特許異議申立
2016-701204
ポリオレフィン製微多孔膜
- 審判番号
- 2016-701204
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-019589外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月28日
- 審決日
- 2017年06月22日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 分類
- P1651.121-Y (B32B)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5942134号発明「ポリオレフィン製微多孔膜」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5942134号の請求項1-6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5942134号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成13年4月24日に出願した特願2001-126337号の一部を平成22年10月4日に新たな特許出願とした特願2010-225160号の一部を平成25年2月4日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年12月28日に特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所により特許異議の申立てがされ、平成29年2月10日付けで取消理由が通知され、指定期間内である平成29年4月17日に意見書が提出されたものである。
2.本件発明
特許第5942134号の請求項1-6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】
ポリエチレンとポリプロピレンを必須成分とする微多孔膜A、ポリエチレン微多孔膜Bを積層一体化させたポリオレフィン製微多孔膜であって、
膜厚が5~20μmであり、
シャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力が490kPa以下であり、
突刺強度が2.9N/25μm以上であり、かつ
前記ポリプロピレンの前記微多孔膜A中に占める割合が3~20wt%であることを特徴とするポリオレフィン製微多孔膜。」
3.取消理由の概要
当審において、請求項1-6に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
請求項1-6に係る発明は、下記の甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載される技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものである。
記
甲第1号証:特開平11-199692号公報
甲第2号証:特開平11-322989号公報
甲第3号証:特開平11-269290号公報
4.甲号証の記載
甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも、以下の技術的事項を同時に満たすことは、記載されていない。
ポリオレフィン製微多孔膜において、「膜厚が5~20μm」であること(特許異議申立書における構成B)。
ポリオレフィン製微多孔膜において、「シャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力が490kPa以下」であること(特許異議申立書における構成C)。
ポリオレフィン製微多孔膜において、「突刺強度が2.9N/25μm以上」であること(特許異議申立書における構成D)。
5.判断
(1)請求項1に係る発明について
ア 対比
請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、少なくとも以下の3点で相違する。
(相違点1)
ポリオレフィン製微多孔膜の膜厚について、請求項1に係る発明は「5~20μm」であるのに対して、甲第1号証に記載された発明では、「好ましくは1~150μ程度、より好ましくは5~100μ程度」(段落0037)であり、実施例1では「25μm」(段落0039)である点。
(相違点2)
ポリオレフィン製微多孔膜のシャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力について、請求項1に係る発明が「490kPa以下」であるのに対して、甲第1号証に記載された発明ではこのような特定がない点。
(相違点3)
ポリオレフィン製微多孔膜の突刺強度について、請求項1に係る発明が「2.9N/25μm以上」であるのに対して、甲第1号証に記載された発明ではこのような特定がない点。
イ 判断
請求項1に係る発明は、通常は薄膜化と安全性機能及び膜強度とは相反する課題であるところ、薄膜化した場合であっても安全性機能及び膜強度に優れる(本件特許明細書段落0004-0006)という効果を得るものである。具体的には、請求項1に係る発明は相違点1ないし3に掲げた事項を全て備えることにより、膜厚が5~20μmであっても、シャットダウン温度が低く、破膜温度が高く、突刺強度が高いポリオレフィン製微多孔膜を提供する(同、段落0023、0025、0027、0028、0036(表2)、0037(表3))という効果を得るものである。
甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも、このような技術思想は記載されていない。さらに、上記のとおり、甲第1号証ないし甲第3号証のいずれにも、ポリオレフィン製微多孔膜において、「膜厚が5~20μm」(相違点1)でありながら、「シャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力が490kPa以下」(相違点2)、「突刺強度が2.9N/25μm以上」(相違点3)を同時に満たすことも、記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載される技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得たものではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立書において特許異議申立人は、相違点1ないし3について、以下のように主張する。
「甲1発明の微多孔フィルムにおいて、電子機器の小型化等に伴う薄膜化の要求(本件の段落[0004])に従って、膜厚を「5~20μm」とすることは、当業者にとって、設計事項の範囲である。」(第12頁第15-17行)
「甲第2号証にはシャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力が245kPa以下」である微多孔膜が記載されているといえる。」(第13頁第19-21行等)
「甲1発明のポリエチレンとポリプロピレンを含む組成11(微多孔膜Aに相当)において、薄膜化の要求に従って、20μm以下の膜厚とする際、甲第3号証に記載されるように、高密度ポリエチレンの少なくとも一部を超高分子量ポリエチレンに置き換えて、膜強度を向上させることは、当業者にとって、設計事項の範囲である。」(第16頁第1-5行)
しかし、甲第1号証に記載の発明は、膜厚25μmのものを実施例とするものである(段落0039等)。甲第1号証に記載の発明において、膜厚を「5~20μm」にまで薄膜化する一方で、薄膜化と相反する安全性強度について甲第2号証に記載の事項を組み合わせてポリオレフィン製微多孔膜のシャットダウン温度以下における横方向の最大収縮応力の上限値を設定し、さらに薄膜化と相反する膜強度について甲第3号証に記載の事項を組み合わせてポリオレフィン製微多孔膜の突刺強度の下限値を設定することまでが、当業者にとって容易でありまた設計事項の範囲であるとする根拠を特許異議申立人は示していないから、これらのことが当業者にとって容易でありまた設計事項の範囲であるとすることは相当ではない。
(2)請求項2-6に係る発明について
請求項2-6に係る発明は、請求項1に係る発明の特定事項をすべて含むものであり、請求項1に係る発明と同様の理由で、請求項2-6に係る発明は、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証、甲第3号証に記載される技術的事項から当業者が容易になし得たものではない。
6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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