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特許拒絶査定不服審判

2020-003426

光検出器アレイをドライエッチングするシステム及び方法

審判番号
2020-003426
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-120223外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年03月12日
審決日
2021年07月30日
公報発行日
2022年01月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .55 -Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第53条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2014-120223「光検出器アレイをドライエッチングするシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 5日出願公開、特開2015- 2348〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、平成26年6月11日(パリ条約による優先権主張2013年(平成25年)6月17日、米国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 5月28日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月 5日 :意見書・手続補正書(以下、この手続補正

書によりされた補正を「本件第1補正」と

いう。)の提出

平成31年 3月26日付け:拒絶理由通知書(最後)
平成31年 7月 2日 :意見書・手続補正書(以下、この手続補正

書によりされた補正を「本件第2補正」と

いう。)の提出

令和 元年10月31日付け:本件第2補正についての補正の却下の決定

(以下「本件却下決定」という。)・拒絶査

定

令和 2年 3月12日 :審判請求書の提出
令和 2年 9月30日付け:当審による審尋
令和 3年 3月 5日 :回答書の提出

第2 本件却下決定の適否

請求人は、本件却下決定に対して不服を申し立てているので、以下、本件却下決定の適否を判断する。

1 本件却下決定の理由の概要

本件第2補正によりなされた本願の願書に添付された明細書の【0016】・【0017】・【0019】についての補正は、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)において、ドライエッチングがBrCl3とArを使用するという記載と、BCl3とArを使用するという記載とが混在しているものを、BrCl3とArを使用するという記載に統一するものである。

しかしながら、不整合記載を解消する補正は、矛盾する二以上の記載のうちいずれが正しいかが「当初明細書等の記載から、当業者にとって明らかな場合」に許されるところ、BrCl3とBCl3はいずれも化学式が知られている化合物であり、当初明細書等においても、BrCl3とBCl3は同程度の頻度で出てくるものであって、いずれが正しいかが当初明細書等の記載から明らかであるとはいえない。

したがって、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件第2補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

よって、本件第2補正は、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2 本件第2補正の内容

本件第2補正は、本件第2補正前の本願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面のうち、請求項1・【0005】・【0006】・【0016】・【0017】・【0019】・【0022】・【0028】・【0038】・【0044】について、Arとともに使用される物質を、「BCl3」から「BrCl3」へ補正するものである。

3 当初明細書等の記載

当初明細書等には次の記載がある。

(1)「【特許請求の範囲】」、

「撮像に使用される光検出器アレイ(100)であって、
InAsSbから形成された第1の光検出器、
InAsSbから形成された第2の光検出器、並びに
前記第1の光検出器と前記第2の光検出器との間に、BrCl3及びArを使用して形成されたトレンチ(200)
を備える光検出器アレイ。」(【請求項1】)、
「光検出器のアレイを作る方法であって、
隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチ(200)を含む、InAsSbから形成された前記光検出器のアレイのパターン(302)を受容すること、並びに
BrCl3及びArを含むプラズマを用いて前記少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすること
を含む方法。」(【請求項7】)

(2)「【技術分野】」、

「本開示の分野は、概してドライエッチングに関し、具体的には、光検出器のドライエッチングのための方法及びシステムに関する。」(【0001】)

(3)「【背景技術】」、

「一般的に、光検出器は、様々なカメラシステムにおいて、光を検出するために使用される。光検出器は、一連のセンサ、又は、互いに電気的に絶縁された一連のセンサによって形成される焦点面アレイ(FPA)を含む。センサを互いに絶縁する形式の一つは、エッチングを手段とするものであり、かかるエッチングでは、センサの間にトレンチを作成するよう材料が除去される。ウェットエッチングプロセスは等方性処理であり、かかる処理によって、材料を除去するために溶液(例えば酸又は基礎液)が使用される。ドライエッチングプロセスは異方性処理であり、かかる処理では、材料はプラズマへの曝露の後に除去される。いくつかの既知のウェットエッチングプロセスでは、酸性溶液がトレンチ内をラテラルにエッチングし、画素単位の光応答の減少(すなわち曲線因子の低減)の原因となる。いくつかの既知のドライエッチングプロセスでは、強腐食の中で、画素単位の光応答を減少させるか、又は暗電流を増加させる有機化合物が形成され、低感度の画像が提供されるに至る。」(【0002】)、

「したがって、実施の際に画素単位の光応答を減少させないエッチング方法の開発が必要である。」(【0003】)

(4)「【発明の概要】」、

「一態様では、光検出器のアレイを作る方法が提供される。方法は、隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチを含む、InAsSbから形成された光検出器のアレイのパターンを受容すること、及び、BrCl3及びArを含むプラズマを用いて少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすることを含む。」(【0004】)、

「別の態様では、光検出器アレイを使用した撮像方法が提供される。方法は、光検出器アレイを提供すること、及び、光検出器アレイの第1の光検出器と光検出器アレイの第2の光検出器によって波長を受容することを含み、第1の光検出器と第2の光検出器の間にはトレンチが形成され、トレンチは、BrCl3とArを使用するドライエッチングによって形成される。」(【0005】)、

「更に別の態様では、撮像に使用するための光検出器アレイが提供される。光検出器アレイは、InAsSbから形成された第1の光検出器、InAsSbから形成された第2の光検出器、及び、第1の光検出器と第2の光検出器の間に形成されたトレンチを含み、トレンチは、BrCl3とArを使用して形成される。」(【0006】)

(5)「【発明を実施するための形態】」、

「本明細書で記述されるシステム及び方法により、InAsSbに基づく光検出器のドライエッチングが可能になる。本明細書で使用されているように、「ドライエッチング」又は「エッチング」という用語は、材料を移動させ、又は取り除く反応性ガスであるイオンあるいはプラズマへの曝露による、材料の除去を表す。」(【0009】)、

「図1は例示的な光検出器アレイ100の斜視図である。例示的な実施形態では、光検出器アレイ100は、半導体基板上に形成された光検出器のアレイ又はセンサ102を備える。センサ102は、ドライエッチングプロセスによって形成されたトレンチ104によって隔てられる。一実施形態では、光検出器100は、幅27umの16のセンサを備える。代替的には、光検出器アレイ100は、本明細書に記述されるような、撮像を促進する任意のサイズ及び形状を有する、任意の数のセンサを備えることが可能である。センサ102は、InAsSbを含む材料から形成され、センサ102が2つの波長を検出するように、デュアルバンド容量内で作動するよう構成されることがある。一実施形態では、光検出器アレイ100は、赤外線撮像装置に組み込まれるよう構成される。」(【0010】)、

「図2は、図1に示す光検出器アレイ100に使用されることがあるトレンチ200の斜視図を示したものであり、図3は、図2に示すトレンチ200の代替的な斜視図である。例示的な実施形態では、トレンチ200は、光検出器アレイ100のような光検出器アレイ内に作成された空隙である。トレンチ200は、光検出器アレイ100の材料をエッチングによって除くことで作成される。一実施形態では、トレンチ200は、第1光吸収層204、バリア層206及び第2光吸収層208をエッチングするか、又は除去して、層204、206及び208を備えた、分離した台形状部(mesa)207と209を形成する。第1光吸収層204及び第2光吸収層208は、InAsSbを含む。(【0011】)、

「例示的な実施形態では、層204、206及び208を含むがそれだけに限定されない光検出器アレイ100の材料が、エッチングによって除かれ、少なくとも部分的には第1側壁部210、第2側壁部212及び基底部214によって画定された、第1側壁部210と第2側壁部212の間に伸びるトレンチ200を形成する。一実施形態では、トレンチ200は6umの深さ及び6.5umの幅を有する。側壁部210及び212は、トレンチ200がU型を形成するように、滑らかに直立する。代替的には、トレンチ200は、本明細書に記述されるような、撮像を促進する任意のサイズ又は形状を有する可能性がある。例示的な実施形態では、トレンチ200は、隣接する光検出器又はセンサが互いに電気的に絶縁されるような、サイズ及び形状となる。」(【0012】)、

「トレンチ200は、側壁部210と212が誘電マスク202の下を削り取らないように形成される。つまり、トレンチ200は、マスク202とトレンチの中心線216との間に延在する距離214が、距離218のような、側壁部210と中心線216との間のどの距離とも少なくとも等しいか、又はかかる距離よりも大きくなるように形成される。同様に、マスク202とトレンチの中心線216との間に延在する距離220は、距離222のような、側壁部212と中心線216との間のどの距離とも少なくとも等しいか、又はかかる距離よりも大きくなる。」(【0013】)、

「図4は、図2及び図3に示すトレンチ200をドライエッチングする例示的な方法のフローチャート300である。例示的な実施形態では、InAsSbから形成された光検出器のアレイのパターンが受容される302。受容されたパターン302は、図2に示すトレンチ200のような、隣接する光検出器を隔てる複数のトレンチを含む。一実施形態では、トレンチの幅は1~5umとなる。代替的には、トレンチは、任意の量あってもよく、本明細書に記述されるような、撮像を促進するサイズを有しうる。」(【0014】)、

「一実施形態では、受容されたパターン302は、プラズマ化学気相蒸着(PECVD)を使用して、誘電ハードマスクをInAsSb上に堆積させることを含む。一実施形態では、ハードマスクはSi02を含み、175°Cで堆積する。代替的には、ハードマスクは、任意の材料を用いて、任意の温度で堆積しうる。フォトリソグラフィが、ハードマスク上で光検出器のアレイのパターンを画定するよう実行され、ハードマスクはエッチングされる。一実施形態では、ハードマスクは、CF4プラズマを使用してエッチングされる。パターンがハードマスクに転写されると、フォトレジストは除去される。一実施形態では、フォトレジストは、AZ400Tストリッパ及び超音波を使用して除去される。代替的には、フォトレジストは、本明細書に記述されるような、トレンチの形成を促進する任意のやり方において除去されうる。ハードマスクにおけるパターンを含むInAsSbは、ドライエッチング用の担体に乗せられたグリースである。一実施形態では、担体は4インチのシリコン(Si)キャリアである。」(【0015】)、

「例示的な実施形態では、InAsSbから形成された光検出器のアレイのパターンが受容された302後、受容されたパターン302に内包されるトレンチのドライエッチングを実行するため、光検出器は真空チャンバ内に配置される304。ガスのプラズマが、トレンチをエッチングするために、真空内に導入される306。一実施形態では、プラズマは、BCl3とArを含む。いくつかの実施形態では、1~100sscmの範囲内のBCl3が使用され、1~100sccmの範囲内のArが使用される。代替的には、本明細書に記述されるような、エッチングを促進する任意の分量のBCl3及びArが使用されうる。トレンチのエッチングが行われる前に、イオンが反応性になるように、プラズマはイオン化される306。いくつかの実施形態では、プラズマは、RF信号を使用してイオン化される306。代替的には、本明細書に記述されるような、エッチングを促進する任意のやり方において、プラズマはイオン化されうる。」(【0016】)、

「プラズマがイオン化された306後に、プラズマは、材料がエッチングによって除かれるように加速される310。例示的な実施形態では、BCl3はIn、Ga、Al、As及びSbの原子に反応して、Cl合成物を形成する。Arイオンは、化学エッチング製品(例えばCl合成物)を機械的にスパッタリングして、化学エッチング製品の脱離を引き起こすよう構成される。一実施形態では、BCl3に加えてArイオンも、トレンチの一部を化学的にエッチンングする。BCl3とArを使用することで、結果として、光検出器が滑らかな側壁部を有し、光検出器の下を削り取ることが防止されるようなエッチングを行うことが可能になる。」(【0015】)、

「いくつかの実施形態では、トレンチのエッチングは調整される312。一実施形態では、バイアス出力及び/又は圧力を調整することで、エッチングの速度が調整される。バイアス出力はイオンの運動量を制御し、圧力は、イオンの平均自由行程を変化させることで、イオンのスピードに影響を与える。そのため、バイアス出力及び/又は圧力は、エッチングの速度に影響を与える。例示的な実施形態では、バイアス電圧は10~300Vの範囲内であり、圧力は1~20mTの範囲内である。代替的には、バイアス出力は任意の電圧であってもよく、圧力は、本明細書に記述されるような、エッチングを促進する任意の圧力でありうる。一実施形態では、圧力が増大して、光検出器の台形状部の基部で形状を改善し、かつ、圧力が減少して、光検出器の台形状部の上で形状を改善する。本明細書で使用されているように、「形状」とは、台形状部の表面の垂直度と祖度のうち、少なくとも1つを表す。本明細書で使用されているように、「祖度」とは、表面の水平面からの逸脱を表す。いくつかの実行形態では、「祖度」又は「粗面」は、一又は複数のひび割れ、凸部、あるいは穴を有する表面を含む。同様に、「滑らか」又は「滑らかさ」とは、欠陥(例えばひび割れ、凸部及び穴)がなく、祖度を免れた表面を表す。したがって、いくつかの実行形態では、形状を改善することは、台形状部の表面の垂直度と祖度のうち、少なくとも1つを変造することを含む可能性がある。」(【0018】)、

「いくつかの実施形態では、エッチングは、ICP出力の変更によって調整される312。ICP出力の増大により、光検出器の側壁部の基部で形状が改善される。同様に、エッチングに使用されるプラズマのガス比も、側壁部の形状を改善するために調整されることがある。一実施形態では、ArのBCl3に対する比率を増加させて、光検出器の側壁部で滑らかなエッチングを実現する。例示的な実施形態では、エッチングに使用されるICP出力は、100~1200Wの範囲内である。代替的には、本明細書に記述されるような、エッチングを促進する任意のICP出力及びガス比が使用されうる。一実施形態では、光検出器の側壁部の勾配を変更し、又は決定するために、温度が調整される。真空中の温度が上昇するにつれ、光検出器の側壁部はより垂直度を増す。光検出器の下を削り取ることがないように、光検出器の間にトレンチが作成されることに注目されたい。」(【0018】)、

「本開示の一態様によると、光検出器アレイ100は、撮像における使用のために提供され、前記光検出器アレイは、InAsSbから形成された第1の光検出器、InAsSbから形成された第2の光検出器、及び、第1の光検出器と第2の光検出器の間に形成されたトレンチ200を含み、トレンチは、BrCl3とArを使用して形成される。」(【0022】)、

「本開示の一態様によると、光検出器のアレイを作る方法が提供され、前記方法は、隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチ200を含む、InAsSbから形成された光検出器のアレイのパターン302を受容すること、及び、BrCl3及びArを含むプラズマを用いて少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすることを含む。」(【0028】)、

「本開示の一態様によると、光検出アレイを使用して撮像する方法が提供され、前記方法は、光検出器アレイを提供すること、及び、光検出器アレイの第1の光検出器と光検出器アレイの第2の光検出器によって波長を受容することを含み、第1の光検出器と第2の光検出器の間にはトレンチ200が形成され、トレンチ200は、BrCl3とArを使用するドライエッチングによって形成される。」(【0038】)、

「少なくともいくつかの既知のエッチングシステムと比較して、本明細書で記述されるシステム及び方法は、光検出器の下を削り取ることを防止し、かつ/又は排除するよう、光検出器アレイに内包されるトレンチをドライエッチングすることを可能にするものである。光検出器の下を削り取らずにトレンチを形成することで、高感度の画像を提供する画素単位の光応答の変形が防止される。本明細書で記述されるシステム及び方法はまた、隣接した光検出器を電気的に絶縁するトレンチを作成し、光検出器が滑らかに直立する側壁部を備えたまま、その一方で電気的性能を保持することも可能にする。大面積機器の低バイアス動作も、本明細書で記述される方法及びシステムを使用することで実現される。」(【0042】)

4 当審の判断

(1)明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ(特許法第17条の2第3項)、「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものということができる。

(2)当初明細書等に記載されている技術的事項の認定

上記3で認定した当初明細書等の記載によれば、当初明細書等には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

ア 本開示の分野は、概してドライエッチングに関し、具体的には、光検出器のドライエッチングのための方法及びシステムに関する。(【0001】)

イ 一般的に、光検出器は、様々なカメラシステムにおいて、光を検出するために使用される。光検出器は、一連のセンサ、又は、互いに電気的に絶縁された一連のセンサによって形成される焦点面アレイを含む。センサを互いに絶縁する形式の一つは、エッチングを手段とするものであり、センサの間にトレンチを作成するよう材料が除去される。

ウェットエッチングプロセスは等方性処理である一方、ドライエッチングプロセスは異方性処理であり、後者の処理では、材料はプラズマへの曝露の後に除去される。いくつかの既知のウェットエッチングプロセスでは、酸性溶液がトレンチ内をラテラルにエッチングし、画素単位の光応答の減少(すなわち曲線因子の低減)の原因となる。いくつかの既知のドライエッチングプロセスでは、強腐食の中で、画素単位の光応答を減少させるか、又は暗電流を増加させる有機化合物が形成され、低感度の画像が提供されるに至る。

したがって、実施の際に画素単位の光応答を減少させないエッチング方法の開発が必要である。(【0002】・【0003】)

ウ 本明細書で記述されるシステム及び方法により、InAsSbに基づく光検出器のドライエッチングが可能になる。(【0009】)

エ 光検出器のアレイを作る方法は、隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチを含む、InAsSbから形成された光検出器のアレイのパターンを受容すること、及び、BrCl3及びArを含むプラズマを用いて少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすることを含む。

光検出器アレイを使用した撮像方法は、光検出器アレイを提供すること、及び、光検出器アレイの第1の光検出器と光検出器アレイの第2の光検出器によって波長を受容することを含み、第1の光検出器と第2の光検出器の間にはトレンチが形成され、トレンチは、BrCl3とArを使用するドライエッチングによって形成される。

撮像に使用するための光検出器アレイは、InAsSbから形成された第1の光検出器、InAsSbから形成された第2の光検出器、及び、第1の光検出器と第2の光検出器の間に形成されたトレンチを含み、トレンチは、BrCl3とArを使用して形成される。(【請求項1】・【請求項7】・【0004】~【0006】)

オ トレンチのドライエッチングを実行するため、光検出器は真空チャンバ内に配置され、ガスのプラズマが、トレンチをエッチングするために、真空内に導入される。一実施形態では、プラズマは、BCl3とArを含む。いくつかの実施形態では、1~100sscmの範囲内のBCl3が使用され、1~100sccmの範囲内のArが使用される。代替的には、エッチングを促進する任意の分量のBCl3及びArが使用されうる。トレンチのエッチングが行われる前に、イオンが反応性になるように、プラズマはイオン化される。プラズマがイオン化された後に、プラズマは、材料がエッチングによって除かれるように加速される。例示的な実施形態では、BCl3はIn、Ga、Al、As及びSbの原子に反応して、Cl合成物を形成する。Arイオンは、化学エッチング製品(例えばCl合成物)を機械的にスパッタリングして、化学エッチング製品の脱離を引き起こすよう構成される。一実施形態では、BCl3に加えてArイオンも、トレンチの一部を化学的にエッチングする。BCl3とArを使用することで、結果として、光検出器が滑らかな側壁部を有し、光検出器の下を削り取ることが防止されるようなエッチングを行うことが可能になる。エッチングに使用されるプラズマのガス比は、側壁部の形状を改善するために調整されることがあり、一実施形態では、ArのBCl3に対する比率を増加させて、光検出器の側壁部で滑らかなエッチングを実現する。(【0016】・【0017】・【0019】)

カ 本開示の一態様によると、光検出器アレイ100は、撮像における使用のために提供され、前記光検出器アレイは、InAsSbから形成された第1の光検出器、InAsSbから形成された第2の光検出器、及び、第1の光検出器と第2の光検出器の間に形成されたトレンチ200を含み、トレンチは、BrCl3とArを使用して形成される。

本開示の一態様によると、光検出器のアレイを作る方法が提供され、前記方法は、隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチ200を含む、InAsSbから形成された光検出器のアレイのパターン302を受容すること、及び、BrCl3及びArを含むプラズマを用いて少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすることを含む。

本開示の一態様によると、光検出アレイを使用して撮像する方法が提供され、前記方法は、光検出器アレイを提供すること、及び、光検出器アレイの第1の光検出器と光検出器アレイの第2の光検出器によって波長を受容することを含み、第1の光検出器と第2の光検出器の間にはトレンチ200が形成され、トレンチ200は、BrCl3とArを使用するドライエッチングによって形成される。(【0022】・【0028】・【0038】)

キ 少なくともいくつかの既知のエッチングシステムと比較して、本明細書で記述されるシステム及び方法は、光検出器の下を削り取ることを防止し、かつ/又は排除するよう、光検出器アレイに内包されるトレンチをドライエッチングすることを可能にするものである。光検出器の下を削り取らずにトレンチを形成することで、高感度の画像を提供する画素単位の光応答の変形が防止される。

本明細書で記述されるシステム及び方法はまた、隣接した光検出器を電気的に絶縁するトレンチを作成し、光検出器が滑らかに直立する側壁部を備えたまま、その一方で電気的性能を保持することも可能にする。

大面積機器の低バイアス動作も、本明細書で記述される方法及びシステムを使用することで実現される。(【0042】)

ク 当初明細書等には、ドライエッチングプロセスの具体的条件を明らかにした実施例は記載されていない。

(3)判断

ア 上記(2)で認定した技術的事項によれば、当初明細書等には、InAsSbに基づく光検出器において、隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチをドライエッチングによって形成する際に、BrCl3及びArを含むプラズマを用いるとする技術的事項(以下「BrCl3技術的事項」という。上記(2)エ及びカ)と、そのような際に、BCl3及びArを含むプラズマを用いるとする技術的事項(以下「BCl3技術的事項」という。上記(2)オ)の双方が記載してあると認められる。

他方、当初明細書等においては、請求項等ではBrCl3技術的事項が記載されている(上記(2)エ)一方、当初明細書等に記載された発明の技術的原理の説明ではBCl3技術的事項が記載されている(上記(2)オ)。そして、当初明細書等の記載(上記(1))によれば、BrCl3技術的事項に係る「BrCl3」の文言が記載されている回数である8回(請求項1・請求項7・【0004】・【0005】・【0006】・【0022】・【0028】・【0038】)とBCl3技術的事項に係る「BCl3」の文言が記載されている回数である7回(【0016】・【0017】・【0019】)とは、ほぼ同じである。

このように、当初明細書等においては、請求項等における記載と発明の技術的原理の説明における記載との間に齟齬があることから、当業者は、当初明細書等において、これら2つの技術的事項の双方が記載されているのではなく、いずれか一方が誤りであることを認識するといえる。しかしながら、当初明細書等においては、両技術的事項が記載されている回数がほぼ同じであり、実施例の記載もなく(上記(2)ク)、これら2つの技術的事項のうちいずれが正しく、いずれが誤りであるのかを明らかにする技術常識を示す証拠もない。

そうすると、当初明細書等の記載においては、これら2つの技術的事項のうちいずれが正しく、いずれが誤りであるのかは不明であったといえる。

イ 他方、上記2によれば、本件第2補正により、BCl3技術的事項に係る記載は全て削除され、BrCl3技術的事項のみが記載されることになったことになる。

ウ 上記ア及びイによれば、本件第2補正は、当初明細書等の記載において、BrCl3技術的事項とBCl3技術的事項のうちいずれが正しいのかが不明であったのを、BrCl3技術的事項が正しいことを明らかにしたものである。

したがって、本件第2補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないというべきである。

エ これに対し、請求人は、次のとおり主張するが、いずれも採用できない。

(ア)請求人は、当初明細書等がBrCl3技術的事項を意図していることは、本願の優先権主張の基礎出願である米国出願13/919541が特許されたときの特許請求の範囲(米国特許第8941145号明細書参照。)を考慮すれば明らかである旨主張する。

しかしながら、新規事項追加の有無の判断に用いる資料は、当初明細書等の記載であって、当該米国出願が特許されたときの記載が上記ウの判断を左右することはない。

(イ)請求人は、BCl3は化合物半導体のエッチングに最も一般的に使用されるガスの1つであるのに対し、本願に係る発明は、実際にBrCl3を合成してエッチングに使用し、BCl3と比較して改善された結果をみつけたことが、この発明の焦点である旨主張する。

しかしながら、当初明細書等にはそのような記載はないから、請求人の主張は、当初明細書等の記載に基づかないものである。

(ウ)請求人は、BCl3は化合物半導体のエッチングに最も一般的に使用されるガスの1つであるから、この点からもBrCl3が正当である旨を主張する。

しかしながら、BCl3が最も一般的に使用されるガスの1つであるということは、むしろ、BCl3技術的事項が正しいとの事情にもなり得ることであるし、また、BCl3技術的事項(すなわち、InAsSbに基づく光検出器において、隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチをドライエッチングによって形成する際に、BCl3及びArを含むプラズマを用いるとする技術的事項)が技術常識であったことを示す証拠もないから、請求人が主張する事情をもって、BrCl3技術的事項が正しいと結論づけることはできない。

オ したがって、本件第2補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

5 本件却下決定の適否の小括

以上のとおりであるから、本件第2補正を却下した本件却下決定は適法である。

第3 本願発明についての判断

1 本願発明の認定

上記第2のとおり、本件却下決定は適法であるから、本願の請求項に係る発明は、平成30年12月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「光検出器のアレイを作る方法であって、
隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチ(200)を含む、InAsSbから形成された前記光検出器のアレイを提供すること、並びに
BCl3及びArを含むプラズマを用いて前記少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすること
を含む方法。」

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定は、本件第2補正が却下された後に、本願を平成31年3月26日付け拒絶理由通知書に通知した理由によって拒絶したものであり、その理由は、以下の内容を含むものである。

(1)平成30年12月5日に提出した手続補正書でした補正(本件第1補正)は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)請求項1に係る発明(本願発明)は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規程により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2010-41011号公報

2.特表2013-510442号公報

3.特表2008-510303号公報

4.特開平9-171990号公報

5.特開平10-27783号公報

3 本件第1補正の新規事項追加について

(1)本件第1補正の内容

本件第1補正は、当初明細書等の請求項1・【0005】・【0006】・【0022】・【0028】・【0038】において、Arとともに使用される物質が「BrCl3」とされていたのを、「BCl3」に補正すること、当初明細書等の請求項7(Arとともに使用される物質が「BrCl3」であることを特定するものである。)を削除すること、当初明細書等の【0044】において、「BrCl3及びAr」を使用する旨の記載を追加すること、を含むものである。

(2)判断

ア 上記第2の4(3)アで説示したとおり、当初明細書等の記載においては、BrCl3技術的事項とBCl3技術的事項のうち、いずれが正しく、いずれが誤りであるのかは不明であった。

他方、上記(1)によれば、本件第1補正により、本願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、【0004】に記載されているBrCl3技術的事項を除き、BCl3技術的事項が記載されることになる。そうすると、本件第1補正により、当初明細書等においては存在していた、請求項等における記載と発明の技術的原理の説明における記載との間の齟齬(上記第2の4(3)ア)が解消されるとともに、BCl3技術的事項に係る「BCl3」の文言が記載されている回数である15回(請求項1・【0005】・【0006】・【0016】・【0017】・【0019】・【0022】・【0028】・【0038】・【0044】)が、BrCl3技術的事項に係る「BrCl3」の文言が記載されている回数である1回(【0004】)を大きく越えたことになる。そして、BCl3技術的事項が誤りであるとの技術常識を示す証拠もない。

したがって、本件第1補正により、当業者は、BrCl3技術的事項に係る記載が誤記であり、BCl3技術的事項が正しいことを認識するものといえる。

ウ 上記イによれば、本件第1補正は、当初明細書等の記載において、BrCl3技術的事項とBCl3技術的事項のうちいずれが正しいのかが不明であったのを、BCl3技術的事項が正しいことを明らかにしたものといえる。

したがって、本件第1補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないというべきである。

よって、本件第1補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

4 進歩性欠如について

(1)引用文献に記載された発明の認定

ア 原査定が引用した特開2010-41011号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審が付した。)。

(ア)「以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、実施形態に係る光検出装置1の断面構成を示す図である。光検出装置1は、化合物半導体基板2と、複数の光検出素子4とを備える。化合物半導体基板2は、例えば、半絶縁性のGaAs基板であり、0.3~1mm程度の厚みを有する。複数の光検出素子4は、化合物半導体基板2の主面2aに設けられている。光検出素子4は、InSb化合物半導体層であり、1~5μm程度の厚みを有する。複数の光検出素子4は、分離溝5によって互に分離(絶縁)されているが、複数の電極16を介して電気的に直列接続されている。所定方向(複数の光検出素子4が直列接続されている方向)に延びる光検出素子4の長さは5~20μm程度であり、一の分離溝5を挟んでこの方向に隣接する二つの光検出素子4の間隔(分離溝5の幅)は1~3μm程度である。光検出素子4は、第1の表面4a及び第2の表面4bを有し、第1の表面4aが化合物半導体基板2の主面2aに接合している。第2の表面4bは、第1の表面4aの反対側にある。主面2aと第1の表面4aとは、化合物半導体基板2と光検出素子4との接合面であり、第2の表面4bは、光検出素子4の主面である。」(【0008】)、

[図:0001380278000001.jpg]

「光検出素子4は、光検出領域6、第1の領域8、第2の領域10及び第3の領域12を有する。光検出領域6は、光検出素子4内に埋め込まれている。光検出領域6は、第1の表面4aと第2の表面4bとの間に設けられている。光検出領域6は、光検出素子4において第1の領域8及び第2の領域10や第3の領域12を含まない領域であり、入射光を光電変換する。光検出領域6は、例えば、i型のInSb化合物半導体から成り、5×1015~1×1017cm-3程度のキャリア濃度を有する。第1の領域8は、光検出素子4内に埋め込まれている。第1の領域8は、第1の表面4aと第2の表面4bとの間に設けられている。第1の領域8は、光検出素子4の第2の表面4bの一部から光検出素子4の内側に延びている(光検出素子4の内側に厚みを有する)。第1の領域8は、n型不純物半導体領域(第1不純物半導体領域)であり、1×1017~1×1019cm-3程度のキャリア濃度を有する。」(【0009】)、

「第2の領域10は、光検出素子4内に埋め込まれている。第2の領域10は、第1の表面4aと第2の表面4bとの間に設けられている。第2の領域10は、光検出素子4の第2の表面4bの一部から光検出素子4の内側に延びている(光検出素子4の内側に厚みを有する)。第2の領域10は、p型不純物半導体領域(第2不純物半導体領域)であり、1×1017~1×1019cm-3程度のキャリア濃度を有する。第1の領域8と第2の領域10とは離隔して設けられている。」(【0010】)、

「また、第2の領域10は、分離溝5に面している。すなわち、分離溝5の側壁の一部又は全部は、第2の領域10に属している。光検出素子4が複数(例えば二つ)の分離溝5に隣接している場合、光検出素子4は、隣接する複数の分離溝5のうち一の分離溝5に面する一の第2の領域10を有していればよいが、複数の分離溝5の全てにそれぞれ面する複数の第2の領域10を有していてもよい。なお、第1の領域8がp型不純物半導体領域(第2不純物半導体領域)であり、第2の領域10がn型不純物半導体領域(第1不純物半導体領域)であってもよい。」(【0011】)、

「第3の領域12は、光検出素子4内に埋め込まれている。第3の領域12は、光検出素子4の第1の表面4aから光検出素子4の内側に延びている(光検出素子4の内側に厚みを有する)。すなわち、第3の領域12は、化合物半導体基板2に接合している。第3の領域12は、第1の表面4aの全領域にわたって形成されている。第3の領域12は、p型不純物半導体領域であり、1×1017~1×1019cm-3程度のキャリア濃度を有する。第3の領域12は、第1の領域8及び第2の領域10と離隔して設けられている。半絶縁性GaAsを材料とする化合物半導体基板2上に特性の良い高抵抗InSb層を光吸収層として直接に設けるのは困難なので、まず不純物を含んだ低抵抗なInSb層から成る第3の領域12をバッファ層として化合物半導体基板2上に直接設け、この第3の領域12上に、特性の良い高抵抗のInSb層から成る光吸収層として光検出領域6を設けている。なお、第2の領域10と第3の領域12とはつながっていても(第2の領域10と第3の領域12とは連続した領域として形成されていても)よい。」(【0012】。当審注:「半絶縁性GaAsを材料とする化合物半導体基板12上に特性の良い・・・」中の「化合物半導体基板12」は、「化合物半導体基板2」の明らかな誤記であるので、誤記を正した上で認定した。)、

「光検出装置1は、保護膜14と、複数の電極16とを更に備える。保護膜14は、SiNやSiO等を含む。保護膜14は、光検出素子4の第2の表面4bを覆い、分離溝5の内側(分離溝5の側壁及び底壁)を覆う。複数の光検出素子4のそれぞれに対し、二つのコンタクトホール(コンタクトホール14a及びコンタクトホール14b)が保護膜14に設けられている。コンタクトホール14aは、第1の領域8上に設けられており、コンタクトホール14bは、第2の領域10上に設けられている。複数の電極16は、複数の光検出素子4を電気的に直列接続するためのものであり、互に分離されている。電極16は、保護膜14上等に設けられている。電極16は、Ti/Au又はTi/Pt/Auを含み、分離溝5の深さ(又は、上記の光検出素子4の厚み)以上の厚みを有し、保護膜14を除く分離溝5内を満たしている(分離溝5内は電極16によって充填されている)。電極16は、コンタクトホール14aを介して第1の領域8に電気的に接続している。電極16は、コンタクトホール14bを介して第2の領域10に電気的に接続している。そして、電極16は、分離溝5を挟んで互に隣接する二つの光検出素子4の一方の第1の領域8(コンタクトホール14a)から、この分離溝5を介して他方の第2の領域10(コンタクトホール14b)に延びている。すなわち、電極16は、分離溝5を挟んで隣接している二つの光検出素子4のうち一方の光検出素子4の第1の領域8と、他方の光検出素子4の第2の領域10とを電気的に接続する。このように、電極16が、分離溝5を挟んで隣接している二つの光検出素子4のうち一方の光検出素子4の第1の領域8と、他方の光検出素子4の第2の領域10とを電気的に接続することによって、複数の光検出素子4を電気的に直列接続している。(【0013】)、
「以上説明したように、光検出素子4は、第1の表面4aと第2の表面4bとの間に、i型の光検出領域6と、例えばp型の第1の領域8と、例えばn型の第2の領域10とを有する。このように、光検出装置1は、i型の光検出領域6と、p型の第1の領域8と、n型の第2の領域10とが光検出素子4の二つの面の間に設けられており、p型の第1の領域8に接続された電極16とn型の第2の領域10に接続された電極16とが共に光検出素子4の主面である第2の表面4bに設けられたプレーナ型の構成を有している。更に、複数の光検出素子4のそれぞれは、単に分離溝5によって互に分離されている。以上のように、光検出装置1は比較的簡易な構成を有する。また、第2の領域10(第1又は第2不純物半導体領域)は、分離溝5に面しているので、低抵抗な不純物半導体領域に分離溝を形成するため、光検出領域6からの拡散電流が低減される。また、電極16は、分離溝5の深さ以上の厚みを有しているので、分離溝5上において十分な強度を確保できる。従って、分離溝5上や分離溝5の近傍における電極16の破損等の発生が低減される。また、電極16は、保護膜14を除く分離溝5内を満たしている(分離溝5内は電極16によって充填されている)。従って、分離溝5上や分離溝5の近傍における電極16の破損等の発生が十分に低減される。」(【0014】)、
「次に、光検出装置1の製造方法について説明する。まず、化合物半導体基板2を用意し、化合物半導体基板2の主面2a上に、MBE(分子線エピタキシー)法やMOVPE(有機金属気相エピタキシー)法等を用いて第3の領域12となる1×1017~1×1019cm-3程度のキャリア濃度を有するInSb層を0.5~1μm程度形成し、更にその上に光吸収層6となるように0.5~2μm程度の厚みとなるまでInSb化合物半導体層(5×1015~1×1017cm-3程度のキャリア濃度)をエピタキシャル成長させる(第1工程)。第1工程の次に、このInSb化合物半導体層内に、複数の第1及び第2不純物半導体領域を、拡散法やイオン注入法等を用いて形成する(第2工程)。具体的に説明すると、第1及び第2不純物半導体領域は、拡散法やイオン注入法等を用いて、n型ドーパント又はp型ドーパントを、InSb化合物半導体層の主面(化合物半導体基板2に接合する面の反対側にあるInSb化合物半導体層の面)からInSb化合物半導体層内に注入することによって得られる。第1及び第2不純物半導体領域は、所定の方向(具体的には、複数の光検出素子4が後に直列接続される方向)に交互に配置されるように形成される。」(【0015】。当審注:末文の1つ前の文中、「・・・InSb化合物半導体層内に注入することにって得られる」は、「・・・InSb化合物半導体層内に注入することによって得られる」の明らかな誤記であるので、誤記を正した上で認定した。)、
「第2工程の次に、ウエットエッチングまたは、ドライエッチング等を用いて、上記所定の方向に沿って等間隔に複数の分離溝5をInSb化合物半導体層に設ける(第3工程)。これによって、InSb化合物半導体層が複数の光検出素子4に分割される。よって、複数の光検出素子4のそれぞれは、分離溝5によって互に分離される。第3工程の次に、光検出素子4上等に保護膜14を形成する(第4工程)。具体的に説明すると、保護膜14は、光検出素子4の第2の表面4bと、分離溝5の内側(分離溝5の側壁及び底壁)とを覆うように形成される。」(【0016】)、
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「第4工程の次に、クエン酸+過酸化水素や塩酸+過酸化水素等の酸によるウエットエッチング又はICPエッチングやイオンミリングなどのドライエッチング等を用いて、複数のコンタクトホール14a及びコンタクトホール14bを、保護膜14に形成する(第5工程)。具体的に説明すると、第1の領域8上にコンタクトホール14aを形成し、第2の領域10上にコンタクトホール14bを形成する。コンタクトホール14a及びコンタクトホール14bが形成されたことによって、第1の領域8の表面の一部と、第2の領域10の表面の一部とが露出される。」(【0017】)、
「第5工程の次に、電極16を保護膜14上等に形成する(第6工程)。具体的に説明すると、保護膜14上(分離溝5内を含む)と、コンタクトホール14a内及びコンタクトホール14b内とに、Ti/Au又はTi/Pt/Au等の金属材料の金属膜を抵抗加熱やEBなどで蒸着する。コンタクトホール14a内、コンタクトホール14b内及び分離溝5内は、この金属膜の金属材料によって充填される。このようにして形成された金属膜は、コンタクトホール14a及びコンタクトホール14bを介して、第1の領域8及び第2の領域10に電気的に接続される。このような抵抗加熱やEBなどの蒸着の後、リフトオフ法等を用いて、上記金属膜を複数の電極16に分割する。」(【0018】)、
「上記の実施例においては、光吸収領域(光検出領域6)としてInSbを用いた5μm程度前後の波長帯の光検出素子について述べているが、これに限らない。例えば、この光吸収領域(光検出領域6)としてInAsxSb1-xを用いることにより、10μm程度前後の波長帯の光検出素子としてもよい。」(【0019】)
(イ)【0019】には、「光吸収領域(光検出領域6)としてInSbを用いた5μm程度前後の波長帯の光検出素子」に係る態様(以下「InSb態様」という。)と、「光吸収領域(光検出領域6)としてInAsxSb1-xを用いることにより、10μm程度前後の波長帯の光検出素子とし」た態様(以下「InAsSb態様」という。)とが記載されているところ、これらのうち、InAsSb態様の製造方法について、引用文献1にいかなる構成が記載されているのかを検討する。
a まず、【0019】によれば、InAsSb態様は、InSb態様における「光吸収領域(光検出領域6)」の「InSb」を「InAsxSb1-x」に置換したものであることがわかる。
そうすると、InAsSb態様では、「第2工程」(【0015】)及び「第3工程」(【0016】)における「InSb化合物半導体層」(この層が「光吸収層6」となる。【0015】参照。)が「InAsxSb1-x化合物半導体層」に置換されていると認められる。
b 次に、InAsSb態様では、「第1工程」(【0015】)における「第3の領域12」となる「InSb層」がどうなっているのかは、引用文献1に明記がない。
他方、【0012】の「半絶縁性GaAsを材料とする化合物半導体基板2上に特性の良い高抵抗InSb層を光吸収層として直接に設けるのは困難なので、まず不純物を含んだ低抵抗なInSb層から成る第3の領域12をバッファ層として化合物半導体基板2上に直接設け、この第3の領域12上に、特性の良い高抵抗のInSb層から成る光吸収層として光検出領域6を設けている。」の記載によれば、InSb態様では、「第3の領域12」となる「InSb層」が「バッファ層」として用いられていることがわかる。そして、InAsSb態様では、当該記載中の「特性の良い高抵抗InSb層」が「InAsxSb1-x化合物半導体層」に置換されることになるといえるから、第3の領域12であるバッファ層上には当該「InAsxSb1-x化合物半導体層」が設けられていることになる。しかるに、バッファ層とその上に設けられた層とを同様の組成の層から構成することは技術常識である。
そうすると、InAsSb態様では、「第3の領域12」である「InSb層」が「InAsxSb1-x層」に置換されていることが、引用文献1に記載されているに等しいと認められる。
イ 上記アによれば、引用文献1には、InAsSb態様、すなわち、「光吸収領域(光検出領域6)としてInAsxSb1-xを用いることにより、10μm程度前後の波長帯の光検出素子とし」た態様の製造方法について、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明1の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。
「光検出装置1の製造方法であって、
化合物半導体基板2を用意し、化合物半導体基板2の主面2a上に、MBE(分子線エピタキシー)法やMOVPE(有機金属気相エピタキシー)法等を用いて第3の領域12となる1×1017~1×1019cm-3程度のキャリア濃度を有するInAsxSb1-x層を0.5~1μm程度形成し、更にその上に光吸収層6となるように0.5~2μm程度の厚みとなるまでInAsxSb1-x化合物半導体層(5×1015~1×1017cm-3程度のキャリア濃度)をエピタキシャル成長させる第1工程と、(【0015】、上記ア(イ)b)
第1工程の次に、このInAsxSb1-x化合物半導体層内に、複数の第1及び第2不純物半導体領域を、拡散法やイオン注入法等を用いて形成し、第1及び第2不純物半導体領域は、所定の方向に交互に配置されるように形成される、第2工程と、(【0015】、上記ア(イ)a)、
第2工程の次に、ドライエッチングを用いて、上記所定の方向に沿って等間隔に複数の分離溝5をInAsxSb1-x化合物半導体層に設け、これによって、InAsxSb1-x化合物半導体層が複数の光検出素子4に分割される、第3工程と、(【0016】、上記ア(イ)a)
を含み、
第3の領域12は、光検出素子4内に埋め込まれており、(【0012】)
光吸収領域(光検出領域6)としてInAsxSb1-xを用いることにより、10μm程度前後の波長帯の光検出素子とした、(【0019】)
光検出装置1の製造方法。」
(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 本願発明の「光検出器のアレイを作る方法であって、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「光検出素子4」は、本願発明の「光検出器」に相当する。
(イ)引用発明1は、「光検出装置1の製造方法」であって、「InAsxSb1-x化合物半導体層が複数の光検出素子4に分割される、第3工程」を備えるものであるから、本願発明でいう「光検出器のアレイを作る方法」であるといえる。
(ウ)よって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備える。
イ 本願発明の「隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチ(200)を含む、InAsSbから形成された前記光検出器のアレイを提供すること、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「複数の分離溝5」は、本願発明の「少なくとも1つのトレンチ」に相当する。
(イ)引用発明1は、「上記所定の方向に沿って等間隔に複数の分離溝5をInAsxSb1-x化合物半導体層に設け、これによって、InAsxSb1-x化合物半導体層が複数の光検出素子4に分割される」ものであるから、上記「複数の分離溝5」は、本願発明1でいう「隣接し合う光検出器の間に画定された」ものといえる。
(ウ)引用発明1は、「光吸収領域(光検出領域6)としてInAsxSb1-xを用いる」ものであるとともに、「光検出素子4内に埋め込まれ」た「第3の領域12」が「InAsxSb1-x層」からなるから、引用発明1の「光検出素子4」(本願発明の「光検出器」に相当。)は、本願発明でいう「InAsSbから形成された」ものといえる。
(エ)よって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備える。
ウ 本願発明の「並びに BCl3及びArを含むプラズマを用いて前記少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすること」との特定事項について
(ア)引用発明1は、第2工程の次に、ドライエッチングを用いて、上記所定の方向に沿って等間隔に複数の分離溝5をInAsxSb1-x化合物半導体層に設け」るものであるから、本願発明でいう「前記少なくとも1つのトレンチをドライエッチングする」との特定事項を備える。

(イ)しかしながら、引用発明1は、「ドライエッチング」を「BCl3及びArを含むプラズマを用いて」するとの特定事項を備えない。

エ 本願発明の「を含む方法。」との特定事項について

上記アによれば、引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備える。

(3)一致点及び相違点の認定

上記(2)によれば、本願発明と引用発明1とは、

「光検出器のアレイを作る方法であって、
隣接し合う光検出器の間に画定された少なくとも1つのトレンチ(200)を含む、InAsSbから形成された前記光検出器のアレイを提供すること、並びに
前記少なくとも1つのトレンチをドライエッチングすること
を含む方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]

前記少なくとも1つのトレンチについてのドライエッチングを、本願発明は「BCl3及びArを含むプラズマを用いて」するのに対し、引用発明1はそうではない点。

(4)相違点の判断

ア 半導体のドライエッチングをBCl3及びArを含むプラズマを用いて行うことは周知技術である(例えば、特表2013-510442号公報の【0004】、特表2008-510303号公報の【0015】・図2、特開平9-171990号公報の【0019】~【0023】、特開平10-27783号公報の【0015】・【0016】を参照。いずれも原査定が提示したものである。)。

そうすると、引用発明1において、前記少なくとも1つのトレンチについてのドライエッチングを、BCl3及びArを含むプラズマを用いて行うようにして、相違点に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

イ なお、仮に、上記(1)ア(イ)bにおいて、InAsSb態様では、「第3の領域12」である「InSb層」が「InAsxSb1-x層」に置換されたものであることが、引用文献1に記載されているに等しいとまでいえないとすると、本願発明と引用発明1とは、「前記検出器のアレイ」が、本願発明は「InAsSbから形成され」ているのに対し、引用発明1はそうであるのか不明である点でも相違する。

しかしながら、上記(1)ア(イ)bで説示したことによれば、引用発明1の「第3の領域12」として、「InAsxSb1-x層」ないし「InAsSb層」を採用して、当該相違点に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことといえる。

ウ 相違点のようにしたことによる効果は、格別とはいえないものである。

エ したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件第1補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-003426

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