特許拒絶査定不服審判
2017-000858
樹脂シートおよび回路基板
- 審判番号
- 2017-000858
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-106495外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月20日
- 審決日
- 2018年05月08日
- 公報発行日
- 2018年08月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ベークライト株式会社
- 【請求人代理人】速水 進治
- 分類
- P18 .121-WZ (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-106495号「樹脂シートおよび回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-212400号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成28年5月27日の出願であって、平成28年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成29年1月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において、平成30年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年3月15日に意見書及び明細書と特許請求の範囲とを補正する手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1~15に係る発明は、平成30年3月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に配置されていて、ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層と、を備える、ソルダーレジストに用いる樹脂シートであって、
前記樹脂層がBステージ状態であり、
動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hzの条件で測定した前記樹脂層の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が7Gpa以上40Gpa以下であり、
前記樹脂層の硬化物において、下記の測定方法により測定される、Cl-、Br-、Na+、K+からなる不純物イオンの濃度の合計値が、100ppm以下である、樹脂シート。
(不純物イオンの濃度の測定方法)
当該樹脂シートから前記キャリア基材を剥離した前記樹脂層を、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下に粉砕して得られた粉末試料2gをプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、粉末試料を水と馴染ませ、121℃に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離及びフィルターろ過したものを検液とし、当該検液をイオンクロマト法により分析することで測定する。」
2.当審の拒絶理由
当審において、平成30年1月15日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
〔理由〕
この出願の請求項1~16に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び引用文献2~3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2012-134567公報
引用文献2:特開2012-178586号公報
引用文献3:特開2012-146990号公報
引用文献4:特開2016-66789号公報
3.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
当審拒絶理由で引用した引用文献1には、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
ア
「【0022】
ここで、本発明に用いるソルダーレジスト層を形成する樹脂組成物について説明する。
ソルダーレジスト層を形成する樹脂組成物は、絶縁樹脂と無機充填材とを含む絶縁樹脂組成物より構成されたものであり、絶縁樹脂は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で構成されていることが好ましい。これにより、絶縁樹脂層の耐熱性を向上することができる。・・・」
イ
「【0037】
・・・
また、本発明のソルダーレジスト層を形成する樹脂組成物は、Naイオン、塩素イオンは各々10ppm以下であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の耐湿信頼性、特に高温加湿時の耐イオンマイグレーション性が向上する。
【0038】
前記樹脂組成物よりなるソルダーレジスト層を形成する方法としては、上記絶縁樹脂層を形成する方法を用いることができるが、中でも樹脂基材付き樹脂層において、樹脂層をソルダーレジスト層とした樹脂基材付きソルダーレジスト層をラミネートする方法が好ましい。・・・」
ウ
「【0048】
[実施例1]
・・・
【0050】
(ソルダーレジスト用樹脂組成物1の調整)
・・・
(ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルムの製造)
前項で得たソルダーレジスト1をPETフィルム基材上に、25μm程度の厚みで塗布し、120℃程度の温度で、5~10分間程度の熱処理を行うことにより、ソルダーレジスト中の溶剤を除去して、ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム1を製造した。」
・・・
【0053】
前記ビルドアップ多層配線板Bに、ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム1を真空ラミネートし、170℃にて30分プレ硬化した後、基材であるPETフィルムを剥離し、続いて200℃にて60分オーブン中で熱硬化させ、ソルダーレジスト層h1を形成したビルドアップ多層配線板Cを得た。(図13)」
エ
「【0060】
(評価用単層フィルムの作製)
実施例1~3で得た、絶縁樹脂層用樹脂付PETフィルム、ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム1、2、3(以下、これらを合わせて樹脂付PETフィルムと称する)のPETフィルムを剥離して得た、単層絶縁樹脂フィルム(表1では絶縁樹脂)、単層ソルダーレジストフィルム1、2、3(表1ではそれぞれSR1、SR2、SR3)、および比較例1で用いたドライフィルム型感光性ソルダーレジスト(PFR800-AUS402)(表1ではDF型)のフィルム単体を熱硬化後、ガラス転移温度、熱線膨張率α1・α2、Naイオン、塩素イオン不純物および1MHzにおける誘電率と誘電正接を以下に示す方法で測定した。
・・・
【0064】
[Naイオン、塩素イオン不純物測定]
上記で作製した樹脂付PETフィルム(樹脂厚30μm)からPETを剥離したものを、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下粉砕し、粉末試料3gをプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、試料を水と馴染ませた。125℃に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離したものを検液とした。その液をイオンクロマト法により分析した。
これらの測定結果を表1に示す。」
オ
段落【0065】の【表1】に「SR1」の「Naイオン不純物 ppm」が「7」であり、「塩素イオン不純物 ppm」が「6」であることが記載されている。
以上のア~オの記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「PETフィルム基材上に、ソルダーレジストを塗布し、ソルダーレジスト中の溶剤を除去して製造した、ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルムであって、
ソルダーレジスト層を形成する樹脂組成物は、下記の測定方法により測定される、Naイオン、塩素イオンが各々10ppm以下である、ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム。
(Naイオン、塩素イオン不純物の測定方法)
樹脂付PETフィルムからPETを剥離したものを、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下に粉砕し、粉末試料3gをプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、試料を水と馴染ませ、125℃に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離したものを検液とし、その液をイオンクロマト法により分析した。」
(2)引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由で引用した引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア
「【0001】
本発明は、プロセス加工性と信頼性に優れたエポキシ樹脂を絶縁材料として用いた半導体装置に関する。」
イ
「【0063】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物のイオン性不純物濃度は、1ppm以下であることが好ましい。ここで、イオン性不純物濃度とは、純水で抽出したイオン性不純物を高速液体クロマトグラフィーで測定した値を示す。抽出、121℃、2気圧、24時間の条件で行う。
また、イオン性不純物としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオン、ブロムイオン、燐酸イオン等の評価が適切である。これらのイオン性不純物濃度が1ppmを超えると、長期絶縁信頼性が低下しやすい傾向がある。」
(3)引用文献4に記載された事項
当審拒絶理由で引用した引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア
「【0017】
次に、図1~図3を参照して、本実施形態に係る配線基板20の製造方法について詳しく説明する。
【0018】
まず、構造体1000を準備する工程(S102)では、表裏の最も外側の面のうちの少なくとも一方の面に導電パターン24が設けられた基板22を準備する。図2(a)に示すように、本実施形態では、両面に導電パターン24が形成された両面基板22を使用している。ここで、基板22は、コア基板であっても、コアレス基板であってもよい。
以下、本実施形態に係る製造方法について、基板22がコア基板である場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図2(b)のように、基板22の導電パターン24を覆うように、導電パターン24上にソルダーレジスト層10を積層する。具体的には、導電パターン24が設けられた最も外側に位置する面上に、ワニス状の後述する熱硬化性樹脂組成物(P)(ソルダーレジスト)を塗布する。その後、塗布したソルダーレジストを乾燥させて、ソルダーレジスト層10を形成する。以上のようにして、本実施形態に係る製造方法においては、構造体1000を作製する。・・・」
イ
「【0061】
ソルダーレジスト層10の25℃における貯蔵弾性率は1GPa以上であることが好ましく、5GPa以上であることがより好ましい。また、20GPa以下であることが好ましい。ソルダーレジスト層10の25℃における貯蔵弾性率が上記上限値以下であり、かつ上記下限値以上であれば、耐久性に優れるパッケージを製造可能な配線基板20をより確実に得ることができる。また、当該貯蔵弾性率が上記下限値以上であれば、反りなどに対して優れた耐性を備える配線基板20が得られる。
【0062】
本実施形態において、上記貯蔵弾性率および上記Tgは、たとえば動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性試験を行うことにより得られる測定結果から、算出することができる。・・・」
4.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「PETフィルム基材」は、前者の「キャリア基材」に相当する。
後者の「ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム」における「ソルダーレジスト層用樹脂」は、「PETフィルム基材上に、ソルダーレジストを塗布を塗布し」て製造されるものであり、「樹脂組成物」からなるので、前者の「キャリア基材上に配置されていて、ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層」に相当する。
以上を踏まえると、後者の「ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム」は、前者の「ソルダーレジストに用いる樹脂シート」に相当する。
後者の「Naイオン、塩素イオンが各々10ppm以下である」ことは、前者の「Cl-、Br-、Na+、K+からなる不純物イオンの濃度の合計値が、100ppm以下である」ことと、「Cl-、Na+からなる不純物イオンの濃度の合計値が、100ppm以下である」限りにおいて一致する。
後者の「(Naイオン、塩素イオン不純物の測定方法)樹脂付PETフィルムからPETを剥離したものを、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下に粉砕し、粉末試料3gをプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、試料を水と馴染ませ、125℃に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離したものを検液とし、その液をイオンクロマト法により分析した。」は、前者の「(不純物イオンの濃度の測定方法)当該樹脂シートから前記キャリア基材を剥離した前記樹脂層を、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下に粉砕して得られた粉末試料2gをプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、粉末試料を水と馴染ませ、121℃に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離及びフィルターろ過したものを検液とし、当該検液をイオンクロマト法により分析することで測定する。」と、「(不純物イオンの濃度の測定方法)当該樹脂シートから前記キャリア基材を剥離した前記樹脂層を、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下に粉砕して得られた粉末試料2g以上をプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、粉末試料を水と馴染ませ、121℃以上に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離したものを検液とし、当該検液をイオンクロマト法により分析することで測定する。」限りにおいて一致する。
そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「キャリア基材と、
前記キャリア基材上に配置されていて、ソルダーレジスト樹脂組成物からなる樹脂層と、を備える、ソルダーレジストに用いる樹脂シートであって、
前記樹脂層の硬化物において、下記の測定方法により測定される、Cl-、Na+からなる不純物イオンの濃度の合計値が、100ppm以下である、樹脂シート。
(不純物イオンの濃度の測定方法)
当該樹脂シートから前記キャリア基材を剥離した前記樹脂層を、200℃、1時間硬化させ、凍結粉砕により250μm以下に粉砕して得られた粉末試料2g以上をプレッシャークッカー容器に精秤し、超純水40mlを加え容器を密閉し、手動で1分間振とうし、粉末試料を水と馴染ませ、121℃以上に設定されたオーブンに容器を投入し、連続20時間加熱加圧処理を行い、室温まで放冷後、内溶液を遠心分離したものを検液とし、当該検液をイオンクロマト法により分析することで測定する。」
〔相違点1〕
本願発明は「樹脂層がBステージ状態であり」と特定されているのに対して、引用発明は「ソルダーレジストを塗布し、ソルダーレジスト中の溶剤を除去して製造」されるものである点。
〔相違点2〕
本願発明は「動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hzの条件で測定した樹脂層の硬化物の30℃における貯蔵弾性率が7Gpa以上40Gpa以下であり」と特定されているのに対して、引用発明は貯蔵弾性率について特定されていない点。
〔相違点3〕
「不純物イオンの濃度の合計値」に関して、本願発明は「Br-」、「K+」を含むものであるのに対して、引用発明はそれらのものを含むとはされていない点。
〔相違点4〕
「(不純物イオンの濃度の測定方法)」に関して、本願発明は「粉末試料2g」、「121℃に設定されたオーブン」、遠心分離に加え「フィルターろ過」と特定されているのに対して、引用発明は「粉末試料3g」、「125℃に設定されたオーブン」とされ、フィルターろ過の特定がない点。
(2)判断
上記各相違点について以下検討する。
ア 相違点1について
引用発明の「ソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルム」は、「ソルダーレジストを塗布し、ソルダーレジスト中の溶剤を除去して製造」されるものであり、引用文献1に記載されている回路基板への用い方(上記「3.(1)ウ」の段落【0053】等を参照)を鑑みれば、「樹脂層がBステージ状態」であるといえる。相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明が実質的に有しているといえる。
また、多層回路基板の製造に用いる樹脂フィルムに関して、積層する樹脂フィルムをBステージ状態とすることは、特に例示するまでもなく周知の事項であり、引用発明のPETフィルムに塗布したソルダーレジストをBステージ状態とし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、周知の事項から当業者が容易になし得ることといえる。
イ 相違点2について
引用文献4には、両面に導電パターン24が形成された両面基板22の導電パターン24上に積層したソルダーレジスト層10について、
(ア)ソルダーレジスト層10の25℃における貯蔵弾性率を5GPa以上、20GPa以下とすることで、耐久性に優れるパッケージを製造可能な配線基板20が得られること、反りなどに対して優れた耐性を備える配線基板20が得られること、
(イ)貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で動的粘弾性試験を行うことにより得られる測定結果から算出されること、
が記載されている(上記「3.(3)ア、イ」及び引用文献4の【図2】、【図3】、【図7】等を参照)。
そうすると、引用文献4には、ソルダーレジストを乾燥させたソルダーレジスト層について、動的粘弾性測定装置を用いて周波数1Hzの条件で測定した25℃における貯蔵弾性率を5Gpa以上20Gpa以下とすることで、耐久性に優れるパッケージを製造可能で、反りなどに対して優れた耐性を備える配線基板20が得られることが記載されているといえる。
引用発明のソルダーレジスト層用樹脂付PETフィルムにおいても、配線基板に用いた後、耐久性、反りの抑制等が求められることは明らかといえ、引用文献4に記載された事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。
そして、引用発明に引用文献4に記載された事項を適用した際、貯蔵弾性率の評価を25℃から30℃に変更することは、いずれも常温の範囲であり、当業者が適宜になし得る設計事項といえ、また、その数値範囲の下限値を7GPa以上とすることは、技術の具体的適用に伴い好適な数値範囲を決定したに過ぎず、当業者が適宜になし得る設計事項といえる。
したがって、引用発明を、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、引用文献4に記載されて事項に基づいて当業者が容易に想到し得たといえる。
ウ 相違点3について
引用文献1の段落【0037】(上記「3.(1)イ」参照)の記載を参酌すると、引用発明の「Naイオン、塩素イオンが各々10ppm以下である」との事項は、ソルダーレジストの絶縁性の向上に寄与していると理解できる。
また、引用文献2の段落【0063】(上記「3.(2)イ」参照)には、絶縁層ではあるが、絶縁性の向上に、ナトリウムイオン、塩素イオンのみならず、カリウムイオン、カルシウムイオン、ブロムイオン(臭素イオン)、燐酸イオン等を含めたイオン性不純物の濃度を1ppm以下とすることが記載されている。
絶縁性の向上に関わるイオンマイグレーション等の抑制のために、電子回路基板に用いる樹脂組成物の硬化物から抽出されるイオン含有量を低下させることは周知の事項といえ、測定対象となる抽出イオンとして、ナトリウム、カリウム、塩素、臭素に注目することも周知の事項といえる(必要であれば、特開2006-183061号公報の段落【0221】~【0222】を参照されたい。)。なお、カリウム、臭素をイオンクロマト法で測定できることも周知である(引用文献2の段落【0063】、上記「3.(2)イ」を参照されたい。)。
そうしてみると、引用発明において、絶縁性を向上させるために、ナトリウムイオン、塩素イオンのみならず、カリウムイオン、臭素イオンを含めたイオン性不純物の濃度を低下させ、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。
エ 相違点4について
引用発明における不純物イオンの濃度の測定において、粉末試料の量、オーブンの設定温度は適宜に設定し得る設計事項といえ、遠心分離にフィルターろ過を加えることは必要に応じて適宜になし得ることといえる。
引用発明を相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜になし得ることといえる。
オ まとめ
そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明、引用文献2及び4に記載された事項並びに周知の事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2及び4に記載された事項並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明、引用文献2及び4に記載された事項並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-000858