特許拒絶査定不服審判
2017-000928
超音波探触子および超音波診断装置
- 審判番号
- 2017-000928
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-554125
- 請求日
- 2017年01月23日
- 審決日
- 2017年12月08日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】鷲田 公一
- 【請求人代理人】木曽 孝
- 審判長/審判官
- 審判長 小林 紀史
- 審判官 清水 稔
- 審判官 ▲うし▼田 真悟
- 分類
- P18 .113-WY (A61B) / P18 .121-WY (A61B) / P18 .161-WY (A61B) / P18 .537-WY (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-554125「超音波探触子および超音波診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開、WO2013/031168、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年8月27日(優先権主張 平成23年8月31日(以下、「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、平成28年3月3日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月11日付けで手続補正がなされたが、平成28年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月23日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成29年8月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年10月20日付けで手続補正がなされたものである。
第2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1~11に係る発明について
先願1
理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(請求項1~4、6~8、10、11に係る発明について)
引用例1、及び引用例2
(請求項5に係る発明について)
引用例1、引用例2、及び引用例3
(請求項9に係る発明について)
引用例1、引用例2、及び引用例4
引 用 文 献 等 一 覧
先願1:特願2010-235809号(特開2012-85872号)
引用例1:特開昭59-103655号公報
引用例2:特開2001-171344号公報
引用例3:特開2007-68918号公報
引用例4:特開平2-507号公報
第3 本願発明
本願の請求項1~10に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明10」という。)は、平成29年10月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1~10は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
圧電体と、
前記圧電体に設けられた信号線側電極と、
前記圧電体に設けたグラウンド線側電極とを備え、
前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間に電圧が印加されることにより、前記圧電体から超音波を放射するように構成された超音波探触子において、
前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段を備え、
前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にすることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
前記超音波探触子は超音波診断装置本体と接続又は通信可能に構成され、
前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号とは、前記超音波診断装置本体に接続された複数の超音波探触子の中から前記超音波探触子を選択しないことを制御する信号、診断の停止を制御する信号、又は、前記超音波診断装置本体の電源を切ることを制御する信号である請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記短絡状態から前記開放状態に切り替え、かつ、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記開放状態から前記短絡状態に切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記短絡・開放切替手段は、マルチプレクサであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記信号線側電極に接続された信号線と、
前記グラウンド線側電極に接続されたグラウンド線とを備え、
前記短絡・開放切替手段は、前記信号線と前記グラウンド線との間を短絡状態とする位置と、開放状態とする位置の間を前記制御信号により移動可能である短絡板を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により、
前記短絡板を移動させて前記信号線と前記グラウンド線間を開放状態にし、かつ、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡板を移動させて前記信号線と前記グラウンド線との間を短絡板により短絡状態にすることを特徴とする請求項5記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により、前記短絡板を前記信号線と前記グラウンド線とを短絡状態とする位置に移動させて前記短絡状態にすることを特徴とする請求項5記載の超音波探触子。
【請求項8】
前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡する着脱可能な短絡コネクタを備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項9】
前記短絡・開放切替手段に前記制御信号を供給する制御部を有する請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子と、
前記短絡・開放切替手段に前記制御信号を供給する制御部を有する超音波診断装置本体とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。」
第4 当審拒絶理由について
1 当審で通知した拒絶理由の理由1(特許法第29条の2)について
(1)先願引用例及び先願発明
当審における拒絶理由で引用された、特願2010-235809号(特開2012-85872号)(以下、「先願引用例」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「【0001】
本発明の実施の形態は、超音波診断装置及び超音波プローブに関する。」
イ 「【0012】
超音波プローブ3は、図1に示すように、接続端子31と、コネクタ32と、接続機構33と、ケーブル34と、超音波送受信部35とを有する。接続端子31は、後述する超音波送受信部35への送信信号や超音波送受信部35からの受信信号が送受信されるための信号線を装置本体2に接続する端子である。接続端子31は、装置本体2の種類に対応した種々の形状を有している。」
ウ 「【0016】
図3に示すように、超音波送受信部35は、音響レンズ351と、音響整合層352と、FPC(Flexible Printed Circuits)353と、圧電振動子354と、背面材(バッキング材)355とを有する。
【0017】
音響レンズ351は、超音波を収束させる。音響整合層352は、圧電振動子354と被検体との間の音響インピーダンスの不整合を緩和する。FPC353は、圧電振動子354と電気信号を送受信する。図示していないが、FPC353は、信号線36と接続されている。
【0018】
圧電振動子354は、装置本体2から供給される送信信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を受信して受信信号を生成する。図示していないが、圧電振動子354は、複数の圧電振動子から構成されており、圧電振動子それぞれが、超音波を発生し、受信信号を生成する。背面材355は、圧電振動子354から後方への超音波の伝播を防止する。」
エ 「【0022】
第1の実施形態に係る超音波診断装置1のコネクタ32の構成について、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のコネクタ32の構成を説明するための図である。図4の(A)に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1のコネクタ32は、オープン/ショート切替基板321と、ショート端子322と、コア(鉄心)323と、ソレノイド(solenoid)324と、アクチュエータ(actuator)制御線325とを有している。
【0023】
オープン/ショート切替基板321は、後述するショート端子322との接触又は離間により、圧電振動子354の電極がGNDに接続された短絡状態と、前記電極がGNDに接続されていない開放状態とを任意の時期で切り替える。具体的には、オープン/ショート切替基板321は、図4の(A)に示すように、ケーブル34に含まれている全ての信号線36が通過する基板であり、ショート端子322との接触又は離間により、圧電振動子354の全ての電極がGNDに接続された短絡状態と、前記電極がGNDに接続されていない開放状態とを切り替える。」
オ「【0031】
しかしながら、オープン/ショート切替基板321及びショート端子322により、圧電振動子354の電極に係る電気回路を図5の(D)に示す短絡状態にすることで、圧電振動子354に発生した焦電電荷がGND端子38に流れることとなる。すなわち、圧電振動子354の電極に係る電気回路を短絡状態にしておくことで、仮に、圧電振動子354に熱負荷がかかった場合でも、脱分極が発生することがなく、超音波プローブ3の性能が低下することもない。なお、超音波診断装置1による超音波診断を行う場合には、圧電振動子354の電極に係る電気回路を図5の(C)に示す開放状態にすることで、超音波プローブ3を駆動するために必要な電圧を印加することができる。」
カ 「【0036】
上述したように、オープン/ショート切替基板321及びショート端子322は、アクチュエータ制御線325を介して装置本体2から供給される電流によって短絡状態と開放状態とを切り替える。この装置本体2からの電流供給のタイミングは、超音波診断装置1の操作者が任意に決定できる。すなわち、短絡状態と開放状態とは、操作者が任意に切り替えることが可能である。以下では、短絡状態から開放状態への切り替えのタイミングの例と、開放状態から短絡状態への切り替えのタイミングの例を、図6及び図7を用いて説明する。
【0037】
図6は、短絡状態から開放状態への切り替えのタイミングの例を説明するための図である。図6に示すように、短絡状態から開放状態への切り換えは、装置本体2に超音波プローブ3を接続してから超音波診断を開始するまでの間、いくつかのタイミングで行うことができる。
【0038】
例えば、超音波診断を行うまでに、まず、超音波プローブ3が装置本体2に取り付けられる。この時点では、超音波プローブ3は、装置本体2と物理的に接続された状態であり、図6に示すように、短絡状態である。
【0039】
そして、超音波プローブ3が超音波診断に用いられるプローブとして選択された場合に(例えば、複数の超音波プローブの中から超音波診断に用いられるプローブとして選択された場合に)、装置本体2から超音波プローブ3への通電が可能になる。従って、装置本体2は、アクチュエータ制御線325を介してソレノイド324に電流を供給することができる。すなわち、図6に示すように、操作者は、このタイミングで短絡状態から開放状態へ切り替えることが可能である。
【0040】
ここで、開放状態への切り換えを行わなかった場合には、次に、図6に示すように、装置条件の決定時に短絡状態から開放状態へ切り替えることが可能である。すなわち、操作者は、超音波診断に係る各種設定事項などを入力するのと同時に、短絡状態から開放状態へ切り替えることが可能である。
【0041】
さらに、装置条件の決定時に開放状態への切り換えを行わなかった場合でも、図6に示すように、超音波プローブ3に電圧を印加するタイミングで開放状態になっていればよく、電圧印加の直前(フリーズボタン解除の直前)に切り替えることも可能である。圧電振動子354の脱分極を極力防止するためには、電圧印加の直前に開放状態へ切り替えることが最も効果的である。
【0042】
図7は、開放状態から短絡状態への切り替えのタイミングの例を説明するための図である。図7に示すように、開放状態から短絡状態への切り換えは、超音波診断の終了時から超音波プローブ3を装置本体2から取り外すまでの間、いくつかのタイミングで行うことができる。
【0043】
例えば、図7に示すように、超音波プローブ3の駆動を停止した時点(電圧印加を停止した時点)で開放状態から短絡状態に切り替えることが可能である。ここで、短絡状態への切り換えを行わなかった場合には、次に、図7に示すように、装置本体2から超音波プローブ3への通電を停止する時点で開放状態から短絡状態へ切り替えることが可能である。
【0044】
装置本体2から超音波プローブ3への通電を停止すると、自動的に装置本体2からソレノイド324への電流の供給も停止する。従って、超音波プローブ3を取り外す時点では、図7に示すように、圧電振動子354の電極に係る電気回路は、短絡状態となっている。
【0045】
上述したように、短絡状態と開放状態との切り換えは、操作者が任意のタイミングで行うことができる。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、装置本体2と超音波プローブ3との間で通電されたか否かにより、自動的に切り替えるように設定することも可能である。
【0046】
上述したように、第1の実施形態によれば、オープン/ショート切替基板321及びショート端子322が、超音波プローブ3における圧電振動子354の電極がGND端子38に接続された状態である短絡状態と、圧電振動子354の電極がGND端子38に接続されていない状態である開放状態とを任意の時期に切り替える。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、圧電振動子354の脱分極の主要因である焦電電荷をGND(グランド)に流すことで、脱分極の発生を抑止する。その結果、第1の実施形態に係る超音波診断装置1では、超音波プローブ3の性能の低下を防止することを可能とする。」
キ 「【0064】
(3)オープン/ショート切替基板及びショート端子の配置
上述した第1の実施形態では、オープン/ショート切替基板及びショート端子がコネクタ32に備えられる場合について説明した。しかしながら、開示の技術はこれに限定されるものではなく、例えば、オープン/ショート切替基板及びショート端子が超音波送受信部35に備えられる場合であってもよい。
【0065】
かかる場合には、例えば、ソレノイドアクチュエータ機構を超音波送受信部35に備え、ケーブル34を介して装置本体2から電流を供給するように、超音波プローブ3の構成を変更すればよい。」
ク 図5の(C)には、圧電振動子354の一方の電極に電圧印加端子361が接続され、他方の電極にGND端子38が接続され、(切替部により)両電極が開放状態とされている回路が示され、図5の(D)には、圧電振動子354の一方の電極に電圧印加端子361が接続され、他方の電極にGND端子38が接続され、(切替部により)両電極が接地部に接続された状態である短絡状態とされている回路が示されている。
ケ 段落【0031】に記載された「図5の(C)に示すに示す開放状態」及び「図5の(D)に示すに示す短絡状態」に対して上記「ク」で述べたことをあてはめると、段落【0031】、図5の(C)及び図5の(D)より、「圧電振動子354の一方の電極に電圧印加端子361が接続され、他方の電極にGND端子38が接続され、オープン/ショート切替基板321及びショート端子322により、圧電振動子354の電極に係る電気回路を接地部に接続された短絡状態にすることで、圧電振動子354に発生した焦電電荷がGND端子38に流れるようにし、超音波診断装置1による超音波診断を行う場合には、圧電振動子354の電極に係る電気回路を開放状態にすることで、超音波プローブ3を駆動するために必要な電圧を印加する」との技術事項を読み取ることができる。
先願引用例の当初明細書等の段落【0065】には「ソレノイドアクチュエータ機構を超音波送受信部35に備え、ケーブル34を介して装置本体2から電流を供給する」「超音波プローブ3」の構成が記載されているから、先願引用例には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「オープン/ショート切替基板及びショート端子、ソレノイドアクチュエータ機構を超音波送受信部35に備え、ケーブル34を介して装置本体2から電流を供給する、超音波プローブ3(段落【0064】~【0065】より)であって、
超音波プローブ3は、接続端子31と超音波送受信部35とを有し(段落【0012】より)、
超音波送受信部35は、圧電振動子354を有し(段落【0016】より)、
圧電振動子354は、装置本体2から供給される送信信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を受信して受信信号を生成し(段落【0018】より)
圧電振動子354の一方の電極に電圧印加端子361が接続され、他方の電極にGND端子38が接続され、オープン/ショート切替基板321及びショート端子322により、圧電振動子354の電極に係る電気回路を接地部に接続された短絡状態にすることで、圧電振動子354に発生した焦電電荷がGND端子38に流れるようにし、超音波診断装置1による超音波診断を行う場合には、圧電振動子354の電極に係る電気回路を開放状態にすることで、超音波プローブ3を駆動するために必要な電圧を印加し(上記「ケ」より)、
オープン/ショート切替基板321及びショート端子322は、アクチュエータ制御線325を介して装置本体2から供給される電流によって短絡状態と開放状態とを切り替え(段落【0036】より)、
短絡状態から開放状態への切り換えは、装置本体2に超音波プローブ3を接続してから超音波診断を開始するまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ(段落【0037】より)、
開放状態から短絡状態への切り換えは、超音波診断の終了時から超音波プローブ3を装置本体2から取り外すまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ(段落【0042】より)、
短絡状態と開放状態との切り換えは、操作者が任意のタイミングで行うことができるが、例えば、装置本体2と超音波プローブ3との間で通電されたか否かにより、自動的に切り替えるように設定することも可能である(段落【0037】より)、
超音波プローブ3。」
(2)本願発明1との対比
本願発明1と先願発明とを対比する。
ア 先願発明における「圧電振動子354」は、圧電体で構成されるものであるから、本願発明1における「圧電体」に相当する。
イ 先願発明では「圧電振動子354の一方の電極に電圧印加端子361が接続され、他方の電極にGND端子38が接続され」るから、先願発明における「電圧印加端子361が接続され」る「圧電振動子354の一方の電極」が、本願発明1における「前記圧電体に設けられた信号線側電極」に相当し、先願発明における「GND端子38が接続され」る「圧電振動子354」の「他方の電極」が、本願発明1における「前記圧電体に設けたグラウンド線側電極」に相当する。
ウ 先願発明における「超音波プローブ3」は、「超音波送受信部35」を有し、「超音波診断装置1による超音波診断を行う場合には、圧電振動子354の電極に係る電気回路を開放状態にすることで、超音波プローブ3を駆動するために必要な電圧を印加」するものである。よって、先願発明における「超音波プローブ3」が、本願発明1における、「圧電体」の「前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間に電圧が印加されることにより、前記圧電体から超音波を放射するように構成された超音波探触子」に相当する。
エ 先願発明における「オープン/ショート切替基板321及びショート端子322」は、「アクチュエータ制御線325を介して装置本体2から供給される電流によって短絡状態と開放状態とを切り替え」るものであって、しかも「短絡状態から開放状態への切り換えは、装置本体2に超音波プローブ3を接続してから超音波診断を開始するまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ」、「開放状態から短絡状態への切り換えは、超音波診断の終了時から超音波プローブ3を装置本体2から取り外すまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ」るものである。
よって、先願発明における「オープン/ショート切替基板321及びショート端子322」が、本願発明1における「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段」に相当するといえる。
オ 同様に、先願発明における「短絡状態から開放状態への切り換えは、装置本体2に超音波プローブ3を接続してから超音波診断を開始するまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ」、「開放状態から短絡状態への切り換えは、超音波診断の終了時から超音波プローブ3を装置本体2から取り外すまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ」、「オープン/ショート切替基板321及びショート端子322」を、「アクチュエータ制御線325を介して装置本体2から供給される電流によって短絡状態と開放状態とを切り替え」ることと、
本願発明1における「前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にすること」とは、
「前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の使用の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にすること」の点で共通するといえる。
よって、本願発明1と先願発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「圧電体と、
前記圧電体に設けられた信号線側電極と、
前記圧電体に設けたグラウンド線側電極とを備え、
前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間に電圧が印加されることにより、前記圧電体から超音波を放射するように構成された超音波探触子において、
前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段を備え、
前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の使用の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にすることを特徴とする超音波探触子。」
(相違点)
本願発明1では、信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間の開放状態への切り替えを「前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により」行っているのに対し、
先願発明では、「短絡状態から開放状態への切り換えは、装置本体2に超音波プローブ3を接続してから超音波診断を開始するまでの間、いくつかのタイミングで行うことができ」、「短絡状態と開放状態との切り換えは、操作者が任意のタイミングで行うことができるが、例えば、装置本体2と超音波プローブ3との間で通電されたか否かにより、自動的に切り替えるように設定することも可能である」ことが示されているに過ぎない点。
(3)判断
ア そこで、上記相違点に係る本願発明1の構成が、先願引用例に実質的に記載されているか否かについて検討すると、先願引用例の当初明細書等には、整理すると、「短絡状態から開放状態への切り換え」が行われる場合の具体例として、次の(ア)、(イ)が記載されている。
(ア)操作者は、次のa~cの場合に、短絡状態から開放状態へ切り替えることが可能である(段落【0039】、【0040】参照。)。
a 超音波プローブ3が超音波診断に用いられるプローブとして選択された場合(段落【0039】参照。)。
b 超音波診断に係る各種設定事項などを入力するのと同時(段落【0040】参照。)。
c 電圧印加の直前(フリーズボタン解除の直前)(段落【0041】参照。)。
(イ)装置本体2と超音波プローブ3との間で通電されたか否かにより、自動的に切り替えるように設定することが可能である(段落【0045】参照。)。
イ しかし、先願引用例の当初明細書等には、「超音波探触子の接続確認」について言及がなされておらず、したがって「超音波探触子の接続確認」を「短絡状態と開放状態との切り換え」の契機とすることは何ら記載されていない。
よって、先願引用例の当初明細書等には、上記相違点に係る本願発明1の構成のように「前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により」、「短絡状態から開放状態への切り換え」を行うことが実質的に記載されているとはいえない。
ウ したがって、上記相違点は実質的な相違点であるから、本願発明1が先願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(3)本願発明2~10について
本願発明2~9は、本願発明1の、信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間の開放状態への切り替えを「前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により」行なう構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、先願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
また、本願発明10は、「請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子」を備えたことを特徴とする「超音波診断装置」であるから、本願発明1~8と同じ理由により、先願の当初明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
2 当審で通知した拒絶理由の理由2(特許法第29条第2項)について
(1)引用例及び当審引用発明等
ア 引用例1について
当審における拒絶理由で引用された特開昭59-103655号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「本発明は電子走査型超音波診断装置に関し、特に探触子を構成する各超音波振動子の送受信の特性のバラツキを補正する超音波診断装置に関する。」(第1頁右下欄第4~7行)
(イ)「また圧電体には焦電性が伴うので急激な温度変化によって電極に電荷が誘起され、この電荷がつくる電場が圧電体の自発分極を損う。この場合についてもPZTの熱伝導性が良く無いために表面付近とバルクな部分には温度差が生じ、焦電効果の現れ方の違いから分極の劣化の不均一を引き起こす。以上の様に探触子は製造時には勿論、保存状態によつては経時的にも各超音波振動子の圧電定数・弾性定数・静電容量に不揃いが出て来る。」(第3頁左上欄第18行~同頁右上欄第7行)
よって、引用例1には、次の発明(以下、「当審引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「電子走査型超音波診断装置の探触子は、超音波振動子によって構成されるが、保存状態によつては、圧電体に焦電性が伴うので急激な温度変化によって電極に電荷が誘起され、この電荷がつくる電場が圧電体の自発分極を損う、探触子。」
イ 引用例2について
当審における拒絶理由で引用された特開2001-171344号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「圧電センサが発生した電荷を放電するための放電手段を設けることで外気温の変化などの影響を受けて圧電センサに焦電効果による電荷が発生しても放電手段により電荷を速やかに消滅させることができる」(段落【0037】、第5頁第8欄第28~31行)
(イ)「放電制御部34はこの信号線9aのローレベルからハイレベルへの変化を検出すると約10ミリ秒間ハイレベルの信号をリレー駆動部32に向けて出力しリレーの開閉部30を閉成させて圧電センサ6に蓄積された電荷を放電させる。」(段落【0035】、第5頁第8欄第14~18行、図12)
ウ 引用例3について
当審における拒絶理由で引用された特開2007-68918号公報(以下、「引用例3」という。)には、「使用していない超音波トランスデューサ群を電気的に短絡する」(段落【0050】)ため、切り換え器20、67(図1、図4)を用いることが記載されている。
エ 引用例4について
当審における拒絶理由で引用された特開平2-507号公報(以下、「引用例4」という。)には、保管状態において、環境温度の変化によって電荷が発生し、圧電素子の分極が破壊される(第2頁左上欄第12~18行参照。)ことがないようにするため、圧電素子の電極端子を電気的に短絡する導電クリップを装着し、環境温度の変化に伴って発生する圧電素子の電荷を放電させること(第3頁左上欄第20行~同頁右上欄第14行参照。)が記載されている。
(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と当審引用発明1とを対比する。
当審引用発明1における「圧電体」が、本願発明1における「圧電体」に相当する。また、「超音波振動子」は、それを構成する「圧電体」に「信号線側電極」と「グラウンド線側電極」が設けられ、両電極との間に電圧が印加されることにより、前記超音波振動子を構成する圧電体から超音波が放射されるよう構成されているものである。
したがって、本願発明1と当審引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「圧電体と、
前記圧電体に設けられた信号線側電極と、
前記圧電体に設けたグラウンド線側電極とを備え、
前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間に電圧が印加されることにより、前記圧電体から超音波を放射するように構成された超音波探触子。」
(相違点)
本願発明1では、「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段を備え、前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にする」ものであるのに対し、
当審引用発明1では、「保存状態」つまり、「超音波振動子」の不使用時には、「圧電体に焦電性が伴うので急激な温度変化によって電極に電荷が誘起され、この電荷がつくる電場が圧電体の自発分極を損う」ことが示されているに過ぎない点。
イ 相違点についての判断
そこで上記相違点について検討すると、上記相違点に係る本願発明1の構成は引用例2~4の何れにも記載されておらず、本願優先日前における周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、当審引用発明1、引用例2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(3)本願発明2~10について
本願発明2~9は、本願発明1の、「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段を備え、前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にする」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、当審引用発明1、引用例2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、本願発明10は、「請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子」を備えたことを特徴とする「超音波診断装置」であるから、本願発明1~8と同じ理由により、当業者であっても、当審引用発明1、引用例2~4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第7 原査定についての判断
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
理由1(特許法第36条第6項第1号)について
・請求項 1-5,7,8,10-13
備考
超音波探触子において、使用時又は不使用時のいずれか一方の時に生成される制御信号により、…短絡状態と開放状態とに切り替えることを規定しているだけであり、超音波探触子の使用時に対応する構成、及び不使用時に対応する構成とがそれぞれ記載されていない。
よって、請求項1-5,7,8,10-13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
理由2(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項 1,4,12,13
・引用文献等 1
理由3(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-13
・引用文献等 1-5
<引用文献等一覧>
1.特開2010-279575号公報
2.特開2007-228997号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-329626号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-201120号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2002-85402号公報(周知技術を示す文献)
2 引用文献等
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2010-279575号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「【0001】
本発明は、超音波診断装置用の送信制御装置に関する。」
イ 「【0014】
まず、図1を参照して、実施の形態の電圧制御回路20を備える、超音波診断装置の送信制御系を概略的に示す図である。
【0015】
図1において、送信駆動パルス回路10は、電源ユニット12から出力される正負の高電圧"+HV"及び"-HV"をスイッチングすることで、超音波プローブ(図示省略)中の振動子16に供給する正負両極性を持つ駆動パルスを生成する。電源ユニット12は、出力電圧("+HV"及び"-HV")の大きさが可変の電源装置である。制御ソフトウエア14は、超音波診断装置を制御するソフトウエアであり、この実施の形態では、特に電源ユニット12の目標電圧(大きさ、すなわち絶対値)を指定する。この目標電圧は、送信駆動パルス回路10が超音波振動子16に供給する駆動パルスの大きさに対応する。目標電圧は、ユーザが入力装置を介して制御ソフトウエア14に入力する場合もあれば、表示モードの切替などといった制御ソフトウエア14の制御動作に応じて制御ソフトウエア14が指定する場合もある。
【0016】
ここで、送信駆動パルス回路10の構成を更に詳しく説明する。
【0017】
電源ユニット12の正負の各端子は、それぞれ、スイッチング素子Q1及びQ3を介して、送信駆動パルス回路10の出力端18に接続されている。スイッチング素子Q1は、例えばnチャネルMOSFETで構成され、そのゲートは、Q1用の制御信号を増幅するアンプIC1に対し、キャパシタC1を介して接続されている。また、スイッチング素子Q1のゲートは、抵抗R1を介して、電圧ユニット12の負側の出力に接続される。Q1は、そのゲート電圧が電圧ユニット12の負の出力電圧"-HV"であるときにオフ状態であるように構成される。
【0018】
スイッチング素子Q3は、例えばpチャネルMOSFETで構成され、そのゲートは、Q3用の制御信号を増幅するアンプIC3に対し、キャパシタC2を介して接続されている。また、スイッチング素子Q3のゲートは、抵抗R2を介して、電圧ユニット12の正側の出力に接続される。Q2は、そのゲート電圧が電圧ユニット12の正の出力電圧"+HV"であるときにオフ状態であるように構成される。
【0019】
また、出力端18は、スイッチング素子Q2を介して基準電位であるグラウンドに接続されている。Q2と出力端18との間には、Q2に負電圧パルスが印加されないようにするためのダイオードD1が配置される。Q2は、例えばnチャネルMOSFETで構成され、そのゲートはQ2用の制御信号を増幅するアンプIC2の出力に直接接続されている。
【0020】
なお、出力端18には、互いに逆向きに並列接続された一対のダイオードD2,D3が設けられる。これは、Q2を介して基準電位と短絡している出力端18から受信信号を保護するための構成である。受信信号は小信号であるため、ダイオードの接合電位差によってQ1から隔絶することができる。
【0021】
この回路10では、正極の駆動パルスを発信する場合、IC3経由のQ3用の制御信号(ゲートパルス)によりスイッチング素子Q3がオン(閉成)し、これにより出力端18の電位が0(V)から+HV(V)へと変化する。このとき、スイッチング素子Q1及びQ2は、それぞれ対応する制御信号によりオフ(開成)されている。
【0022】
この正極パルスの期間の後、スイッチング素子Q3はオフされ、スイッチング素子Q2がオンされる。これにより、出力端18は基準電位(グラウンド・レベル)に接続されるので、出力端18の電位は0(V)へと急速に戻される。
【0023】
また、負極の駆動パルスを発信する場合は、IC1経由のQ1用の制御信号によりスイッチング素子Q1がオン(閉成)し、これにより出力端18の電位が0(V)から-HV(V)へと変化する。このとき、スイッチング素子Q1は制御信号によりオフされている。なお、ダイオードD1によりスイッチング素子Q2には負の信号は印加されないので、Q1がオンしている期間、Q2がオンしていてもよい。」
(当審注:段落【0018】の「Q2は、」は、図1よりみて、「Q3は、」の誤記である。)
ウ 図1には、振動子16が圧電素子で構成され、その一方の電極が送信駆動パルス回路10の出力端18が接続され、他方の電極が基準電位(グラウンド・レベル)に接続されていることが示されている。
よって、引用文献1には、次の発明(以下、「原査定引用発明1」という。)が記載されている
「電圧制御回路20を備える、超音波診断装置の送信制御系であって(段落【0014】より)、
送信駆動パルス回路10は、電源ユニット12から出力される正負の高電圧"+HV"及び"-HV"をスイッチングすることで、超音波プローブ中の振動子16に供給する正負両極性を持つ駆動パルスを生成し(段落【0015】より)、
電源ユニット12の正負の各端子は、それぞれ、スイッチング素子Q1及びQ3を介して、送信駆動パルス回路10の出力端18に接続されており(段落【0017】より)、
出力端18は、スイッチング素子Q2を介して基準電位であるグラウンドに接続されており(段落【0017】より)、
Q2のゲートはQ2用の制御信号を増幅するアンプIC2の出力に直接接続されており(段落【0019】より)、
回路10では、正極の駆動パルスを発信する場合、Q3用の制御信号(ゲートパルス)によりスイッチング素子Q3がオン(閉成)し、これにより出力端18の電位が0(V)から+HV(V)へと変化するが、このとき、スイッチング素子Q1及びQ2は、それぞれ対応する制御信号によりオフ(開成)され、この正極パルスの期間の後、スイッチング素子Q3はオフされ、スイッチング素子Q2がオンされ、これにより、出力端18は基準電位(グラウンド・レベル)に接続されるので、出力端18の電位は0(V)へと急速に戻され、また、負極の駆動パルスを発信する場合は、Q1用の制御信号によりスイッチング素子Q1がオン(閉成)し、これにより出力端18の電位が0(V)から-HV(V)へと変化するが、このとき、スイッチング素子Q1は制御信号によりオフされており(段落【0021】~【0023】より)、
振動子16は圧電素子で構成され、その一方の電極が送信駆動パルス回路10の出力端18が接続され、他方の電極が基準電位(グラウンド・レベル)に接続されている(上記「ウ」より)、
超音波診断装置の送信制御系(段落【0014】より)。」
(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2007-228997号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の技術事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0021】
配線14は、ケーブル16、およびコネクタ部を介して、プロセッサ装置11に設けられたn個のマルチプレクサ(以下、MUXと表記する。)17に接続されている。MUX17は、N個の超音波トランスデューサ13の中から駆動させる超音波トランスデューサ13を選択的に切り替える。」
(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2004-329626号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の技術事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0029】
以上、説明した本実施形態によれば、次の効果がある。
(1)振動子1と送信回路系2、受信回路系3の間のマルチプレクサ回路系6の構成として、各送受信チャンネルを切り替える主スイッチ10の前後に、ノイズ除去スイッチ8,9を設け、これを例えばグランドに接続するようにした。主スイッチ10切り替え時、前記ノイズ除去スイッチ8,9をON動作させることにより、主スイッチ10切り替えノイズをグランドに流すことができる。
(2)上記動作により、送受信信号ラインに主スイッチ10切り替えノイズを重畳させることがない。
(3)上記(2)により、主スイッチ10切り替え時に生じる不要ノイズを抑制することが可能なため、不要な超音波送信および、不要な受信信号が送受信信号に重畳しない。
(4)以上により、超音波画像としてノイズの少ない診断しやすい画像の提供が可能となった。」
(4)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2010-201120号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の技術事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0041】
このような、超音波診断装置Sにおいては、操作入力部11を用いて操作する。例えば使用者は操作入力部11から超音波探触子2に第1超音波信号を送信するように操作する。従って、使用者が超音波探触子2を被検体Hに当接しない場合には、操作入力部11に第1超音波信号を送信しないように操作する。
【0042】
超音波探触子2の第1圧電部221を駆動することで、第1圧電部221において発熱が生じ寿命が劣化する。また、第1圧電部221で発生した発熱が第2圧電部223に伝播し、第2圧電部223の寿命が劣化する。第2圧電部223に有機圧電材料が使用される場合には、無機圧電材料に比べて劣化が大きくなる傾向がある。
【0043】
従って、使用者が超音波探触子2を超音波診断に使用しない場合には、第1圧電部221を駆動しないように制御する。」
(5)引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2002-85402号公報(以下、「引用文献5」という。)には、次の技術事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は超音波診断装置に関し、特にデジタルビームフォーマーを有する超音波診断装置の受信回路に関する。」
イ 「【0006】本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、A/D変換器などで生じるオフセット成分を除外して超音波画像の画質を向上させることにある。」
ウ 「【0040】図3には、他の実施形態の構成が示されている。なお、図1と同様の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0041】この実施形態においては、各振動素子10の入力に対して送信回路40が接続されており、各振動素子10と各送信回路40との間にはスイッチ42が設けられている。スイッチ42をA端子側にすると、振動素子10に対して送信回路40が接続され、スイッチ42をB端子側にすると、振動素子10に対してグランドが接続される。つまり、その場合には、振動素子10の入力側が接地される。
【0042】オフセット成分の検出及びオフセット補正を行う場合、上記スイッチ22又はスイッチ42が選択的に動作し、選択されたスイッチが当該経路点を接地する。スイッチ42のみが端子B側に切り換えられると、A/D変換器14の出力には、当該A/D変換器14で生起されたオフセット成分、プリアンプ12で生起されたオフセット成分、及び、振動素子10で発生し又はその入力側から回り込むオフセット成分が合成された全オフセット成分が現れることになる。よって、当該全オフセット成分をオフセット補正回路16で検出すれば、当該オフセット補正回路16で、そのような全オフセット成分を一括して除外することが可能となる。」
3 理由2、3(特許法第29条第1項第3号、同条第2項)について(本願発明1について)
(1)対比
本願発明1と原査定引用発明1とを対比する。
ア 原査定引用発明1における「振動子16」は、「圧電素子」で構成されているから、本願発明1における「圧電体」に相当する。
イ 原査定引用発明1における「超音波プローブ」は、「圧電素子」で構成された「振動子16」を備えているから、本願発明1における「超音波探触子」に相当する。
ウ 原査定引用発明1の「振動子16」を構成する「圧電素子」において、「その一方の電極」及び「他方の電極」は、それぞれ、「送信駆動パルス回路10の出力端18」及び「基準電位(グラウンド・レベル)」に接続されているから、それぞれ、本願発明1における「前記圧電体に設けられた信号線側電極」及び「前記圧電体に設けたグラウンド線側電極」に相当する。
エ 原査定引用発明1における「超音波プローブ中の振動子16」は「圧電素子で構成され」ているから、両電極との間に「駆動パルス」が印加されることにより、超音波を放射するように構成されていることは明らかである。
カ 原査定引用発明1における「スイッチング素子Q2」は、「振動子16」の接続された「送信駆動パルス回路10の出力端18」を「基準電位であるグラウンドに接続」するスイッチング素子であって、「正極の駆動パルスを発信する場合」、「Q2用の制御信号」により「オフ(開成)され」、「この正極パルスの期間の後」、「Q2用の制御信号」により「スイッチング素子Q2がオンされ、これにより、出力端18は基準電位(グラウンド・レベル)に接続される」ものである。
ここで、原査定引用発明1における「スイッチング素子Q2」は、「超音波診断装置の送信制御」として「超音波プローブ中の振動子16に供給する正負両極性を持つ駆動パルスを生成」する際に、「Q2用の制御信号」により「オン」「オフ(開成)」されるスイッチング素子であるから、本願発明1における「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段」とは、「制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段」の点で共通するといえる。
したがって、本願発明1と原査定引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「圧電体と、
前記圧電体に設けられた信号線側電極と、
前記圧電体に設けたグラウンド線側電極とを備え、
前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間に電圧が印加されることにより、前記圧電体から超音波を放射するように構成された超音波探触子において、
制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段を備えることを特徴とする超音波探触子。」
(相違点)
本願発明1では、「前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段」が、「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段」であって、「前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にする」ものであるのに対し、
原査定引用発明1では、「スイッチング素子Q2」は、「超音波診断装置の送信制御」として「超音波プローブ中の振動子16に供給する正負両極性を持つ駆動パルスを生成」する際に、「Q2用の制御信号」により「オン」「オフ(開成)」されるスイッチング素子である点。
(2)相違点についての判断
ア そこで上記相違点について検討すると、原査定引用発明1における「スイッチング素子Q2」は、「超音波診断装置」による超音波診断中に使用されるスイッチング素子であって、「送信駆動パルス回路10」が「電源ユニット12から出力される正負の高電圧"+HV"及び"-HV"をスイッチングすることで、超音波プローブ中の振動子16に供給する正負両極性を持つ駆動パルスを生成」する際、「正極パルスの期間の後」「スイッチング素子Q2がオンされ、これにより、出力端18は基準電位(グラウンド・レベル)に接続されるので、出力端18の電位は0(V)へと急速に戻され」るように用いられるスイッチング素子であるから、該「スイッチング素子Q2」を、「超音波診断装置」の使用時に「オフ(開成)」にしたのでは、上記スイッチング素子Q2の機能を果たし得ないことになる。
イ よって、原査定引用発明1における「スイッチング素子Q2」を、上記相違点に係る本願発明のように「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段」であって、「前記短絡・開放切替手段は、前記超音波探触子の接続確認の際に発生する信号により前記開放状態にし、前記超音波探触子の不使用時に生成される制御信号により前記短絡状態にする」ことには、阻害要因がある。
ウ したがって、上記相違点は、実質的な相違点であるから、原査定引用発明1は、本願発明1(原査定の対象とされた請求項1、4に対応する発明)ではない。
エ 次に、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献2~5の何れにも、記載されておらず、本願優先日前における周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、原査定引用発明1、引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
4 理由2、3について(本願発明2~9について)
ア 本願発明9(原査定の対象とされた請求項12に対応する発明)は、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものである。よって、本願発明1と同じ理由により、原査定引用発明1は、本願発明9(原査定の対象とされた請求項12に対応する発明)でない。
イ また、本願発明2~9は、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、原査定引用発明1、引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
5 理由2、3について(本件発明10について)
本願発明10は、「請求項1から8のいずれか一項に記載の超音波探触子」を備えたことを特徴とする「超音波診断装置」であるから、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同様の理由により、原査定引用発明1は、本願発明10(原査定の対象とされた請求項13に対応する発明)ではない。
また、本願発明10は、本願発明1~8と同じ理由により、当業者であっても、原査定引用発明1、引用文献2~5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
6 理由1(特許法第36条第6項第1号)について
平成29年10月20日付けの手続補正により、請求項1に「前記超音波探触子の使用時又は不使用時に生成される制御信号により、前記信号線側電極と前記グラウンド線側電極との間を短絡状態と開放状態とに切り替える短絡・開放切替手段を備え」との発明特定事項が付加された結果、請求項1~2、4~5、7~10(原査定における請求項1-5、7、8、10-13に対応)は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
よって、原査定の理由1を維持することはできない。
7 原査定についてのまとめ
以上のとおり、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-000928