特許異議申立
2016-701180
遊技機
- 審判番号
- 2016-701180
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-169736外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月26日
- 審決日
- 2017年10月30日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社三共
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】日本電動式遊技機特許株式会社
- 【異議申立人代理人】平木 祐輔
- 【異議申立人代理人】渡辺 敏章
- 分類
- P1651.121-YAA(A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5940609号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5940609号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第5940609号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5940609号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は,平成22年3月4日に出願した特願2010-48429号の一部を平成26年8月22日に新たな特許出願である特願2014-169736号として出願したものであって,平成28年5月27日に特許権の設定登録がされ,同年12月26日にその特許に対し,特許異議申立人である日本電動式遊技機特許株式会社より特許異議の申立てがなされ,平成29年3月1日付けで審尋が通知され,特許権者である株式会社三共より同年4月28日付けで回答書が提出され,同年5月22日付けで取消理由が通知され,特許権者である株式会社三共より同年7月24日付けで意見書及び訂正請求書が提出され,これに対して,特許異議申立人より同年9月19日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件特許の訂正の内容は,次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「遊技者に対する有利度を変更可能な遊技機であって,」とあるのを,
「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,
前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能であり,遊技者に対する有利度を変更可能な遊技機であって,」に訂正する(下線部は訂正箇所を意味する。以下同様。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記設定値を表示する設定値表示部とを備え,」とあるのを,
「前記設定値を表示する設定値表示部と,
遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータと,
数値データを更新する数値更新手段と,
前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段とを備え,」に訂正する。
なお,当審では,訂正請求書の訂正事項2~5をまとめ,訂正請求書に貼付された特許請求の範囲の記載に基づいて,訂正事項2を認定し直した。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,前記設定変更状態を終了させる設定終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持し,」とあるのを,
「前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,当該開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときであっても,前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持し,」に訂正する。
なお,当審では,訂正請求書の訂正事項6を訂正事項3とした。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続ける」とあるのを,
「前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続け,
前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行い,
前記数値更新手段で更新された数値データが前記乱数値格納手段に格納されたときにオン状態にされて新たな数値データの格納を制限する一方,前記乱数値格納手段に格納された数値データが読み出されたときにオフ状態にされて新たな数値データの格納を許可する所定のフラグを格納するフラグ格納領域をさらに備え,
前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる」に訂正する。
なお,当審では,訂正請求書の訂正事項7~10をまとめ,訂正請求書に貼付された特許請求の範囲の記載に基づいて,訂正事項4を認定し直した。
(5)訂正事項5
願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0009】に
「(1)遊技者に対する有利度(たとえば設定値)を変更可能な遊技機(スロットマシン,パチンコ機など)であって,
遊技機の前面に設けられた開閉可能な開閉体(前面扉1b,本体枠914)と,
前記開閉体が開放状態であるときに操作可能となる操作手段(電源スイッチ39,設定キースイッチ37)と,
前記開閉体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段(ドア開放検出スイッチ25,本体枠開放検出スイッチ925)と,
複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで前記有利度を変更可能な設定変更状態に制御するために前記操作手段が特定操作されたことを検出する特定操作検出手段と,
前記開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態であることが検出され,かつ前記特定操作検出手段により前記特定操作されたことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御し(Sa28に移行),前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御しない(Sa27cに移行)状態制御手段(Sa27b,Sa27c,Sa28,Sa29,図28など)と,
前記設定値を表示する設定値表示部とを備え,
前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,前記設定変更状態を終了させる設定終了条件が成立(図28のSc11においてYES)するまで当該設定変更状態を維持し(図28参照),
前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続ける。」とあるのを,
「(1) 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,
前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能であり,遊技者に対する有利度(たとえば設定値)を変更可能な遊技機(スロットマシン,パチンコ機など)であって,
遊技機の前面に設けられた開閉可能な開閉体(前面扉1b,本体枠914)と,
前記開閉体が開放状態であるときに操作可能となる操作手段(電源スイッチ39,設定キースイッチ37)と,
前記開閉体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段(ドア開放検出スイッチ25,本体枠開放検出スイッチ925)と,
複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで前記有利度を変更可能な設定変更状態に制御するために前記操作手段が特定操作されたことを検出する特定操作検出手段と,
前記開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態であることが検出され,かつ前記特定操作検出手段により前記特定操作されたことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御し(Sa28に移行),前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御しない(Sa27cに移行)状態制御手段(Sa27b,Sa27c,Sa28,Sa29,図28など)と,
遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータと,
数値データを更新する数値更新手段と,
前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段とを備え,
前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,当該開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときであっても,前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立(図28のSc11においてYES)するまで当該設定変更状態を維持し(図28参照),
前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続け,
前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行い,
前記数値更新手段で更新された数値データが前記乱数値格納手段に格納されたときにオン状態にされて新たな数値データの格納を制限する一方,前記乱数値格納手段に格納された数値データが読み出されたときにオフ状態にされて新たな数値データの格納を許可する所定のフラグを格納するフラグ格納領域をさらに備え,
前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる。」に訂正する。
なお,当審では,訂正請求書の訂正事項11を訂正事項5とした。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は,「遊技機」が「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能であ」ることを限定することで特許請求の範囲を減縮する訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更について
本件特許明細書の【0050】には「リール2L,2C,2Rの外周部には,図3に示すように,それぞれ「黒7」,「網7(図中網掛け7)」,「白7」,「BAR」,「リプレイ」,「スイカ」,「黒チェリー」,「白チェリー」,「ベル」,「オレンジ」といった互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で,それぞれ21個ずつ描かれている。リール2L,2C,2Rの外周部に描かれた図柄は,透視窓3において各々上中下三段に表示される。」と記載され,本件特許明細書の【0067】には「ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると,各リール2L,2C,2Rが回転し,各リール2L,2C,2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L,8C,8Rを操作すると,対応するリール2L,2C,2Rの回転が停止し,透視窓3に表示結果が導出表示される。」と記載され,本件特許明細書の【0068】には「そして全てのリール2L,2C,2Rが停止されることで1ゲームが終了し,有効化されたいずれかの入賞ラインL1~L5上に予め定められた図柄の組合せ(以下,役とも呼ぶ)が各リール2L,2C,2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し,」と記載されているから,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能である訂正事項が,本件特許明細書の記載から導き出せる。
したがって,上記訂正事項1は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「本件特許明細書等」という。)に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。このことから,訂正事項1は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項1は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をするものではないから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は,「遊技機」が「遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータと,数値データを更新する数値更新手段と,前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段とを備え」ることを限定することで特許請求の範囲を減縮する訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更について
本件特許明細書の【0077】には「メイン制御部41は,1チップマイクロコンピュータにて構成され,後述するROM506に記憶された制御プログラムを実行して,遊技の進行に関する処理を行なうととともに,遊技制御基板40に搭載された制御回路の各部を直接的または間接的に制御する。」と記載され,本件特許明細書の【0134】には「メイン制御部41が備えるCPU505は,ROM506から読み出したプログラムを実行することにより,スロットマシン1におけるゲームの進行を制御するための処理などを実行する。」と記載され,本件特許明細書の【0147】には「乱数生成回路553は,たとえば16ビットのカウンタなどから構成され,クロック用フリップフロップ552から出力される乱数更新クロックRGKなどの入力に基づき,数値データを更新可能な所定の範囲において所定の初期値から所定の最終値まで循環的に更新する回路である。」と記載され,本件特許明細書の【0149】には「乱数列変更回路555は,乱数生成回路553により生成された数値データが一巡したときに,数値データの更新順である順列を所定の乱数更新規則に従った順列に変更可能とする回路である。」と記載され,本件特許明細書の【0162】には「乱数値レジスタ559Aは,乱数列変更回路555から出力された乱数列RSNにおける数値データを乱数値として格納するレジスタである。」と記載されているから,遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータと,数値データを更新する数値更新手段と,前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段とを備える訂正事項が,本件特許明細書の記載から導き出せる。
したがって,訂正事項2は,本件特許明細書等に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから,訂正事項2は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項2は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をするものではないから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は,「状態制御手段」が「前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持」することを,「当該開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときであっても」続けることを限定することで特許請求の範囲を減縮する訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更について
本件特許明細書の【0315】には「一旦設定変更処理に移行されてから,設定キースイッチ37がOFFされて設定終了条件が成立するまで,前面扉1bの開閉状態に関わらず,当該設定変更処理が維持される。このため,不正行為ではなく正規に電源スイッチ39や設定キースイッチ37の操作が行なわれて設定変更状態に制御された後においては,設定変更途中において,たとえばドア開放検出スイッチに誤って手が触れるなどして前面扉1bが閉鎖状態であると誤検出されたとしても,当該設定変更状態を維持させて,確実に設定変更を行なうことができる。このため,誤操作によって再度,電源を落として最初から設定変更状態としなければならないといった煩わしさを遊技場管理者に抱かせてしまうことがない。」と記載されているから,当該開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときであっても,前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持する訂正事項が,本件特許明細書の記載から導き出せる。
したがって,訂正事項3は,本件特許明細書等に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから,訂正事項3は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項3は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をするものではないから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は,「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行い,前記数値更新手段で更新された数値データが前記乱数値格納手段に格納されたときにオン状態にされて新たな数値データの格納を制限する一方,前記乱数値格納手段に格納された数値データが読み出されたときにオフ状態にされて新たな数値データの格納を許可する所定のフラグを格納するフラグ格納領域をさらに備え,前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる」ことを限定することで特許請求の範囲を減縮する訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更について
本件特許明細書の【0220】には「乱数値格納ワークは,スタートスイッチ7の操作と同時に乱数値レジスタR1Dにラッチされた数値データが格納される記憶領域であり,」と記載され,本件特許明細書の【0335】には「図29は,メイン制御部41が実行するゲーム処理の制御内容を示すフローチャートである。」と記載され,本件特許明細書の【0336】には「ゲーム処理では,・・・内部抽選処理(Sd2),・・・を順に実行し,」と記載され,本件特許明細書の【0338】には「Sd2のステップにおける内部抽選処理では,Sd1のステップにおけるスタートスイッチ7の検出によるゲーム開始と同時にラッチされた数値データに基づいて上記した各役への入賞を許容するかどうかを決定する処理を行なう。」と記載されているから,前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行う訂正事項が,本件特許明細書の記載から導き出せる。
また,本件特許明細書の【0024】には「前記可変表示装置において表示状態を変化させた後に表示結果を導出させる可変表示を行なうための可変表示条件が成立したとき(スタートスイッチ7が操作されてとき,有効な始動入賞が発生したとき)に,前記数値更新手段によって更新された数値データを乱数値として抽出し,第1の数値データ格納領域(乱数値レジスタR1D)に格納する乱数抽出手段(乱数ラッチセレクタ558A)と,前記第1の数値データ格納領域に前記乱数抽出手段により数値データが格納された後,該格納されている数値データが読み出されるまでは,前記乱数抽出手段により新たな数値データが格納されることがなく,該第1の数値データ格納領域に格納されている数値データを保持する数値データ保持手段(新たな数値データのラッチの禁止)と,一定時間(約2.24ms)毎に,前記第1の数値データ格納領域に数値データが格納されているか否か(乱数ラッチフラグが設定されているか否か)を判定する数値データ格納判定手段と,前記数値データ格納判定手段が前記第1の数値データ格納領域に数値データが格納されている(乱数ラッチフラグが設定されている)と判定したときに,前記第1の数値データ格納領域に格納されている数値データを読み出すことにより,前記数値データ保持手段による数値データの保持を解除するとともに,該読み出した数値データを前記第1の数値データ格納領域とは異なる第2の数値データ格納領域(乱数値格納ワーク)に格納する数値データ読出手段と,」と記載され,本件特許明細書の【0165】には「図19(A)は,乱数ラッチフラグレジスタRDFMの構成例を示している。図19(B)は,乱数ラッチフラグレジスタRDFMに格納される乱数ラッチフラグデータの各ビットにおける設定内容の一例を示している。乱数ラッチフラグレジスタRDFMのビット番号[0]に格納される乱数ラッチフラグデータRDFM0は,乱数値レジスタR1Dとなる乱数値レジスタ559Aに数値データが取り込まれたか否かを示す乱数ラッチフラグとなる。図19(B)に示す例では,乱数値レジスタR1Dに数値データが取り込まれていないときに(乱数値取込なし),乱数ラッチフラグデータRDFM0のビット値が“0”となる一方,数値データが取り込まれたときには(乱数値取込あり),そのビット値が“1”となる。乱数ラッチフラグデータRDFM0が“1”の状態,すなわち乱数値レジスタR1Dに数値データが取り込まれている状態では,新たな乱数値の取込要求が発生した場合でも,新たな数値データを乱数値レジスタR1Dに取り込まないようになっており,このような状態では,乱数値レジスタR1Dの数値データが読み出されて,乱数ラッチフラグデータRDFM0がクリアされるまで新たな数値データを乱数値レジスタR1Dに取り込むことが不可能となる。」と記載され,本件特許明細書の【0296】には「乱数ラッチフラグレジスタRDFMのビット番号[1]やビット番号[0]に格納される乱数ラッチフラグデータRDFM1や乱数ラッチフラグデータRDFM0のビット値を“0”として,各乱数ラッチフラグをオフ状態にクリアする(ステップSa206)。」と記載され,本件特許明細書の【0402】には「すなわち,乱数ラッチフラグレジスタRDFMのビット番号[0]に格納される乱数ラッチフラグデータRDFM0のビット値が“1”であるか否かに応じて,乱数値レジスタR1Dに対応する乱数ラッチフラグがオンであるか否かを判定する(ステップSm9)。そして,この乱数ラッチフラグがオンであれば,乱数値レジスタR1Dの読み出しを行なうことにより,乱数ラッチフラグデータRDFM0のビット値を“0”にクリアして,対応する乱数ラッチフラグをオフ状態とする(ステップSm10)。」と記載されているから,前記数値更新手段で更新された数値データが前記乱数値格納手段に格納されたときにオン状態にされて新たな数値データの格納を制限する一方,前記乱数値格納手段に格納された数値データが読み出されたときにオフ状態にされて新たな数値データの格納を許可する所定のフラグを格納するフラグ格納領域をさらに備える訂正事項が,本件特許明細書の記載から導き出せる。
そして,本件特許明細書の【0035】には「遊技の進行制御が開始されるとき(電源投入時,電圧低下時など)に,前記数値データ保持手段による数値データの保持を解除する保持解除手段(Sa206,Sm9~Sm12)を備える。」と記載され,本件特許明細書の【0296】には「Sa205の処理を実行した後には,たとえば乱数値レジスタR1Dや乱数値レジスタR2Dに格納されている数値データを読み出すことなどにより,乱数ラッチフラグレジスタRDFMのビット番号[1]やビット番号[0]に格納される乱数ラッチフラグデータRDFM1や乱数ラッチフラグデータRDFM0のビット値を“0”として,各乱数ラッチフラグをオフ状態にクリアする(ステップSa206)。一例として,乱数ラッチフラグデータRDFM1と乱数ラッチフラグデータRDFM0について,それぞれの値が“1”であるか“0”であるかを判定し,その値が“1”であれば,対応する乱数値レジスタの読み出しを行なうことにより,乱数ラッチフラグをオフ状態とすればよい。あるいは,乱数ラッチフラグデータRDFM1や乱数ラッチフラグデータRDFM0の値にかかわらず,乱数値レジスタR1Dと乱数値レジスタR2Dの読み出しを行なうことにより,各乱数ラッチフラグをオフ状態としてもよい。なお,ステップSa206の処理により乱数値レジスタR1Dや乱数値レジスタR2Dから読み出された数値データは,内部抽選には使用せず,そのまま破棄(消去)すればよい。こうしたステップSa206の処理による設定が完了すると,乱数回路509では乱数値の生成動作が開始されればよい。」と記載されているから,前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる訂正事項が,本件特許明細書の記載から導き出せる。
したがって,訂正事項4は,本件特許明細書等に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから,訂正事項4は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項4は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をするものではないから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は,上記「(1)訂正事項1」~「(4)訂正事項4」の訂正に伴い,訂正前の請求項1における特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を行った結果,記載表現が一致しなくなった本件特許明細書の【0009】の不明瞭な記載を,訂正後の請求項1の記載に整合させることにより明瞭にする訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項5は,本件特許明細書等に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり,本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから,訂正事項5は,本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項5は,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をするものではないから,特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
3 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求に係る訂正事項1~4は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し,訂正事項5は,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,本件訂正請求に係る訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである(A~Pは,特許権者及び特許異議申立人の主張を考慮して,当審で付与した。)。
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,
B 前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能であり,遊技者に対する有利度を変更可能な遊技機であって,
C 遊技機の前面に設けられた開閉可能な開閉体と,
D 前記開閉体が開放状態であるときに操作可能となる操作手段と,
E 前記開閉体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と,
F 複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで前記有利度を変更可能な設定変更状態に制御するために前記操作手段が特定操作されたことを検出する特定操作検出手段と,
G 前記開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態であることが検出され,かつ前記特定操作検出手段により前記特定操作されたことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御し,前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御しない状態制御手段と,
H 前記設定値を表示する設定値表示部と,
I 遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータと,
J 数値データを更新する数値更新手段と,
K 前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段とを備え,
L 前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,当該開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときであっても,前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持し,
M 前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続け,
N 前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行い,
O 前記数値更新手段で更新された数値データが前記乱数値格納手段に格納されたときにオン状態にされて新たな数値データの格納を制限する一方,前記乱数値格納手段に格納された数値データが読み出されたときにオフ状態にされて新たな数値データの格納を許可する所定のフラグを格納するフラグ格納領域をさらに備え,
P 前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になることを特徴とする,遊技機。」
2 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は,特許異議申立書において,証拠方法として甲第1号証を提出し,訂正前の請求項1に係る発明は,甲第1号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり,仮に相違点があったとしても,甲第1号証に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから,特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2006-55443号公報
3 平成29年3月1日付け審尋の概要
特許異議申立書19頁下から5行~23頁20行の甲1発明構成1hが,本件構成1Hの「当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,前記設定変更状態を終了させる設定終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持」することに相当するか,特許異議申立書23頁下から5行~24頁最終行の甲1発明構成1iが,本件構成1Iの「前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続ける」ことに相当するか否かについて,意見があれば説明して下さい。
4 平成29年4月28日付け回答書
甲1発明構成1h,1iは,本件構成1H,1Iに相当しない旨主張している。
5 平成29年5月22日付け取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成29年5月22日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,次のとおりである。
[特許法第29条第1項第3号]
訂正前の請求項1に係る発明は,本件特許の出願時より前に,日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であり,特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
[特許法第29条第2項]
訂正前の請求項1に係る発明は,本件特許の出願時より前に,日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
6 平成29年7月24日付け意見書(特許権者)の概要
特許権者は,甲第1号証に記載された発明には,構成L,M,O,Pは記載されておらず,本件発明の構成L,M,O,Pは想到し得るものではない旨主張している。
7 平成29年9月19日付け意見書(特許異議申立人)の概要
特許異議申立人は,平成29年9月19日付け意見書において,証拠方法として甲第2号証を提出し,請求項1に係る発明は,甲第1~2号証に記載された発明に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから,特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第2号証:特許第4415057号公報
8 刊行物の記載
(1)甲第1号証(特開2006-55443号公報)には,以下のように記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【0010】
上記目的を達成するため,本発明にかかる遊技機は,
前面扉を開放状態とすることにより操作可能となる段階操作手段(設定スイッチ91)を備える遊技機であって,
遊技の進行を制御すると共に,遊技の進行状況に応じた制御情報(コマンド)を送信する遊技制御手段(遊技制御基板101)と,
前記遊技制御手段から送信された制御情報を受信し,該受信した制御情報に基づいて少なくとも前記遊技に関する演出の実行を制御するものであって,書き換え可能な演出用記憶手段(RAM122)を含む演出制御手段(演出制御基板102)とを備え,
前記遊技制御手段は,
前記前面扉が開放状態となっているか否かを検出する開放検出手段(扉開放センサ95,ステップS107)と,
前記開放検出手段により前記前面扉が開放状態となっている旨が検出され(ステップS107(NO)),さらに前記前面扉を開放状態とすることにより操作可能となる変更許可開始操作手段(設定キースイッチ92)が操作されることにより所定の段階変更許可条件を成立させて(ステップS101(YES)),前記変更期間を開始させる変更期間開始制御手段と,
前記変更期間において,前記段階操作手段を操作することにより,所定の確率に基づいて算出される払出率について定められた段階(設定値)を選択して設定する段階設定手段(ステップS113,S115)と,
前記変更期間が開始したときに,前記演出用記憶手段の記憶情報を初期化することを指示する初期化制御情報(設定変更コマンド)を前記演出制御手段に送信する初期化制御情報送信手段(ステップS108)と,
前記変更期間が終了したときに(ステップS111(YES)),該期間の終了時における段階に関する情報を含む段階制御情報(状態コマンド)を送信する段階制御情報送信手段(ステップS119)とを備え,
前記演出制御手段は,
前記初期化制御情報を受信したときに,前記演出用記憶手段の記憶情報のうち少なくとも演出の実行に関する情報を初期化する初期化手段(ステップS607)と,
前記段階制御情報を受信したときに,該段階制御情報が示す段階に関する情報を前記演出用記憶手段に記憶する段階記憶制御手段(ステップS609)とを備える
ことを特徴とする。」
(イ)「【0046】
図1は,この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。スロットマシン1は,筐体本体と,筐体本体に対して開閉可能に構成された前面扉とから構成される。図1では,前面扉を閉鎖状態とした場合を示している。スロットマシン1の前面扉は,施錠装置19にキーを差し込み,時計回り方向に回動操作することにより開放状態とすることができる。筐体本体の前面扉との接触部に設けられた扉開放センサ95(図2参照)により前面扉が開放状態となっているかどうかが検出される。
【0047】
このスロットマシン1の上部前面側には,可変表示装置2が設けられている。可変表示装置2は,筐体の内部に収納され,3つのリール3L,3C,3Rから構成されるリールユニット3と,前面扉に設けられ,リール3L,3C,3Rに描かれた図柄を上中下段の三段に表示させる表示窓とによって構成される。リール3L,3C,3Rは,それぞれリールモータ3ML,3MC,3MR(図2参照)の駆動によって回転/停止させられる。
【0048】
リール3L,3C,3Rの外周部には,それぞれ「赤7」,「青7」,「BAR」,「JAC」,「スイカ」,「チェリー」,「ベル」といった互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で,それぞれ21個ずつ描かれている。また,リールユニット3内には,リール3L,3C,3Rのそれぞれに対して,その基準位置を検出するリールセンサ3SL,3SC,3SR(図2参照)と,背面から光を照射するリールランプ3LPとが設けられている。」
(ウ)「【0064】
電源基板100は,後述する内部抽選への当選確率を設定し,これに基づいて算出されるメダルの払出率の設定値(設定1~設定6)を変更するための設定スイッチ91,設定スイッチ91を操作有効とする設定キースイッチ92,内部状態(RAM112)をリセットする第2リセットスイッチ93,及び電源のON/OFF切り替えを行うメインスイッチ94に,前面扉が開放状態にあることを検出する扉開放センサ95にもそれぞれ接続されており,これらのスイッチ,センサの検出信号を遊技制御基板101へと送る。スイッチ91~94は,スロットマシン1の内部に設けられている。
【0065】
遊技制御基板101は,スロットマシン1における遊技の進行全体の流れを制御するメイン側の制御基板であり,CPU111,RAM112,ROM113及びI/Oポート114を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110を搭載している。また,乱数発生回路115,サンプリング回路116その他の回路を搭載している。
・・・
【0068】
乱数発生回路115は,後述するように所定数のパルスを発生する度にカウントアップして値を更新するカウンタによって構成され,サンプリング回路116は,乱数発生回路115がカウントしている数値を取得する。乱数発生回路115は,遊技の進行に使用される乱数の種類毎に設けられていて,乱数の種類毎にカウントする数値の範囲が定められている。CPU111は,その処理に応じてサンプリング回路116に指示を送ることで,乱数発生回路115が示している数値を乱数として取得する(以下,この機能をハードウェア乱数機能という)。後述する内部抽選用の乱数は,ハードウェア乱数機能により抽出した乱数をそのまま使用するのではなく,ソフトウェアにより加工して使用するが,その詳細については詳しく説明する。」
(エ)「【0078】
上記スロットマシン1においては,設定値に応じてメダルの払出率が変わるものであり,後述する内部抽選の当選確率は,設定値に応じて定まるものとなる。以下,設定スイッチ91による設定値の変更操作について説明する。
【0079】
設定値を変更するためには,設定キースイッチ92をON状態としてからメインスイッチ92によりスロットマシン1の電源をONする必要がある。設定キースイッチ92をON状態とせずに電源をONした場合,RAM112のデータが正常であれば電源断前の状態に復帰するが,RAM112のデータが壊れていて電源断前の状態に復帰できないと,RAM112の特別ワーク以下の領域がクリアされ,設定値が1に設定される。このとき,初期化コマンドが遊技制御基板101から演出制御基板102に送られる。
【0080】
設定キースイッチ92をON状態として電源をONすると,設定値の変更操作が可能となるが,ここで設定値の変更操作が可能となる前に,設定変更コマンドが遊技制御基板101から演出制御基板102に送られる。設定変更コマンドを受信することにより,演出制御基板102のCPU121は,設定値の変更操作中である旨を例えば液晶表示器4に表示するなどして報知する。」
(オ)「【0089】
以下,内部抽選について説明する。内部抽選は,後述する各役への入賞を許容するかどうかを,可変表示装置2の表示結果が導出表示される以前に(実際には,スタートレバー11の操作時),決定するものであり,ゲーム毎に取得した内部抽選用の乱数(0~16383の整数)を,設定スイッチ91により設定された設定値,遊技者が設定した賭け数,及び現在の遊技状態に対応した各役の判定値数を加算していくことによって,CPU111が行うものである。内部抽選における当選は,排他的なものであり,1ゲームにおいて複数が同時に当選することはない。
・・・
【0101】
CPU111は,このときに汎用レジスタ111GRに格納されている値を,内部抽選用の乱数として取得してRAM112の所定の領域に記憶させ,これに各役の判定値数を順次加算していくものとなる。内部抽選用の乱数の第15ビットと第14ビットは常に1となるので,内部抽選用の乱数は,14ビット(16384)の大きさを有する乱数ということになり,実質的に0~16383の値をとるものとなる。」
(カ)「【0138】
図8は,遊技制御基板101のCPU111が電源投入時において実行する処理を示すフローチャートである。スロットマシン1の電源が投入されると,まず,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定する(ステップS101)。設定キースイッチ92がOFF状態となっていれば,RAM112のデータが壊れてなく,正常な状態であるかどうかを判定する(ステップS102)。RAM112が正常な状態であれば,電源が遮断される前の状態に復帰して,ゲームの処理を開始する。
・・・
【0140】
設定キースイッチ92がON状態となっていれば,扉開放センサ95の検出信号に基づいて前面扉が開放されているかどうかを判定する(ステップS107)。前面扉が開放されていれば,不正な設定値の変更操作が行われようとしている可能性があるので,エラー終了する。ここでは,前面扉が開放状態で設定値の変更操作が行われた旨のエラーコードを,ゲーム回数表示部21に表示させるなどして報知する。エラーコマンドを送信して,演出制御基板102のCPU121に,スピーカ7L,7R,7Uからエラー音を出力させたり,液晶表示器4にエラーコードを表示させるものとしてもよい。
【0141】
前面扉が開放されていなければ,設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して,これを演出制御基板102に送信する(ステップS108)。また,設定値ワークに記憶された設定値を所定のエリアに読み出し,ゲーム回数表示器51を制御することにより,この設定値をゲーム回数表示部21に表示させる(ステップS109)。
・・・
【0143】
ステップS112では,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定する。設定スイッチ91が操作されていなければ,ステップS109の処理に戻る。設定スイッチ91が操作されていれば,設定値を1だけ加算し(ステップS113),加算した結果が7となったかどうかを判定する(ステップS114)。加算した結果が7となっていなければ,そのままステップS109の処理に戻る。加算した結果が7となった場合には,設定値を初期値の1に戻し(ステップS115),ステップS109の処理に戻る。こうして設定値の更新が行われてからステップS109に戻った場合には,更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示されるものとなる。
【0144】
ステップS107でスタートレバー11が操作されていて,ステップS108で設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合には,RAM112のクリアする領域の先頭アドレスとしてadd+Cをアドレスレジスタに設定する(ステップS116)。そして,詳細を後述するRAMクリア処理を行うことにより,RAM112のadd+C以降の領域,すなわち重要ワーク112-4以下の領域をクリアする(ステップS117)。また,現在の設定値を確定して,これを設定値ワーク112-3に記憶させ,ゲーム回数表示器51を制御することにより,ステップS109でゲーム回数表示部21に表示された設定値を表示消去する(ステップS118)。」
(キ)「【0150】
抽選処理が終了すると,次にリール変動開始処理が行われる(ステップS204)。リール変動開始処理では,前回のゲームでのリール3L,3C,3Rの回転開始から1ゲームタイマが計時する時間が所定時間(例えば,4.1秒)が経過していることを条件に,リールモータ3ML,3MC,3MRを駆動させ,左,中,右の全てのリール3L,3C,3Rを回転開始させる。これにより,可変表示装置2において図柄が変動表示される。ここで,前回のゲームでの回転開始から所定時間が経過していない場合,回転開始待ちとなり,ウェイトランプ61を点灯させることによりその旨をウェイト表示部31で報知する。また,次回のゲームのための1ゲームタイマの計時を開始する。
【0151】
その後,リール変動停止処理が行われる(ステップS205)。リール変動停止処理では,リールの回転開始から所定の条件(回転速度が一定速度に達した後,リールセンサ3SL,3SC,3SRにより基準位置を検出すること)が成立した後,停止ボタン12L,12C,12Rを操作有効とし,それぞれ遊技者によって操作されることにより,当選フラグの設定状況に応じて,リールモータ3ML,3MC,3MRを駆動停止させ,リール3L,3C,3Rの回転を停止させる。これとともに,リール停止コマンドを演出制御基板102に送信する。また,所定の条件が成立してからの経過時間が所定時間(例えば,30秒)となったときに,リール3L,3C,3Rの駆動を強制的に停止させる。
【0152】
リール3L,3C,3Rの駆動がそれぞれ停止すると,その停止時における表示態様において,ステップS202のBET処理で設定した賭け数に応じた有効ライン上に上記したいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行われる(ステップS206)。この入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると,遊技制御基板101において発生した入賞に応じた各種の処理が行われる。」
(ク)「【0162】
次に,ステップS301の乱数取得処理について詳しく説明する。図11は,CPU111がステップS301で実行する乱数取得処理を詳細に示すフローチャートである。乱数取得処理では,まず,CPU111に対する割り込みを禁止する(ステップS401)。次に,サンプリング回路116にサンプリング指令を出力し,乱数発生回路115が発生している乱数をラッチさせ,ラッチさせた乱数の値をI/Oポート114から入力して,これを抽出する。乱数発生回路115から抽出された乱数の値は,汎用レジスタ111GRに格納される(ステップS402)。」
(ケ)上記【0046】の「図1は,この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。スロットマシン1は・・・筐体本体に対して開閉可能に構成された前面扉とから構成される。図1では,前面扉を閉鎖状態とした場合を示している」との記載を参酌すると,図1には,スロットマシン1の前面に設けられた,スロットマシン1の筐体本体に対して開閉可能な前面扉が図示されているといえる。
上記(ア)~(ク)の記載事項,及び上記(ケ)の図示内容から,以下のことがいえる(認定)。
なお,(a)~(n),(p)は,本件発明の構成A~N,Pに対応した事項を示している。
(a)上記【0048】には「リール3L,3C,3R・・・には,・・・互いに識別可能な複数種類の図柄が・・・描かれている」と記載され,上記【0047】には「リール3L,3C,3Rは・・・リールモータ3ML,3MC,3MR・・・の駆動によって回転/停止させられる」と記載されている。
これらのことから,上記【0047】及び【0048】には,互いに識別可能な複数種類の図柄が描かれ,リールモータ3ML,3MC,3MRの駆動によって回転/停止させられるリール3L,3C,3Rが記載されているといえる。
(b)上記【0150】~【0152】には「リール3L,3C,3Rを回転開始させ・・・その後・・・リール3L,3C,3Rの回転を停止させ・・・停止時における表示態様において,・・・有効ライン上に・・・いずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する」と記載され,上記【0078】には「スロットマシン1においては,設定値に応じてメダルの払出率が変わる」と記載され,上記【0080】には「設定値の変更操作が可能となる」と記載されている。
これらのことから,上記【0078】,【0080】及び【0150】~【0152】には,リール3L,3C,3Rを回転開始させ,その後リール3L,3C,3Rの回転を停止させ,停止時における表示態様において,有効ライン上にいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定するとともに,メダルの払出率が変わる設定値の変更操作が可能なスロットマシン1が記載されているといえる。
(c)上記(ケ)には,図示内容として,スロットマシン1の前面に設けられた,スロットマシン1の筐体本体に対して開閉可能な前面扉が記載されている。
(d)上記【0064】には「設定値(設定1~設定6)を変更するための設定スイッチ91,設定スイッチ91を操作有効とする設定キースイッチ92,・・・電源のON/OFF切り替えを行うメインスイッチ94・・・スイッチ91~94は,スロットマシン1の内部に設けられている」と記載されている。
このことから,上記【0064】には,スロットマシン1の内部に設けられた設定値(設定1~設定6)を変更するための設定スイッチ91,設定スイッチ91を操作有効とする設定キースイッチ92,電源のON/OFF切り替えを行うメインスイッチ94が記載されているといえる。
(e)上記【0064】には「前面扉が開放状態にあることを検出する扉開放センサ95」と記載されている。
このことから,上記【0064】には,前面扉が開放状態にあることを検出する扉開放センサ95が記載されているといえる。
(f)上記【0064】には「設定値(設定1~設定6)を変更するための設定スイッチ91」と記載され,上記【0080】には「設定キースイッチ92をON状態として電源をONすると,設定値の変更操作が可能となる・・・設定値の変更操作中」と記載され,上記【0079】には「設定値を変更するためには,設定キースイッチ92をON状態としてからメインスイッチ92によりスロットマシン1の電源をONする必要がある」と記載され,上記【0138】には「図8は,遊技制御基板101のCPU111が電源投入時において実行する処理を示すフローチャートである。スロットマシン1の電源が投入されると,まず,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定する」と記載されている。
これらのことから,上記【0064】,【0079】,【0080】及び【0138】には,設定スイッチ91により設定値(設定1~設定6)の変更操作が可能となる設定値の変更操作中にするために,スロットマシン1の電源が投入されると,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定するCPU111が記載されているといえる。
(g)上記【0138】には「図8は,遊技制御基板101のCPU111が電源投入時において実行する処理を示すフローチャートである。設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定する(ステップS101)」と記載され,上記【0140】には「ON状態となっていれば,扉開放センサ95の検出信号に基づいて前面扉が開放されているかどうかを判定する(ステップS107)。前面扉が開放されていれば・・・エラー終了する」と記載され,上記【0141】には「前面扉が開放されていなければ,設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して,これを演出制御基板102に送信する(ステップS108)」と記載され,上記【0080】には「設定値の変更操作が可能となる前に,設定変更コマンドが遊技制御基板101から演出制御基板102に送られる。設定変更コマンドを受信することにより,演出制御基板102のCPU121は,設定値の変更操作中である旨を・・・報知する」と記載され,上記【0143】には「ステップS112では,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定する。設定スイッチ91が操作されていれば,設定値を1だけ加算し(ステップS113)・・・設定値の更新が行われ」と記載されているから,前面扉が開放されていればエラー終了し,前面扉が開放されていなければ,設定スイッチ91が操作されると,設定値を1だけ加算する点が記載されているといえる。
しかしながら,上記【0010】には「前面扉を開放状態とすることにより操作可能となる段階操作手段(設定スイッチ91)・・・前記開放検出手段により前記前面扉が開放状態となっている旨が検出され(ステップS107(NO)),さらに前記前面扉を開放状態とすることにより操作可能となる変更許可開始操作手段(設定キースイッチ92)が操作されることにより所定の段階変更許可条件を成立させて(ステップS101(YES)),前記変更期間を開始させる変更期間開始制御手段と,前記変更期間において,前記段階操作手段を操作することにより,所定の確率に基づいて算出される払出率について定められた段階(設定値)を選択して設定する段階設定手段(ステップS113,S115)と」と記載されているから,前面扉を開放状態とすることにより,設定スイッチ91が操作可能となる点が記載されているといえ,上記【0140】~【0141】の記載と矛盾する。
スロットマシンの技術分野の技術常識を考慮すると,設定値を変更する操作は,前面扉が開放されている時に行い,前面扉が開放されていない時には行わないことは技術常識であるといえるから,上記【0140】の「前面扉が開放されていれば」,及び上記【0141】の「前面扉が開放されていなければ」は,それぞれ,「前面扉が開放されていなければ」,及び「前面扉が開放されていれば」の誤記であるといえる。
これらのことから,上記【0010】,【0080】,【0138】,【0140】~【0141】及び【0143】には,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定し,ON状態となっていれば,扉開放センサ95の検出信号に基づいて前面扉が開放されているかどうかを判定し,前面扉が開放されていれば,設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して演出制御基板102に送信して設定値の変更操作中にし,次に,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定し,操作されていれば,設定値を1だけ加算して設定値の更新を行うように制御し,前面扉が開放されていないと判定されれば,エラー終了するように制御するCPU111が記載されているといえる。
(h)上記【0141】には「この設定値をゲーム回数表示部21に表示させる」と記載され,上記【0143】には「更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示される」と記載されている。
これらのことから,上記【0141】及び【0143】には,設定値を表示するゲーム回数表示部21が記載されているといえる。
(i)上記【0065】には「遊技制御基板101は,・・・遊技の進行全体の流れを制御するメイン側の制御基板であり,CPU111・・・を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110を搭載している」と記載されていると共に,遊技制御基板101において,遊技の進行全体の流れを制御しているのは,制御部110のCPU111であることは明らかである。
これらのことから,上記【0065】には,遊技の進行全体の流れを制御するCPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110が記載されているといえる。
(j)上記【0068】には「乱数発生回路115は・・・所定数のパルスを発生する度にカウントアップして値を更新するカウンタによって構成され」と記載され,上記【0162】には「乱数発生回路115から抽出された乱数の値」と記載されている。
これらのことから,上記【0068】及び【0162】には,所定数のパルスを発生する度にカウントアップして乱数の値を更新するカウンタによって構成される乱数発生回路115が記載されているといえる。
(k)上記(j)で検討したように上記【0068】及び【0162】には「乱数の値を更新する・・・乱数発生回路115」が記載され,上記【0162】には「乱数発生回路115から抽出された乱数の値は,汎用レジスタ111GRに格納される」と記載されている。
これらのことから,上記【0068】及び【0162】には,乱数発生回路115で更新され,抽出された乱数の値を格納する汎用レジスタ111GRが記載されているといえる。
(l)上記(g)で検討したように上記【0080】,【0138】,【0140】~【0141】及び【0143】には「設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して演出制御基板102に送信して設定値の変更操作中にし,次に,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定し,操作されていれば,設定値を1だけ加算して設定値の更新を行うように制御・・・するCPU111」が記載され,上記【0141】には「設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して,これを演出制御基板102に送信する(ステップS108)。また,設定値ワークに記憶された設定値を所定のエリアに読み出し,・・・この設定値をゲーム回数表示部21に表示させる(ステップS109)」と記載され,上記【0143】には「設定スイッチ91が操作されていれば,設定値を1だけ加算し(ステップS113),・・・更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示される」と記載され,上記【0144】には「ステップS107でスタートレバー11が操作されていて,ステップS108で設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合には,・・・現在の設定値を確定して,これを設定値ワーク112-3に記憶させ」と記載されている。
これらのことから,上記【0080】,【0138】,【0140】~【0141】,【0143】~【0144】には,CPU111は,設定値の変更操作中にし,設定値ワークに記憶された設定値を所定のエリアに読み出し,ゲーム回数表示部21に表示させ,設定スイッチ91が操作されていれば,設定値を1だけ加算し,更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示され,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,現在の設定値を確定して,設定値ワーク112-3に記憶させることが記載されているといえる。
(m)上記(l)で検討したように上記【0080】,【0138】,【0140】~【0141】,【0143】~【0144】には「設定値の変更操作中にし,設定値ワークに記憶された設定値を所定のエリアに読み出し,ゲーム回数表示部21に表示させ,設定スイッチ91が操作されていれば,・・・更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示され,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,・・・ゲーム回数表示部21に表示された設定値を表示消去する」ことが記載され,上記【0144】には「ステップS107でスタートレバー11が操作されていて,ステップS108で設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合には,・・・ゲーム回数表示部21に表示された設定値を表示消去する(ステップS118)。」と記載されている。
これらのことから,上記【0080】,【0138】,【0140】~【0141】,【0143】~【0144】には,ゲーム回数表示部21は,設定値の変更操作中にすると,設定値ワークに記憶された設定値を表示し,設定スイッチ91が操作されると,更新された後の設定値を表示し,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,表示された設定値を表示消去することが記載されているといえる。
(n)上記【0065】には「CPU111・・・を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110」と記載され,上記【0101】には「CPU111は・・・汎用レジスタ111GRに格納されている値を,内部抽選用の乱数として取得してRAM112の所定の領域に記憶させ,これに各役の判定値数を順次加算していく」と記載され,上記【0089】には「内部抽選は・・・各役への入賞を許容するかどうか・・・決定するものであり,ゲーム毎に取得した内部抽選用の乱数(0~16383の整数)を・・・各役の判定値数を加算していくことによって,CPU111が行う」と記載されている。
これらのことから,上記【0065】,【0089】及び【0101】には,CPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110は,汎用レジスタ111GRに格納されている乱数の値に,各役の判定値数を順次加算して各役への入賞を許容するかどうか決定することが記載されているといえる。
(p)上記【0046】には「スロットマシン1」と記載されているから,上記【0046】には,スロットマシン1が記載されているといえる。
上記(ア)~(ク)の記載事項,上記(ケ)の図示内容,及び上記(a)~(n),(p)の認定事項から,甲第1号証には,次の甲1発明(a~n,pは,本件発明の構成A~N,Pに対応させて,当審にて付与。)が開示されていると認められる。
「a 互いに識別可能な複数種類の図柄が描かれ,リールモータ3ML,3MC,3MRの駆動によって回転/停止させられるリール3L,3C,3Rを備え,
b リール3L,3C,3Rを回転開始させ,その後リール3L,3C,3Rの回転を停止させ,停止時における表示態様において,有効ライン上にいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定するとともに,メダルの払出率が変わる設定値の変更操作が可能なスロットマシン1であって,
c スロットマシン1の前面に設けられた,スロットマシン1の筐体本体に対して開閉可能な前面扉と,
d スロットマシン1の内部に設けられた設定値(設定1~設定6)を変更するための設定スイッチ91,設定スイッチ91を操作有効とする設定キースイッチ92,電源のON/OFF切り替えを行うメインスイッチ94と,
e 前面扉が開放状態にあることを検出する扉開放センサ95と,
f 設定スイッチ91により設定値(設定1~設定6)の変更操作が可能となる設定値の変更操作中にするために,スロットマシン1の電源が投入されると,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定するCPU111と,
g 設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定し,ON状態となっていれば,扉開放センサ95の検出信号に基づいて前面扉が開放されているかどうかを判定し,前面扉が開放されていれば,設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して演出制御基板102に送信して設定値の変更操作中にし,次に,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定し,操作されていれば,設定値を1だけ加算して設定値の更新を行うように制御し,前面扉が開放されていないと判定されれば,エラー終了するように制御するCPU111と,
h 設定値を表示するゲーム回数表示部21と,
i 遊技の進行全体の流れを制御するCPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110と,
j 所定数のパルスを発生する度にカウントアップして乱数の値を更新するカウンタによって構成される乱数発生回路115と,
k 乱数発生回路115で更新され,抽出された乱数の値を格納する汎用レジスタ111GRとを備え,
l CPU111は,設定値の変更操作中にし,設定値ワークに記憶された設定値を所定のエリアに読み出し,ゲーム回数表示部21に表示させ,設定スイッチ91が操作されていれば,設定値を1だけ加算し,更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示され,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,現在の設定値を確定して,設定値ワーク112-3に記憶させ,
m ゲーム回数表示部21は,設定値の変更操作中にすると,設定値ワークに記憶された設定値を表示し,設定スイッチ91が操作されると,更新された後の設定値を表示し,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,表示された設定値を表示消去し,
n CPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110は,汎用レジスタ111GRに格納されている乱数の値に,各役の判定値数を順次加算して各役への入賞を許容するかどうか決定する
p スロットマシン1。」
(2)甲第2号証(特許第4415057号公報)には,以下のように記載されている。
(ア)「【0019】
<全体構成>
図1は,本発明の一実施形態に係るスロットマシン100の外観斜視図である。スロットマシン100は,メダルの投入により遊技が開始され,遊技の結果によりメダルが払い出されるものである。」
(イ)「【0051】
本実施形態の乱数回路317においては,乱数値が乱数値レジスタ602に取り込まれると,乱数ラッチフラグレジスタ603には乱数ラッチフラグ「1」がセットされ,乱数値レジスタ602に格納された乱数値をCPU310が読み込むと,乱数ラッチフラグ「1」がクリアされて「0」がセットされるようになっている。詳しくは,乱数値レジスタ602にラッチ信号(スタートレバー操作信号)が入力されて,乱数値レジスタ602に乱数生成回路601で生成された乱数値が取り込まれた後,乱数値の取り込みが完了すると,ラッチ完了セット信号が乱数ラッチフラグレジスタ603に出力されるので,乱数ラッチフラグレジスタ603においては,このラッチ完了セット信号の入力を契機に,乱数ラッチフラグ「1」が設定される。また,乱数値レジスタ602に,CPU310からの乱数値読み込み要求であるCPUレジスタ信号が入力された後,格納された乱数値の読み込みが終了すると,リード完了クリア信号が乱数ラッチフラグレジスタ603に出力されるので,乱数ラッチフラグレジスタ603においては,このリード完了クリア信号の入力を契機に,乱数ラッチフラグ「0」が設定される。
【0052】
なお,本実施形態の乱数回路317は,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグが「1」の状態においては,新たな乱数値の取り込み要求(具体的には,スタートレバー操作の受付)が発生しても,乱数生成回路601から新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むことはできない構成となっている。したがって,仮に1回のスタートレバー操作において複数回の操作検知があったとしても,最初のタイミングで発生した乱数値だけが乱数値レジスタ602に取り込まれ,2回目以降のタイミングで発生した乱数値は乱数値レジスタ602に取り込まれないようになっている。すなわち,本実施形態の乱数回路317は,チャタリング等が発生したとしても,スタートレバー操作の操作タイミングに合わせて抽選用乱数値を取得できるので,遊技の公正を害することはない。
【0053】
一方,新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むためには,その前に乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする必要がある。すなわち,本実施形態の乱数回路317は,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグが「0」の状態でないと,新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込めない仕様となっている。
・・・
【0055】
まず,規定枚数(3枚)のメダル投入前のAの時点において,遊技者がスタートレバー135を操作すると,乱数回路317は,Aの時点で乱数生成回路601が生成した乱数50を乱数値レジスタ602に取り込む(ステップ(1))。すると,乱数回路317は,乱数値レジスタ602に乱数値50が取り込まれたので,乱数ラッチフラグレジスタ603に乱数ラッチフラグ「1」をセットする(ステップ(2))。一方,CPU310は,Aの時点のタイマ割込処理(詳しくはスタートレバー操作後の最初のタイマ割込処理)において,乱数値レジスタ602に格納されている乱数値50を読み込むので(ステップ(3)),乱数回路317は,乱数ラッチフラグレジスタ603に乱数ラッチフラグ「0」をセットする(ステップ(4))。このように本実施形態のCPU310は,タイマ割込処理の中で乱数値レジスタ602に格納されている乱数値を読み込む処理を行っているので,タイマ割込処理が行われると,乱数回路317の乱数ラッチフラグは常に0にセットされるようになっている。つまり,本実施形態のタイマ割込処理は乱数ラッチフラグを0にする更新処理であり,タイマ割込処理が行われることにより,乱数回路317は常に新たな乱数を取り込むことが可能な状態となっている。
・・・
【0061】
<主制御部のメイン処理>
次に,図6を用いて,遊技の基本的制御を示す主制御部メイン処理について説明する。なお,図6は,主制御部メイン処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
遊技の基本的制御は,主制御部300のCPU310が中心になって行い,電源断等を検知しないかぎり,CPU310が同図の主制御部メイン処理を繰り返し実行する。
【0063】
ステップS101では,メダル投入に関する処理を行う。図示はしないが,電源を投入された直後であれば,電源投入後に行う初期処理が実行された後に開始する処理であり,それ以外の通常の遊技においては,前回遊技の遊技状態制御処理を行った後に開始される処理である。ここでは,メダルの投入の有無をチェックし,投入されたメダルの枚数に応じて入賞ライン表示ランプ120を点灯させる。なお,前回の遊技で再遊技に入賞した場合はメダルの投入が不要である。また,ステップS101では,割込みステータスを「メダル投入処理中」に設定する。割込みステータスは,後述するタイマ割込処理において参照され,割込みステータスが「メダル投入処理中」の場合には,「メダル投入処理中」に応じたタイマ割込処理が実行される。規定枚数のメダルの投入があった場合,または,前回の遊技で再遊技に入賞した場合は,メダル投入に関する処理を終了する。
【0064】
ステップS102では,遊技のスタート操作に関する処理を行う。ここでは,スタートレバー135が操作されたか否かのチェックを行い,スタートレバー135が操作された場合には,ステップS103に進む。」
上記(ア)~(イ)の記載事項から,甲第2号証には,次の事項(以下,「甲第2号証に記載された事項」という。また,o~p’は,本件発明の構成O,Pに対応させて,当審にて付与。)が開示されていると認められる。
「o 乱数値が乱数値レジスタ602に取り込まれると,乱数ラッチフラグレジスタ603には乱数ラッチフラグ「1」がセットされ,新たな乱数値の取り込み要求(スタートレバー操作の受付)が発生しても,乱数生成回路601から新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むことはできなくなり,新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むためには,その前に乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする必要があり,(【0051】~【0053】)
p’遊技の基本的制御を示す主制御部メイン処理は,電源断等を検知しないかぎり,CPU310が繰り返し実行し,主制御部メイン処理のステップS101のメダル投入に関する処理は,電源投入後に行う初期処理が実行された後に開始され,前回遊技の遊技状態制御処理を行った後に開始される処理であり,ステップS102では,スタートレバー135が操作されたか否かのチェックを行い,(【0061】~【0064】)
タイマ割込処理(スタートレバー操作後の最初のタイマ割込処理)において,乱数値レジスタ602に格納されている乱数値50を読み込み,乱数ラッチフラグレジスタ603に乱数ラッチフラグ「0」をセットするスロットマシン100。(【0055】,【0019】)」
第4 当審の判断
1 特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について
本件発明は,甲1発明と同一であるか,又は甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるか検討する。
ア 対比
本件発明と甲1発明を対比する。
(a)甲1発明の「図柄」及び「リール3L,3C,3R」は,それぞれ,本件発明の「識別情報」及び「可変表示部」に相当する。
このことから,甲1発明の「互いに識別可能な複数種類の図柄が描かれ,リールモータ3ML,3MC,3MRの駆動によって回転/停止させられるリール3L,3C,3Rを備え」は,本件発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え」に相当する。
(b)甲1発明の「有効ライン上」の「停止時における表示態様」,「メダルの払出率が変わる設定値」及び「スロットマシン1」は,それぞれ,本件発明の「表示結果」,「遊技者に対する有利度」及び「遊技機」に相当する。
このことから,甲1発明の「リール3L,3C,3Rを回転開始させ,その後リール3L,3C,3Rの回転を停止させ,停止時における表示態様において,有効ライン上にいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定するとともに,メダルの払出率が変わる設定値の変更操作が可能なスロットマシン1」は,本件発明の「前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能であり,遊技者に対する有利度を変更可能な遊技機」に相当する。
(c)甲1発明の「前面扉」は,本件発明の「開閉体」に相当する。
このことから,甲1発明の「スロットマシン1の前面に設けられた,スロットマシン1の筐体本体に対して開閉可能な前面扉」は,本件発明の「遊技機の前面に設けられた開閉可能な開閉体」に相当する。
(d)甲1発明の「設定スイッチ91」,「設定キースイッチ92」及び「メインスイッチ94」は,本件発明の「操作手段」に相当する。
また,甲1発明の「設定スイッチ91」,「設定キースイッチ92」及び「メインスイッチ94」は,「スロットマシン1の内部に設けられた」ものであるから,前面扉が開放状態であるときに操作可能となるといえる。
これらのことから,甲1発明の「スロットマシン1の内部に設けられた設定値(設定1~設定6)を変更するための設定スイッチ91,設定スイッチ91を操作有効とする設定キースイッチ92,電源のON/OFF切り替えを行うメインスイッチ94」は,本件発明の「前記開閉体が開放状態であるときに操作可能となる操作手段」に相当する。
(e)甲1発明の「扉開放センサ95」は,本件発明の「開閉状態検出手段」に相当する。
このことから,甲1発明の「前面扉が開放状態にあることを検出する扉開放センサ95」は,本件発明の「前記開閉体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段」に相当する。
(f)甲1発明の「設定値の変更操作中」は,本件発明の「設定変更状態」に相当する。
また,甲1発明の「スロットマシン1の電源が投入されると,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態とな」る操作は,本件発明の「特定操作」に相当する。
これらのことから,甲1発明の「設定スイッチ91により設定値(設定1~設定6)の変更操作が可能となる設定値の変更操作中にするために,スロットマシン1の電源が投入されると,設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定するCPU111」は,本件発明の「複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで前記有利度を変更可能な設定変更状態に制御するために前記操作手段が特定操作されたことを検出する特定操作検出手段」に相当する。
(g)甲1発明の「設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定し,ON状態となっていれば,扉開放センサ95の検出信号に基づいて前面扉が開放されているかどうかを判定し,前面扉が開放されていれば,設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して演出制御基板102に送信して設定値の変更操作中にし,次に,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定し,操作されていれば,設定値を1だけ加算して設定値の更新を行うように制御し」は,本件発明の「前記開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態であることが検出され,かつ前記特定操作検出手段により前記特定操作されたことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御し」に相当する。
また,甲1発明の「前面扉が開放されていないと判定されれば,エラー終了するように制御するCPU111」は,本件発明の「前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御しない状態制御手段」に相当する。
これらのことから,甲1発明の「設定キースイッチ92が鍵操作されてON状態となっているかどうかを判定し,ON状態となっていれば,扉開放センサ95の検出信号に基づいて前面扉が開放されているかどうかを判定し,前面扉が開放されていれば,設定値の変更操作が行われている旨を示す設定変更コマンドを生成して演出制御基板102に送信して設定値の変更操作中にし,次に,設定スイッチ91が操作されたかどうかを判定し,操作されていれば,設定値を1だけ加算して設定値の更新を行うように制御し,前面扉が開放されていないと判定されれば,エラー終了するように制御するCPU111」は,
本件発明の「前記開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態であることが検出され,かつ前記特定操作検出手段により前記特定操作されたことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御し,前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御しない状態制御手段」に相当する。
(h)甲1発明の「ゲーム回数表示部21」は,本件発明の「設定値表示部」に相当する。
このことから,甲1発明の「設定値を表示するゲーム回数表示部21」は,本件発明の「前記設定値を表示する設定値表示部」に相当する。
(i)甲1発明の「CPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110」は,本件発明の「遊技制御用マイクロコンピュータ」に相当する。
このことから,甲1発明の「遊技の進行全体の流れを制御するCPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110」は,本件発明の「遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータ」に相当する。
(j)甲1発明の「乱数の値」及び「乱数発生回路115」は,それぞれ,本件発明の「数値データ」及び「数値更新手段」に相当する。
このことから,甲1発明の「所定数のパルスを発生する度にカウントアップして乱数の値を更新するカウンタによって構成される乱数発生回路115」は,本件発明の「数値データを更新する数値更新手段」に相当する。
(k)甲1発明の「汎用レジスタ111GR」は,本件発明の「乱数値格納手段」に相当する。
このことから,甲1発明の「乱数発生回路115で更新され,抽出された乱数の値を格納する汎用レジスタ111GR」は,本件発明の「前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段」に相当する。
(l)甲1発明の「スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされ」ることは,本件発明の「設定変更終了条件」に相当する。
しかしながら,甲1発明は,設定値の変更操作中における扉開放センサ95の検出結果に関わらず,扉開放センサ95により前面扉が開放状態でないことが検出されたときであっても,設定値の変更操作中を終了させるスタートレバー11が操作され設定キースイッチ92がOFF状態とされる(設定変更終了条件が成立する)まで設定値の変更操作中を維持するか明記されていない。
これらのことから,甲1発明の「CPU111は,設定値の変更操作中にし,設定値ワークに記憶された設定値を所定のエリアに読み出し,ゲーム回数表示部21に表示させ,設定スイッチ91が操作されていれば,設定値を1だけ加算し,更新された後の設定値がゲーム回数表示部21に表示され,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,現在の設定値を確定して,設定値ワーク112-3に記憶させ」は,
本件発明の構成Lと「前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,」「前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持」する点で共通している。
(m)甲1発明の「ゲーム回数表示部21は,設定値の変更操作中にすると,設定値ワークに記憶された設定値を表示し,設定スイッチ91が操作されると,更新された後の設定値を表示し,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,表示された設定値を表示消去」するから,設定値の変更操作中においては,設定値を表示し続けているといえる。
しかしながら,甲1発明は,設定値の変更操作中における扉開放センサ95の検出結果に関わらず,扉開放センサ95により前面扉が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,設定値を表示し続けるか明記されていない。
これらのことから,甲1発明の「ゲーム回数表示部21は,設定値の変更操作中にすると,設定値ワークに記憶された設定値を表示し,設定スイッチ91が操作されると,更新された後の設定値を表示し,スタートレバー11が操作され,設定キースイッチ92がOFF状態とされた場合に,表示された設定値を表示消去し」は,
本件発明の構成Mと「前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,」「前記設定値を表示し続け」る点で共通する。
(n)甲1発明の「汎用レジスタ111GRに格納されている乱数の値に,各役の判定値数を順次加算して各役への入賞を許容するかどうか決定する」ことは,本件発明の「前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行」うことに相当する。
このことから,甲1発明の「CPU111を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110は,汎用レジスタ111GRに格納されている乱数の値に,各役の判定値数を順次加算して各役への入賞を許容するかどうか決定する」は,本件発明の「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行い」に相当する。
(p)上記(b)で検討したように,甲1発明の「スロットマシン1」は,本件発明の「遊技機」に相当する。
このことから,甲1発明の「スロットマシン1」は,本件発明の構成Pと「遊技機」である点で共通している。
上記(a)~(n),(p)から,本件発明と甲1発明とは,
[一致点]
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え,
B 前記可変表示部を変動表示した後,前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し,該表示結果に応じて入賞が発生可能であり,遊技者に対する有利度を変更可能な遊技機であって,
C 遊技機の前面に設けられた開閉可能な開閉体と,
D 前記開閉体が開放状態であるときに操作可能となる操作手段と,
E 前記開閉体の開閉状態を検出する開閉状態検出手段と,
F 複数種類の設定値のうちからいずれかの設定値を選択することで前記有利度を変更可能な設定変更状態に制御するために前記操作手段が特定操作されたことを検出する特定操作検出手段と,
G 前記開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態であることが検出され,かつ前記特定操作検出手段により前記特定操作されたことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御し,前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときには,前記設定変更状態に制御しない状態制御手段と,
H 前記設定値を表示する設定値表示部と,
I 遊技制御を実行する遊技制御用マイクロコンピュータと,
J 数値データを更新する数値更新手段と,
K 前記数値更新手段で更新された数値データを乱数値として取り込んで格納する乱数値格納手段とを備え,
L’前記状態制御手段は,前記設定変更状態に制御した後においては,前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持し,
M’前記設定値表示部は,前記設定変更状態においては,前記設定値を表示し続け,
N 前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記乱数値格納手段によって格納された数値データに基づいて,複数種類の入賞について発生を許容するか否かの決定を行う,
P’遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1](構成Lに関して)
「前記設定変更状態に制御した後においては,前記設定変更状態を終了させる設定変更終了条件が成立するまで当該設定変更状態を維持」する「前記状態制御手段」に関して,
本件発明は,「当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず,当該開閉状態検出手段により前記開閉体が開放状態でないことが検出されたときであっても」「当該設定変更状態を維持」するのに対して,
甲1発明は,そのような構成であるか不明である点。
[相違点2](構成Mに関して)
「前記設定変更状態においては,」「前記設定値を表示し続け」る「前記設定値表示部」に関して,
本件発明は,「当該設定変更状態における前記開閉状態検出手段の検出結果に関わらず前記開閉体が開放状態および閉鎖状態のうちのいずれであっても,前記設定値を表示し続け」るのに対して,
甲1発明は,そのような構成であるか不明である点。
[相違点3](構成O,Pに関して)
本件発明は,「前記数値更新手段で更新された数値データが前記乱数値格納手段に格納されたときにオン状態にされて新たな数値データの格納を制限する一方,前記乱数値格納手段に格納された数値データが読み出されたときにオフ状態にされて新たな数値データの格納を許可する所定のフラグを格納するフラグ格納領域をさらに備え,前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる」のに対して,
甲1発明は,そのような構成でない点。
イ 判断
事案の事情により,まず相違点3から判断する。
[相違点3について]
上記第3 8(2)の甲第2号証に記載された事項には
「o 乱数値が乱数値レジスタ602に取り込まれると,乱数ラッチフラグレジスタ603には乱数ラッチフラグ「1」がセットされ,新たな乱数値の取り込み要求(スタートレバー操作の受付)が発生しても,乱数生成回路601から新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むことはできなくなり,新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むためには,その前に乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする必要があり,(【0051】~【0053】)
p’遊技の基本的制御を示す主制御部メイン処理は,電源断等を検知しないかぎり,CPU310が繰り返し実行し,主制御部メイン処理のステップS101のメダル投入に関する処理は,電源投入後に行う初期処理が実行された後に開始され,前回遊技の遊技状態制御処理を行った後に開始される処理であり,ステップS102では,スタートレバー135が操作されたか否かのチェックを行い,(【0061】~【0064】)
タイマ割込処理(スタートレバー操作後の最初のタイマ割込処理)において,乱数値レジスタ602に格納されている乱数値50を読み込み,乱数ラッチフラグレジスタ603に乱数ラッチフラグ「0」をセットするスロットマシン100。(【0055】,【0019】)」が記載されている。
しかしながら,上記甲第2号証に記載された事項において,乱数ラッチフラグ(所定のフラグ)に「0」をセットする(オフ状態になる)のは,「主制御部メイン処理」を「実行」する「CPU310」が,「電源投入後に行う初期処理が実行された後に」「主制御部メイン処理のステップS101のメダル投入に関する処理」を「開始」し,「ステップS102では,スタートレバー135が操作されたか否かのチェックを行い」,「タイマ割込処理(スタートレバー操作後の最初のタイマ割込処理)において」であり,「スタートレバー操作後の最初のタイマ割込処理」は,ゲームが開始した後に行われる処理であり,本件発明のようなゲーム開始前の「前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるとき」ではない。
また,【0053】には「新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むためには,その前に乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする必要がある」点は記載されているが,【0063】の「電源投入後に行う初期処理」において,【0053】の「乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする」とは記載されておらず,自明であるともいえない。
これらのことから,甲第2号証に記載された事項には,本件発明の「前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる」構成(構成P)は,記載されておらず,自明であるともいえない。
また,甲第2号証の他の箇所にも,本件発明の「前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる」構成(構成P)は記載されておらず,自明であるとも,周知であるともいえない。
そして,本件発明は,上記相違点3に係る構成を備えることにより,遊技制御の実行が開始されるときには,所定のフラグがオフ状態になることで新たな数値データの格納が許可されるため,遊技機の電源投入時の電源電圧が不安定な状態で誤って乱数値格納手段に格納された数値データが,乱数値として取得されてしまうことを防止できる(本件特許明細書【0297】参照)という効果を奏するものである。
したがって,本件発明の上記相違点3に係る構成は,甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のことから,上記相違点3に係る本件発明の構成とすることは,甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
したがって,上記相違点1~2について検討するまでもなく,本件発明は甲1発明と同一ではなく,甲1発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえない。
2 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,平成29年9月19日付け意見書第25頁第8~21行において,甲第2号証には本件発明の構成Pに相当する構成p2が示されている理由として,
「さらに,「遊技の基本的制御を示す主制御部メイン処理は,電源断等を検知しないかぎり,CPU310が繰り返し実行する」点が【0061】に示され,「主制御部メイン処理のステップS101で示したメダル投入に関する処理は,電源投入後に行う初期処理が実行された後に開始され,また,前回遊技の遊技状態制御処理を行った後に開始される処理である」点が【0063】に示され,【0053】には「新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むためには,その前に乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする必要がある」点が示されていることから,甲第2号証の「スロットマシン100」では,
p2 前記乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグは,前記スロットマシン100の電源が投入されて前記マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になっている,
ことは自明であって,この構成p2も示されている」旨主張している。
しかしながら,上記1イにおいて検討したように,【0053】には「新たな乱数値を乱数値レジスタ602に取り込むためには,その前に乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする必要がある」点は記載されているが,【0063】の「電源投入後に行う初期処理」において,【0053】の「乱数値レジスタ602に格納された乱数値を読み出して,乱数ラッチフラグレジスタ603の乱数ラッチフラグを「0」にする」とは記載されておらず,自明であるともいえないから,甲第2号証の【0053】,【0061】及び【0063】には,本件発明のようなゲーム開始前の「前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに」,所定のフラグがオフ状態になるようにする点は記載されておらず,上記構成p2は,自明であるともいえない。
また,上記1イにおいて検討したように,甲第2号証には,本件発明の「前記所定のフラグは,前記遊技機の電源が投入されて前記遊技制御用マイクロコンピュータによる前記遊技制御が開始されるときに,オフ状態になる」構成は記載されておらず,自明であるとも,周知であるともいえない。
これらのことから,特許異議申立人の主張は,採用することができない。
3 特許異議申立理由について
当審による平成29年5月22日付けの取消理由通知は,上記第3 2及び5において検討したように,特許異議申立の理由と同じであるから,特許異議申立理由は,上記1において検討済みである。
第5 むすび
以上のことから,上記取消理由,並びに,特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては,訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-701180