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特許拒絶査定不服審判

2017-003067

ファブリー病の治療用投薬レジメン

審判番号
2017-003067
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-557862外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年03月01日
審決日
2017年11月13日
公報発行日
2018年05月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-557862「ファブリー病の治療用投薬レジメン」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/125402、平成26年10月30日国内公表、特表2014-528901〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 本願は、平成24年3月8日(パリ条約による優先権主張 2011年3月11日,2011年12月20日,2012年2月7日、いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月9日受付けで手続補正がなされ、同年12月16日付けの拒絶理由通知に応答して平成28年6月22日受付けで手続補正書と意見書が提出されたが、同年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年3月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2.本願発明 本願請求項1~14に係る発明は、平成28年6月22日受付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。 「 対象者におけるファブリー病の治療のための医薬であって、それを必要とする患者に投与するための約50mg~約600mgの1-デオキシガラクトノジリマイシンと有効量のα-Gal A酵素補充療法剤とを含み、1-デオキシガラクトノジリマイシンが、α-Gal A酵素補充療法剤の投与の最長約4時間前に投与され、α-Gal A酵素補充療法剤が、1-デオキシガラクトノジリマイシンに連続して投与される、医薬。」 3.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由(理由2)は、この出願の請求項1-14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、下記の刊行物1-4を引用するものである。 刊行物1 米国特許出願公開第2010/0266571号明細書(以下、「引用例2」という。) 刊行物2 特表2006-516645号公報(以下、「引用例1」という。) 刊行物3 特表2009-537149号公報(以下、「引用例3」という。) 刊行物4 特表2003-528799号公報(以下、「引用例4」という。) 4.引用例1~4の記載事項 引用例1~4には、(図面と共に)次の技術事項が記載されている。なお、図面の摘示は省略し、下線は当審で付したものであり、引用例2は英文のため翻訳文で示した。 [引用例1] (1-i) 「【請求項62】 タンパク質補充を必要とする障害を有する個体を治療する方法であって、 前記個体に、有効量の精製された野生型補充タンパク質と、有効量の、前記補充タンパク質に対する活性部位特異的シャペロンと、を含有する組成物を投与することを含む方法。 【請求項63】 前記障害がファブリー病であり、 前記補充タンパク質がα-ガラクトシダーゼAであり、 前記活性部位特異的シャペロンが、1-デオキシガラクトノジリマイシン、α-アロ-ホモノジリマイシン、α-ガラクト-ホモノジリマイシン、α-1-C-ブチル-デオキシノジリマイシン、カリステジンA3、カリステジンB2、N-メチル-カリステジンA3及びN-メチル-カリステジンB2からなる群より選ばれる、請求項62記載の方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項62】~【請求項63】) (1-ii) 「【0013】 〔特異的シャペロン戦略〕 従来の特許及び刊行物には、内因性の酵素タンパク質(具体的には、誤って折り畳まれたリソソーム酵素)をER品質管理機構による分解から救済する治療戦略が記載されている。この戦略では、特定のリソソーム障害に関連する欠陥リソソーム酵素に対して特異的な小分子の可逆的競合阻害剤を用いる。この戦略は、次のとおりである。変異型酵素タンパク質はER内では誤って折り畳まれるので(Ishii ら,Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996; 220:812-815)、この酵素タンパク質は正常の輸送経路(ER→ゴルジ装置→エンドソーム→リソソーム)では遅滞し、急速に分解される。このため、変異型タンパク質の正しいフォールディングを促進する機能性化合物は、変異型タンパク質に対する部位特異的シャペロンとして機能し、ER品質管理システムからの円滑な脱出を促進する。インビトロにおいて、酵素の触媒中心を占め、そのコンフォメーションを安定化させる酵素阻害剤が存在することは知られている。従って、これらの特異的シャペロンは、活性部位特異的シャペロン(ASSC)と称することができる。 【0014】 この戦略は、Fan らへ付与された米国特許第6,274,597号、第6,583,158号、第6,589,964号及び第6,599,919号、並びに2002年11月26日に出願された係属中の米国特許出願第10/304,396号において、リソソーム蓄積症に関与する酵素に関して具体的に明らかにされている。上記特許及び出願の内容はそのまま、レフファレンスとして本明細書に包含される。例えば、ガラクトースの小分子誘導体であり、変異型ファブリー酵素 α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の強力な競合阻害剤である1-デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)は、中性pHで変異型α-Gal A(R301Q)のインビトロ安定性を効果的に高め、R301Q又はQ279E変異を有するファブリー病患者から株化したリンパ芽球における変異型酵素活性を増強した。更に、変異型(R301Q)α-Gal Aを過剰発現するトランスジェニックマウスへのDGJの経口投与は、主要臓器中の酵素活性を大幅に上昇させた(Fan ら,Nature Med. 1999; 5:112-115)。ミスフォールディング(誤って折り畳まれた)タンパク質の救済の成否は、酵素阻害濃度が必要とされる基質剥奪手法とは対照的に、酵素を完全に阻害するのに必要な濃度より低い特異的阻害剤のインビボ濃度が実現されるかどうかによる。」(段落【0013】~【0014】) (1-iii) 「【0093】 別の態様では、補充タンパク質及びASSCは別個の組成物で調製される。この態様では、シャペロン及び補充タンパク質を、例えば、静脈内注入等の同一経路によって、又は例えば、補充タンパク質は静脈内注入で、ASSCは経口投与等の異なる経路で投与することができる。」(段落【0093】) (1-iv) 「【0103】 製剤に関して最もよく知られた問題の一つは、生体内活性の損失を生じさせる製剤の凝集である。賦形剤の添加は、このプロセスを緩和することができるが、これを完全に防止することはできない。活性の損失は物理的アッセイによって検出することができる場合もできない場合もあり、大きな(時には15~20%の)変動係数を備えるバイオアッセイ又は力価アッセイでしか明白にならないので、実際の損失量を決定するのは困難である。 【0104】 ASSCは、酵素の分解及び酵素タンパク質の凝集を防止することによって酵素活性を強化することが明らかにされている(Fan ら,Nat. Med. 1999; 5:112-5; 図1)。ASSC及び補充タンパク質が同一組成物中に含まれる態様では、本発明の調製組成物は、無菌性を保持し、また、これは重要なことであるが、適正な流通及び保管中に補充タンパク質の活性を保護するのに適した容器で提供することができる。投与されたタンパク質をインビボで安定化させることに加えて、ASSCは、インビトロでも補充タンパク質に可逆的に結合してそのコンフォメーションを安定化させ、それによって製剤の凝集及び分解を防止し、シェルフライフを延長させる。ASSC/補充タンパク質相互作用の分析結果は、例えば、示差走査熱量計、円偏向二色性等、当分野で周知の技術を用いて評価することができる。」 (1-v) 「【0111】 投与の時機: 補充タンパク質及びASSCが個別製剤中に含まれる場合は、同時に投与してもよく、又はASSCを補充タンパク質の前に、若しくは後に投与してもよい。例えば、補充タンパク質が静脈内投与される場合に、ASSCは0~6時間の時間以内、又はその後に投与してもよい。或いは、シャペロンはタンパク質投与の0~6時間前に投与してもよい。 【0112】 ASSC及び補充タンパク質が個別に投与され、ASSC(例えば、小分子)が短い循環中半減期を有する好ましい態様では、ASSCは循環中の一定レベルを維持するために、例えば、1日1回等、持続的に経口投与してもよい。このような一定レベルは、患者にとって非毒性であり、また、非阻害性の治療作用を付与するのに、投与中の標的補充タンパク質との相互作用に関して最適であると決定されているレベルである。」(段落【0111】~【0112】) (1-vi) 「【0117】 (用量) 投与されたタンパク質及び内因性の変異型タンパク質を安定化させるために有効なASSCの用量は、当業者によってタンパク質及び対応するASSCに応じて、個別的に決定することができる。補充タンパク質及びASSCの両方の半減期(tl/2)、ピーク血漿濃度(cmax)、ピーク血漿濃度に達するまでの時間(tmax)、曲線下面積(AUC)より求まる暴露量、及び組織分布、並びにASSC-補充タンパク質結合に関するデータ(親和性定数、結合及び解離定数、並びに結合価)等、薬物動態学的及び薬力学的データは、活性を阻害せずに補充タンパク質を安定化させ、その結果、治療効果を与えるのに必要な適合量を決定する、当分野で既知の通常の方法を用いて得ることができる。」(段落【0117】) (1-vii) 「【0125】 〔実施例1:ASSCを用いたα-Gal Aのインビトロ安定化〕 方法: 野生型α-Gal Aは、ヒト野生型α-Gal A cDNAを有する組換えバキュロウイルスで感染させたSf-9細胞の培地から精製し、変異型α-Gal Aは、ヒト変異型(R301Q)α-Gal Aを過剰発現するトランスジェニックマウスの心臓のホモジネートとして収集した。これらのマウスには、実験前1週間、飲料水として0.5mM DGJを与えた。変異型酵素及び野生型酵素は各々、変異型酵素に対しては37℃で、及び野生型酵素に対しては42℃で、0.1Mクエン酸-リン酸緩衝液(pH7.0)中、濃度1μM、0.1μM、0.03μMのDGJの存在下、又はDGJの非存在下でプレインキュベートした。野生型及び変異型(R301Q)α-GalAは、DGJ(種々の濃度)の非存在又は存在下で、ある期間に渡ってインキュベートし、この混合液を5容積の0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)を用いて希釈した後、基質として4-MU-α-Gal Aを用いて残留酵素活性を決定した。酵素活性は、プレインキュベーションを実施していない酵素に対する相対値で報告されている。 【0126】 結果: 図1に示したように、変異酵素は、DGJ存在下のインキュベーションを行わずに、37℃で20分間、インキュベートした後は、中性pH下で安定性を示さなかった(図1A)。野生型酵素もまた、DGJ存在下のインキュベーションを行わずに、42℃でインキュベートすると、中性pH下で酵素活性を大きく損失した(図1B)。両方の酵素の安定性は、濃度1μMのDGJを含めることによって改善することができた。すなわち、反応混合液中には、60分間、80%を超える酵素活性が維持された。これは、ASSC(DGJ)が、変異型及び野生型酵素の変性/分解を予防する安定剤として機能することができることを示している。 【0127】 〔実施例2:ASSCを用いた野生型α-Gal Aの細胞内強化〕 方法: 組換えバキュロウイルスを用いてトランスフェクトした昆虫細胞又は組換えCHO細胞から精製したヒト野生型α-Gal Aは、従来の参考文献によれば、α-2-マクログロブリン(α-2-M)と複合体を形成することができる(Osada ら,Biochem Biophys Res Commun.1993; 142:100-6)。コーヒー豆由来α-Galとα-2-Mとの複合体は、ファブリー病ヘミ接合体由来の培養線維芽細胞によって細胞内へ取り込むことができるので、α-Gal A及びα-2-Mの複合体は同様に細胞によって細胞内へ取り込まれると考えられる。或いは、野生型α-Gal Aは、Blomら,Am J Hum Gen. 2003; 72:23-31 に記載されているように、残留酵素活性を伴わないファブリー病患者由来の皮膚線維芽細胞の培地内に添加することもできる。 【0128】 結果: コーヒー豆α-Gal Aの半減期は、既に報告されているように約2時間である(Osada ら,Biochem Biophys Res Commun. 1987; 143:954-8)。α-Gal A-α-2-M複合体、又は培地に添加されたα-Gal Aの半減期は、培地中にDGJを含めることによって延長させることができると考えられるが、それはDGJがインビトロにおける酵素の安定化に有効であることが明らかにされているからである(図1)。これは、DGJが、細胞によって細胞内に取り込まれた外因性α-Gal Aの持続時間を延長することができることを示すものである。 【0129】 〔実施例3:補充酵素の注入によって治療されたファブリー病マウスへのDGJの共投与〕 ファブリー病に対する酵素補充療法は、上述したように Genzyme Corporation によって開発されてきた。補充酵素の注入によって治療されたファブリー病ノックアウト(KO)マウスへのDGJの共投与は、安定性、例えば、補充酵素のインビボ半減期を増加させるが、それはASSC DGJが酵素を安定化させて分解を防止するためである。DGJは、既に報告されているプロトコールに従って、野生型α-Gal Aの注入後にKOマウスへ経口投与される(Ioannu ら,Am J Hum Genet. 2001; 68:14-25)。心臓、腎臓、脾臓、肝臓及び肺、並びに血清を含む様々な組織中のα-Gal A活性は、ある期間に渡って決定され、DGJを摂取していないコントロールマウス、及びDGJだけを摂取して酵素を摂取していないマウスからのα-Gal A活性と比較される。時間の延長は、ASSCの共投与が酵素補充療法の有効性を改善することができることを示すものである。」(段落【0125】~【0129】) [引用例2] (2-i) 「112. タンパク質ミスフォールディングに関連する疾患を治療する方法であって、約75~300mgの薬理学的シャペロンの1日用量を1日1回約4~約10日間経口投与し、続いて約75~225mgの維持用量を1回約2~約8日ごとに投与する。 113.~116. ・・・略・・・ 117. 疾患がファブリー病であり、薬理学的シャペロンが1-デオキシガラクトノジリマイシンであり、維持用量が2~3日毎に約150mgである、請求項112に記載の方法。 118. CerezymeR、FabrazymeR、AldurazymeR、MyozymeR、ReplagalRそしてZavescaRか(「R」の表記は、いずれも、「○で囲ったR」で記載されている。以下、同様である。)らなる群から選択される少なくとも1つのさらなる療法と組み合わせて薬理学的シャペロンを投与する工程をさらに含む、請求項112に記載の方法。 119. 約2~約8日に1回約75~300mgの用量で薬理学的シャペロンを経口投与することを含む、タンパク質ミスフォールディングに関連する疾患を治療する方法。 120. 前記用量が150mgである、請求項119に記載の方法。 121. ・・・略・・・ 122. 前記疾患が、ファブリー病、ゴーシェ病、ポンペ病、パーキンソン病およびアルツハイマー病からなる群から選択される、請求項119に記載の方法。 123. 前記薬理学的シャペロンが、イソファゴミン、1-デオキシガラクトノジリマイシン及び1-デオキシノルジリマイシンからなる群から選択される、請求項119に記載の方法。 124. 疾患がファブリー病であり、薬理学的シャペロンが1-デオキシガラクトノジリマイシンであり、用量が2~3日ごとに約150mgである、請求項119に記載の方法。 125. ・・・略・・・ 126. CerezymeR、FabrazymeR、AldurazymeR、MyozymeR、ReplagalRそしてZavescaRからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる療法と組み合わせて薬理学的シャペロンを投与する工程をさらに含む、請求項119に記載の方法。」(20頁右欄~21頁右欄の請求項112~126) (2-ii) 「ファブリー病 [0110] ファブリー病は、リソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-GAL)の欠損に起因するリソソーム蓄積障害である。 症状は、腎不全、心臓発作や脳卒中のリスクの増加を含む、厳しく衰弱することである。 ・・・略・・・ [0112]GCaseに対するIFGと同様に、DGJは、α-GALの活性部位に結合し、in vitroおよびin vivoでその活性を増加させることが示された( 実施例5を参照)。」(段落[0110]~[0112]) (2-iii) 「ファブリー病のためのモデル投薬レジメンに適用される理由 [0147] 上述したモデルは、他の酵素のための他の特異的な薬理学的シャペロンのための投与計画を推定するに容易に適用可能である。先に示したように、1-デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩(DGJ)の使用のためのシャペロンとして α -ガラクトシダーゼA(α -Gal A)をファブリー病の治療において、臨床試験で評価されつつある。 [0148] 複数回用量第I相試験が実施され、8人の被験者からなる2つのグループに分け、合計16人の健康なボランティアから構成されていた。各グループ内の6人の被験者はDGJを受け、2人の被験者はプラセボを投与された。1グループ内のすべての被験者は、7日間1日2回、プラセボまたは50mgを受け、もう一方のグループ内のすべての被験者は、7日間1日2回、プラセボまたは150mgを受け。被験者は、試験開始時点、7日間治療後の7日目にまた、7日間の休薬期間後の14日目に評価された。 [0149] 複数回用量第I相試験からのデータは、7日間DGJの投与を受けた健常なボランティアの白血球中のα-GALレベルの用量依存的増加を示した。最高用量レベルでα-GALレベルの約2倍の増加があり、この増加は、最終投与後少なくとも7日間維持した。 [0150] DGJおよび野生型α-GALを用いたインビトロとインビボでの動物及び第I相試験の結果として、(150mgのDGJ塩酸塩の経口投与後に )次のPK及びPDの情報が得られた。 表4 血漿PKとPD Cmax (μ M )         9 TMAX (時間)          3 半減期(時間、指数関数的減衰) 3 Ki (μM )           0.04 EC50(μM )(細胞)      0.4 IC50(μM )(精製酵素)    0.4 [0151]  DGJがIFGよりもはるかに短い血漿半減期を持っているので、最適維持用量は、初期酵素集積期後のIFGのものよりも短くなる可能性が高い。一例として、28日間1日おきに150mgのDGJを投与すると、残りの8時間の間IC50を下まわると予測されている(図6)。・・・略・・・。」(段落[0147]~[0151]) (2-iv) 「[0179] ファブリー病。 ・・・略・・・ [0180] 本実施の形態では、薬理学的シャペロンの第1期の日用量(例えば、DGJ塩酸塩) は、一日あたり約200mg~約500mg、または一日あたり約250mg~約300mgの範囲内、または一日あたり約250mgである。これらのレベルは逐次漸増的にに徐々に達成されてもよい。・・・後略。 [0181]~[0182] ・・・略・・・ [0183] これらの実施形態において、維持投与量は一用量当たり約75mg~約225 mg、又は、一用量当たり約100mg~約200mgの範囲内にあり、具体的実施形態では一用量当たり約150mgの範囲である。 [0184] ・・・略・・・ [0185] この実施形態では、初期酵素集積期、または薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)が毎日経口投与される投薬計画の第1期は、約4日~約14日、または約5日~約10日、または具体的な実施形態においては約7日間であり、薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)の投入用量は1日あたり約200mg~約500mg、または約250mg~約300mg、または250mgであってよい。 [0186] 或いは、第1期は、約2週間~約12週間の期間、約4週間~約8週間(例えば、約6週間)持続してよい。薬理シャペロン(例えば、DGJ塩酸塩)の投入用量は、1日あたり約200mg~約500mg、または1日あたり約250mg~約300mgの範囲内、または1日あたり250mgであってよい。 [0187]~[0193] ・・・略・・・ [0194] 具体的な一例において、ファブリー病のための投薬計画は、連続3日間1日1回250mgまたは500mgのDGJ塩酸塩の経口投与とそれに続く薬理シャペロン(すなわち、DGJ塩酸塩)を摂取しない4日間を必要とする可能性がある。或いは、投薬計画は、連続7日間1日1回250または500mgの薬理シャペロン(例えば、DGJまたはDGJ塩酸塩)とそれに続く薬理シャペロンを摂取しない7日間で構成されていてよい。 [0195] ・・・略・・・」(段落[0179]~[0195]) [引用例3] (3-i)「【0002】 技術分野 本発明は、ファブリー病に罹っている患者が、特異的な薬理的シャペロン(specific pharmacological chaperone)による治療の利益を得るか否かを決定するための方法を提供する。本発明は、患者の細胞内における、1-デオキシガラクトノジリマイシン等の薬理的シャペロンに対するα-ガラクトシダーゼA応答性を決定するための、2つの方法、即ちインビトロ法およびインビボ法を例示する。本発明は、またファブリー病に罹っている疑いのある患者において、ファブリー病の診断を行うための方法をも提供する。 (3-ii)【0035】 II. インビボアッセイ 第二の態様においては、WBCを、インビボでのSPCによるα-GALの増強につき評価する。この態様においては、ベースライン値を得るために、SPCの投与前に、患者由来のWBC中のα-GAL活性を評価する。次いで、患者に、毎日DGJ(例えば、150mg/日)を、十分な期間、例えば約10日~約2週間投与し、次いで血液を抜取り、α-GAL活性のベースライン値からの変化を決定する。投与前またはその後の該細胞の培養は、必要とされない。 該インビボ評価期間中の、DGJ投与の用量および投与様式は、患者に応じて(突然変異には極めて高い不均一性があるので)、また該患者の残留α-GAL活性に応じて変えることができる。非-限定例として、以下のような用量および投与様式が、多くの「救済可能な」個体においてα-GALを高めるのに、十分であると予想される:25mg(2回/日(b.i.d)); 50mg(1回/日); 50mg(b.i.d.); 50mg(一日おきに1回); 75mg(1回/日); 75mg(b.i.d.); 100mg(1回/日); 100mg(b.i.d.); 150mg(1回/日); 150mg(b.i.d.); 150mg(一日おきに1回); 250mg(1回/日); 250mg(b.i.d.)および250mg(一日おきに1回)。特別な態様においては、該用量は、50mg(1回/日); 50mg(一日おきに1回); 150mg(1回/日); 150mg(一日おきに1回)。 【0036】 本発明によるDGJの投与剤は、任意の投与経路に適した処方状態にあるが、経口投与剤形、例えば錠剤、カプセルまたは溶液として、経口経路で投与されることが好ましい。一例として、患者には、各々25mg、50mg、75mgまたは100mgまたはその組合せを含むカプセルが経口投与される。 ・・・後略。」(段落【0035】~【0036】) [引用例4] (4-i)「【請求項1】2,5-ジデオキシ-2,5-イミノ-D-マンニトール、3,4-diepi-α-ホモノジリマイシン(homonojirimaycin)、5-O-α-D-ガラクトピラノシル-α-ホモノジリマイシン、1-デオキシガラクトノジリマイシン、4-epi-ファゴミン(fagomine)、カリステジン(calystegine)A3、カリステジンB2、およびカリステジンB3、並びそれらのN-アルキル誘導体からなる群から選択される有効量の化合物を投与することを含んでなる、哺乳動物細胞中のリソソームα-ガラクトシダーゼAの活性を増大する方法。」(請求項1) (4-ii)「【0007】 また、本発明の更なる目的は、哺乳動物細胞中の、特にヒト細胞中のα-GalA活性を増大する方法を提供することである。本発明の方法は、正常α-GalAおよび変異α-GalAの活性をともに増大するが、特にファブリ病のある形態に存在する変異α-GalAの活性を増大する。」(段落【0007】) (4-iii)「【0013】 当業者は、本発明の方法で使用される化合物の有効量は、日常的な実験操作によって決定することが可能であるということを理解するであろう。しかしながら、その量は0.01から100μM、好ましくは0.01から10μM、最も好ましくは0.05から1μMの血清濃度を生じる量であると推測される。また、化合物の有効量は、1日当たり0.5から1000mg/kg体重、好ましくは1日当たり0.5から100mg/kg体重、最も好ましくは、1日当たり1から50mg/kg体重であると推測される。化合物は、予備処方された投薬量で、単独で、場合によっては薬学的に許容し得る担体および賦形剤に加えて投与することができる。有効量の化合物を投与することによって、患者の症状を改善するのに十分な患者内の細胞のα-GalA活性を高めることができる。明らかに健常者で確認された酵素活性の低い範囲が平均値の約30%であるので(2)、正常の30%の酵素活性レベルがファブリ患者の症状を著しく改善し得ることが推測される。」(段落【0013】) (4-iv)「【0015】 ・・・略・・・。 DGJは、1-デオキシ-ガラクトノジリマイシンである。・・・後略。」(段落【0015】) (4-v)「【0035】 実施例10 1日当たり体重1キログラム当たり約3または30mgのDGJ投薬量に対応する1週間の飲用源として0.05または0.5mMのDGJ溶液を供給することによりTgマウスにDGJを投与した。酵素活性は、各々、心臓で4.8倍および18倍、腎臓で2.0倍および3.4倍、脾臓で3.1倍および9.5倍、肝臓で1.7倍および2.4倍を示した(図11)。臓器における酵素活性の増加はDGJ投薬量の増加に対応していた。変異遺伝子(R301Q)が、心臓に制限される臨床症状を有している異型性変異型ファブリ患者で確認されたので、DGJの経口投与がTgMマウスの心臓のα-GalA活性を特に増大するという事実は特に重要である。」(段落【0035】) 5.引用例1発明、対比、判断 (1)引用例1に記載された発明 引用例1の摘示(1-i)には、 「 タンパク質補充を必要とする障害を有する個体を治療する方法であって、 前記個体に、有効量の精製された野生型補充タンパク質と、有効量の、前記補充タンパク質に対する活性部位特異的シャペロンと、を含有する組成物を投与することを含む方法であり、 前記障害がファブリー病であり、 前記補充タンパク質がα-ガラクトシダーゼAであり、 前記活性部位特異的シャペロンが、1-デオキシガラクトノジリマイシン、α-アロ-ホモノジリマイシン、α-ガラクト-ホモノジリマイシン、α-1-C-ブチル-デオキシノジリマイシン、カリステジンA3、カリステジンB2、N-メチル-カリステジンA3及びN-メチル-カリステジンB2からなる群より選ばれる、方法。」 が記載されているところ、この方法で投与される組成物は「医薬」ということができる。 したがって、引用例1には、この方法に係る「活性部位特異的シャペロン」についての選択肢について「1-デオキシガラクトノジリマイシン」を選択した場合の方法に係る医薬として、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用例1発明> 「ファブリー病を有する個体を治療する医薬であって、 前記個体に、有効量の精製された野生型α-ガラクトシダーゼAと、 有効量の、前記α-ガラクトシダーゼAに対する1-デオキシガラクトノジリマイシンと、 を含有する、医薬。」 (2)対比 本願発明と引用例1発明とを対比する。 なお、引用例1中での略号「DGJ」は、1-デオキシガラクトノジリマイシンのことを意味し、同じく略号「ASSC」は、活性部位特異的シャペロンのことを意味し、「α-Gal A」は、α-ガラクトシダーゼAを意味する(摘示(1-ii)参照)。 引用例1発明の医薬は、摘示(1-iii)の記載からみて、一剤として投与されるものに限られず、α-ガラクトシダーゼA、及び、1-デオキシガラクトノジリマイシンを別個の組成物として調製し、α-ガラクトシダーゼAは静脈内注入で、1-デオキシガラクトノジリマイシンは経口で投与する等の、異なる経路で投与することもできるものであると認められる。 引用例1発明の「ファブリー病を有する個体を治療する」は、本願発明の「対象者におけるファブリー病の治療のため」、「それを必要とする患者に投与する」に相当する。 引用例1発明の「有効量の精製された野生型α-ガラクトシダーゼA」は、本願発明の「有効量のα-Gal A酵素補充療法剤」に相当する。 そうすると、両発明は、 「対象者におけるファブリー病の治療のための医薬であって、それを必要とする患者に投与するための1-デオキシガラクトノジリマイシンと有効量のα-Gal A酵素補充療法剤とを含む医薬」 である点で一致し、次の相違点A,Bで一応相違している。 <相違点> A.「1-デオキシガラクトノジリマイシン」の用量について、本願発明では、「約50mg~約600mg」と特定しているのに対し、引用例1発明は「有効量」である点 B.医薬の投与について、本願発明では、「1-デオキシガラクトノジリマイシンが、α-Gal A酵素補充療法剤の投与の最長約4時間前に投与され、α-Gal A酵素補充療法剤が、1-デオキシガラクトノジリマイシンに連続して投与される」とされているのに対し、引用例1発明ではそのような特定を有していない点 (3)判断 相違点Aについて 引用例1には、「1-デオキシガラクトノジリマイシン」についての用量は数値では記載されていないが、「1-デオキシガラクトノジリマイシン」を含むASSCの用量について、個別的に決定されるものであること、補充タンパク質及びASSCの両方の半減期(tl/2)、ピーク血漿濃度(cmax)、ピーク血漿濃度に達するまでの時間(tmax)、曲線下面積(AUC)より求まる暴露量、及び組織分布、並びにASSC-補充タンパク質結合に関するデータ(親和性定数、結合及び解離定数、並びに結合価)等、薬物動態学的及び薬力学的データは、活性を阻害せずに補充タンパク質を安定化させ、その結果、治療効果を与えるのに必要な適合量を決定する、当分野で既知の通常の方法を用いて得ることができること、が記載されている(摘示(1-vi)参照)。 また、ファブリー病等に対する「1-デオキシガラクトノジリマイシン」の用量について、引用例2には、酵素療法剤と併用する場合について、75~300mg、150mg、250mg(摘示(2-i),(2-iii)、(2-iv)参照)等が記載されており、引用例3には、150mg(摘示(3-ii)参照)等が記載されており、引用例4には、3または30mg/kg体重(摘示(4-iii)、(4-v)参照)等が記載されている。 これらの記載を総合すると、50kg体重では、概ね、75mg~1500mgが記載されていると認められる。 そうすると、これらの記載に基づき引用例1の「有効量」を具体的に検討し、本願発明で採用する「約50mg~約600mg」の範囲とする程度のことは、当業者であれば容易になし得ることであると認められる。 また、「1-デオキシガラクトノジリマイシン」の用量を、「約50mg~約600mg」と特定したことにより、そうでない場合と比較して、引用文献1~4に基づき当業者が予測することができない効果が奏されているわけでもない。 相違点Bについて 引用例1には、投与の時機について、「補充タンパク質及びASSCが個別製剤中に含まれる場合は、同時に投与してもよく、又はASSCを補充タンパク質の前に、若しくは後に投与してもよい。例えば、補充タンパク質が静脈内投与される場合に、ASSCは0~6時間の時間以内、又はその後に投与してもよい。或いは、シャペロンはタンパク質投与の0~6時間前に投与してもよい。」(摘示(1-vii)参照)と記載されている。 そうすると、引用例1発明は、医薬の投与について、「1-デオキシガラクトノジリマイシンが、α-Gal A酵素補充療法剤の投与の最長約4時間前に投与され、α-Gal A酵素補充療法剤が、1-デオキシガラクトノジリマイシンに連続して投与される」場合を選択肢として含んでいると認められるから、相違点Bは、実質的な相違点とはいえない。 また、仮に実質的な相違点であるといえるとしても、当業者であれば、投与の時機について、「補充タンパク質及びASSCが個別製剤中に含まれる場合は、同時に投与してもよく、又はASSCを補充タンパク質の前に、若しくは後に投与してもよい。例えば、補充タンパク質が静脈内投与される場合に、ASSCは0~6時間の時間以内、又はその後に投与してもよい。或いは、シャペロンはタンパク質投与の0~6時間前に投与してもよい。」という選択肢のなかから、「1-デオキシガラクトノジリマイシンが、α-Gal A酵素補充療法剤の投与の最長約4時間前に投与され、α-Gal A酵素補充療法剤が、1-デオキシガラクトノジリマイシンに連続して投与」する場合に限定することは適宜なし得ると認められる。 相違点Bに係る発明特定事項を採用したことによって奏される効果について検討する。 なお、後記に使われている用語「ERT」は「酵素補充療法(剤)」のことであり、アガルシダーゼの投与を意味し、市販品として「FabrazymeR」が挙げられ(本願明細書段落【0006】参照)、また、「ミガラスタット(塩酸塩)」は、DGJ、即ち,「1-デオキシガラクトノジリマイシン」の塩酸塩を意味する(同書段落【0027】参照)。 本願明細書には、3つの実施例が記載されている(段落【0044】~【0136】)ので、順次検討する。 まず、実施例1について、「期間2:ミガラスタット塩酸塩の150mg経口用量、その2時間後にアガルシダーゼの静脈内注入開始;」(即ち、期間2において、1-デオキシガラクトノジリマイシンの塩酸塩の投与の2時間後にα-Gal A酵素補充療法剤の投与をしたこと)などの記載がある(段落【0050】)が、手順などの説明が記載されているだけで、その結果が何も示されていない。 したがって、実施例1は、本願発明の効果を確認できる内容を含んでいない。 次に、実施例2(段落【0099】~【0114】)について、発明の詳細な説明には以下の記載がある。下線は、当審による。 「方法。この研究は、実施例1に記載される方法に従い実施した。具体的には、これは非盲検単回用量非無作為化固定順二段階試験であった。ステージ1は3つの期間から構成された: (1)アガルシダーゼベータ0.5mg/kg又は1.0mg/kg(約2時間注入)又はアガルシダーゼアルファ0.2mg/kg(約40分間注入)酵素補充単剤療法(montherapy)(ERT); (2)ERT+150mgミガラスタット経口錠剤(単回用量)同時投与、ERTの2時間前にミガラスタットを投与;及び (3)150mgミガラスタット単剤療法。 ステージ2は、ステージ1と同じ順序の2つの期間(すなわち、期間(1)及び(2))から構成されたが、但し期間2で3×150mgミガラスタット経口錠剤(すなわち450mgミガラスタット)を同時投与した。ステージ2は、以下の2つの期間から構成された: (1)アガルシダーゼベータ0.5mg/kg又は1.0mg/kg(約2時間注入)又はアガルシダーゼアルファ0.2mg/kg(約40分間注入)酵素補充単剤療法(montherapy)(ERT);及び (2)ERT+450mgミガラスタット経口錠剤の同時投与。ERTの2時間前にミガラスタットを投与。」(段落【0100】~【0101】) 「ステージ1の期間1及び期間2・・・期間2では、150mgミガラスタットを、同用量のERTの開始2時間前に同時投与した。」(段落【0104】) 「結果: ミガラスタットの同時投与により血漿α-Gal-A活性が増加する ERT単独(期間1)と比べたミガラスタットとの同時投与(期間2)について、血漿α-Gal A活性AUC(曲線下面積)の以下の平均増加が観察された:」(段落【0105】) 「ミガラスタットと同時投与した後の全患者の血漿α-Gal A活性AUCの増加を図2に示す。図3は、各試料採取時間点の部分AUCを示し、これは、0.5mg/kg又は1.0mg/kgアガルシダーゼベータと150mgミガラスタットとの同時投与による血漿α-Gal A活性の活性増加を示す。」(段落【0106】) 「ミガラスタットによる皮膚α-Gal-A活性の増加 ERT単独(期間1)と比べたミガラスタットとの同時投与(期間2)について、皮膚α-Gal A活性の以下の平均増加が観察された:」(段落【0107】) 「0.5mg/kg又は1.0mg/kgアガルシダーゼベータと150mgミガラスタットとの同時投与後の皮膚α-Gal A活性の増加を図4~図6に示す。」(段落【0108】) 「ミガラスタットによるPBMC α-Gal-A活性の増加 ERT単独(期間1)と比べたミガラスタットとの同時投与(期間2)について、PBMC α-Gal A活性の以下の平均増加が観察された:」(段落【0109】) 「0.5mg/kg又は1.0mg/kgアガルシダーゼベータと150mgミガラスタットとの同時投与後のPBMC α-Gal A活性の増加を図7~図9に示す。 結論:・・・ 7日目、4人の患者の皮膚で同時投与後にα-ガラクトシダーゼA活性が増加した」(段落【0110】~【0112】) そうすると、実施例2は、その「方法」について、「(2)ERT+150mgミガラスタット経口錠剤(単回用量)同時投与、ERTの2時間前にミガラスタットを投与」(段落【0100】)と記載されていることから、期間(2)において同時投与、または、ERTの2時間前にミガラスタットの投与を行うものであり、ERTの2時間前にミガラスタットの投与を行うものは、本願発明の「「1-デオキシガラクトノジリマイシンが、α-Gal A酵素補充療法剤の投与の最長約4時間前に投与され、α-Gal A酵素補充療法剤が、1-デオキシガラクトノジリマイシンに連続して投与される」を満足するが、その結果及び結論(段落【0105】~【0114】)に記載されているものは「同時投与」に関するもののみであって、2時間前投与に関する結果が一切記載されていない。 したがって、実施例2は、本願発明の効果を確認できる内容を含んでいない。 なお、仮に、「同時投与」が「ERTの2時間前にミガラスタットを投与」を指している用語であるとしても、実施例2は、「ERT単独(期間1)」と比べて優位な結果が得られたというものであり、「ERT単独(期間1)」は、引用例1発明に対応しない。 そうすると、仮に、「同時投与」が「ERTの2時間前にミガラスタットを投与」を指しているとしても、実施例2は、引用例1発明と比較して本願発明において有利な効果を奏することに関する内容を含まない。 実施例3(段落【0115】~【0136】)について、発明の詳細な説明には以下の記載がある。下線は、当審による。 「本例の目的は、ファブリー病と診断された男性においてERT(アガルシダーゼ)と同時投与される2つの用量のミガラスタットHCl(150mg及び450mg)の安全性及びPKを評価することである。」(段落【0116】) 「・期間2:ミガラスタットHCl(150mg)を経口投与、その2時間後にERT(期間1と同用量)の静脈内注入。」(段落【0117】)、 「対象者は、ある回の注入でその現行の用量及びレジメンのアガルシダーゼベータ単独(0.5又は1.0mg/kgで約2時間)の投与を受け、続いてその次回の注入でアガルシダーゼベータの2時間前にミガラスタットHCl 150mgの経口投与を受ける。」 「期間2では、全ての患者がアガルシダーゼベータの開始2時間前に150mgミガラスタットHClを同時投与された。」(段落【0127】) 「血漿α-Gal A活性:・・・1.0mg/kgアガルシダーゼベータと150mgミガラスタットHClとの併用治療により、1.0mg/kgアガルシダーゼベータ単剤療法による治療と比較して、対象者A及びBについてそれぞれ2.2倍及び1.6倍のα-Gal A活性の増加が得られた。」(段落【0129】) 「結論 150mgミガラスタットの0.5mg/kg及び1.0mg/kgアガルシダーゼベータとの相互作用により、血漿、皮膚、及びPBMCにおけるα-Gal A活性の増加が得られた。150mgミガラスタットHClとアガルシダーゼベータとの同時投与は、概して安全であり、十分に忍容された。」(段落【0136】) そうすると、実施例3も、「・期間2:ミガラスタットHCl(150mg)を経口投与、その2時間後にERT(期間1と同用量)の静脈内注入。」(段落【0117】)などの記載があるものの、その結論(段落【0136】)に記載されているものは「同時投与」に関するもののみであって、2時間前投与に関する結果が一切記載されていない。 したがって、実施例3も、本願発明の効果を確認できる内容を含んでいない。 なお、仮に、「同時投与」が「ERTの2時間前にミガラスタットを投与」を指している用語であるとしても、実施例3は、「アガルシダーゼベータ単剤療法」と比べて優位な結果が得られたというものであり、「アガルシダーゼベータ単剤療法」は、引用例1発明に対応しない。 そうすると、仮に、「同時投与」が「ERTの2時間前にミガラスタットを投与」を指しているとしても、実施例3は、引用例1発明と比較して本願発明において有利な効果を奏することに関する内容を含まない。 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書(3頁13行~4頁19行)において、 「しかしながら、審査官殿がご参照された、例えば引用文献2(当審注:引用例1に該当する。)の段落[0111]には、「投与の時機:補充タンパク質及びASSCが個別製剤中に含まれる場合は、同時に投与しても良く、又は・・・その後に投与してもよい。或いは・・・前に投与してもよい。」等と記載されているに留まり、単に、投与に関する、非特定の選択肢が記載されているに過ぎません。」、「そして、例えば、引用文献2の段落[0103]に・・・つまり、引用文献2は、共に調製された製剤に関するので、1-デオキシガラクトノジリマイシンと酵素が同時に投与されることを記載しています。」、「また、インビボでの安定化について、引用文献2の段落[0129]には・・・つまり、引用文献2は、インビボでの適用に関連し、循環中の既に投与されたタンパク質をその後のASSC投与により安定化するものです。」 と主張している。 しかしながら、段落【0111】は、「投与の時機:」との記載で始まるものであり、かつ、段落【0103】よりも後に記載されていることも踏まえると、段落【0103】の記載も踏まえた上で、引用例1発明の「投与の時機」に関してまとめた記載であると認められる。 よって、引用例1発明の投与の時機は、「同時に」、「その後に」、「前に」のいずれも選択できると解すべきである。 また、段落【0129】は、実施例3に関するものであるから、その記載内容は、実施例3に関するものあって、引用例1発明全体に関して説明している記載ではない。 よって、審判請求人の主張は、採用できない。 したがって、本願発明は、引用例1~4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-003067

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