、シリコンウェハとを組み立てることによって、トリミングされる構造100が形成される。本明細書に示す第1および第2のウェハ101および102の直径は同じである。しかしながら、ウェハの直径は異なるものであってもよい。本明細書に記載する実施形態において、分子結合、当業者に既知の技術によって組み立てが実行される。分子結合の原理は、2つの表面を直接接触した状態にすること、すなわち、特定の結合材料(接着剤、ワックス、はんだなど)を用いずに接触状態にすることに基づくことを想起されたい。このような動作に必要なのは、接合される表面が十分に滑らかであること、粒子や汚染がないこと、そして典型的に、接触が開始されるように数ナノメートル未満の距離まで十分に近接した状態にされることである。このような条件下では、2つの表面間の誘引力が、分子結合(接合される2つの表面の原子または分子間で相互作用する電子による一群の誘引力(ファンデルワールス力)によって誘発される結合)を引き起こすのに十分な強さである。
【0025】
2つのウェハ間の接着は、コンポーネントおよび/または第1のウェハにダメージを与えないように低温で実行される。より正確には、ウェハを周囲温度で接触状態にした後、接合強化アニールが、450℃未満の温度で実行されてもよく、この温度を超えると、アルミニウムや銅などのある種の金属はクリープし始める。」
イ 上記「ア」より,引用文献7には,以下の事項が記載されている。(以下,「技術的事項7」という。)
「多層半導体構造または基板(多層半導体ウェハとも呼ばれる)の製造分野において
2つのウェハを接着するために,接合される表面が十分に滑らかである2つのウェハを周囲温度で接触状態にすること。」
4 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
(1)引用文献1の段落【0036】-【0052】から「受光素子が形成された第1基板400」が「受光回路」を有していることは明らかである。
したがって,引用発明の「受光素子が形成された第1基板400」および「周辺回路が形成された第2基板500」は,それぞれ本願発明の「受光素子を含む受光回路を有する受光基板」および「前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板」に相当する。
(2)引用発明は「受光素子が形成された第1基板400と周辺回路が形成された第2基板500とが,それぞれのCuボンディングパッド411A~411Cと506A~506Cとが対応するようにした後,300℃~600℃の温度で熱処理を実施することによって互いに対向するようにボンディング(接合)し」ているから,このことと,本願発明の「前記受光基板の表面および前記処理基板の表面を研磨する研磨段階と、前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階」は,「前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を接合する段階」である点で共通する。
(3)引用発明の「次に,物理的研磨を用い,第1基板400を全て除去して第1絶縁膜401が露出するようにする」ことは,本願発明の「前記積層段階より後に、前記受光基板を薄化する受光基板薄化段階」に相当する。
(4)引用発明の「次に,機械的研磨(Mechanical grinding)とCMPを用い,第2基板500の背面を一部除去して、第2接続部504Bが露出するように」することは,本願発明の「前記積層段階より後であって前記受光基板薄化段階より前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階」に相当する。
(5)引用発明は,「受光素子が形成された第1基板400」と「周辺回路が形成された第2基板500」を接合し,「3次元集積構造の高性能CMOSイメージセンサ」としているから,引用発明の「3次元集積構造の高性能CMOSイメージセンサ」は,本願発明の『受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して』製造した『積層半導体装置』に相当する。
そうすると,引用発明の「3次元集積構造の高性能CMOSイメージセンサの製造方法」は,以下の相違点を除いて,本願発明の「受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して積層半導体装置を製造する製造方法」に相当する。
(6)上記(1)ないし(5)で検討したように,本願発明と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。
[一致点]
「受光素子を含む受光回路を有する受光基板と、前記受光回路から受けた信号を処理する処理回路を有する処理基板とを積層して積層半導体装置を製造する製造方法であって、
前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を接合する段階と、
前記積層段階より後に、前記受光基板を薄化する受光基板薄化段階と、
前記積層段階より後であって前記受光基板薄化段階より前に、前記処理基板を薄化する処理基板薄化段階と、
を備える積層半導体装置製造方法。」
[相違点]
本願発明は「前記受光基板の表面および前記処理基板の表面を研磨する研磨段階と、前記研磨段階で研磨された前記受光基板の前記表面および前記処理基板の前記表面を常温接合することにより、前記受光基板および前記処理基板を積層する積層段階」を有しているのに対して,引用発明は「受光素子が形成された第1基板400と周辺回路が形成された第2基板500とが,それぞれのCuボンディングパッド411A~411Cと506A~506Cとが対応するようにした後,300℃~600℃の温度で熱処理を実施することによって互いに対向するようにボンディング(接合)」するものである点。
5 判断
上記[相違点]について検討する。
技術的事項6-1から,300℃~600℃の温度で第1基板と第2基板を接合する引用発明には,接合物間の熱膨張率の違いによる電極位置ずれの問題が発生することが,当業者であれば懸念されるところ,技術的事項6-2から,当該問題を解決するための手段として,加圧と加熱による拡散接合方式に換えて,加熱による熱膨張を伴わない常温接合方式を用いることが周知であったといえる。
また,技術的事項7の記載からも,基板と基板を接合する際に,常温での接合を行うことは,周知の技術といえる。
すなわち,引用発明において,引用発明の300℃~600℃の温度で接合することに換えて,常温での接合を採用することは,当業者が容易に想到することである。
また,その際に,技術的事項6-2および7にあるように,接合用の電極が形成された基板の表面を平坦化(滑らかに)するために,技術的事項6-2および7にあるように,表面の研磨処理を行うことは当業者が適宜為し得る事項である。
そうすると,引用発明において,上記「相違点」に係る各段階を採用することに格別の困難性は認められない。
第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献6および7に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2017-011933