特許異議申立
2016-700923
駆動装置、画像形成装置および画像形成装置の周辺装置
- 審判番号
- 2016-700923
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-097262
- 登録番号
- 特許第5899648号(P5899648)
- 請求日
- 2016年09月27日
- 審決日
- 2018年06月25日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社リコー
- 【権利者代理人】有我 軍一郎
- 【異議申立人】小池 利恵
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 竜一
- 審判官 堀川 一郎
- 審判官 矢島 伸一
- 分類
- P1651.121-ZAA(H02P)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条1項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第1項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5899648号発明「駆動装置、画像形成装置および画像形成装置の周辺装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5899648号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~13]について訂正することを認める。
特許第5899648号の請求項1~9、11~13に係る特許を取り消す。
特許第5899648号の請求項10に係る特許についての特許異議申立を却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件特許第5899648号に係る出願は、平成23年4月25日(優先権主張平成22年7月27日、平成23年3月18日)の出願であって、平成28年3月18日に特許権の設定登録がなされた。
これに対して、特許異議申立人小池利恵より、平成28年9月27日に、本件請求項1ないし13に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、平成29年1月20日付で取消理由が通知され(発送日:平成29年1月25日)、これに対し特許権者より平成29年3月27日付で意見書及び訂正請求書、平成29年3月31日付で手続補正書が提出され、平成29年6月2日付で訂正請求があった旨が通知され(発送日:平成29年6月8日)、これに対し特許異議申立人より平成29年7月5日付で意見書が提出され、平成29年9月8日付で取消理由が通知され(発送日:平成29年9月13日)、これに対し特許権者より平成29年11月13日付で意見書及び訂正請求書が提出され、平成29年11月29日付で手続補正指令が通知され(発送日:平成29年12月1日)、これに対し特許権者より平成29年12月28日付で手続補正書が提出され、平成30年2月13日付で取消理由通知(決定の予告)がされ(発送日:平成30年2月16日)、これに対し特許権者より平成30年4月6日付で意見書及び訂正請求書が提出されたものである。
2.平成30年4月6日付の訂正請求による訂正の適否
(1)訂正の内容
(a)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「出力される駆動信号に基づいて」とあるのを「出力されるPWM信号及び回転方向信号を含む駆動信号に基づいて」に訂正する。
(b)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記制御手段の外部から入力された信号」とあるのを「前記制御手段の外部から入力されたステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号」に訂正する。
(c)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「特徴とする駆動装置。」とあるのを「駆動装置と、前記エンコーダ信号と外部から入力されたステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号とに基づいて、少なくとも前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転位置を制御する前記駆動信号を出力する、前記駆動装置外部の前記制御手段と、を有するモータシステム。」に訂正する。
(d)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2~9に「駆動装置」とあるのを「モータシステム」に訂正する。
(e)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(f)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11~13に「請求項10」とあるのを「請求項1」に訂正する。
(g)訂正事項7
明細書の段落【0008】に「本発明に係る駆動装置は、負荷を駆動するインナーロータ型DCブラシレスモータと、前記インナーロータ型DCブラシレスモータに対して前記負荷の逆側に設けられた基板とを有する駆動装置であって、前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転軸と同軸に取り付けられたエンコーダディスクと、前記エンコーダディスクの回転に応じてエンコーダ信号を出力するセンサと、前記駆動装置の外部の制御手段から出力される駆動信号に基づいて前記インナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路と、前記基板に設けられた入出力部と、を備え、前記エンコーダ信号は前記入出力部を介して前記制御手段へ出力され、前記制御手段の外部から入力された信号と前記エンコーダ信号とに基づいて前記制御手段から出力された前記駆動信号は、前記入出力部を介してドライバ回路へ入力されることを特徴とする。」と、記載されているのを「本発明に係るモータシステムは、負荷を駆動するインナーロータ型DCブラシレスモータと、前記インナーロータ型DCブラシレスモータに対して前記負荷の逆側に設けられた基板とを有する駆動装置であって、前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転軸と同軸に取り付けられたエンコーダディスクと、前記エンコーダディスクの回転に応じてエンコーダ信号を出力するセンサと、前記駆動装置の外部の制御手段から出力されるPWM信号及び回転方向信号を含む駆動信号に基づいて前記インナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路と、前記基板に設けられた入出力部と、を備え、前記エンコーダ信号は前記入出力部を介して前記制御手段へ出力され、前記制御手段の外部から入力された信号と前記エンコーダ信号とに基づいて前記制御手段から出力された前記駆動信号は、前記入出力部を介してドライバ回路へ入力されることを特徴とする。」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.一群の請求項について
訂正前の請求項1~13について、訂正前の請求項2~13はそれぞれ訂正前の請求項1を引用しているものであり、又、訂正事項7は、特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものである。したがって、訂正事項1~7は一群の請求項ごとに請求されたものである。
イ.訂正の適否
(ア)訂正事項1
a 訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 訂正事項1は、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(イ)訂正事項2
a 訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 訂正事項2は、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(ウ)訂正事項3
a 訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載の構成に訂正前の請求項10に記載の構成を加えるとともに駆動信号について制御対象をより具体的に示しているので、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 訂正事項3は、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(エ)訂正事項4
a 上記「(ウ)」aに記載したように、訂正前の請求項1に記載の構成に訂正前の請求項10に記載の構成を加えて請求項1を「モータシステム」に係るものとしたので、訂正前の請求項1の従属項の訂正前の請求項2~9についての訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 訂正事項4は、訂正前の請求項10の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされてい記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第るので、訂正前の請求項2~9に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(オ)訂正事項5
a 訂正事項5は、訂正前の請求項10を削除するというものであるので、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項5は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 上記aの理由から明らかなように、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項10に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(カ)訂正事項6
a 訂正事項6は、訂正前の請求項1に記載の構成に訂正前の請求項10に記載の構成を加え訂正前の請求項10を削除したことによる訂正前の請求項10の従属項である請求項11~13を請求項1の従属項とするものであるので、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 上記aの理由から明らかなように、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされているので、訂正前の請求項11~13に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(キ)訂正事項7
a 訂正事項7は、訂正事項1~3に係る訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載との整合を図るための訂正であり、明りょうでない記載の釈明をしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
b 上記aに記載したとおり、訂正事項7は、訂正事項1~3に係る訂正に伴って発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明をしようとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c 上記aの理由から明らかなように、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d 本件は、訂正前の全ての請求項1~13について特許異議申立がされ、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項7に関して特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)むすび
したがって、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
3.当審の判断
(1)本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~9、11~13に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等といい、請求項1~9、11~13に係る発明を「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~9、11~13に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
負荷を駆動するインナーロータ型DCブラシレスモータと、前記インナーロータ型DCブラシレスモー夕に対して前記負荷の逆側に設けられた基板とを有する駆動装置であって、
前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転軸と同軸に取り付けられたエンコーダディスクと、
前記エンコーダディスクの回転に応じてエンコーダ信号を出力するセンサと、
前記駆動装置の外部の制御手段から出力されるPWM信号及び回転方向信号を含む駆動信号に基づいて前記インナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路と、
前記基板に設けられた入出力部と、を備え、
前記エンコーダ信号は前記入出力部を介して前記制御手段へ出力され、
前記制御手段の外部から入力されたステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号と前記エンコーダ信号とに基づいて前記制御手段から出力された前記駆動信号は、前記入出力部を介してドライバ回路へ入力される駆動装置と、前記エンコーダ信号と外部から入力されたステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号とに基づいて、少なくとも前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転位置を制御する前記駆動信号を出力する、前記駆動装置外部の前記制御手段と、を有するモータシステム。
【請求項2】
前記エンコーダディスクは、前記インナーロータ型DCブラシレスモータを介して前記負荷と逆側に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のモータシステム。
【請求項3】
前記基板には前記ドライバ回路が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のモータシステム。
【請求項4】
前記入出力部はコネクタであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のモータシステム。
【請求項5】
前記ドライバ回路は、前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転に伴って発生するホール信号と前記駆動信号とに基づいて前記電流を供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のモータシステム。
【請求項6】
前記ドライバ回路は4象限ドライバであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のモータシステム。
【請求項7】
前記エンコーダディスク1周で前記センサが出力する前記エンコーダ信号のパルス数は、12×Nパルス(Nは自然数)、又は50×Nパルスであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のモータシステム。
【請求項8】
前記インナーロータ型DCブラシレスモータの軸受けに玉軸受けを用いることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のモータシステム。
【請求項9】
前記回転軸にギヤの歯を直接設けたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のモータシステム。
【請求項10】削除
【請求項11】
前記エンコーダ信号は、前記回転軸の回転量と回転方向を検知可能な信号であることを特徴とする請求項1に記載のモータシステム。
【請求項12】
請求項1又は11に記載のモータシステムを有する画像形成装置。
【請求項13】
請求項1又は11に記載のモータシステムを有する画像形成装置の周辺装置。」
(2)刊行物
平成29年9月8日付取消理由(以下、「取消理由」という。)で通知した刊行物1[特開2005-287133号公報(甲第1号証)]には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a「本発明は、ACサーボモータ等のモータの回転出力を利用して所定の動作を行わせるべく構成されたアクチュエータ装置に関し、またこのアクチュエータ装置を構成するモータユニット及びコントローラユニットに関する。」(【0001】)
b「これらの問題を改善するため、ドライバを一体に備えるモータに汎用のコントローラを外付けして使用する構成とすることも考えられるが、この場合、アクチュエータに固有の特性パラメータを、使用するコントローラに個別に設定する作業が別途必要となり、十分な改善効果が期待できない上、パラメータの設定ミスによる動作不良の発生を引き起こす虞れがある。」(【0005】)
c「以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1及び図2は、本発明に係るアクチュエータ装置の縦断面図であり、図示の如くアクチュエータ装置は、駆動源としてのモータ1と、該モータ1に駆動電流を供給するモータ駆動回路2と共に、前記モータ1に固有の特性パラメータを記憶させてあるパラメータメモリ(記憶手段)3を、円筒形をなす共通のハウジングに内蔵してある本発明に係るモータユニット4と、該モータユニット4の外側に着脱可能に取り付けられる本発明に係るコントローラユニット5とを備えている。なお図1は、コントローラユニット5が取り付けられた状態を、図2は、コントローラユニット5が取り外された状態を夫々示している。
モータ1は、モータユニット4のハウジングの内部に、両端壁の軸受を介して同軸上での回転自在に支持されたモータ軸11と、該モータ軸11の中途部に一体回転可能に固着されたロータ12と、該ロータ12の外側を囲繞するようにハウジングの内周面に固設されたステータ13とを備えるACサーボモータであり、ステータ13への通電により生じるロータ12の回転を、ハウジングの一側端壁から外部に突出するモータ軸11の軸端部に回転出力として取り出す構成となっている。」(【0016】-【0017】)
d「モータ駆動回路2は、ロータ12及びステータ13の一側に面してモータユニット4の内部に固設され、中央部にモータ軸11の挿通が可能な貫通孔を備える中抜き円板形の駆動基板20に実装されており、電源ケーブル23を介して外部電源に接続されている。また駆動基板20には、ロータ12の回転位置を検出するための3つのホール素子21,21,21が、ロータ12の回転域に面して取り付けられ、また、回転検出回路22及びパラメータメモリ3が実装されており、更に、前記コントローラユニット5との接続のための信号コネクタ6aが、ハウジングに設けた開口に面して設けられている。
なおモータ駆動回路2は、巻線コイル14,14…への通電を行わせるためのデバイスとして、パワートランジスタ、パワーFET等のパワー素子24を備えているが、このパワー素子24は、動作中に発熱を伴うため、駆動基板20に対向するモータユニット4のハウジング内面に取り付けてあり、この取り付け位置に対応するように前記ハウジングの外面に放熱フィン25を固設して、パワー素子24の発熱を外部に放熱するようにしてある。
ホール素子21,21,21は、図3に示す如く、ステータ13を構成する3つの相隣するステータ鉄心15,15,15の間に、各60°の位相差を有して配設されており、ロータ12を構成する4極のマグネットの通過に応じて生じる夫々のホール素子21,21,21の出力変化は、ステータ13に対するロータ12の相対回転位置を示す信号としてモータ駆動回路2に与えられて、巻線コイル14,14…への通電電流の切換えに用いられている。」(【0020】-【0022】)
e「回転検出回路22は、モータ軸11に固設されたスリット円板26に面して取り付けられている。図5は、スリット円板26と回転検出回路22との位置関係を示す説明図である。モータ軸11と共に回転するスリット円板26は、周方向に等配された複数のスリット孔 26a,26a…を備えており、回転検出回路22は、これらのスリット孔 26a,26a…の回転周上に所定の間隔を隔てて並ぶ2つの光検出器 22a,22bを備えている。
図6は、光検出器 22a,22bの出力例を示す図である。光検出器 22a,22bは、前記スリット孔 26a,26a…の通過時にハイレベルとなるパルス信号を、図示の如く、所定の位相差を有して出力すべく位置決めされている。回転検出回路22は、このような光検出器 22a,22bの出力を、後述の如くコントローラユニット5に出力すべくなしてあり、コントローラユニット5 においては、両出力の遅れ又は進みによりモータ軸11の正、逆転の判別がなされ、また夫々の出力中のパルス数のカウントによりモータ軸11の回転速度が求められる。なお図6(a)は、モータ軸11の正転時における光検出器 22a,22bの出力例を、図6(b)は、モータ軸11の逆転時における光検出器 22a,22bの出力例を夫々示してある。」(【0024】-【0025】)
f「コントローラユニット5は、板状のケーシング内部のコントローラ基板50上に実装されたモータ制御回路51及び通信制御回路52を備えている。またコントローラ基板51には、ケーブルコネクタ54が設けられ、更に、駆動基板20の信号コネクタ6aと対をなす信号コネクタ6bが、外部に突出するように設けられており、コントローラユニット5は、図2中に白抜矢符にて示す如く、モータユニット4のハウジングに設けた開口に信号コネクタ6bを差し込み、駆動基板20の信号コネクタ6aに接続することにより、図1に示す如く、モータユニット4の外側に沿うように取り付けて用いられる。またこのとき、ケーブルコネクタ54は、シリアルバスケーブル53を介して図示しない上位コントローラに接続される。
モータ制御回路51は、後述の如く、モータ駆動回路2に与える電流指令値を演算する演算回路であり、この演算は、信号コネクタ6a,6bを介してパラメータメモリ3から与えられる前述した特性パラメータを用い、同じく回転検出回路22から与えられるエンコーダ信号を用いて行われ、演算により得られた電流指令値は、信号コネクタ6a,6bを介してモータ駆動回路2に与えられる。
通信制御回路52は、上位コントローラからシリアルバスケーブル53を介して与えられるアクチュエータ動作コマンドを受信し、モータ制御回路51にモータ制御コマンドを出力する動作をなし、モータ制御回路51における電流指令値の演算は、通信制御回路52から与えられるモータ制御コマンドに従って行われる。なお、モータ制御回路51及び通信制御回路52への電源供給も、信号コネクタ6a,6bを介して行われる。図7は、信号コネクタ6a,6bの仕様例を示す図表である。
図8は、本発明に係るアクチュエータ装置の制御系の構成を示すブロック図である。上位コントローラからコントローラユニット5に与えられるアクチュエータ動作コマンドは、前述の如く、シリアルバスケーブル53を介して通信制御回路52にシリアルデータ信号として入力される。シリアルバスとしては、USB(Universal Serial Bus)2.0を採用することができ、通信制御回路52は、バスのプロトコルに合わせた信号処理を行い、モータ制御コマンド又はパラメータ設定コマンドを作成してモータ制御回路51に出力する。」(【0027】-【0030】)
g「モータ制御回路51には、通信制御回路52からモータ制御コマンド又はパラメータ設定コマンドが入力されると共に、信号コネクタ6a,6bを介して、モータユニット4内部の回転位置検出回路22からのエンコーダ信号が与えられ、またパラメータメモリ3から、モータ1の特性パラメータ及び回転位置検出回路22に関するパラメータ情報が与えられる。モータ制御回路51は、前記エンコーダ信号の処理によりモータ1の回転状態を認識し、この認識結果と前記モータ制御コマンドとの誤差に応じて電流指令値を演算し、この電流指令値を信号コネクタ6a,6bを介してモータ駆動回路2に出力する。」(【0031】)
h「図10は、モータ1の回転速度の制御を可能としたモータ制御回路51の構成の一例を示すブロック線図であり、図11は、ロードされるパラメータ情報の一例を示す図表である。」(【0037】)
i「以上の如く本発明に係るアクチュエータ装置においては、駆動源としてのモータ1、及び該モータ1に駆動電流を供給するモータ駆動回路2と共に、前記モータ1の制御に必要な特性パラメータを記憶させてあるパラメータメモリ3を備えるモータユニット4に、コントローラユニット5を着脱自在に取り付け、信号コネクタ6a,6bを介してモータ駆動回路2及びパラメータメモリ3との信号の授受が可能に接続したから、仕様の異なるモータ1を駆動源として備えるモータユニット4に対して共通のコントローラユニット5を用い、パラメータメモリ3からロードされる特性パラメータを設定することにより専用のコントローラユニット5とすることができ、経済面において優位性が得られる上、必要に応じてコントローラユニット5の取り換えが可能であり、再利用性及び拡張性の面でも優れたものとなる。」(【0040】)
上記d及び図面を参照すると、モータは負荷を駆動するインナーロータ型DCブラシレスモータであり、インナーロータ型DCブラシレスモー夕に対して負荷の逆側に駆動基板が設けられている。
上記f及び図面を参照すると、電流指令値は信号コネクタを介してモータ駆動回路へ入力されている。
上記f、g及び図面を参照すると、モータ制御コマンドはインナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられる。
上記f、g及び図面を参照すると、上位コントローラからコントローラユニットにアクチュエータ動作コマンドが与えられ、コントローラユニットの通信制御回路がプロトコルに合わせた処理を行ってモータ制御回路にモータ制御コマンドを出力しているから、上位コントローラからモータ制御回路にモータ制御コマンドが与えられている。
上記記載事項からみて、刊行物1には、
「負荷を駆動するインナーロータ型DCブラシレスモータと、前記インナーロータ型DCブラシレスモー夕に対して前記負荷の逆側に設けられた駆動基板とを有するモータユニットであって、
前記インナーロータ型DCブラシレスモー夕のモータ軸に固設されたスリット円板と、
前記スリット円板に面して取り付けられたエンコーダ信号を出力する回転検出回路と、
前記モータユニットの外側に着脱可能に取り付けられたコントローラユニットに備えられたモータ制御回路が出力する電流指令値が与えられる前記インナ一ロータ型DCブラシレスモータに駆動電流を供給するモータ駆動回路と、
前記駆動基板に設けられた信号コネクタと、を備え、
前記エンコーダ信号は前記信号コネクタを介して前記モータ制御回路へ与えられ、
上位コントローラから前記モータ制御回路に与えられるインナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられるモータ制御コマンドと前記エンコーダ信号に応じて前記モータ制御回路が出力する前記電流指令値は、前記信号コネクタを介して前記モータ駆動回路へ入力される前記モータユニットと、前記エンコーダ信号と前記上位コントローラから与えられるインナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられる前記モータ制御コマンドとに応じて、前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転速度を制御する前記電流指令値を出力する、前記モータユニットの外側に着脱可能に取り付けられた前記コントローラユニットに備えられた前記モータ制御回路と、を有するアクチュエータ装置。」
との発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
取消理由で通知した刊行物2[特開平11-178380号公報(参考資料2)]には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「第2発明に係るモータ速度制御装置によれば、角速度変動が無視できるDCモータ又はブラシレスDCモータを用いて、設定パルス列のパルス単位でモータの回転角度を制御することができ、ステッピングモータと同様の機能を実現できるモータ速度制御装置を、高価なCPU及びD/A変換器等を使用せずに安価に提供することができる。」(【0081】)
取消理由で通知した刊行物3[特表2007-503198号公報(甲第2号証)]には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「発電機の出力は、負荷に直接接続するか、或いはパワーエレクトロニクス回路を用いて調整することもできる。任意選択的に、所与の機械は、異なる運転期間中に機械的エネルギーの発生源又はシンクとして機能する機械的発生源に接続される。従って、該機械は、例えば4象限運転の可能な電力調整回路による接続によって回生モータとして動作できる。」(【0004】)
取消理由で通知した刊行物4[特開2010-142015号公報(甲第3号証)]には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項8】請求項1~請求項7のいずれかに記載のモータ制御装置を搭載した画像形成装置。」
「図5において24は設定された速度ターゲットとモータから得られた速度情報との差分を17により算出し、算出した値の大きさをモニタするための差分モニタ手段。25は速度検出手段で強磁性磁気抵抗効果型素子などにより、ロータに均等に着磁されたパターンを、ロータの回転スピードに応じたSin波形として読み取り、波形変換器により矩形のパルス波(例えば500パルス/回転)に変換した速度情報を制御手段へ出力する。速度検出手段にはその他にロータ近傍に形成したFGパターンによる回転速度検出や、円周に沿って等間隔にスリットのある円盤と、フォトインタラプタ(光透過型センサ)から構成されるエンコーダなどが用いられる。」(【0038】)
取消理由で通知した刊行物5[特開平4-360159号公報(甲第4号証)]には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「具体的には感光体1の非印字領域端面に歯車13を取付け、その歯車13とモータ回転シャフト14の歯車14′によって駆動モータ6の駆動力を感光体1に伝えている。」(【0006】)
取消理由で通知した刊行物6[特開2010-74887号公報(甲第5号証)]には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「図1は本発明の実施形態に係る画像形成装置全体の概略構成を示す図である。図1において、本実施形態に係る画像形成装置は、プリンタ部1、スキャナ部2、自動原稿給送部3、給紙部4から構成され、プリンタ部1が給紙部4の上に、スキャナ部2がプリンタ部1の上に自動原稿給送部3がスキャナ部2の上に設けられ、プリンタ機能、複写機能、ファクシミリ機能などの複数の機能を備えたデジタル複合機MFPとして構成されている。」(【0019】)
(3)本件発明と刊行物1発明との対比・判断
(3-1)本件発明1と刊行物1発明との対比・判断
刊行物1発明の「駆動基板」、「モータユニット」、「モータ軸」、「スリット円板」、「回転検出回路」、「コントローラユニットに備えられたモータ制御回路」又は「モータ制御回路」、「電流指令値」、「モータ駆動回路」、「信号コネクタ」、「アクチュエータ装置」は、本件発明1の「基板」、「駆動装置」、「回転軸」、「エンコーダディスク」、「センサ」、「制御手段」、「駆動信号」、「ドライバ回路」、「入出力部」、「モータシステム」に相当する。
刊行物1発明の「前記インナーロータ型DCブラシレスモー夕のモータ軸に固設されたスリット円板」は、本件発明1の「前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転軸と同軸に取り付けられたエンコーダディスク」に相当する。
刊行物1発明の「前記スリット円板に面して取り付けられたエンコーダ信号を出力する回転検出回路」は、本件発明1の「前記エンコーダディスクの回転に応じてエンコーダ信号を出力するセンサ」に相当する。
刊行物1発明の「前記モータユニットの外側に着脱可能に取り付けられたコントローラユニットに備えられたモータ制御回路が出力する電流指令値が与えられる前記インナ一ロータ型DCブラシレスモータに駆動電流を供給するモータ駆動回路」と、本件発明1の「前記駆動装置の外部の制御手段から出力されるPWM信号及び回転方向信号を含む駆動信号に基づいて前記インナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路」は、「前記駆動装置の外部の制御手段から出力される駆動信号に基づいて前記インナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路」の点で一致する。
刊行物1発明の「上位コントローラから前記モータ制御回路に与えられるインナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられるモータ制御コマンドと前記エンコーダ信号に応じて前記モータ制御回路が出力する前記電流指令値は、前記信号コネクタを介して前記モータ駆動回路へ入力される前記モータユニット」と、本件発明1の「前記制御手段の外部から入力されたステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号と前記エンコーダ信号とに基づいて前記制御手段から出力された前記駆動信号は、前記入出力部を介してドライバ回路へ入力される駆動装置」は、「前記制御手段の外部から入力されたモータの駆動に用いられる制御信号と前記エンコーダ信号とに基づいて前記制御手段から出力された前記駆動信号は、前記入出力部を介してドライバ回路へ入力される駆動装置」の点で一致する。
刊行物1発明の「前記エンコーダ信号と前記上位コントローラから与えられるインナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられる前記モータ制御コマンドとに応じて、前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転速度を制御する前記電流指令値を出力する、前記モータユニットの外側に着脱可能に取り付けられた前記コントローラユニットに備えられた前記モータ制御回路」と、本件発明1の「前記エンコーダ信号と外部から入力されたステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号とに基づいて、少なくとも前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転位置を制御する前記駆動信号を出力する、前記駆動装置外部の前記制御手段」は、「前記エンコーダ信号と外部から入力されたモータの駆動に用いられる制御信号とに基づいて、少なくとも前記インナーロータ型DCブラシレスモータを制御する前記駆動信号を出力する、前記駆動装置外部の前記制御手段」の点で一致する。
したがって、両者は、
「負荷を駆動するインナーロータ型DCブラシレスモータと、前記インナーロータ型DCブラシレスモー夕に対して前記負荷の逆側に設けられた基板とを有する駆動装置であって、
前記インナーロータ型DCブラシレスモータの回転軸と同軸に取り付けられたエンコーダディスクと、
前記エンコーダディスクの回転に応じてエンコーダ信号を出力するセンサと、
前記駆動装置の外部の制御手段から出力される駆動信号に基づいて前記インナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路と、
前記基板に設けられた入出力部と、を備え、
前記エンコーダ信号は前記入出力部を介して前記制御手段へ出力され、
前記制御手段の外部から入力されたモータの駆動に用いられる制御信号と前記エンコーダ信号とに基づいて前記制御手段から出力された前記駆動信号は、前記入出力部を介してドライバ回路へ入力される駆動装置と、前記エンコーダ信号と外部から入力されたモータの駆動に用いられる制御信号とに基づいて、少なくとも前記インナーロータ型DCブラシレスモータを制御する前記駆動信号を出力する、前記駆動装置外部の前記制御手段と、を有するモータシステム。」
の点で一致し 、以下の点で相違している。
〔相違点1〕
駆動装置の外部の制御手段から出力される駆動信号に関し、本件発明1は、PWM信号及び回転方向信号を含む駆動信号であるのに対し、刊行物1発明は、電流指令値である点。
〔相違点2〕
駆動装置の制御手段の外部から入力されたモータの駆動に用いられる制御信号に関し、本件発明1は、ステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号であるのに対し、刊行物1発明は、インナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられるモータ制御コマンドである点。
〔相違点3〕
制御手段に関し、本件発明1は、ステッピングモータの駆動に用いられる移動パルス数の信号及び回転方向信号を用いて回転位置を制御するのに対し、刊行物1発明は、インナーロータ型DCブラシレスモータの駆動に用いられるモータ制御コマンドを用いて回転速度を制御する点。
相違点1~3について
ステッピングモータをブラシレスDCモータに置き換えることは回転電機の分野において周知の事項(刊行物2【0081】参照)である。そして、ステッピングモータの駆動にPWM信号を用いることは回転電機の分野において周知の事項(必要があれば特開2002-84793号公報等参照)であり、又、ブラシレスDCモータのステッピング駆動のためにPWM信号を用いることは回転電機の分野において周知の事項(必要があれば特開昭64-1498号公報、特開2000-162941号公報(第3実施形態)等参照。)であり、ステッピングモータを駆動するには、移動パルス数の信号と回転方向信号が必要であることは、特許権者平成29年3月27日付意見書第3頁に記載があるように技術常識であるから、刊行物1記載のインナーロータ型DCブラシレスモータをステッピングモータと同様の機能を実現できるように、PWM信号及び回転方向信号を含む駆動信号をドライバ回路に与え、移動パルス数の信号と回転方向信号を用いて制御することは当業者が容易に考えることができたものである。
ステッピングモータはパルス数に応じた回転角で回転するものである(乙第1号証)から、ステッピングモータ駆動を採用すれば、当然に回転位置を制御するものとなる。
そして、本件発明1の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-2)本件発明2と刊行物1発明との対比・判断
本件発明2と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明2はインナーロータ型DCブラシレスモータのエンコーダディスクが負荷と逆側に取り付けられる点で相違する。
しかし、刊行物1にはエンコーダディスクがインナーロータ型DCブラシレスモータを介して負荷と逆側に取り付けられる構成(図1参照)が示されており、又、モータ制御装置は通常負荷駆動側とモータを挟んで反対側に設置されるものであるから、刊行物1発明においてエンコーダディスクをインナーロータ型DCブラシレスモータを介して負荷と逆側に取り付けることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明2の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明2は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-3)本件発明3と刊行物1発明との対比・判断
本件発明3と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明3は基板にはドライバ回路が設けられる点で相違する。
しかし、刊行物1には基板にドライバ回路が設けられる構成(d参照)が示されており、又、ドライバ回路は通常基板に設けられているから、刊行物1発明において基板にドライバ回路を設けることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明3の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明3は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-4)本件発明4と刊行物1発明との対比・判断
本件発明4は、入出力部はコネクタである構成を有しているが、刊行物1発明も入出力部はコネクタである構成を有している。
そして、本件発明4の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明4は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-5)本件発明5と刊行物1発明との対比・判断
本件発明5と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明5はドライバ回路はホール信号と駆動信号とに基づいて電流を供給する点で相違する。
しかし、刊行物1発明は、駆動装置の外部の制御手段から出力される駆動信号に基づいてインナーロータ型DCブラシレスモータに電流を供給するドライバ回路を有しており、しかも、刊行物1には、ドライバ回路であるモータ駆動回路には制御のためにホール素子の出力信号と駆動信号が与えられる構成(d、図8参照)が示されているから、刊行物1発明においてドライバ回路がインナーロータ型DCブラシレスモータの回転に伴って発生するホール信号と駆動信号とに基づいて電流を供給することは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明5の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明5は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-6)本件発明6と刊行物1発明との対比・判断
本件発明6と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明6はドライバ回路は4象限ドライバである点で相違する。 しかし、ドライバ回路として4象限ドライバを用いて回生を行うことは、例えば刊行物3(【0004】)にもみられるように周知の事項であるから、刊行物1発明においてドライバ回路として4象限ドライバを採用することは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明6の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明6は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-7)本件発明7と刊行物1発明との対比・判断
本件発明7と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明7は、エンコーダ信号のパルス数は12×Nパルス(Nは自然数)又は50×Nパルスである点で相違する。
しかし、エンコーダ信号のパルス数が12×Nパルス(Nは自然数)又は50×Nパルスであることはエンコーダにおいて周知の事項[刊行物1図5にスリット数24個(=12×2)のエンコーダディスクが、刊行物4に500パルス/回転(=50×10)のエンコーダディスクが示されている。]であるから、刊行物1発明においてエンコーダディスク1周でセンサが出力するエンコーダ信号のパルス数を12×Nパルス(Nは自然数)、又は50×Nパルスとすることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明7の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明7は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-8)本件発明8と刊行物1発明との対比・判断
本件発明8と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明8は、軸受けが玉軸受けである点で相違する。
しかし、刊行物1の図1には軸受けに玉軸受けを用いることが示されているから、刊行物1発明においてインナーロータ型DCブラシレスモータの軸受けを玉軸受けとすることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明8の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明8は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-9)本件発明9と刊行物1発明との対比・判断
本件発明9と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明9は、モータの回転軸にギヤの歯を直接設ける点で相違する。
しかし、モータの回転軸にギヤの歯を直接設けることは、例えば刊行物5(【0006】)にもみられるように周知の事項であるから、刊行物1発明において回転軸にギヤの歯を直接設けることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明9の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明9は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-10)本件発明11と刊行物1発明との対比・判断
本件発明11と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明11はエンコーダ信号が回転軸の回転量と回転方向を検知可能な信号である点で相違する。
しかし、エンコーダは本来回転軸の回転量と回転方向を検知可能な機能を有しており、しかも、刊行物1には、エンコーダ信号が回転軸の回転量と回転方向を検知可能な信号である点(e参照)が示されているから、実質的な相違点ではない。
そして、本件発明11の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明11は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-11)本件発明12と刊行物1発明との対比・判断
本件発明12と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明12はモータシステムを有する画像形成装置である点で相違する。
しかし、モータシステムの用途を画像形成装置とすることは、例えば刊行物4(【請求項8】)、刊行物6(【0019】)にもみられるように周知の事項であるから、刊行物1発明において用途を画像形成装置用とすることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明12の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明12は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3-12)本件発明13と刊行物1発明との対比・判断
本件発明13と刊行物1発明を対比すると本件発明1と同じ一致点・相違点に加え、本件発明13はモータシステムを有する画像形成装置の周辺装置である点で相違する。
しかし、モータシステムの用途を画像形成装置の周辺装置とすることは、例えば刊行物6(【0019】)にもみられるように周知の事項であるから、刊行物1発明において用途を画像形成装置の周辺装置用とすることは当業者であれば適宜選択し得ることと認められる。
そして、本件発明13の作用効果も、刊行物1発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明13は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおり、本件発明1~9、11~13は、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9、11~13の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1~9、11~13に係る特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項10に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項10に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700923