特許異議申立
2016-700617
粘度特性に優れた低ソーダαアルミナ粉体及びその製造方法
- 審判番号
- 2016-700617
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-041213
- 登録番号
- 特許第5846233号(P5846233)
- 請求日
- 2016年07月14日
- 審決日
- 2017年02月08日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本軽金属株式会社
- 【権利者代理人】佐々木 一也
- 【権利者代理人】成瀬 勝夫
- 【権利者代理人】久本 秀治
- 【異議申立人】土田 裕介
- 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
- 【異議申立人代理人】清水 義憲
- 【異議申立人代理人】三上 敬史
- 【異議申立人代理人】福山 尚志
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 賢一
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 山本 雄一
- 分類
- P1652.113-YAA(C01F) / P1652.536-YAA(C01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5846233号発明「粘度特性に優れた低ソーダαアルミナ粉体及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5846233号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、3について訂正することを認める。
特許第5846233号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5846233号の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成26年 3月 4日の出願であって、平成27年12月 4日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人土田裕介により特許異議の申立てがなされ、平成28年 9月 2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年10月31日に意見書の提出及び訂正の請求がなされたものであり、この訂正の請求に対して特許異議申立人に意見を求めたところ、意見書の提出はなされなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)請求項1に記載された「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.1以下」を、「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.0以下」に訂正する(以下、「訂正事項1」という)。
(2)願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0015】に記載された「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.1以下」を、「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.0以下」に訂正する(以下、「訂正事項2」という)。
(3)本件特許明細書の段落【0027】に記載された「上記の粒径比(Dav/DBET)が1.45より低いと、」を、「上記の粒径比(Dav/DBET)が1.45より高いと、」に訂正する(以下、「訂正事項3」という)。
2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1及び2の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1は、請求項1に記載された「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕」の数値範囲を「1.1以下」から「1.0以下」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、訂正事項2は、訂正事項1に伴って、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】の「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.1以下」を、「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.0以下」に訂正するものであるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 訂正事項1及び2に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕が1.1以下、好ましくは1.0以下である。」(段落【0017】)と記載されているから、訂正事項1及び2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項1及び2は、「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕」の数値範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項3の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項3に関して、本件特許の願書に最初に添付された明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】に「粉砕後の平均粒子径(Dav)と粉砕前のBET相当径(DBET)との粒径比(Dav/DBET)が1.10以上1.45以下・・・の範囲になるように粉砕する。」と記載され、さらに、「1.10より低いと、粉砕過多になってチッピング粒子(微粒子)の発生が多くなり、粒度分布がブロードになるほか、チッピング粒子が凝集した粗大粒子が発生し、アルミナの均一分散が困難になる。」と、前記数値範囲の下限値「1.10」からの好ましくない範囲について記載されていることから、「粉砕不足になって樹脂充填時粘度が60ポアズ(poise)を超えて高くなってしまい」との記載は、上限値「1.45」からの好ましくない範囲を記載しているといえ、「1.45より低い」との記載は誤りであって、「1.45より高い」との記載が正しい記載であるといえる。よって、訂正事項3は、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
イ 訂正事項3は、誤記を訂正するものであるから、上記明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)一群の請求項について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を訂正するものであり、訂正前の請求項2は請求項1を引用するため、請求項1及び2は一群の請求項である。また、訂正事項2及び3は、本件特許明細書に係る訂正であって、訂正事項2及び3に関連する請求項は、訂正前の請求項1~3と認められる。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項1、2及び請求項3について請求するものと認められる。
(4)独立特許要件について
本件訂正は、訂正後の請求項1~3に関連するところ、請求項1及び2は特許異議の申立てがなされたので、独立特許要件の規定は適用されない。
また、特許異議の申立がなされていない請求項3に係る発明は、その特許を取り消すべき理由がないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号から第3号までに掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~2〕、3について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
(1)本件訂正請求により訂正された請求項1~3に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
バイヤー法で得られた平均粒子径10~200μmの水酸化アルミニウムを焼成し、得られた焼成物を粉砕して製造されたαアルミナ粉体であって、
ソーダ(Na2O)分が0.1質量%以下であると共に平均粒子径(Dp50)が2~5μmであり、かつ、粒度分布が45μm篩上量(+45μm)100ppm以下及びスパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕1.0以下であることを特徴とする粘度特性に優れた低ソーダαアルミナ粉体。
【請求項2】
前記αアルミナ粉体は、このαアルミナ粉体200重量部を不飽和ポリエステル樹脂100重量部中に添加し、周速2.6m/秒及び10分間の条件で撹拌してアルミナ充填樹脂組成物を調製した際に、得られたアルミナ充填樹脂組成物について、ブルックフィールド型粘度計を用いてローター回転速度12rpm及び測定温度25℃の条件で測定した際のアルミナ充填樹脂組成物の粘度(樹脂充填時粘度)が60ポアズ(poise)以下である請求項1に記載の粘度特性に優れた低ソーダαアルミナ粉体。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~2に係る特許に対して平成28年 9月 2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、「請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(亀田績、「バイヤー法アルミナの製造方法、特性と用途」、耐火物、2009年9月、第61巻、第9号、第472~478頁)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1~2に係る特許は、取り消されるべきものである。」というものである。
3 甲号証の記載
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。
ア 「1 始めに
アルミナは化学式Al2O3として示される化合物の工業的呼称である。三水和物のギブサイト(Al2O3・3H2O)や一水和物のベーマイト(Al2O3・H2O)などの水酸化アルミニウを加熱,脱水し製造する。アルミナは温度,圧力などの製造条件により,多くの結晶構造が存在する(α,γ,δ,η,κ等)。遷移的な構造である中間アルミナを経て,最終的には,約1100℃以上で安定なαアルミナとなる。」(第472頁左欄第1~8行)
イ 「
・・・(略)・・・
図1 アルミナの製造方法」(第472頁)
ウ 「バイヤー法は,1888年にオーストリアのK.J.Bayerが考案した水酸化アルミニウムの合成法であり,安価で大量生産に適した生産方法である。バイヤー法は,ボーキサイトと苛性ソーダを原料とし,ボーキサイト中の水酸化アルミニウム成分を苛性ソーダで抽出,アルミン酸ソーダとする。過飽和のアルミン酸ソーダから水酸化アルミウム(ギブサイト)が析出合成される。水酸化アルミニウムは,硫酸バンド(硫酸アルミニウム)やPAC(ポリ塩化アルミニウム)等の凝集剤や,アルミン酸ソーダなどの原料として使用される。また,水酸化アルミニムを,流動焼成炉やフラッシュカルサイナー,ロータリーキルン等で,1100℃以上の温度で焼成しアルミナとする。図3に加熱による水酸化アルミニウムからアルミナへの形態の変化を示す。」(第473頁右欄第1~13行)
エ 「原料水酸化アルミニウムは,数μmから数十μmのギブサイトの一次粒子が凝集した二次粒子であり,その大きさは,50μm~100μmである。焼成過程において,1100℃以上になると水酸化アルミニウムの形骸一次粒子の中に,αアルミナが核生成し,成長する。αアルミナ粒子が非常に小さい場合(1μm以下)は,アルミナは水酸化アルミニウムの元の一次粒子の形骸(二次粒子となる)を留めた三次粒子になる。さらに,焼成温度が高くなるとαアルミナの結晶が発達し,水酸化アルミニウムの一次粒子は不明瞭となり,成長したαアルミナを一次粒子とする二次粒子と成る。例えば,おにぎりをイメージすると判りやすい。αアルミナの一次粒子が米粒で,二次粒子がおにぎりを指す(図4)。
粉砕アルミナは,機械的な衝撃力で,このアルミナ二次粒子を解砕,粉砕する事によって得られる。一次粒子であるαアルミナの大きさまで粉砕する場合は,αアルミナの粒子が小さい程,粉砕に必要なエネルギーが多く必要になる。」(第474頁右欄第9~26行)
オ 「●充填材用途;
アルミナの電気絶縁性,熱伝導性を活かし,半導体封止のエポキシ樹脂,半導体部品の保護,熱伝導性向上のためのシリコーン樹脂やウレタン樹脂などへの充填材として使用されている。これらの用途では,樹脂やゴムなどに高充填するため,粒子形状は丸く(図9),粗粒を低減した低ソーダの微粒アルミナが適している。火炎法による数十μmの球状アルミナが使用されているが,電子部品の小型化が進み,数μmからサブミクロンのアルミナへのニーズが高まっている。代表的品種を表5に示す。F-1は標準的な低ソーダアルミナの微粉であるが,F-2は粗粒を低減した充填性の優れた品種である。また,F-3はさらに,粗粒だけでなく微粉も低減した粒度分布のシャープ(均一)な品種である(図10)。」(第477頁左欄第6~19行)
カ 「表5 充填材用アルミナの特性
」(第477頁)
キ 「
図10 充填材用アルミナの粒度分布」(第477頁)
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、上記(1)ウによれば、バイヤー法が水酸化アルミニウムを製造する方法であることが記載され、上記(1)ア及びイによれば、バイヤー法で得られた水酸化アルミニウムを焼成し、その後粉砕することでαアルミナ粉体が得られることが記載され、上記(1)エによれば、原料として用いられる水酸化アルミニウムの二次粒径が50~100μmであることが記載されている。また、上記(1)カの充填材用アルミナ「F-3」に注目すると、充填アルミナのNa2O量が0.02質量%であり、レーザー法で測定した充填材アルミナの平均粒径が2.5μmであり、45μm篩上量が0.001%(10ppm)であることが記載されている。さらに、上記(1)キによれば、充填材用アルミナ「F-3」の累積粒度分布が90mass%に対応する粒径(Dp90)、累積粒度分布が50mass%に対応する粒径(平均粒径、Dp50)、累積粒度分布が10mass%に対応する粒径(Dp10)がそれぞれ、3.7μm、2.5μm、0.9μmであることが見取れるから、充填材用アルミナ「F-3」のスパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕は1.1であると認められる。そして、上記(1)オによれば、充填材用アルミナ「F-3」が充填性に優れていること、すなわち、樹脂への充填の際に要求される粘度特性に優れたものであることが記載されている。
これら記載を充填材用アルミナ「F-3」に注目して整理すると、甲第1号証には、
「バイヤー法で得られた平均二次粒子径50~100μmの水酸化アルミニウムを焼成し、得られた焼成物を粉砕して製造されたαアルミナ粉体であって、
ソーダ(Na2O)分が0.02質量%であると共に、
平均粒子径(Dp50)が2.5μmであり、かつ、
粒度分布が45μm篩上量(+45μm)が10ppm及び、
スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕が1.1である、
粘度特性に優れた低ソーダαアルミナ粉体」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
4 対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、本件発明1のスパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕は、「1.0以下」であるのに対して、甲1発明は「1.1」である点で相違する。そして、当該相違点は、その値が異なっていることから、実質的な相違点といえる。
そうしてみると、本件発明1と甲1発明との間に実質的な相違点が存在するから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
また、本件発明2は、本件発明1を減縮するものであるから、同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に記載する発明に該当しない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許異議申立人は、発明の解決しようとする課題が、樹脂充填時の分散性が良く、粘度が低いαアルミナ粉体を提供すること(段落【0013】)であるところ、実施例及び比較例には、αアルミナ粉体の樹脂充填時の分散性の良否が判断されていないこと、及び、本件発明1の発明特定事項を実質的に満足している比較例3のαアルミナ粉体の樹脂充填時粘度が大きいことを根拠にして、発明の詳細な説明には、上記課題を解決できることについての開示が不十分であって、本件発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさない旨を主張している。
この点について検討すると、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0044】には、実施例及び比較例について、
「【表1】
」
と記載されている。
そして、発明の詳細な説明に「スパン値〔(Dp90-Dp10)/Dp50〕が1.1を超えて広くなると、同量充填した、粒度分布がシャープなフィラーと比べ、・・・、微粒分の増加に伴い凝集粒が増え、アルミナの均一分散が困難になるという問題がある」(段落【0019】)こと及び「粉砕過多になってチッピング粒子(微粒子)の発生が多くなり、粒度分布がブロードになるほか、チッピング粒子が凝集した粗大粒子が発生し、アルミナの均一分散が困難になる」(段落【0027】)ことが記載されており、また、凝集しやすい微粒子が多くなることで均一分散しにくくなることは技術常識でもあることから、本件特許の発明の詳細な説明には、スパン値が1.0以下である実施例1~5及び比較例1,3,4のαアルミナ粉体が樹脂充填時の分散性が良好であることは記載されているといえる。
また、発明の詳細な説明には、αアルミナ粉体の製造に際して、「この焼成物の粉砕において、上記の粒径比(Dav/DBET)が1.45より高いと、粉砕不足になって樹脂充填時粘度が60ポアズ(poise)を超えて高くな」ること(段落【0027】)が記載されているところ、比較例3の粉砕条件である粒径比(Dav/DBET)は1.93であり、比較例1(Dav/DBET=1.48)及び比較例4(Dav/DBET=1.57)より大きいことから、当業者であれば、比較例3のαアルミナ粉体の45μm篩上量は、明示はなくても、比較例1及び4のαアルミナ粉体の45μm篩上量より多くなっているといえ、比較例3は、45μm篩上量の点で、本件発明1の発明特定事項を満足していないことが理解できる。さらに、実施例1~5のαアルミナ粉体は、45μm篩上量が100ppm以下であり、樹脂充填時粘度が良好であることも記載されている。
以上のとおり、発明の詳細な説明には、上記課題を解決できることについて記載されており、本件発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているから、特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 特許異議申立人は、本件発明2の樹脂充填時粘度が60ポアズ以下であることに関して、本件発明1の発明特定事項を実質的に満足している比較例3のαアルミナ粉体の樹脂充填時粘度が178ポアズであり、本件発明1の発明特定事項を満足しない比較例2のαアルミナ粉体の樹脂充填時粘度が55ポアズであることを根拠にして、樹脂充填時粘度を主体的に調整するための具体的手段が想起できないため、発明の詳細な説明には、本件発明2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさない旨を主張している。
しかしながら、上記アで検討したとおり、比較例3のαアルミナ粉体は、45μm篩上量の点で、本件発明1の発明特定事項を満足していないため、樹脂充填時粘度が178ポアズとなっているものであるし、また、実施例1~5と比較例1,4を比較すると明らかなように、αアルミナ粉体の45μm篩上量が100ppm以下であれば、樹脂充填時粘度を60ポアズ以下に調整できるといえる。
また、比較例2のαアルミナ粉体は、スパン値が本件発明1の発明特定事項を満足していないため、上記アで検討したとおり、樹脂充填時の分散性が良好でない点での比較例であり、比較例2のαアルミナ粉体は、その45μm篩上量を0ppmとすることで樹脂充填時粘度が55ポアズとなっているといえるから、樹脂充填時粘度が55ポアズである比較例2が存在することが、樹脂充填時粘度の調整手段を不明確にしているともいえない。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明には、本件発明2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているから、特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1及び2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700617