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特許異議申立

2016-700695

ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品

審判番号
2016-700695
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-005149外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年08月08日
審決日
2017年10月02日
公報発行日
2018年01月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5853712号発明「ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5853712号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第5853712号の請求項1、5、8ないし11に係る特許を維持する。 特許第5853712号の請求項2ないし4、6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 主な手続の経緯 特許第5853712号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成24年1月13日(優先権主張平成23年3月31日)の出願であって、平成27年12月18日に設定登録がされ、平成28年2月9日に特許公報が発行され、その後、同年8月5日付けで特許異議申立人林法子(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年11月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月5日に意見書の提出及び訂正請求がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年3月1日付けで意見書が提出され、同年4月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年6月8日付け(差出日:6月9日)に乙第1ないし第3号証が添付された意見書の提出及び訂正請求がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年8月10日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート樹脂と、コア・シェル構造からなるエラストマーとを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が145℃未満であり、前記エラストマーのコア層がブタジエン-スチレン共重合体からなり、前記エラストマーのシェル層が、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および(メタ)アクリル酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を単量体成分として構成され、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して前記エラストマーを0.05~50重量部含む、ポリカーボネート樹脂組成物。 【化1】 [ただし、上記式(1)で表される部位が-CH2-O-Hを構成する部位である場合を除く。]」とあるのを、 「下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂と、コア・シェル構造からなるエラストマーとを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート樹脂が、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上、90mol%以下含み、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が145℃未満であり、前記エラストマーのコア層がブタジエン-スチレン共重合体からなり、前記エラストマーのシェル層が、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および(メタ)アクリル酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を単量体成分として構成され、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して前記エラストマーを0.05~50重量部含むポリカーボネート樹脂組成物であって、該ポリカーボネート樹脂組成物を厚さ3mmの成形体に成形したときの全光線透過率が60%未満である、ポリカーボネート樹脂組成物。 【化2】 」 と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正し、同請求項8に「請求項1~7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1又は5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正し、同請求項9に「請求項1~8のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1、5又は8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正し、請求項10に「請求項1~9のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物」とあるのを、「請求項1、5、8又は9に記載のポリカーボネート樹脂組成物」と訂正する。 (8)訂正事項8 願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0012】に「下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート樹脂と、コア・シェル構造からなるエラストマーとを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、」とあるのを「下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂と、コア・シェル構造からなるエラストマーとを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート樹脂が、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上、90mol%以下含み、」と訂正すると共に、「含む、ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを「含むポリカーボネート樹脂組成物であって、該ポリカーボネート樹脂組成物を厚さ3mmの成形体に成形したときの全光線透過率が60%未満である、ポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正する。 (9)訂正事項9 本件特許明細書の段落【0013】を削除する。 (10)訂正事項10 本件特許明細書の段落【0014】を削除する。 (11)訂正事項11 本件特許明細書の段落【0015】を削除する。 (12)訂正事項12 本件特許明細書の段落【0017】を削除する。 (13)訂正事項13 本件特許明細書の段落【0018】を削除する。 (14)訂正事項14 本件特許明細書の段落【0020】に「[1]~[4]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを「[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正する。 (15)訂正事項15 本件特許明細書の段落【0021】を削除する。 (16)訂正事項16 本件特許明細書の段落【0022】を削除する。 (17)訂正事項17 本件特許明細書の段落【0023】に「[1]~[7]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを「[1]又は[5]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正する。 (18)訂正事項18 本件特許明細書の段落【0024】に「[1]~[8]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを「[1]、[5]又は[8]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正する。 (19)訂正事項19 本件特許明細書の段落【0025】に「[1]~[9]のいずれか1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを「[1]、[5]、[8]又は[9]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書又は図面の訂正に係る請求項の全てについて行っているか、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 ア 請求項1の「下記式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有するポリカーボネート樹脂」を「下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂」に限定するものであり、請求項1に「前記ポリカーボネート樹脂が、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上、90mol%以下含み」及び「ポリカーボネート樹脂組成物を厚さ3mmの成形体に成形したときの全光線透過率が60%未満である」と付加して減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 「下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂」、「前記ポリカーボネート樹脂が、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上、90mol%以下含み」及び「ポリカーボネート樹脂組成物を厚さ3mmの成形体に成形したときの全光線透過率が60%未満である」は、それぞれ、本件特許明細書の段落【0041】及び段落【0042】、段落【0060】及び段落【0062】並びに段落【0033】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2) 訂正事項2ないし6 ア 請求項2ないし4、6及び7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 請求項2ないし4、6及び7を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 請求項2ないし4、6及び7を削除するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (3) 訂正事項7 ア 上記訂正事項2ないし6に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 上記訂正事項2ないし6に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 上記訂正事項2ないし6に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (4) 訂正事項8 ア 上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (5) 訂正事項9ないし19 ア 上記訂正事項2ないし7に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 上記訂正事項2ないし7に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 上記訂正事項2ないし7に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の記載との整合性を図るものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (6) 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし11は、訂正前の請求項2ないし11が訂正前の請求項1を引用しているものであるから、訂正前において、一群の請求項に該当するものである。 したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。 (7)願書に添付した明細書又は図面の訂正に係る請求項の全てについて行っているかについて 本件訂正請求による訂正は、請求項1ないし11についての訂正であるから、明細書又は図面の訂正に係る請求項の全てについて行っており、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合する。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の一群の請求項1ないし11について訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明11」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とを含むポリカーボネート樹脂と、コア・シェル構造からなるエラストマーとを含むポリカーボネート樹脂組成物であって、前記ポリカーボネート樹脂が、全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上、90mol%以下含み、前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が145℃未満であり、前記エラストマーのコア層がブタジエン-スチレン共重合体からなり、前記エラストマーのシェル層が、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および(メタ)アクリル酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を単量体成分として構成され、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して前記エラストマーを0.05~50重量部含むポリカーボネート樹脂組成物であって、該ポリカーボネート樹脂組成物を厚さ3mmの成形体に成形したときの全光線透過率が60%未満である、ポリカーボネート樹脂組成物。 【化2】 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 前記エラストマーのシェル層が(メタ)アクリル酸アルキルよりなる、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 前記ポリカーボネート樹脂が、5員環構造を有するジヒドロキシ化合物及び6員環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む、請求項1又は5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項9】 前記ポリカーボネート樹脂が、シクロヘキサンジメタノール類とトリシクロデカンジメタノール類とからなる群より選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む、請求項1、5又は8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項10】 請求項1、5又は8に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる、ポリカーボネート樹脂成形品。 【請求項11】 前記ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して得られる、請求項10に記載のポリカーボネート樹脂成形品。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 平成29年4月7日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(以下、「サポート要件」という。)を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第5 取消理由(決定の予告)についての判断 本件特許発明の課題は、「耐衝撃性において特に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供すること」(段落【0009】)である。 確かに、実施例には、「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」(【請求項1】)として、「CHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)に由来する構造単位」以外の記載はない。 しかし、「上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有するポリカーボネート樹脂と特定のコア・シェル構造からなるエラストマーを含有するポリカーボネート樹脂組成物が、耐衝撃性に優れることを見出し、本発明に到達した。」(段落【0010】)との記載を受け、「ポリカーボネート樹脂が、・・・脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位との両方を含むことにより、ポリカーボネート樹脂の透明性または耐衝撃性を改善することができる」(段落【0057】)との記載、「特に、ポリカーボネート樹脂中における全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物としたときの光反射率または耐衝撃性が優れたものとなる。」(段落【0060】)との記載及び「ポリカーボネート樹脂中における全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対する脂環式ジヒドロキシ化合物等の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、好ましくは90mol%以下・・・である。脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が前記の範囲内で多いほど、耐衝撃性に優れたものとなる傾向にある。」(段落【0062】)との記載から、「ポリカーボネート樹脂」が、「全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して・・・脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を20mol%以上、90mol%以下含」んでいれば、当業者であれば上記課題を解決できると理解するのが相当である。 また、乙1号証に記載された発明の課題は、「機械的強度に優れ、耐熱性があり、屈折率が小さく、アッベ数が大きく、複屈折が小さく、透明性に優れた」([0007])ものであるところ、表1では、32個の実施例を列記し、「カラーb」に着目し、表2では、実施例の数を絞って「アイゾット衝撃強度」等に着目し、表3でも、実施例の数を絞って「アッベ数」等に着目し、以下同様に、表8まで着目する性質を変えながら、一部の実施例のみ記載している。かかる実施例の記載の態様に照らせば、表1に列記された実施例28(脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位として「1,4-BG」)及び実施例29(脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位として「1,6-HD」)も、明示はないものの、「アイゾット衝撃強度」に関して課題を解決したものと解するのが相当である。そうすると、本件特許発明における「アイゾット衝撃強度」の課題を解決する「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」として、「CHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)に由来する構造単位」のみに限定されるとはいえない。このような乙1号証に照らし、「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」として、「CHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)に由来する構造単位」に限定しなくとも、なおサポート要件を満たすといえる。 さらに、乙2、3号証から、「CHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)」が「脂肪族ジヒドロキシ化合物」の代表例として当業者に認識されていることが看てとれるから、「脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位」として、「CHDM(1,4-シクロヘキサンジメタノール)に由来する構造単位」に限定しなくとも、なおサポート要件を満たすといえる。 よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。 第6 補足的判断 以下に、取消理由(決定の予告)とはしなかった理由について簡潔に検討する。 1 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 特許異議申立人が証拠として提出した各甲号証のいずれにも、少なくとも「ポリカーボネート樹脂組成物を厚さ3mmの成形体に成形したときの全光線透過率が60%未満である」が記載されておらず、本件特許発明1ないし11が各甲号証に記載された発明とはいえないし、各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条の規定に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 2 特許法第36条第6項第1号について 発明の詳細な説明には、「本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は75℃以上、145℃未満であることが好ましく、80℃以上、140℃以下であることがより好ましく、85℃以上、135℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がかかる範囲内のポリカーボネート樹脂を用いることで、優れた耐熱性を有する成形品を提供することができる。」(段落【0136】)との記載があり、ガラス転移温度が145℃未満であることと耐熱性を有する成形品が関係付けられて説明されており、本件特許発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。 よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。 3 特許法第36条第6項第2号について 特許請求の範囲には、ガラス転移温度の測定方法が特定されていないところ、一般に用いられるガラス転移温度の測定方法であれば、いかなる測定方法でも発明特定事項を満たすのであるから、明確といえる。 よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由(決定の予告)並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1、5、8ないし11に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1、5、8ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項2ないし4、6及び7に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項2ないし4、6及び7に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立については対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700695

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