特許拒絶査定不服審判
2017-010753
無線テレメータシステムの通信親機
- 審判番号
- 2017-010753
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-243586外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月19日
- 審決日
- 2018年12月11日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】シャープ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-243586「無線テレメータシステムの通信親機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月19日出願公開、特開2014- 93683〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年10月12日付け 拒絶理由通知書
平成28年12月14日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月20日付け 拒絶査定
平成29年 7月19日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提
出
平成30年 7月31日付け 拒絶理由通知書
平成30年 9月 7日 意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、平成30年 9月 7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
「無線テレメータシステムにおいて計測データを送信する1以上の通信子機から前記計測データを収集するための通信親機であって、
前記通信子機に対し、当該通信子機が他の通信親機との通信に使用している無線チャネルを問い合わせる無線チャネル確認電文を、所定の第1の無線チャネルを用いて同報通信により送信する電文送信部と、
前記第1の無線チャネルにより前記無線チャネル確認電文を受信した前記通信子機から、当該通信子機が他の通信親機との通信に使用している第2の無線チャネルの情報を取得するチャネル情報取得部と、
前記通信親機の通信状態に関する情報を表示する表示部と、
自装置の通信処理を制御する制御部とを備え、
前記チャネル情報取得部が前記第2の無線チャネルの情報の受信を待機する期間は、前記通信子機が前記無線チャネル確認電文を受信してから前記第2の無線チャネルの情報を返信するまでの返信タイミングがとり得る期間の長さに応じて設定され、
前記表示部は、前記取得した第2の無線チャネルの情報に基づいて、前記通信親機が前記通信子機との通信に使用可能な無線チャネル、または前記通信子機によって他の通信親機との通信に使用されている無線チャネルの情報の少なくともいずれか一方を表示する、通信親機。」
第3 拒絶の理由
平成30年 7月31日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、請求項1に対して以下1~3、6~9の引用文献が引用されている。
1:特開2005-117309号公報
2:特開2012-129788号公報
3:特開2008-107956号公報
6:特開2007-166488号公報
7:特開平1-276935号公報
8:特開平4-326639号公報
9:特開平4-42633号公報
第4 引用例に記載された事項、引用発明、公知技術及び周知技術
1.引用例1
当審拒絶理由に引用された特開2005-117309号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)
ア 「【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における無線通信システムのシステム図、図2は無線通信システムを構成する無線通信装置のブロック図、図3は通信に使用する周波数を決定する際の通信シーケンス図、図4は無線通信で使用する電文フォーマット図を示すものである。
【0022】
図2において、無線通信装置5A~5Dは、他の無線通信装置と無線で通信を行う無線通信手段1と、無線通信手段1を用いた通信に使用する周波数を記憶する周波数記憶手段6と、他の無線通信装置が使用している周波数を確認するための電波状況問い合わせ電文を生成する電波状況問い合わせ手段7と、自システムで使用する周波数を決定する周波数決定手段8と、外部操作により他の無線通信装置と縁組みを行うために登録モードに移行させるための外部入力手段9と、無線通信システム毎にユニークになるように割り当てられた無線システム識別符号を記憶する無線システム識別符号記憶手段10と、同一の無線システム識別符号を有する無線通信システム内で各無線通信装置を識別するためにユニークに割り当てられた機器識別符号を記憶する機器識別符号記憶手段11と、ユニークではないがあらかじめランダムに設定された仮機器識別符号を記憶する仮機器識別符号記憶手段12と、マスターとして動作するかスレーブとして動作するかの動作モードを記憶する動作モード記憶手段13と、前記各手段を制御する制御手段3とを備える。
【0023】
以上のように構成された無線通信装置から構成される無線通信システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0024】
図1のように、無線通信システムは、マスターと呼ばれる無線通信装置とスレーブと呼ばれる無線通信装置から構成され、マスターには機器識別符号として01が固定値として設定されている。また、マスターには無線システム識別符号記憶手段10に、製造時にあらかじめユニークな無線システム識別符号が設定されている。スレーブは、登録時にマスターから、マスターが有する無線システム識別符号と、スレーブ毎にユニークとなる機器識別符号と、あらかじめ決められた複数の使用可能な周波数から通常の通信で使用する周波数とを割り当てられる。そして、これらを用いて互いに通信を行う。
【0025】
ここでは、既に設置されているマスターである無線通信装置5C(機器識別符号:01)とスレーブである無線通信装置5D(機器識別符号:02)で構成される他の無線通信システム(無線システム識別符号:002)の通信エリア内(使用周波数:A)に、無線通信装置5Aと無線通信装置5Bを設置し、無線通信装置5Aと無線通信装置5B間で使用する周波数を決定する方法について説明する。
【0026】
図1において、無線通信装置5Aにおける動作モード記憶手段13にはあらかじめマスターとして動作するように設定されている。一方、無線通信装置5Bにおける動作モード記憶手段13にはあらかじめスレーブとして動作するように設定されている。そして、無線通信装置5Aにおいて、スイッチなどで構成されている外部入力手段9を操作することにより制御手段3に対して登録モードに移行する信号を出力する。制御手段3は外部入力手段9からの前記信号を受信すると登録モードに移行し(図3のS1)、動作モード記憶手段13に記憶された動作モードからマスターとして動作することを判別し、無線通信手段1を用いて連続受信状態に移行し無線電文を待ち受ける。一方、無線通信装置5Bにおいて、スイッチなどで構成されている外部入力手段9を操作することにより制御手段3に対して登録モードに移行する信号を出力する。制御手段3は外部入力手段9からの前記信号を受信すると登録モードに移行し(S2)、動作モード記憶手段13に記憶された動作モードからスレーブとして動作することを判別し、無線通信手段1を用いて、無線システム識別符号をオール1、送信先機器識別符号はマスターの機器識別符号である01、送信元機器識別符号は仮機器識別符号記憶手段12に記憶された仮機器識別符号である8Bを設定した登録電文1を無線通信装置5Aに対して送信する(S3)。
【0027】
例えば、登録電文1の電文フォーマットとしては、図4に示す電文フォーマットを用い、登録電文1を示すために制御コード2の部分にフラグを立てることなどが考えられる。
【0028】
無線通信装置5Aは、制御手段3の制御により無線通信手段1を用いて、前記登録電文1を受信する(S3)。次に、マスターである無線通信装置5Aにおける制御手段3は、自システムで使用する周波数と同じ周波数を使用している他の無線通信装置の台数を確認するため、電波状況問い合わせ手段7を用いて、電波状況問い合わせ電文を生成し、無線通信手段1を用いて、無線システム識別符号をオール1、送信先機器識別符号を同報指定であるFF、送信元機器識別符号を無線通信装置5Aの機器識別符号である01に設定し、周波数記憶手段6から通常モードでの通信で使用する周波数Aを取得し、この周波数Aで電波状況問い合わせ電文を同報で送信する(S4)。
【0029】
同報で送信された電波状況問い合わせ電文は、無線通信装置5Cおよび無線通信装置5Dにおいて、制御手段3の制御により、無線通信手段1を用いて受信される(無線通信装置5Cと無線通信装置5D間では周波数Aを用いて通信しているため)。そして、無線通信装置5Cおよび無線通信装置5Dにおける制御手段3は、無線通信手段1を用いて、無線システム識別符号をオール1、送信先機器識別符号を電波状況問い合わせ電文における送信元機器識別符号に設定されている01、送信元機器識別符号を無線通信装置5Cの機器識別符号である01および無線通信装置5Dの機器識別符号である02に設定し、応答電文を返信する(S5)。
【0030】
無線通信装置5Aにおける制御手段3は、無線通信手段1を用いて、無線通信装置5Cおよび無線通信装置5Dから返信される応答電文を受信し、応答電文数(ここでは、2)を周波数決定手段8に記憶する。そして、周波数決定手段8には、あらかじめ閾値として、例えば1が記憶されており、この閾値との比較を行い、閾値<応答電文数が成立するため、自システム(無線通信装置5Aおよび無線通信装置5B間)で使用する周波数を、周波数Aから周波数Bに変更し、周波数記憶手段6に周波数Bを記憶する。
【0031】
そして、無線通信装置5Aにおける制御手段3は、無線通信手段1を用いて、無線システム識別符号をオール1、送信先機器識別符号を登録電文1の送信元機器識別符号に設定されていた8B、送信元機器識別符号を無線通信装置5Aの機器識別符号である01に設定し、図4における伝送データ部に無線通信装置5Aにおける制御手段3により割り当てた無線通信装置5Bの機器識別符号02、無線システム識別符号記憶手段10に記憶された無線システム識別符号001、周波数記憶手段6に記憶された周波数Bを設定した登録電文2を無線通信装置5Bに対して送信する(S6)。
【0032】
無線通信装置5Bにおける制御手段3は、登録電文2を受信し、登録電文2の伝送データ部に含まれる機器識別符号02、無線システム識別符号001および周波数Bをそれぞれ機器識別符号記憶手段11、無線システム識別符号記憶手段10および周波数記憶手段6に記憶する。
【0033】
そして、無線通信手段1を用いて、無線システム識別符号を登録電文2のデータ部にて通知された001、送信先機器識別符号を無線通信装置5Aの機器識別符号である01、送信元機器識別符号を登録電文2のデータ部にて通知された無線通信装置5Bの機器識別符号である02に設定した登録電文3を、無線通信装置5Aに対して送信する(S7)。
そして、無線通信装置5Aおよび無線通信装置5Bにおいて登録モードが解除され(S8,S9)、通常の通信を行う通常モードに移行する。以降は、無線通信装置5Aおよび無線通信装置5B間では、制御手段3の制御により、周波数記憶手段6に記憶された周波数Bを用いて通信を行う。
【0034】
以上のように、本実施の形態においては、電波状況問い合わせ電文に対して返信される応答電文数により、自システムと同じ周波数を使用している他の無線通信装置の台数を取得し、前記周波数決定手段8を用いて、前記取得した無線通信装置の台数に基づき、自システムで使用する周波数を決定するため、設定器やハンディーコントローラ等の外部機器を必要とせず、かつ周波数を変更する必要があるか否か、あるいはどの周波数に変更するのが最適化などの判断を、外部機器を操作する作業員が行う必要がなく、無線通信装置自体が無線通信に最適な周波数に自律的に変更するため、人為的なミスがなく確実に最適な周波数に変更でき、しかも手間のかからない設置性に優れた無線通信システムを提供することができる。」(5~7ページ)
イ 「【0037】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態のブロック図である。実施の形態1と同一符号は、同一機能を有するものとする。実施の形態1と異なる点は、乱数を発生する乱数発生手段14を設けた点である。
【0038】
以上のように構成された無線通信装置から構成される無線通信システムについて、以下その動作、作用を説明する。
【0039】
先の実施の形態では、同報で送信された電波状況問い合わせ電文は、無線通信装置5Cおよび無線通信装置5Dにおいて、制御手段3の制御により、無線通信手段1を用いて受信し、この受信した電波状況問い合わせ電文に対して、無線システム識別符号をオール1、送信先機器識別符号を電波状況問い合わせ電文における送信元機器識別符号に設定されている01、送信元機器識別符号を無線通信装置5Cの機器識別符号である01および無線通信装置5Dの機器識別符号である02に設定した応答電文を返信する(S5)として説明したが、本実施の形態では、この際に、制御手段3は、電波状況問い合わせ電文受信後、乱数発生手段14を用いて乱数を発生させ、この発生させた乱数から得られた時間経過後に応答電文を返信する。
【0040】
以上のように、電波状況問い合わせ電文受信後に返信される応答電文は、乱数発生手段14が発生する乱数に基づき、ランダムな時間で返信されるため、応答電文同士が衝突する確率が低くなり、通信成功率が向上するため、より正確に他の無線通信装置の台数を取得することができる。
(中略)
【0045】
なお、本実施の形態では、乱数発生手段14において、平均採中法や合同法のアルゴリズムを用いて乱数を発生させるとして説明したが、乱数ではないが簡易的な方法として、無線通信装置の内部タイマーのタイマー値、無線通信装置の無線システム識別符号、無線通信装置の機器識別符号、無線通信装置の製造番号または無線通信装置の仮機器識別符号を用いて演算を行うことにより、応答電文を返信する時間や使用する周波数を選択する方法も考えられる。例えば、仮機器識別符号が16進で80からFFの範囲で設定されている場合、(下1桁×α)msとの演算式から応答電文を返信する時間を算出する(αは応答電文を送信するのに要する時間や処理時間を考慮して決める)方法や、あらかじめ使用する周波数がA~Fと決められている場合は、下1桁が0以上5以下の場合はA(16進)を加算してAからFに変換し、下1桁が6以上9以下の場合は4(16進)を加算しAからDに変換し、下1桁がA以上F以下の場合は0を加算することにより使用する周波数を決定する方法などが考えられる。」(8~9ページ)
ウ 「【0060】
なお、先の実施の形態において、無線通信装置5Aおよび無線通信装置5B間で使用する周波数を、周波数Aから周波数Bに変更するとして説明したが、変更した周波数Bでも前述と同様に電波状況問い合わせ電文を送信することにより、再度周波数を変更する方法も考えられる。
【0061】
なお、無線通信装置5Aおよび無線通信装置5B間で使用する周波数が、例えば、周波数A~Fまでであり、すべての周波数で閾値<応答電文数である場合は、周波数A~Fの中で応答電文が最も少ない周波数を選択し、無線通信装置5Aおよび無線通信装置5B間の通信に使用する方法も考えられる。あるいは、登録電文1を受信後、利用可能なすべての周波数、例えば、周波数A~Fを順次切り替えて電波状況問い合わせ電文を送信し、周波数A~Fの中で応答電文が最も少ない周波数を選択する方法も考えられる。」(11ページ)
エ 「【0068】
以上のように、本発明にかかる無線通信システムは、無線通信装置自体が無線通信に最適な周波数に自律的に変更することが可能となるので、家庭内のセキュリティセンサ群、家電機器群、流量計測装置群、健康機器群等の通信に加え、屋外でのテレメーター・テレコントロールなどの無線データ通信等の用途にも適用できる。」(12ページ)
上記各記載及び当業者における技術常識からみて、
a 上記(エ)の記載によれば、無線通信システムが「テレメータに適用される無線通信システム」を含むことは明らかである。また、テレメータの無線システムではマスターと呼ばれる無線通信装置が1以上のスレーブと呼ばれる無線通信装置から計測データを収集するシステムであることは技術常識である。そして上記(ア)の段落24の記載によれば無線通信システムは、マスターと呼ばれる無線通信装置とスレーブと呼ばれる無線通信装置から構成されており、段落26の記載によれば無線通信装置5Aはマスターとして動作し、無線通信装置5Bはスレーブとして動作することから、無線通信装置5Aは「テレメータに適用される無線通信システムにおいて計測データを送信する1以上のスレーブと呼ばれる無線通信装置から前記計測データを収集するためのマスターと呼ばれる無線通信装置」であることは明らかである。
b 上記(ア)の段落25の記載によれば、他の無線通信システムがマスターである無線通信装置5Cとスレーブである無線通信装置5Dで構成されている。そして段落28の記載によれば、無線通信装置5Aは、自システムで使用する周波数と同じ周波数を使用している他の無線通信装置の台数を確認するため、電波状況問い合わせ手段7を用いて、電波状況問い合わせ電文を同報で送信している。この電波状況問い合わせ電文は段落29の記載によれば少なくともスレーブである無線通信装置5Dで受信し、応答電文が返信される。
また、上記(ウ)の段落61の記載によれば、周波数A~Fの各周波数を用いて周波数を使用している他の無線通信装置の応答電文数により、他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得しているといえる。
したがって、無線通信装置5Aは「スレーブと呼ばれる無線通信装置に対し、他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得するための電波状況問い合わせ電文を、各周波数を用いて同報で送信する電波状況問い合わせ手段」を有しているといえる。
c 上記(ア)の段落29の記載によれば、同報で送信された電波状況問い合わせ電文は、少なくともスレーブである無線通信装置5Dで受信され、無線通信装置5Dから応答電文が返信され、段落30、34の記載によれば、無線通信装置5Aは応答電文を受信し、応答電文数により他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得していることは明らかである。
したがって、無線通信装置5Aは「電波状況問い合わせ電文を受信した各周波数を使用しているスレーブと呼ばれる無線通信装置からの応答電文を受信し、応答電文数に基づいて他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得する手段」を有しているといえる。
d 上記(ア)の段落22の記載によれば、無線通信装置5Aは、他の無線通信装置と無線で通信を行う無線通信手段1と、前記各手段を制御する制御手段3とを備えることから、無線通信装置5Aは「自装置の通信を制御する制御手段とを備える」といえる。
e 上記(イ)の段落39、40、45の記載によれば、応答電文は衝突する確率を避けるためランダムな時間や仮機器識別符号の演算式など応答時間をずらして返信されることが記載されていることから、「応答電文は衝突する確率を避けるため応答時間をずらした時間で返信される」といえる。
以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「テレメータに適用される無線通信システムにおいて計測データを送信する1以上のスレーブと呼ばれる無線通信装置から前記計測データを収集するためのマスターと呼ばれる無線通信装置であって、
当該スレーブと呼ばれる無線通信装置に対し、他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得するための電波状況問い合わせ電文を、各周波数を用いて同報で送信する電波状況問い合わせ手段と、
前記電波状況問い合わせ電文を受信した各周波数を使用している前記スレーブと呼ばれる無線通信装置からの応答電文を受信し、応答電文数に基づいて他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得する手段と、
自装置の通信を制御する制御手段とを備える、
ここで、応答電文は衝突する確率を避けるため応答時間をずらした時間で返信される、
マスターと呼ばれる無線通信装置。」
2.公知例1
当審拒絶理由に引用された特開2008-107956号公報(以下、「公知例1」という。)には、次の記載がある。
「【0017】
次に、図2及び図3を用いてガスメータ装置300の内部構造を説明する。ガスメータ装置300には計測装置301が備えられており、ガスや電気、水道等の使用量を計測する。そして、計測装置301で計測された使用量は制御手段302で所定のデータ形式に変換された後、表示部303に表示させて確認することができる。表示部303は図3に示すように前面に備えられているので、使用者は流量値をいつでも確認することができる。
(中略)
【0020】
また、制御手段302と通信手段304を用いれば、周囲に設置されているガスメータ装置が使用している無線通信用の周波数をモニターして、表示部300に表示することができる。さらに、制御手段302と通信手段304を用いれば基地局200から発せられる無線信号の電界強度から受信レベルを求めて、表示部300に表示することもできる。表示部300への表示形態としては、受信レベル数値をそのまま表示してもよいし、受信レベルに対応して設定されたレベル値を表示してもよい。」(3~4ページ)
上記の記載によれば、公知例1には、次の発明(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。
「周囲に設置されている装置が使用している無線通信用の周波数をモニターして、表示部に表示する装置。」
3.周知技術1
(1)当審拒絶理由に引用された特開2007-166488号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0010】
図1に本発明を実施するシステム構成図の一例を示す。コグニティブ無線システムは、コグニティブ基地局1001,データベース1002,コグニティブ端末A1003,コグニティブ端末B1004,コグニティブ端末C1005,無線チャネル監視装置A1006,無線チャネル監視装置B1007,無線監視装置C1008により構成されている。コグニティブ無線システムは、携帯電話システムが使用している無線チャネルや無線LANシステムが使用している無線チャネルやレーダが使用している無線帯域を共用して無線通信を行なうシステムである。かつ、コグニティブ無線システムは、無線チャネルを共用しつつ既存の無線システムに干渉を与えないようにする。例えば図1の携帯電話1010が通信を行なっていない場合は、コグニティブ端末A1003とコグニティブ端末B1004は携帯電話システムの無線チャネルを使って通信を行なう。同様に無線LAN1012,レーダ1011に干渉を与えないように、無線LAN1012が使用している無線チャネルやレーダ1011が使用している無線帯域をコグニティブ無線システムで使用する。
【0011】
次にコグニティブ端末が使用する空き無線チャネルの検出方法を説明する。無線チャネル監視装置は一定間隔で既存システムの周波数帯域をスキャンしRSSI(Received Signal Strength Indicator)を測定する。例えば、無線LANやレーダでは5GHz帯を携帯電話システムでは、800MHz,1.9GHz帯をスキャンする。スキャンした結果は、無線の制御チャネルを使ってコグニティブ基地局に通知する。具体的にはコグニティブ基地局が無線チャネル監視装置をポーリングすることにより、各無線チャネル監視装置のスキャン結果を収集する。スキャン結果や制御情報等データ量が少ない情報は、既存無線システムに干渉を与えないUWB(Ultra Wide Band)を用いる。図2に無線チャネル監視装置から既存システムの無線チャネルの利用状況をスキャンした結果を収集するために、コグニティブ基地局が無線チャネル監視装置にポーリングを行なうシーケンスを示す。コグニティブ基地局は、この様なポーリングのシーケンスを定期的に行なう。なお、無線チャネル監視装置とコグニティブ基地局間の情報はUWBを用いた制御無線チャネルで行なう他に、無線チャネル監視装置とコグニティブ基地局間を有線で接続し通信することも可能である。」(5~6ページ)
上記の記載によれば、制御チャネルを使用して、コグニティブ基地局がポーリングし各無線チャネル監視装置のスキャン結果を収集することが読み取れる。
(2)当審拒絶理由に引用された特開平1-276935号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「本発明は、例えばMCAシステムやAVMシステムのような移動通信システムで使用されるデータ伝送方式に関する。
(従来の技術)
従来、この種の移動通信システムは、基地局で各移動局の存在位置等の種々の状態を定期的に監視するときに、例えば制御チャネルを用いて第5図に示す基地局(BB)1から定期的にポーリング信号を送出し、各移動局(MB)2でこのポーリング信号を受信したときに予め自局に割当てられた送出期間に現在位置情報等の種々のデータを基地局1へ向けて送出し、これらのデータを基地局1でそれぞれ受信し記憶するようにしている。」(1ページ右下欄16行~第2ページ左上欄8行)
上記の記載によれば、制御チャネルを使用して、基地局がポーリング信号を送出し各移動局から種々のデータを収集することが読み取れる。
(3)当審拒絶理由に引用された特開2012-129788号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。
「【0049】
位置情報要求部108は、車載機100-2~100-6へ、車載機100-2~100-6の位置を示す位置情報を要求する。この要求には、当該要求を認識することができる要求信号(位置情報要求データ)を用いるものであっても良い。この場合、位置情報要求部108は、要求信号を無線送信部109-1,109-2およびアンテナ101-1,101-2を介して送信する。また、位置情報要求部108は、車載機100-2~100-6に対して位置情報要求データを、第1ホップではCH0を用いて、ブロードキャストで送信し、また、第2ホップではCH1を用いて、ブロードキャストで送信するものであっても良い。
(中略)
【0052】
以下に、図1に示した形態において、車載機100-1が車載機100-2~100-6が利用している通信チャネルを示す利用チャネル情報を取得する処理について説明する。
【0053】
車載機100-1の位置情報要求部108から位置情報を要求するための要求信号である位置情報要求データが送信されると、車載機100-2,100-5,100-6から車載機100-2,100-5,100-6の位置を示す位置情報が含まれる位置情報通知パケットが送信されてくる。この位置情報通知パケットには、車載機100-2,100-5,100-6がそれぞれ利用する通信チャネルを示す利用チャネル情報が含まれている。これにより、車載機100-1は、車載機100-2,100-5,100-6から利用チャネル情報を取得することができる。」(8ページ)
上記の記載によれば、CH0を使用して、車載機100-1が位置情報要求データを送信し、各車載機から利用チャネル情報を取得することが読み取れる。
したがって、上記周知例1~3の記載を総合すると、
「問い合わせを行う装置が所定のチャネルで問い合わせることで各無線装置の情報を収集し把握する。」ことは周知技術(以下、「周知技術1」という。)であると認められる。
4.周知技術2
(1)当審拒絶理由に引用された特開平4-326639号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに次の記載がある。
ア 「【0025】以上の様に構成された図1の信号変換装置の動作を図2を用いて説明する。図2において、5はデータ収集ユニット1から16台の信号変換器2に対して送信されるデータ要求信号で通信時間t1を要し、6は16台の信号変換器2からデータ収集ユニットに対して送信される応答信号で各々通信時間t2を要する。
(中略)
【0028】まず、データ収集ユニット1は16台すべての信号変換器2のデータを収集するために送信ライン3上にデータ要求信号(ENQ)5を送信する。16台の信号変換器2はデータ収集ユニットと並列に接続されているから、データ要求信号5は16台の信号変換すべてに受信される。ここに、信号変換器はデータ要求信号(ENQ)を受付けた場合には、出力信号送信待ち時間WT後にデータを送出するようMPU21で制御している。信号変換器2の出力信号送信待ち時間は、数4に示すように設定されているので、まず実装位置“0”に割付られた信号変換器2が、データ要求信号5を受信してからMPU処理時間t3後に応答信号61を送信する。
次に、実装位置“1”に割付られた信号変換器2が、データ要求信号5を受信し、MPU処理時間t3後、(t2+t4)の待ち時間制御を行いながら16台すべての信号変換器から応答信号が送信される。以上のような方式により、データ収集ユニットからの1回のデータ要求信号5により、16台すべての信号変換器のデータを収集することができる。
【0029】信号変換器16台のデータ収集に要する時間Tを数5に示す。
【0030】
【数5】
T=t1+t3+15(t2+t4)+t2 ・・・(数5)」(4ページ)
イ 図2は以下のとおりである。
(2)当審拒絶理由に引用された特開平4-42633号公報(以下、「周知例5」という。)には、図面とともに次の記載がある。
ア 「第2図に、このようなグローバルポーリング方式を採用した従来の回線制御システム動作シーケンスチャートを示す。
図において、上位局1は、通信回線2を介して複数の下位局、例えばこの例では、3台の下位局3A、3B、3Cに接続されている。上位局1は、各下位局から処理要求があるか否かを調べるために、適当な周期でポーリング信号の送出を行なう(第2図ステップ丸1(注:「○」の中に「1」の字を表す。以下、同様。))。各下位局3A、3B、3Cは、このポーリング信号を受取ると、処理要求がある場合、上位局1に対し応答を行なう。尚、この応答のタイミングは、例えば、下位局3Aについてはポーリング信号受信後t1時間後、下位局3Bについてはポーリング信号受信後t2時間後、下位局3Cについてはポーリング信号受信後t3時間後に応答するよう、予め設定されている。
このように、各下位局に対し固有の応答待ち時間tl、t2.t3が設定されているのは、通信回線2上で、各下位局3A、3B、3Cの応答が衝突しないようにするためである。
上位局1は、各下位局3A、3B、3Cからの応答が入力するのを待つ。
図の例では、ステップ丸2、丸3、丸4に示すように、何れの下位局からも応答が無い状態となっている。上位局1は、下位局3A、3B、3Cに設定された応答待ち時間tl、t2.t3のうちの、最大時間以上の時間Tだけ待機し、再びポーリング信号の出力を行なう(ステップ丸5)。」(1ページ右下欄14行~2ページ右上欄2行)
イ 第2図は以下のとおりである。
上記周知例4及び周知例5の記載によれば、
「問い合わせを行う際に、問い合わせを行った装置の応答の受信を待機する期間は応答の返信タイミングがとり得る期間の長さに応じて設定する。」ことは周知技術(以下、「周知技術2」という。)であると認められる。
第5 対比及び判断
本願発明と引用発明1とを対比する。
1.引用発明1の「テレメータに適用される無線通信システム」、「マスターと呼ばれる無線通信装置」、「スレーブと呼ばれる無線通信装置」は、本願発明の「無線テレメータシステム」、「通信親機」、「通信子機」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1は「無線テレメータシステムにおいて計測データを送信する1以上の通信子機から前記計測データを収集するための通信親機」の点で一致する。
2.引用発明1の「周波数」は本願発明の「無線チャネル」に相当する。そして、引用発明1の「電波状況問い合わせ電文」は他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得するための電文であるので、本願発明の「当該通信子機が他の通信親機との通信に使用している無線チャネルを問い合わせる無線チャネル確認電文」と引用発明1の「電波状況問い合わせ電文」は「他の通信機で使用している無線チャネルを調べるための電文」である点で一致し、本願発明の「当該通信子機が他の通信親機との通信に使用している無線チャネルを問い合わせる」「無線チャネル確認電文を」「同報通信により送信する電文送信部」と引用発明1の「電波状況問い合わせ電文を」「同報で送信する電波状況問い合わせ手段」は「他の通信機で使用している無線チャネルを調べるための電文を」「同報通信により送信する手段」である点で一致する。
したがって、本願発明と引用発明1は「通信子機に対し、他の通信機で使用している無線チャネルを調べるための電文を、同報通信により送信する手段」を有する点で一致する。
3.引用発明1の「電波状況問い合わせ電文を受信した各周波数を使用している前記スレーブと呼ばれる無線通信装置からの応答電文を受信し、応答電文数に基づいて他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得する手段」は、電波状況問い合わせ電文を受信したスレーブと呼ばれる無線通信装置からの応答電文に基づいて、他の無線通信装置で使用している周波数である無線チャネルの情報を取得していることから、本願発明と引用発明1は「無線チャネルを調べるための電文を受信した前記通信子機からの応答に基づいて、他の通信機で使用している無線チャネルの情報を取得するチャネル情報取得部」の点で一致する。
4.引用発明1の「自装置の通信を制御する制御手段」は本願発明の「自装置の通信処理を制御する制御部」に相当する。
以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「無線テレメータシステムにおいて計測データを送信する1以上の通信子機から前記計測データを収集するための通信親機であって、
前記通信子機に対し、他の通信機で使用している無線チャネルを調べるための電文を、同報通信により送信する手段と、
前記無線チャネルを調べるための電文を受信した前記通信子機からの応答に基づいて、他の通信機で使用している無線チャネルの情報を取得するチャネル情報取得部と、
自装置の通信処理を制御する制御部とを備える、通信親機。」
(相違点1)
一致点である「前記通信子機に対し、他の通信機で使用している無線チャネルを調べるための電文を、同報通信により送信する手段」と「前記無線チャネルを調べるための電文を受信した前記通信子機からの応答に基づいて、他の通信機で使用している無線チャネルの情報を取得するチャネル情報取得部」に関し、本願発明では「無線チャネル確認電文を、所定の第1の無線チャネルを用いて同報通信により送信」し、「第1の無線チャネルにより前記無線チャネル確認電文を受信した前記通信子機から、当該通信子機が他の通信親機との通信に使用している第2の無線チャネルの情報を取得する」のに対して、引用発明1では「電波状況問い合わせ電文を、各周波数を用いて同報で送信」し、「電波状況問い合わせ電文を受信した各周波数を使用しているスレーブと呼ばれる無線通信装置からの応答電文を受信し、応答電文数に基づいて他の無線通信装置で使用している周波数の情報を取得する」点。
(相違点2)
本願発明は更に「前記通信親機の通信状態に関する情報を表示する表示部」を備え、「前記表示部は、前記取得した第2の無線チャネルの情報に基づいて、前記通信親機が前記通信子機との通信に使用可能な無線チャネル、または前記通信子機によって他の通信親機との通信に使用されている無線チャネルの情報の少なくともいずれか一方を表示する」のに対し、引用発明1は当該特定事項を備えていない点。
(相違点3)
一致点である「チャネル情報取得部」に関し、本願発明では「前記チャネル情報取得部が」「受信を待機する期間は、前記通信子機が前記無線チャネル確認電文を受信してから」「返信するまでの返信タイミングがとり得る期間の長さに応じて設定され」るのに対し、引用発明1では応答電文は衝突する確率を避けるため応答時間をずらした時間で返信されるものの、応答電文の受信を待機する期間について特定されていない点。
(相違点1について)
上記周知技術1のとおり、「問い合わせを行う装置が所定のチャネルで問い合わせることで各無線装置の情報を収集し把握する。」ことは周知技術である。
したがって、引用例1のマスターと呼ばれる無線通信装置において各周波数の状況を把握するために、各周波数で応答電文数を調べることに代えて周知技術の情報収集の手法を採用することで、「無線チャネル確認電文を、所定の第1の無線チャネルを用いて同報通信により送信」し、「第1の無線チャネルにより前記無線チャネル確認電文を受信した前記通信子機から、当該通信子機が他の通信親機との通信に使用している第2の無線チャネルの情報を取得する」ように構成することは当業者が容易に想到しうる。
(相違点2について)
まず、装置に表示部を設けることは通常行われていることである。そして、上記公知技術のとおり、「周囲に設置されている装置が使用している無線通信用の周波数をモニターして、表示部に表示する装置。」は公知技術であり、また、自装置の状態を表示部に表示することも表示部を備える装置において常套手段である。
したがって、引用発明1のマスターと呼ばれる無線通信装置において、表示部を備える上で、公知技術及びに常套手段に基づいて、周囲に設置されている装置によって使用されている無線チャネルの情報や通信親機の通信状態に関する情報を表示部に表示するようにすることは当業者が適宜なし得ることである。
(相違点3について)
上記周知技術2のとおり、「問い合わせを行う際に、問い合わせを行った装置の応答の受信を待機する期間は応答の返信タイミングがとり得る期間の長さに応じて設定する。」ことは周知技術である。
引用発明1では、応答電文は応答時間をずらした時間で返信されることから、応答電文の受信を待機する時間はすべての応答電文を受信できるように最も遅い応答電文が受信できるまでの時間に設定すべきことは明らかである。したがって、周知技術に基づき、応答電文の返信タイミングがとり得る期間の長さに応じて応答電文の受信を待機する期間を設定することは当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、本願発明は、引用発明1、公知技術、周知技術1、周知技術2及び常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-010753