特許異議申立
2024-700731
コンセント装置、コンセントシステム、及びコンセント装置の製造方法
- 審判番号
- 2024-700731
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-081963
- 登録番号
- 7426599
- 請求日
- 2024年08月02日
- 審決日
- 2024年10月23日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【異議申立人】神保電器 株式会社
- 【異議申立人代理人】山本 寿武
- 審判長/審判官
- 審判長 中屋 裕一郎
- 審判官 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-Y (H01R) / P1651.536-Y (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7426599号発明「コンセント装置、コンセントシステム、及びコンセント装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7426599号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7426599号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年5月31日に出願された特願2019-103352号の一部を、令和5年5月18日に新たな特許出願(特願2023-81963号)としたものであって、令和6年1月25日にその特許権の設定登録がされ、令和6年2月2日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~5に係る特許について、令和6年8月2日付けで特許異議申立人 神保電器株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許第7426599号の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」などとし、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
前面を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、プラグと電気的に接続される接続部材と、を備え、
前記前面には、前記プラグを差し込むための差込口が形成されており、
少なくとも前記前面の一部は、複数の凹部と複数の凸部とが形成された起伏面であり、
前記複数の凸部と前記複数の凹部とは非対称形状である、
コンセント装置。
【請求項2】
前記複数の凹部の最小曲率半径は前記複数の凸部の最小曲率半径よりも大きい、
請求項1に記載のコンセント装置。
【請求項3】
前記起伏面の前記複数の凹部と前記起伏面の前記複数の凸部とは、等方的な凹凸形状を形成している、
請求項1又は2に記載のコンセント装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコンセント装置と、
窓孔を有する枠状のコンセントプレートと、
を備え、
前記コンセントプレートは、前記窓孔から前記前面を露出させるように、前記コンセント装置と組み合わされ、
前記コンセントプレートの表面の少なくとも一部は、前記起伏面である、
コンセントシステム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコンセント装置の製造方法であって、
前記ハウジングを成形する成形工程において、転写面に凹凸形状を有する金型を用いて、前記転写面の凹凸形状を前記ハウジングの前記前面に転写することで、前記起伏面を形成する、
コンセント装置の製造方法。
第3 特許異議の申立理由の概要
1 特許異議申立人が主張する申立理由
(1)理由1
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証~甲第7号証を提出し、請求項1~5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
(2)理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
2 証拠方法
特許異議申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。(以下「甲第1号証」を単に「甲1」などという。)
甲1:特開2017-153214号公報
甲2:ワールドエッチング社のWEBページ、Internet ArchiveのWEBサイトに、2018年10月29日に保存された電子データ
甲3:日本エッチング社のWEBページ、Internet ArchiveのWEBサイトに、2018年12月14日に保存された電子データ
甲4:棚澤八光社のWEBページ、Internet ArchiveのWEBサイトに、2018年11月19日に保存された電子データ
甲5:特開2005-302623号公報
甲6:特開2019-6068号公報
甲7:特開2006-68972号公報
第4 証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0014】
コンセント2は、図2~図4Bに示すように、ケース20と、複数(ここでは4個)の刃受けばね24とを備えている。
【0015】
ケース20は、カバー21と、ボディ22とを有しており、カバー21とボディ22とを結合することで構成されている。
【0016】
カバー21は、例えばユリア樹脂(尿素樹脂)などの合成樹脂材料で形成されている。カバー21は、上下方向に長い矩形箱状であり、後面が開口している。カバー21の前面には、左右方向に並べて配置された一対の栓刃挿入孔211が、上下方向に並べて2組設けられている。一対の栓刃挿入孔211のうち右側の栓刃挿入孔211は、左側の栓刃挿入孔211に比べて、上下方向の開口寸法が小さくなっている(図4A参照)。」
「【0019】
刃受けばね24は、例えば銅合金などの電気導電率の高い金属材料で形成された一対のばね片を有している。本実施形態では、4個の栓刃挿入孔211に対応するようにして4個の刃受けばね24がケース20に収納されている。そして、刃受けばね24は、栓刃挿入孔211を通して差し込まれたプラグの栓刃を一対のばね片で挟み込むことで栓刃を機械的に保持し、かつ栓刃に電気的に接続される。
【0020】
化粧プレート3は、図2及び図3に示すように、第1プレート4と、第2プレート5とを備えている。
【0021】
第1プレート4は、例えばABS樹脂などの合成樹脂材料で形成されている。第1プレート4は、左右方向において対向する一対の第1片41と、上下方向において対向する一対の第2片42とを有している。そして、第1プレート4は、一対の第1片41及び一対の第2片42により上下方向に長い矩形枠状に形成されている。第1プレート4は、上下方向に長い矩形の開口部43を有している。開口部43の開口寸法は、コンセント2の外形寸法(上下寸法及び左右寸法)と略同寸法である。そして、取付枠1に化粧プレート3を取り付けた状態では、図4A及び図4Bに示すように、コンセント2が第1プレート4の開口部43内に配置される。」
「 図2
[図:0001416526000001.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)を総合すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「 前面を有するカバー21とボディ22とを結合することで構成されているケース20と、
前記ケース20内に収容され、プラグの栓刃と電気的に接続される刃受けばね24と、を備え、
前記前面には、前記プラグの栓刃が差し込まれる栓刃挿入孔211が設けられている、
コンセント2。」
2 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載又は示されている。
「
[図:0001416526000002.jpg]
」
3 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載又は示されている。
「
[図:0001416526000003.jpg]
」
4 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載又は示されている。
「
[図:0001416526000004.jpg]
」
5 甲5の記載事項
(1)甲5には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0038】
支持ケース9は、例えば、塩化ビニル系の透明な合成樹脂材の射出成形によって形成された内蔵物透視自在なスケルトン仕様とされており、表面に梨地処理を施すことで内臓物がややぼやけて見えるようにしてある。但し、第2~第4コンセント部k2~k4、及びロック装置Rの押釦15の各周囲部分、及び底面の表示ランプ8認識用としての円形の覗き窓部分は、梨地処理を省略して内部が鮮明に見通せる透明部分29としてある。また、第1コンセント部k1には、アース付の差込プラグであっても支障無く接続できるよう、アース金具の逃がし溝28が、コンセント底面に形成されている(図4参照)。」
「 図1
[図:0001416526000005.jpg]
」
(2)甲5に記載されている技術的事項
上記(1)を総合すると、甲5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「表面に梨地処理を施した、コンセントの支持ケース9。」
6 甲6の記載事項
(1)甲6には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0023】
微細凹凸層30は、平均突起径が0.1μm~2.0μmの微細凹凸31を有するようにして形成されためっき層である。「平均突起径」は、レーザー顕微鏡を用いて、めっき層の表面を9000倍で観察し、約100個の突起の径の平均値を算出したものである。図5において、微細凹凸31の一の突起の径D2を模式的に示す。本願発明者等は、鋭意研究した結果、微細凹凸31の平均突起径と車両用内装材50の意匠性と間に相関があり、このような微細凹凸31を有する微細凹凸層30を備える成形型20によれば、車両用内装材50の意匠性を向上する効果が得られるという知見を得た。この微細凹凸31は、金型母材21のシボを形成するための凹凸23より微細なものとされている。本実施形態では、微細凹凸31は、さらに金型母材21の凹凸24,25より微細なものとされている。」
「【0026】
車両用内装材50の意匠面51は、図6に示すように、成形面20Aの凹凸形状が転写された凹凸形状をなしている。なお、図6に示す凹凸52は、微細凹凸層30表面の微細凹凸31が転写されたものであり、凹凸52より粗い凹凸53は、成形面20Aの凹凸25の形状が転写されたものである。そして、これらの凹凸52,53は、意匠面51の成形面20Aの凹凸23が転写されたシボの凸部表面や凹部内面に形成されている。」
「 図6
[図:0001416526000006.jpg]
」
(2)甲6に記載されている技術的事項
上記(1)を総合すると、甲6には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「車両用内装材50の意匠性を向上させるために、意匠面51を凹凸形状とした車両用内装材50。」
7 甲7の記載事項
(1)甲7には、以下の事項が記載又は示されている。
「【0002】
自動車のインストルメントパネル、コンソール、ピラー内装品をはじめとする各種の樹脂成形品の表面には、皮シボ模様、格子等の幾何学模様等の凹凸を伴う装飾模様を設けることが多い。この装飾模様は、成形用金型の成形面に模様賦形用凹凸部を形成しておき、成形用金型による樹脂成形品の成形と同時に、模様賦形用凹凸部により樹脂成形品の表面に賦形している。模様賦形用凹凸部の主な形成方法は、電鋳又はエッチングである。エッチングは、剛性の高い金型にも適用できる点やコストの点で電鋳よりも有利であるが、模様の本物感の点では電鋳よりも不利である。しかし、本出願人は、本物に近い皮シボ模様等を形成することのできるエッチング方法を開発し、不利な点を克服することに成功している(特許文献1)。
【0003】
しかし、装飾模様を賦形した樹脂成形品には、模様の本物感だけでなく、グロス(テカリ感)の制御が求められ、特に最近はテカリ感の低い(艶消し感の高い)低グロスのものが要求されることが多い。このグロスの高低は、次に上げる従来例1~3のように、他の性質の高低とも関連する(相反することもある)ため、単に低くすればよいという簡単なものではない。」
「【0024】
樹脂成形用金型10を得る際には、まず、模様賦形用凹凸部12を特許文献1記載の方法で成形面11に形成し、次に、低グロス化用加工部を形成し低グロス化する。
【0025】
その低グロス化方法を以下に示す。まず、下地の紙となる柔軟シート51の表面に、直径220μmの円形の平面形状をした無数のマスク部53からなるレジスト52を、36μmの相互間隔54で、90度に交わる2方向の線群の交点に略規則正しく配列するように付着させた図3aに示す転写用シート50を用意する。
【0026】
次に、図4a及び図4bに示すように、転写用シート50のレジスト52が付着された側の面を成形面11に押し付け、レジスト52を付着させる。その後、柔軟シート51だけを剥がせば図4cに示すように、レジスト52だけが綺麗に転写される。
【0027】
この状態で、エッチング液を浸して露出している成形面11を20μmエッチングする。これにより、図4dに示すようにレジスト52があった所には相対的に微小凸部17が形成される。この後、図4eに示すようにレジスト52を除去する。これら一連の操作により、低グロス化用加工部を成形面11に形成する。以上のように形成すれば、平面形状・平面寸法・高さ・相互間隔が、それぞれ、全数が均一である微小凸部17を、予め設計された平面配列パターンで配列することができる。」
「 図3 図4
[図:0001416526000007.jpg]
」
(2)甲7に記載されている技術的事項
上記(1)を総合すると、甲7には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「自動車のインストルメントパネル等の樹脂成形品において、皮シボ模様の本物感だけではなく、グロス(テカリ感)の低い模様とするための金型であって、2方向の線群の交点に略規則正しく配列した転写用シート50によって得られる樹脂成形用金型10。」
第5 当審の判断
1 理由1について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「カバー21とボディ22とを結合することで構成されているケース20」は本件発明1の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「プラグの栓刃」は「プラグ」に、「刃受けばね24」は「接続部材」に、「前記プラグの栓刃が差し込まれる」は「前記プラグを差し込むための」に、「栓刃挿入孔211」は「差込口」に、「設けられている」は「形成されており」に、「コンセント2」は「コンセント装置」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、
「前面を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、プラグと電気的に接続される接続部材と、を備え、
前記前面には、前記プラグを差し込むための差込口が形成されている、
コンセント装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では「少なくとも前記前面の一部は、複数の凹部と複数の凸部とが形成された起伏面であり、前記複数の凸部と前記複数の凹部とは非対称形状である」のに対し、甲1発明の前面は起伏面ではない点。
相違点1について検討する。
甲5には、上記「第4 5(2)」で検討した技術的事項が記載されている。しかし、当該梨地処理は、内蔵物透視自在なスケルトン仕様とされている支持ケース9において、内臓物がややぼやけて見えるようにするために施された処理である。また、第2~第4コンセント部k2~k4は、梨地処理を省略して内部が鮮明に見通せる透明部分29としている(段落【0038】)。これに対して、甲1発明のケース20はスケルトン仕様とされているわけではないから、ケース20の内臓物がややぼやけて見えるようにするための処理を改めて行う必要性はないし、栓刃挿入孔211周辺をスケルトン仕様にする必要性もないから、甲1発明に甲5に記載されている技術的事項を適用する動機付けはない。
甲6には、上記「第4 6(2)」で検討した技術的事項が記載されている。しかし、甲1には、ケース20の意匠性を向上させるべきことについて記載も示唆もされておらず、コンセントの技術分野においてケースの意匠性を向上させることが周知の課題であることを示す証拠もないから、甲1発明のケース20に甲6に記載されている技術的事項を適用する動機付けはない。
甲7には、上記「第4 7(2)」で検討した技術的事項が記載されている。しかし、甲1には、ケース20を皮シボ模様にしたり、本物感だけではなくグロス(テカリ感)の低い模様としたりすることについて記載も示唆もされておらず、コンセントの技術分野においてこのような模様とすることが周知の課題であることを示す証拠もないから、甲1発明のケース20に甲7に記載されている技術的事項を適用する動機付けはない。
また、甲2~甲4から、樹脂のシボ加工が周知技術であったとしても、これまで検討した通り、甲1発明のケース20にシボ加工を施すべき動機付けはない。
したがって、甲2~甲4を考慮しても、甲1発明及び甲5~甲7に記載されている技術的事項に基いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、たとえ当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、「汚れが付着しにくくなる(落ちやすくなる)」(【0014】参照)ものであって、「その結果、例えば、汚れに起因したコンセント装置1の電気的性質の変化が生じにくくなる。」(【0070】参照)という格別の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲5~甲7に記載されている技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用するものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、甲1発明及び甲5~甲7に記載されている技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 理由2について
明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「【0069】
より詳細には、図5A及び図5Bに示すように、起伏面8は、凹部801と凸部802とについて対称な形状ではなく、非対称な形状を採用している。特に、本実施形態では、凹部801の最小曲率半径が、凸部802の最小曲率半径よりも大きくなるように、凹部801と凸部802とで、形状に差異を付けている。言い換えれば、起伏面8の凹部801は凸部802に比べて滑らかな面を構成する。さらに、起伏面8は、上述したように、厳密に同じ模様が連続している訳ではないため、複数の凹部801及び複数の凸部802は、厳密には不均一な形状を有することになる。
【0070】
凹部801及び凸部802について、このような非対称な形状を採用したことで、例えば、図5Aに示すように、起伏面8に微細な異物X1が付着したとしても、図5Bに示すように、異物X1は凹部801から排出されやすい。その結果、起伏面8には、汚れ等の異物X1が堆積しにくく、起伏面8としては、例えば、手垢又は塵埃等の汚れが付着しにくくなる(落ちやすくなる)、という効果が顕著になる。その結果、例えば、汚れに起因したコンセント装置1の電気的性質の変化が生じにくくなる。図5A及び図5Bに示すような起伏面8の形状は、第1起伏面81及び第2起伏面82のいずれにも適用可能である。」
「【0077】
(3)製造方法
以下、本実施形態に係るコンセント装置1の製造方法について、図6A~図6Cを参照して説明する。
【0078】
このコンセント装置1の製造方法は、ハウジング5を成形する成形工程を有している。この製造方法では、成形工程において、転写面M11に凹凸形状を有する金型M1を用いて、転写面M11の凹凸形状をハウジング5の前面501に転写することで、起伏面8を形成する。
【0079】
すなわち、ハウジング5を構成するカバー51及びボディ52は、図6Aに示すように、金型M1を用いた樹脂成形によって作成される。本実施形態では一例として、成形工程では、圧縮成形が採用されている。つまり、成形工程では、加熱した金型M1のキャビティに成形材料(樹脂材料)を入れて、圧縮成形機で加圧して硬化させることにより、ハウジング5(カバー51及びボディ52)が作成される。
【0080】
ここで、樹脂材料が硬化すれば、図6Bに示すように、金型M1の転写面M11を前面501から離す向きに移動させることで、金型M1をハウジング5(ここではカバー51)から分離させる「離型」が行われる。図6Cに示すように、転写面M11は、凹凸形状を有している。金型M1の転写面M11における凹凸形状は、例えば、エッチングによる化学処理、又はサンドブラスト、若しくは鏡面仕上げにしない研磨処理等の物理処理によって形成される。
【0081】
上記より、圧縮成形時には、転写面M11の凹凸形状が、ハウジング5(カバー51)の前面501に転写されることになり、前面501には起伏面8が形成される。このように、起伏面8は、シボ加工(エンボス加工)により形成される。また、前面501以外の起伏面8についても、金型M1の転写面M11の凹凸形状をハウジング5に転写することで、形成される。」
これらの記載から、金型M1の転写面M11の凹凸形状をハウジング5に転写することで、ハウジング5の表面に凹凸形状を設けること、金型M1の転写面M11における凹凸形状はエッチングによる化学処理等によって形成されることが理解でき、エッチングによる化学処理等により形成する凹凸形状をある程度コントロールできることは技術常識であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明(特に【0077】~【0081】)は、本件発明を当業者が過度の試行錯誤を要することなく、実施することができる程度に記載されているといえる。
なお、異議申立人は、「一般的な樹脂製品のシボ加工に用いられる金型は、エッチングやサンドブラストなどの表面加工技術を使って転写面に凹凸形状を形成するが、その場合、金型の転写面に形成された凹凸形状の表面は、更に細かな凹凸を有する粗面となっていることは周知の事項である。そのため、シボ加工された樹脂製品の表面は、凹凸の無い平滑面に比べて、凹凸の境界や、山形に突き出した凸部や、更に細かな凹凸を有する粗面などに、塵埃が引っ掛かり易くなり、ひいては表面が汚れたり、綿埃状の塵埃が表面に堆積してコンセントの電気的な短絡事故を引き起こしたりするおそれが高まる。」(特許異議申立書14頁10~17行)、「然るに、本件特許における特許査定時の明細書及び図面には、上記明細書段落【0070】に明記されたような作用効果を奏する「起伏面」を形成するための方法が、何も記載されていない。」(同23~25行)と主張している。
しかし、明細書の【0070】における「凹部801及び凸部802について、このような非対称な形状を採用したことで、例えば、図5Aに示すように、起伏面8に微細な異物X1が付着したとしても、図5Bに示すように、異物X1は凹部801から排出されやすい。」との記載によれば、凹部と凸部の形状が非対称であれば、異物は凹部から排出されやすいと説明しているに過ぎず、凹凸形状についてそれ以上の追加的な条件を満たさなければ作用効果を奏しないと説明しているわけではない。そして、凹部と凸部の形状が非対称な凹凸形状については、既に検討した通り、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明を当業者が過度の試行錯誤を要することなく、実施することができる程度に記載されているといえる。
したがって、異議申立人の上記主張を採用することはできない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
第6 むすび
以上のことから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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