特許異議申立
2016-700879
光拡散フィルムおよびその製造方法、光拡散性偏光板、ならびに液晶表示装置
- 審判番号
- 2016-700879
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-163141
- 登録番号
- 特許第5887080号(P5887080)
- 請求日
- 2016年09月16日
- 審決日
- 2017年08月09日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 【異議申立人】増山 美紀
- 審判長/審判官
- 審判長 鉄 豊郎
- 審判官 清水 康司
- 審判官 河原 正
- 分類
- P1651.113-ZDA(G02B) / P1651.121-ZDA(G02B) / P1651.536-ZDA(G02B) / P1651.537-ZDA(G02B) / P1651.851-ZDA(G02B) / P1651.857-ZDA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5887080号発明「光拡散フィルムおよびその製造方法、光拡散性偏光板、ならびに液晶表示装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5887080号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1,〔2ないし14〕について訂正することを認める。
特許第5887080号の請求項10に係る特許を取り消す。
同請求項2ないし9,11ないし14に係る特許を維持する。
同請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5887080号(請求項の数14。以下,「本件特許」という。)に係る特許出願は,平成23年7月26日(優先権主張平成22年7月27日,平成22年7月27日)に出願され,平成28年2月19日に特許権の設定登録がされたものである。
その後,平成28年3月16日に本件特許について特許掲載公報の発行がされたところ,同年9月16日に特許異議申立人より請求項1ないし14に係る特許について特許異議の申立てがされ,同年11月22日付けで特許権者に取消理由が通知され(以下,当該取消理由通知を「本件取消理由通知」といい,本件取消理由通知により通知された取消理由を「本件取消理由」という。),特許権者より平成29年1月23日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,「先の訂正請求」という。)がされ,同年3月13日に特許異議申立人より意見書が提出され,同年3月30日付けで特許権者に取消理由通知(決定の予告)がされ(以下,当該取消理由通知(決定の予告)を「本件取消予告」という。),特許権者より同年6月2日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。なお,特許法120条の5第7項の規定により,平成29年1月23日にされた先の訂正請求は取り下げられたものとみなす。)がされ,同年7月12日に特許異議申立人より意見書が提出された。
第2 本件訂正の可否についての判断
1 本件訂正の内容
(1)訂正前後の記載
本件訂正請求は,本件特許の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし14について訂正することを求めるものであるところ,一群の請求項〔1ないし14〕ごとに請求するものである。
しかるに,本件訂正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
ア 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】
導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備えるエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である光拡散フィルム。
【請求項2】
前記光拡散層の前記基材フィルムとは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下である請求項1に記載の光拡散フィルム。
【請求項3】
前記光拡散層の層厚が,前記透光性微粒子の重量平均粒径に対して1倍以上3倍以下である請求項1または2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
前記光拡散層中に含有される透光性微粒子は,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満である1種または2種以上の第1の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である1種または2種以上の第2の透光性微粒子とを含み,
前記光拡散層における前記透光性微粒子の含有量は,前記透光性樹脂100重量部に対して22重量部以上60重量部以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項5】
前記光拡散層上に積層された反射防止層をさらに備える請求項1~4のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法であって,
前記透光性微粒子が分散された樹脂液を前記基材フィルム上に塗布する工程と,
前記樹脂液から形成された層の表面に,金型の鏡面または凹凸面を転写する工程と,
を含む光拡散フィルムの製造方法。
【請求項7】
少なくとも偏光フィルムを有する偏光板と,
請求項1~5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムと,
を備え,
前記光拡散フィルムが,前記基材フィルム側が前記偏光板に対向するように,前記偏光板上に積層されている光拡散性偏光板。
【請求項8】
前記偏光フィルムと前記光拡散フィルムとが接着剤層を介して貼り合わされてなる請求項7に記載の光拡散性偏光板。
【請求項9】
導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備えるエッジライト型面光源と,
前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,
前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板と,
前記前面側偏光板の前面側に配置される請求項1~5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムと,
を含む液晶表示装置。
【請求項10】
前記導光板は,その背面側に形成されたドットパターンを有するものである請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記エッジライト型面光源と前記液晶セルとの間に配置される光偏向手段をさらに備える請求項9または10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記光偏向手段は,1枚以上のプリズムフィルムを含むものである請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記光偏向手段と前記液晶セルとの間に配置される背面側偏光板をさらに備え,
前記光偏向手段は,前記背面側偏光板に対向する表面に線状プリズムを複数有するプリズムフィルムを2枚含むものであり,
一方のプリズムフィルムは,その線状プリズムの稜線の方向が前記背面側偏光板の透過軸に対して略平行となるように配置され,他方のプリズムフィルムは,その線状プリズムの稜線の方向が前記前面側偏光板の透過軸に対して略平行となるように配置される請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記エッジライト型面光源と前記液晶セルとの間に配置される光拡散手段をさらに備える請求項9~13のいずれか一項に記載の液晶表示装置。」
イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状であり,
前記光拡散層の前記基材フィルムとは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下である光拡散フィルム。
【請求項3】
前記光拡散層の層厚が,前記透光性微粒子の重量平均粒径に対して1倍以上3倍以下である請求項2に記載の光拡散フィルム。
【請求項4】
導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状であり,
前記光拡散層中に含有される透光性微粒子は,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満である1種または2種以上の第1の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である1種または2種以上の第2の透光性微粒子とを含み,
前記光拡散層における前記透光性微粒子の含有量は,前記透光性樹脂100重量部に対して22重量部以上60重量部以下である光拡散フィルム。
【請求項5】
前記光拡散層上に積層された反射防止層をさらに備える請求項2~4のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。
【請求項6】
光拡散フィルムの製造方法であって,
前記透光性微粒子が分散された樹脂液を前記基材フィルム上に塗布する工程と,
前記樹脂液から形成された層の表面に,金型の鏡面または凹凸面を転写する工程と,
を含み,
前記光拡散フィルムは,導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであり,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である光拡散フィルムの製造方法。
【請求項7】
少なくとも偏光フィルムを有する偏光板と,
請求項2~5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムと,
を備え,
前記光拡散フィルムが,前記基材フィルム側が前記偏光板に対向するように,前記偏光板上に積層されている光拡散性偏光板。
【請求項8】
前記偏光フィルムと前記光拡散フィルムとが接着剤層を介して貼り合わされてなる請求項7に記載の光拡散性偏光板。
【請求項9】
導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,
前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,
前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板と,
前記前面側偏光板の前面側に配置される請求項2~5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムと,
を含む液晶表示装置。
【請求項10】
導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備えるエッジライト型面光源と,
前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,
前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板と,
前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムと,
を含み,
前記導光板は,その背面側に形成された白色ドットパターンを有するものであり,
前記光拡散フィルムは,基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である液晶表示装置。
【請求項11】
前記エッジライト型面光源と前記液晶セルとの間に配置される光偏向手段をさらに備える請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記光偏向手段は,1枚以上のプリズムフィルムを含むものである請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記光偏向手段と前記液晶セルとの間に配置される背面側偏光板をさらに備え,
前記光偏向手段は,前記背面側偏光板に対向する表面に線状プリズムを複数有するプリズムフィルムを2枚含むものであり,
一方のプリズムフィルムは,その線状プリズムの稜線の方向が前記背面側偏光板の透過軸に対して略平行となるように配置され,他方のプリズムフィルムは,その線状プリズムの稜線の方向が前記前面側偏光板の透過軸に対して略平行となるように配置される請求項12に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記エッジライト型面光源と前記液晶セルとの間に配置される光拡散手段をさらに備える請求項9および11~13のいずれか一項に記載の液晶表示装置。」
(2)訂正事項
本件訂正は,次の訂正事項からなる。
ア 訂正事項1
請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
請求項2に「前記光拡散層の前記基材フィルムとは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下である請求項1に記載の光拡散フィルム。」とあるのを,
「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状であり,
前記光拡散層の前記基材フィルムとは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下である光拡散フィルム。」
に訂正する。
ウ 訂正事項3
請求項3に「請求項1または2に記載の」とあるのを,「請求項2に記載の」に訂正する。
エ 訂正事項4
請求項4に
「前記光拡散層中に含有される透光性微粒子は,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満である1種または2種以上の第1の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である1種または2種以上の第2の透光性微粒子とを含み,
前記光拡散層における前記透光性微粒子の含有量は,前記透光性樹脂100重量部に対して22重量部以上60重量部以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の光拡散フィルム。」
とあるのを,
「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状であり,
前記光拡散層中に含有される透光性微粒子は,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満である1種または2種以上の第1の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である1種または2種以上の第2の透光性微粒子とを含み,
前記光拡散層における前記透光性微粒子の含有量は,前記透光性樹脂100重量部に対して22重量部以上60重量部以下である光拡散フィルム。」
に訂正する。
オ 訂正事項5
請求項5に「請求項1~4のいずれか一項に記載の」とあるのを,「請求項2~4のいずれか一項に記載の」に訂正する。
カ 訂正事項6
請求項6に
「請求項1~5のいずれか一項に記載の光拡散フィルムの製造方法であって,
前記透光性微粒子が分散された樹脂液を前記基材フィルム上に塗布する工程と,
前記樹脂液から形成された層の表面に,金型の鏡面または凹凸面を転写する工程と,
を含む光拡散フィルムの製造方法。」
とあるのを,
「光拡散フィルムの製造方法であって,
前記透光性微粒子が分散された樹脂液を前記基材フィルム上に塗布する工程と,
前記樹脂液から形成された層の表面に,金型の鏡面または凹凸面を転写する工程と,
を含み,
前記光拡散フィルムは,導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源と,前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであり,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である光拡散フィルムの製造方法。」
に訂正する。
キ 訂正事項7
請求項7に「請求項1~5のいずれか一項に記載の」とあるのを,「請求項2~5のいずれか一項に記載の」に訂正する。
ク 訂正事項8
(ア)訂正事項8-1
請求項9に「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備えるエッジライト型面光源」とあるのを,「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源」に訂正する。
(イ)訂正事項8-2
請求項9に
「請求項1~5のいずれか一項に記載の」とあるのを,「請求項2~5のいずれか一項に記載の」に訂正する。
ケ 訂正事項9
請求項10に「前記導光板は,その背面側に形成されたドットパターンを有するものである請求項9に記載の液晶表示装置。」とあるのを,
「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備えるエッジライト型面光源と,
前記エッジライト型面光源の前面側に配置される液晶セルと,
前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板と,
前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムと,
を含み,
前記導光板は,その背面側に形成された白色ドットパターンを有するものであり,
前記光拡散フィルムは,基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であり,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である液晶表示装置。」
に訂正する。
コ 訂正事項10
請求項11に「請求項9または10に記載の」とあるのを,「請求項9に記載の」に訂正する。
サ 訂正事項11
請求項14に「請求項9~13のいずれか一項に記載の」とあるのを,「請求項9および11~13のいずれか一項に記載の」に訂正する。
2 訂正の目的の適否について
(1)訂正事項1,3,5,7,8-2,10及び11の目的
訂正事項1は,請求項1を削除する訂正であり,訂正事項3,5,7,8-2,10及び11は,前記訂正事項1による請求項1の削除に伴って,各請求項が引用する請求項から削除される請求項1を除く訂正であるから,これら訂正事項1,3,5,7,8-2,10及び11は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2)訂正事項2の目的
訂正事項2は,訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する形式で記載されていたものを,独立形式の記載に改めるとともに,請求項2に係る発明が配置される液晶表示装置が含むエッジライト型面光源が備える導光板について,背面側に白色ドットパターンが形成されたものであることを規定する訂正である。
導光板が,背面側に白色ドットパターンが形成されたものであるとの規定については,そもそも,請求項2に係る発明は「光拡散フィルム」という物の発明であって,前記規定に合致する液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」と,前記規定に合致しない液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」とを比較したときに,両「光拡散フィルム」の形状,構造,組成等,物としての構成に何らかの差異が存在するとは認められないから,前記規定は「光拡散フィルム」という物を何ら限定するものではないというべきであって,請求項2に当該規定を付加する訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号ないし4号に掲げる事項のいずれを目的とするものともいえないものの,訂正事項2全体としては,同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当すると認められる。
(3)訂正事項4の目的
訂正事項4は,請求項1ないし3のいずれか一項の記載を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項4のうち,請求項1の記載を引用するものについて独立形式の記載に改めるとともに,請求項4に係る発明が配置される液晶表示装置が含むエッジライト型面光源が備える導光板について,背面側に白色ドットパターンが形成されたものであることを規定する訂正であるところ,前記(2)で述べたのと同様の理由で,訂正事項4全体としては,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当すると認められる。
(4)訂正事項6の目的
訂正事項6は,請求項1ないし5のいずれか一項の記載を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項6のうち,請求項1の記載を引用するものについて独立形式の記載に改めるとともに,請求項6に係る発明が製造する光拡散フィルムが配置される液晶表示装置が含むエッジライト型面光源が備える導光板について,背面側に白色ドットパターンが形成されたものであることを規定する訂正である。
導光板が,背面側に白色ドットパターンが形成されたものであるとの規定については,そもそも,請求項6に係る発明は「光拡散フィルムの製造方法」という製造方法の発明であって,前記規定に合致する液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」を製造する方法と,前記規定に合致しない液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」を製造する方法とを比較したときに,両「光拡散フィルムの製造方法」の製造工程,製造条件等,製造方法としての構成に何らかの差異が存在するとは認められないから,前記規定は「光拡散フィルムの製造方法」という製造方法を何ら限定するものではないというべきであって,請求項6に当該規定を付加する訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号ないし4号に掲げる事項のいずれを目的とするものともいえないものの,訂正事項6全体としては,同4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当すると認められる。
(5)訂正事項8-1の目的
訂正事項8-1は,請求項9に係る発明(液晶表示装置)が含むエッジライト型面光源が備える導光板について,背面側に白色ドットパターンが形成されたものであることを限定する訂正であって,当該訂正事項8-1によって,請求項9及び請求項9の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項11ないし13が限定されることとなるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(6)訂正事項9の目的
訂正事項9は,請求項1ないし5のいずれか一項の記載を引用する形式で記載されていた請求項9の記載を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項10のうち,請求項1の記載を引用する請求項9の記載を引用するものについて独立形式の記載に改めるとともに,導光板の背面側に形成されたドットパターンについて,「白色」であることを限定する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」及び同1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(7)訂正の目的の適否のまとめ
前記(1)ないし(6)のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものである。
3 新規事項の追加の有無について
訂正事項1,3,5,7,8-2,10及び11は本件訂正前の請求項1を削除する訂正にすぎないから,本件訂正前の願書に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面(特許された時点での明細書,特許請求の範囲及び図面である。以下,本件訂正前の願書に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面を総称して「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また,訂正事項2,4,6,8-1及び9により請求項2ないし9,11ないし14に付加されることとなる「導光板が,その背面側に形成された白色ドットパターンを有する」点は,本件訂正前の請求項10及び本件訂正前の明細書の【0109】に記載された事項であるから,当該訂正事項2,4,6,8-1及び9は特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について
訂正事項1ないし11が,いずれも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
5 本件訂正の可否のまとめ
前記2ないし4のとおりであって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項1ないし14について訂正を認める。
本件訂正後の請求項2ないし14に係る訂正事項2ないし11は,引用関係の解消を目的とする訂正であって,その訂正は認められるものである。そして,特許権者から,訂正後の請求項2ないし14について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから,訂正後の請求項1,〔2ないし14〕について一群の請求項ごとに訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項2ないし14に係る発明
前記第2 5で述べたとおり,本件訂正は適法になされたものであるから,本件特許の請求項2ないし14に係る発明(以下,それぞれを「本件特許発明2」ないし「本件特許発明14」といい,これらを総称して「本件特許発明」という。)は,それぞれ,前記第2 1(1)イにおいて,本件訂正後の特許請求の範囲の記載として示した請求項2ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
なお,本件訂正後の特許請求の範囲の記載からは,請求項2,4,6及び10に記載された「前記透光性微粒子は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であり,」という構成要件が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有する透光性微粒子全体の「標準偏差/重量平均粒径」についての要件であるのか,それとも,粒子の種類ごとの「標準偏差/重量平均粒径」についての要件であるのかが必ずしも明らかでないが,本件特許の明細書の記載を参酌すると,【0141】の表1には,透光性微粒子が2種類用いられた各実施例における透光性微粒子について,「全粒子の重量平均粒径a」,「標準偏差b」及び「b/a」の値について開示があり,これら値のいずれも前記構成要件を充足しているのに対して,透光性微粒子の各種類ごとの値の開示がないことから,粒子の種類ごとの「標準偏差/重量平均粒径」ではなく,「透光性微粒子」全体の「標準偏差/重量平均粒径」が0.6以下であることを指していると解するのが相当である。
2 本件取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし14(特許時の請求項1ないし14)に係る特許に対して通知された本件取消理由,及び本件取消理由で引用された引用例は,概略次のとおりである。なお,本件取消予告では,先の訂正請求による訂正後(当該訂正では請求項10が削除されている。)の請求項1,3,5,7ないし9,11ないし14について取消理由1が成立するとの判断が示された。
(1)引用例
甲1:特開2006-58616号公報
甲2:特開2005-316413号公報
甲3:特開平11-160505号公報
甲4:特開2010-66761号公報
甲5:特開2009-103943号公報
甲6:国際公開第2008/020587号
甲7:特開2010-102186号公報
(2)取消理由1
本件特許の請求項1,3,5,7及び8(特許時の請求項1,3,5,7及び8を指す。以下,本欄及び後述の「(3)取消理由2」ないし「(5)取消理由4」において同様。)に係る発明は,甲2の記載から把握される発明と同一であり,特許法29条1項3号に該当するか,少なくとも甲2の記載から把握される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項2に係る発明は,甲2の記載から把握される発明及び甲3又は甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項4に係る発明は,甲2の記載から把握される発明及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項6に係る発明は,甲2の記載から把握される発明及び甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項9ないし14に係る発明は,甲2の記載から把握される発明及び甲4,甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由2
本件特許の請求項1,5及び7に係る発明は,甲1の記載から把握される発明と同一であり,特許法29条1項3号に該当するか,少なくとも甲1の記載から把握される発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項3に係る発明は,甲1の記載から把握される発明に基づいて,又は甲1の記載から把握される発明及び甲4に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条1項又は2項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項2に係る発明は,甲1の記載から把握される発明及び甲3又は甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項4に係る発明は,甲1の記載から把握される発明及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項6に係る発明は,甲1の記載から把握される発明及び甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項8に係る発明は,甲1の記載から把握される発明及び周知技術(甲2等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件特許の請求項9ないし14に係る発明は,甲1の記載から把握される発明及び甲4,甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(4)取消理由3
本件特許の請求項1ないし14に係る発明は,「明部及び暗部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mm,2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下」であることを構成要件としているところ,特許明細書等の記載をみても,どのように前記構成要件を充足させることができるのか,その制御方法が不明であるから,特許明細書等の発明の詳細な説明は,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
したがって,本件特許の請求項1ないし14に係る特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5)取消理由4
本件特許の請求項2には,「光拡散層の前記基材フィルムとは反対側の表面の中心線粗さRaが0.2μm以下」であるとの構成要件が記載され,請求項3ないし14は請求項2の記載を引用する形式で記載されているところ,前記構成要件における中心線粗さRaは,特許明細書等の記載からみて,発明の詳細な説明に開示された内容よりも広く規定されている。
また,本件特許の請求項4には,「光拡散層中に含有される透光性微粒子は,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満である1種または2種以上の第1の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である1種または2種以上の第2の透光性微粒子とを含」むとの構成要件が記載され,請求項5ないし14は請求項4の記載を引用する形式で記載されているところ,特許明細書等の記載からみて,第1の透光性微粒子の重量平均粒径と第2の透光性微粒子の重量平均粒径の差は2μm未満である必要があると解されるにもかかわらず,請求項4には当該重量平均粒径の差が規定されていないから,請求項4ないし14に係る発明は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
したがって,本件特許の請求項2ないし14に係る特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 引用例
(1)甲2
ア 甲2の記載
甲2(特開2005-316413号公報)は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲2には次の記載がある。(下線は,後述する「甲2積層体発明」,「甲2製造方法発明」,「甲2偏光板発明」及び「甲2液晶表示装置発明」の認定に特に関係する箇所を示す。なお,甲2の記載中にもともと付されていた下線は,省略する。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,CRT,液晶パネル等のディスプレイに用いられる防眩性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩性積層体は,一般に,CRT,PDP(プラズマディスプレイ),LCD(液晶ディスプレイ)パネル等のディスプレイ表示装置において,外光の反射や蛍光灯等の写り込みによる視認性の低下を抑制するために,ディスプレイの最表面に配置される。防眩性積層体は,一般に基材の上に,凹凸形状を有した防眩層を形成することにより実現される。・・・(中略)・・・
【0003】
近年,PDPおよびLCD等に代表されるディスプレイ市場の拡大とディスプレイの大型化に伴い,ディスプレイの最表面に配置される防眩性積層体についても,防眩性と他の改善が求められている。特に,1)コントラストの改善,2)透過鮮明度の向上,3)文字ボケの軽減,4)表示体を黒表示にした状態での優れた漆黒感(墨色の黒さの度合い)の実現等の改善が要求されている。・・・(中略)・・・
【0004】
防眩性積層体の拡大化による表示体の視認性の低下は,防眩性積層体における防眩性能力を向上させることにより解決しうるが,上記1)~4)の改善要求を満たすことは困難であった。つまり,防眩性向上と上記1)~4)の改善要求とは一般的に相反関係にあるとされており,この両者を同時に満足させる防眩性積層体の製造は困難とされ,その結果このような防眩性積層体は従来存在していなかった。
・・・(中略)・・・
【0006】
本発明者等は,本発明時に,防眩性積層体における防眩層において,特定数の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在することにより,優れた防眩性を実現し,かつ,1)コントラスト改善,2)透過鮮明度向上,3)文字ボケの軽減,4)表示体を黒表示にした状態での優れた漆黒感(墨色の黒さの度合い)の実現等を著しく改善することができるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。従って,本発明は,100ppi以下の中低度の解析度であっても,優れた防眩性と画像表示力とを同時に実現することができる防眩性積層体の提供を目的とする。
よって,本発明による防眩性積層体は,
透明基材と,該透明基材上に形成されてなる防眩層とを備えてなり,
前記防眩層の最表面が凹凸形状を有してなり,
前記防眩層内に,5個以上の微粒子により形成される三次元立体構造の凝集部が複数存在してなり,
複数の前記凝集部が寄り集まることなく,前記凹凸形状を形成してなるものである。」
(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
防眩性積層体
本発明による防眩性積層体について図2を用いて説明する。図2は本発明による防眩性積層体の断面図を示す。透明基材1の上面に防眩層2が形成されてなり,この防眩層2は樹脂と微粒子3とを含んでなるものである。図2においては,5個の微粒子3が寄せ集まって一つの立体的な複数の凝集部を形成し,これらの複数の凝集部がさらに寄せ集まることなく点在していることが理解される。図2に示す通り,複数の凝集部は,5個の微粒子によって構成される三次元立体構造の凝集部である。
【0009】
複数の凝集部は,寄せ集まることなく独立に存在し,海島の凹凸形状を形成させるものが好ましく,また,凝集部と凝集部の間を,凝集部を形成しない微粒子が複数連なって散在し,これらが実質的な網目状構造を形成して,複数の凝集部間を結ぶようにして凹凸形状を形成させるものであることがより好ましい。特に,後者により形成される凹凸形状はサイズ調整における設計上の自由度を付与するため有効なものといえる。
【0010】
以上のことから,本発明による微粒子の凝集部は,微粒子が均一に単一分散され凝集することなく,基材の最表面に横一列として形成されてなる従来の防眩性積層体(図1)とは相違することが理解される。本発明の好ましい態様によれば,図3に示される通り,本発明の防眩性積層体の防眩層に微粒子3とその平均粒径が異なる第二微粒子4を含んでなる防眩性積層体が提案される。
・・・(中略)・・・
【0013】
本発明による防眩性積層体は,前記微粒子の平均粒子径をR(μm)とし,前記凝集部の鉛直方向での基材面からの高さの最大値をHmax(μm)とし,前記防眩層の凹凸の平均間隔をSm(μm)とし,凹凸部の平均傾斜角をθaとした場合に,下記式(I)~(III):
8R≦Sm≦30R (I)
R<Hmax≦3R (II)
1.3≦θa≦2.5 (III)
を同時に満たすものが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0016】
1.防眩層
(第一)微粒子/第二微粒子
微粒子および第二微粒子は球状,例えば真球状,楕円状等のものであってよく,好ましくは真球状のものが挙げられる。
【0017】
本発明にあっては,微粒子の平均粒子径R(μm)が2.0μm以上(好ましくは1.5μm以上)5.0μm以下であり,好ましくは上限が5.0μm(好ましくは4.6μm)であり下限が,3.5μm(好ましくは1.9μm)であるものが好ましい。
また,前記微粒子の全体の95%以上(好ましくは98%以上)が,前記微粒子の粒径平均分布がR±0.3(好ましくは0.2)μmの範囲内にあるものが好ましい。この場合にあっては,Rが上記微粒子の平均粒子径の範囲にあることがより好ましい。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば,微粒子とその平均粒径が異なる第二微粒子をさらに含んでなるものが好ましくは挙げられる。第二微粒子は,微粒子の平均粒径と異なるものを有するものである。また,本発明の好ましい態様によれば,第二微粒子の単体自体またはその凝集部自体のみでは,前記防眩層において防眩性を発揮しないものである。
【0019】
本発明にあっては,微粒子の平均粒子径をR(μm)とし,第二微粒子の平均粒子径をr(μm)とした場合に,下記式(IV):
0.25R(好ましくは0.50)≦r≦1.0R(好ましくは0.85R,より好ましくは0.70) (IV)
を満たす防眩性積層体が好ましくは提案できる。
【0020】
rが0.25R以上であることにより,塗布液の分散が容易となり,粒子が凝集することがない。また,塗布後の乾燥工程においてフローティング時の風の影響を受けることなく,均一な凹凸形状を形成することができる。また,rが0.85R以下であることにより,微粒子と第一粒子との役割を明確に区別することが可能となるので好ましい。また,rは,1.0R以下であることから,凹凸を形成する上で,第一粒子と第二粒子が同一サイズで同一組成の粒子のものでも可能とし,更に,第一粒子と第二粒子が同一サイズでありながら,組成の異なるもの(例えば,極性の高い樹脂成分(親水性)の中で,第一粒子は,親水性粒子,第二粒子は,疎水性粒子,あるいは,その反対でも良いものとする)を使用して凹凸の凝集具合を調整しても良い。
【0021】
また,本発明の別の態様によれば,樹脂と,微粒子と,第二微粒子との単位面積当りの総重量比が,微粒子の単位面積当りの総重量をM1,第二微粒子の単位面積当りの総重量をM2,樹脂の単位面積当りの総重量をMとした場合に,下記の式(V)および(VI):
0.08≦(M1+M2)/M≦0.36(好ましくは0.28) (V)
0(好ましくは0.2M1)≦M2≦5.0M1(好ましくは4.0M1) (VI)
を満たす防眩性積層体を提供することができる。
・・・(中略)・・・
【0024】
・・・(中略)・・・微粒子は,防眩性を発揮するものであり,好ましくは,透明性のものがよい。微粒子の具体例としては,・・・(中略)・・・プラスチックビーズが挙げられ,より好ましくは透明性を有するものが挙げられる。・・・(中略)・・・
【0037】
本発明による防眩性積層体を液晶表示装置に用いる場合,片面に粘着層等を付してディスプレイの最表面に配置する。透明基材が複屈折のないセルロースアシレートフィルム(例えば,トリアセチルセルロースフィルム)の場合,偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため,本発明による防眩性積層体をそのまま保護フィルムにとし利用することができるので経済的である。
【0038】
本発明による防眩性積層体は,片面に粘着層等を付してディスプレイの最表面に配置したり,そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には,十分に接着させること好ましい。・・・(中略)・・・
【0039】
防眩性積層体の形成
本発明による防眩性積層体の形成方法を下記に示すが,この方法に限定して解釈されるものではない。
防眩層は,樹脂と,微粒子(第二微粒子)とを適切な溶剤,例えば,トルエン,キシレン,シクロヘキサン,酢酸エチル,酢酸ブチル,酢酸プロピル,MEK,MIBK,シクロヘキサノンに混合して得た組成物を透明基材に塗布することにより形成されてよい。
・・・(中略)・・・
【0041】
液体組成物を透明基材に塗布する方法としては,ロールコート法,ミヤバーコート法,グラビアコート法等の塗布方法が挙げられる。液体組成物の塗布後に,乾燥と紫外線硬化を行う。・・・(中略)・・・樹脂が硬化し,樹脂中の微粒子が5個以上凝集して,防眩層の最表面に所望の凹凸形状が形成される。
【0042】
防眩層の厚さは,0.5μm以上10μm以下であり,好ましくは下限が1μm(好ましくは2μm)以上であり上限7μm以下である。よって,本発明による防眩性積層体はいわゆるフィルム状の形態として成形されてよい。
・・・(中略)・・・
【0051】
本発明の好ましい態様によれば,
ヘイズ値が2.0~8.0,好ましくは上限が6.0%(好ましくは5.0%)であり下限が3.0%であり,
60度グロス値が35~65(%),好ましくは上限が55%であり下限が38%であり,
透過鮮明度の値が70~200(%),好ましくは上限が150%であり下限が90%であることを同時に満たす防眩性積層体が提供される。
・・・(中略)・・・
【0053】
反射防止積層体
本発明の好ましい別の態様によれば,透明基材と,該透明基材の上に防眩層と該防眩層より屈折率の低い低屈折率層とがこれらの順で形成されてなる反射防止積層体が提供され,その反射防止積層体は,前記透明基材と,前記防眩層とが,上記した本発明による防眩性積層体を構成するものと同じものであってよいものである。
よって,透明基材と,防眩層との内容,および透明基材の上に防眩層を形成する方法等は,上記した防眩性積層体の項で説明したのと同様であってよい。
【0054】
低屈折率層
低屈折率層は,防眩層の表面に形成されてなり,低屈折率層は,その屈折率が防眩層のものより低いものである。本発明の好ましい態様によれば,防眩層の屈折率が1.5以上であり,低屈折率層の屈折率が1.5未満であり,好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0073】
偏光板
本発明の別の態様によれば,偏光素子と,本発明による防眩性積層体または反射防止積層体とにより構成されてなる偏光板を提供することができる。より具体的には,偏光素子と該偏光素子の表面に,本発明による防眩性積層体を前記防眩性積層体における前記防眩層と反対の面において,または本発明による反射防止積層体を前記反射防止積層体における前記低屈折率層と反対の面において,備えてなる,偏光板を提供することができる。
・・・(中略)・・・
【0075】
画像表示装置
本発明のさらに別の態様によれば,画像表示装置を提供することができ,この画像表示装置は,透過性表示体と,前記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなり,この透過性表示体の表面に,本発明による防眩性積層体,本発明による反射防止積層体,または本発明による偏光板が形成されてなるものである。
本発明による画像表示装置は,基本的には光源装置(バックライト)と表示素子と本発明による防眩性積層体とで構成されてよく,好ましくは光源装置と,表示素子と,本発明による反射防止積層体とで構成されてよい。また,本発明による画像表示装置の一例としては,バックライト側から,光源装置,偏光素子,透明基材,画像表示素子,本発明による偏光板,本発明による反射防止積層体として形成されてよい。
・・・(中略)・・・
【0078】
用途
本発明による防眩性積層体,反射防止積層体,偏光板の構成材料として,また画像表示装置は,透過型表示装置に利用される。特に,テレビジョン,コンピュータ,ワードプロセッサなどのディスプレイ表示に使用される。とりわけ,液晶表示装置(LCD),プラズマディスプレイパネル(PDP),エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明による防眩性積層体は透明基材を有しているので,該基材側を画像表示装置の画像表示面に接着してして用いてよい。」
(ウ) 「【0079】
数値測定
本発明にあって,ヘイズ値は,JIS K-7105に従って測定することができる。測定に使用する機器としては,反射・透過率計HR-100(村上色彩技術研究所)が挙げられる。防眩性積層体の全光線透過率もまた,上記ヘイズ値の測定と同様にして測定することができる。
60度グロスと透過鮮明度については,グロス値は,ヘイズメーター((株)村上色彩研究所製,品番;HM-150)を用いて測定可能である。透過鮮明度は写像性測定器(スガ試験機(株),品番;「ICM-1PD」)を用いて,JIS K7105に準拠し,4種類の光学くし(0.25mm,0.5mm,1mm,および2mm)で測定した数値の合計をもって,透過鮮明度とした。数値が大きいほど透過鮮明度が高く,400が最高値である。
【実施例】
【0080】
本発明を詳細に説明するために,以下に実施例を挙げて説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。なお,特別の断りの無い限り,「部」及び「%」は質量基準である。
【0081】
防眩層用組成物の調製
・・・(中略)・・・
【0083】
防眩層用組成物3
紫外線硬化型樹脂であるペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を21.28質量部(日本化薬社製,屈折率1.51),紫外線硬化型樹脂であるDPHAを8.63質量部(日本化薬社製,屈折率1.51),アクリル系ポリマーを3.18質量部(三菱レイヨン製,分子量75,000),光硬化開始剤であるイルガキュア184を1.96質量部(チバガイギー社製),光硬化開始剤であるイルガキュア907を0.33質量部(チバガイギー社製),透光性第一微粒子としてのアクリルビーズを4.96質量部(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53),透光性第二微粒子としてのアクリルビーズを1.65質量部(社日本触媒製,粒径3.5μm,屈折率1.53),シリコン系レベリング剤10-28を0.013質量部(ザ・インクテック社製),トルエンを46.40質量部,及び,シクロヘキサノンを11.60質量部を十分混合して塗布液として調整した。この塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用組成物3を調製した。
・・・(中略)・・・
【0097】
実施例1
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TD80U,富士写真フイルム(株)製)を透明基材として用い,防眩層用組成物1を,フィルム上にコーティング用巻線ロッド(メイヤーズバー)を用いて塗布し,70℃のオーブン中で1分間加熱乾燥し,溶剤分を蒸発させた後,窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で,紫外線を照射線量が100mJになるよう照射して塗膜を硬化させ,膜厚が6μmの防眩性積層体を得た。尚,透光性第一微粒子は,粒子径の小さいアクリルビーズであり,且つ,粒子の表面は親水性であるため,所望の三次元立体構造の凝集部を形成させるために,疎水性のスチレンアクリルポリマー(分子量:65,000)を添加した。
・・・(中略)・・・
【0099】
実施例3
防眩層用組成物3を用いた以外は,実施例1と同様にして,防眩性積層体を得た。防眩層用組成物3は,所望の三次元立体構造の凝集部を形成させるために,透光性第一微粒子と透光性第二微粒子との粒子径が異なるものを使用し,混合粒子系となるようにした。
・・・(中略)・・・
【0112】
実施例および比較例で調製した防眩性積層体の組成は下記表1の通りであった。
【0113】
【表1】
【0114】
評価試験
下記評価試験を行って,その結果を図4~図7,および表2に記載した。
・・・(中略)・・・
【0118】
評価5:光学特性試験
実施例と比較例の光学積層体について,本明細書に定義に従って,ヘイズ値(%),60度グロス,透過鮮明度を測定した。
【0119】
【表2】
」
イ 甲2の記載から把握される発明
甲2の【0119】の表2から,実施例3の透過鮮明度が141であることを看取できるから,前記ア(ア)ないし(ウ)の記載を含む甲2の全記載から,実施例3の防眩性積層体に対応する発明,当該防眩性積層体を製造する方法の発明,当該防眩性積層体を有する偏光板の発明,及び当該防眩性積層体を有する液晶表示装置の発明を把握することができるところ,これら発明の構成は次のとおりである。
(ア) 「透明基材1と,該透明基材1上に形成された防眩層2とを備え,
前記防眩層2が,樹脂と,平均粒子径Rが2.0μm以上5.0μm以下の微粒子3と,平均粒子径rが0.50R≦r≦0.85Rを満足する第二微粒子4とを含んでなり,
前記防眩層2の最表面が凹凸形状を有し,
前記防眩層2内に,5個以上の前記微粒子3により形成される三次元立体構造の凝集部が複数存在し,
複数の前記凝集部が寄り集まることなく,前記凹凸形状を形成してなり,
光源装置と表示素子を有する液晶表示装置における前記表示素子の表面に配置される防眩性積層体であって,
前記透明基材1として,80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルムである富士写真フイルム(株)製TD80Uを用い,
前記防眩層2は,下記組成の防眩層用組成物3を,前記TD80U上に塗布し,加熱乾燥して溶剤分を蒸発させた後,紫外線照射により硬化させることによって得られた,膜厚が6μmの防眩層であり,
JIS K7105に準拠し,0.25mm,0.5mm,1mm及び2mmの4種類の光学くしで測定した数値の合計である透過鮮明度が,141である,
防眩性積層体。
[防眩層用組成物3の組成]
PETA(日本化薬社製,屈折率1.51):21.28質量部
DPHA(日本化薬社製,屈折率1.51):8.63質量部
アクリル系ポリマー(三菱レイヨン製,分子量75,000):3.18質量部
イルガキュア184(チバガイギー社製光硬化開始剤):1.96質量部
イルガキュア907(チバガイギー社製光硬化開始剤):0.33質量部
アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53):4.96質量部
アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53):1.65質量部,
10-28(ザ・インクテック社製シリコン系レベリング剤):0.013質量部
トルエン:46.40質量部
シクロヘキサノン:11.60質量部」(以下,「甲2積層体発明」という。)
(イ) 「甲2積層体発明を製造する方法であって,
コーティング用巻線ロッドを用いて,防眩層用組成物3をTD80U上に塗布する塗布工程と,
前記塗布工程により得られた塗膜を,70℃のオーブン中で1分間加熱乾燥して,溶剤分を蒸発させる乾燥工程と,
酸素濃度200ppm以下の窒素パージ下で,前記乾燥工程により得られた塗膜に紫外線を照射線量が100mJになるよう照射して,当該塗膜を硬化させる硬化工程と,
を有する甲2積層体発明の製造方法。」(以下,「甲2製造方法発明」という。)
(ウ) 「偏光素子の表面に,甲2積層体発明を,防眩層2と反対の面において,接着してなる偏光板。」(以下,「甲2偏光板発明」という。)
(エ) 「光源装置及び表示素子を有する液晶表示装置であって,前記表示素子の表面に甲2積層体発明が配置された液晶表示装置。」(以下,「甲2液晶表示装置発明」という。)
(2)甲1
ア 甲1の記載
甲1(特開2006-58616号公報)は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲1には次の記載がある。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,陰極線管(CRT),液晶表示素子(LCD)などの画像表示素子の視認側表面に設ける防眩フィルム,この防眩フィルムを用いた防眩性偏光板,及び画像表示装置に関するものである。本発明はまた,画像表示装置に適用したときに高いコントラスト比を与える防眩フィルムを有効に選択する方法にも関係している。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像表示素子において,透過光や反射光がディスプレイの表面で拡散されない場合には,正面から見たときに非常に眩しく見える問題や,蛍光灯などの周囲環境からの光がそのまま反射することによって像が映り込んでしまう問題などがある。そこで,市販の画像表示装置では,上記のような問題を防ぐことを目的に,光をある程度拡散させるための防眩フィルムが,ディスプレイ表面に設けられている。
【0003】
防眩フィルムは,例えば,・・・(中略)・・・透明基材フィルムの表面に,二酸化ケイ素(シリカ)や有機微粒子などのフィラーを含む樹脂を塗工して防眩層を形成したものが一般的である。これらの防眩フィルムは,凝集性シリカ等の粒子の凝集によって防眩層の表面に凹凸形状を形成するタイプ,塗膜の膜厚以上の粒径を有する有機フィラーを樹脂中に添加して層表面に凹凸形状を形成するタイプ,層表面に凹凸をもったフィルムをラミネートして凹凸形状を転写するタイプなどがある。
【0004】
上記のような従来の防眩フィルムは,いずれのタイプでも,防眩層の表面形状により防眩効果を得るようにしており,防眩性を高めるためには,前記凹凸の深さを大きくする必要がある。しかしながら,凹凸が深くなると,塗膜のヘイズ値が上昇し,これに伴って透過鮮明度が低下するという問題点がある。
・・・(中略)・・・
【0006】
また,上記の如き防眩フィルムに類似したものとして,・・・(中略)・・・微粒子を層内部に分散させて光分散効果を得るようにした光拡散フィルムが,例えば,反射型液晶表示装置に用いられている。
【0007】
このような内部散乱効果を利用した光拡散フィルムを表示装置の視認側に配置し,防眩フィルムとすることも考えられるが,かかる内部散乱効果により十分な光拡散効果を得るためには,用いる微粒子の粒径を大きくしなければならず,このため,ヘイズ値が高くなり,画像の鮮明性が低下してしまい,表示装置のコントラスト比が低くなってしまうという問題がある。また,ディスプレイ表面に前記光拡散フィルムのような内部散乱効果のみが発現するタイプのフィルムを防眩用として配置した場合には,その表面がほぼ平坦であるため,ディスプレイ表面への外光の映り込みを防止できず,いわゆる映り込み防止性が発現されないという問題もある。さらに,上記のような内部散乱のみのタイプの防眩フィルムは,フィルム表面に「ギラつき」と呼ばれる部分的な輝きが発生し,表示画面の視認性を低下させるという問題がある。
【0008】
そこで近年では,上記した如き表面の凹凸形状による散乱効果と,層内部での散乱効果とを併せ持つ防眩フィルムが用いられており,二つの散乱効果のバランスをとることで,透過鮮明度を比較的高く保ちつつ,映り込みやギラつきが小さいものとしている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら,上記のような,表面の凹凸形状による散乱効果と層内部での散乱効果を併せ持つ防眩フィルムにおいても,映り込みやギラつきを十分に抑えた場合の透過鮮明度は十分に高いとは言いがたく,表示装置に実装した場合に,コントラスト比が低くなってしまうことが問題となっている。
【0011】
本発明者は,透過鮮明度を一層高く保ちながら,ギラつきや映り込みが小さい防眩フィルムを得るべく鋭意研究を行った結果,本発明に至った。
【0012】
そこで本発明の目的は,前記のような従来からの問題点を改善する防眩フィルムを提供することにあり,特に,最良範囲内のヘイズ値において,映り込みやギラつきを十分に抑えたうえで,透過鮮明度を十分に高く保ち,表示装置に実装したときに高いコントラスト比が得られる防眩フィルムを提供することにある。本発明のもう一つの目的は,この防眩フィルムを偏光素子に積層して,映り込みやギラつきが十分に抑制され,コントラスト比も高い偏光板を提供することにある。さらに本発明のもう一つの目的は,上記の防眩フィルムを適用して,視認性に優れた画像表示装置とすることにある。さらにまた,本発明のもう一つ別の目的は,画像表示装置に適用したときに高いコントラスト比を与える防眩フィルムを有効に選択する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明によれば,透明基材フィルムと,透光性樹脂中に少なくとも1種類の透光性微粒子が分散している防眩層とが積層された防眩フィルムであって,前記透光性微粒子と前記透光性樹脂とは,屈折率の差が0.03以上0.2以下であり,かつ,透光性樹脂中での透光性微粒子の分散状態を表す指標となる以下に定義される分散性指標Dが40以下である防眩フィルムが提供される。
【0014】
ここで,透光性樹脂中での透光性微粒子の分散状態を表す指標となる分散性指標Dについて説明する。まず,上記の如き,透明基材フィルムと,透光性樹脂中に少なくとも1種類の透光性微粒子が分散している防眩層とが積層されている防眩フィルムを,Lμm×Lμmを1単位とするピクセル(ここに,Lは透光性微粒子の平均直径の約3倍とする)に分割し,少なくとも100ピクセルについて,透光性微粒子の数密度xiを求める。こうして求められる個々のピクセルにおける透光性微粒子の数密度xiから,ピクセル数をnとして,数密度xiの平均値d(=Σxi/n)を求め,さらにその標準偏差σを下記式(1)により求める。
【0015】
【0016】
なお,ここでは,母集団からサンプルの一部を取り出し,そのデータをもって母集団を表そうとしているため,(n-1)法による標準偏差を用いている。
【0017】
上の式(1)による標準偏差σと,透光性微粒子の数密度の平均値dとを用いて,下記式(2)により分散性指標Dを表すと,この数字が大きいほど分散性が悪く,逆にこの数字が小さいほど均一に分散していることが見出されたのである。
【0018】
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0022】
本発明においては,分散性指標Dが40以下であり,かつ,防眩フィルム全体でのヘイズ値が10%以上50%以下とすることで,高い透過鮮明度を示し,かつ,各種の表示装置に実装した場合に,コントラスト比の低下が小さく,映り込みが少なく,さらにギラつきの程度も小さい防眩フィルムを得ることができる。また,この防眩フィルムを偏光素子に積層することで,同様に優れた性能の防眩性偏光板とすることができる。さらに,この防眩フィルムを適用した画像表示装置は,コントラスト比が高く,映り込みが少なく,かつギラつきも少ないものとなる。」
(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下,本発明の実施の形態を,適宜添付の図面も参照しながら詳細に説明する。
【0025】
本発明の防眩フィルム10は,図1に断面模式図で示すように,透光性樹脂11中に透光性微粒子12を分散させ,表面の凹凸13が形成された防眩層15を,透明基材フィルム18の上に,当該防眩層の表面の凹凸13が外側になるように配置したものである。そして,透光性微粒子12と透光性樹脂11とは,屈折率の差が0.03以上0.2以下となるようにする。透光性微粒子12と透光性樹脂11との間にある程度の屈折率差を設けることで,光拡散効果を高めることができるが,屈折率差があまり大きくなると,光拡散性が高すぎて,フィルム全体が白っぽくなってしまう。
【0026】
また,透光性樹脂11中での透光性微粒子12の分散状態を表す指標となる,先に定義した分散性指標Dが40以下となるようにする。分散性指標Dを表す前記式(2)において,5/√(d×135)の項は,粒子密度が低くなりすぎた場合に,1ピクセルに存在する粒子数が0に近くなって,ミクロな範囲の均一性しか評価できなくなることを防ぐために設けた項である。そして,式(2)により求められる分散性指標Dが40以下であり,透光性微粒子12の分散状態が良好な防眩フィルムは,画像表示装置に適用したとき,高いコントラスト比を与える。
・・・(中略)・・・
【0028】
透光性樹脂11中に分散させる透光性微粒子12の粒径は特に限定されないが,1~5μmの範囲にあることが好ましい。またその量は,防眩層15全体,すなわち,透光性樹脂11と透光性微粒子12の合計量を基準に,5~30重量%程度とするのがよい。透光性微粒子12は,少なくとも1種類用いればよいが,2種類以上の透光性微粒子を用いる場合には,それぞれの粒径が異なっていてもよいし,数種類あるいは全ての粒径が同じであってもよい。
【0029】
透光性微粒子12を2種類以上用いる場合は,それらのうち少なくとも2種類において屈折率が異なるものを用いるのも有効である。その場合,少なくとも2種類の透光性微粒子は,0.02以上0.10以下の屈折率差を有するようにして,細かい屈折率設定を可能としておくのが好ましい。2種類の透光性微粒子の屈折率差があまり小さいと,複数種類を組み合わせて屈折率を調整する意味がなくなり,一方で屈折率差があまり大きいと,屈折率の大きい微粒子により光拡散性が決定してしまい,やはり複数種類を組み合わせて屈折率を調整する意味がなくなる。また,このように透光性微粒子12を2種類以上用いる場合は,透光性樹脂11を,その屈折率が1.49~1.53の範囲のものとし,透光性微粒子12の1種類は,その屈折率が1.53~1.57の範囲のものとし,そしてもう1種類の透光性微粒子は,その屈折率が1.58~1.62の範囲のものとするのが好ましい。
【0030】
透光性微粒子12の少なくとも一つが,実質的に単分散の有機微粒子であってもよい。・・・(中略)・・・
【0032】
透光性樹脂11中に透光性微粒子12が分散した状態の防眩層15は,その厚さが通常0.5~50μm程度であり,好ましくは1μm以上,さらには2μm以上であり,また好ましくは20μm以下,さらには10μm以下である。
・・・(中略)・・・
【0034】
本発明の防眩フィルムは,例えば,電離放射線硬化型樹脂,又は電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもので構成される透光性樹脂11に,透光性微粒子12を分散させて塗工液を調製し,その塗工液を透明基材フィルム18の表面に塗工し,電離放射線を照射して樹脂を硬化させることにより,製造できる。その際,透光性樹脂11と透光性微粒子12の混合条件,塗工液の塗工条件,電離放射線の照射条件などを適宜選択して,先に説明した分散性指標Dが40以下となるようにすればよい。電離放射線は,紫外線や電子線であることができるが,取扱いの容易さなどから,紫外線が一般的である。
・・・(中略)・・・
【0036】
この防眩フィルム10は,表面に反射防止層(anti-reflection を略してAR層とか,あるいは low-reflection を略してLR層とか呼ばれるもの)を設けることもできる。
【0037】
以上のように構成される防眩フィルム10は,偏光素子に積層して,防眩性の偏光板とすることができる。かかる防眩性偏光板の構成例を,図2に断面模式図で示す。この例では,偏光子21の片側に透明樹脂層23が配置され,これとは反対側に上記の防眩フィルム10が,その透明基材フィルム18側で積層されて,防眩性偏光板20が構成されている。換言すれば,防眩フィルム10の防眩層(凹凸面)が外側となるように配置されている。・・・(中略)・・・
【0038】
図1に示した防眩フィルム10や図2に示した防眩性偏光板20は,液晶表示装置や陰極線管(CRT)ディスプレイ,有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ,プラズマディスプレイなどの画像表示装置に用いることができる。すなわち,液晶表示素子(LCD),陰極線管(CRT),有機エレクトロルミネッセンス(EL),プラズマディスプレイパネル(PDP)などの画像表示素子の視認側に,上記の防眩フィルム又は防眩性偏光板を配置して,画像表示装置とすることができる。その際,表面の凹凸13を有する防眩層が最も外側となるように配置される。」
(ウ) 「【実施例】
【0039】
以下,実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0040】
実施例1
表1に示す如き様々な分散性指標(D)をもって透光性微粒子が透光性樹脂中に分散している防眩フィルムにつき,写像性測定器(スガ試験機(株)製の“ICM-IDP ”)を用いて透過鮮明度(Tc )を測定した。ここで透過鮮明度(Tc)は,暗部と明部の幅の比が1:1で,その幅が 0.125mm,0.5mm,1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。分散性指標(D)に対して透過鮮明度(Tc )をプロットした結果を図3に示す。サンプルの分散性指標(D)が小さくなって投光性微粒子の分散性がよくなるほど,透過鮮明度(Tc )が高くなっている。
【0041】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
分散性指標D 透過鮮明度Tc(%)
───────────────────────
サンプルA 35.4 169
サンプルB 38.1 131.8
サンプルC 39.8 100.3
サンプルD 42.1 74.2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0042】
実施例2
透光性樹脂中に透光性微粒子が分散性指標D=38.1 となるように分散している防眩フィルム(表1中のサンプルB)は,透過鮮明度(4種類の光学くしを用いて測定された値の合計)が 131.8%で,非常に高い鮮明度を与えるものであった。また,この防眩フィルムのヘイズ値をヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製の“HM-150”,D65光源)で測定したところ,34.0% であった。この防眩フィルムを,通常のポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光板(住友化学工業(株)製の“スミカラン SR-W842A”)に防眩層の反対側で積層して,防眩性偏光板とした。
【0043】
シャープ(株)製の液晶表示装置“アクオス”(対角寸法30インチ)から視認側偏光板を剥がし,その替わりに,上の防眩性偏光板をオリジナルの偏光板と同じ軸方向で貼り付けた。また,背面側偏光板も剥がし,その替わりに,通常のポリビニルアルコール-ヨウ素系偏光板(住友化学工業(株)製の“スミカラン SR-W842A”)をオリジナルの偏光板と同じ軸方向で貼り付けた。このときの液晶セルと各フィルムの配置は,図4に示すとおりである。そして,ディスプレイ正面から見たときのコントラスト比を輝度計((株)トプコン製の“BM-5A”)により測定した。その結果,コントラスト比は600という十分に高い値が得られた。さらに,目視による評価では,ギラつきがなく,映り込み防止性も十分なものであった。」
(エ) 「【図面の簡単な説明】
【0046】
・・・(中略)・・・
【図4】実施例2及び比較例1で用いた液晶表示装置における液晶セルと各フィルムの配置を示す断面模式図である。
・・・(中略)・・・
【図4】
」
イ 甲1の記載から把握される発明
甲1の図4から,下面に吸収軸が90°の偏光板が設けられ,上面に吸収軸が0°の偏光板が設けられた液晶セルと,当該液晶セルの下側に設けられたバックライトと,前記液晶セルの上面に設けられた偏光板の上面に設けられた防眩フィルムとを看取できるから,前記ア(ア)ないし(ウ)の記載を含む甲1の全記載から,甲1に,実施例1のサンプルBの防眩フィルムに対応する発明として,次の発明が記載されていると認められる。
「下面に吸収軸が90°の偏光板が設けられ,上面に吸収軸が0°の偏光板が設けられた液晶セルと当該液晶セルの下側に設けられたバックライトとを有する液晶表示装置の上面側に,表面の凹凸を有する防眩層が最も外側となるように配置される防眩フィルムであって,
透明基材フィルムと,透光性樹脂中に少なくとも1種類の透光性微粒子が分散している防眩層とが積層され,
前記透光性微粒子と前記透光性樹脂とは,屈折率の差が0.03以上0.2以下であり,
下記方法により算出される分散性指標Dが38.1であり,
暗部と明部の幅の比が1:1でその幅が0.125mm,0.5mm,1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である透過鮮明度(Tc)が131.8%である,
防眩フィルム。
[分散性指標Dの算出方法]
防眩フィルムを,Lμm×Lμmを1単位とするピクセル(ここに,Lは透光性微粒子の平均直径の約3倍とする)に分割し,少なくとも100ピクセルについて,透光性微粒子の数密度xiを求め,当該透光性微粒子の数密度xiから,ピクセル数をnとして,数密度xiの平均値d(=Σxi/n)を求め,さらにその標準偏差σを下記式(1)により求め,当該標準偏差σと透光性微粒子の数密度の平均値dとを用いて,下記式(2)により分散性指標Dを算出する。
」(以下,「甲1発明」という。)
(3)甲3
甲3(特開平11-160505号公報)は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲3には次の記載がある。
ア 「【請求項1】透明基材フィルムの少なくとも一方の面に,屈折率の異なる透光性拡散剤を含有する透光性樹脂からなる拡散層を積層してなる光拡散フィルムにおいて,前記拡散層の表面におけるヘイズ値を3以上で,該表面の法線方向のヘイズ値と,これから±60°の方向のヘイズ値との差が4以下となるようにすると共に,表面粗さRaが0.2μm以下となるようにしたことを特徴とする光拡散フィルム。」
イ 「【0040】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0041】図1に示されるように,本発明の実施の形態の第1例に係る光拡散フィルム10は,透明基材フィルム12の一方の面(図において上面)に屈折率の異なる透光性拡散剤14を含有する透光性樹脂16からなる拡散層18を積層してなり,この拡散層18の表面におけるヘイズ値が3以上で,且つ該表面の法線方向のヘイズ値とこれから±60°の方向のヘイズ値との差が0.7以下となるようにすると共に,拡散層18の表面粗さRaが0.2μm以下となるようにしたものである。
【0042】上記のように,拡散層18の表面粗さRaを0.2μm以下とすると,従来の,表面に凹凸を有するものと比較して平面が平坦なため,ディスプレイ表示の白化の原因となる拡散反射が非常に少なくなり,クリアな表示が得られる。」
ウ 「【0119】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。
【0120】表1に,本発明による実施例1~11及び比較のために従来技術による比較例1~3の光拡散フィルムを,液晶ディスプレイ上に取付けて表示品位を30cm離した距離から目視にて観察した結果を示す。
【0121】
【表1】
【0122】この表1から,拡散層の表面粗さRaが2μm以下であって,ヘイズ値が3以上且つ,拡散層表面における法線方向のヘイズ値と法線方向から±60°方向のヘイズ値の差が0.7以下の場合,表示品位が良好以上,又,若干白化も含めれば前記ヘイズ値の差が4以下の場合,許容範囲であることが分かる。
【0123】実施条件は次の如くである。
【0124】実施例1~9は,透明基材フィルムとしてTACフィルムを用い,これに,表2~4に示されるメラミンビーズ,アクリルビーズあるいはアクリルスチレンビーズを拡散剤として下記の樹脂成分に混合して形成した拡散塗料を塗工した。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】紫外線硬化型樹脂;ペンタエサスリトールアクリレート100重量部
光重合開始剤3重量部
プロピオン酸セルロース1.25重量部
レベリング剤;シリコーン0.1重量部
有機溶剤;トルエン130重量部
【0129】ここで,紫外線硬化型樹脂の樹脂の屈折率は1.50である。
【0130】上記実施例10については,透明基材フィルムとして,TACの代わりにPETを用いたものであり,他の条件は実施例2と同様である。
【0131】実施例11は,実施例2の拡散フィルムの拡散層の上に,MgF2(屈折率1.38)を真空蒸着にて成膜し,厚みが900・のフッ化マグネシウムの薄膜層を形成することによって,図3の実施の形態の例と同様に反射防止層を有する拡散フィルムとしたものである。
【0132】これら実施例1~11の製造方法は,表1に示されるようにA又はBである。
【0133】製造方法Aは,上記のような,樹脂成分と拡散剤を混合した拡散塗料の塗工厚を20μm/dryになるようにグラビアリバース法により塗工し,70℃で2分間溶剤を乾燥後,240Wの紫外線照射装置の下を20m/minの速度で通過させ,樹脂を硬化させるものである。
【0134】又,製造方法Bは,拡散塗料の塗工厚を,20μm/dryになるようにグラビアリバース法により塗工し,70℃で2分間溶剤を乾燥して塗工フィルムを形成した後,表面が平滑(表面粗さRa≦2μmの凹凸面)なPET製の賦型フィルムを前記塗工フィルム上に,該賦型フィルムの微細な凹凸面が合わさるようにラミネートして,240Wの紫外線照射装置の下を20m/minの速度で通過させ,次いで前記賦型フィルムを剥離して,表面が平滑な拡散層を有する拡散フィルムを得るものである。
・・・(中略)・・・
【0141】前記表1における表面粗さは,中心線平均粗さRaを小坂研究所製サーフコーダAY-31により測定した。」
(4)甲4
甲4(特開2010-66761号公報)は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲4には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
基材と,
上記基材上に形成された光学層と
を備え,
上記光学層は表面に凹凸形状を有し,
上記凹凸形状は,微粒子および樹脂を含む塗料を上記基材上に塗布し,上記塗料の対流により上記微粒子を粗密に分布させ,上記塗料を硬化することにより得られ,
上記微粒子の平均粒径が,2.4μm以上8μm以下であり,
上記光学層の平均膜厚が,6.4μm以上18μm以下であり,
上記光学層の表面における粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.03μm以上0.15μm以下であり,かつ,二乗平均平方根傾斜RΔqが0.01以上0.03以下であり,
上記樹脂と上記微粒子との屈折率差が,0以上0.015以下である光学フィルム。
【請求項2】
上記光学層の平均膜厚をT,上記微粒子の平均粒径をDとしたとき,比率R(=D/T×100)が30%以上70%以下である請求項1記載の光学フィルム。
・・・(中略)・・・
【請求項8】
基材と,
上記基材上に形成された防眩層と
を備え,
上記防眩層は表面に凹凸形状を有し,
上記凹凸形状は,微粒子および樹脂を含む塗料を上記基材上に塗布し,上記塗料の対流により上記微粒子を粗密に分布させ,上記塗料を硬化することにより得られ,
上記微粒子の平均粒径が,2.4μm以上8μm以下であり,
上記防眩層の平均膜厚が,6.4μm以上18μm以下であり,
上記防眩層の表面における粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.03μm以上0.15μm以下であり,かつ,二乗平均平方根傾斜RΔqが0.01以上0.03以下であり,
上記樹脂と上記微粒子との屈折率差が,0以上0.015以下である防眩性フィルム。」
イ 「【0018】
本発明者らは,鋭意研究の結果,透光性樹脂と透光性微粒子の屈折率差を小さくし,内部ヘイズの低減すなわち全光線透過率の向上をはかるとともに,表面に防眩性に有効かつ,角度成分が調製された凹凸形状を形成することにより,防眩性を付与することが可能であることを見出した。すなわち,全光線透過率の向上による輝度向上と防眩性の両者の特性を得ることができる光学フィルムを得るに至った。」
ウ 「【0030】
以下,この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお,以下の実施形態の全図においては,同一または対応する部分には同一の符号を付す。
(1)第1の実施形態
(1-1)液晶表示装置の構成
図1は,この発明の第1の実施形態による液晶表示装置の構成の一例を示す。この液晶表示装置は,図1に示すように,光を出射するバックライト3と,バックライト3から出射された光を時間的空間的に変調して画像を表示する液晶パネル2とを備える。液晶パネル2の両面にはそれぞれ,偏光子2a,2bが設けられている。液晶パネル2の表示面側に設けられた偏光子2bには,防眩性フィルム1が設けられている。この発明では,防眩性フィルム1または防眩層が一主面に形成された偏光子2bを防眩性偏光子4と称する。
【0031】
バックライト3としては,例えば直下型バックライト,エッジ型バックライト,平面光源型バックライトを用いることができる。バックライト3は,例えば,光源,反射板,光学フィルムなどを備える。光源としては,例えば,冷陰極蛍光管(Cold Cathode Fluorescent Lamp:CCFL),熱陰極蛍光管(Hot Cathode Fluorescent Lamp:HCFL),有機エレクトロルミネッセンス(Organic ElectroLuminescence:OEL),発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)などが用いられる。
・・・(中略)・・・
【0047】
防眩層12の平均膜厚をT,微粒子13の平均粒径をDとしたとき,比率R(=D/T×100)が,好ましくは30%以上70%以下,より好ましくは30%以上60%以下である。比率Rが30%未満であると,防眩性が低下してしまう。70%を超えると表面近傍に存在する微粒子13が多くなるため,白濁度が上昇し,コントラストが低下してしまう。
・・・(中略)・・・
【0056】
防眩層12の表面における粗さ曲線の算術平均粗さRaは0.03μm以上0.15μm以下である。粗さ曲線の算術平均粗さRaが0.03μm未満であると,防眩性が低下してしまい,0.15μmを超えると,コントラストが低下してしまう。
【0057】
図3は,算術平均粗さRaを説明するためのものである。算術平均粗さRaは以下の式(1)で表すように,基準長さにおけるZ(x)の絶対値の平均値であり,より値が小さくなるほど平滑であることを示す。算術平均粗さRaが0.03μm未満であると,防眩層表面は鏡面に近づき,入射した光に対して正反射する成分が増えるため,防眩性が低下する。算術平均粗さRaの上限値は,二乗平均平方根傾斜RΔが0.01以上0.03以下の範囲内にあれば特に制限されるものではないが,実験によると算術平均粗さRaの増大とともに,二乗平均平方根傾斜RΔqも同時に増加してしまう。このため,算術平均粗さRaが0.15μmを越えると,二乗平均平方根傾斜RΔqが0.03μmを超えてしまい,コントラストが低下してしまう。
【数1】
」
エ 「【0111】
また,図10に示すように,反射光の低減の観点から,AR(Anti-Reflection)層27をANR層25上にさらに形成することが好ましい。AR層27としては,ドライ方式およびウエット方式のいずれのものも用いることができるが,ウエット方式のものが好ましい。ウエット方式のAR層27としては,例えば,第2の実施形態で用いたような中空微粒子を含むものを用いることができる。」
(5)甲5
甲5(特開2009-103943号公報)は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲5には次の記載がある。
ア 「【0004】
一方,ノート型パーソナルコンピュータ(以下,ノートPC)や携帯情報端末のような中小型液晶表示装置としては,特開平4-162002号公報に記載の如く,図4に示すようなエッジライト型バックライト(Side Edge Backlight)が用いられている。図4のエッジライト型バックライトは,光源1として線状光源(冷陰極管等の蛍光管)又は複数の点状光源(発光ダイオード等)を使用し,これを透過性材料からなる導光板5の端面(側面)に対向させて配置する。導光板の下面には,その内部を伝播する光を反射,透過,散乱させる光拡散用ドット6が形成され,導光板の下面の下側には光を反射させる反射板2が,導光板の上面(図示されない液晶表示パネルに対向する面)の上側には輝度むらを低減するためのシート状の拡散シート7と,必要に応じて液晶パネルの正面輝度を向上させるための複数の光学シート4とが設けられている。
・・・(中略)・・・
【0006】
従来,上記導光板の光を反射,透過,散乱させる光拡散用ドット(以下ドットと表記)として,直径0.4~1.5mm程度の白色印刷ドット,直径0.02~0.1mm程度の機械加工ドット等が当該導光板の主面に形成されていた。しかし,上記中小型液晶表示装置用のエッジライト型バックライトを,大型液晶TVに使用するため,導光板の対角寸法を32インチワイド(導光板長さ約720mm)とし,導光板の厚さを3mm以下に設計し直そうとすると,この薄さを保ったままでの導光板の大型化が,以下の理由から,極めて困難であることが判明された。」
イ 「【図4】
」
(6)甲6
甲6(国際公開第2008/020587号)は,本件特許の優先権主張の日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該甲6には次の記載がある。
ア 「[0012] 本発明による光学積層体によれば,優れた防眩性と,艷黒感のある黒色再現性を実現することができ,かつ,高い鮮明度と,優れたコントラスト,ギラツキ防止性及び文字ボケ防止を達成することができることから,様々なディスプレイにおいて使用可能な光学積層体を提供することが可能となる。とりわけ,本発明による光学積層体によれば,従来の防眩性積層体では実現することが困難であった明室での黒の階調表現(光沢性のある黒色再現性)を顕著に改善した光学積層体を提供することができる。具体的には,動画表示を行った際における画像が従来の凹凸形状のない平坦なクリアーハードコート層,または,クリアーハードコート層および反射防止層を有する積層体のみを配置したディスプレイとほぼ同様の階調を表現することが可能となり,かつ,文字の輪郭のシャープ感,面ギラを防止した画像が得られる光学積層体を提供することが可能となる。特に,本発明による光学積層体は,明室における黒色の階調表現(光沢性のある黒色再現性)を顕著に改善した画像が得られるとの効果を有する。」
イ 「[0032] 微粒子
微粒子は球状,例えば真球状,楕円状,不定形等のものであってよぐ好ましくは真球状のものが挙げられる。また,微粒子は凝集型微粒子であってよい。本発明にあっては,微粒子の平均粒子径R(μm)が1.0m以上20m以下であり,好ましくは上限が15.0μm以下であり,より好ましくは13.5μm以下であり,好ましくは下限1.3μm以上であり,より好ましくは3.5μm以上(さらに好ましくは4.0μm以上)であるものが好ましい。微粒子の平均粒子径Rが上記の範囲内にあることにより,適切な凹凸形状を形成することができ,また,防眩層の層厚が好ましい範囲となるので好ましい。
上記平均粒子径とは,微粒子が,単分散型の粒子(形状が単一な粒子)であれば,その平均粒子径を表し,ブロードな粒度分布を持つ粒子であれば,粒度分布測定により,最も多く存在する粒子の粒径を平均粒子径として表している。上記微粒子の粒径は,主に,コールターカウンタ一法により計測できる。また,この方法以外に,レーザ一回折法,SEM写真撮影による測定によっても計測できる。
[0033] 本発明では,前記微粒子の全体の80%以上(好ましくは90%以上)において,前記微粒子の粒径平均分布がR±1.0μm,好ましくはR±0.5μm,さらに好ましくはR±0.3μmの範囲内にあるものが好ましい。微粒子の粒径平均分布が上記の範囲とされてなることにより,防眩性積層体の凹凸形状の均一性を良好なものとし,かつ,メンギラ等を有効に防止することが可能となる。また,前記微粒子を,第一微粒子とし,その平均粒径が異なる第二微粒子,第三微粒子又は第n微粒子(nは自然数)等の複数の微粒子をさらに含んでなるものを有するものであってもよぐ例えば,第一微粒子の平均粒子径R(μm)が3.5μm程度の小粒子径については,単分散微粒子ではなく,平均粒子径が3.5μmの粒度分布をもつ微粒子で効率良く凹凸層を形成させることが可能となる。
平均粒子径が異なる複数の微粒子を含む場合,第二,第三,第n微粒子の各平均粒子径は,上記微粒子(第一微粒子)と同じ範囲であることが好ましい。
・・・(中略)・・・
[0145] 本発明による画像表示装置が液晶表示装置の場合,光源装置の光源は本発明による光学積層体の下側から照射される。なお,STN型の液晶表示装置には,液晶表示素子と偏光板との間に,位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。」
ウ 「[0149] 防眩層用組成物2(実施例11)
ペンタエリスリトールトリアタリレート(PETA)(屈折率1.51) 19.5質量部
イソシアヌル酸変性ジアタリレートM215(東亞合成社製) 10.5質量部
PMMA(分子量75,000) 3質量部
光硬化開始剤 イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 1.98質量部
光硬化開始剤 イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.33質量部
透光性第一微粒子 単分散アクリルビーズ(粒径9.0μm,屈折率1.535) 3.3質量部
透光性第二微粒子 スチレンビーズ(粒径3.5μm,屈折率1.60) 4.62質量部
シリコン系レべリング剤 10―28(大日精化社製) 0.0132質量部
上記材料と,トルエン:シクロへキサノンが8:2の溶剤を,全固形分が60%となるように添加して十分混合し,組成物として調製した。この組成物を孔径30mのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用組成物2を調製した。」
エ 「請求の範囲
[1] 光透過性基材と,該光透過性基材上に防眩層を備えてなる光学積層体であって,前記防眩層の最表面が凹凸形状を有してなり,
前記光学積層体の全ヘイズ値をHaと,前記光学積層体の内部ヘイズ値をHiと定義した場合に,
Haが0%超過90%未満であり,
Hiが0%超過90%未満であり,及び
Hi/Haが0.8以上1.0未満である,光学積層体。
・・・(中略)・・・
[4] 前記防眩層が樹脂と微粒子とにより構成されてなる,請求項1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
・・・(中略)・・・
[10] 前記微粒子の平均粒子径Rが1.0μm以上20μm以下である,請求項4~9のいずれか一項に記載の光学積層体。
・・・(中略)・・・
[13] 前記微粒子が,二種類以上のものである,請求項4~12のいずれか一項に記載の光学積層体。
・・・(中略)・・・
[21] 透過性表示体と,前記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなる画像表示装置であって,
前記透過性表示体の表面に,請求項1~19のいずれか一項に記載の光学積層体,または請求項20に記載の偏光板を備えてなる,画像表示装置。」
(7)甲7
甲7(特開2010-102186号公報)は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲7には,次の記載がある。
「【0031】
また,エンボス法によりハードコート層に微細な凹凸形状を形成する場合には,上記特許文献1等に開示されているように,微細な凹凸形状が形成された金型を用いて,金型の形状を透明樹脂フィルム(すなわち,透光性樹脂と樹脂微粒子とからなる樹脂フィルム)に転写すればよい。金型形状のフィルムへの転写は,エンボスにより行なうことが好ましく,エンボスとしては,紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が好ましい。」
4 取消理由1の成否についての判断
(1)本件特許発明2について
ア 本件特許発明2と甲2積層体発明の対比
(ア) 甲2積層体発明の「液晶表示装置」,「『透明基材1』である『富士写真フイルム(株)製TD80U』」及び「『樹脂』である『PETA(日本化薬社製,屈折率1.51)』及び『DPHA(日本化薬社製,屈折率1.51)』の硬化物や,『アクリル系ポリマー(三菱レイヨン製,分子量75,000)』」は,本件特許発明2の「液晶表示装置」,「基材フィルム」及び「透光性樹脂」にそれぞれ相当する。
(イ) 甲2の【0024】には「微粒子は,防眩性を発揮するものであり,好ましくは,透明性のものがよい。微粒子の具体例としては,・・・(中略)・・・プラスチックビーズが挙げられ,より好ましくは透明性を有するものが挙げられる。」と記載されているところ,甲2積層体発明で用いている「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)及びアクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」の材質であるアクリル樹脂は透明樹脂であり,また,当該「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)及びアクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」の形状が球状又は略球状であることは「アクリルビーズ」との呼称や,甲2の【0016】の記載から明らかである。
したがって,甲2積層体発明の「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)及びアクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」は,本件特許発明2の「形状が,球状または略球状」である「透光性微粒子」に相当する。
(ウ) 甲2積層体発明の「防眩性積層体」とは,甲2の【0002】の記載によれば,液晶ディスプレイパネル等のディスプレイ表示装置において,外光の反射や蛍光灯等の写り込みによる視認性の低下を抑制するために,ディスプレイの最表面に配置されるものであって,凹凸形状を有する防眩層2によって,外光の反射や蛍光灯等の写り込みを抑制するものであるところ,表示装置内部から入射する光(表示画像)が「防眩層2」を透過する際に拡散すること,すなわち「防眩層2」が「光拡散機能」を有していることが当業者に自明であるから,甲2積層体発明の「防眩層2」を「光拡散層」と,「防眩性積層体」を「光拡散フィルム」ということができる。
したがって,甲2積層体発明の「防眩層2」は本件特許発明2の「光拡散層」に相当し,甲2積層体発明は「光拡散フィルム」である点で本件特許発明2と一致する。
(エ) 甲2積層体発明が配置される「液晶表示装置」の「光源装置」は,本件特許発明2が配置される「液晶表示装置」の「エッジライト型面光源」と,「バックライト」である点で共通する。
また,甲2積層体発明が配置される「液晶表示装置」の「表示素子」が,液晶セルと,当該液晶セルの前後にそれぞれ設けられた偏光板とから構成されることが当業者に自明であり,当該偏光板のうちバックライト側に位置するものを「後面側偏光板」と,表面側に位置するものを「前面側偏光板」ということができるところ,甲2積層体発明が「表示素子の表面に配置される」とは,「光源装置」の前面側に「液晶セル」が配置され,甲2積層体発明が「液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板の前面側に配置される」ことにほかならない。
したがって,本件特許発明2と甲2積層体発明は,「バックライトと,前記バックライトの前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される」点で共通する。
(オ) 甲2積層体発明は,「透明基材1」(本件特許発明2の「基材フィルム」に相当する。以下,「ア 本件特許発明2と甲2積層体発明の対比」欄中で,「」で囲まれた甲2積層体発明の構成の後に付した()中の文言は,当該構成に相当する本件特許発明2の構成を指す。)と,該透明基材1上に形成された「防眩層2」(光拡散層)とを備え,当該防眩層2が「樹脂」(透光性樹脂)と「微粒子3と第二微粒子」(透光性微粒子)とを含んでいるから,甲2積層体発明は,「基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有」する点で,本件特許発明2と一致する。
(カ) 甲2積層体発明は,「微粒子3及び第二微粒子」(透光性微粒子)として「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)」及び「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」,すなわち「平均粒子径」の異なるものを使用している。
ここで,甲2の記載中にある「平均粒子径」が何を基準とした平均粒子径の事であるのか,甲2中に明記はないものの,次のa及びbからみて,重量平均粒径を指していると解するのが相当である。
したがって,甲2積層体発明は,「透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有して」いる点で,本件特許発明2と一致する。
a 粉体工学会外1名編,「最新 粉体物性図説(第三版)」,(有)エヌジーティー,平成16年10月28日第3版第2刷発行(平成16年6月30日 第3版第1刷発行),14ページ右下欄11行ないし15ページ右下欄7行に,
「1.2.2 粒子径分布の表し方
(1)表し方
粒子径分布は,ある粒子径より小さい粒子の割合を表す積算分布Q(x),ある粒子径範囲に入る粒子の割合を表すヒストグラムq’(x)(合議体注:バー付きのqを「q’」と表示した。以下同じ。),Q(x)をxで微分した密度(頻度)分布q(x)で表すことがISO(JIS)規格で定められている.・・・(中略)・・・分布の基準は添字によってQr(x),q’r(x),qr(x)のように表される.r=3は質量(体積)基準,r=2は表面積あるいは面積基準,r=1は長さ基準,r=0は個数基準を表す.いずれの基準による表示も可能であるが,一般には質量(体積)基準で表示する.」
と記載されていることから明らかなように,一般に,粒子径分布を表すには,質量(体積)基準の粒子径分布が用いられることが多いこと。
b 甲2に記載された各実施例で用いられている微粒子は,商品名こそ特定されていないものの,日本触媒社製や綜研化学社製であることが記載されているところ,株式会社日本触媒のウェブページに掲載された「エポスターMAシリーズ」の紹介記事(URL:https://www.shokubai.co.jp/ja/particle/products/epostar-ma.htmlを参照。階層は「HOME>事業と製品>機能性化学品事業>日本触媒の微粒子>製品一覧/代表物性>エポスターMAシリーズ」。○囲みR記号は省略する。)に,「エポスターMAシリーズ」の各タイプとその「平均粒子径(μm)」が示されているとともに,縦軸を「体積(%)」とし,横軸を「粒子直径(μm)」とする「粒度分布図(MA1004)」が示されており,また,綜研化学株式会社のウェブページに掲載された「架橋アクリル単分散粒子『MXシリーズ』」の紹介記事(URL:https://www.soken-ce.co.jp/product/fine_particles/mx/を参照。階層は「TOP>製品情報>微粉体>架橋アクリル単分散粒子『MX』」。)に,「MXシリーズ」の各グレード(品番)とその「平均粒子径(μm)」が示されているとともに,縦軸を「体積(%)」とし,横軸を「粒子径(μm)」とする「粒度分布チャート MX-1000」が示されていて,両社が自社の製品に付している「平均粒子径」とは,質量(体積)基準の粒子径分布から計算される平均粒子径すなわち重量平均粒径であると考えるのが自然であること。
(キ) 前記(ア)ないし(カ)に照らせば,本件特許発明2と甲2積層体発明は,
「バックライトと,前記バックライトの前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である光拡散フィルム。」
である点で一致し,次の点で一応相違する。
相違点1:
本件特許発明2が配置される液晶表示装置の「バックライト」が,導光板及び導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源であるのに対して,
甲2積層体発明では,甲2積層体発明が配置される液晶表示装置の「バックライト」についてそのような特定はされていない点。
相違点2:
本件特許発明2の「透光性微粒子」は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であるのに対して,
甲2積層体発明の「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)」及び「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」全体の「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」は定かでない点。
相違点3:
本件特許発明2は,暗部および明部の幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であるのに対して,
甲2積層体発明は,暗部および明部の幅が「0.25mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が141であるが,暗部および明部の幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和は定かでない点。
相違点4:
本件特許発明2では,光拡散層の基材フィルムとは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下であるのに対して,
甲2積層体発明における防眩層2の最表面の中心線平均粗さRaは定かでない点。
イ 相違点1の判断
相違点1に係る本件特許発明2の構成要件は,「光拡散フィルム」が用いられる液晶表示装置のバックライトの構造を規定する要件である。
本件特許発明2は「光拡散フィルム」という物の発明であるから,前記構成要件については,相違点1に係る本件特許発明2のバックライトを採用した液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」を,それ以外の構成のバックライトを採用した液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」と比較したときに,両「光拡散フィルム」の形状,構造,組成等(以下,「物としての構成」という。)に何らかの差異が存在するのであれば,前記構成要件を「光拡散フィルム」の「物としての構成」上の当該差異を特定する要件と解し,両「光拡散フィルム」の「物としての構成」に何らの差異も存在しないのであれば,前記構成要件に関する限り「光拡散フィルム」という物を何ら限定するものでないと解するのが相当である。(なお,本件特許発明2は,「光拡散フィルム」という物の未知の属性を発見し,この属性により,「光拡散フィルム」という物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明ではないから,いわゆる「用途発明」に該当するものでもない。)
しかるに,バックライトとして「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源」(相違点1に係る本件特許発明2のバックライト)を採用した液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」と,それ以外の構成のバックライトを採用した液晶表示装置に用いられる「光拡散フィルム」とで,「物としての構成」に差異が存在するとは認められないから,相違点1に関する本件特許発明2の構成要件は,「光拡散フィルム」という物を何ら限定するものではないというべきである。
したがって,相違点1は実質的な相違点ではない。
ウ 相違点2の判断
(ア) 甲2の【0008】の記載から,甲2に開示された防眩性積層体では,防眩層が樹脂と微粒子3とを必須成分としていることを理解でき,【0017】の記載から,当該防眩性積層体では,平均粒径Rの微粒子3としては「全体の95%以上が,R±0.3μmの範囲内にあるもの」(すなわち,単分散性がきわめて高い微粒子)が好ましいことを理解でき,【0018】及び【0019】の記載から,当該防眩性積層体の「好ましい態様」では,防眩層が,さらに,平均粒径rが「0.50R≦r≦0.85R」を満足する第二微粒子4を含むことが理解できるところ,微粒子3として単分散性の高いものを用いたにもかかわらず,第二微粒子4として単分散性に乏しいものを用いたのでは,粒径が「R+0.3μm」を越えるような第二微粒子4が多数存在してしまうような状況も考えられるのであって,このような状況では,微粒子3として「全体の95%以上が,微粒子の平均粒子径R±0.3μmの範囲内にあるもの」を用いることの意味を失ってしまうことは明らかであるから,当業者であれば,たとえ甲2に第二微粒子4の単分散性についての説明がなくとも,微粒子3として「全体の95%以上が,R±0.3μmの範囲内にあるもの」を用いるのであれば,第二微粒子4についても微粒子3と同様に単分散性の高いものを用いたほうがよいと理解するものと認められる。
(イ) 甲2積層体発明は,甲2の【0018】及び【0019】に説明された「好ましい態様」の実施例に該当するところ,甲2積層体発明で用いている「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)」(以下,便宜上「大径アクリルビーズ」という。)及び「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」(以下,便宜上「小径アクリルビーズ」という。)はそれぞれ「微粒子3」及び「第二微粒子4」として用いられたものであるが,これらアクリルビーズの単分散性についての説明は甲2にはない。
しかるに,前記(ア)で述べた事項に鑑みれば,当業者は,甲2積層体発明で用いている大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズについては,「全体の95%以上が,平均粒径±0.3μmの範囲内にあるもの」が好ましいと理解するのであって,仮に甲2積層体発明の大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズが単分散性の高いものでないならば,そのようなアクリルビーズに代えて,それぞれ平均粒径及び屈折率が同一で「全体の95%以上が,平均粒径±0.3μmの範囲内にある」アクリルビーズを用いることは,甲2自体の記載に基づいて,当業者が容易になし得たことというほかない。(なお,平均粒径や屈折率は変わらないから,当該アクリルビーズの変更によって,「暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和」の値が大きく変化することはない。)
(ウ) 前記(イ)で述べた構成の変更を行った甲2積層体発明において,大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズ全体の重量平均粒径は約4.3(≒(4.96×4.6+1.65×3.5)/(4.96+1.65))μmである。
また,大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズ全体の粒径の標準偏差については,本欄末尾に示す「標準偏差の算出手法」により概算すると,各アクリルビーズの粒径が正規分布にしたがう場合は約0.61,対数正規分布にしたがう場合は約0.74であるから,「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」は,各アクリルビーズの粒径が正規分布にしたがう場合は約0.14となり,対数正規分布にしたがう場合は最大でも約0.17となる。
しかるに,前記(イ)で述べた構成の変更を行った甲2積層体発明において,各アクリルビーズが,正規分布や対数正規分布に類似する粒度分布を有しており,これらとかけ離れた分布とならないことは,技術常識からみて自明であるから,その「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」は,約0.14や約0.17に近い値をとり,0.6を越えることはないと強く推認される。
すなわち,甲2積層体発明において,前記(イ)で述べた構成の変更を行うと,必然的に相違点2に係る本件特許発明2の構成要件を充足することとなる。
[標準偏差の算出手法]
a 正規分布にしたがう場合の算出手法
(a) 各アクリルビーズが正規分布にしたがう場合,95%が平均粒子径±0.3の範囲内となることから,各アクリルビーズの標準偏差は約0.15である。また,粒径が0ないし2.0μmや6.0μmを越えるようなアクリルビーズの存在確率はゼロといって差し支えないから,これらの存在は無視する。
(b) そこで,まず,粒径について2.0ないし6.0μmの数値範囲を0.1μm刻みで40の粒径区間に分割し,各粒径区間に属する大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズの存在比(重量ベース)を,それぞれ,Excelの正規分布の値を算出する「NORM.DIST」関数を用いて,計算式:「各ビーズの存在比=NORM.DIST(Xmax,平均,標準偏差,TRUE)-NORM.DIST(Xmin,平均,標準偏差,TRUE)」(ただし,Xmax及びXminはそれぞれ粒径区間における上限及び下限)により算出し,各アクリルビーズの重量をそれぞれの存在比に乗算した上で,これらを加算することで,各粒径区間に属する大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズの合計重量aを算出する。
(c) 次に,各粒径区間における前記合計重量aを,各粒径区間の平均粒径(粒径区間における上限及び下限をそれぞれXmax,Xminとして,「平均粒径=(Xmax+Xmin)/2」)を有する球の体積で除算することにより,前記各粒径区間に属するアクリルビーズの合計粒子数bを概算する。
(d) そして,各粒径区間に属するアクリルビーズの分散の合計値cを計算式「(各粒径区間の平均粒径-アクリルビーズ全体の重量平均粒径)2×b」によって各粒径区間毎に概算し,当該合計値cを全粒径区間分合計したものを平方根した値(=(Σc)1/2)を標準偏差σとする。
b 対数正規分布にしたがう場合の算出手法
各アクリルビーズが対数正規分布にしたがう場合,アクリルビーズの粒径(X)の対数(ln(X))が正規分布にしたがうということだから,95%が平均粒子径±0.3の範囲内となるということは,粒径の対数(ln(X))でみたときに,その正規分布における「ln(平均粒子径+0.3)」ないし「ln(平均粒子径-0.3)」の範囲内が95%が存在するということである。
このような正規分布のうち,正規分布における標準偏差が最も大きくなるのは,前記「ln(平均粒子径+0.3)」ないし「ln(平均粒子径-0.3)」の範囲における中間値((ln(平均粒子径-0.3)+ln(平均粒子径+0.3))/2)が正規分布における平均値となり,前記「ln(平均粒子径+0.3)」ないし「ln(平均粒子径-0.3)」の範囲が正規分布における標準偏差の約4倍に相当する場合である。
すなわち,各アクリルビーズが対数正規分布にしたがう場合,各アクリルビーズの「粒径の対数(ln(X))」の標準偏差が最も大きくなるのは,大径アクリルビーズでは,「粒径の対数(ln(X))」が,平均μ1が約1.52(≒(ln(4.3)+ln(4.9))/2)で標準偏差σ1が約0.0327(≒(ln(4.9)-ln(4.3))/4)の正規分布となっているときであり,小径アクリルビーズでは,「粒径の対数(ln(X))」が,平均μ2が約1.25(≒(ln(3.2)+ln(3.8))/2)で標準偏差σ2が約0.0430(≒(ln(3.8)-ln(3.2))/4)の正規分布となっているときである。(当然,このときに各アクリルビーズの粒径の標準偏差自体も最も大きくなる。)
そこで,まず,粒径について2.0ないし6.0μmの数値範囲を0.1μm刻みで40の粒径区間に分割し,各粒径区間に属する大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズの存在比(重量ベース)を,それぞれ,Excelの対数正規分布の値を算出する「LOGNORM.DIST」関数を用いて,計算式:「大径アクリルビーズの存在比=LOGNORM.DIST(Xmax,μ1,σ1,TRUE)-LOGNORM.DIST(Xmin,μ1,σ1,TRUE)」及び「小径アクリルビーズの存在比=LOGNORM.DIST(Xmax,μ2,σ2,TRUE)-LOGNORM.DIST(Xmin,μ2,σ2,TRUE)」(ただし,Xmax及びXminはそれぞれ粒径区間における上限及び下限)により算出し,各アクリルビーズの重量をそれぞれの存在比に乗算した上で,これらを加算することで,各粒径区間に属する大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズの合計重量aを算出する。
以降は,前記a(c)及び(d)と同じ手順で,アクリルビーズ全体の標準偏差σを求める。
(エ) 以上によれば,甲2積層体発明を,相違点2に係る本件特許発明2の構成要件を充足するものとすることは,少なくとも,甲2の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点3の判断
明部と暗部の幅(以下,「くし幅」という。)がある値の1種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度が,0ないし100%という数値範囲内の値をとることは,測定原理より自明の事項であり,かつ,同一対象物を測定したときに,くし幅の小さい光学くしを用いた透過鮮明度が,くし幅の大きい光学くしを用いた透過鮮明度と同程度以下の値をとり,これを大きく超過する値になることがないことは,当業者における技術常識である。(例えば,特開2010-102186号公報の【0056】,特開2009-204837号公報の【0092】,特開2009-175374号公報の【0155】表2及び【0156】表3,特開2005-140890号公報の【0072】,特開2005-92197号公報の【0040】等を参照。)
ここで,甲2積層体発明では,くし幅が「0.25mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が141となるところ,前記事項に照らせば,くし幅が「0.25mm」の光学くしを通して測定される透過鮮明度の値は,下限が0%で上限が約35(≒141/4)%程度という数値範囲内にあり,くし幅が「0.125mm」の光学くしを通して測定される透過鮮明度は,くし幅が「0.25mm」の光学くしを通して測定される透過鮮明度と同程度以下の値となると考えられるから,甲2積層体発明におけるくし幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和は,約106(≒141-35)ないし約141%という数値範囲内にあるか,少なくとも当該数値範囲から大きくかけ離れた値になることはないと推定される。
したがって,甲2積層体発明における「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和は,「50%以上200%以下」という相違点3に係る本件特許発明2の条件を満足すると強く推認されるから,相違点3は実質的な相違点ではない。
オ 相違点4の判断
(ア)甲2積層体発明において,防眩層2の最表面の中心線平均粗さRaがどの程度の値であるのかを推し量るすべはないから,甲2積層体発明における防眩層2の最表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下であるということはできない。
したがって,相違点4は実質的な相違点であるというべきである。
(イ) そこで,甲2積層体発明が相違点4に係る本件特許発明2の構成要件を充足しないこと(すなわち,防眩層2の最表面の中心線平均粗さRaが0.2μmを超えること)を前提として,相違点4に係る本件特許発明2の構成要件を充足するものとすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであったのか否かを判断する。
a 甲2の【0002】ないし【0006】等の記載によれば,甲2積層体発明は,100ppi以下の中低度の解析度(決定注:解像度のことと解される。)であっても,優れた防眩性を実現し,かつ,コントラスト改善,透過鮮明度向上,文字ボケの軽減,表示体を黒表示にした状態での優れた漆黒感(墨色の黒さの度合い)の実現等を改善することを解決課題として,防眩層2において,5個以上の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在し,凹凸形状を形成するという構成を採用したことに特徴を有するものである。したがって,甲2積層体発明において,防眩層2の最表面の凹凸形状が「5個以上の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在」することによって形成されたものであることは,前記課題を解決し,所望の効果を得るために,必要不可欠な構成というべきである。
なお,甲2に,「5個以上の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在」することにより形成された凹凸形状(以下,「特定凹凸形状」という。)がどのような作用機序により前記課題を解決するのかについての明記はないものの,技術的観点からは,前記特定凹凸形状を採用すると,凝集部間に比較的広い平坦部が形成されるとともに,凝集部の位置には比較的大きなサイズでかつ複雑な形状の凸部が形成されて,前記平坦部での光の拡散が抑制されることでコントラストや文字ボケの低減ばかりでなく漆黒感が実現され,前記凸部での光の拡散によって防眩性を確保しているものと推察される。
b 一方,甲3には,拡散層18の表面における中心線平均粗さRaを0.2μm以下とすることでクリアな表示が得られる(甲2積層体発明における「文字ボケの軽減」と同義と解される。)ことが記載され(【0042】,【0141】),甲4には,防眩層12の表面における算術平均粗さRaを0.03μm以上0.15μm以下とすることで,防眩性とコントラストを両立できることが記載されているが(【0056】),甲3や甲4の記載からみて,これら甲3の記載された拡散層18や甲4に記載された防眩層12の表面の凹凸はいずれも「特定凹凸形状」ではない。
しかるに,「特定凹凸形状」でない凹凸形状においてクリアな表示を得たり,防眩性とコントラストを両立させるのに効果的な中心線平均粗さや算術平均粗さの値が,「特定凹凸形状」においてクリアな表示を得たり,防眩性とコントラストを両立させるのに効果的な中心線平均粗さや算術平均粗さの値と一致することを示す証拠は見当たらない。
そうすると,甲3や甲4に,「特定凹凸形状」でない凹凸形状において,中心線平均粗さや算術平均粗さを0.2μm以下や0.03μm以上0.15μm以下に設定することで,クリアな表示を得たり,防眩性とコントラストを両立させることができることが記載されているからといって,当業者が,防眩層2の最表面が「特定凹凸形状」である甲2積層体発明において,当該防眩層2の中心線平均粗さを0.2μm以下や0.03μm以上0.15μm以下という数値範囲内に変更しようとするとはいえない。
c また,そもそも,甲2の表2に各種評価が示されているように,甲2積層体発明では,100ppi以下の中低度の解析度(解像度)において,優れた防眩性を実現し,かつ,コントラスト改善,透過鮮明度向上,文字ボケの軽減,表示体を黒表示にした状態での優れた漆黒感(墨色の黒さの度合い)を実現できていると認められるのであって,防眩層2の最表面の中心線平均粗さを,甲3や甲4に記載された数値範囲に変更したからといって,文字ボケの低減(クリアな表示)や,防眩性とコントラストの両立といった点において,甲2積層体発明以上の特性のものが得られると当業者が予想するともいえない。
したがって,この点からも,当業者が,甲2積層体発明において,防眩層2の中心線平均粗さを0.2μm以下や0.03μm以上0.15μm以下という数値範囲内に変更しようとするとはいえない。
d 以上によれば,甲2積層体発明を,相違点4に係る本件特許発明2の構成要件を充足するものとすることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ) なお,特許異議申立人は,平成29年7月12日提出の意見書において,甲2の記載に基づいて防眩層の最表面の中心線平均粗さRaを算出し,当該Raが0.028ないし0.538μmの範囲にあるから,甲2積層体発明は,Raが0.2μm以下の範囲を十分に意図しているなどと主張している(意見書3ページ6行ないし9ページ13行)。
当該特許異議申立人のRaの算出方法は,凸部の形状を二等辺三角形と想定している点等において妥当なものとは認め難い点があるが,この点をおくとしても,特許異議申立人が算出したRaの範囲によれば,甲2積層体発明の防眩層2の中心線平均粗さが本件特許発明2の構成要件である「0.2μm以下」を充足するのか否かが定かでなく,相違点4が実質的な相違点であることに変わりはない。
また,当業者が,甲2積層体発明において,防眩層2の中心線平均粗さを0.2μm以下や0.03μm以上0.15μm以下という数値範囲内に変更しようとするとはいえず,甲2積層体発明を,相違点4に係る本件特許発明2の構成要件を充足するものとすることが,当業者が容易に想到し得たことといえないことは,前記(イ)b及びcで述べたとおりである。
したがって,当該特許異議申立人の主張は採用できない。
カ 本件特許発明2についての結論
前記オで述べたとおりであるから,本件特許発明2は,甲2積層体発明及び甲3又は甲4に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明3について
甲2積層体発明において,防眩層2の膜厚は6μmであり,大径アクリルビースの平均粒子径は4.6μmであり,小径アクリルビーズの平均粒子径は3.5μmであって,大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズ全体の重量平均粒径は約4.3μmであるところ,防眩層2の膜厚は,大径アクリルビーズの平均粒子径,小径アクリルビーズの平均粒子径及び大径アクリルビーズ及び小径アクリルビーズ全体の重量平均粒径のいずれに対しても,「1倍以上3倍以下」という本件特許発明3の構成要件を充足している。
したがって,本件特許発明3と甲2積層体発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(キ)で認定した相違点2及び4で相違し(なお,相違点1及び3については,前記(1)イ及びエで述べたとおり,実質的な相違点でない。),その余の点で一致する。
しかるに,相違点2及び4が存在する以上,本件特許発明3と甲2積層体発明は同一でない。
また,前記(1)オで述べたのと同様の理由によって,甲2積層体発明を,相違点4に係る本件特許発明3の構成要件を充足するものとすることは,当業者が容易に想到し得たことではないから,本件特許発明3は,甲2積層体発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明4について
ア 本件特許発明4と甲2積層体発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(キ)で認定した相違点2に加えて(なお,相違点1及び3については,前記(1)イ及びエで述べたとおり,実質的な相違点でない。),次の点で相違し,その余の点で一致する。
相違点5:
本件特許発明4では,光拡散層中の透光性微粒子が,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満である第1の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下である第2の透光性微粒子とを含むのに対して,
甲2積層体発明では,防眩層2中の微粒子3及び第二微粒子4は,平均粒子径がそれぞれ4.6μm及び3.5μmであって,いずれも本件特許発明4の第1の透光性微粒子に該当する微粒子であって,第2の透光性微粒子に該当する微粒子は存在しない点。
相違点6
本件特許発明4では,光拡散層における透光性微粒子の含有量は,透光性樹脂100重量部に対して22重量部以上60重量部以下であるのに対して,
甲2積層体発明では,防眩層2を形成する防眩層用組成物3が,PETA(日本化薬社製,屈折率1.51)21.28質量部,DPHA(日本化薬社製,屈折率1.51)8.63質量部,アクリル系ポリマー(三菱レイヨン製,分子量75,000)3.18質量部,アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)4.96質量部,アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)1.65質量部を含有するものであるから,PETA(日本化薬社製,屈折率1.51),DPHA(日本化薬社製,屈折率1.51)及びアクリル系ポリマー(三菱レイヨン製,分子量75,000)を合計で100重量部としたときの,微粒子3及び第二微粒子4の合計含有量は約20(≒(4.96+1.65)×100/(21.28+8.63+3.18))重量部となる点。
イ 事案に鑑み,まず相違点5について判断する。
甲2の【0017】には,微粒子3の平均粒子径Rの上限が5.0μmであることが好ましいと説明されており,【0019】には,第二微粒子4の平均粒子径rが微粒子3の平均粒子径R以下であることが好ましいことが記載されており,【0119】の【表2】に示された実施例1ないし8についても平均粒子径が5.0μmを越える微粒子又は第二微粒子が用いられた実施例は存在しないところ,微粒子3として,平均粒子径が6.0μm以上15.0μm以下の範囲内のものを用いたときに,前記(1)オ(イ)で述べた「5個以上の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在」することにより形成された「特定凹凸形状」が実現できる保証はないのだから,甲2積層体発明において,微粒子3として,平均粒子径が6.0μm以上15.0μm以下の範囲内のものを用いると,所望の効果が得られなくなってしまうおそれがある。
しかるに,甲6には,重量平均粒径が0.5μm以上6.0μm未満の透光性微粒子と,重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下の透光性微粒子とを混合して用いたときに,「特定凹凸形状」を実現できることについて,記載も示唆もないのだから,たとえ,甲6に,相違点5に係る本件特許発明4の構成要件を充足する防眩性積層体が開示されているとしても,当業者は,甲2積層体発明に当該甲6記載の技術を適用しようとはしない。
また,甲2積層体発明において微粒子3として用いている平均粒子径が4.6μmの大径アクリルビーズを重量平均粒径が6.0μm以上15.0μm以下の範囲内のものに変更した場合には,微粒子全体の「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」や甲2積層体発明の「透過鮮明度(Tc)」が変化することが明らかであるところ,甲2及び甲6の記載からみて,変更後の重量平均粒径として,0.5μm以上6.0μm未満という範囲内であって,かつ,微粒子全体の「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」や「透過鮮明度(Tc)」が本件特許発明4の要件を充足することとなるような値を選択することに,動機付けがあるともいえない。
したがって,甲2積層体発明を,相違点5に係る本件特許発明4の構成要件を充足するものとすることは,当業者にとって容易に想到し得たことではない。
よって,本件特許発明4は,甲2積層体発明及び甲6に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ なお,特許異議申立人は,平成29年7月12日提出の意見書において,甲6の実施例11の防眩層用組成物の成分と,甲2の実施例5の防眩層用組成物の成分が類似すること等を根拠に,甲6の実施例11の粒子が甲2積層体発明と同様に三次元立体構造の凝集部を形成することが期待されるとし,当業者であれば,甲2積層体発明に甲6記載の技術を適用することは当業者が容易に想到し得たことであるなどと主張しているが(意見書9ページ14行ないし13ページ3行),特許異議申立人独自の理論であって,当該主張を採用することはできない。
(4)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2積層体発明を対比すると,両者は,少なくとも前記(1)ア(キ)で認定した相違点4又は前記(3)アで認定した相違点5で相違する。
少なくとも相違点4又は5が存在する以上,本件特許発明5と甲2積層体発明は同一でない。
また,前記(1)オ及び前記(3)イで述べたのと同様の理由によって,甲2積層体発明を,相違点4に係る本件特許発明5の構成要件を充足するものとすること,及び相違点5に係る本件特許発明5の構成要件を充足するものとすることは,いずれも当業者が容易に想到し得たことではないから,本件特許発明5は,甲2積層体発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件特許発明6について
ア 本件特許発明と甲2製造方法発明を対比すると,両者は,次の点で相違し,その余の点で一致する。
相違点8:
本件特許発明6により製造される光拡散フィルムが,「バックライト」として「導光板および前記導光板の側方に配置される光源を備え,前記導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源」を採用した液晶表示装置に配置されるものであるのに対して,
甲2製造方法発明では,甲2製造方法発明により製造される甲2積層体発明が配置される液晶表示装置の「バックライト」について,そのような特定はされていない点。
相違点9:
本件特許発明6の「透光性微粒子」は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であるのに対して,
甲2製造方法発明の「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)」及び「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」全体の「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」は定かでない点。
相違点10:
本件特許発明6により製造される光拡散フィルムは,暗部および明部の幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であるのに対して,
甲2製造方法発明により製造される甲2積層体発明では,暗部および明部の幅が「0.25mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が141であるが,暗部および明部の幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和は定かでない点。
相違点11:
本件特許発明6では,樹脂液から形成された層の表面に,金型の鏡面または凹凸面を転写する工程を有しているのに対して,
甲2製造方法発明では,防眩層2の表面に対してそのような工程を行っていない点。
イ 事案に鑑み,まず相違点11について判断する。
前記(1)オで述べたのと同様の理由で,甲2製造方法発明は,優れた防眩性を実現し,かつ,コントラスト改善,透過鮮明度向上,文字ボケの軽減,表示体を黒表示にした状態での優れた漆黒感(墨色の黒さの度合い)の実現等を改善することを解決課題として,防眩層2において,5個以上の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在し,凹凸形状を形成するという構成を採用したことに特徴を有するものであって,甲2製造方法発明において,防眩層2の最表面に「5個以上の微粒子が三次元立体構造の凝集部を構成し,この凝集部が寄り集まることなく複数存在」することによって形成された「特定凹凸形状」が形成されるように製造することは,前記課題を解決し,所望の効果を得るために,必要不可欠な構成と解される。
したがって,たとえ,甲7に,防眩層の表面に,金型の微細な凹凸形状を転写する技術が開示されているとしても,甲2製造方法発明に当該技術を採用すると,防眩層2の最表面の凹凸形状が「特定凹凸形状」ではなくなってしまい,所望の効果が得られなくなってしまうから,甲2製造方法発明への前記技術の適用には阻害要因が存在するといわざるを得ない。
したがって,甲2製造方法発明を,相違点11に係る本件特許発明6の構成要件を充足するものとすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。
よって,相違点8ないし10について検討するまでもなく,本件特許発明6は,甲2製造方法発明及び甲7に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲2偏光板発明を対比すると,両者は,少なくとも前記(1)ア(キ)で認定した相違点4又は前記(3)アで認定した相違点5で相違する。
少なくとも相違点4又は5が存在する以上,本件特許発明7と甲2偏光板発明は同一でない。
また,前記(1)オ及び前記(3)イで述べたのと同様の理由によって,甲2偏光板発明を,相違点4に係る本件特許発明7の構成要件を充足するものとすること,及び相違点5に係る本件特許発明7の構成要件を充足するものとすることは,いずれも当業者が容易に想到し得たことではないから,本件特許発明7は,甲2偏光板発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件特許発明8について
本件特許発明8と甲2偏光板発明を対比すると,両者は,少なくとも前記(1)ア(キ)で認定した相違点4又は前記(3)アで認定した相違点5で相違する。
少なくとも相違点4又は5が存在する以上,本件特許発明8と甲2偏光板発明は同一でない。
また,前記(1)オ及び前記(3)イで述べたのと同様の理由によって,甲2偏光板発明を,相違点4に係る本件特許発明8の構成要件を充足するものとすること,及び相違点5に係る本件特許発明8の構成要件を充足するものとすることは,いずれも当業者が容易に想到し得たことではないから,本件特許発明8は,甲2偏光板発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件特許発明9,11ないし14について
本件特許発明9,11ないし14と甲2液晶表示装置発明を対比すると,両者は,少なくとも前記(1)ア(キ)で認定した相違点4又は前記(3)アで認定した相違点5で相違する。
しかるに,前記(1)オ及び前記(3)イで述べたのと同様の理由によって,甲2液晶表示装置発明を,相違点4に係る本件特許発明9,11ないし14の構成要件を充足するものとすること,及び相違点5に係る本件特許発明9,11ないし14の構成要件を充足するものとすることは,いずれも当業者が容易に想到し得たことではないから,本件特許発明9,11ないし14は,甲2液晶表示装置発明及び甲4,甲5に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)本件特許発明10について
ア 本件特許発明10と甲2液晶表示装置発明の対比
甲2液晶表示装置発明の「光源装置」は,本件特許発明10の「エッジライト型面光源」とバックライトである点で共通する。
また,甲2液晶表示装置の「表示素子」が,「光源装置」の前面側に配置されること,及び液晶セルと当該液晶セルの前後にそれぞれ設けられた偏光板とから構成されることは,たとえ甲2に明記がなくとも当業者に自明である。
また,甲2液晶表示装置発明において,「甲2積層体発明」は,表示素子の表面に,すなわち表示素子中の前面側に設けられた偏光板の前面側に配置されている。
さらに,甲2液晶表示装置発明が具備する「甲2積層体発明」と,本件特許発明10が具備する「光拡散フィルム」との対比については,前記(1)ア(ア)ないし(カ)と同様である。
したがって,本件特許発明10と甲2液晶表示装置発明は,
「バックライトと,
前記バックライトの前面側に配置される液晶セルと,
前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板と,
前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムと,
を含み,
前記光拡散フィルムは,基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
前記透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有しており,
前記透光性微粒子の形状が,球状または略球状である液晶表示装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。
相違点12:
本件特許発明10が具備するバックライトが,背面側に形成された白色ドットパターンを有する導光板及び前記導光板の側方に配置される光源を備えるエッジライト型面光源であるのに対し,
甲2液晶表示装置発明が具備するバックライトには,そのような特定は付されていない点。
相違点13:
本件特許発明10が具備する「光拡散フィルム」の「光拡散層」が含有する「透光性微粒子」は,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であるのに対して,
甲2液晶表示装置発明が具備する「甲2積層体発明」の「防眩層2」が含有する「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径4.6μm,屈折率1.53)」及び「アクリルビーズ(日本触媒社製,粒径3.5μm,屈折率1.53)」全体の「粒径の標準偏差と重量平均粒径の比」は定かでない点。
相違点14:
本件特許発明10が具備する「光拡散フィルム」は,暗部および明部の幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下であるのに対して,
甲2液晶表示装置発明が具備する「甲2積層体発明」は,暗部および明部の幅が「0.25mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が141であるが,暗部および明部の幅が「0.125mm」,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和は定かでない点。
イ 相違点12について
(ア) 甲5の記載(前記3(5)を参照。)等から,液晶表示装置において,背面に白色印刷ドットが形成された導光板と当該導光板の側面に配置された光源とから構成されたエッジライト型バックライトを用いること(以下,「第1周知技術」という。)は,本件特許の優先権主張の日より前に周知であったと認められる。
(イ) 液晶表示装置において,如何なる方式のバックライトを採用するのかは,各方式のバックライトの長所・短所等を総合的に勘案して,当業者が適宜選択すれば足りる設計上の事項にすぎないというべきところ,甲2液晶表示装置発明において,光源装置として,前記(ア)で認定した周知の「背面に白色印刷ドットが形成された導光板と当該導光板の側面に配置された光源とから構成されたエッジライト型バックライト」を用いること,すなわち,相違点12に係る本件特許発明10の構成要件を充足するものとすることは,第1周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点13について
前記(1)ウ(ア)ないし(ウ)で述べたのと同様の理由で,甲2液晶表示装置発明を,相違点13に係る本件特許発明10の構成要件を充足するものとすることは,甲2の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点14について
前記(1)エで述べたのと同様の理由で,相違点14は実質的な相違点でない。
オ 効果について
本件特許発明10が有する効果は,進歩性の有無についての結論を左右するほど格別のものではない。
カ 本件特許発明10についての結論
前記イないしオのとおりであるから,本件特許発明10は,甲2液晶表示装置及び第1周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)小括
本件特許発明10に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
本件特許発明2ないし9,11ないし14に係る特許について,取消理由1は成り立たない。
4 取消理由2の成否についての判断
(1)本件特許発明2について
ア 本件特許発明2と甲1発明の対比
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると,甲1発明の「液晶セル」,「液晶セルの上面側に設けられた偏光板」,「液晶表示装置」,「防眩フィルム」,「透明基材フィルム」,「透光性樹脂」,「透光性微粒子」,「防眩層」及び「暗部と明部の幅の比が1:1でその幅が0.125mm,0.5mm,1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である透過鮮明度(Tc)」が,本件特許発明2の「液晶セル」,「前面側偏光板」,「液晶表示装置」,「光拡散フィルム」,「基材フィルム」,「透光性樹脂」,「透光性微粒子」,「光拡散層」及び「暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和」にそれぞれ相当し,甲1発明の「バックライト」と本件特許発明2の「エッジライト型面光源」は「バックライト」である点で共通するから,両者は,
「バックライトと,前記バックライトの前面側に配置される液晶セルと,前記液晶セルの前面側に配置される前面側偏光板とを含む液晶表示装置における前記前面側偏光板の前面側に配置される光拡散フィルムであって,
基材フィルムと,前記基材フィルム上に積層された,透光性樹脂および該透光性樹脂中に分散された透光性微粒子を含有する光拡散層とを有し,
暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下である光拡散フィルム。」
である点で一致し,次の点で相違する。
相違点2-1:
本件特許発明2が配置される液晶表示装置の「バックライト」が,導光板及び導光板の側方に配置される光源を備え,導光板がその背面側に形成された白色ドットパターンを有するエッジライト型面光源であるのに対して,
甲1発明では,甲1発明が配置される液晶表示装置の「バックライト」についてそのような特定はされていない点。
相違点2-2:
本件特許発明2の透光性微粒子が,2種類以上の重量平均粒径の粒子を含有し,その粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下であるのに対し,
甲1発明の透光微粒子が,このようなものであるのか否かは不明な点。
相違点2-3:
本件特許発明2の透光性微粒子の形状が,球状または略球状であるのに対して,
甲1発明の透光性微粒子の形状は不明な点。
相違点2-4:
本件特許発明2の「光拡散層」の「基材フィルム」とは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下であるのに対して,
甲1発明の「防眩層」の「透明基材フィルム」とは反対側の表面の中心線平均粗さの値は不明な点。
イ 判断
事案に鑑み,まず相違点2-2について検討する。
甲1には,透光性微粒子12について,それぞれの粒径が異なる2種類以上の透光性微粒子を用いてもよいこと(【0028】),及び透光性微粒子の少なくとも一つが,実質的に単分散の有機微粒子であってもよいこと(【0030】)についての開示はあるが,粒径の異なる透光性微粒子に関してどの程度の粒径の差が好ましいのかについて説明されてはおらず,また,透光性微粒子の単分散性についても,どの程度の値であることが好ましいのかについて説明されてもいないから,甲1発明の透光性微粒子として,実質的に単分散の有機微粒子であって,粒径が異なる2種類以上のものを用いた場合に,当該透光性微粒子全体の粒径の標準偏差と重量平均粒径の比がどのような値になるのかは不明であり,甲1発明の透光性微粒子として,実質的に単分散の有機微粒子であって,粒径が異なる2種類以上のものを用いたものが,相違点2-2に係る本件特許発明2の構成要件を具備することになるとはいえない。
加えて,そもそも,甲1発明は,どのような粒径の透光性微粒子を,粒径に関して何種類含むものであるのかについて不明であるところ(甲1のサンプルBに関する記載からは,1種類と解するのが自然ではある。),当該透光性微粒子として,粒径が異なる2種類以上のものを含み,透光性微粒子全体の粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下となるようなものを用いた場合には,甲1発明の「透過鮮明度(Tc)」は,131.8%から異なる値に変化するものと考えられるのであって,当該変化後の値が,「50%以上200%以下」という本件特許発明2の構成要件を充足するとは限らない。すなわち,甲1発明を,相違点2-2に係る本件特許発明2の構成要件を具備するものに変更すると,「透過鮮明度」の値に関して,新たな相違点となる可能性があるのである。
そして,甲1の全記載をみても,甲1発明において,透光性微粒子として,粒径が異なる2種類以上のものであって,かつ,全体の粒径の標準偏差と重量平均粒径の比が0.6以下となるようなものを選択した上で,「透過鮮明度(Tc)」が「50%以上200%以下」の範囲内となるように配慮することに動機付けがあるとは認められないから,たとえ当業者といえども,このような構成の変更が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件特許発明2は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明3ないし14について
本件特許発明3ないし14と甲1発明を対比すると,両者は,少なくとも前記(1)アで認定した相違点2-2で相違する。
少なくとも相違点2-2が存在する以上,本件特許発明5及び7と甲2積層体発明は同一でない。
また,前記(1)イで述べたのと同様の理由によって,甲1発明を,相違点2-2に係る本件特許発明3ないし14の構成要件を充足するものとすることは,当業者が容易に想到し得たことではないから,本件特許発明3ないし14は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
本件特許発明2ないし14に係る特許について,取消理由2は成り立たない。
5 取消理由3の成否についての判断
特許明細書等の発明の詳細な説明の【0124】ないし【0141】には,「明部及び暗部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mm,2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下」であるとの構成要件構成要件を充足する実施例1ないし4,7について(なお,実施例5は当該構成要件を充足しておらず,実施例6及び8は,粒径の異なる透光性微粒子を含むとの構成要件を充足していない。),各透光性微粒子の材質及び粒径や,透光性樹脂に対する透光性微粒子の配合量等が開示されている。
また,透光性微粒子の配合量や,透光性微粒子と透光性樹脂の屈折率差を調整することによって,光拡散の程度を,したがって,透過鮮明度の和を調整できることは,当業者に自明である。
そうすると,当業者は,特許明細書等に開示された各実施例の各透光性微粒子の材質及び粒径や,透光性樹脂に対する透光性微粒子の配合量等を参考にして,適宜,透光性微粒子の配合量や,透光性微粒子と透光性樹脂の屈折率差を調整することにより,「明部及び暗部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mm,2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下」の光拡散フィルムを製造することができるといえるから,特許明細書等の発明の詳細な説明が,当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとはいえない。
したがって,本件特許発明2ないし14に係る特許について,取消理由3は成り立たない。
6 取消理由4の成否についての判断
(1)中心線粗さRaに関するサポート要件違反について
特許明細書等の発明の詳細な説明の【0008】等の記載から,本件特許発明に共通する解決課題は,「正面輝度の向上とドット見えの防止との両立」にあるものと認められる。
また,特許明細書等の発明の詳細な説明の【0023】等の記載から,暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上300%以下という範囲にあると,前記課題を解決できることを理解できる。
さらに,特許明細書等の発明の詳細な説明の【0029】等の記載から,光拡散層102表面の中心線平均粗さRaが0.2μmを超える場合,光拡散フィルムを液晶表示装置に適用したときに,光拡散層102の表面乱反射により,特に明所で画面全体が白っぽく感じられる,いわゆる「白ちゃけ」が顕著となる傾向にあるということを把握できるところ,【0029】等の記載は,中心線平均粗さRaが0.2μmを越えれば必ず「白ちゃけ」が発生するということや,中心線平均粗さRaが0.2μm以下であれば必ず「白ちゃけ」を防止できるということを説明するものでなく,あくまでも,前記構成要件により「白ちゃけ」の発生を抑制できることを説明したものと解するのが相当である。
本件特許発明2は,「暗部および明部の幅が0.125mm,0.5mm,1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを通して測定される透過鮮明度の和が50%以上200%以下」であるという構成要件と,「光拡散層の基材フィルムとは反対側の表面の中心線平均粗さRaが0.2μm以下」であるという構成要件とを具備するところ,前者の構成要件によって,本件特許発明2が解決しようとする課題(正面輝度の向上とドット見えの防止との両立)は解決されているのであり,後者の構成要件は,当該課題解決に加えて,「白ちゃけ」の発生を抑制できるという効果を得るための要件と解される。
そうすると,本件特許発明2が,発明の詳細な説明の記載や技術常識等により,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるとはいえないから,本件特許発明2が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
また,本件特許発明3,5,7ないし9,11ないし14についても同様である。
さらに,当該取消理由の対象とされていた請求項4,6,10については,本件訂正により,光拡散層102表面の中心線平均粗さRaに係る構成要件を具備しないものに訂正されたから,当該取消理由は成り立たない。
(2)透光性微粒子の重量平均粒径の差に関するサポート要件違反について
特許明細書等の発明の詳細な説明の【0049】には,「第1の透光性微粒子104aの重量平均粒径と第2の透光性微粒子104bの重量平均粒径との差は2μm以上であることが好ましい。重量平均粒径差が2μm未満であると,異なる重量平均粒径を有する透光性微粒子を組み合わせる効果が不十分となり,重量平均粒径差が上記範囲内である場合と比較して光拡散性と透過鮮明度との両立が達成しにくい傾向にある。」と記載されているところ,当該記載は,あくまでも,重量平均粒径差が2μm未満のものが,重量平均粒径差が2μm以上のものに比べて,光拡散性と透過鮮明度との両立が達成しにくい傾向にあることを説明しているのであって,重量平均粒径差が2μm未満のものだと,光拡散性と透過鮮明度との両立が不可能であることを説明したものではない。
そうすると,本件特許発明4が,発明の詳細な説明の記載や技術常識等により,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるとはいえないから,本件特許発明4が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
また,本件特許発明5,7ないし9,11ないし14についても同様である。
さらに,当該取消理由の対象とされていた請求項6,10については,本件訂正により,第1及び第2の透光性微粒子の重量平均粒径の数値範囲に係る構成要件を具備しないものに訂正されたから,当該取消理由は成り立たない。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件特許発明2ないし14について,取消理由4は成り立たない。
7 特許異議申立理由について
本件取消理由で取り上げなかった特許異議申立理由はない。
第4 むすび
本件特許発明10に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであって,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
請求項2ないし9,11ないし14に係る特許は,本件取消理由及び特許異議申立理由によっては,取り消すことはできない。さらに,他に請求項2ないし9,11ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項1は,訂正により削除されたため,本件特許の請求項1に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700879