特許異議申立
2016-701172
コネクタ
- 審判番号
- 2016-701172
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-108566
- 登録番号
- 特許第5938067号(P5938067)
- 請求日
- 2016年12月22日
- 審決日
- 2017年03月31日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】イリソ電子工業株式会社
- 【権利者代理人】大竹 正悟
- 【異議申立人】石井 悠太
- 審判長/審判官
- 審判長 冨岡 和人
- 審判官 内田 博之
- 審判官 中川 隆司
- 分類
- P1651.121-Y (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5938067号発明「コネクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5938067号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第5938067号の請求項1ないし8に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成26年5月26日(優先権主張平成25年5月24日)の出願であって、平成28年5月20日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:同年6月22日)がされ、その特許に対し、同年12月22日に特許異議申立人により特許異議の申立てがされたものである。
2 本件特許発明
特許第5938067号の請求項1ないし8に係る特許(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
互いに幅方向に間隔をおいてハウジングに保持される複数の端子を有し、相手コネクタの相手端子と接触して電気的に接続するコネクタにおいて、
前記端子は、ハウジングに保持される基部と、その基部から並列に伸長するフロント端子とリア端子とを備え、
フロント端子には、該端子の平板面で相手端子に接触するフロント接触部と、基部からそのフロント接触部に至るフロントバネ部とを設け、
リア端子には、該端子の平板面で相手端子に接触するリア接触部と、基部からそのリア接触部に至るリアバネ部とを設け、
フロント接触部とリア接触部は幅方向同一位置に配列されており、
フロントバネ部は、リア端子を中央に挟んで配置する空間を形成するように基部から複数のバネ片部が伸長してフロント接触部の手前で結合する形状であり、且つ、各バネ片部は、基部に対して相手端子に近づく方向へ屈曲する第1屈曲部と、第1屈曲部よりもフロント接触部側に位置しており相手端子に近づく方向へ屈曲する第2屈曲部と、第2屈曲部から伸長してフロント接触部に繋がる傾斜バネ片部とを有しており、
第2屈曲部は、第1屈曲部よりも基部の表面に対する屈曲角が大きく、且つ、フロント接触部における傾斜バネ片側の接触範囲の限界位置は、傾斜バネ片部に到達しないフロント接触部の基端であることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
フロント端子のフロントバネ部とリア端子のリアバネ部が、基部に対するハウジングの拘束部分との境界部分から伸長する
請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
フロントバネ部とリアバネ部の少なくとも何れか一方が基端側よりも先端側の方が細いテーパーバネである
請求項1または請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
相手コネクタとの嵌合時に、フロント端子が相手端子に付着している異物をワイピングし、リア端子がフロント端子に追従して相手端子と接触する
請求項1~請求項3何れか1項記載のコネクタ。
【請求項5】
フロント端子の接圧がリア端子の接圧よりも小さい
請求項1~請求項4何れか1項記載のコネクタ。
【請求項6】
フロント接触部がリア接触部よりも相手端子側に突出している
請求項1~請求項5何れか1項記載のコネクタ。
【請求項7】
フロント接触部の幅がリア接触部の幅と同幅である
請求項1~請求項6何れか1項記載のコネクタ。
【請求項8】
フロント接触部の幅がリア接触部の幅よりも幅広である
請求項1~請求項7何れか1項記載のコネクタ。」
3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第10号証を提出し、本件特許発明1ないし8は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第10号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべきものである旨主張している。
[証拠方法]
甲第1号証:実願昭46-74032号(実開昭48-30755号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)
甲第2号証:特開2000-195588号公報(以下、「刊行物2」という。)
甲第3号証:特開2009-295537号公報(以下、「刊行物3」という。)
甲第4号証:特開平6-188045号公報(以下、「刊行物4」という。)
甲第5号証:特開平8-306446号公報(以下、「刊行物5」という。)
甲第6号証:特許第3581063号公報(以下、「刊行物6」という。)
甲第7号証:実願昭56-100559号(実開昭58-7477号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物7」という。)
甲第8号証:特開平8-236187号公報(以下、「刊行物8」という。)
甲第9号証:特開2001-23711号公報(以下、「刊行物9」という。)
甲第10号証:特開2009-199766号公報(以下、「刊行物10」という。)
4 刊行物
(1)刊行物1
本件出願の優先日前に頒布された刊行物1には、「プリント配線板用コネクタの接触金具」に関し、図面(特に第1図及び第3図ないし第5図参照)と共に、以下の事項が記載されている。
ア「本考案はプリント配線板用コネクタの接触金具に関するものである。
従来此種の接触金具は第3図(イ)に示す如く接点(a)を1つ有する1接点方式(シングル)のものと、図(イ)′に見る如く接点a,a′を2又に分けた形状の2接点方点(ダブル)のものがあるが信頼性の点からは2接点方式の方が望ましいことは明らかである。しかし今後高密度化に伴い限られた空間内に接触金具を配置する場合、従来のような横配列の2接点方式では設計上空間的に無理があり、信頼性の低下はやむを得ないので1接点方式にならざるを得なかつた。
本考案はかゝる欠点を改良する目的で考案されたものであり、第1図に示す如く第1接触子(1)と第2接触子(2)とを2段に縦方向に配列して高密度化を計ると共にダブル接点方式にして信頼性の向上を計つたものである。
なお(イ)図は正面図、(ロ)図は側面図を示し、(1)は第1接触子、(2)は第2接触子で、第1接触子(1)の基板中央部を打抜いて折り曲げ、両接触子(1)(2)を同一平面上に縦配列するように形成したものである。(3)はターミナル部で、電線にラツピング又は半田付けされる部分である。(4)はコンタクト金具と後述の絶縁ハウジング(ボデイ)との間に係止する係止部を示す。」(第1ページ第9行ないし第2ページ第14行)
イ「第4図は第1図に示す接触金具の一対をハウジング(5)に装着したものゝ断面図を示す。」(第2ページ第18行ないし第19行)
ウ「第5図は従来のもの(A)と本案のもの(B)との挿入距離に対するプリント基板挿入力との関係を示す曲線であり、接触子のプリント基板に対する圧力を同一とした場合、本案の方がプリント基板をコネクタに挿入する力は少なくてすむ。即ちコネクタを挿入し易いことになる。
以上の如く本案によればダブル接点を縦配列としたので、接触子を高密度化しても信頼性は低下しない、またダブル接点が各々機械的には独立しているので耐振性,耐衝撃性に優れており、接点の縦配列によりプリント基板の挿入力が少さく、かつ第2接触子は第1接触子の中央の一部を打ち抜いて形成するので、従来のものに比べ製作費も上昇しない等の利点がある。」(第3ページ第8行ないし第4ページ第1行)
エ 上記記載事項ウの「第5図は従来のもの(A)と本案のもの(B)との挿入距離に対するプリント基板挿入力との関係を示す曲線であり、接触子のプリント基板に対する圧力を同一とした場合、本案の方がプリント基板をコネクタに挿入する力は少なくてすむ。即ちコネクタを挿入し易いことになる。」との記載から、プリント配線板用コネクタは、接触金具を介して、プリント基板と接触して電気的に接続すると認められる。
オ 第4図から、接触金具の係止部(4)を設けた部分においてハウジング(5)に保持される点が看取できる。
カ 第1図から、第1接触子(1)と第2接触子(2)が、上記部分から並列に伸張している点が看取できる。
キ 第1図及び第4図から、第1接触子(1)の接点部と第2接触子(2)の接点部が平板面でプリント基板と接触する点が看取できる。
ク 第1図及び第4図から、第1接触子(1)と第2接触子(2)が、それぞれ、上記部分から接点部に至るバネ部を有している点が看取できる。
ケ 第1図から、第1接触子(1)の接点部と第2接触子(2)の接点部が、左右方向同一位置に配列されている点が看取できる。
コ 第1図から、第1接触子(1)のバネ部は、第2接触子(2)を中央に挟んで配置する空間を形成するように、上記部分から複数の脚部が伸張して第1接触子(1)の接点部の手前で結合する形状である点が看取できる。
サ 第1図及び第4図から、第1接触子(1)のバネ部を構成する各脚部は、上記部分に対してプリント基板に近づく方向へ屈曲する屈曲部を有している点が看取できる。
上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本件特許発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「ハウジング(5)に保持される複数の接触金具を有し、プリント基板と接触して電気的に接続するプリント配線板用コネクタにおいて、
前記接触金具は、ハウジング(5)に保持される部分と、その部分から並列に伸長する第1接触子(1)と第2接触子(2)とを備え、
第1接触子(1)には、該第1接触子(1)の平板面でプリント基板に接触する第1接触子(1)の接点部と、前記部分からその第1接触子(1)の接点部に至る第1接触子(1)のバネ部とを設け、
第2接触子(2)には、該第2接触子(2)の平板面でプリント基板に接触する第2接触子(2)の接点部と、前記部分からその第2接触子(2)の接点部に至る第2接触子(2)のバネ部とを設け、
第1接触子(1)の接点部と第2接触子(2)の接点部は左右方向同一位置に配列されており、
第1接触子(1)のバネ部は、第2接触子(2)を中央に挟んで配置する空間を形成するように前記部分から複数の脚部が伸長して第1接触子の接点部の手前で結合する形状であり、且つ、各脚部は、前記部分に対してプリント基板に近づく方向へ屈曲する屈曲部を有しているプリント配線板用コネクタ。」
(2)刊行物2ないし刊行物5
本件出願の優先日前に頒布された刊行物2の図3、刊行物3の図7、刊行物4の図6並びに刊行物5の図7及び図8から、次の事項が看取できる。
「コネクタの端子のバネ部は、保持部に対して相手に近づく方向へ屈曲する第1屈曲部と、第1屈曲部よりも接触部側に位置しており相手に近づく方向へ屈曲する第2屈曲部と、第2屈曲部から伸長して接触部に繋がる部分とを有しており、第2屈曲部は、第1屈曲部よりも保持部の表面に対する屈曲角が大きいコネクタの端子。」
(3)刊行物6
本件出願の優先日前に頒布された刊行物6の図9から、バネ片部に屈曲部を設けたコネクタの端子が看取できる。
(4)刊行物7
本件出願の優先日前に頒布された刊行物7には、「コネクタ」に関して、図面(特に第1図、第3図及び第4図参照。)とともに、以下の事項が記載されている。
ア「このため、本考案では、ブラグの挿入方向に沿った直線上に少なくとも二以上のコンタクト部をピンに設け、かつそのうちの二つのコンタクト部において、プラグに最初に接触するコンタクト部の接触幅を、プラグに後から接触するコンタクト部の接触幅以上としてその目的を達した。このようにすると、最初のコンタクト部がプラグに接触したときクリナー的役割をして異物を除去し、後のコンタクト部が清浄な表面を有するプラグに接触することができるのでピンとプラグとの接続を可能にする。」(第3ページ第4行ないし第14行)
イ「第3図はピンとプラグとの接続状態を示した図で、矢印はプラグの挿入方向を示す。そして第4図はその斜視図である。図中9、10はコンタクト部である。本実施例では、コンタクト部10はピン2の中央部を切欠いて湾曲させることにより形成されている。そしてこのコンタクト部9、10はプラグ5の挿入方向に沿った直線上に配列される。当然、第4図からも判るように前者のコンタクト部9の接触幅Aは後者のコンタクト部10の接触幅Bよりも幅が広い。」(第3ページ第16行ないし第4ページ第5行)
ウ「このコネクタの溝にプラグ5を挿入すると、まず最初に前者のコンタクト部9がプラグ5に接触してその上を摺動する。その際、プラグ5上に異物8があれば、このコンタクト部9はそれを集積して「A]の幅で摺動面を清浄する。それと共に、前者のコンタクト部9に続いて、同一直線上にある後者のコンタクトl0がプラグ5に接触し、その上を摺動する。後者のコンタクト部10の接触幅Bは前者のコンタクト部9の接触幅Aよりも快いので、このコンタクト部10はプラグ5上の他の異物を拾うことなく清浄な面と接触する。従って、たとえ前者のコンタクト部9が異物8に乗り上げたとしてもこのコネクタは後者のコンタクト部10によってピン2とプラグ5との接続を確実なものとする。」(第4ページ第6行ないし第20行)
(5)刊行物8
本件出願の優先日前に頒布された刊行物8には、「コンタクト構造および電気接続用コネクタ」に関して、図面(特に、図2参照。)とともに、以下の事項が記載されている。
ア「【0016】雌端子2は、1枚の板バネ材であり、図示されるように、長さ方向の一方の先端部に表面方向に湾曲する湾曲部を有する前部接触片21を備え、他方の端部を基端部として、中央部で後部接触片22を切り起こして先端部を裏面方向に折り曲げ、表面に凸部を形成して、前部接触片21と後部接触片22とを長さ方向に直列配置している。前部接触片21および後部接触片22それぞれは、独立したバネ機能を有している。」
イ「【0028】この構造によって、1枚の板バネ材からのプレス成型を容易にすると共に幅を細めた、かつ、直列の2点での接触が電気的接続を確実にする雌端子を得ることができる。」
(6)刊行物9
本件出願の優先日前に頒布された刊行物9には、「挟接形ソケット」に関して、図面(特に、図2ないし図4参照。)とともに、以下の事項が記載されている。
ア「【0013】上記挟接形ソケットの構造により、単一の雄端子に対してその上部と下部における四点接触が形成されて接触面積を増加すると共に、雄端子の表面に生成されている酸化被膜を第1,第2上部接触挟持片で清掃し、この清掃面に上記第1,第2下部接触挟持片を健全に接触せしめる。」
イ「【0020】上記挟接形ソケットの構造により、単一の電極パッド2,3に対してその上部と下部における二点接触が形成されて接触面積を増加すると共に、電極パッド2,3の表面に付着したガラス粉塵を第1,第2上部接触挟持片4,5で清掃し、この清掃面に上記第1,第2下部接触挟持片6,7を健全に接触せしめる。
【0021】適例としては、上記第1,第2上部接触挟持片4,5と第1,第2下部接触挟持片6,7とを左右対称に配置しつつ、第1,第2上部接触挟持片4,5の加圧接触部間の間隔W1に対し、第1,第2下部接触挟持片6,7の加圧接触部間の間隔W2が大となるように設定し待機状態に置く構成とする。」
ウ「【0044】上記第1,第2接触子8,9は上記連結部19,20を有する部位においてソケット本体13の底部に確固に植え込み保持し、該植え込み部から上記第1,第2上部接触挟持片4,5と上記第1,第2下部接触挟持片6,7とを立ち上げ、同植え込み部から上記実装端子11,12を立ち下げる。」
(7)刊行物10
本件出願の優先日前に頒布された刊行物10には、「コネクタ装置」に関して、図面(特に、図7参照。)とともに、以下の事項が記載されている。
ア「【0027】
第1、第2のコンタクト腕部31,32は、共に、第2の本体部33bに対してX2方向に直角に折り曲げてあり、且つ、共に幅W1を有する。」
イ「【0033】
また、第1のコンタクト腕部31及び第2のコンタクト腕部32は、第2のコンタクト部32aの接触圧F2が第1のコンタクト部31aの接触圧F1よりも高くなるように設計してある。例えば、第1のコンタクト部31aの接触圧F1は約0.33N、第2のコンタクト部32aの接触圧F2は約0.46Nである。」
ウ「【0047】
両側のパッド62Y1,62Y2は、最初に、両側の第1のコンタクト部31aに当たって、第1のコンタクト腕部31を外側に弾性的に撓ませ、第1のコンタクト部31aはパッド62Y1,62Y2上を相対的に擦ってパッド62Y1,62Y2上の汚れを退けてクリーニングする。」
エ「【0051】
第2のコンタクト部32aは、パッド62Y1,62Y2のうち第1のコンタクト部31aによってクリーニングされた部分に接触する。しかも、第2のコンタクト部32aは、接触圧F2で接触する。
【0052】
このように、一つのパッドに第1、第2のコンタクト部31a、32aの二点で接触し、特に、第2のコンタクト部32aはパッドのクリーニングされた部分に接触圧F2で接触するため、回路基板60のカードエッジ部61のカードエッジコネクタ装置1への電気的接続は高い信頼性でなさる。」
5 判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「ハウジング(5)」は本件特許発明1の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「接触金具」は「端子」に、「ハウジング(5)に保持される部分」は「ハウジングに保持される基部」に、「プリント配線板用コネクタ」は「コネクタ」に、「第1接触子(1)」は「フロント端子」に、「第2接触子(2)」は「リア端子」に、「第1接触子(1)の接点部」は「フロント接触部」に、「第1接触子(1)のバネ部」は「フロントバネ部」に、「第2接触子(2)の接点部」は「リア接触部」に、「第2接触子(2)のバネ部」は「リアバネ部」に、「脚部」は「バネ片部」に、「左右方向」は「幅方向」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1発明の「プリント基板」と本件特許発明1の「相手コネクタの相手端子」は、「相手」という限りで共通し、刊行物1発明の「屈曲部」と本件特許発明1の「第1屈曲部と、第1屈曲部よりもフロント接触部側に位置しており相手端子に近づく方向へ屈曲する第2屈曲部」は、「屈曲部」という限りで共通する。
したがって、本件特許発明1と刊行物1発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「ハウジングに保持される複数の端子を有し、相手と接触して電気的に接続するコネクタにおいて、
前記端子は、ハウジングに保持される基部と、その基部から並列に伸長するフロント端子とリア端子とを備え、
フロント端子には、該端子の平板面で相手に接触するフロント接触部と、基部からそのフロント接触部に至るフロントバネ部とを設け、
リア端子には、該端子の平板面で相手に接触するリア接触部と、基部からそのリア接触部に至るリアバネ部とを設け、
フロント接触部とリア接触部は幅方向同一位置に配列されており、
フロントバネ部は、リア端子を中央に挟んで配置する空間を形成するように基部から複数のバネ片部が伸長してフロント接触部の手前で結合する形状であり、且つ、各バネ片部は、基部に対して相手に近づく方向へ屈曲する屈曲部を有しているコネクタ。」
[相違点1]
本件特許発明1の複数の端子は、「互いに幅方向に間隔をおいて」保持されるのに対し、刊行物1発明は、かかる構成であるか不明な点。
[相違点2]
コネクタが接触する「相手」について、本件特許発明1は「相手コネクタの相手端子」であるのに対し、刊行物1発明は「プリント基板」である点。
[相違点3]
「屈曲部」について、本件特許発明1の各バネ片部は、「第1屈曲部と、第1屈曲部よりもフロント接触部側に位置しており相手端子に近づく方向へ屈曲する第2屈曲部と、第2屈曲部から伸長してフロント接触部に繋がる傾斜バネ片部とを有しており、第2屈曲部は、第1屈曲部よりも基部の表面に対する屈曲角が大きく、且つ、フロント接触部における傾斜バネ片側の接触範囲の限界位置は、傾斜バネ片部に到達しないフロント接触部の基端である」のに対し、刊行物1発明の各脚部は、かかる構成を有しない点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点3を先に検討する。
本件特許発明1は、「フロントバネ部は、リア端子を中央に挟んで配置する空間を形成するように基部から複数のバネ片部が伸長してフロント接触部の手前で結合する形状」であるところ、相違点3に係る本件特許発明1の構成のうち、各バネ片部が「フロント接触部における傾斜バネ片側の接触範囲の限界位置は、傾斜バネ片部に到達しないフロント接触部の基端である」との構成は、本件特許明細書の「端子の組み付け状態等によってコネクタ嵌合状態で相手端子60がフロント接触部24aの基端を超えてフロントバネ部24bの短いバネ片部24b2と接触してしまうと、接触幅が広くなることから接触圧力が低下して接触信頼性が得られなくなる。しかしながら本実施形態ではフロント接点44a1の接触範囲を広くとることができるので、そうした不具合が発生しないようにすることができる。」(段落【0053】)との記載からみて、接触位置が傾斜バネ片部に到達すると接触幅が広くなることにより接触圧力が低下して接触信頼性が得られなくなるとの課題を解決するものと認められる。
他方、本件出願の優先日前において、上記4(2)の刊行物2ないし5の記載からみて、「コネクタの端子のバネ部は、保持部に対して相手に近づく方向へ屈曲する第1屈曲部と、第1屈曲部よりも接触部側に位置しており相手に近づく方向へ屈曲する第2屈曲部と、第2屈曲部から伸長して接触部に繋がる部分とを有しており、第2屈曲部は、第1屈曲部よりも保持部の表面に対する屈曲角が大きいコネクタの端子」は従来周知の技術手段である。
しかしながら、上記周知の技術手段は、本件特許発明1の上記「フロント接触部における傾斜バネ片側の接触範囲の限界位置は、傾斜バネ片部に到達しないフロント接触部の基端である」との構成を有していない。
また、上記周知の技術手段は、「複数のバネ片部が伸長して第1接触子の接点の手前で結合する」ものではないから、仮に本件特許発明1に上記周知の技術手段を適用しても、上記課題の解決を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、刊行物6ないし刊行物10にも、本件特許発明1の上記「フロント接触部における傾斜バネ片側の接触範囲の限界位置は、傾斜バネ片部に到達しないフロント接触部の基端である」に相当する構成は記載されていない。
そうすると、刊行物1発明に刊行物2ないし10に記載された事項を適用して、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、上記相違点1及び上記相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、刊行物1発明及び刊行物2ないし10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、本件特許発明1についての判断と同様の理由により、本件特許発明2ないし8は、刊行物1発明及び刊行物2ないし10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし8は、刊行物1発明及び刊行物2ないし10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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