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特許異議申立

2016-700855

光学フィルター、固体撮像装置およびカメラモジュール

審判番号
2016-700855
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-542650
登録番号
特許第5884953号(P5884953)
請求日
2016年09月12日
審決日
2017年10月03日
公報発行日
2018年03月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】JSR株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人SSINPAT
  • 【異議申立人】竹口 美穂
審判長/審判官
  • 審判長 中田 誠
  • 審判官 鉄 豊郎
  • 審判官 清水 康司
分類
P1651.121-ZDA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5884953号発明「光学フィルター、固体撮像装置およびカメラモジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5884953号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3-16〕、〔17-31〕、〔32-45〕、〔46-58〕について、訂正することを認める。 特許第5884953号の請求項1、2、4ないし7、12ないし16、32ないし37、41ないし45に係る特許を取り消す。 特許第5884953号の請求項17ないし31、38ないし40、46ないし58に係る特許を維持する。 特許第5884953号の請求項3、8ないし11に係る特許についての申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5884953号の請求項1ないし16に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2014年10月16日(優先権主張平成25年10月17日)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年 2月19日:特許権の設定登録 平成28年 3月15日:特許掲載公報発行 平成28年 9月12日:特許異議の申立て(特許異議申立人竹口美穂) 平成28年12月19日:取消理由通知書 平成29年 2月20日:意見書 平成29年 4月28日:取消理由通知書(決定の予告) 平成29年 7月10日:訂正請求書(以下「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書によりなされた訂正を「本件訂正」という。)及び意見書 平成29年 7月20日:通知書(訂正請求があった旨の通知) 平成29年 8月18日:意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否についての判断 本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許権者は、特許請求の範囲の請求項3及び8ないし11を削除することを請求する。 (2)訂正事項2 特許権者は、以下のように訂正することを請求する。 ア 本件特許の請求項4に、「請求項2または3に記載の」とあったものを、「請求項2に記載の」と訂正する。 イ 本件特許の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の」とあったものを、「請求項1、2または4に記載の」と訂正する。 ウ 本件特許の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の」とあったものを、「請求項1、2、4または5に記載の」と訂正する。 エ 本件特許の請求項7に「請求項2~6のいずれか1項に記載の」とあったものを、「請求項2、4、5または6に記載の」と訂正する。 オ 本件特許の請求項12に「請求項1~11のいずれか1項に記載の」とあったものを、「請求項1、2、4、5、6または7に記載の」と訂正する。 カ 本件特許の請求項13に「請求項1~12のいずれか1項に記載の」とあったものを、「請求項1、2、4、5、6、7または12に記載の」と訂正する。 キ 本件特許の請求項14~16に「請求項1~13にいずれか1項に記載の」とあったものを、「請求項1、2、4、5、6、7、12または13に記載の」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許権者は、本件特許の請求項15及び16にそれぞれ、「固体撮像装置」及び「カメラモジュール」とあったものを、「監視カメラ以外の固体撮像装置」及び「監視カメラ以外のカメラモジュール」に訂正することを請求する。 (4)訂正事項4 特許権者は、本件特許の請求項1の記載を引用する請求項3の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとして、新たに請求項17と訂正することを請求する。 (5)訂正事項5 特許権者は、以下のように訂正することを請求する。 ア 本件特許の請求項2の記載を引用する請求項3について、請求項17の記載を引用する新たな請求項18とする。 イ 本件特許の請求項2の記載を引用する請求項3の記載をさらに引用する請求項4について、請求項18の記載を引用する新たな請求項19とする。 ウ 本件特許の請求項1~4の記載を引用する請求項5のうち一部の請求項について、請求項17~19の記載を引用する新たな請求項20とする。 エ 本件特許の請求項1~5の記載を引用する請求項6のうち一部の請求項について、請求項17~20の記載を引用する新たな請求項21とする。 オ 本件特許の請求項2~6の記載を引用する請求項7のうち一部の請求項について、請求項18~21の記載を引用する新たな請求項22とする。 カ 本件特許の請求項1~7の記載を引用する請求項8のうち一部の請求項について、請求項17~22の記載を引用する新たな請求項23とする。 キ 本件特許の請求項1~8の記載を引用する請求項9のうち一部の請求項について、請求項17~23の記載を引用する新たな請求項24とする。 ク 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項10のうち一部の請求項について、請求項24の記載を引用する新たな請求項25とする。 ケ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項11のうち一部の請求項について、請求項24に記載を引用する新たな請求項26とする。 コ 本件特許の請求項1~11の記載を引用する請求項12のうち一部の請求項について、請求項17~26の記載を引用する新たな請求項27とする。 サ 本件特許の請求項1~12の記載を引用する請求項13のうち一部の請求項について、請求項17~27の記載を引用する新たな請求項28とする。 シ 本件特許の請求項1~13の記載を引用する請求項14のうち一部の請求項について、請求項17~28の記載を引用する新たな請求項29とする。 ス 本件特許の請求項1~13の記載を引用する請求項15のうち一部の請求項について、請求項17~28の記載を引用する新たな請求項30とする。 セ 本件特許の請求項1~13の記載を引用する請求項16のうち一部の請求項について、請求項17~28の記載を引用する新たな請求項31とする。 (6)訂正事項6 特許権者は、本件特許の請求項1の記載を引用する請求項8の記載を当該請求項1の記載を引用しないものとして、新たに請求項32と訂正することを請求する。 (7)訂正事項7 特許権者は、以下のように訂正することを請求する。 ア 本件特許の請求項2の記載を引用する請求項8について、請求項32の記載を引用する新たな請求項33とする。 イ 本件特許の請求項4の記載を引用する請求項8のうち一部の請求項について、請求項33の記載を引用する新たな請求項34とする。 ウ 本件特許の請求項5の記載を引用する請求項8のうち一部の請求項について、請求項32~34の記載を引用する新たな請求項35とする。 エ 本件特許の請求項6の記載を引用する請求項8のうち一部の請求項について、請求項32~35の記載を引用する新たな請求項36とする。 オ 本件特許の請求項7の記載を引用する請求項8のうち一部の請求項について、請求項33~36の記載を引用する新たな請求項37とする。 カ 本件特許の請求項8の記載を引用する請求項9のうち一部の請求項について、「前記化合物(Z)が、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である」とあったものを、「前記化合物(Z)が、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)を含み、前記基材(i)がさらに、波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)および吸収極大波長が850nm超の色素(x)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む」とし、請求項32~37の記載を引用する新たな請求項38とする。 キ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項10のうち一部の請求項について、請求項38の記載を引用する新たな請求項39とする。 ク 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項11のうち一部の請求項について、請求項38の記載を引用する新たな請求項40とする。 ケ 本件特許の請求項8の記載を引用する請求項12のうち一部の請求項について、請求項32~40の記載を引用する新たな請求項41とする。 コ 本件特許の請求項8の記載を引用する請求項13のうち一部の請求項について、請求項32~41の記載を引用する新たな請求項42とする。 サ 本件特許の請求項8の記載を引用する請求項14のうち一部の請求項について、請求項32~42の記載を引用する新たな請求項43とする。 シ 本件特許の請求項8の記載を引用する請求項15のうち一部の請求項について、請求項32~42の記載を引用する新たな請求項44とする。 ス 本件特許の請求項8の記載を引用する請求項16のうち一部の請求項について、請求項32~42の記載を引用する新たな請求項45とする。 (8)訂正事項8 特許権者は、本件特許の請求項1の記載を引用する請求項9を当該請求項1の記載を引用しないものとし、さらに、同請求項9に「波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物」とあったものを、「波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)」とし、新たに請求項46と訂正することを請求する。 (9)訂正事項9 特許権者は、上記(8)の訂正事項8によって、新たな請求項46の記載を直接的又は間接的に引用する請求項として、以下のように訂正することを請求する。 ア 本件特許の請求項2の記載を引用する請求項9について、請求項46の記載を引用する新たな請求項47とする。 イ 本件特許の請求項2の記載を引用する請求項4の記載をさらに引用する請求項9について、請求項47の記載を引用する新たな請求項48とする。 ウ 本件特許の請求項5の記載を引用する請求項9のうち一部の請求項について、請求項46~48の記載を引用する新たな請求項49とする。 エ 本件特許の請求項6の記載を引用する請求項9のうち一部の請求項について、請求項46~49の記載を引用する新たな請求項50とする。 オ 本件特許の請求項7の記載を引用する請求項9のうち一部の請求項について、請求項47~50の記載を引用する新たな請求項51とする。 カ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項10のうち一部の請求項について、請求項46の記載を引用する新たな請求項52とする。 キ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項11のうち一部の請求項について、請求項46の記載を引用する新たな請求項53とする。 ク 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項12のうち一部の請求項について、請求項46~53の記載を引用する新たな請求項54とする。 ケ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項13のうち一部の請求項について、請求項46~54の記載を引用する新たな請求項55とする。 コ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項14のうち一部の請求項について、請求項46~55の記載を引用する新たな請求項56とする。 サ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項15のうち一部の請求項について、請求項46~55の記載を引用する新たな請求項57とする。 シ 本件特許の請求項9の記載を引用する請求項16のうち一部の請求項について、請求項46~55の記載を引用する新たな請求項58とする。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正前の請求項3及び8ないし11に係る訂正事項 ア 訂正前の請求項3に係る訂正である訂正事項1のうち請求項3を削除する訂正、訂正事項4及び訂正事項5のアの訂正は、本件特許の請求項3のうち請求項1の記載を引用する部分について、当該請求項1の記載を引用しない形式に改めて新たな請求項17とし、その余の部分を請求項18にするとともに、元々の請求項3を削除する訂正であるから、引用関係の解消を目的とするものと認める。 イ 訂正前の請求項8に係る訂正である訂正事項1のうち請求項8を削除する訂正、訂正事項6のカの訂正、訂正事項6及び訂正事項7のアないしオの訂正は、本件特許の請求項8のうち請求項1の記載を引用する部分について、当該請求項1の記載を引用しない形式に改めて新たな請求項32とし、その余の部分を新たな請求項23、33ないし38とするとともに、元々の請求項8を削除する訂正であるから、引用関係の解消を目的とするものと認める。 ウ 訂正前の請求項9に係る訂正である訂正事項1のうち請求項9を削除する訂正、訂正事項5のキの訂正、訂正事項7のカの訂正、訂正事項8及び訂正事項9のアないしオの訂正は、本件特許の請求項9のうち請求項1の記載を引用する部分について、当該請求項1の記載を引用しない形式に改めるとともに、透明樹脂層について、「波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物」を含むものから、「波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)」を含むものに限定して新たな請求項46とし、請求項9のうちその余の部分を新たな請求項24、47ないし51とするとともに新たな請求項47ないし51については、新たな請求項46と同じ限定を行い、元々の請求項9を削除する訂正であるから、引用関係の解消及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。 エ 訂正前の請求項10及び11に係る訂正である訂正事項1のうち請求項10及び11を削除する訂正、訂正事項5のク及びケの訂正、訂正事項7のキ及びクの訂正、訂正事項9のカ及びキの訂正及び訂正事項9のアないしオの訂正は、上記アないしウの訂正に伴って不明瞭となる引用請求項の項番の記載を、訂正後の請求項の項番に整合させる訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認める。 オ 上記アないしエの訂正は、本件訂正の請求の時点における本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 (2)訂正前の請求項4ないし7及び12ないし16に係る訂正事項 ア 訂正前の請求項4ないし7及び12ないし14に係る訂正である訂正事項2、訂正事項5のうちイないしオ及びコないしセの訂正、訂正事項7のうちケないしスの訂正及び訂正事項9のうちクないしシの訂正は、上記(1)の訂正に伴って不明瞭となる引用請求項の項番の記載を、訂正後の請求項の項番に整合させる訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認める。 イ 訂正前の請求項15及び16に係る訂正である訂正事項3は、「監視カメラ以外の」と用途の一部を除外する限定をするものであり、当該限定に係る訂正事項3は、請求項に記載した事項を一部除外するものであり、新たな技術的事項を導入するものでもないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 上記ア及びイの訂正は、本件訂正の請求の時点における本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 3 訂正における一群の請求項の存否 本件特許の請求項3ないし16は、請求項4ないし16が訂正請求の対象に関連する請求項3の記載を引用するものであるから、訂正後の請求項3ないし58は一群の請求項である。 4 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1ないし9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号の目的に該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するするので、訂正後の請求項3ないし58について訂正を認める。 そして、特許権者から、訂正後の請求項17ないし31、32ないし45、46ないし58についてそれぞれ訂正が認められるときは請求項3ないし16とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔3-16〕、〔17-31〕、〔32-45〕、〔46-58〕について一群の請求項ごとに訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 請求項1、2、4ないし7、12ないし58に係る発明 本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、2、4ないし7、12ないし58に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし7、12ないし58に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 下記(a)および(b)の要件を満たし、基材(i)と該基材(i)の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有し、 前記基材(i)が波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含む透明樹脂層を有する、 可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター。 (a)波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 【請求項2】 さらに下記(c)の要件を満たす、請求項1に記載の光学フィルター。 (c)前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmである 【請求項4】 波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上である、請求項2に記載の光学フィルター。 【請求項5】 波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmである、請求項1、2または4のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項6】 波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmである、請求項1、2、4または5のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項7】 前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下である、請求項2、4、5または6のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項12】 前記透明樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1、2、4、5、6または7のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項13】 前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する、請求項1、2、4、5、6、7または12のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項14】 固体撮像装置用である、請求項1、2、4、5、6、7、12または13のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項15】 請求項1、2、4、5、6、7、12または13のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する監視カメラ以外の固体撮像装置。 【請求項16】 請求項1、2、4、5、6、7、12または13のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する監視カメラ以外のカメラモジュール。 【請求項17】 下記(a)、(b)および(d)の要件を満たし、基材(i)と該基材(i)の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有し、 前記基材(i)が波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含む透明樹脂層を有する、 可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター。 (a)波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 (d)光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した透過率曲線のうち前記Zbに相当する帯域において、透過率が50%となる最も短波長側の波長の値(Xa')と、前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)との差の絶対値|Xa-Xa'|が、25nm未満である。 【請求項18】 さらに下記(c)の要件を満たす、請求項17に記載の光学フィルター。 (c)前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmである 【請求項19】 波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上である、請求項18に記載の光学フィルター。 【請求項20】 波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmである、請求項17~19のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項21】 波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmである、請求項17~20のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項22】 前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下である、請求項18~21のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項23】 前記化合物(Z)がスクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、ヘキサフィリン系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項17~22のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項24】 前記化合物(Z)が、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項17~23のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項25】 前記化合物(A)が下記式(I)または(II)で表される化合物である、請求項24に記載の光学フィルター。 【化1】 [式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)の条件を満たす。 条件(i): 複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し(ReおよびRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す)、 複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し(RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表す)、 複数あるYはそれぞれ独立に、-NRjRk基を表し(RjおよびRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す)、 L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhであり、 前記La~Lhは、以下の基を表す。 (La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基 (Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基 (Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基 (Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基 (Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基 (Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基 (Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基 (Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基 (但し、置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。) 条件(ii): 1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環を形成し、前記複素環は置換基を有していてもよく、Rbおよび前記複素環の形成に関与しないRaは、それぞれ独立に前記条件(i)のRbおよびRaと同義である。] 【化2】 [式(II)中、Xは独立に、O、S、Se、N-RcまたはC(RdRd)を表し、 複数あるRcはそれぞれ独立に、水素原子、La、Lb、Lc、LdまたはLeを表し、 複数あるRdはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し、隣り合うRd同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、La~Le、L1、ReおよびRfは、前記式(I)において定義したLa~Le、L1、ReおよびRfと同義である。] 【請求項26】 前記化合物(S)が下記式(S1)で表される化合物である、請求項24に記載の光学フィルター。 【化3】 [式(S1)中、Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子または-NH-を表し、 R1~R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し(RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表す)、 L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhであり、 前記La~Lhは、以下の基を表す。 (La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基 (Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基 (Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基 (Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基 (Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基 (Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基 (Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基 (Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基 (但し、置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。)] 【請求項27】 前記透明樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項17~26のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項28】 前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する、請求項17~27のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項29】 固体撮像装置用である、請求項17~28のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項30】 請求項17~28のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。 【請求項31】 請求項17~28のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。 【請求項32】 下記(a)および(b)の要件を満たし、基材(i)と該基材(i)の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有し、 前記基材(i)が波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含む透明樹脂層を有し、 前記化合物(Z)がスクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、ヘキサフィリン系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、 可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター。 (a)波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 【請求項33】 さらに下記(c)の要件を満たす、請求項1に記載の光学フィルター。 (c)前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmである 【請求項34】 波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上である、請求項33に記載の光学フィルター。 【請求項35】 波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmである、請求項32~34のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項36】 波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmである、請求項32~35のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項37】 前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下である、請求項33~36のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項38】 前記化合物(Z)が、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)を含み、 前記基材(i)がさらに、波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)および吸収極大波長が850nm超の色素(x)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項32~37のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項39】 前記化合物(A)が下記式(I)または(II)で表される化合物である、請求項38に記載の光学フィルター。 【化1】 [式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)の条件を満たす。 条件(i): 複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し(ReおよびRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す)、 複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し(RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表す)、 複数あるYはそれぞれ独立に、-NRjRk基を表し(RjおよびRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す)、 L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhであり、 前記La~Lhは、以下の基を表す。 (La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基 (Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基 (Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基 (Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基 (Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基 (Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基 (Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基 (Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基 (但し、置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。) 条件(ii): 1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環を形成し、前記複素環は置換基を有していてもよく、Rbおよび前記複素環の形成に関与しないRaは、それぞれ独立に前記条件(i)のRbおよびRaと同義である。] 【化2】 [式(II)中、Xは独立に、O、S、Se、N-RcまたはC(RdRd)を表し、 複数あるRcはそれぞれ独立に、水素原子、La、Lb、Lc、LdまたはLeを表し、 複数あるRdはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し、隣り合うRd同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、La~Le、L1、ReおよびRfは、前記式(I)において定義したLa~Le、L1、ReおよびRfと同義である。] 【請求項40】 前記化合物(S)が下記式(S1)で表される化合物である、請求項38に記載の光学フィルター。 【化3】 [式(S1)中、Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子または-NH-を表し、 R1~R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し(RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表す)、 L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhであり、 前記La~Lhは、以下の基を表す。 (La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基 (Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基 (Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基 (Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基 (Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基 (Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基 (Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基 (Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基 (但し、置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。)] 【請求項41】 前記透明樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項32~40のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項42】 前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する、請求項32~41のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項43】 固体撮像装置用である、請求項32~42のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項44】 請求項32~42のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。 【請求項45】 請求項32~42のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。 【請求項46】 下記(a)および(b)の要件を満たし、基材(i)と該基材(i)の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有し、 前記基材(i)が波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)を含む透明樹脂層を有し、 可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター。 (a)波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 【請求項47】 さらに下記(c)の要件を満たす、請求項46に記載の光学フィルター。 (c)前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmである 【請求項48】 波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上である、請求項47に記載の光学フィルター。 【請求項49】 波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmである、請求項46~48のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項50】 波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmである、請求項46~49のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項51】 前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下である、請求項47~50のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項52】 前記化合物(A)が下記式(I)または(II)で表される化合物である、請求項46に記載の光学フィルター。 【化1】 [式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)の条件を満たす。 条件(i): 複数あるRaはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し(ReおよびRfはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す)、 複数あるRbはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し(RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表す)、 複数あるYはそれぞれ独立に、-NRjRk基を表し(RjおよびRkはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す)、 L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhであり、 前記La~Lhは、以下の基を表す。 (La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基 (Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基 (Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基 (Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基 (Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基 (Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基 (Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基 (Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基 (但し、置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。) 条件(ii): 1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの少なくとも1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、窒素原子を少なくとも1つ含む構成原子数5または6の複素環を形成し、前記複素環は置換基を有していてもよく、Rbおよび前記複素環の形成に関与しないRaは、それぞれ独立に前記条件(i)のRbおよびRaと同義である。] 【化2】 [式(II)中、Xは独立に、O、S、Se、N-RcまたはC(RdRd)を表し、 複数あるRcはそれぞれ独立に、水素原子、La、Lb、Lc、LdまたはLeを表し、 複数あるRdはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NReRf基を表し、隣り合うRd同士は連結して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、La~Le、L1、ReおよびRfは、前記式(I)において定義したLa~Le、L1、ReおよびRfと同義である。] 【請求項53】 前記化合物(S)が下記式(S1)で表される化合物である、請求項9に記載の光学フィルター。 【化3】 [式(S1)中、Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子または-NH-を表し、 R1~R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgRh基を表し(RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Leまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表す)、 L1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhであり、 前記La~Lhは、以下の基を表す。 (La)置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基 (Lb)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基 (Lc)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基 (Ld)置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基 (Le)置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基 (Lf)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシ基 (Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基 (Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基 (但し、置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、炭素数3~14の複素環基、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。)] 【請求項54】 前記透明樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項46~53のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項55】 前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する、請求項46~54のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項56】 前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する、請求項46~54のいずれか1項に記載の光学フィルター。 【請求項57】 請求項46~55のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。 【請求項58】 請求項46~55のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。 2 平成29年4月28日付け取消理由通知(決定の予告)の概要 本件特許の請求項1ないし16に係る発明は、本件特許の優先権主張日(以下「優先日」という。)前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第1号証:特開2012-8532号公報 甲第2号証:特開2004-32243号公報 甲第3号証:特開2010-206626号公報 甲第4号証:特開2006-10764号公報 甲第5号証:小檜山 光信、光学薄膜フィルターデザイン、日本、株式会社オプトロニクス社、平成18(2006)年10月7日、第1版第1刷、158ページ、159ページ、189ページ~191ページ、297ページ~300ページ 甲第6号証:特開2012-137728号公報 甲第7号証:特開2007-79349号公報 甲第8号証:特開2011-100084号公報 甲第9号証:国際公開第2012/169447号 甲第10号証:特開2012-137645号公報 甲第11号証:特開2008-51985号公報 3 取消理由についての判断 (1)各甲号証の記載事項と周知の事項 以下、甲第1号証ないし甲第11号証をそれぞれ「甲1」ないし「甲11」という。 ア 甲1 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲1には、次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同じ。)。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記式(I)で表される化合物に由来する構造を有する化合物(I)を含有した樹脂製基板(I)を有することを特徴とする近赤外線カットフィルター。 【化1】 [式(I)中、Ra、RbおよびYは、下記(i)または(ii)を満たす。 (i)Raはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基、-NReRf基(ReおよびRfはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。)、またはヒドロキシ基を表し、 Rbはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、-NRgRh基(RgおよびRhはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~5のアルキル基、または-C(O)Ri基(Riは炭素数1~5のアルキル基を表す。))、またはヒドロキシ基を表し、 Yは-NRjRk基(RjおよびRkはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、任意の水素原子が官能基で置換された炭素数1~8の置換脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または任意の水素原子がアルキル基で置換された炭素数6~12の置換芳香族炭化水素基を表す。)を表す。 (ii)1つのベンゼン環上の2つのRaのうちの1つが、同じベンゼン環上のYと相互に結合して、構成原子数5または6の窒素原子を少なくとも1つ含む複素環を形成し、 Rbおよび該結合に関与しないRaはそれぞれ独立に前記(i)のRbおよびRaと同義である。] 【請求項2】 透過率が下記(A)~(D)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カットフィルター。 (A)波長430~580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上 (B)波長800~1000nmにおいて、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下 (C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値が75nm未満 (D)波長560~800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満 【請求項3】 前記樹脂製基板(I)が下記(E)および(F)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線カットフィルター。 (E)波長600~800nmに吸収極大がある (F)波長430~800nmの波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、基板の垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値が75nm未満 ・・・略・・・ 【請求項10】 前記近赤外線カットフィルターが固体撮像装置用であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルター。 【請求項11】 請求項1~10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とする固体撮像装置。 【請求項12】 請求項1~10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターを具備することを特徴とするカメラモジュール。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、近赤外線カットフィルターに関する。詳しくは、十分な視野角を持ち、特にCCD、CMOS等の固体撮像素子用視感度補正フィルターとして好適に用いることができる近赤外線カットフィルターに関する。」 (ウ)「【0013】 本発明は、視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない、特にCCD、CMOS等の固体撮像装置用に好適に用いることができる近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。さらに、薄型で耐衝撃性に優れた固体撮像装置を提供することを目的とする。」 (エ)「【発明の効果】 【0032】 本発明によれば、吸収(透過)波長の入射角依存性が小さく、視野角が広く、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない近赤外線カットフィルターを製造することができる。 また、本発明によれば、固体撮像装置およびカメラモジュール等を薄型化および小型化することができる。」 (オ)「【0060】 前記化合物(I)は、該化合物(I)をその良溶媒に溶解させることで得られる溶液の透過率を測定(光路長1cm)した時の、吸収極大における分光透過率が、該溶液中の化合物(I)の濃度によらず、30%以下となる化合物であることが望ましく、また、化合物(I)をその良溶媒に溶解させることで得られる溶液の透過率を測定(光路長1cm)した時に、該溶液中の化合物(I)の濃度によらず、波長600~800nmに吸収極大があり、かつ、波長430~800nmの波長領域において透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長と、波長580nm以上の波長領域において透過率が30%となる最も短い波長との差の絶対値が75nm未満、好ましくは65nm未満、さらに好ましくは55nm未満となる化合物であることが望ましい。 【0061】 なお、従来の近赤外線カットフィルターでは、このような化合物(I)は、その透過率曲線が急峻な傾きを有すること、近赤外線領域の吸収領域が狭いこと、およびガラス等の基板に混ぜて近赤外線カットフィルターを製造する際に該化合物(I)がガラスの成形温度に耐えることができないなどの理由から用いられてこなかった。そのため、本発明のように特に、入射角依存性の小さい近赤外線カットフィルターは得られなかった。 【0062】 このような化合物(I)を含有してなる樹脂製基板(I)は前記(E)および(F)の特徴を有するため、本発明の近赤外線カットフィルターは、特に下記(A)、(C)および(D)の特徴を有することになる。そのため、入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0063】 また、後述する近赤外線反射膜を、蒸着などにより樹脂製基板(I)に設ける場合、近赤外線カットフィルターの視野角が狭くなる等の性能が劣化する場合があったが、前記樹脂製基板(I)は、前記化合物(I)を含むため、近赤外線反射膜を設けることで生じうる近赤外線カットフィルターの性能の劣化を防ぐことができる。よって、近赤外線反射膜を蒸着などにより樹脂製基板(I)上に設けた場合であっても、入射光の入射角に依存しない安定した吸収波長領域を有する近赤外線カットフィルターが得られる。」 (カ)「【0072】 ・・・略・・・ ・・・略・・・ 【0074】 これらの中でも、化合物(a-10)は、塩化メチレンによく溶解し、化合物(a-10)を塩化メチレンに0.0001重量部の濃度で溶解させた溶液の分光透過率測定(光路長1cm)を行った場合に、波長600~800nmに吸収極大があり、かつ、化合物(a-10)0.04重量部、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、さらに塩化メチレンを加えて得られる樹脂濃度が20重量%の溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、さらに減圧下100℃で8時間乾燥して得られた厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板の分光透過率測定を行った場合に、波長430~800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長との差の絶対値が55nm未満であるため、吸収(透過)波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを製造することができるため好ましい。 ・・・略・・・ 【0079】 <樹脂> 本発明で用いる樹脂製基板(I)は化合物(I)と樹脂とを含んでなればよく、該樹脂としては透明樹脂が好ましい。このような樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、さらに好ましくは120~360℃である樹脂が挙げられる。また、樹脂のガラス転移温度が、120℃以上、好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上である場合には、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため望ましい。 【0080】 また、前記樹脂としては、厚さ0.1mmでの全光線透過率が、好ましくは75~94%であり、さらに好ましくは78~94%であり、特に好ましくは80~94%である樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲であれば、得られる基板は、光学フィルムとして良好な透明性を示す。 【0081】 このような樹脂としては例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリサルホン樹脂(PSF)、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリパラフェニレン樹脂(PPP)、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂(PEPO)、ポリイミド樹脂(PPI)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、(変性)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)および有機-無機ナノハイブリッド材料を挙げることができる。 【0082】 前記樹脂のうち、透明性の高い環状オレフィン系樹脂または芳香族ポリエーテル系樹脂を用いると可視光領域の透過率が特に高くなるため好ましく、また、これらの樹脂は、吸湿性が低く、ソリが生じにくいため好ましい。 また、樹脂として、特にノルボルネン系樹脂または芳香族ポリエーテル系樹脂を用いると、前記化合物(I)のノルボルネン系樹脂への分散性が良好であるため、光学特性が均一な、成形加工性に優れる基板を得ることができる。」 (キ)「【0182】 ≪近赤外線反射膜≫ 本発明に用いられる近赤外線反射膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。このような近赤外線反射膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜などを用いることができる。 【0183】 本発明の近赤外線カットフィルターは、このような近赤外線反射膜を有しているため、特に下記(B)の特徴を有することになる。そのため、近赤外線を十分にカットすることのできるフィルターを得ることができる。 【0184】 本発明において、近赤外線反射膜は樹脂製基板(I)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合には、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合には、高い強度を有し、ソリの生じにくい近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0185】 これら近赤外線反射膜の中では、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を好適に用いることができる。」 (ク)「【0208】 ≪近赤外線カットフィルター≫ 本発明の近赤外線カットフィルターは、その光線透過率が、下記(A)~(D)を満たすことが好ましい。 【0209】 (A)波長430~580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上、好ましくは78%以上、さらに好ましくは80%以上の値をとることが望ましい。本発明では、厚さ0.1mmでの全光線透過率が高い樹脂、当該波長領域に吸収を持たない化合物(I)等を用いることで、このような波長430~580nmにおいて、高い透過率を有する近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0210】 近赤外線カットフィルターを固体撮像装置やカメラモジュール等のレンズユニットにおける視感度補正用フィルター等に用いる場合、波長430~580nmにおける透過率の平均値が前記範囲であり、この波長範囲において透過率が一定であることが好ましい。 【0211】 波長430~580nmの範囲における透過率の平均値としては高い方が好ましい。透過率の平均値が高いと、フィルターを通過する光の強度が充分確保され、前記用途に好適に用いることができる。 【0212】 一方、波長430~580nmの範囲における透過率の平均値が低いと、フィルターを通過する光の強度が充分確保されず、前記用途に好適に用いることができないおそれがある。 【0213】 (B)波長800~1000nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下の値をとることが望ましい。本発明では、樹脂製基板(I)上に高い近赤外線反射能を有する所定の近赤外線反射膜を設けることで、このような波長800~1000nmにおける透過率が十分に低い近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0214】 本発明の近赤外線カットフィルターは近赤外線の波長(800nm以上)を選択的に低減させるものであるため、800~1000nmの範囲における透過率の平均値は低い方が好ましい。透過率の平均値が低いと、近赤外線カットフィルターは、近赤外線を十分にカットすることができる。 【0215】 一方、波長800~1000nmの範囲における透過率の平均値が高いと、フィルターは、近赤外線を充分カットすることができず、該フィルターをPDP等に用いた場合には、家庭内において、PDP周辺にある電子機器の誤作動を防ぐことができないおそれがある。 【0216】 (C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値(|Xa-Xb|)が75nm未満、好ましくは72nm未満、さらに好ましくは70nm未満の値をとることが望ましい。本発明では、前記化合物(I)を用いることで、所定の透過率となる波長の差の絶対値が前記所定の範囲となる近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0217】 近赤外線カットフィルターの(Xa)と(Xb)との差の絶対値が前記範囲にあると、近赤外線の波長領域付近の波長(Xa)と(Xb)の間で透過率が急変することとなるため、近赤外線を効率よくカットすることができ、また、下記(Ya)と(Yb)の差の絶対値が小さくなり、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0218】 (D)波長560~800nm、好ましくは580~800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya-Yb|)が15nm未満、好ましくは13nm未満、さらに好ましくは10nm未満の値をとることが望ましい。 【0219】 本発明では、前記化合物(I)を用いることで、所定の透過率となる波長の差の絶対値が前記所定の範囲となる近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0220】 このように、波長560~800nmの範囲において、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が前記範囲にあると、このようなフィルターをPDP等に用いた場合には、ディスプレイを斜め方向から見た場合にも、垂直方向から見た場合と同等の明るさおよび色調を示し、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広い近赤外線カットフィルターを得ることができる。 【0221】 一方、(Ya)と(Yb)の差の絶対値が15nm以上である近赤外線カットフィルターをPDP等に用いると、ディスプレイを見る角度により明るさが著しく減じたり、色調が反転したり、特定の色が見えにくくなったりするおそれがあり、前記用途に好適に用いることができない場合がある。 【0222】 ここで、「視野角」とは、ディスプレイなどを上下左右から見た場合に、どの位の角度まで画面を正常に見ることが可能かを示す指標のことである。 本発明においては、近赤外線カットフィルターを上下左右から見た場合に、どの位の角度まで画面を正常に見ることが可能かを示す指標のことをいう。 【0223】 正常に見ることができるかどうかの判断として、本発明では、波長560~800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満となることを一つの基準とする。 【0224】 前記近赤外線カットフィルターの厚みは、該フィルターの透過率が前記(A)~(D)を満たすように調整することが好ましく、特に制限はないが、好ましくは50~250μm、より好ましくは50~200μm、さらに好ましくは、80~150μmである。 【0225】 近赤外線カットフィルターの厚みが前記範囲にあると、フィルターを、小型化、軽量化することができ、固体撮像装置等さまざまな用途に好適に用いることができる。特にカメラモジュール等レンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化を実現することができるため好ましい。」 (ケ)「【0226】 <近赤外線カットフィルターの用途> 本発明で得られる近赤外線カットフィルターは、視野角が広く、優れた近赤外線カット能等を有する。したがってカメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器、USBメモリー、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、玩具ロボットおよびおもちゃ等に有用である。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。」 (コ)「【0260】 [実施例1] 容器に、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、スクエアリリウム系化合物「a-10」0.04重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20重量%の溶液(ex1)を得た。 次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基板を得た。 【0261】 この基板の分光透過率を測定し、吸収極大波長と、(Za)、(Zb)を求めた。 この結果を表1に示す。 【0262】 この基板の吸収極大波長は699nmであった。また、波長430~800nmの波長領域において、透過率が70%となる、吸収極大以下で最も長い波長(Za)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Zb)との差の絶対値(|Za-Zb|)は45nmであった。 【0263】 続いて、係る基板の片面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚83~199nm)層とチタニア(TiO2:膜厚101~125nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数20〕を形成し、さらに基板のもう一方の面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚77~189nm)層とチタニア(TiO2:膜厚84~118nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数26〕を形成し、厚さ0.105mmの近赤外線カットフィルターを得た。この近赤外線カットフィルターの分光透過率を測定し、(Xa)、(Xb)と(Ya)、(Yb)を求めた。この結果を表1に示す。 【0264】 波長430~580nmにおける透過率の平均値は91%、波長800~1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。 【0265】 波長800nm以下の波長領域において、透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値(|Xa-Xb|)は39nmであった。 【0266】 また、波長560~800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して 30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya-Yb|)は3nmであった。」 (サ)「【0292】 【表1】 【産業上の利用可能性】 【0293】 本発明の近赤外線カットフィルターは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、医療機器、USBメモリー、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、玩具ロボットおよびおもちゃ等に好適に用いることができる。」 (シ)上記(ア)ないし(サ)から、甲1には、実施例1として、次の発明が記載されているものと認められる。 「容器に、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、スクエアリリウム系化合物(a-10)0.04重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20重量%の溶液(ex1)を得て、次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して基板を得て、該基板の片面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚83~199nm)層とチタニア(TiO2:膜厚101~125nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数20〕を形成し、さらに基板のもう一方の面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ(SiO2:膜厚77~189nm)層とチタニア(TiO2:膜厚84~118nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数26〕を形成して得た、近赤外線カットフィルターであって、 垂直方向から測定した場合の透過率は、波長430~580nmにおける平均値が91%、波長800~1000nmにおける平均値が1%以下であり、 スクエアリリウム系化合物(a-10)は、波長600~800nmに吸収極大がある、 近赤外線カットフィルター。 (a-10) 」(以下「甲1発明」という。) また、甲1の記載から、甲1発明がカメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用として用いられるものであり、甲1発明を具備する固体撮像装置やカメラモジュールの発明を把握することができるところ、甲1には、次の発明も記載されている。 「甲1発明を用いた固体撮像装置。」(以下「甲1固体撮像装置発明」という。) 「甲1発明を用いたカメラモジュール。」(以下「甲1カメラモジュール発明」という。) イ 甲2 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲2には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、撮像装置に関し、特にたとえば監視カメラに適用され、イメージセンサの前面に光学フィルタが配置される、撮像装置に関する。 【0002】 この発明はまた、光学フィルタに関し、特にたとえばイメージセンサの前面に配置される、光学フィルタに関する。 【0003】 【従来技術】 従来のこの種のビデオカメラの一例が、平成11年8月31日付けで出願公開された特開平11-239356号公報[H04N 9/04,5/225,5/238]に開示されている。この従来技術によれば、CCDの前面に配置される部材を外部の明るさに応じてIRカットフィルタとダミーガラスとの間で切り換えようとするものである。これによって、昼間は可視光線に基づく画像信号がCCDから出力され、夜間は赤外光線に基づく画像信号がCCDから出力され、昼夜を問わず画像撮影が可能となる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、従来技術では、IRカットフィルタとダミーガラスとの切り換え機構が必要であるため、切り換え時に音が発生したり、カメラのサイズが大きくなるなどの問題があった。 【0005】 それゆえに、この発明の主たる目的は、IRカットフィルタとダミーガラスとの切り換え機構を省くことができる、撮像装置を提供することである。 【0006】 この発明の他の目的は、このような撮像装置に好適な光学フィルタを提供することである。」 (イ)「【0024】 このような光線の分布に対して、図1に示す光学フィルタ12は、図5に示すような透過特性を有する。図5のグラフを短波長側から眺めると、透過率は、650nm付近でほぼ100%から0%まで急激に低下する。0%まで低下した透過率は、850nm付近で急激に上昇し、880nmでピークに達した後に再度0%まで低下する。透過率は、その後0%を維持する。つまり、図4と比較すれば分かるように、色フィルタ12は、可視光領域において透過特性を有し、880nm付近の波長域を除く近赤外線領域において遮断特性を有する。 【0025】 光学フィルタ12の表面には、光学薄膜が積層される。光学薄膜は、TiO2やSiO2などの無機材料を真空中で加熱し、これによって生成された蒸発粒子を石英やガラス基板に付着・堆積させることで形成される。このような光学薄膜の積層には、真空蒸着法が採用される。真空蒸着によって1~100層程度の積層が可能となり、薄膜の屈折率,厚み,積層数を調整することで図5に示すような透過特性が得られる。 【0026】 参考までに、従来のIRカットフィルタの透過特性を図10に示す。図10のグラフを短波長側から眺めると、透過率は、650nm付近で0%まで急激に低下し、これ以降0%を維持する。」 (ウ)「【図5】 」 ウ 甲3 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲3には、次の事項が記載されている。 (ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、撮像デバイスには、一般的なビデオカメラやデジタルスチルカメラ以外に、監視カメラなどの通常の撮影とは異なる他の用途で用いる撮像デバイスがある。 【0008】 例えば、監視カメラでは、昼間だけではなく、夜間の暗視での監視撮影も行う必要がある。夜間などの暗視下における撮影は、人の目では見えない状態での撮影となるので、通常の可視域を撮影の帯域とするカメラでは暗視下における撮影を行うことができない。そのため、現在、夜間などの暗視下における撮影は、赤外域の光線を用いて行なわれているが、上記の特許文献1に記載の撮像デバイスでは、赤外域の光線をカットする赤外線カットフィルタを設けているので、暗視での撮影に用いることができない。また、従来の光学フィルタでは、可視域における光の反射を低減させる反射防止膜を主面に施しているだけで、同時に赤外域における光の反射を低減させるものはない。 【0009】 そこで、上記課題を解決するために本発明は、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影が可能な光学フィルタおよび撮像デバイスを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記の目的を達成するため、本発明にかかる撮像デバイスに設ける光学フィルタは、透明基板と、この透明基板の一主面上に形成され2つの波長帯域における光線の反射を防止するデュアル反射防止コートとからなり、前記2つの波長帯域は、可視域と赤外域であることを特徴とする。 【0011】 本発明にかかる光学フィルタによれば、前記透明基板の一主面上に形成され前記可視域と前記赤外域における光線の反射を防止する前記デュアル反射防止コートが設けられているので、前記可視域における反射率を略ゼロに抑え、かつ、前記赤外域の所望帯域における反射率を略ゼロに抑えることが可能となり、その結果、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影を行うことが可能となる。 【0012】 前記構成において、前記透明基板の他主面上にも前記デュアル反射防止コートが形成されてもよい。 【0013】 この場合、前記透明基板の他主面上にも前記デュアル反射防止コートが形成されるので、前記透明基板の一主面上のみに前記デュアル反射防止コートを形成するのと比較して、前記可視域および前記赤外域の所望帯域における反射率を抑えるのにより好適であり、さらに、前記可視域および前記赤外域の所望帯域における透過率を向上させることも可能となる。加えて、反射率を抑える不要帯域では、反射率が増加することでカットコートとしても機能させることも可能となる。 【0014】 具体的に、この構成によれば、前記透明基板の両主面上に前記デュアル反射防止コートを形成した場合、当該光学フィルタに光が入射する際に1つの前記デュアル反射防止コート(例えば前記基板の一主面に形成された前記デュアル反射防止コート)を通過し、この1つの前記デュアル反射防止コートを通過した光がもう一方の前記デュアル反射防止コート(例えば前記基板の他主面に形成された前記デュアル反射防止コート)を通過して当該光学フィルタを通過するので、1つの前記デュアル反射防止コートにより前記可視域および赤外域の所望帯域における反射率を抑えた光に対して、さらにもう一方の前記デュアル反射防止コートにより前記可視域および赤外域の所望帯域における反射率を抑えることになり、その結果、反射率抑制の相乗効果を有することになる。さらに、前記可視域および赤外域の所望帯域における透過率に関しても、反射率と同様の理由により相乗効果を有することになる。 【0015】 前記構成において、前記デュアル反射防止コートは、高屈折率材料からなる第1薄膜と、低屈折率材料からなる第2薄膜とが交互に複数積層されてなってもよい。」 (イ)「【実施例1】 【0043】 本実施例1では、透明基板として、大気中における屈折率が1.54である水晶板2を用いている。また、第1薄膜31として、大気中における屈折率が2.3000であるTiO2を用い、第2薄膜32として、大気中における屈折率が1.46000であるSiO2を用い、これらの中心波長を500.00nmとしている。 【0044】 また、デュアル反射防止コート3は16層からなっており、上記したデュアル反射防止コート3の製造方法により第1薄膜31および第2薄膜32が形成されてデュアル反射防止コート3が構成され、図5に示すような反射防止特性が得られる。なお、この実施例1では、光線の入射角を0度、すなわち光線を垂直入射させている。 【0045】 【表1】・・・略・・・ 【0046】 表1は、光学フィルタ13のデュアル反射防止コート3の組成及び各薄膜(第1薄膜31、第2薄膜32)の光学膜厚を示している。 【0047】 また、この実施例1では、表1に示すように、デュアル反射防止コート3は、高屈折率材料からなる第1薄膜31と、低屈折率材料からなる第2薄膜32とが交互に16層積層されてなる。このデュアル反射防止コート3の16層のうち、1層と2層が調整コート35として構成され、3層~9層が反射防止コート33として構成され、10層がカットコート34として構成され、11層~15層が反射防止コート33として構成され、16層が調整コート35として構成されている。 【0048】 図5に示すように、この実施例1にかかる光学フィルタ13では、可視域である約400nmから約650nmまでの波長の光線の反射を抑え(反射率略0%)、かつ、赤外域(特に近赤外域)である約900nmから約1000nmまでの波長の光線の反射を抑えている(反射率略0%)。 【0049】 また、上記した本実施の形態や、本実施例1では、16層のデュアル反射防止コート3について説明しているが、デュアル反射防止コート3の層数はこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である、具体的に16層のデュアル反射防止コート3以外の他の例として、24層のデュアル反射防止コート3を水晶板2に設けた実施例を実施例2として以下に示す。 【実施例2】 【0050】 本実施例2では、透明基板として、大気中における屈折率が1.54である水晶板2を用いている。また、第1薄膜31として、大気中における屈折率が2.3000であるTiO2を用い、第2薄膜32として、大気中における屈折率が1.46000であるSiO2を用い、これらの中心波長を500.00nmとしている。 【0051】 また、デュアル反射防止コート3は24層からなっており、上記したデュアル反射防止コート3の製造方法により第1薄膜31および第2薄膜32が形成され、図6に示すような反射防止特性が得られる。なお、この実施例2では、光線の入射角を0度、すなわち光線を垂直入射させている。 【0052】 【表2】・・・略・・・ 【0053】 表2は、光学フィルタ13のデュアル反射防止コート3の組成及び各薄膜(第1薄膜31、第2薄膜32)の光学膜厚を示している。 【0054】 また、この実施例2では、表2に示すように、デュアル反射防止コート3は、高屈折率材料からなる第1薄膜31と、低屈折率材料からなる第2薄膜32とが交互に24層積層されてなる。このデュアル反射防止コート3の24層のうち、1層と2層が調整コート35として構成され、3層~9層が反射防止コート33として構成され、10層がカットコート34として構成され、11層~23層が反射防止コート33として構成され、24層が調整コート35として構成されている。 【0055】 図6に示すように、この実施例2にかかる光学フィルタ13では、可視域である約450nmから約650nmまでの波長の光線の反射を抑え(反射率略0%)、かつ、赤外域(特に近赤外域)である約850nmから約1000nmまでの波長の光線の反射を抑えている(反射率略0%)。 【0056】 上記した本実施の形態、実施例1,2に示す光学フィルタ13によれば、水晶板2の一主面21上に形成され、可視域と赤外域の2つの波長帯域における光線の反射を防止するデュアル反射防止コート3が設けられているので、可視域における反射率を略ゼロに抑え、かつ、赤外域の所望帯域における反射率を略ゼロに抑えることができ、その結果、自然光が入る昼間だけでなく夜間などの暗視下であっても撮影ができる。 ・・・略・・・ 【0065】 また、本実施の形態では、水晶板2の一主面21(片面)上にデュアル反射防止コート3を設けているが、これに限定されるものではなく、水晶板2の両主面(一主面21,他主面22)上にデュアル反射防止コート3を設けてもよい。この場合、可視域および赤外域の2つの波長帯域における光線の反射を防止することができ、可視域における反射率を略ゼロに抑え、かつ、赤外域の所望帯域における反射率を略ゼロに抑えることができるだけでなく、さらに、図7,8に示すように、可視域および赤外域の所望帯域における透過率を向上させることもできる。 【0066】 なお、図7は、実施例1にかかるデュアル反射防止コート3を水晶板2の一主面21に設けた光学フィルタ13と、デュアル反射防止コート3を水晶板2の両主面(一主面21,他主面22)に設けた光学フィルタ13とのそれぞれ透過率特性を示す図である。また、図8は、実施例2にかかるデュアル反射防止コート3を水晶板2の一主面21に設けた光学フィルタ13と、デュアル反射防止コート3を水晶板2の両主面(一主面21,他主面22)に設けた光学フィルタ13とのそれぞれ透過率特性を示す図である。 【0067】 図7,8に示すように、デュアル反射防止コート3を水晶板2の両主面(一主面21,他主面22)に設けた場合、水晶板2の他主面22上にもデュアル反射防止コート3が形成されるので、水晶板2の一主面21上のみにデュアル反射防止コート3を形成するのと比較して、可視域および赤外域の所望帯域における反射率を抑えるのにより好適であり、さらに、可視域および赤外域の所望帯域における透過率を向上させることもできる。加えて、反射率を抑える不要帯域では、反射率が増加することでカットコートとしても機能させることもできる。 【0068】 具体的に、この構成によれば、水晶板2の両主面(一主面21,他主面22)上にデュアル反射防止コート3を形成した場合、当該光学フィルタ13に光が入射する際に1つのデュアル反射防止コート3(例えば水晶板2の一主面21に形成されたデュアル反射防止コート3)を通過し、この1つのデュアル反射防止コート3を通過した光がもう一方のデュアル反射防止コート3(例えば水晶板2の他主面22に形成されたデュアル反射防止コート3)を通過するので、1つのデュアル反射防止コート3により可視域および赤外域の所望帯域における反射率を抑えた光に対して、さらにもう一方のデュアル反射防止コート3により可視域および赤外域の所望帯域における反射率を抑えることになり、その結果、反射率抑制の相乗効果を有することになる。さらに、可視域および赤外域の所望帯域における透過率に関しても、反射率と同様の理由により相乗効果を有する。」 (ウ)「【産業上の利用可能性】 【0075】 本発明は、監視カメラや車載カメラなど昼夜問わずに使用するカメラなどの撮像デバイスに好適である。」 (エ)「【図5】 【図6】 【図7】 」 エ 甲4 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲4には、次の事項が記載されている。 (ア)「【背景技術】 【0002】 従来から、昼夜連続で撮影を行う監視カメラ等の撮像装置(以下、単に撮像装置とする)においては、夜間時には赤外線を検出して撮影することが行われている。CCDセンサやCMOSセンサといった撮像素子の受光部であるフォトダイオードは、1300nm程度の近赤外の波長帯域まで受光可能であるため、これらの撮像素子を用いた撮像装置であれば、赤外帯域まで撮影することが原理的に可能である。」 (イ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 発明の実施の形態1. 図1は、本実施の形態にかかる光学フィルタ10の断面を示した模式図である。図1に示した構成では、光学基板1の表面上に、まず赤外カットフィルタ2を形成し、その赤外カットフィルタ2の上にSWPF(Short-wave-pass-filter)3を連続して形成する構成としている。なお、図1は本発明を分かり易くするために表した模式図であるため、そのサイズ等は実際と異なったものとしている。 【0019】 赤外カットフィルタ2は、平行平面状の光学基板1上に高屈折率膜2Hと低屈折率膜2Lが交互に積層されたものであり、所望の光学特性条件を満足するように各層の積層数及び膜厚が調整されたものである。ここで、赤外カットフィルタ2に対する所望の光学特性条件とは、人間の視感度の高い可視光帯域(400nm~700nm)の光を透過し、かつ、近赤外帯域の光のうち、上述した夜間撮影用の赤外線照明の発光波長(例えば中心波長950nm、スペクトル半値幅40nm)より短波長側の波長帯の光を遮断する透過率特性を有することである。この所望の特性に適合する透過率特性の例を図3に示す。 【0020】 SWPF3も赤外カットフィルタ2と同様に、平行平面状の光学基板1上に高屈折率膜3Hと低屈折率膜3Lが交互に積層されたもので、所望の光学特性条件を満足するように各層の積層数及び膜厚が調整されたものである。SWPF3に対する所望の光学特性とは、人間の視感度の高い可視光帯域(400nm~700nm)から上述した夜間撮影用の赤外線照明の発光波長(例えば中心波長950nm、スペクトル半値幅40nm)までを透過し、かつ、これより長波長側で撮像素子のフォトダイオードが受光可能な概ね1300nmまで近赤外帯域の光を遮断する、いわゆるエッジフィルタ状の透過率特性を有することである。この所望の特性に適合する透過率特性の例を図4に示す。 ・・・略・・・ 【0029】 上述した製造手順によって得られた光学フィルタ10の透過率特性を図5に示す。図5のように、可視光帯域と近赤外帯域の950nm近傍の光を透過しながら、それ以外の撮像素子内のフォトダイオードが受光可能な近赤外帯域(700nm~900nm及び1000nm~1300nm)の波長を十分に遮断する透過率特性が得られた。なお、950nmという波長は、夜間撮影における赤外線照明として使用可能な発光ダイオードの代表的な発光波長であるため、この波長を選択した。近赤外帯域の他の波長帯を透過させたい場合は、図3に示した赤外カットフィルタ2の近赤外帯域における短波長側の第一ピーク位置が、所望の波長帯に出現し、かつ、その第一ピークが、図4に示すSWPF3の透過波長帯域に含まれるよう、赤外カットフィルタ2及びSWPF3を設計し、上記の手順で成膜すればよい。」 (ウ)「【図5】 」 オ 甲5 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲5(特に158頁、159頁、189ないし191頁)には、次の事項が記載されている。 (ア)「第5章 エッジフィルター 分光特性において、波長域には関係なく透過帯と不透過帯(阻止帯:rejected zone)とが急激に変化するフィルターをエッジフィルターという。その特性の形状から短波長域を透過させるフィルターは短波長透過フィルタSWPF(Short Wave Pass Filter)、長波長域を透過させるフィルターは長波長透過フィルターLWPF(Long Wave Pass Filter)に分類される。・・・略・・・。デジタルカメラなどのCCDセンサーやCMOSセンサーの直前では人工水晶に可視域を透過させ、近赤外域を反射させるフィルターが利用されており、IRカットフィルター(IR:infra-red)と呼ばれている。」(158頁1行ないし13行) (イ)「5.3 阻止帯の拡張 1つのエッジフィルターの阻止帯の幅は、(5-16)式で決まってしまう。この阻止帯を拡張する最も簡単な方法は、基板の厚さが光の波長に較べて十分に厚い場合は、基板の両面に図5.24に示すように中心波長が異なる最適化した2つの積層系を成膜することである。いわゆる、”0に何を掛けても0になる”という発想である。・・・略・・・図5.23で示した2つの積層系を重ねて基板|A(λ1=750nm)|B(λ2=950nm)| 空気としたときの分光透過率特性を図5.26に示す。曲線は単純に重ねた特性であり、透過帯に大きなリップルと阻止帯に小さなピークがある。曲線Bはこれを最適化した特性であるが、まだ、透過帯に小さなリップルがみられる。全ての括弧を外して最適化すると透過帯にほとんどリップルがなくなる。 ・・・略・・・ 」(189頁ないし191頁上半分) (ウ)「5.4 透過帯の拡張 ・・・略・・・」(191頁下半分) カ 甲6 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲6には、次の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 赤外波長領域の光を選択的に透過する赤外光透過性基材と、その一方の面上に形成された、前記赤外光透過性基材の透過波長帯域の短波長側に光吸収端を有する近赤外線吸収剤を含む短波長側赤外光吸収膜と、を具備することを特徴とする赤外光透過フィルタ。」 (イ)「【0007】 本発明は、安価で、十分な軽量化、薄型化を達成でき、また反射型フィルタのような入射角依存性の問題がなく、かつ赤外光の選択透過性に優れる(透過率が急峻に変化する)赤外光透過フィルタ、及びそのような赤外光透過フィルタを用いた光学特性に優れる撮像装置の提供を目的とする。」 (ウ)「【0031】 近赤外線吸収剤を含む(短)赤外光吸収膜2は、近赤外線吸収剤を含む透明樹脂から構成される。透明樹脂としては、赤外光透過性基材1で用いたものと同様のものを使用できる。また、近赤外線吸収剤としては、赤外光透過性基材1の透過波長帯域の短波長側に光吸収端を有するもの、好ましくは光吸収端の波長が730~830nmであるものが使用される。このような吸収特性を有する近赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、ジチオール金属錯体系化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。近赤外線吸収剤の好ましい具体例としては、約760nmに光吸収端を有する山田化学工業(株)製のNIR-43V、QCR Solutions Corp.製のNIR757A(以上、商品名)等が挙げられる。」 (エ)「【0097】 (実施例3) 厚さ0.3mmのガラス基板(B270(ショット製))の一方の面に、スパッタリング法により、シリカ(SiO2;屈折率1.45)層とチタニア(TiO2;屈折率2.25)層とを交互に積層して、表3に示すような構成からなる誘電体多層膜(39層)を形成した。 【0098】 【表3】・・・略・・・ 【0099】 この誘電体多層膜を形成したガラス基板の他方の面(誘電体多層膜非形成面)に、実施例1と同様に調製した、約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤(「NIR-43V」)1質量%、及びポリエステル樹脂(「バイロン103」)99質量%を含有する溶液を、スピンコータ(「スピンコータMS-A200」)を用いて塗布し、100℃で1分間加熱乾燥させて、厚さ15μmの(短)赤外光吸収膜を形成した。その後、(短)赤外光吸収膜の表面にシリカ、チタニアからなる厚さ約580nmの反射防止膜を形成し、赤外光透過フィルタを得た。 【0100】 得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度及び40度のP偏光及びS偏光)を測定した。結果を図17に示す。また、誘電体多層膜を形成したガラス基板について測定した分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度及び40度のP偏光及びS偏光)を図18に示す。 【0101】 図17から明らかなように、実施例3で得られた赤外光透過フィルタは、約760~約810nmの非常に狭い波長領域で透過率が変化しており、しかも、入射角依存性も低減されている。 【0102】 (実施例4) 厚さ0.3mmのガラス基板(B270(ショット製))の一方の面に、スパッタリング法により、シリカ(SiO2;屈折率1.46)層と酸化タンタル(Ta2O5;屈折率2.14)層とを交互に積層して、表4に示すような構成からなる誘電体多層膜(38層)を形成した。 【0103】 【表4】・・・略・・・ 【0104】 また、可視光吸収剤(稲畑産業(株)製 商品名「AI7100」)とポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、商品名「バイロン103」;屈折率1.60~1.61)とをシクロヘキサノンに溶解し、可視光吸収剤40質量%及びポリエステル樹脂60質量%を含有する溶液(I)を調製した。同様にして、約720nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤1質量%及びポリエステル樹脂99質量%を含有する溶液(II)、及び、約760nmに光吸収端を有する近赤外線吸収剤(QCR Solutions Corp製 商品名「NIR757A」)1質量%及びポリエステル樹脂99質量%を含有する溶液(III)を調製した。 【0105】 次いで、これらの溶液(I)~(III)を、溶液(I)、溶液(II)、溶液(III)の順に、上記の誘電体多層膜を形成したガラス基板の他方の面(誘電体多層膜非形成面)にスピンコータ(ミカサ(株)製 スピンコータMS-A200)を用いて塗布し、それぞれ100℃で1分間加熱乾燥させて、厚さ300μmの光吸収膜(I)、厚さ50μmの光吸収膜(II)、及び厚さ25μmの光吸収膜(III)を形成した。 【0106】 その後、上記光吸収膜(III)の表面に、シリカ、チタニアからなる厚さ約580nmの5層反射防止膜を形成し、赤外光透過フィルタを得た。 【0107】 得られた赤外光透過フィルタの分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度20度、30度及び40度のP偏光及びS偏光)を測定した。結果を図19に示す。また、誘電体多層膜を形成したガラス基板について測定した分光透過率曲線(入射角度0度、入射角度10度、20度、30度及び40度のP偏光、S偏光及び平均(Ave))を図20に示す。さらに、光吸収膜(I)の内部透過率曲線を図21に、光吸収膜(II)の内部透過率曲線を図22に、光吸収膜(III)の内部透過率曲線を図23に、光吸収膜(I)~(III)全体の内部透過率曲線を図24に示す。 【0108】 図19から明らかなように、実施例4で得られた赤外光透過フィルタは、約760~約810nmの非常に狭い波長領域で透過率が変化しており、かつ入射角依存性は実施例3に比べ、より低減されている。」 (オ)「【図17】 ・・・略・・・ 【図19】 ・・・略・・・ 【図23】 」 キ 甲7 本件特許の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、上記取消理由通知で引用された甲7には、次の事項が記載されている。 「【0012】 本発明の光学フィルタの積層構造は、目的とするフィルタ性能に応じて決定される。例えば、特定の波長の光のみ反射し、それ以外の光を透過させる機能を持つ狭帯域反射フィルタは、厚み方向の樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定である周期構造を形成する必要があり、また、ある波長以上の全ての光を透過、もしくは反射させる機能をもつエッジフィルタは、樹脂Aの層厚みと樹脂Bの層厚みが一定の割合いで変化する傾斜構造を形成する必要がある。この他、狭帯域透過フィルタ、広帯域透過フィルタ、偏光ビームスプリッターなどの如何なるフィルタにおいても、目的となる機能が決定すれば、光学計算により、その最適な構造が決定されうる。光学計算の理論については、H.A.Macleod(訳小倉繁太郎)「光学薄膜」(日刊工業新聞社)(1989)、小檜山 光信「光学薄膜の基礎理論」(オプトロニクス社)(2003)に記載されている。」 ク 甲8 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲8には、次の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透過率が下記(A)~(D)を満たすことを特徴とする近赤外線カットフィルター; (A)波長430~580nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上。 (B)波長800~1000nmにおいて、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が20%以下。 (C)800nm以下の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が70%となる最も長い波長(Xa)と、波長580nm以上の波長領域において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が30%となる最も短い波長(Xb)との差の絶対値が75nm未満。 (D)波長560~800nmの範囲において、近赤外線カットフィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、近赤外線カットフィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値が15nm未満。 【請求項2】 波長600~800nmに吸収極大があり、かつ、波長430~800nmの波長領域において、透過率が70%となる吸収極大以下で最も長い波長(Aa)と、波長580nm以上の波長領域において、透過率が30%となる最も短い波長(Ab)との差の絶対値が75nm未満である吸収剤を含有した透明樹脂製基板と、近赤外線反射膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の近赤外線カットフィルター。 ・・・略・・・ 【請求項6】 前記近赤外線反射膜が誘電体多層膜であることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルター。」 (イ)「【0013】 本発明は、視野角が広く、さらに、近赤外線カット能に優れ、吸湿性が低く、異物やソリのない、特にCCD、CMOS等の固体撮像装置用に好適に用いることができる近赤外線カットフィルターを得ることを目的とする。さらに、前記近赤外線カットフィルターを具備することにより、薄型で耐衝撃性に優れた固体撮像装置を提供することを目的とする。」 コ 甲9 本件特許の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり上記取消理由通知で引用された甲9には、次の事項が記載されている。 (ア)「[0146]誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層することで、光の干渉を利用して特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する機能を発現させた選択波長遮蔽層である。 [0147] 高屈折率の誘電体膜を構成する高屈折率材料としては、屈折率がこれと組み合わせて用いられる低屈折率材料に比べて高い材料であれば特に制限されない。具体的には、屈折率が1.6を超える材料が好ましい。より具体的には、Ta2O5(2.22)、TiO2(2.41)、Nb2O5(2.3)、ZrO2(1.99)などが挙げられる。これらのうちでも、本発明においては、成膜性と屈折率等をその再現性、安定性を含め総合的に判断して、TiO2等が好ましく用いられる。なお、化合物の後の括弧内の数字は屈折率を示す。以下、低屈折率材料についても同様に化合物の後の括弧内の数字は屈折率を示す。 [0148] 低屈折率の誘電体膜を構成する低屈折率材料としては、屈折率がこれと組み合わせて用いられる高屈折率材料に比べて低い材料であれば特に制限されない。具体的には、屈折率が1.55未満の材料が好ましい。より具体的には、SiO2(1.46)、SiOxNy(1.46以上1.55未満)、MgF(1.38)などが挙げられる。これらのうちでも、本発明においては、SiO2 が成膜性における再現性、安定性、経済性などの点で好ましい。」 (イ)「[0158]誘電体多層膜の具体的な層数や膜厚については、第1の誘電体多層膜13aおよび第2の誘電体多層膜13bにおいて、それぞれ、求められる光学特性に応じて、用いる高屈折率材料および低屈折率材料の屈折率に基づいて、誘電体多層膜を用いた従来のバンドパスフィルタ等の設計手法を用いて設定される。なお、設定に従い各層の材料を選択すれば、これを用いて各層の厚さを調整し積層する方法は確立されているので、誘電体多層膜を設計とおりに製造することは容易である。」 (ウ)「[0168] 本実施形態の光学フィルタは、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等の近赤外線カット用の光学フィルタ、PDP用の光学フィルタ等として使用できる。本実施形態の光学フィルタはデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置において好適に用いられ、光学フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置される。」 (エ)「[0245](例10~18)  誘電体多層膜は、例10~18において全て同様として設計した。第1の誘電体多層膜および第2の誘電体多層膜ともに、高屈折率の誘電膜としてTiO2膜、低屈折率の誘電膜としてSiO2膜を想定した。具体的には、マグネトロンスパッター装置に、TiまたはSiのターゲットを用いて、ArガスとO2ガスを導入した反応性スパッタによりTiO2膜、SiO2膜をサンプルとして作製した。得られたTiO2膜およびSiO2膜の光学定数を、分光透過率測定により求めた。 [0246] 高屈折率の誘電膜と低屈折率の誘電膜が交互に積層された誘電体多層膜が形成された構成において、誘電体多層膜の積層数、TiO2 膜(高屈折率誘電体膜)の膜厚、SiO2膜(低屈折率誘電体膜)の膜厚、をパラメーターとして、シミュレーションし、波長400~700nmの光を90%以上透過し、波長715~900nmの光の透過率が5%以下となるような第1の誘電体多層膜の構成を求めた。得られた第1の誘電体多層膜の構成を表4に、この第1の誘電体多層膜の透過率スペクトルを図8(a)にIR-1として点線で示す。なお、第1の誘電体多層膜においては第1層が近赤外線吸収層側に形成される設定であり、全体の膜厚は3536nmであった。 ・・・略・・・ [0248]上記同様に高屈折率の誘電膜と低屈折率の誘電膜が交互に積層された誘電体多層膜が形成された構成において、誘電体多層膜の積層数、TiO2膜(高屈折率誘電体膜)の膜厚、SiO2膜(低屈折率誘電体膜)の膜厚、をパラメーターとして、シミュレーションし、波長420~780nmの光を90%以上透過し、波長410nm以下の光および850~1200nmの光の透過率がともに5%以下となるような第2の誘電体多層膜の構成を求めた。得られた第2の誘電体多層膜の構成を表5に、この第2の誘電体多層膜の透過率スペクトルを図8(a)にIR-2として破線で示す。なお、第2の誘電体多層膜においては、第1層が近赤外線吸収層側に形成される設定であり、全体の膜厚は4935nmであった。また、図8(b)に、上記第1の誘電体多層膜および第2の誘電体多層膜を積層した場合の透過率スペクトルをIR-1+IR-2として実線で示した。 ・・・略・・・ [0250]上記で設計した例10~18の光学フィルタについて透過スペクトルを作成した。表6に光学フィルタの仕様および光学特性を示す。例13および例17の光学フィルタの、300~900nmの波長領域の透過スペクトル(0~100%)を図10に、650~800nmの波長領域の透過スペクトル(0~20%)を図11に示す。なお、図10および図11において実線は例13の透過スペクトルを、破線は例17の透過スペクトルをそれぞれ示す。」 サ 甲10 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲10には、次の事項が記載されている。 (ア)「【背景技術】 【0002】 特定の波長や波長領域の光のみを透過させ、不必要な波長領域の光を制限するタイプの光学フィルタとして、バンドパスフィルタやエッジフィルタなどが一般に広く知られている。このようなフィルタとしては、ダイクロイックフィルタや近赤外線カットフィルタ(IRカットフィルタ)、紫外線カットフィルタ(UVカットフィルタ)、紫外赤外線カットフィルタ(UVIRカットフィルタ)、蛍光フィルタ、レーザーラインフィルタ、励起フィルタなどが挙げられる。」 (イ)「【0052】 図5は比較のために、特許文献4を基に作製した比較例の光学フィルタの分光透過率のグラフ図である。図5(a)は有機薄膜層によるグラフ図、図5(b)は基板の両面に分割し配置した2つの無機薄膜層によるグラフ図、図5(c)はこれらの有機薄膜層と無機薄膜層とにより作製されたグラフ図を示している。 【0053】 図5(b)から無機薄膜層で形成される赤外光半値波長は、650nm付近の波長であることが分かる。また、図5(c)から有機薄膜層と無機薄膜層を構成した場合であっても、赤外光半値波長は650nm付近であり、図5(b)とほぼ同様の波長となっていることが分かる。また、図5(a)に示された有機薄膜層の特性から、特許文献4で提示されている有機薄膜層の遷移波長領域での吸収率、特に赤外光半値波長における吸収率は、最大でも10%程度と極めて小さい値となっていることが予測される。」 (ウ)「【図5】 」 シ 甲11 本件特許の優先日前に頒布され上記取消理由通知で引用された刊行物である甲11は、甲10における「特許文献4」である。 (2)対比 ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「基板」及び「近赤外線カットフィルター」は、それぞれ本件発明1の「基材」及び「光学フィルター」に相当する。 (イ)甲1発明の「多層蒸着膜」は、誘電体層であるシリカ層とチタニア層とが交互に積層されてなるものであるから、本件発明1の「誘電体多層膜」に相当する。 (ウ)甲1発明の「スクエアリリウム系化合物(a-10)」は、波長600~800nmに吸収極大があるから、本件発明1の「波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)」に相当する。 (エ)甲1発明の「近赤外線カットフィルター」は、「基板」(本件発明1の「基材」に相当。以下「」に続く()内の用語は、対応する本件発明1の用語を表す。)の両面に「多層蒸着膜」(誘電体多層膜)を形成したものであり、波長430~580nmにおける垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が91%であり、波長800~1000nmにおける平均値が1%以下であるから、甲1発明の「近赤外線カットフィルター」と、本件発明1の「光学フィルター」とは、「(a)波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上」「の要件を満たし、基材と該基材の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有」し、「可視光線を選択的に透過させる」点で一致する。 (オ)甲1発明の「基板」は、容器に、JSR株式会社製の環状オレフィン系樹脂「アートン G」100重量部、スクエアリリウム系化合物(a-10)0.04重量部、さらに塩化メチレンを加えることで、樹脂濃度が20重量%の溶液(ex1)を得て、次いで、係る溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して得たものであるから、甲1発明の「基板」と、本件発明1の「基材」とは、「波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含む透明樹脂層を有する」点で一致する。 (カ)上記(ア)ないし(オ)からみて、本件発明1と甲1発明とは、 「下記(a)の要件を満たし、基材と該基材の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有し、 前記基材が波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含む透明樹脂層を有する、 可視光線を選択的に透過させる光学フィルター。 (a)波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が75%以上」である点で一致し、次の点で相違する。 ・相違点1 本件発明1では、「下記」「(b)の要件を満た」し、「一部の近赤外線を選択的に透過させる」のに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 イ 本件発明2と甲1発明とを対比すると、本件発明2と甲1発明とは、上記相違点1に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点2 本件発明2では、Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ウ 本件発明4と甲1発明とを対比すると、本件発明4と甲1発明とは、上記相違点1及び2に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点4 本件発明4では、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 エ 本件発明5と甲1発明とを対比すると、本件発明5と甲1発明とは、上記相違点1に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点5 本件発明5では、波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 オ 本件発明6と甲1発明とを対比すると、本件発明6と甲1発明とは、上記相違点1に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点6 本件発明6では、波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 カ 本件発明7と甲1発明とを対比すると、甲1発明が基材の両面に分光特性の異なる誘電体多層膜を形成し、甲1発明は本件発明7の「前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており」との構成を備えているといえるから、本件発明7と甲1発明とは、上記相違点1及び2に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点7 本件発明7では、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 キ 本件発明12と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、本件発明12の「前記透明樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂・・・からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である」との構成を備えているといえるから、本件発明12と甲1発明とは、上記相違点1で相違し、その余の点で一致する。 ク 本件発明13と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、本件発明13の「前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する」構成を備えているといえるから、本件発明13と甲1発明とは、上記相違点1で相違し、その余の点で一致する。 ケ 甲1の記載から、甲1発明がカメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用として用いられるところ、本件発明14と甲1発明とを対比すると、本件発明14と甲1発明とは、上記相違点1で相違し、その余の点で一致する。 コ 本件発明15と甲1固体撮像装置発明とを対比すると、本件発明15と甲1固体撮像装置発明とは、それぞれ上記相違点1に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点15 本件発明15では、固体撮像装置が監視カメラ以外であるのに対し、 甲1固体撮像装置発明では、固体撮像装置が監視カメラ以外のものに特定されてはいない点。 サ 本件発明16と甲1カメラモジュール発明とを対比すると、本件発明16と甲1カメラモジュール発明とは、それぞれ上記相違点1に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点16 本件発明16では、カメラモジュールが監視カメラ以外であるのに対し、 甲1カメラモジュール発明では、カメラモジュールが監視カメラ以外のものに特定されてはいない点。 シ 本件発明17と甲1発明とを対比すると、上記アからみて、本件発明17と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 ・相違点17 本件発明17では、「下記(b)及び(d)の要件を満た」し、「一部の近赤外線を選択的に透過させる」のに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 (d)光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した透過率曲線のうち前記Zbに相当する帯域において、透過率が50%となる最も短波長側の波長の値(Xa')と、前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)との差の絶対値|Xa-Xa'|が、25nm未満である。 ス 本件発明18と甲1発明とを対比すると、本件発明18と甲1発明とは、上記相違点17に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点18 本件発明18では、Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 セ 本件発明19と甲1発明とを対比すると、本件発明19と甲1発明とは、上記相違点17及び18に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点19 本件発明19では、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ソ 本件発明20と甲1発明とを対比すると、本件発明20と甲1発明とは、上記相違点17に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点20 本件発明20では、波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 タ 本件発明21と甲1発明とを対比すると、本件発明21と甲1発明とは、上記相違点17に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点21 本件発明21では、波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 チ 本件発明22と甲1発明とを対比すると、甲1発明が基材の両面に分光特性の異なる誘電体多層膜を形成し、甲1発明は本件発明22の「前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており」との構成を備えているといえるから、本件発明22と甲1発明とは、上記相違点17及び18に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点22 本件発明22では、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ツ 本件発明23と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、本件発明23の「前記化合物(Z)がスクアリリウム系化合物・・・からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である」との構成を備えているといえるから、本件発明23と甲1発明とは、上記相違点17で相違し、その余の点で一致する。 テ 本件発明24と甲1発明とを対比すると、甲1発明のスクエアリリウム系化合物(a-10)が600~800nmに吸収極大を有しているのであるから、波長600~750nmおよび波長750~850nmのいずれかの範囲で吸収極大を有するのであるから、甲1発明は、本件発明24の「前記化合物(Z)が、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である」との構成を備え、本件発明24と甲1発明とは、上記相違点17で相違し、その余の点で一致する。 ト 本件発明25と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、その「スクエアリリウム化合物(a-10)」が本件発明25の「式(I)で表される化合物」に該当する化合物であり、本件発明25の「前記化合物(A)が下記式(I)」「で表される化合物である」との構成を備えているといえるから、本件発明25と甲1発明とは、上記相違点17で相違し、その余の点で一致する。 ナ 本件発明26と甲1発明とを対比すると、本件発明26と甲1発明とは、上記相違点17に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点26 本件発明26では、化合物(S)が式(S1)で表される化合物であるのに対し、 甲1発明では、スクエアリリウム化合物(a-10)が前記式(S1)で表される化合物ではない点。 ニ 本件発明27又は28の限定事項については、それぞれ本件発明12又は13の限定事項と同様であるところ、上記キ又はクのとおり、本件発明27又は28と甲1発明とは、上記相違点17で相違し、その余の点で一致する。 ヌ 本件発明29と甲1発明とを対比すると、上記ケと同様に、本件発明29と甲1発明とは、上記相違点17で相違し、その余の点で一致する。 ネ 本件発明30又は31と甲1固体撮像装置発明又は甲1カメラモジュール発明とをそれぞれ対比すると、本件発明30又は31と甲1固体撮像装置発明又は甲1カメラモジュール発明とは、上記相違点17で相違し、その余の点で一致する。 ノ 本件発明32と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、本件発明32の「前記化合物(Z)がスクアリリウム系化合物・・・からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である」との構成を備えているといえるから、本件発明32と甲1発明とは、上記相違点1と同様な以下の点で相違し、その余の点で一致する。 ・相違点32 本件発明32では、「下記(b)の要件を満た」し、「一部の近赤外線を選択的に透過させる」のに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 ハ 本件発明33と甲1発明とを対比すると、本件発明33と甲1発明とは、上記相違点32に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点33 本件発明33では、Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ヒ 本件発明34と甲1発明とを対比すると、本件発明34と甲1発明とは、上記相違点32及び33に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点34 本件発明34では、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 フ 本件発明35と甲1発明とを対比すると、本件発明35と甲1発明とは、上記相違点32に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点35 本件発明35では、波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ヘ 本件発明36と甲1発明とを対比すると、本件発明36と甲1発明とは、上記相違点32に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点36 本件発明36では、波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ホ 本件発明37と甲1発明とを対比すると、甲1発明が基材の両面に分光特性の異なる誘電体多層膜を形成し、甲1発明は本件発明37の「前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており」との構成を備えているといえるから、本件発明37と甲1発明とは、上記相違点32及び33に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点37 本件発明37では、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 マ 本件発明38と甲1発明とを対比すると、本件発明38と甲1発明とは、上記相違点32に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点38 本件発明38では、前記化合物(Z)が、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)を含み、前記基材(i)がさらに、波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)および吸収極大波長が850nm超の色素(X)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むのに対し、 甲1発明では、基板(基材)に、600~800nmに吸収極大を有するスクエアリリウム系化合物(a-10)を含むものであるが、さらに前記化合物(S)及び/又は前記色素(X)を含んでいない点。 ミ 本件発明39と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、その「スクエアリリウム化合物(a-10)」が本件発明39の「式(I)で表される化合物」に該当する化合物であり、本件発明39の「前記化合物(A)が下記式(I)」「で表される化合物である」との構成を備えているといえるから、本件発明39と甲1発明とは、上記相違点32及び38で相違し、その余の点で一致する。 ム 本件発明40と甲1発明とを対比すると、本件発明40と甲1発明とは、上記相違点32及び38に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点40 本件発明40では、化合物(S)が式(S1)で表される化合物であるのに対し、 甲1発明では、前記式(S1)で表される化合物(S)を含んでいない点。 メ 本件発明41又は42の限定事項については、それぞれ本件発明12又は13の限定事項と同様であるところ、上記キ又はクのとおり、本件発明41又は42と甲1発明とは、上記相違点32で相違し、その余の点で一致する。 モ 本件発明43と甲1発明とを対比すると、上記ケと同様に、本件発明43と甲1発明とは、上記相違点32で相違し、その余の点で一致する。 ヤ 本件発明44又は45と甲1固体撮像装置発明又は甲1カメラモジュール発明とをそれぞれ対比すると、本件発明44又は45と甲1固体撮像装置発明又は甲1カメラモジュール発明とは、上記相違点32で相違し、その余の点で一致する。 ユ 本件発明46と甲1発明とを対比すると、上記アからみて、本件発明46と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 ・相違点46 本件発明46では、本件発明1では、「下記」「(b)の要件を満た」し、「前記基材(i)が波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)および波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)を含む透明樹脂層を有し」、「一部の近赤外線を選択的に透過させる」のに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 (b)波長650nm以上の領域に光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zb、光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下であり、前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上である。 ヨ 本件発明47と甲1発明とを対比すると、本件発明47と甲1発明とは、上記相違点46に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点47 本件発明47では、Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ヨ 本件発明48と甲1発明とを対比すると、本件発明48と甲1発明とは、上記相違点46及び47に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点48 本件発明48では、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ラ 本件発明49と甲1発明とを対比すると、本件発明49と甲1発明とは、上記相違点46に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点49 本件発明49では、波長600nm以上の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)が610~670nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 リ 本件発明50と甲1発明とを対比すると、本件発明50と甲1発明とは、上記相違点46に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点50 本件発明50では、波長750nm以上の領域において前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%未満から50%以上となる最も短い波長(Xf)が770~900nmであるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 ル 本件発明51と甲1発明とを対比すると、甲1発明が基材の両面に分光特性の異なる誘電体多層膜を形成し、甲1発明は本件発明51の「前記基材(i)の両面に分光特性が異なる誘電体多層膜が形成されており」との構成を備えているといえるから、本件発明51と甲1発明とは、上記相違点46及び47に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点51 本件発明37では、光学フィルターの少なくとも一方の面から測定した、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下であるのに対し、 甲1発明では、そのような構成を有しているとはいえない点。 レ 本件発明52と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、その「スクエアリリウム化合物(a-10)」が本件発明39の「式(I)で表される化合物」に該当する化合物であり、本件発明52の「前記化合物(A)が前記式(I)」「で表される化合物である」との構成を備えているといえるから、本件発明52と甲1発明とは、上記相違点46で相違し、その余の点で一致する。 ロ 本件発明53と甲1発明とを対比すると、本件発明53と甲1発明とは、上記相違点46に加え、以下の点でさらに相違し、その余の点で一致する。 ・相違点53 本件発明53では、前記化合物(S)が前記式(S1)で表される化合物であるのに対し、 甲1発明では、前記式(S1)で表される化合物(S)を含んでいない点。 ワ 本件発明54又は55の限定事項については、それぞれ本件発明12又は13の限定事項と同様であるところ、上記キ又はクのとおり、本件発明54又は55と甲1発明とは、上記相違点46で相違し、その余の点で一致する。 ヰ 本件発明56と甲1発明とを対比すると、上記ケと同様に、本件発明55と甲1発明とは、上記相違点46で相違し、その余の点で一致する。 ヱ 本件発明57又は58と甲1固体撮像装置発明又は甲1カメラモジュール発明とをそれぞれ対比すると、本件発明57又は58と甲1固体撮像装置発明又は甲1カメラモジュール発明とは、上記相違点46で相違し、その余の点で一致する。 (3)判断 ア 本件発明1について (ア)カメラにおいて、固体撮像素子の前面に配置される光学フィルタとして、可視光領域の光線については透過し、少なくとも約1200nm程度までの近赤外線領域については、約880~約950nmの範囲にその中心を有する100nm程度の波長幅であって、最大透過率が90%を超えるような透過領域を有し、当該透過領域以外の波長の透過率は略ゼロとなるような光学特性のものを用いることによって、監視カメラのような昼夜を問わず画像撮影を行う用途に使用可能とすることは周知(以下「周知技術」という。例.甲2(上記(1)イ参照。)、甲4(上記(1)エ参照。))である。また、甲5(上記(1)オ参照。)等に記載されているように、誘電体多層膜からなる光学フィルターにおいて、誘電体多層膜の構成を変更して阻止帯又は透過帯を拡張することにより、可視光領域の波長の光線は透過させるとともに、近赤外線領域のうちの一部の波長の光線を反射し、その他の波長の光線を透過させるような光学特性にできることは技術常識である。 (イ)甲1の【0226】(上記(1)ア(ケ)参照。)には、甲1発明の近赤外線カットフィルターの用途として、カメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用に用いることが記載され、当該カメラモジュールの用途として、監視カメラを含む様々な用途のカメラが例示されているところ、上記(ア)で認定した周知技術及び技術常識に照らせば、甲1発明を、昼夜を問わず画像撮影を行う用途のカメラにおける固体撮像素子の視感度補正用に用いるために、誘電体多層膜の構成を変更したり、必要に応じてスクエアリリウム系化合物(a-10)以外の近赤外線吸収剤をも併用する等によって、少なくとも約1200nm程度までの近赤外線領域について、約880~約950nmの範囲にその中心を有する100nm程度の波長幅であって、最大透過率が90%を超えるような透過領域を有し、当該透過領域以外の波長の光線の透過率が略ゼロとなるような光学特性に変更することは、当業者が容易に想到し得たことである。 このような光学特性の変更を行った甲1発明において、近赤外線領域における透過領域と可視光領域の間の透過率が略ゼロとなる波長範囲、及び前記透過領域よりも長波長側で約1200nmまでの透過率が略ゼロとなる波長範囲が、本件発明1の「波長650nm以上の領域」における「光線阻止帯域Za」及び「光線阻止帯域Zc」にそれぞれ相当し、前記透過領域が、本件発明1の「波長650nm以上の領域」における「光線透過帯域Zb」に相当し、これらの帯域の中心波長は「Za<Zb<Zc」という要件、「前記ZaおよびZcにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ15%以下」という要件、「前記Zbにおける光学フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が55%以上」という要件も満足する。 (ウ)してみると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が周知技術及び技術常識に基づいて容易に想到し得たことである。 イ 本件発明2について 甲2の図5(上記(3)イ(ウ))及び甲4の図5(上記(3)エ(ウ))に示されたフィルタの透過特性を示すグラフは、前記Zbのうち、光学フィルターの垂直方向から測定した場合に透過率50%となる、最も短波長側の波長の値(Xa)と最も長波長側の波長の値(Xb)との差Xb-Xaが5~150nmであり、Y=(Xa+Xb)/2で表されるYの値が750~950nmであることを満たすものであり、甲2及び甲4の記載事項を踏まえれば、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明2の構成となすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。 ウ 本件発明4について 甲2の図5(上記(3)イ(ウ))及び甲4の図5(上記(3)エ(ウ))に示されたフィルタの透過特性を示すグラフは、前記Yの値で示される、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における、光学フィルターの垂直方向から測定した平均透過率が60%以上であることを満たすものであり、甲2及び甲4の記載事項を踏まえれば、甲1発明において、上記相違点4に係る本件発明4の構成となすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。 エ 本件発明5、6について 甲1発明が含むスクエアリリウム系化合物(a-10)は、本件特許の明細書における実施例で使用された化合物a-16(【0093】の表1、【0290】参照。)と同じであるから、甲1発明の基板(基材)の透過特性は本件発明5及び6で特定された基材の透過特性を満たす蓋然性が高い。よって、上記相違点5、6は実質的な相違点ではなく、仮に相違点であったとしても、甲1発明において、上記相違点5、6に係る本件発明の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。 オ 本件発明7について 甲2の図5及び甲4の図5に示されたフィルタの透過特性を示すグラフは、前記Yの値で示される、波長Y-10nm~Y+10nmの領域における平均反射率が20%以下であることを満たすことは明らかであり、甲2及び甲4の記載事項を踏まえれば、甲1発明において、上記相違点7に係る本件発明7の構成となすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。 カ 本件発明12ないし14について 上記アのとおり、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことであるから、甲1発明と相違点1で相違しその余の点で一致する本件発明12ないし14も同様に、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づき当業者が容易に発明することができたものである。 キ 本件発明15、16について 上記ア(ア)で認定した周知技術における、昼夜を問わず画像撮影を行う用途のカメラが監視カメラばかりでないことは、当業者に自明であるから(例えば、甲3の【0075】の「監視カメラや車載カメラなど昼夜問わずに使用するカメラ」(上記(1)ウ(ウ))という記載等)、甲1固体撮像装置発明を監視カメラ以外の昼夜を問わず画像撮影を行う用途のカメラに適したものとして構成すること、すなわち、相違点15に係る本件発明15の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。本件発明16についても同様である。 ク 本件発明17について 甲1の請求項2(上記(1)ア(ア))又は【0266】(上記(1)ア(ク))には、波長560~800nmの範囲において、フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Ya)と、フィルターの垂直方向に対して 30°の角度から測定した場合の透過率が50%となる波長の値(Yb)の差の絶対値(|Ya-Yb|)は15nm未満、具体的には3nmであることが記載されており、当該記載からみて、甲1発明は、透過特性の角度依存性の影響を可能な限り小さくしようとしているしているものであると認められる。しかしながら、甲1発明の前記Zbに相当する帯域においても、同様に、透過特性の角度依存性の影響を小さくすること、具体的に「絶対値|Xa-Xa'|が、25nm未満である」ことを当業者が導き出せたわけではなく、「絶対値|Xa-Xa'|が、25nm未満である」ことが周知であったとも認められない。 よって、甲1発明において、上記相違点17に係る本件発明17の構成となすことは当業者が容易になし得た事項とはいえない。 なお、甲6(上記(1)オ)には、例えば図17、19に、800nm付近においても透過特性の角度依存性の影響が小さくなるようにしていることが記載されているが、当該記載の事項を考慮したしても、甲1発明において、上記相違点17に係る本件発明17の構成となすことは当業者が適宜なし得た事項とはいえない。 ケ 本件発明18ないし31について 本件発明17が、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明17の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明18ないし31も同様に、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 コ 本件発明32ないし37、41ないし45について 上記アのとおり、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことであるから、相違点1、2、4ないし6とそれぞれ同様な相違点32ないし37に係る構成を備える本件発明32ないし37、41ないし43は、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づき当業者が容易に発明することができたものである。また、相違点1と同様な相違点32に係る構成を備える本件発明44は、甲1固体撮像装置発明、周知技術及び技術常識に基づき、相違点1と同様な相違点32に係る構成を備える本件発明45は、甲1カメラモジュール発明、周知技術及び技術常識に基づき、それぞれ当業者が容易に発明することができたものである。 サ 本件発明38について (ア)甲6の【0031】、【0099】及び【0104】には、近赤外線吸収剤として、赤外光透過性基材1の透過波長帯域の短波長側に光吸収端を有するもの、好ましくは光吸収端の波長が730~830nmであるものが記載されている。波長が730~830nmである光吸収端を有するものであるから、波長750~850nmに吸収極大を有するものであるといえる。 (イ)光学フィルターの光学特性に関して、透過あるいは不透過の波長域を設計する際に、所望の吸収領域を有する吸収剤を適宜添加することは技術常識であるとしても、甲1発明において、化合物(A)に加えて、可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学特性を付与するために、波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)および吸収極大波長が850nm超の色素(X)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むようにすることの動機はなく、具体的に基板に甲6の前記近赤外線吸収剤を添加する必要性もないから、上記相違点38に係る本件発明38に係る構成となすことは当業者が容易になし得たものではない。 シ 本件発明39又は40について 本件発明38が、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明39の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明39又は40も同様に、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 ス 本件発明46について 上記サと同様に、甲1発明において、波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)および吸収極大波長が850nm超の色素(X)を含むようにすることの動機はなく、具体的に基板に甲6の前記近赤外線吸収剤を添加する必要性もないから、上記相違点46に係る本件発明46に係る構成となすことは当業者が容易になし得たものではない。 セ 本件発明47ないし58について 本件発明46が、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明46の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加した本件発明47ないし58も同様に、甲1発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 (3)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下ア、イのとおり、訂正前の請求項1ないし16係る発明が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである旨主張している。 ア サポート要件違反 本件特許の明細書において、本件発明の課題を解決し、所望の効果を奏することが具体的に示されているのは、化合物(S)のみを用いる態様、及び、化合物(A)と化合物(S)との両方を用いる態様の2態様のみである(本件特許明細書実施例1~12参照。)。そうすると、あらゆる化合物(Z)を用いる態様を包含する本件発明1や化合物(A)のみを用いる態様を包含する訂正前の請求項9ないし11に係る発明についてまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。 イ 明確性要件違反 (ア)本件発明1は、「可視光線と一部の近赤外線を選択的に透過させる光学フィルター」であるが、「一部」との用語が不明確である。 (イ)訂正前の請求項13に係る発明は、「前記基材(i)が化合物(Z)を含む透明樹脂製基板(ii)を含有する」ことを規定するが、このことが、本件発明1の「前記基材(i)が波長600~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)を含む透明樹脂層を有する」ことと、実質的にどのように異なるのか明確でない。 上記アについて検討すると、本件特許の発明の課題は、可視光線と一部の近赤外線を透過させる光学フィルターとして、入射角依存性を少なくするものであるところ、波長600~750nmに吸収極大を有する化合物(A)、波長750~850nmに吸収極大を有する化合物(S)及び波長650~850nmに吸収極大を有する化合物(Z)のうち、少なくともいずれか1つの化合物を用いれば、前記発明の課題を解決できることは明らかであるから、化合物(Z)を用いる本件発明1や化合物(A)のみを用いる訂正前の請求項9ないし11に係る発明について、本件特許の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできるものといえる。 上記イ(ア)について検討すると、広辞苑第六版によれば、「一部」とは「全体のなかの或る部分。一部分。」を意味し、「一部の近赤外線」が「近赤外線」の全体のうち、特定の波長領域を指すことは明らかであるから、「一部」との用語は明確である。 上記イ(イ)について検討すると、本件発明1の「化合物(Z)を含む透明樹脂層」は、例えば、化合物(Z)を含む透明樹脂溶液を別部材に塗布乾燥して形成した透明樹脂層が想定でき、これに対し、訂正前の請求項13の「化合物(Z)を含む透明樹脂製基板」は、例えば、化合物(Z)を含む透明樹脂液を硬化成型して自立した透明樹脂製基板を想定できる。そうすると、本件発明1の「透明樹脂層」と、訂正前の請求項13の「透明樹脂基板」とは、異なる範囲を包含する技術上の概念と解され、双方とも明確であるといえる。 以上のとおりであるから、特許異議申立人の上記ア及びイの主張は理由がない。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明1、2、4ないし7、12ないし16、32ないし37、41ないし45は、甲1に記載された発明、周知技術及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1、2、4ないし7、12ないし16、32ないし37、41ないし45の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1、2、4ないし7、12ないし16、32ないし37、41ないし45の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項17ないし31、38ないし40、46ないし58に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に請求項17ないし31、38ないし40、46ないし58に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらにまた、本件請求項3、9ないし11に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3、9ないし11に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700855

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