特許拒絶査定不服審判
2017-004947
オキシトシン/バソプレッシンV1aレセプターのアンタゴニストとしてのピロリジン誘導体
- 審判番号
- 2017-004947
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-535134外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月06日
- 審決日
- 2018年01月09日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オブセヴァ エス.エー.
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .121-WZ (C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-535134「オキシトシン/バソプレッシンV1aレセプターのアンタゴニストとしてのピロリジン誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月19日国際公開、WO2015/036160、平成28年9月23日国内公表、特表2016-529258〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2014年7月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年9月10日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月1日付けで拒絶査定がされ、平成29年4月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年5月25日付けで同年4月6日付けの手続補正が却下さるとともに拒絶理由が通知され、同年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
この出願の請求項1~6に係る発明は、平成29年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表され、純度が少なくとも85%から99.9%の範囲にある形式で提供される化合物を含む医薬組成物。」
第3 当審が通知した拒絶の理由
平成29年5月25日付けで当審が通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)は理由1~3からなり、そのうち理由2は、
「この出願の請求項1~23に係る発明は、その優先日前に頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特表2005-533828号」
というものである。
なお、上記理由2において、この出願の優先日当時の技術水準を示すためとして、以下の刊行物2~6が提示されている。
刊行物2:厚生労働省医薬食品局審査管理課長,後発医薬品の生物学的同 等性試験ガイドライン,平成24年2月29日,薬食審査発02 29第10号別紙1
刊行物3:厚生労働省医薬食品局審査管理課,後発医薬品の生物学的同等 性試験ガイドラインQ&A,平成24年2月29日,事務連絡 別紙1
刊行物4:社団法人日本化学会編,新実験化学講座1 基本操作I,19 85年6月10日,第6刷,341頁~351頁
刊行物5:社団法人日本化学会編、第5版 実験化学講座1 -基礎編I 実験・情報の基礎-,2003年9月25日,208頁~2 11頁
刊行物6:社団法人日本化学会編,第5版 実験化学講座4 -基礎編IV 有機・高分子・生化学-,2003年9月25日,95頁~ 108頁
そして、上記請求項1~23は、平成28年11月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲に記載された請求項1~23であるところ、その請求項1、2及び16の記載は以下のとおりである。
【請求項1】
式(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表される化合物。
【請求項2】
前記化合物が実質的に純粋な形態で提供され、
前記実質的に純粋な形態の純度が、少なくとも85%から99.9%の範囲にある、
請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1または2に記載の化合物と、医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有する医薬組成物。
したがって、本願発明は、上記請求項16について、上記請求項2を引用するものに限定するとともに「医薬的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を含有する」という発明特定事項を削除したものであるといえるから、当審拒絶理由の理由2の対象となった上記請求項16に対応するものであるといえる。
第4 当審の判断
当審は、当審拒絶理由の理由2のとおり、本願発明は、その優先日前に頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
1 刊行物
刊行物1:特表2005-533828号
刊行物2:厚生労働省医薬食品局審査管理課長,後発医薬品の生物学的同 等性試験ガイドライン,平成24年2月29日,薬食審査発02 29第10号別紙1
刊行物3:厚生労働省医薬食品局審査管理課,後発医薬品の生物学的同等 性試験ガイドラインQ&A,平成24年2月29日,事務連絡 別紙1
刊行物4:社団法人日本化学会編,新実験化学講座1 基本操作I,19 85年6月10日,第6刷,341頁~351頁
刊行物5:社団法人日本化学会編、第5版 実験化学講座1 -基礎編I 実験・情報の基礎-,2003年9月25日,208頁~2 11頁
刊行物6:社団法人日本化学会編,第5版 実験化学講座4 -基礎編IV 有機・高分子・生化学-,2003年9月25日,95頁~ 108頁
なお、刊行物2~6はこの出願の優先日当時の技術水準を示すためのものである。
2 刊行物の記載
ア 刊行物1の記載
刊行物1には、以下のとおりの記載がある。
(1a)
「【請求項1】
式Iのピロリジン誘導体、
その幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、それらの混合物としてのその光学活性体、およびそのラセミ体、ならびにそれらの塩であって、
式中、R1が、HおよびC1~C6-アルキルを含むかそれらからなる基から選択され;
R2が、水素、C1~C6-アルキル、C1~C6-アルキルアリール、ヘテロアリール、C1~C6-アルキルヘテロアリール、C2~C6-アルケニル、C2~C6-アルケニルアリール、C2~C6-アルケニルヘテロアリール、C2~C6-アルキニル、C2~C6-アルキニルアリール、C2~C6-アルキニルヘテロアリール、C3~C8-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、C1~C6-アルキルシクロアルキル、C1~C6-アルキルヘテロシクロアルキル、C1~C6-アルキルカルボキシ、アシル、C1~C6-アルキルアシル、C1~C6-アルキルアシルオキシ、C1~C6-アルキルアルコキシ、アルコキシカルボニル、C1~C6-アルキルアルコキシカルボニル、アミノカルボニル、C1~C6-アルキルアミノカルボニル、C1~C6-アルキルアシルアミノ、C1~C6-アルキルウレイド、アミノ、C1~C6-アルキルアミノ、スルホニルオキシ、C1~C6-アルキルスルホニルオキシ、スルホニル、C1~C6-アルキルスルホニル、スルフィニル、C1~C6-アルキルスルフィニル、C1~C6-アルキルスルファニル、C1~C6-アルキルスルホニルアミノを含むかまたはそれらからなる基から選択され;
R3が、アリールおよびヘテロアリールを含むかまたはそれらからなる基から選択され;
Xが、OまたはNR4からなる群より選択され、
R4が、H、C1~C6-アルキル、C1~C6-アルキルアリール、C1~C6-アルキルヘテロアリール、アリール、ヘテロアリールを含むかまたはそれらからなる基から選択されるか;または
R2とR4が、それらが結合しているN原子と共に5~8員の飽和または不飽和ヘテロシクロアルキル環を形成することも可能であり;そして
nが1~3の整数である、ピロリジン誘導体。」
(1b)
「【0001】
本発明は、特に医薬品として使用するための、新規なピロリジン誘導体、ならびにそのようなピロリジン誘導体を含む医薬製剤を目的とする。前記ピロリジン誘導体は、早期分娩(preterm labor)、早産(premature birth)、月経困難症を処置したりおよび/または予防したりするのに有用である。このピロリジン誘導体は、オキシトシン受容体に対する修飾活性、とりわけ拮抗活性を示すのが好ましい。前記化合物が、オキシトシンによってもたらされる、早期分娩、早産および月経困難症などの疾病状態を処置したりおよび/または予防したりするので有用であれば、より好ましい。」
(1c)
「【0002】
オキシトシン(OT)は、環状ノナ-ペプチドであって、その活性は、現在ではOT受容体(OT-R)に分類される特定のGタンパク質共役型受容体の活性化によって媒介される(1)。
【0003】
オキシトシン(OT)は、分娩の際に哺乳類の子宮に収縮を起こさせる。それに対応するオキシトシン受容体は、Gタンパク質共役型受容体のファミリーに属していて、V1およびV2バソプレシン受容体と類似している。OT受容体は妊娠の過程で劇的に増加する。OT受容体の濃度が、自発的子宮活動と相関があることが示された(2、3)。分娩の際には、OTによって誘発される子宮の収縮が頸部の拡張をもたらし、最終的には胎児が膣管を通って移動する。場合によっては、この収縮が、胎児に完全な生存能力が備わる前に起きてしまって、その結果として早期分娩となってしまう。早期分娩および早産は望ましいものではないが、その理由は、それらが周産期罹患率の主原因となっているからである。・・・」
(1d)
「【0009】
特定のスルホンアミドが、オキシトシン(ocytocin)受容体のところでオキシトシン(ocytocin)に拮抗すると報告されている。エルフ・サノフィ(Elf Sanofi)から出願された欧州特許出願公開第A0469984号明細書および欧州特許出願公開第A0526348号明細書には、N-スルホニルインドリンがバソプレシンの拮抗物質およびオキシトシン受容体として働くことが報告されている。
【0010】
アメリカン・サイアナミド(American Cyanamid)の米国特許第5,889,001号明細書には、ピラゾールベンゾジアゼピン誘導体が、バソプレシンおよびオキシトシン拮抗物質として特許請求されている。」
(1e)
「【0087】
本発明による化合物は、式Iのものである。
【0088】
式(I)におけるR1は・・・好ましくは・・・メチルである。
【0089】
式(I)におけるR2は、以下のものからなる群より選択される:水素・・・。
・・・・・・
【0091】
式(I)におけるXは、O・・・からなる群より選択され・・・。
・・・・・・
【0093】
式(I)におけるnは・・・より好ましくは1・・・である。
・・・・・・
【0095】
式Iで表される化合物のR3として・・・特に好ましいのは、ビフェニルまたは2-メチルビフェニル部分である。」
(1f)
「【0098】
式Iの化合物は、疾病を処置するために使用することができる。
【0099】
具体的には、式Iの化合物は、たとえば早期分娩、早産、月経困難症のような障害を処置するため、および帝王切開に至るまえに分娩を停止させるために使用するのに適している。・・・
・・・・・・
【0102】
医薬品として使用する場合、本発明のピロリジン誘導体は典型的には、医薬組成物の形態で投与される。したがって、式Iの化合物と製薬上許容できるキャリア、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物もまた、本発明の範囲に含まれる。・・・
【0103】
本発明の化合物は、慣用されるアジュバント、キャリア、希釈剤または賦形剤と共に、医薬組成物およびその単位剤形として製剤することが可能であり・・・
・・・・・・
【0105】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸経由、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、鼻孔内など、各種の経路により投与できる。・・・」
(1g)
「【0112】
本発明の化合物の合成:
式Iの化合物のための合成経路の例を以下に記載する。
【0113】
以下の略号はそれぞれ、下記の定義を示すものとする。
・・・
TBDMS:t-ブチルジメチルシリル
・・・
・・・・・・
【0116】
オキシム部分の導入
一般式IIの化合物(ここでR1、R3およびnは先に定義したもの)は、一般式IVの化合物(ここでR3およびnは、先に定義したものであり、そしてここでPG1は適当なアルコール保護基、好ましくはTBDMSである)から調製することができる。一般式IVのケトンを、一般式V(ここでR1は先に定義したものである)のヒドロキシルアミン誘導体と反応させる。PG1は、スキーム2に示したような、標準的な合成手法を使用した脱保護工程で除去する。
・・・・・・
【0142】
上記の反応スキームで述べてきた一連の反応では通常、ピロリジン環の環外の二重結合の上の置換基に関して、(E)-および(Z)-異性体の混合物が得られる。(E)/(Z)-異性体は、当業者周知の標準的なクロマトグラフィー手法によって分離することが可能であるが、それにはたとえば、逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)またはシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(FC)などを使用する。別な方法として、適当な溶媒または溶媒混合物を使用した選択的結晶化により、(E)/(Z)-異性体のいずれか一方を連続的に濃縮することも可能である。・・・一方の異性体(通常は(Z)-異性体)の総合収率を上げるためには、他方の異性体(通常は(E)-異性体)をリサイクルさせた微量の酸たとえばHClを含む有機溶媒中で慎重に再異性化を行わせ、それに続けて、クロマトグラフィーおよび/または結晶化によって(E)/(Z)-分離を繰り返す。
【0143】
さらに一般的なプロセスでは(スキーム18)、式Iの化合物を、以下の実施例において説明するような適当な相互変換方法を用いて、別の式Iの化合物に変換することができる。
」
(1h)
「【0147】
実施例I:(3EZ,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(1)(式IIまたは式Iaで、R2がHである化合物)
【0148】
中間体(1a):1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-オキソ-L-プロリン
【0149】
ケトピロリジンの生成:
市販の(2S,4R)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシ-2-ピロリジンカルボン酸(30g、0.13mol)をアセトン(1500mL)中に溶解させた。フラスコの中に機械的撹拌器を入れて、その溶液を激しく撹拌した。三酸化クロム(66.7g、0.667mol)を水(40mL)に溶解させ、濃硫酸(53.3mL)を添加し、それに充分な水を加えて溶液の容積を115mLとすることにより、フレッシュな8Nクロム酸溶液を調製した。次いでこの8Nクロム酸溶液(115mL)を、激しく撹拌を続けながら、30分かけて滴下により加えたが、反応による発熱を、氷浴を用いることにより最適温度の25℃に維持した。クロム酸の添加が完了した後、温度を最適の25℃に維持しながら、その反応混合物をさらに15分間撹拌した。次いでその反応混合物にメタノール(20mL)を添加することにより反応を停止させた。浴を用いて発熱を調節したが、必要があれば、反応混合物そのものの中に少量の氷片を直接入れた。この反応混合物をセライトのパッドを通して濾過し、次いで真空中で濃縮した。次いでこうして得られた酸性溶液を、酢酸エチル(3×300mL)を用いて抽出し、その有機層を合わせて塩水(2×100mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、真空中で濃縮した。この粗生成物を酢酸エチルから再結晶させると、白色結晶の生成物、(2S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-オキソ-2-ピロリジンカルボン酸(1a)が得られた(22.55g、76%)。・・・
【0150】
中間体1b:(4EZ)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(メトキシイミノ)-L-プロリン
【0151】
オキシム部分の導入:
トリエチルアミン(5.5g、55mmol)を含むクロロホルム(100mL)中に(2S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-オキソ-2-ピロリジン-カルボン酸(中間体1a、5.0g、21mmol)およびO-メチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.7g、32.8mmol)を溶解させた溶液を調製した。次いでこの反応混合物を室温で一夜撹拌してから、溶媒を除去した。得られた粗製反応混合物を酢酸エチル(150mL)に溶解させてから、1NのHCl(40mL)を用いて手早く洗浄した。次いでその酸相を、酢酸エチル(3×20mL)を用いて洗浄し、有機層を合わせて塩水で洗浄してから、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で溶媒を除去した。目的の生成物(1b)(5.3g、94%)が、淡黄色の油状物として単離された。・・・
【0152】
中間体1c:1-tert-ブチル-2-メチル(2S,4EZ)-4-(メトキシイミノ)ピロリジン-1,2-ジカルボキシラート
【0153】
メタノールとトルエンの1:1混合物(35mL)に、オキシムエーテルの(2S,4EZ)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(メトキシイミノ)-2-ピロリジンカルボン酸(中間体1b、0.648g、2.5mmol)を溶解させて溶液を調製した。次いで室温、窒素雰囲気下で、溶液を撹拌しながらトリメチルシリルジアゾメタン(2Mヘキサン溶液3.8mL、7.5mmol)を滴下により添加した。窒素ガスの発生を完了させてから、得られた黄色の溶液を真空中で蒸発させ、その残渣をシリカゲルのパッドを通して濾過し、酢酸エチルで溶出させた。濾液から溶媒を除去すると、メチルエステル(1c)生成物が黄色の油状物として得られた(0.646g、収率95%)。
【0154】
中間体1d:メチル(2S,4EZ)-4-(メトキシイミノ)-1-[(2’-メチル[1,1’-ビフェニル]-4-イル)カルボニル]-2-ピロリジンカルボキシラート
【0155】
R3部分のカップリング:
無水DCM(28mL)中に1-tert-ブチル-2-メチル(2S,4EZ)-4-(メトキシイミノ)-1,2-ピロリジン-ジカルボキシラート(中間体1c、0.892g、3.28mmol)を溶解させた溶液を調製した。TFA(20%、7mL)を滴下により添加した。その混合物をrtで20分間撹拌した。溶媒を蒸発させると、目的の生成物が黄色の油状物として単離された(0.564g、定量的)。そのものを直接DCMとDMFの7:3混合物(30mL)に溶解させ、2’-メチル[1,1’-ビフェニル]-4-カルボン酸(0.765g、3.60mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(0.880g、7.21mmol)で処理した。0℃でEDC(0.691mg、3.60mmol)を徐々に添加し、その反応混合物をrtで一夜撹拌しておいた。水(20mLで2回)で洗浄してから、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させた。
【0156】
中間体1e:(2S,4EZ)-4-(メトキシイミノ)-1-[(2’-メチル[1,1’-ビフェニル]-4-イル)カルボニル]-2-ピロリジンカルボン酸
【0157】
R2部分の導入:
メチル(2S,4EZ)-4-(メトキシイミノ)-1-[(2’-メチル[1,1’-ビフェニル]-4-イル)カルボニル]-2-ピロリジンカルボキシラート(中間体1d、391mg、1.06mmol)を、ジオキサン(9mL)、水(3mL)およびNaOH(1.6N溶液、1.13mL)を含む溶液の中で、rtで4時間撹拌した。ジオキサンを真空中で除去し、その溶液を溶液を0.1NのHClで処理して酸性にした。それをEtOAcを用いて抽出し、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると目的の生成物(1e)が得られた(342mg、収率=91%)。・・・
【0158】
実施例I:
(2S,4EZ)-4-(メトキシイミノ)-1-[(2’-メチル[1,1’-ビフェニル]-4-イル)カルボニル]-2-ピロリジンカルボン酸(中間体1e、50mg、0.14mmol)をTHF(1mL)に溶解させ、-15℃でクロロギ酸エチル(163μL、0.17mmol)およびTEA(29μL、0.76mmol)で処理した。その温度で、窒素雰囲気下で30分間その反応混合物を撹拌してから、水素化ホウ素ナトリウム(0.65mLの水中13.4mg、0.35mmol)を添加した。次いで、それを室温になるまで静置した。3時間後に、1NのHCl溶液2.5mLを用いてその反応を停止させ、EtOAcを用いて3回抽出した。有機層を合わせて0.1NのHCl溶液(3回)と水(3回)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮すると化合物(1)が得られた。
収率:12%(6mg)
外観:黄色油状物
MS(APCI+):339(M+1)
HPLC純度:90.1%。」
(1i)
「【0159】
実施例II:(3EZ,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(2)、(3Z,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(3)、(3E,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(4)(式II、または式Iaで、R2がHの化合物):・・・
・・・・・・
【0169】
最終化合物:(3EZ,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(2)、(3Z,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5(ヒドロキシ-メチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(3)、(3E,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(4)(式IIの化合物、または式Iaで、R2がHの化合物):
【0170】
TBAFの溶液(1MのTHF溶液14.1mL、14.1mmol)を、オキシム(2e)(4.13g、9.41mmol)のTHF(100mL)溶液に添加した。その反応混合物を、室温で一夜撹拌しておいた。次いでそれを濃縮してから、酢酸エチルを用いて希釈した。有機相を水、1NのHCl溶液および塩水で洗浄してから、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。
収率:EZ混合物(2)の定量
外観:白色発泡体
LC/MS:ESI(+):325(M+1)。
【0171】
2つの異性体のEとZを、酢酸エチル/シクロヘキサン(80:20)を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィーにより分離した。
【0172】
極性の低いフラクション:(3E,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(3)
Rf:0.36(AcOEt/シクロヘキサン(80:20))
収率:25%(765mg)
外観:白色発泡体
1H NMR(DMSO):2.64(brs、2H)、3.20~3.7(m、3H)、3.80(s、3H)、3.8~4.6(m、2H)、5.00(t、J=8.0Hz、1H)、7.37~7.60(m、9H)
IR(フィルム):3292、1604、1417、1040
MS(APCI、+):325(M+1)
元素分析値:(C19H20N2O3、0.2H2O):
理論値:C:69.58;H:6.27;N:8.54
実測値:C:69.53;H:6.32;N:8.36
HPLC純度:98.6%。
【0173】
極性の高いフラクション:(3Z,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム(4)
Rf:0.22(AcOEt/シクロヘキサン(80:20))
収率:33%(1013mg)
外観:白色粉体
融点:189℃
1H NMR(DMSO):2.64~2.82(m、2H)、3.20~3.57(m、3H)、3.70~3.80(m、3H)、3.98~4.60(m、2H)、5.0(t、J=8.0Hz、1H)、7.37~7.76(m、9H)。
IR(フィルム):3373、1606、1417、1045
MS(APCI、+):649(2M+1)、325(M+1)
元素分析値:(C19H20N2O3):
理論値:C:70.35;H:6.21;N:8.64
実測値:C:70.22;H:6.27;N:8.56
HPLC純度:99.9%
注:E/Z混合物のフラクション(470mg)も同様に単離された。」
(1j)
「【0228】
実施例XVI:生物学的アッセイ
式Iで表される化合物を、以下のアッセイにかけることができる。
a)シンチレーション近接アッセイを用いた、hOT受容体上でのin vitro競合的結合アッセイ(11)
このアッセイは、ヒトオキシトシン(hOT)受容体に対する試験化合物の親和性を求めることを可能とするものである。・・・
【0229】
125I-OVTAのOT-受容体への結合を阻害する、式(I)のピロリジン誘導体の能力を、上述のin vitro生物学的アッセイを用いて評価した。いくつかの実施例化合物についての代表的な数値を表Iに示すが、ここでは先の実施例で得られた試験化合物の結合親和性を阻害定数(Ki;nM)で表している。これらの数値から、式Iで表される前記試験化合物が、オキシトシン受容体に対して顕著な結合性を示していると言うことができる。
【0230】
【表1】
」
(1k)
「【0231】
b)機能アッセイNo.1:FLIPR(登録商標)(蛍光定量イメージングプレートリーダー)による、オキシトシン媒介Ca2+動員の阻害
OT-受容体に対するOTの作用は、細胞内での複雑な事象のカスケードを引き起こし、そのために、細胞質内のCa2+濃度の上昇をもたらす。そのようなCa2+濃度の上昇は、筋小胞体(カルシウムの貯蔵)から細胞質内へのカルシウムの放出と、Ca2+チャネルを通っての細胞外間隙からのカルシウム流入との両方が原因となっている。この細胞質内へのCa2+動員が、子宮筋細胞の収縮機構を引き起こし、そのため子宮収縮が起きる(1および3)。
【0232】
このアッセイにより、式(I)の試験化合物によるOT/OT-Rに媒介されるカルシウム動員の阻害を測定することが可能となる。
・・・・・・
【0239】
式Iで表されるピロリジン誘導体の活性を、上述のin vitro生物学的アッセイを使用して評価した。いくつかの実施例化合物における代表的な数値を表IIに示す。この数値は、OT/OTR細胞内Ca2+動員に50%まで拮抗するのに必要な、式Iで表される試験化合物の濃度を示している。これらの数値から、式Iで表される前記実施例化合物がオキシトシン受容体拮抗物質として顕著な活性を示すと、言うことができる。
【0240】
【表2】
」
(1L)
「【0248】
d)子宮収縮阻害のin vivoモデル
このアッセイでは、早期分娩、早産のin vivoモデルにおける、試験化合物の生物学的効果を評価するものである。
【0249】
非妊娠のチャールス・リバー(Charles River)CD(SD)BRメスラット(9~10週齢、200~250g)を、実験の18時間および24時間前に250μg/kgの腹腔内ジエチルスチルベストロール(DES)を用いて処置した。・・・
・・・・・・
【0253】
安定期間の後で、この実験を通して、同量のオキシトシンを、30分間隔で静脈内に繰り返し注入した。同量のOT刺激(選択されたオキシトシン投与量)に対して再現性のある子宮の収縮応答が得られるようになったら、所定の投与量の試験物質または参照物質(ビヒクル)を投与した。処置後適当な時間まで、オキシトシンの同量の注入サイクル(30分間隔のOT注入)をさらに継続して、阻害効果とそれらの効果の可逆性を評価した。
・・・・・・
【0255】
式Iで表されるピロリジン誘導体の活性は、上述のin vivo生物学的アッセイを用いて評価することができる。1つの実施例化合物の代表的な数値を表IIIに示す。これらの数値が示しているのは、静脈内または経口の経路のいずれかにより投与して、化合物の投与後40分間経過した後でのラットにおけるオキシトシンで誘発される子宮収縮に、式Iで表される実施例化合物が効果的に拮抗する能力である。表IIIに示された数値から、式Iで表される前記実施例試験化合物が子宮収縮抑制剤、すなわち、子宮弛緩剤として顕著な活性を示していると言える。
【0256】
【表3】
」
イ 刊行物2の記載
刊行物2には、以下のとおりの記載がある。
(2a)
「第3章 試験
A.経口即放性製剤及び腸溶性製剤
・・・
II.生物学的同等性試験
1.試験法
・・・
5)測定
・・・
c.測定成分:原則として,有効成分の未変化体を測定する.合理的な理由がある場合,主活性代謝物を測定成分とすることができる.立体異性体の混合物から成る医薬品では,主薬理作用への寄与が大きい異性体を測定成分とする.ただし,文献等で立体特異的な薬物動態を示すことが報告されてないならば,異性体を分離測定する必要はない.」(4頁20行~7頁24行)
ウ 刊行物3の記載
刊行物3には、以下のとおりの記載がある。
(3a)
「Q-26 「立体異性体の混合物から成る医薬品では,主薬理作用への寄与が大きい異性体を測定成分とする」とあるが,理由は何か.
(A) 医薬品の開発,承認においては,異性体同士は基本的に別の化合物と考えられている.したがって,原則として異性体は分離測定し,主薬理作用への寄与が大きい異性体を測定成分とする.特に,初回通過効果,クリアランス等の薬物動態が著しく異なるため,生物学的同等性の判定結果に異性体間で大きな差が生じる可能性のある医薬品では,分離測定は必須である.しかしながら,薬物動態に差があることが文献等で報告されていないならば,異性体間で生物学的同等性の結果に差が生じる可能性は少なく,異性体を合わせたものを未変化体として測定してもよい.」(10頁11行~19行)
エ 刊行物4の記載
刊行物4には、以下のとおりの記載がある。
(4a)
「a.吸着,分配カラムクロマトグラフィー
・・・
(i)吸着クロマトグラフィー カラムクロマトグラフィーの中で現在,最も使用頻度の高いもので,垂直に立てたガラス管の内に表面積が大きく吸着能力のある固体粉末を充てんし、上部より溶質を含んだ溶媒を流下させる.・・・物質の吸着性の違いにより異なった移動速度をもちながら下方へ移動する.吸着性の違いは溶質分子の官能基に依存することはもちろんとして,立体配置,あるいは空間配列の差異も大きな要因を占めている.したがって,吸着クロマトグラフィーでは立体構造にわずかな差しかもたないような類似分子の分離に有用である.そして、吸着剤の活性度と溶媒の溶出力の強さを選択することにより,効率よく分離することができる.
1)吸着剤:吸着能力のある表面積の大きな粉末固体が吸着剤として用いられる.その中でアルミナとリシカゲルが最もよく用いられ,市販されている“カラムクロマト用”吸着剤の種類も多く,いろいろな目的に適した製品を手軽に入手できるので便利である(表4・23)」(341頁2行~342頁13行)
(4b)
「2)展開溶媒:・・・試料の吸着性については試料に含まれる官能基により-Cl<-H<-OCH3<-NO2<-N(CH3)2<-COOCH3<-OCOCH3<-C=O<-NH2<-NHCOCH3<-OH<-CONH2<-COOHの順序で吸着性が強くなる.また,分子量が大きくなると吸着性は減少し,官能基の数が増加すると,官能基の中で一番吸着性の強い基よりさらに吸着性が増大する.溶媒の溶出力は誘電率の大きい溶媒ほど強く,Trappe2),Strain3)によれば,石油エーテル(低沸点<高沸点)<シクロヘキサン<四塩化炭素<ベンゼン<クロロホルム<エーテル<酢酸エチル<アセトン<エタノール<メタノール<水<ピリジン<酢酸の順位が与えられている.・・・
展開溶媒に最初から溶出力の強い溶媒系を用いると分離不完全のまま溶出してしまうので,溶媒系の選択には十分な注意を要する.・・・途中で溶媒(系)を変えて展開を行うときには,あらかじめTLCを用いて混合物間の分離が最高となるような溶媒(系)を調べておき,成分のRf値に応じて溶媒(系)の極性を少しずつ高めていく.一つの溶媒(系)で成分が完全に溶出し終わってもすぐに溶媒(系)の極性を大きくすることはせず,しばらくその溶媒(系)を流し続ける.次の成分がなかなか溶出してこないようであれば,この時点で少しずつ極性を大きくするようにする.いったん極性を大きくしてしまうと再びもとに戻すことはできない.」(345頁1行~28行)
(4c)
「3)カラムの調製:・・・一般に吸着剤は試料の50倍ぐらいを用いるが,Rf値の接近した混合物を分離する場合には100~1000倍,逆に極端に離れたRf値を示す場合は,15倍ほどでも分離ができる場合がある.・・・カラムは長いほど分離能力が上がるが,極端に流出速度がおそくなるため,一般にカラム直径の10~15倍の長さをもつカラムを使用するとよい(表4・26参照)」(346頁1行~18行)
(4d)
「乾式充てん法:TLCはカラムクロマトグラフィーより分離能がよいが,多量の分離には向いていない.そこでTLCの原理を用いて多量の試料をカラムクロマトグラフィーで分離する方法が考案され(ドライカラムクロマトグラフィーとよばれる),好結果が得られている1).・・・吸着剤の量は試料の100~1000倍を要し,この場合もカラムの太さの10~15倍の高さをもつカラムをつくるようにする.・・・」(347頁6行~19行)
(4e)
「展開溶媒の変化:カラムクロマトグラフィーはTLCと異なり展開途中で展開溶媒を変えたり,濃度勾配をもたせることができる.・・・前述したように,展開溶媒の極性を急激に変化させることは危険であるので徐々に溶媒比を変えていくのが好ましい.段階的に比率の違う溶媒を加えることもよいが,簡単な装置で連続的に変える方法もある(図4・36).」(348頁26行~349頁16行)
オ 刊行物5の記載
刊行物5には、以下のとおりの記載がある。
(5a)
「2.11.3 吸着クロマトグラフィー
・・・
a.吸着剤
現在よく使われている無機系吸着剤としては,シリカゲルとアルミナが代表的である.・・・
シリカゲルが示す吸着力は,シラノール基(≡Si-OH)の水素結合および陽イオン交換(Hが解離する),あるいはシロキサン結合(Si-O-Si)の水素結合に起因すると考えられている.・・・」(208頁5行~19行)
(5b)
「b.溶離液
・・・表2.15におもな溶媒を溶媒強度パラメーター(ε°)順に示す.ε°の値が大きい溶媒ほど溶出力が大きい.
吸着クロマトグラフィーでは,カラムから出てくる溶質のピークの形が前端が鋭いが,後端は尾を引く(これをテーリングという.)のが一般的である.このテーリングは分離効率や試料の回収率を低下させる.これに対する方策の一つがこう配溶離法(gradient elution)である.すなわち,ある溶媒に,それよりも溶出力の強い溶媒を一定の速度で添加混合してカラムに流し,溶離する方法である.溶出力を段階的に高める段階溶離法(stepwise elution)とともに多用される.溶媒の溶出力を時間の関数として変える操作は,市販のコンピュータ内蔵のLCポンプを用いてプログラムすることができる.
」(208頁20行~209頁3行)
カ 刊行物6の記載
刊行物6には、以下のとおりの記載がある。
(6a)
「2.4 薄層クロマトグラフィー(TLC)1~8)
カラムクロマトグラフィーに用いられる充填剤(吸着剤)をガラス板,プラスチックシート,アルミシートなどに塗布したプレートを用いる薄層クロマトグラフィーは,有機化合物の分析,分離にもっとも頻繁に利用されている手法のひとつである.・・・
・・・
a.薄層プレートの選択
薄層プレートに用いられるおもな吸着剤(担体)とそれらの特徴を表2.2に示した.
(i)シリカゲル シリカゲルは分子量100~1000程度の炭化水素から水溶性化合物にいたる広範囲の試料に適用できる.シリカゲルの表面にはシラノール基(≡Si-OH)が存在し(図2.9),このシラノール基が試料物質と水素結合を形成し,その結合力の差により分離が達成される.したがって,塩基性物質の分離にはあまり適さない.
」(95頁15行~96頁20行)
(6b)
「e.フラッシュクロマトグラフィー6)
粒子径20~60μm程度の充填剤を用い,圧縮空気などで加圧しながら溶媒を展開させるクロマトグラフである.・・・充填剤の詰め方,展開の仕方,溶出物の検出は,加圧すること以外通常の開放型の場合と同じである.
・・・
(i)充填と展開 用いるシリカゲル量は,試料中の成分の分離の程度とその量により決まる.一応の目安として,TLC上でRfの差が0.2以上ある2成分の分離において,10mmφ×20cmのカラムを用いて100mg以上の試料の分離処理ができる.・・・Rf値の差が大きい成分の分離にはさらに短いカラムで対応できる.
(ii)展開溶媒 TLC上でRf=0.3で成分が分離する溶媒系を選択する.実際のクロマトグラフでは,TLCに用いた極性より低目にすると良好な分離が達成できる.例えば三つ以上の成分がある場合,2%の酢酸エチル-ヘキサンでTLCの条件が決まれば,酢酸エチルの比率を0.5%から順次上げていく段階的なグラジエント法が有効である.また,溶媒の流速は分離に大きく影響するので,20~60μmの粒径シリカゲルを用いた場合,5cm min-1の溶媒展開の線速度が最適である.・・・」(107頁9行~108頁10行)
3 刊行物に記載された発明
刊行物1には、式Iの化合物に属する化合物である化合物1として、「(3EZ,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」が、その合成方法とともに記載されている(摘記(1e)、(1h)、(1k))。
したがって、刊行物1には、化合物1として、
「(3EZ,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」
の発明(以下「引用発明」といい、引用発明に係る化合物を「引用化合物」という。)が記載されているといえる。
4 本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明の「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表され、純度が少なくとも85%から99.9%の範囲にある形式で提供される化合物を含む」の意義について
本願発明の「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表され、純度が少なくとも85%から99.9%の範囲にある形式で提供される化合物を含む」という事項について、発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載がある。
「【0020】
本発明の化合物は、例えば、国際公開2004/005249と国際公開2005/082848において開示されているような方法で生成される。しかしながら、上記化合物は、(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムと、(3E,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムとを含む、(3Z/E,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムの異性体混合物において合成されて得られるものである。
【0021】
したがって、本発明は、少なくとも85%から100%の、式(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物、好ましくは85%から99.9%、より好ましくは90%から99.9%、および更により好ましくは95%から99.9%の上記記化合物を有する、式(3Z/E,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物に関する。
・・・・・・
【0036】
通常、式(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物は、子宮収縮を抑制する。有利には、上記化合物は、投与してから2~30分の時間経過のうちに、好ましくは5~20分のうちに、子宮収縮を速やかに抑制する。
【0037】
驚くべきことに、その抑制的な活性が、式(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム、および/またはその代謝物の、実質的に純粋なZ形態に特有のものであることを本出願人らは明らかにした。実施例において示すように、式(3E,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムの実質的に純粋なE形態は、子宮収縮を抑制しないのでなんら有効性を示さない。」
したがって、本願発明の「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表され、純度が少なくとも85%から99.9%の範囲にある形式で提供される化合物を含む」という事項は、(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムの純度が少なくとも85%から99.9%の範囲にある化合物を含む、という意味であると認められる。
(2)対比
引用化合物である「(3EZ,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」は、その名称から、「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」と「(3E,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」との混合物であるといえる。
そして、引用化合物に含まれる「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2’-メチル-1,1’-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」は、本願発明における「(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシム」(以下「本件Z体」といい、その異性体である(3E,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムを以下「本件E体」という。)に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「本件Z体を含むもの」
という点で一致し、
(相違点1)本件Z体の「純度」が、前者は85%から99.9%の範囲にあるのに対し、後者は明らかではない点
(相違点2)本件Z体を含む「もの」が、前者は医薬組成物であるのに対し、後者は本件Z体と本件E体との混合物である点
で相違する。
5 相違点について
(1)相違点1について
ア 異性体分離の動機付けについて
引用化合物が本件Z体と本件E体との混合物であることは、刊行物1における引用化合物の名称(摘記(1h))から当業者に明らかである。
また、刊行物1には、引用化合物がin vitroにおいてオキシトシン受容体拮抗物質としてオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害することが示されている(摘記(1k))し、引用化合物が式Iの化合物に属する化合物であること(摘記(1a)、(1e)、(1h))、及びこの式Iで表される化合物をオキシトシンによってもたらされる早期分娩などの処置に用いるために医薬組成物として製剤化することも示されている(摘記(1b)、(1f))。
そして、医薬品の開発、承認においては、既に上市されている医薬品と同等の医薬品の後発的な生物学的同等性試験においてすら原則として異性体は分離測定するべきであるとされるように、異性体同士は基本的に別の化合物と認識することが技術常識であったといえる(摘記(2a)、(3a))。
したがって、当業者であれば、引用化合物に含まれる本件Z体と本件E体とを別の化合物であると認識するといえる。
他方、刊行物1には、引用化合物及び引用化合物と同様に式Iの化合物に属するEZ混合物であり、引用化合物とビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ相違する化合物である化合物2が、in vitroにおいてオキシトシン受容体拮抗物質としてオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害することが記載されている(摘記(1k))。
また、刊行物1には、細胞質内へのオキシトシン媒介カルシウム動員が子宮収縮を引き起こすこと(摘記(1k))、及び化合物2及び/又はそのZ体単独である(3Z,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムが静脈内投与及び経口投与によりin vivoにおいて子宮収縮抑制剤として顕著な活性を示すことが示唆されている(摘記(1k)、(1L))。
したがって、当業者であれば、刊行物1において、化合物2が有するカルシウム動員阻害性が子宮収縮を抑制することを理解し、同じくカルシウム動員阻害性を有する引用化合物が静脈内投与及び経口投与によりin vivoにおいて子宮収縮抑制剤として活性を示すことを当然予想するといえる。
さらに、刊行物1には、引用化合物及び化合物2が属する式Iの化合物について、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーなどによりE体とZ体を分離してもよいこと及び通常はZ体の総合収率を上げるべきことが示されているし(摘記(1g))、実際に、化合物2から「酢酸エチル/シクロヘキサン(80:20)を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィー」により、E体(又は化合物3)を98.6%、Z体(又は化合物4)を99.9%の純度で回収したこと(摘記(1i))及び化合物2よりもそのZ体単独である化合物4の方がin vitroにおけるオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員の阻害性が高いことも示されている(摘記(1k))。
以上から、当業者であれば、別々の化合物の混合物であると認識する引用化合物において、本件E体と本件Z体とを分離し本件Z体を単独で得ることによりin vitroにおけるオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員の阻害性の向上及びこれによるin vivoにおける子宮収縮抑制効果の向上を予期するといえる。
したがって、引用化合物から本件Z体を単独で得ることについての動機付けが認められる。
なお、刊行物1に記載された化合物3及び4の構造式(摘記(1i))がピロリジン環の環外の二重結合上の置換基の結合角度の点で必ずしも正しいものであるとはいえないこと、刊行物1の段落0169では化合物3がZ体であるとされているのに対し段落0173では化合物4がZ体であるとされている点で化合物とその名称との間に齟齬があること(摘記(1i))及び刊行物1に記載されたin vivoにおける試験の結果を示す表II(摘記(1L))において化合物番号とIUPAC名称が一致しないことは当業者に明らかであるが、これらは上記予期の確実性を低めるものではあっても上記予期を失わせるものではないから、上記動機付けが認められるとの上記判断を左右するものではない。
(イ)異性体分離の方法について
a 異性体分離の方法としてカラムクロマトグラフィーに想到するか
刊行物1には、引用化合物と同様に式Iの化合物に属するEZ混合物であり、引用化合物とビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ相違する化合物である化合物2から、「酢酸エチル/シクロヘキサン(80:20)を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィー」により、E体(又は化合物3)を98.6%、Z体(又は化合物4)を99.9%の純度で回収したことが示されている(摘記(1i))。
ここで、このフラッシュクロマトグラフィーが吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーであることは、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーの使用を示す刊行物1の記載(摘記(1g))、フラッシュクロマトグラフィーはカラムクロマトグラフィーの一種であるという技術常識(摘記(6b))及び水やアルコールを含有しない展開剤においてシリカゲルは吸着剤として作用するという技術常識(摘記(6a))から当業者に明らかである。
そして、吸着剤を使用したカラムクロマトグラフィーについて、試料の分離は試料の吸着剤に対する吸着性の相違に起因すること(摘記(4a))、試料の吸着剤に対する吸着性の相違は試料の官能基や立体配置の相違が大きな要因を占めること(摘記(4a))、シリカゲルの吸着性はシリカゲルのシラノール基と試料との水素結合などに起因し、試料において-H基より強い吸着性を有する官能基としては-OH基や-N(CH2)2基、-OCH3基などがあること(摘記(5a)、(6a)、(4b))が技術常識であったといえる。
そうすると、当業者であれば、刊行物1における化合物2の分離は、-OH基や三級アミン、-OCH3基が存在しE体とZ体とで立体配置が相違するピロリジン環周辺の吸着性の相違に起因すると認識するといえる。
また、吸着クロマトグラフィーは立体構造に僅かな差しかないような類似分子の分離に有用であること(摘記(4a))及び吸着クロマトグラフィーにおいて、シリカゲルは、最もよく用いられる吸着剤であるとともに分子量100~1000程度の炭化水素から水溶性化合物に至る広範囲の試料に適用できることは技術常識であったといえる(摘記(4a)、(6a))
以上から、E体とZ体とで立体配置が相違しない部分であるビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ化合物2と異なるに過ぎず、かつ、分子量が数百であることが当業者に明らか(以上につき、摘記(1h)、(1i))な引用化合物について、当業者であれば、-OH基や三級アミン、-OCH3基が存在しE体とZ体とで立体配置が相違するピロリジン環周辺の構造の化合物2との共通性や、化合物2との相違であるビフェニルの2’位のメチル基には-OCH3基よりも吸着性が弱いことが技術常識である-H基(摘記(4b))しか存在しないことに着目し、本件E体と本件Z体とを分離し本件Z体を単独で得る方法として、刊行物1における化合物2の分離に用いられたのと同様の吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーに当然想到するといえる。
b カラムクロマトグラフィーにより異性体を分離することができるか
化合物2から「酢酸エチル/シクロヘキサン(80:20)を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィー」により、E体(又は化合物3)を98.6%、Z体(又は化合物4)を99.9%の純度で回収したことが刊行物1に示されている(摘記(1i))ことに加え、上記aで述べた、吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーの特性や引用化合物の化合物2との微差及び引用化合物の分子量を考慮すると、吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーにより、引用化合物から本件Z体を85%から99.9%の純度で回収できると推認できる。
また、仮にそうでないとしても、高純度の物質を得るための手法として、一般的なものとしては繰り返し分離を行うということが技術常識であるし、吸着カラムクロマトグラフィーにおけるものとしては、吸着剤を多量に使用する(摘記(4c))、展開途中で展開溶媒を変える(摘記(4b)、(5b)、(6b))、溶媒の流速を最適化する(摘記(6a))などの手法が技術常識であるから、吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーを引用化合物に適用するにあたりこれらの手法を採用することにより、引用化合物から本件Z体を85%から99.9%の純度で回収できるといえる。
なお、吸着カラムクロマトグラフィーにおいて、トルエン及びメタノールが比較的極性の低い及び比較的極性の高い展開用の主な溶媒であることは技術常識であるし(摘記(5b))、分離に最適な極性の展開液を予め調査して決定することや極性の異なる溶媒を混合して展開液の極性を調整することも技術常識である(摘記(4b)、(4e)、(5b)、(6b))から、当業者であれば、展開液として混合比を最適化したトルエンとメタノールの混合溶液にも容易に想到したといえ、この点でも、吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーを引用化合物に適用することにより、引用化合物から本件Z体を85%から99.9%の純度で回収できるといえる。
(ウ)相違点1についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用化合物から本件Z体の純度が85%から99.9%の範囲にある化合物を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
刊行物1には、引用化合物が式Iの化合物に属する化合物であることが示されているし(摘記(1a)、(1e)、(1h)、(1i))、この式Iで表される化合物を、オキシトシンによってもたらされる早期分娩などの処置に用いるために医薬組成物とすることも示されている(摘記(1b)、(1f))。
したがって、引用化合物を医薬組成物とすることは当業者が容易になし得たことである。
(3)相違点についてのまとめ
上記(1)及び(2)から、引用発明において、相違点1及び2に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
6 効果について
発明の詳細な説明には、本願発明に含まれる本件Z体の効果として、オキシトシン受容体及びバソプレッシンV1a受容体に対して結合性を有すること(段落0112~段落0116)、オキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害すること(段落0117~段落0126)、経口投与により子宮収縮を抑制すること(段落0127~段落0135)及び本件Z体の安定性(段落0136~段落0142)が示されているので、以下検討する。
(1)オキシトシン受容体及びバソプレッシンV1a受容体に対して結合性を有することについて
ア オキシトシン受容体に対して結合性を有することについて
刊行物1には、引用化合物と同様に式Iの化合物に属するEZ混合物であり、引用化合物とビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ相違する化合物である化合物2が、in vitroにおいてオキシトシン受容体に対して結合性を有すること(摘記(1j))、及びin vitroにおいてオキシトシン受容体拮抗物質としてオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害すること(摘記(1k))が記載されている。
また、刊行物1には、引用化合物がin vitroにおいてオキシトシン受容体拮抗物質としてオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害すること(摘記(1k))も記載されている。
したがって、当業者であれば、化合物2のカルシウム動員阻害性が化合物2のオキシトシン受容体に対する結合性に起因することを理解し、同じくカルシウム動員阻害性を有する引用化合物がin vitroにおいてオキシトシン受容体に対する結合性を有することを当然予想するといえる。
そして、医薬品の開発、承認においては、異性体同士は基本的に別の化合物と認識することが技術常識であったといえる(摘記(2a)、(3a))ところ、刊行物1には、引用化合物及び化合物2が属する式Iの化合物について、通常はZ体の総合収率を上げるべきことが示されている(摘記(1g))し、実際に、化合物2よりもそのZ体単独である化合物4の方がin vitroにおけるオキシトシン受容体に対する結合性やin vitroにおけるオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員の阻害性が高いことも示されている(摘記(1j)、(1k))。
以上から、本件Z体がオキシトシン受容体に対する結合性を有することは、刊行物1の記載から当業者が予想し得たことであって、顕著なものであるということはできない。
イ バソプレッシンV1a受容体に対して結合性を有することについて
一般に、医薬化合物がレセプターと結合するかどうかは両者の立体形状が合致するかどうかや両者の形状が合致した状態において両者に結合的相互作用(イオン結合、水素結合等)が生じるかどうかに影響されることは技術常識である。
また、刊行物1には、オキシトシン受容体はV1バソプレシン受容体と類似すること及びバソプレシンとオキシトシンの両者に拮抗する物質の存在が示されているし(摘記(1c)、(1d))、上記アで述べたとおり、本件Z体がオキシトシン受容体に対して結合性を有することは当業者が予想し得たことである。
したがって、本件Z体がバソプレッシンV1a受容体に対して結合性を有することも、当業者が予想し得たことであって、顕著なものであるということはできない。
(2)オキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害することについて
刊行物1には、引用化合物及び引用化合物とビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ相違する化合物である化合物2が、in vitroにおいてオキシトシン受容体拮抗物質としてオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害することが記載されている(摘記(1k))。
そして、医薬品の開発、承認においては、異性体同士は基本的に別の化合物と認識することが技術常識であったといえる(摘記(2a)、(3a))ところ、刊行物1には、引用化合物及び化合物2が属する式Iの化合物について、通常はZ体の総合収率を上げるべきことが示されている(摘記(1g))し、実際に、化合物2よりもそのZ体単独である化合物4の方がin vitroにおけるオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員の阻害性が高いことも示されている(摘記(1k))。
以上から、本件Z体がオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害することは、刊行物1の記載から当業者が予想し得たことであって、顕著なものであるということはできない。
(3)経口投与により子宮収縮を抑制することについて
刊行物1には、引用化合物及び引用化合物と同様に式Iの化合物に属するEZ混合物であり、引用化合物とビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ相違する化合物である化合物2が、in vitroにおいてオキシトシン受容体拮抗物質としてオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員を阻害することが記載されている(摘記(1k))。
また、刊行物1には、細胞質内へのオキシトシン媒介カルシウム動員が子宮収縮を引き起こすこと(摘記(1k))、及び化合物2及び/又はそのZ体単独である(3Z,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムが静脈内投与及び経口投与によりin vivoにおいて子宮収縮抑制剤として顕著な活性を示すことが示唆されている(摘記(1k)、(1L))。
したがって、当業者であれば、刊行物1において、化合物2が有するカルシウム動員阻害性が子宮収縮を抑制することを理解し、同じくカルシウム動員阻害性を有する引用化合物がin vivoにおいて子宮収縮抑制剤として活性を示すことを当然予想するといえる。
そして、医薬品の開発、承認においては、異性体同士は基本的に別の化合物と認識することが技術常識であったといえる(摘記(2a)、(3a))ところ、刊行物1には、引用化合物及び化合物2が属する式Iの化合物について、通常はZ体の総合収率を上げるべきことが示されている(摘記(1g))し、実際に、化合物2よりもそのZ体単独である化合物4の方がin vitroにおけるオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員の阻害性が高いことも示されている(摘記(1k))。
以上から、本件Z体が経口投与により子宮収縮を抑制することは、刊行物1の記載から当業者が予想し得たことであって、顕著なものであるということはできない。
(4)本件Z体の安定性について
発明の詳細な説明の段落0045には、安定性について、「概ね、本発明の化合物は血漿中において安定である。本明細書で用いられる用語「安定」とは、投与後、対象の血漿中に式(3Z,5S)-5-(ヒドロキシメチル)-1-[(2′-メチル-1,1′-ビフェニル-4-イル)カルボニル]ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムで表される化合物、および/またはその活性代謝物が存在し、上記化合物の異性体の相互変換が実質的に防げられていることを指す。」との記載がある。
これに対し、発明の詳細な説明の段落0136~段落0142には、本件Z体の安定性として、in vivoにおける本件E体の不存在、すなわち静脈内投与及び経口投与によりin vivoにおいて本件E体に変換しないことが示されているのみである。
また、本件Z体が投与後その活性代謝物及び本件E体以外の物質に変換している可能性が否定されていないから、in vivoにおける本件E体の不存在が、in vivoにおいて投与後、対象の血漿中に本件Z体及び/又はその活性代謝物が存在することを直ちに意味するわけではない。
したがって、発明の詳細な説明の段落0136~段落0142に、in vivoにおいて投与後、対象の血漿中に本件Z体及び/又はその活性代謝物が存在することが示されているとはいえない。
もっとも、発明の詳細な説明の段落0127~段落0135には本件Z体が経口投与により子宮収縮を抑制することが示されているから、発明の詳細な説明全体には、本件Z体が、投薬準備の状態で安定であり、in vivoにおいても子宮収縮抑制効果を奏する程度に、安定であること(投与後、対象の血漿中に本件Z体及び/又はその活性代謝物が存在すること)が示されているといえるので、念のためこの点について検討する。
刊行物1には、化合物2及びそのZ体単独である化合物4が安定性について特記されずin vitro試験に供されている(摘記(1j)、(1k))とともに、化合物2及び/又はそのZ体単独である(3Z,5S)-1-(1,1’-ビフェニル-4-イルカルボニル)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-3-オンO-メチルオキシムが静脈内投与及び経口投与によりin vivoにおいて子宮収縮抑制剤として顕著な活性を示すことが示唆されている(摘記(1k)、(1L))。
そうすると、これらの化合物が投薬準備の状態で安定であり、in vivoにおいても子宮収縮抑制効果を奏する程度に安定であることは当業者に明らかである。
したがって、化合物2と同様に式Iの化合物に属するEZ混合物であり、化合物2とビフェニルの2’位がメチル基で置換されているか否かという点でのみ相違する化合物である引用化合物はもとより、そのZ体単独である本件Z体も投薬準備の状態で安定であり、in vivoにおいても子宮収縮抑制効果を奏する程度に安定であることは当業者が予想し得たことである。
以上から、本件Z体が投薬準備の状態で安定であり、in vivoにおいても期待する薬効を奏する程度に安定であることが顕著なものであるということはできない。
(5)効果についてのまとめ
以上のとおりであるから、本願発明の効果が顕著なものであるということはできない。
7 請求人の主張について
平成29年11月30日付けの意見書(以下「意見書」という。)における請求人の主張について、以下検討する。
(1)異性体分離の動機付けについて
請求人は、本件Z異性体と本件E異性体との間では試験管環境(in vitro)において有意差が認められないとする根拠として参考資料1を提示しつつ、意見書において「引用文献3(審決注:刊行物3である。)には「…しかしながら、薬物動態に差があることが文献等で報告されてないならば、異性体間で生物学的同等性の結果に差が生じる可能性は少なく、異性体を合わせたものを未変化体として測定してよい。(P.10 Q-26(A))」と記載されている。上記の通り、Z異性体とE異性体との間では試験管環境(in vitro)において有意差が認められないので、当業者はZ異性体及びE異性体を区別せず、Z異性体のみを単離しようとする動機も存在しない。また、引用文献1にあたった当業者が、引用文献3を参酌する場合、化合物1(EZ混合物)から、工程数の増加や収量の低下のリスクを負ってまで、あえてZ異性体を単離する動機がなく、むしろ阻害事由が存在すると言える」(3.(3)C.)と主張する。
しかし、上記1~6は、本願発明は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断するものである。
これに対し、請求人が主張する参考資料1に記載された事項は、刊行物1に記載された事項ではなく、かつ、技術常識であるともいえないのみならず、そもそもこの出願の優先日前に公知の事項であったか否かも明らかではない(なお、仮にこれらの点をさて措くとしても、参考資料1は本件Z体がE体やEZ混合物よりも高いカルシウム動員阻害性を有することを示すものであるといえる。)
また、請求人が主張する刊行物3に記載された事項は、技術常識ではあるものの、異性体同士は基本的に別の化合物と認識することを前提とするものであるし(摘記(2a)、(3a))、上記5(1)アで述べたとおり、当業者であれば、刊行物1の記載及び技術常識に基づいて、引用化合物において、本件E体と本件Z体とを分離し本件Z体を単独で得ることによりin vivoにおける子宮収縮抑制効果の向上を予期する、すなわち、異性体間で生物学的同等性の結果に差が生じる可能性を認識するといえる。
したがって、請求人の上記主張は、上記5(1)アで述べた、引用化合物から本件Z体を単独で得ることについての動機付けが認められる、との判断を左右するものではない。
(2)異性体分離の方法について
請求人は、意見書において「出願当時の当業者において、EZ混合物から本願発明に係るZ異性体を単離することは当時の技術水準から容易でない。すなわち、本願明細書段落0088~0103に記載されるように、様々な条件で行ったフラッシュクロマトグラフィーや再結晶法は、85%以上の純度のZ異性体を得るには不十分であった。一方で、本発明者らによると、段落0104~0111に記載されているように、例えば、特定のトルエン/メタノール溶液と静的に配置されたシリカを用いることにより、初めて85%以上の純度のZ異性体を得ることができたものである。このような条件については、引用文献のいずれにも具体的に記載されていない。従って、本願出願当時の当業者は、引用文献1等にあたったとしても85%以上の純度のZ異性体を容易に単離することはできない」(3.(3)D.)と主張する。
しかし、請求人が指摘する発明の詳細な説明の段落0088~段落0103には、フラッシュクロマトグラフィーについては「SiO2(5重量)のパッド」を用いた例が記載されているのみであるところ、カラムクロマトグラフィーはフラッシュクロマトグラフィーも含めて試料の数十倍の吸着剤を円柱状に充填した充填剤で行うのが通常であるという技術常識(摘記(4c)、(4d)、(6b))に照らし、このような「SiO2(5重量)」を「パッド」状に充填した充填剤で行ったフラッシュクロマトグラフィーは当業者が通常行う範囲のものであるとはいえないから、その結果は「EZ混合物から本願発明に係るZ異性体を単離することは当時の技術水準から容易でない」ことの根拠として極めて薄弱である。
また、請求人が指摘する「特定のトルエン/メタノール溶液」及び「静的に配置されたシリカ」について検討するに、吸着カラムクロマトグラフィーにおいて、トルエン及びメタノールが比較的極性の低い及び比較的極性の高い展開用の主な溶媒であることは技術常識であるし(摘記(5b))、分離に最適な極性の展開液を予め調査して決定することや極性の異なる溶媒を混合して展開液の極性を調整することも技術常識である(摘記(4b)、(4e)、(5b)、(6b))から、上記「特定のトルエン/メタノール溶液」が技術常識に照らし格別なものであるとはいえない。また、「静的に配置されたシリカ」は、発明の詳細な説明の段落0104の記載からみて市販のものであると解される点で、やはり技術常識に照らし格別なものであるとはいえない。
そうすると、発明の詳細な説明の段落0104~段落111に記載されたクロマトグラフィーは当業者が通常行う範囲のものであるといえるから、その結果は、やはり「EZ混合物から本願発明に係るZ異性体を単離することは当時の技術水準から容易でない」ことの根拠として極めて薄弱である。
そのほか、当業者が通常行う範囲の吸着カラムクロマトグラフィーにより本件E体と本件Z体との混合物から本件Z体を単離することが困難であることをうかがわせる事情はみあたらない。
以上から、請求人の上記主張は、上記5(1)ウで述べた、当業者は、吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーにより、引用化合物から本件Z体を85%から99.9%の純度で回収できると推認でき、仮にそうでないとしても、吸着剤としてシリカゲルを使用したカラムクロマトグラフィーを引用化合物に適用するにあたり高純度の物質を得るための手法として周知のものを採用することにより、引用化合物から本件Z体を85%から99.9%の純度で回収できるといえる、との判断を左右するものではない。
(3)効果について
ア 参考資料1に基づく主張について
請求人は、参考資料1を提示し、発明の詳細な説明及び図面に記載された本件Z体と本件E体とのin vivoにおける対比実験の結果(実施例4)を指摘しつつ、意見書において「このような生体内(in vivo)におけるE異性体に対するZ異性体の優れた効果は、当業者に容易に予想できたものではない。これは、試験管内(in vitro)においては、Z異性体とE異性体は、オキシトシン受容体に対しては類似する親和性を示すことによる。
この証拠として、本出願人は、参考資料1を添付する。参考資料1によれば・・・試験管環境(in vitro)において、Z異性体、E異性体、EZ混合体は、互いに類似する受容体親和性を有している。
更に、本意見書に添付した参考資料1に示されるように、Z異性体、E異性体、及びEZ混合体は、試験管内(in vitro)において、実質的に類似したオキシトシン受容体アンタゴニスト活性を示す・・・にも拘わらず、生体内(in vivo)ではZ異性体のみが用量依存的な子宮弛緩効果を示し、E異性体は不活性であることを、本出願人は見出した。
試験管内(in vitro)におけるZ異性体、E異性体、及びEZ混合体の類似したオキシトシン受容体親和性及びカルシウム動員抑止効果に鑑みれば、E異性体が生体内(in vivo)において用量依存性のある収縮防止効果を示さない一方で、Z異性体が同環境において実質的に優れた治療効果を示すことは、当業者が全く予想しえないことである。従って、本願発明のZ異性体により生じる効果は、当業者が引用文献1等を参酌することにより予想するものを遥かに超えるものである。」(3.(3)C.)と主張する。
しかし、上記1~6は、本願発明は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断するものである。
これに対し、請求人が主張する参考資料1に記載された事項は、発明の詳細な説明に記載された事項ではなく、かつ、刊行物1に記載された事項であるとも技術常識であるともいえないのみならず、そもそもこの出願の優先日前に公知の事項であったか否かも明らかではない(なお、仮にこれらの点をさて措くとしても、参考資料1は本件Z体がE体やEZ混合物よりも高いカルシウム動員阻害性を有することを示すものであるといえる。)。
したがって、請求人の上記主張は、上記6(3)で述べた、本件Z体が経口投与により子宮収縮を抑制することは、刊行物1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に予想し得たことであって顕著なものであるということはできない、との判断を左右するものではない。
イ 参考文献1に基づく主張について
請求人は、参考文献1を提示しつつ、意見書において「更に、本願の出願当時に公開されていた文献によっても、当業者が、生体内(in vivo)ではZ異性体のみが用量依存的な子宮弛緩効果を示し、E異性体は不活性であると予想できなかったことが示される。例えば、国際公開公報WO2002/074741(参考文献1とする)の表2(52頁)には、ピロリジン環C5位にメトキシカルボニル置換基を有するE異性体とZ異性体が示される。・・・
参考文献1のメトキシカルボニル基を有するE異性体とZ異性体は、試験管内(in vitro)でオキシトシン誘発性のCa2+動員において等しい阻害活性を示し、両異性体のIC50値はともに0.015μMである。参考文献1の表2に示される同等な阻害活性を参酌すれば、生体内(in vivo)において、E異性体が用量依存性のある収縮防止効果を示さない一方で、Z異性体が実質的に優れた子宮収縮抑止効果を示すことは、当業者が全く予想できないことは明らかである。」(3.(3)C.)と主張する。
しかし、上記1~6は、本願発明は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと判断するものである。
これに対し、請求人が主張する参考文献1に記載された事項(国際公開第2002/074741号の50~52頁に記載された事項)は、この出願の優先日前に公知の事項であったとはいえるものの、発明の詳細な説明に記載された事項ではなく、かつ、刊行物1に記載された事項であるとも技術常識であるともいえない。
なお、仮にこの点をさて措くとしても、上記6(3)で述べたとおり、当業者であれば、刊行物1において、化合物2が有するカルシウム動員阻害性が子宮収縮を抑制することを理解し、同じくカルシウム動員阻害性を有する引用化合物がin vivoにおいて子宮収縮抑制剤として活性を示すことを当然予想するといえるし、医薬品の開発、承認においては、異性体同士は基本的に別の化合物と認識することが技術常識であったといえる(摘記(2a)、(3a))ところ、刊行物1には、引用化合物及び化合物2が属する式Iの化合物について、通常はZ体の総合収率を上げるべきことが示されている(摘記(1g))し、実際に、化合物2よりもそのZ体単独である化合物4の方がin vitroにおけるオキシトシン/オキシトシン受容体に媒介されるカルシウム動員の阻害性が高いことも示されている(摘記(1k))。そうすると、参考文献1に記載された上記事項は、本件Z体が経口投与により子宮収縮を抑制するという予想の確実性を低めるものではあってもこれを失わせるものではないといえる。
したがって、請求人の上記主張は、上記6(3)で述べた、本件Z体が経口投与により子宮収縮を抑制することは、刊行物1の記載及び技術常識に基づいて当業者が予想し得たことであって顕著なものであるということはできない、との判断を左右するものではない。
ウ 参考資料2及び参考文献2に基づく主張について
請求人は、参考資料2及び参考文献2を提示しつつ、意見書において「例えば、本願明細書の実施例5には、Z異性体が優れた安定性を有することが記載されている。具体的には、Z異性体はシトクロムP450のCYP2D6及びCYP2C19イソフォームに対して安定である一方で、E異性体はこれらの酵素により代謝される」と主張する。
しかし、発明の詳細な説明の実施例5(段落0136~段落0142)には、本件Z体の安定性として、in vivoにおける本件E体の不存在、すなわち静脈内投与及び経口投与によりin vivoにおいて本件E体に変換しないことが示されているのみである。
そして、発明の詳細な説明の段落0127~段落0135には本件Z体が経口投与により子宮収縮を抑制することが示されているが、この点を考慮しても、発明の詳細な説明全体には、本件Z体が投薬準備の状態で安定であり、in vivoにおいても子宮収縮抑制効果を奏する程度に安定であること(投与後、対象の血漿中に本件Z体及び/又はその活性代謝物が存在すること)が示されているというにとどまる。
他方、本件Z体がシトクロムP450のCYP2D6及びCYP2C19イソフォームに対して安定であることは、発明の詳細な説明には記載も示唆もされておらず、また技術常識であるともいえない。
したがって、本件Z体がシトクロムP450のCYP2D6及びCYP2C19イソフォームに対して安定であることを本願発明の顕著な効果であるとすることはできない。
(4)請求人の主張についてのまとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張は、いずれも上記1~6における判断を左右するものではない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に頒布された以下の刊行物1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余について検討するまでもなく、この出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-004947